近年、超音波が伝搬路伝達する時間を計測し、流体の移動速度を測定して流量を計測する超音波流計がガスメータ等に利用されつつある。図10は、このようなタイプの超音波流量計の主要部断面図構成を示している。
図10に示す超音波流量計では、流量を測定すべき被測定対象流体が管内を流れるように配置されている。管壁102には、一対の超音波送受波器101a、101bが相対して設置されている。超音波送受波器101a、101bは、電気機械変換素子として圧電セラミック等の圧電体を用いて構成されており、圧電ブザー、圧電発振子と同様に共振特性を示す。
図10の例では、最初の段階で、超音波送受波器101aが超音波送波器として用いられ、超音波送受波器101bが超音波受波器として用いられる。この段階においては、超音波送受波器101aの共振周波数近傍における周波数を持つ交流電圧を超音波送受波器101a内の圧電体に印加する。すると、超音波送受波器101aは超音波送波器として機能し、流体(例えば天然ガスや水素ガス)中に超音波を放射する。放射された超音波は、経路L1に伝搬して、超音波受波器101bに到達する。このとき、超音波送受波器101bは受波器として機能し、超音波を受けて電圧に変換する。
次に、超音波送受波器101bが超音波送波器として機能し、超音波送受波器101aが超音波受波器として機能する。すなわち、超音波送受波器101bの共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を超音波送受波器101b内の圧電体に印加することにより、超音波送受波器101bから流体中に超音波を放射させる。放射された超音波は、経路L2を伝搬して、超音波送受波器101aに到達する。超音波送受波器101aは伝搬してきた超音波を受けて電圧に変換する。
このように、超音波送受波器101aおよび101bは、送波器としての機能と受波器としての機能を交互に果たすために、一般に「超音波送受波器」と総称される。
図10に示す超音波流量計では、連続的に交流電圧を印加すると、超音波送受波器から連続的に超音波が放射されて伝搬時間を測定することが困難になるので、通常はパルス信号を搬送波とするバースト電圧信号を駆動電圧として用いられる。
以下、上記超音波流量計の測定原理を、より詳細に説明する。
まず、駆動用のバースト電圧信号を超音波送受波器101aに印加することにより、超音波送受波器101aから超音波バースト信号を放射する。これにより、超音波バースト信号は経路L1を伝搬してt時間後に超音波送受波器101bに到達する。経路L1の距離は、経路L2の距離と等しく、Lであるとする。
超音波送受波器101bは、伝達して来た超音波バースト信号のみを高いSN比で電気バースト信号に変換することができる。この電気バースト信号を電気的に増幅して、再び、超音波送受波器101aに印加して超音波バースト信号を放射する。このようにして動作する装置を「シング・アラウンド型装置」と呼ぶ。
また、超音波パルスが超音波送受波器101aから放射された後、超音波送受波器102bに到達するまでの時間を「シング・アラウンド周期」という。「シング・アラウンド周期」の逆数は、「シング・アラウンド周波数」と呼ばれる。
図10において、管の中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝搬方向の角度をθとする。超音波送受波器101aを超音波送波器、超音波送受波器101bを超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器101aから出た超音波パルスが超音波送受波器101bに到達する時間であるシング・アラウンド周期をt1、シング・アラウンド周波数f1とすれば、つきの式(1)が成立する。
f1=1/t1=(C+Vcosθ)/L ・・・(1)
逆に、超音波送受波器101bを超音波送波器として、超音波送受波器101を超音波受波器として用いたときのシング・アラウンド周期をt2、シング・アラウンド周波数f2とすれば、次の式(2)の関係が成立する。
f2=1/t2=(C−Vcosθ)/L ・・・(2)
両シング・アラウンド周波数の周波数差Δfは、次の式(3)で示される。
Δf=f1−f2=2Vcosθ/L ・・・(3)
式(3)によれば、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfとから、流体の流速Vを求めることができる。そしてその流速Vから、流量を決定することができる。
このような超音波流量計では高い精度が求められる。精度を高めるためには、超音波送受波器内の圧電体の超音波送受波面に形成される音響整合部材の音響インピーダンスが重要となる。音響整合部材は、特に、超音波送受波器が気体に超音波を放射(送波)する場合、および、気体を伝搬してきた超音波を受け取る場合に重要な役割を果たす。
以下、図11を参照しながら、音響整合部材の役割を説明する。図11は、従来の超音波送受波器103の断面構成を示している。
