JP3370689B2 - アルミニウムの精製法 - Google Patents

アルミニウムの精製法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は不純アルミニウムの溶融
体を分別結晶化の原理を用いて凝固せしめ、原料アルミ
ニウムより純度の高いアルミニウムを分別取得するアル
ミニウムの精製法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】不純アルミニウムを原料として、その溶
融体を保温容器中に保持し、コントロール条件下徐々に
冷却せしめて、より純度の高いアルミニウムを分離取得
する方法が種々提案されている。(例えば、特公昭 49-
5806号及び特公昭50-20536号公報等) 【0003】しかしながら分別結晶化の原理を用いてア
ルミニウムを精製する方法は、一般に生産効率が悪く、
設備費が嵩みコスト高となるとともに、液相のアルミニ
ウム溶融体を攪拌せず静的状態で凝固せしめた場合には
分別結晶化の効果が小さく、相対的に高純度アルミニウ
ムを分別取得することが容易ではない。 【0004】この原因は、凝固過程の固液界面をミクロ
的に観察した場合に明らかとなる。すなわち、分別結晶
化に於いては冷却の過程で結晶核あるいは固相面から純
度の高い樹枝状晶が成長して凝固が進行するが樹枝状晶
の間隙には、不純物が濃縮された液相アルミニウムが残
る。この状態で静的に凝固が進行すると成長した樹枝状
晶間に不純物が濃縮された不純アルミニウム相が拘束さ
れ、残余の溶融アルミニウム相への拡散、液相不純物濃
度の均一化がはかれない状態で凝固が進行してしまう。
このため、凝固相の平均濃度は予期したほどには向上し
ないのである。 【0005】そこで分別結晶化の効果を高めるために、
凝固過程下の液相部を何等かの手段で攪拌し、凝固相に
近接する不純物が濃縮されたアルミニウムを残余の遠隔
部のアルミニウム液相部に十分拡散せしめ、液相内部の
不純物濃度の偏差を可能な限り小さくする種々の試みが
なされている。 【0006】かかる目的に基づき、特公昭59-41500号、
特公平2-2935号のように溶融アルミニウム中で攪拌子を
回転させ、液相部を攪拌し、不純物濃度の均一化を計る
方法等が提案されている。 【0007】回転攪拌子による攪拌効果を高めるには、
回転数が増加させることが必要となるが、回転数が増加
するにつれ、これにより溶融アルミニウム中の回転攪拌
子近傍に生じる渦深さが深くなり、アルミニウム酸化物
が多量に発生したり、更には回転攪拌子まで渦深さが深
くなると攪拌子の芯振れ等が生起し操作が不可能とな
る。従って回転攪拌子のみで攪拌効果を高めるには限界
がある。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】かかる状況下において
本発明者らは鋭意検討を行った結果、前述の渦深さの問
題が解決でき、更により純度の高いアルミニウムを分離
取得しうるべく鋭意検討した結果、攪拌子による溶融ア
ルミニウムの攪拌と該溶融アルミニウムの保持容器を逆
回転させることにより本発明を完成するに至った。 【0009】 【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は原料
溶融アルミニウムを容器中に保持し、該容器の上部およ
び側部を制御された温度条件下に保温管理し、該容器底
部より冷却しながら、(D 4 N)/(d 4 n)〔式中、
D:容器径、d:攪拌子径、N:容器回転数、n:攪拌
子回転数を示す。〕が1〜4.5となる条件で該容器を
その垂直軸を中心に回転せしめると同時に該容器中の溶
融アルミニウムを該容器回転方向と逆方向に攪拌子によ
り回転せしめることにより、容器底部に純度の高いアル
ミニウムを分別析出せしめることを特徴とするアルミニ
ウムの精製法を提供するものである。 【0010】以下、本発明法を詳細に説明する。本発明
法の実施に際し、原料となるアルミニウムは周知の溶融
