JP3763254B2 - アルミニウムの精製方法及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウムの精製方法およびその用途に関する。詳しくは、偏析原理を利用して工業的に有利で、Si、Feなどの共晶不純物を十分に低減し得る、高純度アルミニウムの製造方法および該方法により得られた精製アルミニウムの用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
偏析原理を利用したアルミニウムの精製方法としては、保持容器内に保持した溶融アルミニウムを下方または側面から冷却凝固させる際に,その凝固界面近傍の溶融アルミニウムを攪拌する方法や、溶融アルミニウムを保持する容器の内壁や溶融アルミニウムに浸漬した冷却体の表面に晶出したアルミニウム結晶をかき落として保持容器の底部にピストンなどにより押し固める方法、溶融アルミニウムに浸漬した冷却体を回転させながら、冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる方法などが知られている。
【0003】
特公昭59−41500号公報には、撹拌子を備えたるつぼ内に精製すべき溶融アルミニウムを入れ、るつぼ底部より冷却し、攪拌子を回転、上昇させながらアルミニウムを凝固成長させる高純度アルミニウムの製造方法が開示されている。
【0004】
また、特公平1−37458号公報には、水平な床を備え、側壁が断熱構造となっている容器に溶融アルミニウムを収容し、該溶融アルミニウムに攪拌機を挿入して攪拌しながら、一方では該床内部の冷却媒体流通管に冷却媒体を流通させ、他方では該溶融アルミニウムの表面を加熱することにより、該床表面にアルミニウム結晶を晶出させるアルミニウムの純化方法が開示されている。
【0005】
また、特開平5−125462号公報には、溶融アルミニウムを容器内に保持し、該容器の上部および側部を制御された温度条件下に保温管理し、該容器底部より冷却しながら、該容器をその垂直軸を中心に回転させると同時に、該容器中の溶融アルミニウムを該容器回転方向と逆方向に攪拌子により回転させることにより容器底部に純度の高いアルミニウムを晶出させるアルミニウムの精製方法が開示されている。
【0006】
また、特開昭59−170227号公報には、溶融アルミニウムを保持した容器の内壁に純度の高いアルミニウム結晶を晶出させ、該結晶を容器底部に掻き落とし、沈積した結晶を押し固めるアルミニウムの精製方法が開示されている。
【0007】
また、特開昭62−158830号公報には、溶融アルミニウムに浸漬した冷却体の表面に晶出したアルミニウム結晶をピストンによって容器底部に圧縮し、残留する溶融アルミニウムを排出するアルミニウムの精製方法が開示されている。
【0008】
また、特公昭61−3385号公報には、溶融アルミニウムに浸漬した冷却体を特定の条件で回転させながら、その表面に純度の高いアルミニウムを晶出させるアルミニウムの精製方法が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来の技術においては、得られる精製アルミニウム中の不純物を必ずしも十分には低減できない。その理由は、偏析原理を利用したこれらのアルミニウムの精製方法においては、1回の精製操作で低減できる共晶不純物の割合に限界があることにある。
【0010】
偏析原理を利用した精製方法において、不純物の低減割合は、精製係数(=精製アルミニウム中の不純物元素の濃度/精製の原料となるアルミニウム中の不純物元素の濃度)で表わすことができる。例えば、Si、Feなどの共晶不純物を含む精製の原料となるアルミニウムを偏析原理を利用した精製方法により精製する場合、これら共晶元素の精製係数は通常1よりも小さいので低減は可能であるが、Al−Si、Al−Fe等の状態図等で示される平衡分配係数(=精製アルミニウム中の不純物元素の平衡濃度/溶融した精製の原料となるアルミニウム中の不純物元素の平衡濃度)未満に低減することは一般的には困難である。実際には、平衡分配係数よりも大きい実効分配係数(不純物元素の濃度が凝固界面の溶融した精製の原料となるアルミニウム側で平衡濃度よりも増大する場合の分配係数)未満に低減することは一般的には困難である。また、工業的にアルミニウムの精製を行なう場合は、溶融した精製の原料となるアルミニウムの20〜70%程度を晶出させるが、晶出量の増大にともない、溶融した精製の原料となるアルミニウム中の共晶不純物元素の濃度が増大する結果、精製係数はより大きい値となり、得られる精製アルミニウム中の不純物を十分には低減できないのである。
【0011】
2回以上の精製操作を工業的に実施する方法として、雑誌「省エネルギー、35巻、4号、45頁(1983年)」に、コージュナルプロセスなる方法が開示されている。
【0012】
本発明の目的は、全体プロセスにおける製品歩留り(=精製されたアルミニウムの回収量/精製の原料となるアルミニウムの投入量)が更に向上し、しかもSi、Feなどの共晶不純物が十分に低減できる、アルミニウムの精製方法および該方法により得られる精製アルミニウムの用途を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる状況に鑑み、偏析原理を利用したアルミニウムの精製方法について鋭意検討した結果、精製工程を特殊な方法により連続化することにより、工業的に有利な、共晶不純物を極めて効率よく低減し得るアルミニウムの精製方法を見出し本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の1.〜11.から成る。
1.保持容器N+1個(Nは2以上の整数)と冷却体N個を用意し、N+1個の保持容器に1からN+1までの番号を付けN個の冷却体に1からNまでの番号を付け、N+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した後、以下の一連の工程(1)から(4)を2回以上繰り返し行い、その後1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出し、n+1番目(nは1からNまでの整数)の保持容器に保持された溶融アルミニウムをn番目の保持容器にnが順に1からNとなる順番で移し替え、工程(4)にて回収された、精製されたアルミニウムの一部を溶融状態でN+1番目の容器に供給するまでを1サイクル目とし、2サイクル目以降はN+1個の保持容器に前のサイクルの終了時のアルミニウムを溶融状態で保持した後、1サイクル目におけるN+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した後の操作を1サイクル目と同様に行うアルミニウムの精製方法。