図示されている超音波送受波器103は、圧電体104と、圧電体103の一方の面に接合された音響整合部材105とを備えている。音響整合部材105は、エポキシ系の接着剤によって圧電体105の一方の面に接着されている。
圧電体104の超音波振動は、接着層を介して音響整合部材105に伝わる。この後、超音波振動は、音響整合部材105と接する気体(超音波伝搬媒体)に音波として放射される。
音響整合部材105の役割は、圧電体の振動を効率良く気体に伝搬させることにある。以下、この点をより詳細に説明する。
物質の音響インピーダンスZは、その物質中の音速Cと物質の密度ρとを用いて次の式(4)によって定義される。
Z=ρ×C ・・・(4)
超音波の放射対象となる気体の音響インピーダンスは、圧電体の音響インピーダンスと大きく異なっている。一般的な圧電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のピエゾセラミックスの音響インピーダンスZ1は、2.9×107kg/m2/秒程度である。これに対して、空気の音響インピーダンスZ3は4.0×102kg/m2/秒程度である。
音響インピーダンスの異なる境界面では、音波が反射しやすく、境界面を透過する音波の強度が低下する。このため、圧電体と気体の間に、式(5)で示す音響インピーダンスZ2を持つ物質を挿入することが行われている。
Z2=(Z1×Z3)(1/2)・・・(5)
このような音響インピーダンスZ2をもつ物質を挿入すると、境界面での反射が抑えられ、音波の透過率が向上する事が知られている。
音響インピーダンスZ1を2.9×107kg/m2/秒、音響インピーダンスZ3を4.0×102kg/m2/秒とした場合、式(5)を満たす音響インピーダンスZ2は、1.1×105kg/m2/秒程度となる。1.1×105kg/m2/秒の値を持つ物質は、当然に、式(4)、すなわち、Z2=ρ×Cを満足しなければならない。このような物質を固体材料の中から見出すことは極めて難しい。その理由は、固体でありながら、密度ρが十分に小さく、かつ、音速Cが低いことが要求されるからである。
現在、音響整合部材の材料としては、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料が広く用いられている。また、このような音響整合部材に適した材料を作成する方法として、中空ガラス球を熱圧縮する方法や溶融材料を発泡させる等の方法などが、例えば特許文献1等などに開示されている。
しかし、これらの材料の音響インピーダンスは、5.0×105kg/m2/秒より大きい値であり、式(5)を満足しているとは言い難い。高感度な超音波送受波器を得るためには、音響インピーダンスを更に小さくした材料で音響整合部材を形成することが必要である。
このような課題を解決するため、本出願人は、式(5)を充分に満足する音響整合材料を発明し、特願平2001−056051号の明細書に開示している。この材料は、耐久性を付与した乾燥ゲルを用いて作製され、密度ρが小さく、かつ、音速Cも低い。乾燥ゲルなどの音響インピーダンスの極めて低い材料から形成した音響整合部材を備えた超音波送受波器は、気体との間で効率的かつ高感度で超音波の送受波を行うことができ、その結果、気体の流量を高い精度で測定することが可能になる。
また、本出願人は、乾燥ゲルを音響整合部材として用いた超音波センサの信頼性を改善するのに保護部を設けることが有効であることを見いだし、特願2002−194203号の明細書に開示している。
更に、本出願人は、任意の音響インピーダンスを有する乾燥ゲルからなる単層あるいは多層の音響整合部材を備えた超音波送受波器およびその製造方法を特願2002−370421号の明細書に開示している。
特許第2559144号(特開平2−177799号公報)
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明による超音波送受波器の第1の実施形態の一断面を示している。図示されている超音波送受波器1は、圧電体(電気機械変換素子)2と、圧電体2の両面に設けられた一対の電極3a、3bと、電極3aを介して圧電体2の主面(超音波送受波面)に接合された整合部材ケース4と、整合部材ケース4の内側に形成された音響整合部材5とを備えている。
圧電体2は、圧電性を有する材料から形成され、厚さ方向(図1の上下方向)に分極されている。圧電体2の上面側に設けられた電極3aと下面側に設けられた電極3bとの間に電圧信号が印加されると、電圧信号に基づいて圧電体2が伸縮し、圧電体2の超音波送受波面から超音波が放射されることになる。この超音波は、整合部材ケース4の底面部分、および整合部材ケース4の内部に形成された音響整合部材5を介して、超音波の伝搬媒体(例えば気体)6へ放射される。一方、伝搬媒体6を伝播してきた超音波は、音響整合部材5および整合部材ケース4の底面部分を介して圧電体2へ達し、電極3a、3bの間に電圧信号を発生させる。このように本実施形態の超音波送受波器1は、1つで超音波の送信および受信の両方を行うことができる。
