JP2015215171A - 超音波流量計及び超音波吸収体の異常判定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝搬時間差方式の超音波流量計において、配管伝搬波抑制用の超音波吸収材の異常を容易に検知する。
【解決手段】内部を流体が流れる配管Aの上流側の外周に設けられる第1超音波送受信部20Aと、配管Aの下流側の外周に設けられる第2超音波送受信部20Bと、第1超音波送受信部20Aから送信された超音波が第2超音波送受信部20Bに受信されるまでの時間と第2超音波送受信部20Bから送信された超音波が第1超音波送受信部20Aに受信されるまでの時間とに基づいて流体の流量を算出する流量算出部55と、配管Aの外周に設けられ超音波の配管伝搬波を吸収する超音波吸収体10と、を備える超音波流量計1であって、特定した配管伝搬波の減衰状態を表す値と基準値との差又は比が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体10に異常が発生したものと判定する異常判定部63を備える。
【選択図】図1
【解決手段】内部を流体が流れる配管Aの上流側の外周に設けられる第1超音波送受信部20Aと、配管Aの下流側の外周に設けられる第2超音波送受信部20Bと、第1超音波送受信部20Aから送信された超音波が第2超音波送受信部20Bに受信されるまでの時間と第2超音波送受信部20Bから送信された超音波が第1超音波送受信部20Aに受信されるまでの時間とに基づいて流体の流量を算出する流量算出部55と、配管Aの外周に設けられ超音波の配管伝搬波を吸収する超音波吸収体10と、を備える超音波流量計1であって、特定した配管伝搬波の減衰状態を表す値と基準値との差又は比が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体10に異常が発生したものと判定する異常判定部63を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、超音波流量計及び超音波吸収体の異常判定方法に関する。
従来より、各種流体の流量を計測するための超音波流量計が提案され、実用化されている。例えば、現在においては、振動子を実装する楔部材の底面部を、音響結合材を介して配管の外壁に接続したクランプオン型超音波流量計が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたクランプオン型超音波流量計によれば、特定診断波形の周波数スペクトルの総和を所定の閾値と比較することにより、音響結合材の異常診断を行うことができる、とされている。
ところで、近年においては、超音波振動子と斜角楔とによって構成した1対(乃至複数対)の超音波送受信器を流体の流れる配管の外壁に設置し、流体の流れ方向及び逆方向に超音波を伝搬させたときのそれぞれの伝搬時間を計測し、これら伝搬時間の差に基づいて流体の流量を算出する、いわゆる「伝搬時間差」方式の超音波流量計が提案されている。
このような「伝搬時間差」方式の超音波流量計においては、配管伝搬波(超音波振動子から発せられた超音波のうち、配管の管壁で反射して配管を伝搬する伝搬波)を抑制するために、配管の周囲にダンピング材(超音波吸収材)を設置する必要がある。ダンピング材の劣化や剥離が生じると流量計測が不可能となり、流量計は高所等の作業が困難な個所に設置されることも多いことから、ダンピング材の異常を早期に検知する必要がある。しかし、現段階においては、ダンピング材の異常を有効に検知する方法は提案されていない。
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、伝搬時間差方式の超音波流量計において、配管伝搬波抑制用の超音波吸収材の異常を容易に検知することを目的とする。
本発明に係る超音波流量計は、内部を流体が流れる配管における上流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第1超音波送受信部と、配管における下流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第2超音波送受信部と、第1超音波送受信部から送信された超音波が第2超音波送受信部に受信されるまでの時間と第2超音波送受信部から送信された超音波が第1超音波送受信部に受信されるまでの時間とに基づいて流体の流量を算出する流量算出部と、配管の外周に設けられ超音波の配管伝搬波を吸収する超音波吸収体と、配管伝搬波を特定する配管伝搬波特定部と、配管伝搬波特定部で特定した配管伝搬波の減衰状態を表す値を取得する減衰状態値取得部と、基準状態における配管伝搬波の減衰状態を表す値と減衰状態取得部で取得した値との差又は比が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体に異常が発生したものと判定する異常判定部と、備えるものである。