(1)N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬し、冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる工程、
(2)純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を溶融アルミニウムから引き上げた後、n+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬できるように保持容器と冷却体を相対的に移動させ、また、1番目の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを補給する工程(但し、各サイクルにおける一連の工程(1)から(4)の繰り返しの最終回は補給しなくともよい)、
(3)純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を、n+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬して、N個の冷却体の表面に晶出した純度の高いアルミニウムを融解する工程、
(4)N個の冷却体を溶融アルミニウムから引き上げた後、n番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬できるように保持容器と冷却体を相対的に移動させ、また、N+1番目の保持容器から精製された溶融アルミニウムを回収する工程(但し、各サイクルにおける一連の工程(1)から(4)の繰り返しの最終回は回収しなくともよい)。
【0015】
2.Nが2または3である上記1.に記載のアルミニウムの精製方法。
3.各保持容器に保持するアルミニウムの純度が精製の原料となるアルミニウムよりも高く、かつn+1番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度がn番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度よりも高い所定の純度以上であるアルミニウムを、最初にN+1個の保持容器に溶融状態で保持する上記1.または2.に記載のアルミニウムの精製方法。
4.1つのサイクルにおいて、一連の工程(1)から(4)を5ないし15回繰り返し行う上記1.〜3.のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
5.工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬する前に、1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出し、該1番目の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で供給する工程を、1つのサイクルにおいて1ないし2回実施する上記1.〜4.のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
【0016】
6.工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬し、冷却体を中心に冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させ、かつ、溶融アルミニウム中でガス気泡を形成するガスを溶融アルミニウム中に導入して冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる上記1.〜5.のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
7.ガス気泡を形成するガスが空気である上記6.に記載のアルミニウムの精製方法。
8.工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬し、冷却体を回転させながら冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる上記1.〜7.のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
9.工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムに、周面の温度がアルミニウムの融点未満のn番目の冷却体が浸漬するように回転させながら浸漬する、及び/又は、工程(2)において、純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を、回転させながら溶融アルミニウムから引き上げる上記1.〜8.のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
10.全体プロセスにおけるSi、Feの精製係数(=精製アルミニウム中の不純物元素の濃度/精製の原料となるアルミニウム中の不純物元素の濃度)がそれぞれ0.1以下、0.05以下であり、かつ、製品歩留まり(=回収製品量/精製の原料となるアルミニウムの投入量)が0.4を超える上記1.〜9.のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
11.上記1.〜10.のいずれかに記載の方法により得られた精製アルミニウムを原料として用いた電解コンデンサー用アルミニウム箔。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の方法においては、溶融アルミニウムを保持するための保持容器をN+1個と、該保持容器に保持された溶融アルミニウムに浸漬し、表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる冷却体N個を用いる。N+1個の保持容器は1番目からN+1番目まで、N個の冷却体は1番目からN番目までそれぞれ順に番号をつける。