本実施形態で用いる圧電体2の材料は任意であり、公知の圧電性材料を用いることができる。また、圧電体2の代わりに、電歪体を用いてもよい。電歪体を用いる場合にも、その材料は任意であり、公知の材料を用いることができる。また、電極3a、3bも公知の導電材料から形成される。
音響整合部材5は、圧電体2で発生した超音波を伝搬媒体6へ効率よく伝搬させる役割を果たすとともに、伝搬媒体6を伝搬してきた超音波を効率よく圧電体2へ伝える役割を果たす。本実施形態の音響整合部材5は、小径粒子および乾燥ゲルの複合体である第1音響整合層5aと、第1音響整合層5a上に形成された乾燥ゲルからなる第2音響整合層5bとを有している。各音響整合層5a、5bの厚さは、送受信する超音波の波長の1/4程度となるように設定されている。
本実施形態では、ガラスビーズからなる小径粒径50を含む乾燥ゲルを第1音響整合層5aとして用い、乾燥ゲルからなる第2音響整合層5bと圧電体2との間に配置しているため、気体との間で超音波の送受波を効率的な行なうのに適した音響インピーダンスを示す音響整合部材5を得ることができる。第1音響整合層5aを多孔質セラミックス材料などから形成する場合に比べて、作製工程が簡単であるため、本実施形態の超音波送受波器は量産に適している。
以下、本実施形態の超音波送受波器1を製造する方法を説明する。
まず、送信および/または受信の対象とする超音波の波長に合わせた圧電体2を用意する。圧電体2としては、圧電セラミックスや圧電単結晶など圧電性の高い材料が好ましい。圧電セラミックとしては、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸鉛などを用いることができる。また圧電単結晶としては、チタン酸ジルコン酸鉛単結晶、ニオブ酸リチウム、水晶などを用いることができる。
本実施形態では、圧電体2としてチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスを用い、送受波する超音波の周波数を500kHzに設定している。このような超音波を圧電体2が効率よく送受波できるようにするため、圧電体2の共振周波数を約500kHzに設計する。
圧電体2は、その厚さを超音波の波長の1/2の大きさに設定したときに強く共振し、超音波の送受信効率が良くなる。チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスの音速は約3800m/秒であるので、圧電体2における周波数が500kHzの超音波の波長は、7.6mmとなる。このため、本実施形態では、厚さが約3.8mmで、直径が12mmの円柱形状を有する圧電体2を用いる。
圧電体2の上下両面には、焼付けによる銀製の電極3a、3bが設けられ、圧電体2は、この方向に分極処理されている。
このような圧電体2の一方の主面に対しては、後に詳しく述べる方法で内部に音響整合部材5が作製されたステンレス製の整合部材ケース4を接合する。
整合部材ケース4には、以下のような特性が必要とされる。
1、ゲル原料液をその内側部分に保持できること
2、ゲル原料液に対して、化学的に安定であること
3、圧電体と接着が可能であること
4、音響的な阻害になりにくいこと。
ステンレスは、以上の1〜3の条件を満足している。そして、整合部材ケース4の底面部分を構成する素材の音速を考慮して、その部分の厚さを適切に設定すれば、音響的な阻害とならないようにすることができるので、第4の条件をも満足させることができる。
整合部材ケース4の底面部分の厚さは、送受信する超音波の波長の1/20以下に設定することが好ましい。この部分の厚さが、送受信する超音波の波長の1/20より大きいと、感度の低下や波形に対して、大きな影響を与えることとなるからである。
ステンレスの音速は約5500m/秒であるため、500kHzの超音波のステンレス中におやける波長は約11mmとなる。よって、整合部材ケース4の厚さを0.55mm以下に設定することにより、整合部材ケース4が超音波送受信器の性能に与える影響が少なくなる。
整合部材ケース4の底面部分の厚さは、送受信する超音波の波長の1/40以下とすることが更に好ましい。本実施形態の整合部材ケース4は、金属のプレス成型によって作製しやすいように、0.2mmの厚さに設定しているため、音響的阻害を抑制するとともに、大量生産に適している。この0.2mmの厚さは、送受信する超音波波長の約1/55であり、超音波送受信器の性能に与える影響は極めて少ない。
なお、本実施形態では、整合部材ケース4をプレス成型されたステンレスから形成しているが、上記1〜4の条件を満足する材料であればステンレスに限定されず、他の材料から形成することができる。コストや使用環境などを総合的に勘案して、他の材料(セラミックや他の金属)を適宜選択すればよい。
以下、図2(a)から(c)を参照しながら、本実施形態における音響整合部材5の作製方法を説明する。