また、本発明に係る異常判定方法は、内部を流体が流れる配管における上流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第1超音波送受信部と、配管における下流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第2超音波送受信部と、第1超音波送受信部から送信された超音波が第2超音波送受信部に受信されるまでの時間と第2超音波送受信部から送信された超音波が第1超音波送受信部に受信されるまでの時間とに基づいて流体の流量を算出する流量算出部と、配管の外周に設けられ超音波の配管伝搬波を吸収する超音波吸収体と、を備える超音波流量計の超音波吸収体の異常判定方法であって、配管伝搬波を特定する配管伝搬波特定工程と、配管伝搬波特定工程で特定した配管伝搬波の減衰状態を表す値を取得する減衰状態値取得工程と、基準状態における配管伝搬波の減衰状態を表す値と減衰状態取得工程で取得した値との差又は比が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体に異常が発生したものと判定する異常判定工程と、を含むものである。
かかる構成及び方法を採用すると、基準状態における配管伝搬波の減衰状態を表す値と、特定した配管伝搬波の減衰状態を表す値と、を比較し、両者の差又は比が所定の閾値を超える場合に、超音波吸収体に異常が発生したものと判定することができる。すなわち、配管伝搬波を特定し減衰状態を表す値を取得して基準状態の値と比較するだけで、超音波吸収体の異常(劣化や剥離)をきわめて容易に検知することができる。従って、超音波吸収体が劣化する期間を測定して適切な交換時期を把握したり、施工初期の設置不良を発見したりすることができる。なお、配管伝搬波の減衰状態を表す値としては、配管伝搬波の二重平均平方根(RMS)、配管伝搬波の最大値と最小値の差、配管伝搬波の積算値、配管伝搬波のSN比、等を採用することができる。
本発明に係る超音波流量計において、流体伝搬波と配管伝搬波との混合波を含む超音波の波形に基づいて配管伝搬波を特定する配管伝搬波特定部を採用することができる。
かかる構成を採用すると、流体伝搬波と配管伝搬波との混合波を含む超音波の波形に基づいて配管伝搬波を特定することができる。例えば、横軸に時間、縦軸に電圧をとって超音波の波形を表示したときに、超音波の波形の最大ピークから左右の最小ピークに向けて2本の直線を描き、それら2本の直線と横軸との交点をそれぞれ混合波の開始時及び終了時とし、混合波の開始時より所定時間前から存在する波形(又は混合波の終了時から所定時間後まで存在する波形)を配管伝搬波として特定することができる。
本発明によれば、伝搬時間差方式の超音波流量計において、配管伝搬波抑制用の超音波吸収材の異常を容易に検知することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。なお、図面は実際の寸法を示すものではなく、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
まず、図1〜図7を用いて、本発明の実施形態に係る超音波流量計1の構成について説明する。本実施形態に係る超音波流量計1は、図1に示すように、配管Aの内部を流れる気体(ガス)の流量を測定するためのものである。超音波流量計1の測定対象である気体は、図1において白抜き矢印で示す方向(図1における左から右の方向)に流れている。超音波流量計1は、第1超音波送受信部20Aと、第2超音波送受信部20Bと、本体部50と、超音波吸収体10と、を備える。
第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bは、それぞれ配管Aの外周に設けられる。図1に示す例では、第1超音波送受信部20Aが配管Aにおける上流側に、第2超音波送受信部20Bは配管Aにおける下流側に、それぞれ配置される。第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bは、それぞれ超音波の送信及び受信を行い、相互に超音波を送受信する。すなわち、第1超音波送受信部20Aが送信した超音波は、第2超音波送受信部20Bによって受信され、第2超音波送受信部20Bが送信した超音波は、第1超音波送受信部20Aによって受信される。
第1超音波送受信部20Aは、図2に示すように、くさび21と、圧電素子22と、を備える。