塩を用いる電解精錬、或いは回収による再生メタル等の
高々99.9重量%程度の純度を有するアルミニウム、
あるいは相当する品位のアルミニウムであって、最終目
的とする純度以下の純度を有するアルミニウムである。
原料アルミニウムは、例えば別途溶解され、耐火煉瓦等
で内張りした鉄製の溶融アルミニウムの保温保持容器中
に溶融状態で供給され保持される。 【0011】該容器は、それ自体の少なくとも上部(蓋
部)、必要において側部に、容器本体を目的とする温度
に保温保持するための任意の加熱手段を付備するもので
あっても、また容器本体には加熱手段を設けず、この容
器を収容する雰囲気温度を制御し得て十分に容器本体を
目的の温度に保温保持しうる収容域、例えば雰囲気温度
制御の保持炉を保有し、該保持炉内に溶融アルミニウム
の保持容器を収容する構造のものであってもよい。 【0012】本発明に於いて該容器はその底部を介して
回転可能な受け台上に固定保持され、台を回転すること
により、容器に所望の回転を付与する構造となってい
る。また該容器を回転する受け台とは別に、モーターを
設置した昇降可能な架台を設け、架台の昇降により攪拌
子を溶融アルミニウム中の所望の位置に配置し、モータ
ーにより攪拌子を該容器の回転方向とは逆方向に回転し
得るよう構成されている。該溶融アルミニウム中に於け
る攪拌子の位置は容器底部へのアルミニウムの晶出量に
合わせて容器底部の晶出アルミニウムの表面と攪拌子の
間隔が一定になるよう連動して架台を上昇せしめること
もできる。 【0013】該容器中に供給された溶融アルミニウムは
該容器の上部、側部は当該部位からの優先的な凝固が進
行しないよう管理された状態に維持され、容器底部を介
して溶融アルミニウムの有する熱を系外に導出して初晶
アルミニウムの晶出に導く。 【0014】冷却手段としては、例えば容器底部に接す
る受け台下面に直接または間接的に空気、水などの媒体
を接触させるなど、制御された条件下の冷却が可能であ
れば任意の手段を採用しうる。 【0015】本発明方法に於いて、攪拌子単独で回転し
た場合、あるいは容器単独で回転した場合、回転数が増
加するにつれて渦深さが深くなる。本発明者らは、実験
により攪拌子の形状に余り関係なく、攪拌子単独の回転
による渦深さは(dn)2 に比例し、また容器単独の回
転による渦深さは(DN)2 に比例することを見出し
た。 【0016】従って攪拌子径の増大、攪拌子回転数の増
加、容器径の増大、容器回転数の増加は渦深さを大幅に
増加させ、精製効率の向上、設備の大型化を図る際、大
きな問題となる。しかるに本発明法のように溶融アルミ
ニウム中を容器の回転方向とは逆方向に攪拌子を回転せ
しむると渦深さが減少する。 【0017】水による多くの詳細な実験により、(D4
N)/(d4 n)が2.4〜3.0の場合には、渦深さ
が零になること、更にこのことは溶融アルミニウムにお
いても同様な結果であることがわかった。 【0018】実際の精製操作においては、必ずしも渦深
さを零にする必要はなく(D4 N)/(d4 n) が1
〜4.5の条件下で操作される。(D4 N)/(d
4 n)が1以下或いは4.5を超える条件では渦深さを
小さくする効果が少なく、望ましくは(D4 N)/(d
4 n)は2.0〜3.5の条件下での操作を行なう。操
業時の渦深さの許容範囲は容器の大きさにもより一義的
ではないが操業の安定性、アルミニウム酸化物の生成防
止から、容器直径の約30%以下、通常は約20%以下
にするのが好ましく、(D4 N)/(d4 n)が1〜
4.5であれば、これを達成し得る。 【0019】 【発明の効果】以上詳述したように本発明法によれば、
実質的に溶融アルミニウムに渦を生じせしめることな
く、或いは渦の生成の少ない操業が可能となるため、攪
拌子にかかる負荷の変動が少なく芯振れ等もなく、操業
が安定するばかりか、酸化物の生成が少なく、かつ容器
回転と攪拌子の逆回転の相乗効果により攪拌子単独の回
転による攪拌よりも攪拌効果が大きくなり、より純度の
高いアルミニウムを得ることができる等、その工業的価