まず、上述した材料や厚さの要件を具備する整合部材ケース4を用意する。整合部材ケース4の底面のサイズは、圧電体の主面のサイズ(直径12mm)と略等しく設定されている。整合部材ケース4の深さは、後に説明する工程でゲル原料液が整合部材ケース4の内部から溢れたり、形成された音響整合部材5に手が触れたりすることが無いように、形成すべき音響整合部材5の厚さよりも大きく設定される。本実施形態では、音響整合部材5の厚さが1.15mmであるので、整合部材ケース4の深さを5mmに設定している。
整合部材ケース4の内部と音響整合部材5との間の密着性が良くなるように、整合部材ケース4の内面をアセトンで超音波洗浄した後、整合部材ケース4の内側にプラズマ処理を行って水酸基を付与することが好ましい。水酸基をケース内面に付与することにより、乾燥ゲルとケース4とが化学的に結合する。
次に、図2(a)に示すように、後に充填するゲル原料液に沈降する密度を有する小径粒子50を整合部材ケースの中に所定量入れ、最密充填に近くなるようにセットする。この際、安定的に最密充填するように超音波振動を整合部材ケース4に印加することが好ましい。本実施形態では、小径粒子として粒子径約50μmのガラスビーズを用いている。小径粒子50の直径が大きすぎると、超音波の送受信に対して阻害要因となる。このため、本実施形態で用いる小径粒子50の粒径は、100μm以下の範囲に設定することが好ましい。
整合部材ケース4に入れる小径粒子50の量は、形成すべき第1音響整合層5aの厚さ(すなわち、「小径粒子/乾燥ゲル複合体」の厚さ)によって決まる。本実施形態で作成する小径粒子/乾燥ゲル複合体の音速は約2000m/秒であるので、第1音響整合層5aの厚さは、送受信する超音波の波長の約1/4となるように約1.0mmとする。なお、図では、小径粒子50の大きさを実際のスケールを無視して大きく記載されている。図2(a)では、2層状に配列した小径粒子50が記載されているが、現実には、粒径50μm程度の小径粒子50が数十の層構造を形成している。
なお、球体をある空間に充填する場合の充填率は面心立方格子構造の状態が最も密に充填された状態である。このような充填状態にある場合、第1音響整合層5aの体積の約74%が小径粒子50で充填されていることとなる。しかし、実際には、このように高い充填率を実現することは殆ど不可能であるため、本実施形態では小径粒子50の充填率は60%程度になる。
次に、図2(b)に示すように、整合部材ケース4の内部にゲル原料液60を静かに注入する。この際、小径粒子50は互いに結合していないため、できるだけ、図に示す層状構造が崩れないようにする必要がある。ゲル原料液60は、形成される乾燥ゲルの密度が0.25×103kg/m3、音速が300m/sとなるように調合する。
ゲル原料液60は、小径粒子50を完全にゲル原料液60に浸漬させ、更に第2音響整合層5bを構成することになるゲル単体の層(第2音響整合層5b)の厚さを考慮して注入する。本実施形態では、第2音響整合層5bとして、音速300m/sの乾燥ゲルを形成するため、超音波波長の約1/4となる150μmの厚さの第2音響整合部材5bを形成できるようにゲル原料液60の注入量を設定する。ゲル原料液60を整合部材ケース4の内部に充填した後、更に気泡の除去、小径粒子50の再充填のため超音波振動を印加することが好ましい。
なお、ゲル原料液60の体積は、ゲル化及び乾燥による収縮のため、乾燥工程後には乾燥前の90%程度に減少する。このため、本実施形態では、最終的に形成される音響整合部材5の厚さが1.15mmとなるように、ゲル原料液60の滴下量を約95μlに設定することができる。ゲル原料液60は、トラメトキシシラン、エタノール、アンモニア水が1:1:4(モル比)で配合されたものを用いることができる。ゲル原料液60の量は、用いる圧電体2や音響整合部材5の大きさ、超音波の周波数に基づいて適宜最適化される。
内部にゲル原料液60を滴下した整合部材ケース4を、50℃に設定された恒温槽中の水平台上で約1日放置することにより、整合部材ケース4の内部でゲル原料液60をゲル化させ、湿潤ゲルを形成する。このとき、図示していない多数の整合部材ケース4を1つトレイ上に配列してバッチ処理を行えば、効率的である。以下の処理も同様である。
こうして形成した湿潤ゲルに対して、更に疎水化処理を行う。疎水化処理は、湿潤ゲルを形成した後、ジメチルジメトキシシラン/エタノール/10重量%アンモニア水を、重量比で45/45/10の割合で混合して得られた疎水化液に、40℃で、約1日間、浸漬することによって行う。この疎水化処理は本発明に必須の処理ではないが、乾燥ゲルの安定化のため行うことが好ましい。
最後に、湿潤ゲルを大気中で乾燥し、図2(c)に示すように、第1音響整合部材5aおよび第2音響整合部材5bを得ることができる。
本実施形態の製造方法によれば、ゲル原料液60をゲル化(固化)させることにより、小径粒子50の相対位置関係を固定することができる。このため、小径粒子50および乾燥ゲルからなる第1音響整合層5aと、乾燥ゲルから構成される第2音響整合層5bとを同時に形成でき、1度のゲル化工程によって2層構造の音響整合部材5を形成できる。