くさび21は、配管Aに対して所定の鋭角で超音波を入射させるためのものであり、樹脂製又は金属製の部材である。くさび21は、底面21aが配管Aの外周面に接触するように設置される。また、くさび21は、底面21aに対して所定の角度を有する斜面21bが形成されている。斜面21bには、圧電素子22が設置される。本実施形態では、底面21aが配管Aの外周面に接触する例を示したが、これに限定されない。底面21aと配管Aの外周面との間に接触媒質(カプラント)を介在させてもよい。
圧電素子22は、超音波を送信するとともに、超音波を受信するためのものである。圧電素子22には、リード線(図示省略)が電気的に接続されている。リード線を介して所定周波数の電気信号が印加されると、圧電素子22は、当該所定周波数で振動して超音波を発する。これにより、超音波が送信される。図2において破線の矢印で示すように、圧電素子22から送信された超音波は、斜面21bの角度でくさび21を伝搬する。くさび21を伝搬する超音波は、くさび21と配管Aの外壁との界面で屈折して入射角が変化し、配管Aの内壁と配管Aの内部を流れる気体との界面でさらに屈折して入射角が変化し、当該気体を伝搬する。界面における屈折は、スネルの法則に従うので、配管Aを伝搬するときの超音波の速度、気体を伝搬するときの超音波の速度に基づいて、斜面21bの角度をあらかじめ設定することにより、超音波を所望の入射角で気体に入射させ、伝搬させることができる。
一方、圧電素子22に超音波が到達すると、圧電素子22は、当該超音波の周波数で振動して電気信号を発生させる。これにより、超音波が受信される。圧電素子22に発生した電気信号は、リード線を介して後述する本体部50で検出される。
なお、第2超音波送受信部20Bは、第1超音波送受信部20Aと同様の構成を備える。すなわち、第2超音波送受信部20Bも、くさび21と、圧電素子22と、を備える。よって、前述した第1超音波送受信部20Aの説明をもって、第2超音波送受信部20Bの詳細な説明を省略する。
図1に示す本体部50は、超音波が配管Aの内部を流れる気体を伝搬する時間に基づいて当該気体の流量を測定するためのものである。本体部50は、切替部51と、送信回路部52と、受信回路部53と、計時部54と、演算制御部55と、入出力部56と、を備える。
切替部51は、超音波の送信及び受信を切り替えるためのものである。切替部51は、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bに接続されている。切替部51は、例えば、切替スイッチ等を含んで構成することが可能である。演算切替部51は、演算制御部55から入力される制御信号に基づいて切替スイッチを切り替え、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bのうちの一方を送信回路部52に接続させるとともに、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bのうちの他方を受信回路部53と接続させる。これにより、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bのうちの一方が超音波を送信し、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bのうちの他方が当該超音波を受信することができる。
送信回路部52は、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bに超音波を送信させるためのものである。送信回路部52は、例えば、所定周波数の矩形波を生成する発振回路、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bを駆動する駆動回路等を含んで構成することが可能である。送信回路部52は、演算制御部55から入力される制御信号に基づいて、駆動回路が発振回路により生成された矩形波を駆動信号として第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bのうちの一方の圧電素子22に出力する。これにより、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bの一方の圧電素子22が駆動され、当該圧電素子22が超音波を送信する。
受信回路部53は、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bが受信した超音波を検出するためのものである。受信回路部53は、例えば、信号を所定の利得(ゲイン)で増幅する増幅回路、所定周波数の電気信号を取り出すためのフィルタ回路等を含んで構成することが可能である。受信回路部53は、演算制御部55から入力される制御信号に基づいて、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bのうちの一方の圧電素子22から出力された電気信号を増幅し、フィルタリングして受信信号に変換する。受信回路部53は、変換した受信信号を演算制御部55に出力する。
