JP4153796B2 - 超音波送受波器および超音波流量計 - Google Patents

超音波送受波器および超音波流量計 Download PDF

Info

Publication number
JP4153796B2
JP4153796B2 JP2003006853A JP2003006853A JP4153796B2 JP 4153796 B2 JP4153796 B2 JP 4153796B2 JP 2003006853 A JP2003006853 A JP 2003006853A JP 2003006853 A JP2003006853 A JP 2003006853A JP 4153796 B2 JP4153796 B2 JP 4153796B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
matching layer
ultrasonic
acoustic matching
protective
piezoelectric body
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003006853A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004219248A (ja
Inventor
英知 永原
卓 橋田
雅彦 橋本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2003006853A priority Critical patent/JP4153796B2/ja
Publication of JP2004219248A publication Critical patent/JP2004219248A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4153796B2 publication Critical patent/JP4153796B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Volume Flow (AREA)
  • Transducers For Ultrasonic Waves (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響整合層を有する超音波送受波器およびその製造方法、ならびに、当該超音波送受波器を備えた超音波流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超音波が伝搬路伝達する時間を計測し、流体の移動速度を測定して流量を計測する超音波流計がガスメータ等に利用されつつある。図1は、このようなタイプの超音波流量計の主要部断面図構成を示している。超音波流量計では、流量を測定すべき被測定対象流体が管内を流れるように配置されている。管壁102には、一対の超音波送受波器101a、101bが相対して設置されている。超音波送受波器101a、bは、電気エネルギー/機械エネルギー変換素子として圧電セラミック等の超音波送受波器を用いて構成されており、圧電ブザー、圧電発振子と同様に共振特性を示す。
【0003】
なお、図1に示されている状態では、超音波送受波器101aが超音波送波器として用いられており、超音波送受波器101bが超音波受波器として用いられている。
【0004】
超音波送受波器101aの共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を超音波送受波器101a内の圧電体(超音波送受波器)に印加すると、超音波送受波器101aは超音波送波器として機能し、流体中に超音波を放射する。放射された超音波は、経路L1に伝搬して、超音波受波器101bに到達する。このとき、超音波送受波器101bは受波器として機能し、超音波を受けて電圧に変換する。
【0005】
次に、今度は超音波送受波器101bが超音波送波器として機能し、超音波送受波器101aが超音波受波器として機能する。すなわち、超音波送受波器101bの共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を超音波送受波器101b内の圧電体に印加することにより、超音波送受波器101bから流体中に超音波を放射させる。放射された超音波は、経路L2を伝搬して、超音波送受波器101aに到達する。超音波送受波器101aは伝搬してきた超音波を受けて電圧に変換する。
【0006】
このように、超音波送受波器101aおよび101bは、送波器としての機能と受波器としての機能を交互に果たすために、一般に超音波送受波器と総称される。
【0007】
図1に示す超音波流量計では、連続的に交流電圧を印加すると超音波送受波器から連続的に超音波が放射されて伝搬時間を測定することが困難になるので、通常はパルス信号を搬送波とするバースト電圧信号を駆動電圧として用いられる。
【0008】
以下、上記超音波流量計の測定原理をより詳細に説明する。
【0009】
駆動用のバースト電圧信号を超音波送受波器101aに印加することにより、超音波送受波器101aから超音波バースト信号を放射すると、超音波バースト信号は経路L1を伝搬してt時間後に超音波送受波器101bに到達する。経路L1の距離は、経路L2の距離と同様にLであるとする。
【0010】
超音波送受波器101bは、伝達して来た超音波バースト信号のみを高いSN比で電気バースト信号に変換することができる。この電気バースト信号を電気的に増幅して、再び、超音波送受波器101aに印加して超音波バースト信号を放射する。この装置を「シング・アラウンド型装置」と呼ぶ。
【0011】
また、超音波パルスが超音波送受波器101aから放射された後、超音波送受波器102bに到達するまでの時間を「シング・アラウンド周期」という。「シング・アラウンド周期」の逆数は「シング・アラウンド周波数」と呼ばれる。
【0012】
図1において、管の中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝搬方向の角度をθとする。超音波送受波器101aを超音波送波器、超音波送受波器101bを超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器101aから出た超音波パルスが超音波送受波器101bに到達する時間であるシング・アラウンド周期をt1、シング・アラウンド周波数f1とすれば、次式(1)が成立する。
【0013】
f1=1/t1=(C+Vcosθ)/L ・・・(1)
【0014】
逆に、超音波送受波器101bを超音波送波器として、超音波送受波器101を超音波受波器として用いたときのシング・アラウンド周期をt2、シング・アラウンド周波数f2とすれば、次式(2)の関係が成立する。
【0015】
f2=1/t2=(C−Vcosθ)/L ・・・(2)
【0016】
両シング・アラウンド周波数の周波数差Δfは、 次式(3)で示される。
【0017】
Δf=f1−f2=2Vcosθ/L ・・・(3)
【0018】
式(3)によれば、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfとから、流体の流速Vを求めることができる。そしてその流速Vから、流量を決定することができる。
【0019】
このような超音波流量計では、高い精度が求められる。精度を高めるためには、超音波送受波器内の圧電体の超音波送受波面に形成される音響整合層の音響インピーダンスが重要となる。音響整合層は、特に、超音波送受波器が気体に超音波を放射(送波)する場合、および、気体を伝搬してきた超音波を受け取る場合に重要な役割を果たす。
【0020】
以下、図2を参照しながら、音響整合層の役割を説明する。図2は、従来の超音波送受波器103の断面構成を示している。図示されている超音波送受波器103は、センサケース105の内側に固定された圧電体106と、センサケース105の外側に固定された音響整合層104とを備えている。音響整合層104は、エポキシ系の接着剤によってセンサケース105に接着されている。同様にして、圧電体106もセンサケースに接着されている。
【0021】
圧電体106の超音波振動は、接着層を介してセンサケース106に伝わり、更にもう一つの接着層を介して音響整合層104に伝わる。この後、超音波振動は、音響整合層104と接する気体(超音波伝搬媒体)に音波として放射される。
【0022】
音響整合層104の役割は、圧電体の振動を効率良く気体に伝搬させることにある。以下、この点をより詳細に説明する。
【0023】
物質の音響インピーダンスZは、その物質中の音速Cと物質の密度ρとを用いて次の式(4)によって定義される。
【0024】
Z=ρ×C ・・・(4)
【0025】
本明細書では、音響インピーダンスの単位を、[kg/m3]と[m/秒]の積である[kg/m2/秒]で表現することとする。
【0026】
超音波の放射対象となる気体の音響インピーダンスは、圧電体の音響インピーダンスと大きく異なっている。一般的な圧電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のピエゾセラミックスの音響インピーダンスZ1は、2.9×107kg/m2/秒程度である。これに対して、空気の音響インピーダンスZ3は4.0×102kg/m2/秒程度である。
【0027】
音響インピーダンスの異なる境界面では、音波が反射しやすく、境界面を透過する音波の強度が低下する。このため、圧電体と気体の間に、式(5)で示す音響インピーダンスZ2を持つ物質を挿入することが行われている。
【0028】
Z2=(Z1×Z3)1/2・・・(5)
【0029】
このような音響インピーダンスZ2をもつ物質を挿入すると、境界面での反射が抑えられ、音波の透過率が向上する事が知られている。
【0030】
音響インピーダンスZ1を2.9×107kg/m2/秒、音響インピーダンスZ3を4.0×102kg/m2/秒とした場合、式(5)を満たす音響インピーダンスZ2は、1.1×105kg/m2/秒程度となる。1.1×105kg/m2/秒の値を持つ物質は、当然に、式(4)、すなわち、Z2=ρ×Cを満足しなければならない。このような物質を固体材料の中から見出すことは極めて難しい。その理由は、固体でありながら、密度ρが十分に小さく、かつ、音速Cが低いことが要求されるからである。
【0031】
現在、音響整合層の材料としては、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料が広く用いられている。また、このような音響整合層に適した材料を作成する方法として、中空ガラス球を熱圧縮する方法や溶融材料を発泡させる等の方法などが、例えば特許文献1などに開示されている。
【0032】
しかし、これらの材料の音響インピーダンスは、5.0×105kg/m2/秒より大きな値であり、式(5)を満足しているとは言い難い。高感度な超音波送受波器を得るためには、音響インピーダンスの更に小さな材料から音響整合層を形成することが必要である。
【0033】
このような要望に応えるため、本出願人は、式(5)を十分に満足する音響整合材料を発明し、特願2001−056051号の明細書に開示している。この材料は、耐久性を付与した乾燥ゲルを用いて作製され、密度ρが小さく、かつ、音速Cも低い。このように音響インピーダンスが極めて低い乾燥ゲルなどの材料から形成した音響整合層を備えた超音波送受波器は、気体との間で効率的かつ高感度で超音波の送受波を行うことができる。その結果、気体の流量を高い精度で測定することのできる装置が実現する。