値は頗る大である。 【0020】 【実施例】以下本発明方法を実施例により更に詳細に説
明するが、該実施例は本発明方法の一実施態様を示すも
のであって、本発明はこの実施例に限定されるものでは
ない。 【0021】(実施例1) 図1は本発明の一実施態様よりなる試験装置を例示する
ものである。容器側壁および蓋部に保温用加熱ヒーター
1を有する容器径(D)600mm,容量500kgの耐
火煉瓦2を内張りした鉄製容器3をターンテーブル5上
に容器底部が空気冷却可能なごとく空間部を持って構成
された架台4上にしっかり固定して組立てた。またター
ンテーブルとは別に昇降可能な架台6を立て、その架台
上にモーター7を設置し、上部から攪拌子径(d)27
0mmの攪拌子8を吊るした。このように形成した容器
中に、不純物としてFe0.05wt% 、Si0.03wt
% を含有する原料溶融アルミニウム500kgを投入
し、670℃に保持し、ターンテーブル回転数25rpm
、攪拌子回転数200rpm で双方を逆に回転させ、凝
固進行とともに容器底部の晶出アルミニウムの表面と攪
拌子の間隔を約100mmとなる如く昇降可能な架台を
上昇させ、10時間かけて投入原料アルミニウムの50
重量%が凝固析出するごとく分別結晶化を行った。この
ときの(D 4 N)/(d 4 n)〔=(600 4 ×25)/(270 4 ×2
00)〕は3.0であった。なおd/Dは0.45であ
り、この時の溶融アルミニウムの渦深さはほぼ零であ
り、溶融アルミニウム表面状態は穏やかであった。実験
終了後、攪拌子の回転を停止し、攪拌子を溶融アルミニ
ウムから引き上げると共に、ターンテーブルを停止し、
直ちに該容器を傾転して、容器上部に存在する溶融アル
ミニウムを流出せしめた。次いで、容器内に凝固析出し
たアルミニウムを再溶解して精製アルミニウムとして分
離取得した。このようにして得た精製アルミニウムを分
析したところ、不純物としてのFeは0.005重量
%、Siは0.006重量%であり、アルミニウム換算
で2重量%のドロス(アルミニウム酸化物)が生成して
いた。 【0022】(比較例1)尚、比較のためターンテーブ
ルの回転操作を行なわないほかは上記と同一装置、同一
方法により分別結晶を行ない、精製アルミニウムを得
た。得られた精製アルミニウムを分析したところ、不純
物としてのFeは0.008重量%、Siは0.008
重量%であり、アルミニウム換算で5重量%のドロスが
生成していた。
【図面の簡単な説明】 【図1】は本発明の実施例において使用した試験装置の
断面図を示すものである。 【符号の説明】 図中1は保温用加熱ヒーター、2は耐火煉瓦、3は鉄製
容器、4は架台、5はターンテーブル、6は昇降可能な
架台、7はモーター、8は攪拌子である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−169736(JP,A) 特開 昭57−92148(JP,A) 特開 昭59−28538(JP,A) 特開 平3−240505(JP,A) 特開 平3−30740(JP,A) 特開 平1−166857(JP,A)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 原料溶融アルミニウムを容器中に保持
    し、該容器の上部および側部を制御された温度条件下に
    保温管理し、該容器底部より冷却しながら、(D 4 N)/(d 4 n)〔式中、D:容器径、d:攪拌子
    径、N:容器回転数、n:攪拌子回転数を示す。〕が1
    〜4.5となる条件で 該容器をその垂直軸を中心に回転
    せしめると同時に該容器中の溶融アルミニウムを該容器
    回転方向と逆方向に攪拌子により回転せしめることによ
    り、容器底部に純度の高いアルミニウムを分別析出せし
    めることを特徴とするアルミニウムの精製法。
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