保持容器ならびに冷却体の溶融アルミニウムとの接触面は、アルミニウムを汚染しないか、または、汚染が生じても晶出するアルミニウムの純度にほとんど影響しないような材質で構成されていることが好ましい。溶融アルミニウムとの接触面を構成する材質としては、例えば、アルミナ、マグネシア、カルシアなどの酸化物セラミックス、窒化けい素、炭化けい素、窒化ほう素などの非酸化物セラミックス、および黒鉛、炭素などが採用可能である。さらに、上記材質を複合化して用いたり、表面処理して用いることも可能である。また、通常、鉄、ステンレスなどの金属は溶融アルミニウムと接触して溶融アルミニウムを汚染するが、上述したような非汚染物質を金属の表面に処理して用いることも可能である。
【0018】
本発明の方法においては、まず最初にN+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持する。
精製の原料となるアルミニウムは、状態図のアルミニウム隅で共晶反応を示すSi、Feなどの共晶元素を不純物として含む。その外に、Ti、Vなどの包晶元素を含む場合もあるが、偏析原理を利用した精製方法において、包晶元素を共晶元素と同時に除去することは困難で、逆に濃縮する傾向がある。従って、これらの包晶元素の低減が必要な場合には、溶融アルミニウムにB(ほう素)を添加してTi、Vなどのほう化物を形成させ、分離する所謂ボロン処理を実施することが好ましい。ボロン処理については、例えば「アルミニウム材料の基礎と工業技術」(社団法人軽金属協会)の第343頁(1985年)に記載されているように、ほう弗化カリやAl−B合金の形でBを投入しTi、Vなどのほう化物を形成させ、沈降、除去することが多い。
本発明の方法において、精製の原料となるアルミニウムの純度は99wt%から99.99wt%程度が好ましい。
精製の原料となるアルミニウムは、例えば、別途溶解炉などにて融解し、精製に用いられる容器に溶融状態で供給して保持するが、固体状態で容器に供給した後、容器内で融解しても何ら差し支えない。
【0019】
本発明の方法において、まず最初にN+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した場合、一連の工程(1)から(4)を繰返すに従い、n+1番目の保持容器に保持されるアルミニウムの純度はn番目の保持容器に保持されるアルミニウムの純度よりも高くなっていく。
本発明の好ましい態様においては、最初にN+1個の保持容器に、純度が精製の原料となるアルミニウムよりも高く、n+1番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度が、n番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度よりも高い所定の純度以上であるアルミニウムを溶融状態で保持した後、一連の工程(1)から(4)を2回以上繰り返し行う。
ここで言う所定の純度とは、本発明の方法においてサイクルを数サイクル以上繰返して精製アルミニウムの生産を続けた後に到達する各サイクル開始前の各保持容器内の溶融アルミニウムの純度である。言い換えると、本発明の方法において、N+1個の保持容器に溶融状態で保持されるアルミニウムの純度が、各精製サイクルの開始時に各精製サイクルのn番目同士の保持容器に保持される溶融アルミニウムの純度がそれぞれ等しくなるような純度である。
該所定の純度は、最初にN+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持して、本発明の方法を数サイクル以上繰返し実施した後に、サイクル開始時の保持容器N+1個にそれぞれ保持された溶融アルミニウムの純度である。
【0020】
また、該所定の純度は、工程(2)において1番目の保持容器に補給する精製の原料となるアルミニウム中の不純物濃度、工程(1)での回収率(%)(=晶出アルミニウム量/初期溶融アルミニウム量×100)、1回の精製操作における不純物元素の精製係数(=晶出アルミニウム中の不純物元素の濃度/晶出前の溶融アルミニウム中の不純物元素の濃度)、一連の工程(1)から(4)の繰り返し回数を決めれば、例えばパーソナルコンピューター等による収束計算にて求めることも可能である。
好ましい態様に示すように、最初に、N+1個の保持容器に、純度が精製の原料となるアルミニウムよりも高く、n+1番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度が、n番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度よりも高い所定の純度以上であるアルミニウムを溶融状態で保持しておくことにより、一連の工程(1)から(4)を繰り返す場合に、繰返しの初回から極めて純度が高い、精製されたアルミニウムが回収され、かつ、一連の工程(1)から(4)の繰返しにより回収される精製されたアルミニウムの純度の変化が小さくなる。また、1つの精製サイクルで回収される精製されたアルミニウムの純度の平均値の、精製のサイクル間での変化も小さくなる。
【0021】
本発明の方法における一連の工程(1)から(4)について、以下に説明する。
工程(1)においては、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムに、n番目の冷却体が浸漬するように浸漬し、冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる。
冷却体を溶融アルミニウムに浸漬する方法については特に制限はなく、保持容器を移動させても、冷却体を移動させても、両方を移動させてもよい。
冷却体には何らかの冷却手段が付加されていることが望ましく、例えば、中空構造にして内部に冷却媒体を循環させるなどの方法が採用可能である。冷却体の内部に循環させる冷却媒体については特に制限はないが、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、不活性ガスなどの気体、水、シリコンオイルなどの液体が採用可能である。冷却能力を増大させるために、気体を加湿してもよい。