計時部54は、所定の期間における時間を計測するためのものである。計時部54は、例えば、発振回路等で構成することが可能である。なお、発振回路は、送信回路部52と共有するようにしてもよい。計時部54は、演算制御部55から入力されるスタート信号及びストップ信号に基づいて、発振回路の基準波の数をカウントして時間を計測する。計時部54は、計測した時間を演算制御部55に出力する。
演算制御部55は、配管Aの内部を流れる気体の流量を演算により算出するためのものである。演算制御部55は、例えば、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入出力インターフェース等で構成することが可能である。また、演算制御部55は、切替部51、送信回路部52、受信回路部53、計時部54、及び、入出力部56等の本体部50の各部を制御する。なお、演算制御部55が気体の流量を算出する方法については、後述する。
入出力部56は、ユーザ(利用者)が情報を入力し、かつ、ユーザに対して情報を出力するためのものである。入出力部56は、例えば、操作ボタン等の入力手段、表示ディスプレイ等の出力手段等で構成することが可能である。ユーザが操作ボタン等を操作することにより、設定等の各種の情報が入出力部56を介して演算制御部55に入力される。また、入出力部56は、演算制御部55により算出された気体の流量、気体の速度、所定期間における積算流量等の情報を、表示ディスプレイ等に表示して出力する。
ここで、図3を用いて、配管Aの内部を流れる気体の流量の算出方法について説明する。図3に示すように、配管Aの内部を所定の方向(図3において左側から右側への方向)に流れる気体の速度(以下、流速という)をV[m/s]、当該気体中を超音波が伝搬するときの速度(以下、音速という)をC[m/s]とし、当該気体を伝搬する超音波の伝搬経路長をL[m]とし、配管Aの管軸と超音波の伝搬経路とのなす角度をθとする。ここで、配管Aの上流側(図3において左側)に設置された第1超音波送受信部20Aが超音波を送信し、配管Aの下流側(図3において右側)に設置された第2超音波送受信部20Bが当該超音波を受信するときに、当該超音波が配管Aの内部の気体を伝搬する伝搬時間t12は、以下の式(1)で表される。
t12=L/(C+Vcosθ) …(1)
t12=L/(C+Vcosθ) …(1)
一方、配管Aの下流側に設置された第2超音波送受信部20Bが超音波を送信し、配管Aの上流側に設置された第1超音波送受信部20Aが当該超音波を受信するときに、当該超音波が配管Aの内部の気体を伝搬する伝搬時間t21は、以下の式(2)で表される。
t21=L/(C−Vcosθ) …(2)
t21=L/(C−Vcosθ) …(2)
式(1)及び式(2)から、気体の流速Vは、以下の式(3)で表される。
V=(L/2cosθ)・{(1/t12)−(1/t21)} …(3)
V=(L/2cosθ)・{(1/t12)−(1/t21)} …(3)
式(3)において、伝搬経路長L及び角度θは、流量の測定前に既知の値であるから、流速Vは、伝搬時間t12及び伝搬時間t21を計測することで、式(3)から算出することができる。
そして、配管Aの内部を流れる気体の流量Q[m3/s]は、流速V[m/s]と、補数係数K及び配管Aの断面積S[m3/s]と、を用いて以下の式(4)で表される。
Q=KVS …(4)
Q=KVS …(4)
従って、演算制御部55は、伝搬経路長L、角度θ、補数係数K及び配管Aの断面積Sをあらかじめメモリ等に記憶しておく。そして、演算制御部55は、受信回路部53から入力される受信信号に基づいて、計時部54により伝搬時間t12及び伝搬時間t21を計測することで、式(3)及び式(4)から、配管Aの内部を流れる気体の流量Qを算出することができる。すなわち、演算制御部55は、本発明における流量算出部として機能するものである。
本実施計形態では、図3と式(1)〜(4)とを用いて、伝搬時間逆数差法により気体の流量を算出する例を示したが、これに限定されない。演算制御部55は、他の方法、例えば、周知の伝搬時間差法により気体の流量を算出するようにしてもよい。
なお、図1では、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bが互いに対向するように、図1において配管Aの上側に第1超音波送受信部20Aを配置し、配管Aの下側に第2超音波送受信部20Bを配置する例を示したが、これに限定されない。第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bは、配管Aの上流側と下流側との外周に設けられていればよい。