【0034】
しかしながら、乾燥ゲルのような音響インピーダンスの極めて低い材料は、機械的強度が低く、製造時の歩留まりや、使用時における信頼性に問題があった。このような問題を解決するため、本出願人は、音響整合層を保護する保護部を設けた超音波送受波器を特願2002−194203号明細書に開示している。
【0035】
【特許文献1】
特許第2559144号明細書
【0036】
【発明が解決しようとする課題】
超音波送受波器の十分な信頼性を得るため、あるいは超音波送受波器の大きさが制限されている場合には、乾燥ゲルからなる音響整合層を保護する保護部を、超音波を送受信する圧電体の上部に設けざるを得ない場合がある。
【0037】
このような場合には、保護部は超音波の高感度な送受信に対して阻害要因となり、感度を十分に高くすることが出来ないという問題を有していた。
【0038】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、乾燥ゲルなどの機械的強度が低く、音速が遅い材料を音響整合層として用いる場合に、製造の容易さや、高信頼性を確保できる保護部を、圧電体上に設けながらも、高感度な超音波の送受波を実現できる超音波送受波器およびその製造方法を提供することにある。
【0039】
本発明の他の目的は、上記の超音波送受波器を備えた超音波装置および、特に超音波流量計を提供することにある。
【0040】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波送受波器は、超音波の送波および/または受波を行う主面を有する圧電体と、前記圧電体の主面上に設けられた音響整合部材とを備えた超音波送受波器であって、前記音響整合部材は、第1音響整合部分と、前記第1音響整合部分の平均密度よりも低い平均密度を有する第2音響整合部分とを有しており、前記第1音響整合部分は、前記第2音響整合部分の側面と接触している。
【0041】
好ましい実施形態において、前記第1音響整合部は、前記第2音響整合部よりも厚く、前記圧電体の主面から放射され前記第2音響整合部分を透過して前記第1音響整合部分の上面と同一レベルの位置に到達した超音波の位相と、前記主面から放射され前記第1音響整合部分を透過して前記第1音響整合部分の上面に到達した超音波の位相とが略一致している。
【0042】
好ましい実施形態において、前記第1音響整合部分における超音波の波長をλ1としたとき、前記第1音響整合部分の厚さはk1・λ1の大きさ(k1は1/8以上1/3以下)を有し、かつ前記第21音響整合部分の厚さとは異なっている。
【0043】
好ましい実施形態において、前記第2音響整合部分は、N層の音響整合層(Nは1以上の整数)から構成されており、N層の音響整合層の各々は、各音響整合層における前記超音波の波長のk2倍の大きさ(k2は1/8以上1/3以下)を有している。
【0044】
好ましい実施形態において、前記第2音響整合部分の最外層に位置する音響整合層の厚さは、前記第2音響整合部分の最外層に位置する音響整合層における超音波の波長の約1/4である。
【0045】
好ましい実施形態において、前記第2音響整合部分のうち、前記圧電体の主面に最も近い位置に形成されている音響整合層は、前記第1音響整合部分の材料と同じ材料から構成されている。
【0046】
好ましい実施形態において、前記第2音響整合部分のうち、前記圧電体の主面に最も近い位置に形成されている音響整合層は、前記第1音響整合部分と一体的に形成されている。
【0047】
好ましい実施形態において、前記第2音響整合部分に含まれる少なくとも1層の音響整合層は、乾燥ゲルから形成されている。
【0048】
好ましい実施形態において、前記乾燥ゲルは、無機系材料からなる。
【0049】
好ましい実施形態において、前記乾燥ゲルは、撥水化された固体骨格部を有している。
【0050】
超好ましい実施形態において、音波送受波器を構成する部材のうち、前記音響整合部分に接する面の少なくとも一部が、粗面または多孔質である。
【0051】
好ましい実施形態において、超音波送受波器を構成する部材のうち、前記第2音響整合部分に接する面の少なくとも一部において、前記第2音響整合部分の一部が前記部材に浸透一体化している。
【0052】
好ましい実施形態において、前記第2音響整合部分の少なくとも一部は乾燥ゲルから形成されており、前記第1音響整合部分は前記乾燥ゲルよりも機械的強度の高い材料から形成されている。
【0053】
好ましい実施形態において、前記第1音響整合部分の少なくとも一部は、多孔質セラミックスから形成されている。
【0054】
好ましい実施形態において、前記第1音響整合部分の厚さは、前記圧電体の主面における位置に応じて変化している。
【0055】
好ましい実施形態において、前記第2音響整合部分の厚さは、前記圧電体の主面における位置に応じて変化している。
【0056】
本発明の超音波流量計は、被測定流体が流れる流量測定部と、前記流量測定部に設けられ、超音波信号を送受波する一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器の間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、前記計測部からの信号に基づいて流量を算出する流量演算部とを備えた超音波流量計であって、前記一対の超音波送受波器の各々が、上記いずれかの超音波送受波器である。
【0057】
好ましい実施形態において、前記超音波送受波器の圧電体は、前記被測定流体から遮蔽されている。
【0058】
好ましい実施形態において、前記被測定流体は、気体である。
【0059】
本発明の装置は、上記いずれかの超音波送受波器を備えている。
【0060】
本発明の超音波送受波器の製造方法は、(a)第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有し、前記第1および第2の面に電極が形成された圧電体を用意する工程と、(b)前記圧電体における前記第1および第2の面の少なくとも一方の側に第2音響整合部分を形成する工程と、(c)前記圧電体と前記第2音響整合部分とによって形成された空間内にゲル原料を供給する工程と、(d)前記ゲル原料液をゲル化させて湿潤ゲルを得る工程と、(e)得られた湿潤ゲルを乾燥させる工程とを含む。
【0061】
好ましい実施形態において、前記工程(c)は、(c1)前記空間内に第1のゲル原料を供給する工程と、(c2)前記第1のゲル原料液をゲル化させて第1の湿潤ゲル層を形成する工程と、(c3)前記第1の湿潤ゲル層の上に第2のゲル原料を供給する工程と、(c4)前記第2のゲル原料液をゲル化させて第2の湿潤ゲル層を形成する工程とを含み、前記工程(e)は、前記第1および第2の湿潤ゲル層を乾燥させることにより、前記第1および第2の湿潤ゲル層から、それぞれ、第1音響整合層および第2音響整合層を形成する工程とを含む。
【0062】
好ましい実施形態において、前記工程(c4)において、前記第1音響整合層の音響インピーダンスを変化させるように前記第1の湿潤ゲル層を改質する。
【0063】
本発明の超音波送受波器は、超音波の送波および/または受波を行う主面を有する圧電体と、前記圧電体の主面上に設けられた音響整合部材とを備えた超音波送受波器であって、前記音響整合部材は、第1音響整合部分と、前記第1音響整合部分の機械強度よりも低い機械強度を有する第2音響整合部分とを有しており、前記第1音響整合部分は、前記第2音響整合部分の側面と接触している。
【0064】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0065】
(実施形態1)
図3は、本発明による超音波送受波器の第1の実施形態を示す断面図である。本実施形態の超音波送受波器1は、圧電体2と、圧電体2の両面に設けられた電極3a、3bと、圧電体2上に電極3aを介して設けられた保護整合層(第1音響整合部)4と、圧電体2上に電極3aを介して設けられた音響整合層(第2音響整合部)5とを備えている。
【0066】
図4は、図3に示した超音波送受波器1の上面図である。図4からわかるように、本実施形態の超音波送受波器は、厚さ(高さ)の異なる保護整合層4と音響整合層5とが交互に同心円状に配置された構造を有している。
【0067】
本実施形態における圧電体2は、圧電性を有する材料から形成され、厚さ方向に分極されている。圧電体2の上下面に設けられた電極3a、3bに電圧が印加されると、電圧信号に基づいて圧電体2で超音波が発生し、保護整合層4および音響整合層5を介して超音波伝搬媒体(気体など)6へ放射される。また、超音波伝搬媒体6を伝播してきた超音波は、保護整合層4および音響整合層5を介して圧電体2へ伝播する。入射してきた超音波によって圧電体2は変形し、電極3aと電極3bとの間に電圧信号が発生する。
【0068】
圧電体2の材料は任意であり、種々の公知材料から形成したものを用いることができる。圧電体2の代わりに公知の電歪体を用いてもよい。電極3a、3bは好ましくは金属から形成されるが、金属以外の導電材料から形成されていても良い。
【0069】
保護整合層4および音響整合層5は、圧電体2で発生した超音波振動を伝搬媒体6へ効率よく伝搬させ、また、超音波伝搬媒体6を伝搬してきた超音波を効率よく圧電体2へ伝える機能を有している。
【0070】
本実施形態の音響整合層5は、好ましくは、乾燥ゲルから形成される。乾燥ゲルは、ゾルゲル反応によって形成される多孔質体であり、密度ρと音速Cとの積(ρ×C)で規定される音響インピーダンスを極めて小さくすることが可能な材料である。このため、乾燥ゲルから形成した音響整合層5を用いることにより、空気などの気体に対する超音波の送受波効率を極めて高くすることができる。
【0071】
乾燥ゲルは、湿潤ゲルを形成した後、この湿潤ゲルを乾燥することによって得られる。湿潤ゲルは、まず、ゲル原料液を用意し、このゲル原料液の反応によって湿潤ゲルを作製することができる。湿潤ゲルは、ゲル原料液の反応によって固体化した固体骨格部を有しており、この固体骨格部が溶媒を含んだ状態にある。
【0072】
湿潤ゲルを乾燥することによって得られる乾燥ゲルは、多孔質体であり、数nm〜数μm程度の固体骨格部の隙間に連続した気孔を有している。気孔の平均サイズは1nm〜数μm程度と極めて小さい。
【0073】
作製条件を調節して乾燥ゲルの密度を小さくしてゆくと、乾燥ゲルの固体部分における音速が極端に小さくなるとともに、細孔内の気体部分における音速も極端に小さくなる。そのため、乾燥ゲルの音速は、低密度状態で500m/秒以下の低い値を示し、極めて低い音響インピーダンスを示すことになる。特に固体骨格部および細孔径が数nm程度と小さいサイズを持つ乾燥ゲルは極めて低い音速を示す。また、ナノメートルサイズの細孔部では気体の圧損が大きいため、乾燥ゲルから音響整合層を形成した場合、音波を高い音圧で放射できる。
【0074】
後述する製造方法によれば、同じ原料を用いても製造プロセス条件を調節することにより、乾燥ゲルの音響インピーダンスを広い範囲内で任意に値に制御することができる。また、製造プロセス条件を変えることにより、密度が略同程度の大きさでありながら、音速だけを変化させた音響整合層を作製することも可能である。
【0075】