また、冷却体の表面に晶出するアルミニウムの純度をより高くするための好ましい態様として以下の方法が実施可能である。
【0022】
(a)冷却体を中心に冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させ、かつ、溶融アルミニウム中でガス気泡を形成するガスを溶融アルミニウム中に導入して冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる方法。
また、冷却体を中心に冷却体の周囲で溶融アルミニウムに働く遠心加速度が、0.01m/s2以上、1500m/s2以下の範囲になるように溶融アルミニウムを旋回させ、かつガス気泡を形成するガスの導入量が晶出させるアルミニウム1kg当たりにつき0.01〜150リットル(25℃、1気圧)の範囲になるようにガス気泡を溶融アルミニウム中に導入して冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる方法。
これらの場合、溶融アルミニウム中でガス気泡を形成するガスの種類としては、基本的にはその温度で溶融アルミニウム中で気体状態であり、溶融アルミニウム中に多量に溶解しないガスが好ましく、ヘリウム、アルゴン等の溶融アルミニウムに対して不活性なガス、窒素等の溶融アルミニウムに対して実質的に不活性なガス、空気、塩素、塩化物ガス、またはこれらの混合ガスが利用可能である。ガス気泡を形成するガスの種類が空気であることがより好ましい。冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させるにあたっては、例えば、冷却体を回転させる、保持容器を回転させる、攪拌子または電磁力により溶融アルミニウムを旋回させるなどの方法が採用可能である。
(b)冷却体を回転させて冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる方法。
(c)冷却体を回転させながら溶融アルミニウムに浸漬していく方法。この場合、周面がアルミニウムの融点未満の温度の冷却体を回転させながら溶融アルミニウムに浸漬していくことにより、精製時間の短縮もはかることができる。
好ましくは、工程(1)において、n番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムに、周面がアルミニウムの融点未満の温度のn番目の冷却体を、該冷却体の外周表面と溶融アルミニウムとの相対速度が、1000mm/s以上、8000mm/s未満となるように回転させながら溶融アルミニウムに浸漬するとともに冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる。
該冷却体を回転させながら溶融アルミニウムに浸漬する場合、溶融アルミニウムは融点以上、好ましくは670℃以上に加熱されている必要がある。
冷却体の表面に晶出させる純度の高いアルミニウムの量、即ち単位精製工程での回収率(%)(=晶出アルミニウム量/初期溶融アルミニウム量×100)は、通常20%〜70%程度であり、好ましくは20%〜50%、より好ましくは20%〜35%である。
【0023】
工程(2)においては、純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を溶融アルミニウムから引き上げた後、n+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬できるように、保持容器と冷却体を相対的に移動させ、また、1番目の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを補給する。
精製されたアルミニウムの純度をより高くするための好ましい態様として、純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を、回転させながら溶融アルミニウムから引き上げていく方法が実施可能である。
工程(2)において、純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を、該冷却体の外周表面と溶融アルミニウムとの相対速度が500mm/s以上、4000mm/s未満となるように回転させながら溶融アルミニウムから引き上げる方法がさらに好ましい。
また、工程(1)および工程(2)において、冷却体を回転させながら溶融アルミニウムに浸漬していく方法[工程(1)]と、純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を回転させながら溶融アルミニウムから引き上げる方法[工程(2)]の何れか一方の方法を採用しても良く、また、双方の方法を採用しても良い。
【0024】
冷却体を溶融アルミニウムから引き上げる方法、ならびに、保持容器と冷却体を相対的に移動させる方法については特に制限はなく、保持容器を移動させても、冷却体を移動させても、両方を移動させてもよい。例えば、各冷却体と各保持容器を等間隔に配置しておき、各冷却体を同時に引き上げ、その後、各保持容器を同時に移動させるなどの方法が採用可能である。
1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムの量は、工程(1)において1番目の冷却体の表面に晶出した純度の高いアルミニウムの量が投入した精製の原料となるアルミニウムの量よりも減少しているため、精製の原料となるアルミニウムをその減少分だけ補給する。但し、一連の工程(1)から(4)の繰り返しの最終回は、その後1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出するため、補給しなくともよい。
【0025】
工程(3)においては、純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を、n+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬して、N個の冷却体の表面に晶出した純度の高いアルミニウムを融解する。
冷却体を溶融アルミニウムに浸漬する方法については、工程(1)と同様に特に制限はなく、保持容器を移動させても、冷却体を移動させても、両方を移動させてもよい。