また、本実施計形態では、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Aの一方が送信した超音波が、配管Aの内部の気体を伝搬し、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Aの他方で直接受信する例を示したが、これに限定されない。配管Aの内部の気体を伝搬する超音波は、配管Aの内壁において反射し得る。よって、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Aの他方は、配管Aの内壁で2n回(nは正の整数)反射した超音波を受信してもよい。
一般に、超音波は、20kHz以上の周波数帯の音波を意味する。よって、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bが送信する超音波は、20kHz以上の周波数帯の音波である。好ましくは、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bが送信する超音波は、100kHz以上であって2.0MHz以下の周波数帯の超音波である。より好ましくは、第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bが送信する超音波は、0.5MHz以上であって1.0MHz以下の周波数帯の超音波である。なお、いずれの場合であっても、第1超音波送受信部20Aが送信する超音波と第2超音波送受信部20Bが送信する超音波とは、同一周波数であってもよいし、異なる周波数であってもよい。
図1に示す超音波吸収体10は、配管Aの外周面に設けられる。具体的には、超音波吸収体10は、配管Aの外周面において、少なくとも第1超音波送受信部20Aと第2超音波送受信部20Bとの間の領域を覆うように配置され、配管Aの外周面に密着して固定される。第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bが配管Aの外周面に直接接触するように、超音波吸収体10のうちの第1超音波送受信部20A及び第2超音波送受信部20Bが配置される部分は、超音波吸収体10の一部が枠状に切り取られる。
図4は、第1超音波送受信部20Aから送信された超音波が第2超音波送受信部20Bに受信される様子を説明するための断面図である。図4に示すように、例えば、第1超音波送受信部20Aから送信された超音波は、配管Aを通過(透過)して配管Aの内部の気体を伝搬する気体伝搬波W1と、配管Aの管壁で反射して配管Aを伝搬する配管伝搬波W2と、に分けられる。気体伝搬波W1は、再び配管Aを通過して第2超音波送受信部20Bに到達する。一方、配管伝搬波W2も、配管Aの内壁及び外壁を複数回反射しながら第2超音波送受信部20Bに到達し得る。図示及びその詳細な説明を省略するが、第1超音波送受信部20Aから送信された超音波と同様に、第2超音波送受信部20Aから送信された超音波も、気体伝搬波W1と配管伝搬波W2とに分けられ、気体伝搬波W1は配管Aを通過して第1超音波送受信部20Aに到達するとともに、配管伝搬波W2も配管Aの内壁及び外壁を複数回反射しながら第1超音波送受信部20Aに到達し得る。
一般に、一方の媒質を伝搬する音波が、他方の媒質との界面で透過(通過)するか、反射するかは、一方の媒質と他方の媒質との音響インピーダンスの差によって決まる。すなわち、音響インピーダンスの差が小さいほど、一方の配質を伝搬する音波は他方の媒質に透過し、音響インピーダンスの差が大きいほど、一方の配質を伝搬する音波は他方の媒質との界面で反射する傾向がある。
配管Aの内部を流れる流体が、例えば液体である場合、液体の音響インピーダンスと、配管の材料、例えば、ステンレス(SUS)等の金属や合成樹脂等の高分子化合物の音響インピーダンスと、の差が相対的に小さいので、超音波は、配管Aを透過(通過)して内部を流れる液体を伝搬する割合(透過率)が多く(大きく)、つまり、配管Aの管壁で反射する割合(反射率)が少なく(小さく)、配管伝搬波W2のエネルギー(大きさ、又は強度)は小さい。これに対し、気体の音響インピーダンスは、液体の音響インピーダンスと比較して小さい。そのため、配管Aの内部を流れる流体が気体である場合、気体の音響インピーダンスと、配管Aの音響インピーダンスと、の差が相対的に大きくなるので、超音波は、配管Aを透過(通過)して内部を流れる液体を伝搬する割合(透過率)が少なく(小さく)、つまり、配管Aの管壁で反射する割合(反射率)が多く(大きく)、配管伝搬波W2のエネルギー(大きさ、又は強度)は大きい。