ガラスビーズからなる小径粒子50の真密度は約2.2×103kg/m3であり、第1音響整合層5aにおける充填率が60%であるため、第1音響整合層5aの密度は約1.4×103kg/m3になる。第1音響整合層5aに含まれる小径粒子50は相互に接触しているのみで、本質的には粒子同士が接合していない。このため、音速が比較的遅く、空中用超音波送受波器の音響整合層として好適に用いられ得る。このため、本実施形態の超音波送受波器によれば、従来の超音波送受波器と比較して、約10倍の送受信感度を得ることができる。
なお、本実施形態で形成する乾燥ゲルは、密度ρと音速Cの積(ρ×C)で規定される音響インピーダンスを極めて小さくすることが可能な材料であり、空気などの気体への超音波の送受波効率を極めて高くすることができる。
乾燥ゲルは、ゾルゲル反応によって形成される多孔質体である。より具体的には、ゲル原料液の反応によって固体化した固体骨格部を有する。まず、この固体骨格部が溶媒を含んだ湿潤ゲルが形成され、その後、乾燥によって溶媒を除去することにより、最終的な乾燥ゲルが得られる。この乾燥ゲルは、数nm〜数μm程度の固体骨格部を有し、この固体骨格部の間に平均細孔直径が1nm〜数μm程度の範囲にある連続気孔が形成された多孔質体である。
乾燥ゲルは、密度の低い状態では、固体部分を伝搬する音速が極端に小さくなるとともに、細孔によって多孔質体内の気体部分を伝搬する音速も極端に小さくなるという性質を有する。そのため、密度の低い状態では音速が500m/秒以下の非常に遅い値を示し、極めて低い音響インピーダンスを示す。特に、固体骨格部および細孔径が数nm程度と小さい場合には、極めて遅い音速を有する多孔質体が得られる。また、ナノメートルサイズの細孔部では、気体の圧損が大きいため音響整合部材として用いた場合に、音波を高い音圧で放射できるという特徴も有する。
このように有利な性能を有する乾燥ゲルであるが、強度が低いため取り扱いが困難であるという問題を有している。このため所望の形状への加工や、取り扱いの際の衝撃、あるいは他の部品との接合の際の加圧により、破損してしまうことがある。また、破損しなくても、マイクロクラックが生じて初期の性能には変化が見られない場合でも、長期の使用や、熱的な衝撃の繰り返しによりクラックが増大して、超音波送受波器の性能が劣化してしまうことがある。更に、安定化のために疎水化処理を行った乾燥ゲルは、その撥水性のため接着が困難であるか、ほとんど不可能である。
このため、製造の歩留まりを向上させ、超音波送受波器の信頼性を向上させるためには、形成後の乾燥ゲルに対しては加工を行わず、乾燥ゲルをハンドリングするときや超音波送受波器の組み込む際にも乾燥ゲルに応力が加わらないようにすることが望ましい。
本実施形態では、このように機械的強度の低い乾燥ゲルを用いて、信頼性の高い超音波送受波器を実現するため、整合部材ケース4を採用し、ケース4の内部で乾燥ゲル層を形成している。本実施形態では、整合部材ケース4と音響整合部材5とが一体化した複合体を作製した後、その複合体を圧電体2に接合するため、乾燥ゲルに加工を行なう必要がなく、また、音響整合部材5をハンドリングする際にも乾燥ゲルには直接触れることがない。更に、音響整合部材5を圧電体2に固定する工程でも応力が乾燥ゲルに殆ど印加されないため、初期のマイクロクラックが乾燥ゲルに形成されないという利点もある。この結果、本実施形態の構成によれば、超音波送受波器を長期間使用する場合や、熱的な衝撃が繰り返し印加されるような環境においても、音響整合部材5の破損を防止して、長期信頼性を確保することができる。
音響整合部材5を構成する乾燥ゲルの材質としては、無機材料、有機高分子材料などを用いることができる。無機材料の固体骨格部としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタンなどを用いることができる。また有機材料の固体骨格部としては、一般的な熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール硬化樹脂、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチルなどを用いることができる。
次に、上述の方法で作製した整合部材ケース/音響整合部材の複合体を、図1に示すように圧電体2に接合する。接合は、エポキシ系接着剤の接着により行う。この接合時にも、音響整合部材5である乾燥ゲルに大きな力が加わらないように、圧電体2には印刷によって接着剤膜を形成し、その上に整合部材ケース/音響整合部材の複合体を設置する。この後、整合部材ケース4の折り曲げられている上部端を、0.1kg/cm3で加圧し、120℃中で2時間硬化させる。圧電体2と整合部材ケース4との間に形成された接着層の厚さは例えば約30μmである。