乾燥ゲルは、このような有利な特徴を有するが、機械的強度が低い。このため、製造歩留まりを高くすることが困難であり、使用時における信頼性も低かった。このように機械的強度の低い乾燥ゲルを保護する部材を設けることにより、製造歩留まりおよび信頼性が向上することを本出願人は特願2002−194203の明細書に開示している。
【0076】
上記出願の明細書では、保護部は超音波送受波器の製造歩留まり、あるいは使用時における信頼性を向上させるのに極めて有効であり、さらに音響整合層の厚さを高精度に制御しうるため、超音波送受波器の性能安定化に対して有効であることが開示されている。この明細書では、圧電体が超音波を放射または受け取る面(主面)上に保護部を設けると、その保護部が音響的な障害となり得ることが指摘され、保護部の位置を圧電体の主面の外側に配置することが好ましいと記載されている。上記出願では、音響整合層の材料とは異なる材料から形成される上記保護部の厚さが、音響整合層の厚さと略等しくなるように設定されている。このため、保護部と音響整合層との間で音速が異なり、音響整合層と略同じ厚さの保護部は音響整合層の役割をせず、実質的には超音波の送受信に対して阻害する要因となるからである。
【0077】
しかし、更に厳しい環境条件に対する信頼性の確保や、超音波送受波器の外径の制限などによっては、圧電体上部に保護部を設けざるを得ない場合がある。
【0078】
本実施形態では、圧電体の主面に、音響整合層5を保護する機能を果たす保護部(密度が相対的に高く、音響整合層5よりも機械的強度が高い材料から形成される)を有しながらも、超音波送受波器としての性能を損なわない構成を採用する。
【0079】
本実施形態では、圧電体2の主面に設けられた保護部の厚さを送受信する超音波の波長の約1/4に設定している。これにより、機械的強度が相対的に高い保護部も音響整合層として機能する。このため、本明細書では、この保護部を「保護整合層」と称する場合がある。このような構成を採用することにより、音響整合層を保護する保護部も音響整合層としての役割を果たすため、高感度な超音波送受波器を実現することができる。
【0080】
音響整合層としての機能を最もよく発揮する厚さは、超音波の波長の1/4である。一方、保護整合層4における音速と音響整合層5における音速は異なる。このため、保護整合層4の厚さL3と音響整合層5の厚さL1とは、図3に示されるように、異なる大きさを有している(L3>L1)。
【0081】
保護整合層4および音響整合層5の厚さがいずれも音速の1/4程度に設定されると、保護整合層4の厚さが音響整合層5の厚さと異なるため、音響整合層5の上面から放射された超音波と、保護整合層4の上面から放射された超音波が干渉する場合がある。高感度な超音波送受波器を実現するためには、それぞれから放射される超音波の位相関係が極めて重要となる。
【0082】
図5(a)は、保護整合層4の上面における超音波の波形を示し、図5(b)は、音響整合層5の上方において、保護整合層4の上面と同じレベルにおける超音波の波形を示している。なお、図5(b)における符号「ta」は、超音波が超音波伝搬媒体6を伝搬する時間を示している。各グラフにおける横軸の1目盛りは、超音波の周波数が500kHzのとき、約3μ秒である。
【0083】
音響整合層5の上面から放射された超音波は、気体などの超音波伝播媒体6を通って保護整合層4の上面と同じレベルに達する。このため、伝搬媒体6における音速や伝播媒体6のサイズL2によっては、音響整合層5の上方において、保護整合層4の上面と同じレベルにおける超音波の波形の位相が変化する。
【0084】
なお、図5(a)および(b)の信号波形は、保護整合層4および音響整合層5から放射される超音波の波長および振幅が等しいと仮定して求めたものである。
【0085】
保護整合層4の厚さL3および音響整合層5の厚さL1が、それぞれ、各層における超音波波長の1/4であるとき、保護整合層4の下面と上面との間を超音波が伝搬するに要する時間は、音響整合層5の下面と上面との間を超音波が伝搬するに要する時間に等しい。従って、音響整合層5の上面から放射された超音波が保護整合層4の上面と同じレベルの位置に達した超音波の位相は、保護整合層4を伝搬して保護整合層4の上面に達した超音波の位相に比べて、遅れている。この位相の遅れは、音響整合層5の上面から出た超音波が伝搬媒体6の中を距離L2だけ伝播する時間に対応している。
【0086】
送受信する超音波の周波数をf[秒-1]とすると、超音波の1波長に等しい距離だけ超音波が進むのに必要な時間は1/f[秒]である。超音波が本実施形態の保護整合層4を通過するのに必要な時間t3は、1/4f[秒]である。一方、超音波が本実施形態の音響整合層5を通過するのに必要な時間t2も、1/4f[秒]である。ここで、超音波が伝搬媒体6の中をL2の距離だけ伝搬するために必要な時間をt2(=ta)とすると、時間t2に依存して、保護整合層4の上面から放射された超音波と音響整合層5の上面から放射された超音波との間に干渉が発生する。この干渉により、超音波の波形および感度が変化する。
【0087】
図5(c)は、時間t2が1/2f[秒]である場合に観測される超音波波形を示しており、図5(d)は、時間t2が1/f[秒]である場合に観測される超音波波形を示している。図5(c)および(d)からわかるように、時間t2の値により、観測される超音波の感度が大きく異なる。時間t2が1/2f[秒]と等しいとき、位相のずれが超音波の半波長となり、観測される超音波の感度は低くなる。一方、時間t2が1/f[秒]のとき、位相のずれが超音波振動子の波長の整数倍となるため、観測される超音波の感度は高くなる。時間t2が1/2f〜1/f[秒]の範囲内にあるとき、t2が1/2f[秒]から1/f[秒]に近づくほど、超音波の送受信感度が上昇する。
【0088】
音響整合層5から放射された超音波が伝搬媒体6を伝搬して保護整合層4の上面と同じレベルに達したとき、その超音波の位相が保護整合層4を伝搬してきた超音波の位相と略一致するように音響整合層5および保護整合層4の厚さを調節すると、高感度の超音波送受波器を提供できる。なお、本明細書で「位相が略一致する」とき、超音波の位相の差が超音波波長の1/4以下になることを意味し、位相の差は小さいほど好ましい。
【0089】
図6は、時間t2が1/f[秒]である場合の超音波の位相を模式的に示した断面図である。この図では、保護整合層4の上面における超音波の位相と、音響整合層5の上方であって保護整合層の上面と同レベルにおける超音波の位相とが一致している。このような位相の一致が生じしたとき、超音波の送受信感度が最大化される。なお、このような位相の完全な一致が生じない場合でも、位相のずれが少なく設定されると、超音波の送受信感度は従来よりも充分に向上される。位相のずれは、超音波伝搬媒体における超音波波長の1/4以下に調節されていることが好ましく、1/8以下に調節されていることが更に好ましい。
【0090】
音響整合層5の厚さL1および保護整合層4の厚さL3を、それぞれ、音響整合層5および保護整合層4における超音波波長の1/4程度に制御するだけでは、L2の大きさは(L3−L1)として一義的に決まるため、t2を任意に設定することができない。このため、時間t2が所望の大きさになるようにするには、音響整合層5や保護整合層4の厚さだけではなく、音響整合層5や保護整合層4における音速を適切に制御する必要がある。本発明の好ましい実施形態では、音響整合層5を音速の制御が容易な乾燥ゲルから形成する。
【0091】
次に、図7(a)から(c)を参照しながら、本実施形態の超音波送受波器1の製造方法の実施形態を説明する。本実施形態においては、超音波伝搬媒体6として空気(密度:1.18kg/m3、音速:約340m/s、音響インピーダンス約4.0×102kg/m2/s)を考える。
【0092】
まず、図7(a)に示すように、送受信する超音波の波長に合わせた圧電体2を用意する。この段階の圧電体2には、図7(a)に示す保護整合層4は設けられていない。圧電体2としては、圧電セラミックスや圧電単結晶など圧電性の高い材料が好ましい。圧電セラミックスとしては、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸鉛などを用いることができる。圧電単結晶としては、チタン酸ジルコン酸鉛単結晶、ニオブ酸リチウム、水晶などを用いることができる。
【0093】
本実施形態では、圧電体2としてチタン酸ジルコン酸鉛セラミックスを用い、送受信する超音波の波長を500kHzに設定している。このような超音波を圧電体2が効率よく送受信できるようにするため、圧電体2の共振周波数を500kHzに設計する。このため本実施形態では、直径が12mm、厚さが約3.8mmの円柱形状を有する圧電セラミックスから形成された圧電体2を用いている。圧電体2の両面には銀の焼付けによる電極3a、3bが形成され、この方向に分極処理が施されている。
【0094】
次に、保護整合層4としての機能する3つのリング状部材を用意し、図7(a)に示すように圧電体2の主面に接合する。このとき、図4に示すように、リング状部材の各中心が圧電体2の中心に揃うようにする。保護整合層4としての機能する3つのリング状部材は、それぞれ、外径12mm、内径11mm、厚さ1.0mmの第1リング状部材、外形8mm、内径7mm、厚さ1.0mmの第2リング状部材、および、外形4mm、内径3mm、厚さ1.0mmの第3リング状部材である。
【0095】
本実施形態における保護整合層4には、機械的強度が高く、音響整合層を保護できる機能が求められるだけでなく、音響整合層の機能を果たすために比較的低い音響インピーダンスを有することが求められる。このような材料として、本実施形態では、多孔質体のセラミックスを用いる。この多孔質セラミックスは、見かけ密度が0.64×103kg/m3、音速が2000m/s、音響インピーダンスが約1.28×106kg/m3である。セラミックスとしては、チタン酸バリウム系の材料を用いている。なお、「見かけ密度」とは、多孔質体に含まれる空間部分をも含んだ密度である。多孔質セラミックスは、体積の約80%程度が空間部分であり、セラミックスの実体部分は約20体積%である。
【0096】
上述のように、保護整合層4の音速が約2000m/sであるため、500kHzにおける波長の1/4の厚さは1.0mmに相当する。このため、本実施形態では保護整合層4として機能するリング状部材の厚さを1.0mmに設定している。
【0097】
本実施形態で用いる多孔質セラミックスは、次のようにして作製され得る。
【0098】
まず、樹脂製の微小なボールとセラミックス粉末を混合、加圧成形する。その後、セラミックスを焼結する。この焼結過程において、樹脂ボールは加熱され、燃焼して除去される。焼結に際して、加熱を急激に行うと、樹脂ボールが膨張または急激なガス化を起こし、セラミックス構造体を破壊してしまうおそれがある。このため、焼結は緩やかな加熱によって行うことが好ましい。
【0099】
本実施形態では、このような多孔質セラミックスから形成したの保護整合層4と圧電体2とを接着剤による接着によって接合する。例えば、接着剤としてはエポキシ系樹脂を用い、0.1MPa程度の圧力をかけながら、150℃の恒温槽中で2時間程度放置すると、接着剤は硬化し、保護整合層4と圧電体2とが接合する。
【0100】
次に、こうして形成した圧電体2/保護整合層4からなる複合体上に、図7(b)に示すように音響整合層5を設ける。本実施形態では、音響整合層5を乾燥ゲルから形成する。