ここで、超音波の気体伝搬波W1を受信して伝搬時間を計測し、当該伝搬時間に基づいて流量を測定する超音波流量計において、気体伝搬波W1は検出すべき信号(信号成分)であり、配管伝搬波W2は信号に対するノイズ(ノイズ成分)である。ノイズ成分としての配管伝搬波W2は、超音波吸収体10の劣化や剥離が生じると増大する傾向にある。このような超音波吸収体10の異常(劣化や剥離)を早期に検知するために、本実施形態における演算制御部55は以下のような機能的構成を有している。
すなわち、演算制御部55は、図5に示すように、配管伝搬波W2を特定する配管伝搬波特定部61と、配管伝搬波特定部61で特定した配管伝搬波W2の減衰状態を表す値を取得する減衰状態値取得部62と、基準状態における配管伝搬波W2の減衰状態を表す値と減衰状態値取得部62で取得した値との差又は比が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体10に異常が発生したものと判定する異常判定部63と、を有している。
本実施形態における配管伝搬波特定部61は、混合波(気体伝搬波W1と配管伝搬波W2とが混合した波)を含む超音波の波形に基づいて配管伝搬波W2を特定している。具体的には、図6に示すように、横軸に時間(μsec)、縦軸に電圧(V)をとって超音波の波形を表示したときに、超音波の波形の最大ピークPMAXから左右の最小ピークPMINに向けて2本の直線L1、L2を描き、それら2本の直線L1、L2と横軸との交点T1、T2をそれぞれ混合波の開始時及び終了時とし、混合波開始時T1より所定時間ΔT1前から存在する波形及び/又は混合波終了時T2から所定時間ΔT2後まで存在する波形を、配管伝搬波W2として特定することができる。ΔT2は、ΔT1と異なる値とすることができる。
ここで、最大ピークPMAXとは、図6に示すように、超音波のピークの中で最大値を有するピークを意味する。また、左右の最小ピークPMINとは、図6に示す超音波の波形で最大ピークPMAXの左側(時間的に前)及び右側(時間的に後)に隣接する数個(例えば2〜4個)のピークのうち最小のものを意味する。例えば、図6に示すように、最大ピークPMAXの左側に隣接するピーク2個のうち最小のものを左の最小ピークPMINとし、最大ピークPMAXの右側に隣接するピーク4個のうち最小のものを右の最小ピークPMINとすることができる。なお、本実施形態においては、図6に示すように「正」の最大値を有するピークをPMAXとしているが、負の最大値を有するピークをPMAXとすることもできる。
なお、超音波としては、上流側の第1超音波送受信部20Aが送信し下流側の第2超音波送受信部20Bが受信するもの(上流送信型超音波)と、下流側の第2超音波送受信部20Bが送信し上流側の第1超音波送受信部20Aが受信するもの(下流送信型超音波)と、の2種類があるのは既に述べたとおりである。図6の太線のグラフは上流送信型超音波の波形を示すものであり、図6の細線のグラフは下流送信型超音波の波形を示すものである。これら2種類の超音波の波形の各々に基づいて、2組の配管伝搬波(上流送信型配管伝搬波及び下流送信型配管伝搬波)を特定することもできる。
減衰状態値取得部62は、配管伝搬波特定部61で特定した配管伝搬波W2の減衰状態を表す値を取得するものである。ここで、配管伝搬波W2の減衰状態を表す値としては、配管伝搬波W2の二重平均平方根(RMS)、配管伝搬波W2の最大値と最小値の差、配管伝搬波W2の積算値、配管伝搬波W2のSN比等を採用することができる。例えば、配管伝搬波特定部61が、図6に示すような混合波開始時T1より所定時間ΔT1前から存在する波形を配管伝搬波W2として特定した場合には、減衰状態値取得部62は、減衰状態を表す値として、所定時間ΔT1における配管伝搬波W2のRMSを算出することができる。
異常判定部63は、基準状態における配管伝搬波W2の減衰状態を表す値(基準値)と、減衰状態値取得部62で取得した値(測定値)と、の差が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体10に異常が発生したものと判定するものである。ここで、「基準値」としては、超音波吸収体10の配置直後に取得した初期値(超音波吸収体10が正常な状態における配管伝搬波W2の減衰状態を表す値)を採用したり、実験等で予め取得した値を採用したりすることができる。