このようにして形成した超音波送受波器は、従来のガラスバルーンをエポキシ樹脂で固めた音響整合部材を有する超音波送受波器に比べ、約7倍の高い超音波の送受信が可能となる。
なお、本実施形態では、整合部材ケース4の内側に2層構造を有する音響整合部材5を形成した後に、整合部材ケース/音響整合部材からなる複合体を圧電体2に接合して超音波送受波器1を製造しているが、圧電体2に整合部材ケース4を接合した後に音響整合部材5を形成しても良い。このようにする場合は、整合部材ケース/圧電体の複合体を取り扱うことになるため、ゲル層を形成する際に扱う部品が大きくなるなどの量産上の課題があるが、接着の際の応力が発生しないため、更に強度の低い乾燥ゲルを用いる場合などには好適である。
(実施形態2)
次に、図3を参照しながら、本発明による超音波送受波器の第2の実施形態を説明する。
本実施形態の超音波送受波器では、音響整合部材5が異なる音響インピーダンスを有する3層構造を有している。より詳細には、小径粒子50を含む層以外の部分が2層構造の乾燥ゲルによって構成されている。この点を除けば、本実施形態の超音波送受波器1は、実施形態1における超音波送受波器の構成と同様の構成を有している。
音響整合部材は、音響インピーダンスの不整合による音波の内部反射を抑えて、効率よく圧電体2から超音波伝搬媒体へ超音波を放射させる役割を果たす。単一の周波数を有する超音波(すなわち連続波の超音波)を送受波する場合には、その周波数に合わせた厚さの均一な音響インピーダンスを有する音響整合部材を1層だけ設けるだけで十分である。
しかし、通常の超音波送受波器では、パルスまたはバースト状の超音波を送受波することが一般的である。パルスまたはバースト状の超音波は、単一の周波数成分でなく、広範囲の周波数成分を含んでいる。このような超音波の送受波を高感度に行うためには、圧電体2と超音波伝搬媒体の間で、音響整合部材5の音響インピーダンスを徐々に変化させることが好ましい。音響インピーダンスを徐々に変化させるには、音響整合部材5を本実施形態のように多層化し、構成層の音響インピーダンスを徐々に変化させればよい。
本実施形態では、音響インピーダンスの異なる音響整合層5a、5b、5cを形成する際、ゲル化工程を2段階に分け、第1ゲル化および第2ゲル化工程を行なう。本出願人は第1、第2ゲル化工程を用いて、音響インピーダンスの異なる多層の乾燥ゲル層を形成する方法を特願2002―370421に開示しており、本実施形態でも同じ方法で多層の乾燥ゲル層を形成することができる。
第1のゲル化工程では、第1の実施形態について説明したように、第1音響整合層5aと第2音響整合層5bが形成され、第2ゲル化工程では、第2音響整合層5bの上に第3音響整合層5cが形成されることになる。
小径粒子50と乾燥ゲルの複合体からなる部分と、更にその上に形成された2層の乾燥ゲルとを含む音響整合部材を用いることにより、従来のガラスバルーンを音響整合部材として用いた超音波送受波器よりも優れた送受波感度を得ることができる。
本実施形態では、音響整合層5b、5cが同じ酸化シリカから形成されているため、剥離などの不良が起こりにくく、歩留まり良く製造された。また、使用時においても長期信頼にたる動作を継続することができる。本実施形態の音響整合部材5は、3層構造を有しているが、音響整合部材は4層以上の多層構造を有していても良い。
(実施形態3)
図4を参照しながら、本発明の第3の実施形態を説明する。
本実施形態の超音波送受波器は、図4に示すように、整合部材ケース4の上部における屈曲部に取り付けられたセンサカバー7を有している。この点以外では、本実施形態の超音波送受波器は、実施形態1における超音波送受波器と同様の構成を有している。
センサカバー7は、メッシュ状の前面保護部7aと、前面保護部7aを整合部材ケース4に固定する取付け部7bとから構成されている。前面保護部7aのメッシュ構造の網目の大きさは、流体の流れを乱さないようにしつつ、超音波の伝搬を阻害しないように、例えば20〜1000μm程度の大きさに設定されている。本実施形態では、センサカバー7はステンレスから形成されており、整合部材ケース4と取付け部7bとの接合、および前面保護部7aと取付け部7bとの接合は、いずれも、溶接によって行われている。
図4に示すように、音響整合部材5の表面をセンサカバー7で保護することにより、超音波送受波器1の取り扱いの際に、音響整合部材5に触れることが無くなる。そのため、超音波送受波器1に不良要因を与えることなく、その後の作業を行うことができる。また、センサカバー7を取り付けることにより、整合部材ケース4の強度が高まるため、大きな力が整合部材ケース4に加わっても、ケース変形が抑制される。このため、整合部材ケース4からの音響整合部材5の剥離を防止して、信頼性を高めることができる。