【0101】
本実施形態では、まず、図7(b)に示す厚さの音響整合層5を形成した後、図7(c)に示すようように音響整合層5を薄くする。このとき、図3に示す距離L2(=L3−L1)が空気中に超音波の1波長に等しくなるように、保護整合層4の厚さL3および音響整合層の厚さL1を設定する。具体的には、送受信する超音波の周波数が500kHであるので、この超音波の空気中における1波長は、0.62mmである。一方、保護整合層4の厚さL3は1.0mmであるため、音響整合層5の厚さL1は、0.32mm(=1.0mm−0.62mm)とになる。また、音響整合層5が音響整合層として適切に機能するためには、この厚さL1(=0.32mm)が音響整合層5を伝搬する超音波の波長の1/4となることが最も望ましい。従って、0.32mmが送受信する超音波の波長の1/4となるような音速を有する材料特性を有することが必要となる。計算によれば、音速が640m/sとなるような乾燥ゲルから厚さ0.32mmの音響整合層5を形成すれば良い。
【0102】
なお、保護整合層4の厚さは、保護整合層4における超音波波長の1/4であることが好ましいが、その大きさに限定されるわけではない。超音波波長の1/8以上1/3以下の範囲であれば良く、超音波波長の1/6以上1/4以下の範囲であることが更に好ましい。超音波の波長に分布がある場合、ピーク波長を基準にして厚さを決定することが好ましい。本明細書においては、波長に分布からある場合、「波長の1/4」とは「ピーク波長の1/4」を意味するものとする。
【0103】
音響整合層5が単層である場合、音響整合層5の厚さも、音響整合層5における超音波波長の1/4であることが好ましいが、その大きさに限定されるわけではない。超音波波長の1/8以上1/3以下の範囲であれば良く、超音波波長の1/6以上1/4以下の範囲であることが更に好ましい。音響整合層が多層構造を有している場合、各構成層が上記の厚さを有していることが好ましい。音響整合層が多層構造を有している超音波送受波器は、実施形態2として後述する。
【0104】
音響整合層5を構成する乾燥ゲルの材質としては、無機材料、有機高分子材料など様々な材料を用いることができる。無機材料の固体骨格部としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタンなどを用いることができる。また有機材料の固体骨格部としては、一般的な熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチルなどを用いることができる。
【0105】
本実施形態では、音響整合層5の材料として、コスト、環境安定性、製造のしやすさ、超音波送受波器の安定な温度特性などの観点から、固体骨格部として酸化ケイ素(シリカ)を持つ乾燥ゲルを採用する。
【0106】
640m/sの音速は、乾燥ゲルの音速としては比較的高い値である。このため、本実施形態では、音響整合層5として乾燥ゲル層を形成する際に、ゲル化工程(以下、「第1ゲル化工程」と称する。)に引き続いて乾燥工程を行う従来の製造方法ではなく、第1ゲル化工程後に第2ゲル化工程を行う方法を採用する。
【0107】
第2ゲル化工程を行わずに第1ゲル化工程だけを行う場合は、相対的に高い音速を示す乾燥ゲルを得ることが困難である。なお、乾燥ゲルの密度は、音速と略比例して高くなるため、「高い音速」は「高い密度」を意味する。ゲルの音速を高くする目的で、ゲル原料液中におけるゲル原料の濃度を高くすると、ゲル化反応が均一に進行せず、ランダムな音速分布を持つ湿潤ゲルが形成される。この湿潤ゲルを乾燥することによって得られる乾燥ゲルも、ランダムな密度分布を持つこととなる。このため、ゲル原料液中におけるゲル原料の濃度を高くすると、音速を均一化することは極めて難しくなる。
【0108】
本実施形態では、ゲルの不均一化を避けるため、第1ゲル化工程で形成する乾燥ゲルの音速は200m/s程度以下に調節し、第2ゲル化工程によって密度を更に上昇させ、均一に音速を上昇させる。第2ゲル化工程では、第1ゲル化工程で得られた湿潤ゲルを再びゲル原料液(第2ゲル化原料液)に浸漬する処理を行う。そして、第2ゲル化工程では、第2ゲル化原料液中の触媒となるアンモニアの濃度を低く調整する。このため、第1ゲル化工程で得られた湿潤ゲルの外ではゲル化が起こらない。しかし、第1ゲル化工程で得られた湿潤ゲルの内部では、第1ゲル化工程で形成された骨格に第2ゲル化原料液が付着していくように成長する。このため、ゲル原料液自体がゲル化しない条件においても、この反応は進行する。このようにしてゲルの音速、密度を変化させることが可能となる。
【0109】
具体的には、以下に示す工程を行うことにより、乾燥ゲルによる音響整合層5を形成する。
【0110】
工程1: 第1ゲル化ゲル原料液の用意
テトラエトキシシラン/エタノール/水/塩化水素を、モル比で1/2/1/0.00078で混合して、65度の恒温槽中で3時間、テトラエトキシシランの加水分解を進行させる。更に、水/NH3を、2.5/0.0057の割合(テトラエトキシシランに対するモル比)を加えて混合したゲル原料液を用意する。
【0111】
工程2: 第1ゲル化工程
上記のようにして調整したゲル原料液(第1ゲル化原料液)を、圧電体2と保護整合層4で形成された空間に滴下する。この際、一番外側の保護整合層4の外周にテフロン(登録商標)製のシートを巻きつけ、ゲル原料液がこぼれないように枠を形成する。
【0112】
ゲル原料液を滴下したサンプルを恒温槽中で水平を保ちながら50℃で約1日放置する。こうして、圧電体2と保護整合層4とによって形成された空間内に供給されたゲル原料液がゲル化し、湿潤ゲルを形成する。
【0113】
工程3: 第2ゲル化工程(音速、密度の調整)
第1ゲル化工程で得られた音響整合層に対して、そのまま乾燥工程を行った場合、密度は2.0×102kg/m3程度、音速は200m/s程度となる。本実施形態では、音速、密度を更に高くする目的で第2ゲル化工程を行う。
【0114】
まず、第1ゲル化工程で得られた湿潤ゲルをエタノールで洗浄し、第2ゲル化原料液を準備する。第2ゲル化原料液として、テトラエトキシシラン/エタノール/0.1規定アンモニア水を、体積比で60/35/5を混合したものを用いる。
【0115】
第1ゲル化工程で得られた圧電体2/湿潤ゲル/保護整合層4からなる複合体を密閉容器中の第2ゲル化原料液に浸漬し、70℃の恒温槽中で約48時間放置する。この第2ゲル化工程により第1ゲル化工程で得られたゲル骨格が成長し、密度、音速が高くなる。
【0116】
工程4: 疎水化工程
疎水化工程は、必ずしも必要ではないが、吸湿により性能が劣化することがあるため、行うことが好ましい。疎水化工程は、第2ゲル化工程の後、湿潤ゲル内に残留している、第2ゲル化原料液をエタノールにより置換・洗浄した後、ジメチルジメトキシシラン/エタノール/10重量%アンモニア水を、重量比で45/45/10の割合で混合して得られた疎水化液に、40℃で、約1日間、浸漬することによって、疎水化工程を行う。
【0117】
工程5: 乾燥工程
以上の工程で得られた湿潤ゲルから、乾燥ゲルを得るために、乾燥工程を行う。本実施形態では、乾燥方法として、超臨界乾燥法を用いる。乾燥ゲルは前述のように、非常に小さなナノメートルサイズ程度の多孔質体であり、骨格部分の太さや、結合の強さ、空孔の大きさによっては、湿潤ゲルから乾燥ゲルへの溶媒乾燥の際に、溶媒の表面張力によって、破壊されてしまうことがある。
【0118】
このため、表面張力の働かない超臨界乾燥法が有用に利用することができる。具体的には、上述の疎水化液をエタノールで置換した後、以上の工程で得られた圧電体2/湿潤ゲル/保護部研音響整合層5の複合体を耐圧容器に入れて、湿潤ゲル内のエタノールを液化二酸化炭素に置換する。
【0119】
更に容器内にポンプで液化二酸化炭素を送り込むことにより、容器内の圧力を10MPaまで上昇させる。その後、50℃まで昇温することで容器内を超臨界状態とした。次に温度を50℃に保ったまま、圧力をゆっくり開放することで乾燥を完了する。
【0120】
工程6: 厚さ調整工程
こうして形成した乾燥ゲル層を、旋盤によりその厚さを0.32mmとなるように音響整合層5のみの部分を研削した。
【0121】
このようにして得られた音響整合層5を形成する乾燥ゲルの密度は、約0.6×103kg/m3であり、音速は約640m/sとなる。また保護整合層4の一部に、音響整合層5となる乾燥ゲルが浸透しているが、保護整合層4の音速には影響を与えない。
【0122】
乾燥ゲルから音響整合層を形成する工程の前に、電極3bと音響整合層5との密着性が良くなるように電極3bの表面を処理するすることが好ましい。表面処理によって電極3bと音響整合層5との密着性が増すと、信頼性が更に向上する。このような表面処理としては、乾燥ゲルと化学的な結合をしやすい圧電体表面の電極に水酸基が付与されるようなプラズマ処理などを採用することができる。あるいは、電極3bの表面に物理的な凹凸を形成することによってアンカー効果を付与することも有効である。具体的には、化学的および/または物理的なエッチング処理を好適に採用することができる。
【0123】
本実施形態では、音響整合層5となるゲルを形成した後、旋盤による研削を行い、乾燥ゲルの厚さを調整する。厚さの調節は、第1ゲル化工程の際に滴下する第1ゲル化原料液の量(高さ)を調整することによって行ってもよい。この場合には、形成される音響整合層の厚さが最終的に0.32mm程度となるように、33.9μLのゲル原料液をマイクロピペットで正確に量り取り、圧電体2上に滴下する。保護整合層4が80%の空隙を有する多孔質体であるため、多孔質体に吸収される体積を換算して滴下量を計算する必要がある。
【0124】
このようにして製造した超音波送受波器の送受信波形を図8に示す。図8において、本実施形態の超音波送受波形は実線で示され、保護部と音響整合層5とが同じ厚さを有する超音波送受波器(比較例)の超音波送受信波形は点線で示されている。図8からわかるように、本実施形態によれば、信号の振幅が増加する。本発明の構造を用いることで高感度化を達成できる。
【0125】
本実施形態では、保護整合層4の上面と同一レベルの位置における超音波の位相を揃えるため、音響整合層5および伝搬媒体6を伝搬してきた超音波が、保護整合層4を伝搬してきた超音波に比べて、ちょうど波長分だけ位相の遅れを生じるようにしている。さらに大きな音速を有する材料から保護整合層4を形成する場合や、保護整合層4の厚さL3を大きく設定する場合には、伝搬媒体6による位相遅れを超音波波長の2波長以上に設定してもよい。
【0126】
(実施形態2)
次に、図9を参照しながら、本発明の超音波送受波器の第2の実施形態2を説明する。本実施形態の主な特徴点は、音響整合層が第1音響整合層5aおよび第2音響整合層5bを含む積層構造を有している点である。
【0127】
音響整合層5が2層構造を有する場合にも、各音響整合層5a、5bの厚さのそれぞれを、各音響整合層における超音波波長の1/4程度に設定することが好ましい。
【0128】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、保護整合層4の上面と同一レベルの位置において超音波の位相を揃えるため、音響整合層5および伝搬媒体6を伝搬してきた超音波が、保護整合層4を伝搬してきた超音波に比べて、超音波波長の略整数倍分だけの位相の遅れを生じるようにしている。
【0129】