図7は、異常判定部63で用いられる「基準値」を設定するための実験結果を示すグラフであり、測定対象となる気体(空気)の圧力を0.3MPaに設定したときの超音波の波形を表示したものである。図7においては、横軸に時間(μsec)を、縦軸に電圧(V)を、各々とっている。図7(A)は外周360mmの超音波吸収体10のうち外周70mmの部分を剥離させたときの超音波の波形であり、このとき特定された配管伝搬波W2は破線で囲まれた部分の波形であり、減衰状態を表す値であるSN比は「3.8」であった。図7(B)は外周360mmの超音波吸収体10のうち外周37mmの部分を剥離させたときの超音波の波形であり、このとき特定された配管伝搬波W2は破線で囲まれた部分の波形であり、減衰状態を表す値であるSN比は「7.6」であった。図7(C)は外周360mmの超音波吸収体10のうち全く剥離がないときの超音波の波形であり、このとき特定された配管伝搬波W2は破線で囲まれた部分の波形であり、減衰状態を表す値であるSN比は「9.1」であった。上記実験により、(SN比=)「9.1」が「基準値」に設定された。
異常判定部63で用いられる「閾値」は、配管伝搬波W2の減衰状態を表す値の種類や超音波の波形等に応じて適宜設定することができる。例えば、閾値を「2.0」に設定すると、図7(B)のケースは基準値(9.1)と測定値(7.6)の差が「1.5」であり上記閾値未満であることから超音波吸収体10には異常がないものと判定され、図7(A)のケースは基準値(9.1)と測定値(3.8)との差が「5.3」であり上記閾値を超えることから超音波吸収体10に異常が発生したものと判定される。一方、閾値を「1.0」に設定すると、図7(B)のケースも基準値と測定値の差(1.5)が上記閾値を超えることから、超音波吸収体10に異常が発生したものと判定される。
次に、図8のフローチャートを用いて、本実施形態における超音波流量計1の超音波吸収体10の異常判定方法について説明する。
まず、超音波流量計1の演算制御部55のメモリに、超音波吸収体10の異常判定で用いる基準値(基準状態における配管伝搬波W2の減衰状態を表す値)を記憶させる(基準値記憶工程:S1)。基準値としては、前述のように、超音波吸収体10の配置直後に取得した初期値を採用したり、実験等で予め取得した値を採用したりすることができる。
次いで、演算制御部55の配管伝搬波特定部61は、配管伝搬波W2を特定する(配管伝搬波特定工程:S2)。配管伝搬波特定工程S2においては、前述のように、図6に示すような超音波の波形に基づいて混合波開始時T1を特定し、混合波開始時T1より所定時間ΔT1前から存在する波形を配管伝搬波W2として特定することができる。
次いで、演算制御部55の減衰状態取得部62は、配管伝搬波W2の減衰状態を表す値(測定値)を取得する(減衰状態値取得工程:S3)。減衰状態値取得工程S3においては、例えば配管伝搬波特定工程S2において図6に示すような所定時間ΔT1存在する波形を配管伝搬波W2として特定した場合に、所定時間ΔT1における配管伝搬波W2のRMSを、減衰状態を表す値(測定値)として算出(取得)することができる。
続いて、演算制御部55の異常判定部63は、基準値記憶工程S1で記憶させた基準値と、減衰状態値取得工程S3で取得した値(測定値)と、の差が所定の閾値を超えるか否かを判定する(異常判定工程:S4)。そして、異常判定部63は、基準値と測定値との差が所定の閾値を超える場合に、超音波吸収体10に異常が発生したものとして所定の警告情報を入出力部56の表示ディスプレイ等に表示して出力し(異常出力工程:S5)、その後制御を終了する。一方、異常判定部63は、基準値と測定値との差が所定の閾値以下である場合に、超音波吸収体10に異常が発生していないものとしてそのまま制御を終了する。
以上説明した実施形態に係る超音波流量計1においては、基準状態における配管伝搬波W2の減衰状態を表す値(基準値)と、特定した配管伝搬波W2の減衰状態を表す値(測定値)と、を比較し、両者の差が所定の閾値を超える場合に、超音波吸収体に10に異常が発生したものと判定することができる。すなわち、配管伝搬波W2を特定し減衰状態を表す値を(測定値)取得して基準状態の値(基準値)と比較するだけで、超音波吸収体10の異常(劣化や剥離)をきわめて容易に検知することができる。従って、超音波吸収体10が劣化する期間を測定して適切な交換時期を把握したり、施工初期の設置不良を発見したりすることができる。
なお、以上の実施形態においては、超音波流量計1の演算制御部55の異常判定部63において、基準状態における配管伝搬波W2の減衰状態を表す値(基準値)と、減衰状態値取得部62で取得した値(測定値)と、の「差」が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体10に異常が発生したものと判定した例を示したが、基準値と測定値との「比」が所定の閾値を超える場合に超音波吸収体10に異常が発生したものと判定することもできる。