冷却体の表面に晶出した純度の高いアルミニウムを融点以上に加熱された溶融アルミニウムに浸漬して融解させる。融解する際に溶融アルミニウムを加熱する手段については特に制限はないが、重油、軽油、灯油などの燃料油、プロパンガス、液化石油ガスなどの燃料ガスなどの燃焼、あるいは電気による抵抗加熱ヒーター等を用いて、保持容器の外周面および/または溶融アルミニウムの上面から加熱することが可能である。冷却体の内部に加熱手段を装備しておき、冷却体を加熱しても何ら差し支えない。
なお、冷却体の表面に晶出した純度の高いアルミニウムを融解する際に、冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させたり、溶融アルミニウムに浸漬した冷却体を回転させることによって融解を促進することも可能である。
【0026】
工程(4)においては、N個の冷却体を溶融アルミニウムから引き上げた後、n番目の保持容器に保持された溶融アルミニウム中に、n番目の冷却体が浸漬できるように、保持容器と冷却体を相対的に移動させ、また、N+1番目の保持容器から精製された溶融アルミニウムを回収する。
冷却体を溶融アルミニウムから引き上げる方法、ならびに、保持容器と冷却体を相対的に移動させる方法については、工程(2)と同様に特に制限はない。
N+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムの量は、工程(3)においてN番目の冷却体の表面から融解した純度の高いアルミニウムの量分が増加しているため、精製されたアルミニウムとしてその増加分を回収する。但し、一連の工程(1)から(4)の繰り返しの各サイクルにける最終回は、その後N+1番目の保持容器がN番目の保持容器となるため、回収しなくともよい。
【0027】
本発明の方法においては、以上に詳述した一連の工程(1)から(4)を2回以上繰返して行う。
n番目の保持容器でn番目の冷却体の表面に晶出させた純度の高いアルミニウムを、n+1番目の保持容器で融解することの繰返しにより、より大きい番号の保持容器に保持された溶融アルミニウムほど純度が高くなり、N+1番目の保持容器から回収される精製された溶融アルミニウムは、極めて純度が高い高純度アルミニウムとなるのである。
一連の工程(1)から(4)の繰返しの回数については、2回以上であれば特に制限はないが、繰返し回数が少な過ぎると製品歩留まり(回収製品量/精製の原料となるアルミニウムの投入量)が低く、また、繰返し回数が増大するにつれてより小さい番号の保持容器に保持された溶融アルミニウムほど純度が低くなり、結果としてN+1番目の保持容器から回収される精製された溶融アルミニウムの純度が低下する。好ましい繰返し回数は5〜15回である。
【0028】
本発明の方法において、Nは2以上の整数であり、特に制限はない。Nが大きいほど、N+1番目の保持容器から回収される精製された溶融アルミニウムの純度は高くなるが、あまりNを大きくすると多大な設備が必要となる。通常の精製の原料となるアルミニウムの不純物濃度(100〜10000ppm)と、通常使用される精製されたアルミニウムの不純物濃度(10〜100ppm)から勘案して、好ましいNは2または3である。
【0029】
本発明の方法においては、一連の工程(1)から(4)を2回以上繰り返し行った後、1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出し、n+1番目の保持容器中の溶融アルミニウムをn番目の保持容器にnが順に1からNとなる順番で移し替え、つまり空になった1番目の保持容器に2番目の保持容器の中の溶融アルミニウムを移し替え、続いて空になった2番目の保持容器に3番目の保持容器の中の溶融アルミニウムを移し替え、その後にN+1番目の容器に工程(4)にて回収された、精製されたアルミニウムの一部を溶融状態で供給するまでを1サイクルとし、2サイクル以降はN+1個の保持容器に前のサイクルの終了時のアルミニウムを溶融状態で保持した後、一連の工程(1)から(4)を2回以上繰り返し行う。1番目の容器から排出した溶融アルミニウムは不純物が多く含まれているので本発明では利用しない。
上述したように、一連の工程(1)から(4)の繰返し回数が増大するにつれて、より小さい番号の保持容器に保持された溶融アルミニウムほど純度が低くなる。一連の工程(1)から(4)を所定の回数繰返した後、1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムの純度は、それ以上一連の工程(1)から(4)を繰返しても所望の純度まで精製されたアルミニウムが得られない程度に低下しているため、1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出する。2番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムの純度は比較的高いので、該溶融アルミニウムを1番目の保持容器に移し替え、同様にしてn+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムをn番目の保持容器に順次移し替える。その結果、N+1番目の保持容器は空になるので、既に繰返された工程(4)にて回収された、精製された溶融アルミニウムの一部を供給する。
これらの溶融アルミニウムの移し替えと供給までを1サイクル目とし、2サイクル目以降はN+1個の保持容器に前のサイクルの終了時のアルミニウムを溶融状態で保持した後、1サイクル目におけるN+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した後の操作を1サイクル目と同様に行うことにより、連続的かつ安定したアルミニウムの精製が可能となる。
【0030】
また、一連の工程(1)から(4)を所定の回数繰り返す途中で、工程(1)において、n番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体を浸漬する前に、1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出し、該1番目の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で供給することも本発明の好ましい態様の一つであり、その場合にはN+1番目の保持容器から回収される精製されたアルミニウムの純度はさらに向上する。