図9に示す構成では、超音波が保護整合層4を伝播して保護整合層4の上面に達したとき、その超音波と同位相の超音波は第1音響整合層と第2音響整合層5bの境界面に達している。これは、第1音響整合層5aの音速が保護整合層4における音速よりも小さいためである。超音波が第1音響整合層5aの上面から第2音響整合層5bの上面に達するまでに、更に1/4f[秒]の時間がかかる。このため音響整合層5bの上面から伝搬媒体6を伝搬して保護整合層4の上面と同じレベルに達するまでの時間が3/4f[秒]となるように設定すると、保護整合層4の上面レベルで位相が揃う。このような構成を採用すると、音響整合層5aおよび5bを透過して放射された超音波と、保護整合層4を透過して放射された超音波との間に、1波長分のずれが生じ、両超音波が干渉して強め合うため、超音波の振幅が大きくなる。
【0130】
本実施形態における音響整合層5a、5bの製造方法を説明する。
【0131】
まず、第1の実施形態における音響整合層5の製造方法と同様にして、保護整合層4を作製する。保護整合層4の材料として多孔質セラミックスを用い、その厚さ(L7)を1.0mmに設定する。
【0132】
本実施形態では、空気などの伝搬媒体6を伝搬する時間が3/4f[秒]となるように、第2音響整合層5bの上面から保護整合層4の上面レベルまでの距離(L6)を0.51mmに設定する。この結果、第1音響整合層5aと第2音響整合層5bの合計厚さ(L4+L5)は、0.49mmに等しくなる。
【0133】
本実施形態では、第2音響整合層5bの音速を200m/sに設定すると、第2音響整合層5bの厚さ(L5)は0.10mmに設定することが好ましい。L5=0.10mmとすると、第1音響整合層5aの厚さ(L4)は0.39mm(=0.49mm−0.10mm)となる。第1音響整合層5aの厚さが第1音響整合層5aにおける超音波の1/4波長に相当するようにするには、第1音響整合層5aの音速を780m/sにする必要がある。
【0134】
次に、上記のような2層の音響整合層5a、5bの作製方法を説明する。この方法で特徴的な点は、第1の実施形態で行った第2ゲル化工程を2度行うことにある。すなわち、本実施形態では、第1ゲル化工程で形成された湿潤ゲルの外側ではゲル化をしない第2ゲル化工程(第2−1ゲル化工程)を行った後に、湿潤ゲルの外側でもゲル化が生じる第2ゲル化工程(第2−2ゲル化工程)を行う。
【0135】
本実施形態では、まず、第1の実施形態で行った工程1〜工程6と同様の工程を行うことにより、第1音響整合層5aを形成する。ただし、このときの第2ゲル化工程は、第2−1ゲル化工程である。
【0136】
この後に行う第2−2ゲル化工程における音響インピーダンスの増加を見込み、第2−1ゲル化工程では、第1音響整合層5aの密度約0.5×103kg/m3、音速500m/s程度となるように処理時間を調節する。本実施形態では、処理時間を第1の実施形態における第2ゲル化工程の処理時間よりも短縮し、約36時間に設定する。
【0137】
次に、第2−2ゲル化工程を行うことにより、第1音響整合層5aの音響インピーダンスを増加ざせるとともに、第1音響整合層5aの上部に第2音響整合層5bを形成する。この第2−2ゲル化工程は、具体的には、以下のようにして行った。
【0138】
第2−2ゲル化工程:
まず、第2−2ゲル化原料液として、テトラエトキシシラン/エタノール/0.05規定アンモニア水をモル比で、1/4/3の割合で混合した液を用意する。この第2−2ゲル化原料液を、第1音響整合層5aと保護整合層4によって形成された空間内に充填する。次に、このまま室温で約24時間放置することにより、ゲル化を完了する。こうして、第1音響整合層5aの音響インピーダンスを調整するとともに、第2音響整合層5bとなる湿潤ゲルを形成する。
【0139】
この後、第1の実施形態と同様にして、疎水化工程、乾燥工程、および厚さ調整工程を行うことにより、音響整合層5a、5bを完成する。本実施形態における音響整合層5a、5bは、以下のように特徴付けられる。
【0140】
第1音響整合層5a
密度:0.7×103kg/m3、音速:780m/s
音響インピーダンス:5.46×105kg/m2/s
厚さ:0.39mm
第2音響整合層5b
密度:0.2×103kg/m3、音速:200m/s
音響インピーダンス:4.0×104kg/m2/s
厚さ:0.10mm
【0141】
本実施形態の超音波送受信器の送受信波形を図10に示す。図10において、本実施形態の超音波送受波器の超音波送受波形は実線で示され、音響整合層と保護整合層の厚さを等しくした超音波送受波器(比較例)の送受波形形は点線で示される。図10からわかるように、本実施形態の超音波送受波器によれば、高感度化を実現することができる。
【0142】
本実施形態では、音響整合層5を2層とした構成としたが、3層以上としても、保護整合層4の上面部分で、超音波の位相が揃うように設計することで同様の効果が得られる。
【0143】
(実施形態3)
図11を参照しながら、本発明による超音波送受波器の第3の実施形態を説明する。本実施形態の特徴的な点は、第1音響整合層5aと保護整合層4とが、同じ材料によって一体的に形成されている点にある。第1音響整合層5aの上部には乾燥ゲルから形成した第2音響整合層5bが形成されている。
【0144】
本実施形態では、第1音響整合層5aおよび保護整合層4における超音波の音速や波長が等しく、しかも、保護整合層4の厚さL11を超音波の1/4波長に設定する。このため、第1音響整合層5aの厚さL8は超音波の1/4波長よりも小さい。第1音響整合層5aの厚さL8は、第2音響整合層5bの厚さL9と、第2音響整合層5bの上面から保護整合層4の上面レベルまでの距離L10によって決まる。
【0145】
本実施形態においても、音響整合層5aおよび5bを透過して放射された超音波と、保護整合層4を透過して放射された超音波との間に、超音波波長の整数倍の位相遅れが生じる構成を採用している。このため、保護整合層4の上面レベルにおいて、音響整合層5a、5bおよび伝搬媒体6を伝搬してきた超音波の位相が揃う。
【0146】
音響整合層5a、5bを透過してきた超音波の感度を高めるには、第1音響整合層5aの厚さよりも第2音響整合層5bの厚さが重要である。本実施形態では、第2音響整合層5bの厚さは、送受信する超音波の波長の約1/4に設定する。第1音響整合層5aの厚さも、感度に影響を与えるが、その影響の多くは周波数の比帯域に及ぶ。
【0147】
このため、本実施形態では、まず材質の機械的強度などの点から、第2音響整合層5bを構成しうる乾燥ゲル層の特性を決定する。次に、保護整合層4と同じ材料から形成する第1音響整合層5aの厚さL8と、音波伝搬媒体の厚さL10とを設定する。
【0148】
本実施形態では、保護整合層4の材料として、前述の実施形態と同様に多孔質セラミックスを用い、その厚さ(L11)を超音波波長の1/4に設定する。すなわち、L11を1.0mmに設定する。この場合、上記の多孔質セラミックスから形成される第1音響整合層5bの音速は200m/s、密度は0.2×103kg/m3となる。乾燥ゲルから形成する第2音響整合層5bの厚さを超音波波長の1/4に設定するため、L9を0.10mmとする。
【0149】
このとき、以下の式6が成立する。
【0150】
L8+L10=0.9[mm]・・・(6)
【0151】
式6は、L11を1.0mm、L9を0.1mmに設定したことから導かれる。
【0152】
優れた特性を発揮するには、以下の式が成立することが好ましい。
【0153】
L8/1+L10/(17/25)=1 [波長]・・・(7)
【0154】
本実施形態では、周波数が500kHzの超音波を送受信するため、音響整合層5aにおける超音波の1波長は1.0mm、音波伝搬媒体6における超音波の1波長は17/25mmとなる。式7は、超音波の1波長に対する第1音響整合層5aの厚さL8の比率と、超音波の1波長に対する伝搬媒体6の厚さL10の比率との和である。式8を満足するということは、超音波が第1音響整合層5aおよび音波伝搬媒体6を透過する際に1波長だけ進むことを意味している。言い換えると、超音波が感じする第1音響整合層5aおよび音波伝搬媒体6の実効的な厚さが1波長分であることを意味する。
【0155】
式6および式7を満足するL8およびL10を算出すると、L8=約0.69mm、L10=0.21mmとなる。
【0156】
次に、図12(a)から(d)を参照しながら、本実施形態の超音波送受波器の製造方法を説明する。
【0157】
まず、図12(a)に示すように、多孔質セラミックスからなる厚さ1.0mmのペレットを用意し、このペレットを図12(b)に示すように加工する。本実施形態では、ペレットの上面に溝を形成し、溝底部の厚さを0.69mmに調節する。この溝底部が第1音響整合層5aとして機能する部分である。溝は図4に示すようにリング状に形成する。
【0158】
次に、図12(c)に示すように、溝の内部に第2音響整合層5bを形成する。音響整合層5bの厚さが0.1mmになるようにする。保護整合層4/音響整合層5a、5bの複合体を、図12(d)に示すように、圧電体2に接合し、超音波送受波器1を形成する。
【0159】
第1音響整合層5bは、テトラメトキシシラン/エタノール/0.05規定アンモニア水をモル比で、1/7/4の割合で混合した液を用いて、実施形態1と同様にして第1ゲル化工程を行うことによって形成する。
【0160】
保護整合層4/音響整合層5a、5bからなる複合体の圧電体への接着は、実施形態1と同様に、エポキシ系の接着剤によって行うことができる。
【0161】
本実施形態によれば、保護整合層4と音響整合層5aを一括的に形成できるため、製造工程を簡単にし、製造コストを低減できる。
【0162】
(実施形態4)
図13を参照しながら、本発明による超音波送受波器の第4の実施形態を説明する。本実施形態に特徴的な点は、構造支持体を有している点である。
【0163】
本実施形態の超音波送受波器は、圧電体2と第1音響整合層5や保護整合層4との間に構造支持体7を有している点を除けば、実施形態1の超音波送受波記録媒体の構成と同様の構成を有している。
【0164】
構造支持体7は音響整合層5などが固定される円盤状支持部と、この円盤状支持部から軸方向に連続的に伸びる円筒部とを備えている。円筒部の端面は、断面がL字型に折れ曲がり、圧電体2の遮蔽のためのプレート(不図示)や、他の装置などに固定しやすくなっている。
【0165】
構造支持体7の表面には音響整合層5や保護整合層4が配置されており、支持部裏面には圧電体2が配置されている。このような構造支持体13を用いることにより、超音波送受波器の取り扱いが極めて容易となる。
【0166】
構造支持体は、密閉可能な容器(センサケース)から構成することができる。この場合、構造支持体7の円筒部の開放端を遮蔽プレートなどで塞ぎ、かつ、構造支持体7の内部を不活性ガスで満たせば、流量測定の対象とする流体から圧電体2を遮断することができる。
【0167】
圧電体2には電圧が印加されるため、可燃性ガスなどと圧電体が接すると、可燃性ガスに引火する危険性もある。しかし構造支持体7を密閉性の容器から構成し、圧電体のある内部を外部流体などと遮断することによって、そのような引火を防止して、可燃性ガスなどに対しても安全に超音波を送受波することができる。
【0168】
また可燃性ガスでなくとも、圧電体2と反応し、圧電体2に特性の劣化を与える可能性のあるガスとの間で超音波を送受波する場合でも、圧電体2が外部ガスから遮断することが好ましい。そうすることにより、圧電体2の劣化を防止し、長期間に渡って信頼性の高い動作を実現することが可能となる。