また、以上の実施形態においては、超音波の波形の最大ピークから左右の最小ピークに向けて2本の直線を描き、それら2本の直線と横軸との交点をそれぞれ混合波の開始時及び終了時とし、混合波開始時より所定時間前から存在する波形(又は混合波終了時から所定時間後まで存在する波形)を配管伝搬波として特定した例を示したが、配管伝搬波の特定方法はこれに限られるものではない。例えば、受信波形の波数と周波数との関係から波形の大きさが推定できるので、超音波の波形の最大ピークPMAXが発生した時点から所定時間(例えば5〜10μsec)前の波形(又は所定時間後の波形)を配管伝搬波W2として特定することもできる。
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、この実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、上記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、上記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1…超音波流量計
10…超音波吸収体
20A…第1超音波送受信部
20B…第2超音波送受信部
55…演算制御部(流量算出部)
61…配管伝搬波特定部
62…減衰状態値取得部
63…異常判定部
A…配管
W1…気体伝搬波
W2…配管伝搬波
10…超音波吸収体
20A…第1超音波送受信部
20B…第2超音波送受信部
55…演算制御部(流量算出部)
61…配管伝搬波特定部
62…減衰状態値取得部
63…異常判定部
A…配管
W1…気体伝搬波
W2…配管伝搬波
Claims (7)
- 内部を流体が流れる配管における上流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第1超音波送受信部と、前記配管における下流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第2超音波送受信部と、前記第1超音波送受信部から送信された前記超音波が前記第2超音波送受信部に受信されるまでの時間と前記第2超音波送受信部から送信された前記超音波が前記第1超音波送受信部に受信されるまでの時間とに基づいて前記流体の流量を算出する流量算出部と、前記配管の外周に設けられ前記超音波の配管伝搬波を吸収する超音波吸収体と、を備える超音波流量計であって、
前記配管伝搬波を特定する配管伝搬波特定部と、
前記配管伝搬波特定部で特定した前記配管伝搬波の減衰状態を表す値を取得する減衰状態値取得部と、
基準状態における前記配管伝搬波の減衰状態を表す値と、前記減衰状態値取得部で取得した値と、の差又は比が所定の閾値を超える場合に前記超音波吸収体に異常が発生したものと判定する異常判定部と、
を備える、超音波流量計。 - 前記配管伝搬波特定部は、流体伝搬波と前記配管伝搬波との混合波を含む前記超音波の波形に基づいて前記配管伝搬波を特定するものである、請求項1に記載の超音波流量計。
- 前記配管伝搬波の減衰状態を表す値は、前記配管伝搬波の二重平均平方根(RMS)である、請求項1又は2に記載の超音波流量計。
- 前記配管伝搬波の減衰状態を表す値は、前記配管伝搬波の最大値と最小値の差である、請求項1又は2に記載の超音波流量計。
- 前記配管伝搬波の減衰状態を表す値は、前記配管伝搬波の積算値である、請求項1又は2に記載の超音波流量計。
- 前記配管伝搬波の減衰状態を表す値は、前記配管伝搬波のSN比である、請求項1又は2に記載の超音波流量計。
- 内部を流体が流れる配管における上流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第1超音波送受信部と、前記配管における下流側の外周に設けられ超音波の送信及び受信を行う第2超音波送受信部と、前記第1超音波送受信部から送信された前記超音波が前記第2超音波送受信部に受信されるまでの時間と前記第2超音波送受信部から送信された前記超音波が前記第1超音波送受信部に受信されるまでの時間とに基づいて前記流体の流量を算出する流量算出部と、前記配管の外周に設けられ前記超音波の配管伝搬波を吸収する超音波吸収体と、を備える超音波流量計の超音波吸収体の異常判定方法であって、
前記配管伝搬波を特定する配管伝搬波特定工程と、
前記配管伝搬波特定工程で特定した前記配管伝搬波の減衰状態を表す値を取得する減衰状態値取得工程と、
基準状態における前記配管伝搬波の減衰状態を表す値と、前記減衰状態値取得工程で取得した値と、の差又は比が所定の閾値を超える場合に、前記超音波吸収体に異常が発生したものと判定する異常判定工程と、
を含む、超音波吸収体の異常判定方法。
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