センサカバー7の形状は、図4に示すものに限定されない。例えば、図5に示すように、前面保護部7aが、音響整合部材5の表面に立てた法線に対して角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜していてもよい。前面保護部7aに、このような傾斜を与えると、後に図8を参照しつつ説明する超音波流量計に用いる場合に特に好ましい効果が得られる。すなわち、2つの超音波送受波器が対向している面を結ぶ線と流体が流れる方向とが形成する角と、前面保護部7aの傾斜角θとを等しく設定することにより、測定部における流体の流れを乱すこと無く、流量を正確に測定することが可能になる。
(実施形態4)
図6を参照しながら、本発明の第4の実施形態を説明する。
本実施形態の超音波送受信波器は、圧電体2を外部から遮蔽する構造支持体8を更に備えている。この点以外において、本実施形態の超音波送受信波器は、実施形態1における超音波送受波器と同様の構成を有している。
構造支持体8は、圧電体2を収容する容器8aと、この容器8aを封止する底板8bとを備えている。底板8bには、図示していない回路と圧電体2とを接続するためのリード部8cが設けられている。リード部8cを介して電極3a、3bに信号電圧が供給される。
圧電体2は、容器8aの平坦部分に接合され、容器8aの円筒状側面部が圧電体2を取り囲んでいる。容器8aの側面部の端は、外側に折れ曲がり、底板8bと接合されている。このような構造支持体8は、例えば、ステンレスをプレス加工することによって容易に作製され縷々。
圧電体2を外部から遮蔽する構造支持体8を用いることにより、超音波送受波器1の取り扱いが更に容易となる。また、構造支持体8の内部を不活性ガスで満たせば、流量測定の対象とする流体から圧電体2を遮断することができるため、可燃性ガスの流量を測定する際に安全性を高めることが可能になる。動作時に圧電体2の電極3a、3bには電圧が印加されるため、可燃性ガスなどと圧電体2が接すると、可燃性ガスに引火する危険性もある。しかし、構造支持体8を密閉性の容器から構成し、圧電体2が設けられている内部空間を外部の流体などから遮断することにより、そのような引火を防止し、可燃性ガスなどに対しても安全に超音波を送受波することができる。
また、可燃性ガス以外の流体であっても、圧電体2と反応し、圧電体2に特性の劣化を与える可能性のある媒体が存在する。そのような媒体との間で超音波を送受波する場合でも、本実施形態によれば、圧電体2の劣化を防止して、長期間に渡って信頼性の高い動作を実現することが可能となる。
構造支持体8の材料は、ステンレスなどの金属材料に限定されず、セラミック、ガラス、樹脂などから目的に応じた材料が選択される。本実施形態では、外部の流体と圧電体2を確実に分離し、構造支持体8に何らかの機械的な衝撃が加わったとしても、圧電体2と外部流体との接触を防止するような強度を与えるため、金属材料から構造支持体13を作製している。
安全な気体に対して超音波の送受波を行う場合には、コスト低減を目的として、樹脂などの材料からなる構造支持体8を用いても良い。
構造支持体8と整合部材ケース4との接合は、整合部材ケース4の内部に音響整合部材5を形成したあとに行うことが好ましい。乾燥ゲルからなる音響整合部材5を形成する工程では、ケースの熱容量を小さくし、温度分布を一様化することが好ましいからである。整合部材ケース4と構造支持体8とを接合した後に乾燥ゲルの形成を行うと、整合部材ケース4および構造支持体8が全体として大きな熱容量を持つため、乾燥ゲル中に密度や音速の不均一な部分が形成される可能性がある。このため、整合部材ケース4を構造支持体8に取り付ける前に、ケース4内で乾燥ゲルを完成しておくことが好ましい。
(実施形態5)
前述の各実施形態では、底面が平坦な整合部材ケース4を用いているが、整合部材ケース4の底面には凹凸が設けられていても良い場合がある。図7(a)は、底面に凹凸が存在する整合部材ケース4と圧電体2との組み合わせの断面を示しており、図7(b)は、その上面図である。
図7(a)および(b)に示すような凹凸がケース4の底面に設けられている場合、ケース4の底面と圧電体2との間に隙間が形成される。この隙間の空間内に接着剤を充填させることによって、ケース4と圧電体2とを接合すると、接着力が増加するという利点がある。この底面の凹凸が超音波の波長に比べて充分に小さい場合、音響的な阻害要因とはならない。
一方、ケース4の底面部に形成されている凹凸のサイズを大きくして、接着層の最大厚さが超音波の波長に比べて無視できないサイズに設定すると、その部分における超音波の放射音響パワーが低下する。図7(b)に示すような同心円状の凹凸を整合部材ケース4の底面部に形成することにより、近距離における超音波の干渉による音場の乱れを防止することが可能となる利点がある。
本実施形態で好適に用いられる整合部材ケース4の形状は、音響整合部材を内部に保持して圧電体の超音波送受波面に固定され得る底面部と、この底面部から超音波放射方向に突出する側面部とを有しており、この側面部は音響整合部材の側面全体をカバーしている。このような構成を有している限り、図1に示すケース4から高い自由度で改変することが可能である。
(実施形態6)
図8を参照しながら、本発明による超音波流量計の実施形態を説明する。