【0169】
構造支持体7のうち、圧電体2と音響整合層5や保護整合層4との間に位置する部分は音響整合層として機能しない。このため、構造支持体7が音響的な阻害として働かないようにするため、構造支持体7のうち、圧電体2と音響整合層5や保護整合層4との間に位置する部分の厚さを、送受波する超音波の波長の1/8程度以下とすることが望ましい。
【0170】
本実施形態では、構造支持体7をステンレスから形成し、上記部分の厚さを0.2mmに設定している。
【0171】
ステンレスの音速は約5500m/秒であり、超音波の500kHzにおける波長は約11mmとなる。0.2mmの厚さは波長の約1/55に相当するため、構造支持体7の存在は殆ど音響的阻害要因にはならない。
【0172】
構造支持体7の材料は、ステンレスなどの金属材料に限定される物ではなく、セラミック、ガラス、樹脂などから目的に応じた材料が選択される。本実施形態では、外部の流体と圧電体を確実に分離し、構造支持体に何らかの機械的な衝撃が加わったとしても、圧電体と外部流体との接触を防止できる強度を与えるため、金属材料から構造支持体13を作製している。これにより、例えば可燃性や爆発性を有するガスを対象として超音波の送受波を行っても高い安全性を確保することができる。
【0173】
なお、安全な気体に対して超音波の送受波を行う場合には、コスト低減を目的として、樹脂などの材料からなる構造支持体を用いても良い。
【0174】
(実施形態5)
図14(a)および(b)を参照しながら、本発明による超音波送受波器の第5の実施形態を説明する。図14(a)および(b)は、本実施形態の上面図である。
【0175】
図4に示す例では、保護整合層4として機能する多孔質セラミック製のリング(同じ幅で直径の異なる3つのリング状部材)を用い、それらの中心が一致するように圧電体主面に配置しているが、図14(a)に示すように幅の異なるリングを用いて保護整合層4を形成しても良い。また、図14(b)に示すように、島状の保護整合層4をランダムに配置してもよい。
【0176】
保護整合層4と音響整合層5とが、超音波送受波器の主面上に規則的に配列されている場合、その主面に対して或る角度を持った方向に超音波の位相が揃い、振幅が強まる。これは、「サイドローブ」と呼ばれ、超音波計測を行う上で阻害要因となる。しかし、図14に示すように、保護整合層4の配列が周期性を持たない構成を採用することにより、サイドローブを抑制し、精度および信頼性の高い超音波計測を可能とすることができる。
【0177】
(実施形態6)
図15を参照しながら、本発明による超音波送受波器の第6の実施形態を説明する。
【0178】
本実施形態の超音波送受波器は、保護整合層4の厚さが面内分布を有している点に第1の特徴点を有している。前述の各実施形態では、保護整合層4の厚さが面内で一様に設定されているが、本実施形態では、意図的に面内分布が与えられている。また、本実施形態の第2の特徴点は、圧電体2上に設けられた保護整合層4が異なる2種類の材料から形成されていることにある。
【0179】
本実施形態の構成によれば、異なる材料の採用および/または異なる厚さの面内分布を付与することにより、サイドローブを抑制したり、送受信する超音波の周波数を変化させて広帯域化することができる。
【0180】
なお、各保護整合層4の厚さは、超音波波長の1/8以上1/3以下の範囲内に含まれてことが好ましく、超音波波長の1/6以上1/4以下の範囲内に含まれていることが更に好ましい。ただし、異なる厚さを有する保護整合層4の一部の厚さが上記の範囲から外れていてもよい。上記の範囲から外れた厚さを有する保護整合層4は、音響整合層としては機能しないため、超音波送受信の感度が低下する。しかし、音響整合層として機能しない保護層(もはや「保護整合層」とは呼べない)を圧電体上の適当な位置に置くことにより、近距離における超音波場の乱れを防止して良好な超音波計測を可能にすることができる。
【0181】
(実施形態7)
図16を参照しながら、本発明による超音波流量計の実施形態を説明する。
【0182】
本実施形態の超音波流量計は、流量測定部51として機能する管内を被測定流体が速度Vで流れるようにして設置される。流量測定部51の管壁52には、本発明の超音波送受波器1aおよび1bが相対して配置されている。超音波送受波器の構成は、前述の実施形態のいずれであってもよい。
【0183】
本実施形態における超音波流量計の動作によると、ある時点では、超音波送受波器1aが超音波送波器として機能し、超音波送受波器1bを超音波受波器として機能するが、他の時点では、超音波送受波器1aが超音波受波器として機能し、超音波送受波器1bを超音波送波器として機能する。この切り替えは切替回路53によって行われている。
【0184】
超音波送受波器1a、1bは、切替回路53を介して、超音波送受波器1a、1bを駆動する駆動回路54と、超音波パルスを検知する受波検知回路55とに接続されている。受波検知回路55の出力は、超音波パルスの伝搬時間を計測するタイマ56に送られる。
【0185】
タイマ56の出力は、流量を演算する演算部57に送られる。演算部57では、測定された超音波パルスの伝搬時間に基づいて、流量測定部51内を流れる流体の速度Vが計算され、流量が求められる。駆動回路54およびタイマ56は、制御部58に接続され、制御部58から出力された制御信号によって制御される。
【0186】
以下、この超音波流量計の動作をより詳細に説明する。
【0187】
被測定流体として、例えばLPガスが流量測定部51を流れる場合を考える。超音波送受波器1aおよび1bの駆動周波数を約500kHzとする。制御部58は、駆動回路54に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ56の時間計測を開始させる。
【0188】
駆動回路54は送波開始信号を受けると、超音波送受波器1aを駆動し、超音波パルスを送波する。送波された超音波パルスは流量測定部51内を伝搬して、超音波送受波器1bで受波される。受波された超音波パルスは超音波送受波器1bで電気信号に変換され、受波検知回路55に出力される。
【0189】
受波検知回路55では受波信号の受波タイミングを決定し、タイマ56を停止させる。演算部57は、伝搬時間t1を演算する。次に、切替回路53により、駆動回路54および受波検知回路55に接続する超音波送受波器1aおよび1bを切り替える。そして、再び、制御部59は駆動回路54に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ56の時間計測を開始させる。
【0190】
伝搬時間t1の測定と逆に、超音波送受波器1bで超音波パルスを送波し、超音渡送受波器1aで受波し、演算部57で伝搬時間t2を演算する。
【0191】
ここで、超音波送受波器1aと超音渡送受波器1bの中心を結ぶ距離をL、LPガスの無風状態での音速をC、流量測定部51内での流速をV、非測定流体の流れの方向と超音波送受波器1aおよび1bの中心を結ぶ線との角度をθとする。
【0192】
伝搬時間t1、t2は、それぞれ測定によって求められる。距離Lは既知であるので時間t1とt2を測定すれば流速Vが求められ、その流速Vから流量を決定することができる。
【0193】
このような超音波流量計において、伝搬時間t1、t2はゼロクロス法と呼ばれる方法によって測定される。受波信号のS/Nが悪い場合、ノイズレベルによっては振幅が0となる点が時間的に変動するため、正確にt1、t2を測定することが出来ず、正確な流量を測定することが困難になる場合がある。
【0194】
このような超音波流量計の超音波送受波器として、本発明の超音波送受波器を用いると、受波信号のS/Nが向上して、t1、t2を高い精度で測定することが可能となり、正確な流量測定が可能となる超音波流量計を提供することができる。なお、t1、t2の値としては、複数回の測定によって得られた値の平均値を用いることが好ましい。
【0195】
以上の各実施形態では、最上層の音響整合層(第1音響整合層)の上面は、露出しているが、この面を厚さ10μm以下程度の保護膜でカバーしてもよい。このような保護膜は、大気と音響整合層の直接的な接触を避け、音響整合層の特徴を長期に渡って保持するのに寄与する。保護膜は例えば、アルミニウム、酸化ケイ素、低融点ガラス、高分子などの材料からなる膜(単層に限定されない)によって構成される。保護膜は、スパッタリングやCVD法などによって堆積される。
【0196】
【発明の効果】
本発明による超音波送受波器は、相対的に密度が低く、機械的強度の小さな音響整合層を保護する部材が音響整合層としても機能する。このため、音響整合層としても機能する保護部(保護部兼音響整合層=保護整合層)を圧電体の主面に内の任意の位置に設けることができる。また、2種類の音響整合層の音速および厚さを調節することにより、厚さの異なる2種類の音響整合層から放射される超音波の位相を揃え、超音波の送受信感度を高めることが可能になる。
【0197】
本発明では、相対的に密度が高く、従って機械的強度も高い保護整合層の存在により、相対的に密度および機械的強度が低い低インピーダンス材料から音響整合層を形成することが可能となる。このため、気体に対する送受信感度が高く、信頼性に優れた超音波送受波器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の超音波流量計を示すブロック図である。
【図2】従来の超音波送受波器の断面図である。
【図3】本発明による超音波送受波器の第1の実施形態の断面図である。
【図4】本発明による超音波送受波器の第1の実施形態の上面図である。
【図5】本発明による超音波送受波器の第1の実施形態における超音波の干渉を示すグラフである。
【図6】保護整合層および音響整合層を伝搬した超音波の位相を模式的に示す図である。
【図7】(a)から(c)は、本発明による超音波送受波器の第1の実施形態を製造する方法を示す工程断面図である。
【図8】本発明による超音波送受波器の第1の実施形態の送受信波形図である。
【図9】本発明による超音波送受波器の第2の実施形態の断面図である。
【図10】本発明による超音波送受波器の第2の実施形態の送受信波形図である。
【図11】本発明による超音波送受波器の第3の実施形態の断面図である。
【図12】(a)から(d)は、本発明による超音波送受波器の第3の実施形態を製造する方法を示す工程断面図である。
【図13】本発明による超音波送受波器の第4の実施形態の断面図である。
【図14】(a)および(b)は、それそれ、本発明による超音波送受波器の第5の実施形態の上面図である。
【図15】本発明による超音波送受波器の第6の実施形態の断面図である。
【図16】本発明による超音波流量計の実施形態の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 超音波送受波器
1a、1b 超音波送受波器
2 圧電体
3a、3b 電極
4 保護整合層(第1音響整合部)
5 音響整合層(第2音響整合部)
6 伝搬媒体
7 構造支持体
51 流量測定部
52 管壁
53 切替回路
54 駆動回路
55 受信検知回路
56 タイマ
57 演算部
58 制御部
101 超音波送受波器
102 管壁
103 超音波送受波器
104 音響整合層
105 センサケース
106 圧電体