【0031】
本発明の方法を図1に、また、Nを2とした場合の方法を図2に示す。
本発明の方法によれば、0.4を超える高い製品歩留まり(=回収製品量/精製の原料となるアルミニウムの投入量)において、共晶不純物が極めて効率よく低減される。
従来技術による偏析原理を利用した精製方法において、1回の精製操作におけるSi、Feの精製係数(=精製アルミニウム中の不純物元素の濃度/精製の原料となるアルミニウム中の不純物元素の濃度)は、製品歩留まりを0.2〜0.5程度とした場合、それぞれおよそ0.2、0.1程度である。さらに小さい精製係数を得るためには、2回の精製操作を実施する必要があり、その結果Si、Feのトータルの精製係数はそれぞれおよそ0.1以下、0.05以下程度に向上するが、製品歩留まりは0.25以下程度に減少してしまう。
一方、本発明の、最初にN+1個の保持容器に、純度が精製の原料となるアルミニウムよりも高く、n+1番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度が、n番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度よりも高い所定の純度以上であるアルミニウムを溶融状態で保持した後、一連の工程(1)から(4)を2回以上繰り返し行う方法において、工程(1)での回収率(%)(=晶出アルミニウム量/初期溶融アルミニウム量×100)を0.25程度とし、単位精製操作におけるSi、Feの精製係数を従来技術と同じ0.2、0.1程度とし、さらにNを2、一連の工程(1)から(4)の繰り返しの回数を10回とした場合、Si、Feのトータルの精製係数はそれぞれおよそ0.1以下、0.05以下に向上し、しかも0.4を超える高い製品歩留まりを達成することが可能となる。
また、本発明においては、最初に、所定の純度以上ではなく、N+1個の全ての保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した後、一連の工程(1)から(4)を2回以上繰り返し行う方法においても、サイクル数を増大させるに従いSi、Feのトータルの精製係数はそれぞれおよそ0.1以下、0.05以下に向上し、しかも0.4を超える高い製品歩留まりを達成することが可能となる。
【0032】
本発明の方法により得られる精製アルミニウムは、電解コンデンサー用アルミニウム箔の原料として使用することができる。
本発明の方法により得られる精製アルミニウムは、例えば「アルミニウム材料の基礎と工業技術」(社団法人軽金属協会)の第347頁〜第350頁(1985年)に記載されているように、スラブ鋳造、熱間圧延、冷間圧延、箔圧延等の工程を経て電解コンデンサー用アルミニウム箔に加工される。
【0033】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例の1、2は、参考例において実験により求められた工程(1)における1回の精製操作における不純物元素Si、Feの精製係数(=晶出アルミニウム中の不純物元素の濃度/晶出前の溶融アルミニウム中の不純物元素の濃度)0.2および0.08を用い、最初にそれぞれの保持容器に溶融状態で保持するアルミニウム中の不純物濃度、工程(2)において1番目の保持容器に補給する精製の原料となるアルミニウム中の不純物濃度、工程(1)での回収率(%)(=晶出アルミニウム量/初期溶融アルミニウム量×100)、一連の工程(1)から(4)の繰り返し回数を決め、パーソナルコンピューターによる収束計算(Excelを利用)にて求めたシミュレーション結果である。なお、比較例1および2はシミュレーション結果ではなく実験結果である。
【0034】
参考例
Si、Feの濃度がそれぞれ200、330ppmのアルミニウムを保持容器に溶融状態で保持し、冷却体を浸漬して回収率が約25%に達するまで、冷却体の表面にアルミニウムを晶出させた。なお、溶融アルミニウムへの浸漬時に冷却体を回転させ、また、アルミニウム晶出時に冷却体を回転させて冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させるとともに、空気を気泡状態で溶融アルミニウム中に導入した。アルミニウムが表面に晶出した冷却体を、溶融アルミニウムから引き上げた後、冷却体の表面に晶出したアルミニウムを精製されたアルミニウムとして冷却体から分離回収した。なお、溶融アルミニウムからの引上げ時に冷却体を回転させた。
精製されたアルミニウムに含まれるSi、Feの濃度はそれぞれ39、26ppmであり、精製係数はSi、Feそれぞれ0.2、0.08であった。
【0035】
実施例1
図2に示す本発明の方法において、Si、Feの濃度がそれぞれ140、85ppmのアルミニウムを1番目の保持容器(容器1)に、18、4ppmのアルミニウムを2番目の保持容器(容器2)に、14、2ppmのアルミニウムを3番目の保持容器(容器3)にそれぞれ溶融状態で保持する。
[工程(1)]容器1に保持された精製の原料となるアルミニウムの溶融アルミニウムに1番目の冷却体(冷却体1)を、容器2に保持された溶融アルミニウムに2番目の冷却体(冷却体2)を浸漬してそれぞれ回収率25%に達するまで、個々の冷却体の表面にアルミニウムを晶出させる。
[工程(2)]アルミニウムが表面に晶出した2個の冷却体(冷却体1、冷却体2)を、溶融アルミニウムから引き上げた後、容器2に保持された溶融アルミニウムに冷却体1が、容器3に保持された溶融アルミニウムに冷却体2が浸漬できるようにそれぞれの冷却体を移動させ、また、容器1にSi、Feの濃度がそれぞれ200、330ppmの精製の原料となるアルミニウムを、工程(1)での晶出量分だけ補給する。(但し、一連の工程(1)から(4)の繰返しの最終回は補給しない。)
【0036】
[工程(3)]容器2に保持された溶融アルミニウムに冷却体1が、容器3に保持された溶融アルミニウムに冷却体2が浸漬するように浸漬するとともに加熱して、それぞれの冷却体の表面に晶出したアルミニウムを融解する。
[工程(4)]表面に晶出したアルミニウムが融解したそれぞれの冷却体を、溶融アルミニウムから引き上げた後、容器1に保持された溶融アルミニウムに冷却体1が、容器2に保持された溶融アルミニウムに冷却体2が浸漬できるようにそれぞれの冷却体を移動させ、また、容器3から精製された溶融アルミニウムを、工程(1)での晶出量分だけ回収する。(但し、一連の工程(1)から(4)の繰返しの最終回は回収しない。)