本実施形態の超音波流量計は、流量測定部51として機能する管内を被測定流体が速度Vで流れるようにして設置される。流量測定部51の管壁52には、本発明の超音波送受波器から形成した超音波送受波器1aおよび1bが相対して配置されている。
測定シーケンスのある時点では、超音波送受波器1aが超音波送波器として機能し、超音波送受波器1bを超音波受波器として機能するが、他の時点では、超音波送受波器1aが超音波受波器として機能し、超音波送受波器1bを超音波送波器として機能する。この切り替えは切替回路53によって行われている。
超音波送受波器1aおよび1bは、切替回路53を介して、超音波送受波器1aおよび1bを駆動する駆動回路54と、超音波パルスを検知する受波検知回路55とに接続されている。受波検知回路55の出力は、超音波パルスの伝搬時間を計測するタイマ56に送られる。
タイマ56の出力は、流量を演算する演算部57に送られる。演算部57では、測定された超音波パルスの伝搬時間に基づいて、流量測定部51内を流れる流体の速度Vが計算され、流量が求められる。駆動回路54およびタイマ56は、制御部58に接続され、制御部58から出力された制御信号によって制御される。
以下、この超音波流量計の動作をより詳細に説明する。
被測定流体として、例えばLPガスが流量測定部51を流れる場合を考える。超音波送受波器1aおよび1bの駆動周波数を約500kHzとする。制御部58は、駆動回路54に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ56の時間計測を開始させる。
駆動回路54は送波開始信号を受けると、超音波送受波器1aを駆動し、超音波パルスを送波する。送波された超音波パルスは流量測定部51内を伝搬して、超音波送受波器1bで受波される。受波された超音波パルスは超音波送受波器1bで電気信号に変換され、受波検知回路55に出力される。
受波検知回路55では受波信号の受波タイミングを決定し、タイマ56を停止させる。演算部57は、伝搬時間t1を演算する。
次に、切替回路53により、駆動回路54および受波検知回路55に接続する超音波送受波器1aおよび1bを切り替える。そして、再び、制御部59は駆動回路54に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ56の時間計測を開始させる。
伝搬時間t1の測定と逆に、超音波送受波器1bで超音波パルスを送波し、超音渡送受波器1aで受波し、演算部57で伝搬時間t2を演算する。
ここで、超音波送受波器1aと超音渡送受波器1bの中心を結ぶ距離をL、LPガスの無風状態での音速をC、流量測定部51内での流速をV、非測定流体の流れの方向と超音波送受波器1aおよび1bの中心を結ぶ線との角度をθとする。
伝搬時間t1、t2は、それぞれ、測定によって求められる。距離Lは既知であるので時間t1とt2を測定すれば流速Vが求められ、その流速Vから流量を決定することができる。
このような超音波流量計において、伝搬時間t1、t2はゼロクロス法と呼ばれる方法によって測定される。この方法では、図9(a)に示すような受波波形に対して、適切なスレッショルドレベルを設定し、そのスレッショルドレベルを超えて、次に振幅が0になる点の時間を計測する。
受波信号のS/Nが悪い場合、ノイズレベルによっては振幅が0となる点が時間的に変動するため、正確にt1、t2を測定することが出来ず、正確な流量を測定することが困難になる場合がある。
このような超音波流量計の超音波送受波器として、本発明の超音波送受波器を用いると、受波信号のS/Nが向上して、t1、t2を高い精度で測定することが可能となる。
また本実施形態では、超音波送受波器1a、1bの配置として、図8に示すような所謂Zパス型配置を採用しているが、超音波送受信器1a、1bの配置は、これに限定されない。例えば、図9(a)〜(c)に示すように、Vパス、Wパス、Iパスなどの配置形態を採用しても良い。
以上の各実施形態では、音響整合部材5の上面は、乾燥ゲル層が露出し、伝播媒体6と直接的に接触しているが、この面を厚さ10μm程度以下の保護膜でカバーしてもよい。このような保護膜は、大気と乾燥ゲルとの間の直接的な接触を避け、乾燥ゲルの性能を長期に渡って保持するのに寄与する。保護膜は、例えばアルミニウム、酸化ケイ素、低融点ガラス、高分子などの材料からなる膜(単層に限定されない)によって構成され得る。保護膜の形成は、スパッタリングやCVD法などの公知の薄膜堆積技術によって行うことができる。
また、上記の各実施形態では、一定の粒径を有するガラスビーズを小径粒子50として含む第1音響整合層5aを形成していているが、小径粒径50のサイズは、単一または複数の大きさにピークを有する粒度分布を有していてもよい。たとえは、粒径の異なる2種類の大きさの小径粒径を混在させることにより、充填率を向上させることが可能である。
小径粒子の材料はガラスに限定されず、求める音響インピーダンスを実現する上で好適な材料が適宜選択されえる。