Claims (8)

  1. 圧電体と、
    前記圧電体上に設けられた音響整合層と、
    前記音響整合層を保護する保護整合層と、を備える超音波送受波器であって、
    前記音響整合層と前記保護整合層とは、前記圧電体の中心から、前記圧電体の側面に向かって交互に並べられ、
    前記音響整合層と前記保護整合層とのそれぞれの前記圧電体からの高さが、前記音響整合層と前記保護整合層とのそれぞれを伝搬する超音波の波長のa倍(aは1/8以上1/3以下)となる高さであり、
    前記保護整合層の前記圧電体からの高さは、前記音響整合層の前記圧電体からの高さよりも、伝搬媒体中を伝搬する超音波の波長の定数倍長い、超音波送受波器。
  2. 前記保護整合層上面と前記伝搬媒体とが接する面に至るまでに進んだ、前記保護整合層を伝搬する超音波の位相と、
    前記音響整合層上面と前記伝搬媒体とが接する面に至るまで進んだ後、前記保護整合層上面と前記伝搬媒体とが接する面を含む水平面上に至るまで進んだ、前記音響整合層と前記伝搬媒体中とを伝搬する超音波の位相とが、略一致する、請求項1に記載の超音波送受波器。
  3. 前記音響整合層は、乾燥ゲルから形成されている請求項1または請求項2に記載の超音波送受波器。
  4. 前記乾燥ゲルは、無機系材料からなる請求項に記載の超音波送受波器。
  5. 前記乾燥ゲルは、撥水化された固体骨格部を有している請求項に記載の超音波送受波器。
  6. 前記保護整合層は前記乾燥ゲルよりも機械的強度の高い材料から形成されている請求項に記載の超音波送受波器。
  7. 前記保護整合層の少なくとも一部は、多孔質セラミックスから形成されている請求項に記載の超音波送受波器。
  8. 被測定流体が流れる流量測定部と、
    前記流量測定部に設けられ、超音波信号を送受波する一対の超音波送受波器と、
    前記一対の超音波送受波器の間を超音波が伝搬する時間を計測する計測部と、
    前記計測回路からの信号に基づいて流量を算出する流量演算部と、
    を備えた超音波流量計であって、
    前記一対の超音波送受波器の各々が、
    圧電体と、
    前記圧電体上に設けられた音響整合層と、
    前記音響整合層を保護する保護整合層と、を備える超音波送受波器であって、
    前記音響整合層と前記保護整合層とは、前記圧電体の中心から、前記圧電体の側面に向かって交互に並べられ、
    前記音響整合層と前記保護整合層とのそれぞれの前記圧電体からの高さが、前記音響整合層と前記保護整合層とのそれぞれを伝搬する超音波の波長のa倍(aは1/8以上1/3以下)となる高さであり、
    前記保護整合層の前記圧電体からの高さは、前記音響整合層の前記圧電体からの高さよりも、伝搬媒体中を伝搬する超音波の波長の定数倍長い、超音波送受波器である、超音波流量計。
JP2003006853A 2003-01-15 2003-01-15 超音波送受波器および超音波流量計 Expired - Fee Related JP4153796B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003006853A JP4153796B2 (ja) 2003-01-15 2003-01-15 超音波送受波器および超音波流量計