なお、工程(1)においては、溶融アルミへの浸漬時に冷却体を回転させ、また、アルミニウム晶出時に冷却体を回転させて冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させるとともに、空気を気泡状態で溶融アルミニウム中に導入する。工程(2)においては、溶融アルミからの引上げ時に冷却体を回転させる。
以上の一連の工程(1)から(4)を10回繰り返し行う。
その後容器1に保持された溶融アルミニウムを排出し、容器2に保持された溶融アルミニウムを容器1に、容器3に保持された溶融アルミニウムを容器2に順次移し替え、工程(4)にて9回回収される精製されたアルミニウムの内の3回分を容器3に溶融状態で供給(給湯)する。ここまでを1サイクル目とし、2サイクル目以降は3個の保持容器に前のサイクルの終了時のアルミニウムを溶融状態で保持した後、上記の一連の工程(1)から(4)を1サイクル目と同じく10回ずつ繰り返した後、容器1に保持された溶融アルミニウムを排出し、容器2に保持された溶融アルミニウムを容器1に、容器3に保持された溶融アルミニウムを容器2に順次移し替え、工程(4)にて9回回収される精製されたアルミニウムの内の3回分を容器3に溶融状態で供給(給湯)する操作を実施する。
1つのサイクルにおいて、工程(4)において回収される精製されたアルミニウムに含まれるSi、Feの平均濃度はそれぞれ10、1ppmとなり、その濃度はサイクルによらず一定となる。トータルの精製係数はSi、Feそれぞれ0.05、0.006となる。また、工程(4)において9回回収される精製されたアルミニウムから、一連の工程(1)から(4)を10回繰り返し行った後に、1番目の保持容器に移したアルミニウムを差し引いた製品量に対して、工程(2)において9回補給された精製の原料となるアルミニウムを考慮して、トータルの製品歩留まりは0.67となる。
【0037】
実施例2
図2に示す本発明の方法において、Si、Feの濃度がそれぞれ200、330ppmの精製の原料となるアルミニウムを1番目、2番目、3番目の保持容器(容器1、2、3)にそれぞれ溶融状態で保持する。
実施例1と同様に一連の工程(1)から(4)を10回繰り返し行う。
その後容器1に保持された溶融アルミニウムを排出し、容器2に保持された溶融アルミニウムを容器1に、容器3に保持された溶融アルミニウムを容器2に順次移し替え、工程(4)にて9回回収される精製されたアルミニウムの内の3回分を容器3に溶融状態で供給する。ここまでを1サイクル目とし、2サイクル目以降は実施例1と同様に、3個の保持容器に前のサイクルの終了時のアルミニウムを溶融状態で保持した後、1サイクル目における3個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した後の操作を1サイクル目と同様に実施する。
1サイクル目において、工程(4)において回収される精製されたアルミニウムに含まれるSi、Feの平均濃度はそれぞれ110、150ppmとなるが、2サイクル目ではSi、Feの平均濃度はそれぞれ34、27ppm、3サイクル目ではSi、Feの平均濃度はそれぞれ18、6ppmとなり、その後のサイクルではそれ以下の濃度となる。3回目のサイクル以降では、トータルの精製係数はSi、Feそれぞれ0.1以下、0.02以下となる。また、トータルの製品歩留まりは、実施例1と同様0.67となる。
【0038】
比較例1
Si、Feの濃度がそれぞれ210、270ppmの精製の原料となるアルミニウムを保持容器に溶融状態で保持し、冷却体を浸漬して回収率が約25%に達するまで、冷却体の表面にアルミニウムを晶出させた。なお、溶融アルミニウムへの浸漬時に冷却体を回転させ、また、アルミニウム晶出時に冷却体を回転させて冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させるとともに、空気を気泡状態で溶融アルミニウム中に導入した。アルミニウムが表面に晶出した冷却体を、溶融アルミニウムから引き上げた後、冷却体の表面に晶出したアルミニウムを精製されたアルミニウムとして冷却体から分離回収した。なお、溶融アルミニウムからの引上げ時に冷却体を回転させた。
精製されたアルミニウムに含まれるSi、Feの濃度はそれぞれ38、16ppmであり、精製係数はSi、Feそれぞれ0.18、0.06であった。また、製品歩留まりは0.25であった。
【0039】
比較例2
比較例1と同様にして精製の原料となるアルミニウムの精製を実施した。これにより得られた精製されたアルミニウムを、同様の操作を再度繰り返して精製し、さらに精製されたアルミニウムを得た。
回収されたアルミニウムに含まれるSi、Feの濃度はそれぞれ7、2ppmであり、トータルの精製係数はSi、Feそれぞれ0.03、0.01であった。また、トータルの製品歩留まりは0.13であった。
【0040】
以上の結果を表1にまとめる。
【0041】
【表1】
【0042】
上記に示された結果から明らかなように、本発明によれば、Si、Feの精製係数はそれぞれ0.1以下、0.05以下となり、かつ、0.4を超える高い製品歩留まりを確保することが可能である。製品歩留まりが0.25である比較例1に比べて精製係数は50%以下に低減されており、共晶不純物が効率よく除去できることがわかる。また、精製係数が同程度である比較例2に比べて製品歩留まりが3.5倍以上に増大しており、高い生産性、経済性を有することが明らかである。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、Si,Fe等の共晶不純物を含む溶融アルミニウムから効率よく純度の高いアルミニウムを晶出させてアルミニウムを精製することができる。
また、得られた高純度アルミニウムは、電解コンデンサー用箔、スパッタリングターゲット、ハードディスク用基板、超伝導安定化材、ボンディングワイヤー等に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】N+1個の保持容器を1番目からN+1番目まで直線状に順に配置した方法を示した図。
【図2】N+1個の保持容器を1番目からN+1番目まで直線状に順に配置した方法において、Nを2とした場合の方法を示した図。
Claims (11)
- 保持容器N+1個(Nは2以上の整数)と冷却体N個を用意し、N+1個の保持容器に1からN+1までの番号を付けN個の冷却体に1からNまでの番号を付け、N+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した後、以下の一連の工程(1)から(4)を2回以上繰り返し行い、その後1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出し、n+1番目(nは1からNまでの整数)の保持容器に保持された溶融アルミニウムをn番目の保持容器にnが順に1からNとなる順番で移し替え、工程(4)にて回収された精製されたアルミニウムの一部を溶融状態でN+1番目の容器に供給するまでを1サイクル目とし、2サイクル目以降はN+1個の保持容器に前のサイクルの終了時のアルミニウムを溶融状態で保持した後、1サイクル目におけるN+1個の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で保持した後の操作を1サイクル目と同様に行うアルミニウムの精製方法。
(1)N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬し、冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる工程、
(2)純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を溶融アルミニウムから引き上げた後、n+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬できるように保持容器と冷却体を相対的に移動させ、また、1番目の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを補給する工程(但し、各サイクルにおける一連の工程(1)から(4)の繰り返しの最終回は補給しなくともよい)、
(3)純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を、n+1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬して、N個の冷却体の表面に晶出した純度の高いアルミニウムを融解する工程、
(4)N個の冷却体を溶融アルミニウムから引き上げた後、n番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬できるように保持容器と冷却体を相対的に移動させ、また、N+1番目の保持容器から精製された溶融アルミニウムを回収する工程(但し、各サイクルにおける一連の工程(1)から(4)の繰り返しの最終回は回収しなくともよい)。 - Nが2または3である請求項1に記載のアルミニウムの精製方法。
- 各保持容器に保持するアルミニウムの純度が精製の原料となるアルミニウムよりも高く、かつn+1番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度がn番目の保持容器に保持するアルミニウムの純度よりも高い所定の純度以上であるアルミニウムを、最初にN+1個の保持容器に溶融状態で保持する請求項1または2に記載のアルミニウムの精製方法。
- 1つのサイクルにおいて、一連の工程(1)から(4)を5ないし15回繰り返し行う請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
- 工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬する前に、1番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムを排出し、該1番目の保持容器に精製の原料となるアルミニウムを溶融状態で供給する工程を、1つのサイクルにおいて1ないし2回実施する請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
- 工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬し、冷却体を中心に冷却体の周囲で溶融アルミニウムを旋回させ、かつ、溶融アルミニウム中でガス気泡を形成するガスを溶融アルミニウム中に導入して冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
- ガス気泡を形成するガスの種類が空気である請求項6に記載のアルミニウムの精製方法。
- 工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムにn番目の冷却体が浸漬するように浸漬し、冷却体を回転させながら冷却体の表面に純度の高いアルミニウムを晶出させる請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
- 工程(1)において、N個の冷却体をn番目の保持容器に保持された溶融アルミニウムに、周面の温度がアルミニウムの融点未満のn番目の冷却体が浸漬するように、回転させながら浸漬する、及び/又は、工程(2)において、純度の高いアルミニウムが表面に晶出したN個の冷却体を、回転させながら溶融アルミニウムから引き上げる請求項1〜8のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
- 全体プロセスにおけるSi、Feの精製係数(=精製アルミニウム中の不純物元素の濃度/精製の原料となるアルミニウム中の不純物元素の濃度)がそれぞれ0.1以下、0.05以下であり、かつ、製品歩留まり(=回収製品量/精製の原料となるアルミニウムの投入量)が0.4を超える請求項1〜9のいずれかに記載のアルミニウムの精製方法。
- 原料となるアルミニウムを請求項1〜10のいずれかに記載の方法により精製し、次いでスラブ鋳造、熱間圧延、冷間圧延、箔圧延の工程を経て加工することを特徴とする電解コンデンサー用アルミニウム箔の製造方法。
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