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003006853A JP4153796B2 (ja) 2003-01-15 2003-01-15 超音波送受波器および超音波流量計

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004219248A JP2004219248A (ja) 2004-08-05
JP4153796B2 true JP4153796B2 (ja) 2008-09-24

Family

ID=32897112

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003006853A Expired - Fee Related JP4153796B2 (ja) 2003-01-15 2003-01-15 超音波送受波器および超音波流量計

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4153796B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4468262B2 (ja) 2005-08-01 2010-05-26 株式会社日本自動車部品総合研究所 障害物検知装置
JP2008193291A (ja) * 2007-02-02 2008-08-21 Matsushita Electric Ind Co Ltd 乾燥ゲルを含む音響整合層とその製造方法
JP6149250B2 (ja) * 2012-05-28 2017-06-21 パナソニックIpマネジメント株式会社 超音波流量計
JP7108816B2 (ja) 2017-06-30 2022-07-29 パナソニックIpマネジメント株式会社 音響整合層
JP7244049B2 (ja) * 2018-11-05 2023-03-22 株式会社エアロネクスト ジンバル機構

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004219248A (ja) 2004-08-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3633926B2 (ja) 超音波送受信器および超音波流量計
JP3764162B2 (ja) 超音波送受波器およびその製造方法、ならびに超音波流量計
EP1363269B1 (en) Acoustic matching member, ultrasonic transducer, ultrasonic flowmeter and method for manufacturing the same
JP3611796B2 (ja) 超音波送受波器、超音波送受波器の製造方法及び超音波流量計
JP3552054B2 (ja) 音響整合層および超音波送受波器
JP3633925B2 (ja) 超音波送受信器および超音波流量計
WO2017212511A1 (ja) 積層体、超音波送受波器および超音波流量計
JP4153796B2 (ja) 超音波送受波器および超音波流量計
US20080163691A1 (en) Ultrasonic Receiver
JP6032512B1 (ja) 積層体、超音波送受波器および超音波流量計
JP2005037219A (ja) 超音波送受波器及びその製造方法
JP4080374B2 (ja) 音響整合部材、超音波送受波器、超音波流量計およびこれらの製造方法
JP4806431B2 (ja) 超音波送受波器
JP4014940B2 (ja) 音響整合部材、超音波送受波器、超音波流量計およびこれらの製造方法
CN100462694C (zh) 超声波发送接收器及超声波流量计
JP2006030142A (ja) 超音波流量計
JP2004029038A (ja) 超音波流量計
JP4382411B2 (ja) 超音波送受波器およびその製造方法
JP2018063114A (ja) 音響整合層および超音波送受波器および超音波流量計
JP2018061209A (ja) 積層体、超音波送受波器および超音波流量計
JP2003329501A (ja) 音響整合部材、超音波送受波器および超音波流量計

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050902

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080219

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080415

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080610

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080704

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4153796

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110711

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110711

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120711

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120711

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130711

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees