JP3760831B2 - 組電池の電圧検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、組電池の電圧検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電気自動車の駆動用電池には、複数の単位電池(以下ではセルと呼ぶ)から成る組電池が用いられる。組電池の各セルはモジュールと呼ばれる所定数のセルごとに区分(ひとまとめをモジュール電池と呼ぶ)され、各モジュール電池ごとに設けられたセルコントローラによってモジュール電池を構成するセルが管理される。各セルコントローラは、バッテリーコントローラによって管理される。バッテリーコントローラは、各セルコントローラとの間でデータを送受信して各セルコントローラを制御し、組電池全体を管理する。バッテリーコントローラは、各セルコントローラから送信されるセル電圧データに基づいて各モジュール電池を構成するセルに対して充放電制御を行う。
【0003】
ここで、各セルの電圧を検出する回路が設けられるとともに、この検出回路自身の故障診断を行う技術が知られている。図7は、モジュール電池を構成する各セルの電圧を検出する従来の電圧検出回路のブロック図である。図7において、モジュール電池とセルコントローラとが接続されている。モジュール電池は、8つのセルC1〜C8によって構成されている。セルコントローラには、セルC1〜C8のそれぞれの端子間に2つの差動増幅器A1とD1,A2とD2,…,A8とD8が設けられており、各セルの電圧がそれぞれ2つの差動増幅器によって検出される。たとえば、セルC1の電圧値Vc1は、差動増幅器A1とD1とで検出される。セルコントローラのCPUは、差動増幅器A1による検出電圧Va1と差動増幅器D1による検出電圧Vd1とによってセルC1の充電状態をチェックする。容量調整回路E1〜E8は、セルC1〜C8の充電状態にばらつきが生じている場合に該当するセルを放電することで、所定の状態(たとえば平均電圧)として充電状態のばらつきを抑制する回路である。セルコントローラのCPUは、検出電圧Va1およびVd1によってセルC1の充電状態のばらつきを判断すると、容量調整回路E1を介してセルC1を放電させる。このような電圧検出回路において、セルコントローラのCPUは、2つの差動増幅器によって検出される電圧値の差が所定値Vng以上の場合に、差動増幅器A1およびD1のいずれかに故障が生じたと判断する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電圧検出回路では、モジュール電池を構成する各セルごとに2つの差動増幅器を備えていたので、回路が複雑になりコストが上昇する要因になっていた。
【0005】
本発明の目的は、セル(単位電池)の電圧検出と電圧検出回路自身の故障診断とを行う組電池の電圧検出装置を低コストで提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の単位電池で構成される組電池の電圧検出装置に関し、単位電池ごとの電池電圧を検出する単位電圧検出回路と、複数の単位電池による総電圧を検出する総電圧検出回路と、電池の充電状態−電圧の関係を示す情報を記憶する記憶回路と、総電圧検出回路で検出された総電圧と記憶回路に記憶されている情報とに基づいて単位電池の充電状態を検出する充電状態検出回路とを有し、単位電圧検出回路で検出された単位電池の電圧と総電圧を単位電池当たりに換算した電圧との差の絶対値を、記憶回路に記憶されている充電状態に応じて許容される電圧上下限値の幅と比較し、この比較結果に応じて単位電圧検出回路および単位電池それぞれの異常有無を診断するようにしたものである。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、単位電池ごとに2つの単位電圧検出回路が設けられる従来技術より部品数を削減しつつ、単位電圧検出回路および単位電池それぞれの異常有無を診断できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による車両用組電池の全体構成図である。図1において、組電池は40個のセルC1〜C40が直列に接続されたものであり、セルC1〜C40は8個ずつまとめられて5つのモジュール電池M1〜M5を構成している。なお、組電池および各モジュール電池を構成するセルの数は本説明による数量に限定されるものではない。5つのモジュール電池M1〜M5には、それぞれセルコントローラC/C1、C/C2、…、C/C5が接続されている。5つのセルコントローラC/C1〜C/C5は、それぞれCPU、ROMおよびRAMを有し、各モジュール電池ごとにモジュール電池Mnを構成する8個のセルを管理する。ここで、nは1〜5の整数である。
【0009】
セルコントローラC/Cnは、後述する電圧検出回路を有し、
1.セル電圧検出時に各モジュール電池Mn内の8個のセルの電圧を個別に検出するとともに、
2.各モジュール電池Mnの総電圧を検出する。
総電圧は、モジュール電池Mnを構成する8個のセルを直列にして検出されるモジュール電池Mnごとの電圧である。セルコントローラC/Cnはさらに、各モジュール電池Mnを構成する8個のセルのそれぞれを容量調整するための信号を出力する。セルの容量調整については後述する。セルコントローラC/Cnの電力は、それぞれ各モジュール電池Mnから供給される。
【0010】
5つのセルコントローラC/C1〜C/C5は、バッテリコントローラB/Cによって管理される。バッテリコントローラB/Cは、CPU、ROM、RAMおよび不図示の通信インターフェイス回路を備えている。通信インターフェイス回路は、シリアル通信により各セルコントローラC/C1〜C/C5と通信を行う。バッテリコントローラB/Cは、このシリアル通信を用いて各セルコントローラC/C1〜C/C5を制御する一方、各セルコントローラC/C1〜C/C5から電池情報と診断情報とを受信する。
【0011】
電池情報は、セル電圧検出時に各セルコントローラC/C1〜C/C5の電圧検出回路によって検出される各モジュール電池Mn内のセルの電圧値である。バッテリーコントローラB/Cで受信された電池情報は、バッテリコントローラB/C内のRAMに記憶され、セルコントローラC/C1〜C/C5の制御に利用されたり、不図示の容量計の容量表示等に利用される。セルの電圧値が所定の電圧範囲より高いと過充電であり、セルの電圧値が所定の電圧範囲より低いと過放電である。このように、セルの電圧値から充電状態がわかる。
【0012】
診断情報は、セルコントローラC/C1〜C/C5において電圧検出回路に異常が検出された場合の異常データである。バッテリーコントローラB/Cで受信された診断情報は、バッテリコントローラB/C内のRAMに記憶され、バッテリコントローラB/Cにおける故障診断に利用される。
【0013】
バッテリコントローラB/Cは、5つのセルコントローラC/C1〜C/C5のそれぞれに対し、各モジュール電池Mnを構成する各セルの容量調整を指示する信号を出力する。バッテリコントローラB/Cはさらに、不図示の容量計の容量表示を行うための電池容量や電池劣化状態の演算を行うとともに、演算された電池容量や電池劣化状態等の信号を、車両を制御する不図示のコントローラ等に出力する。また、バッテリコントローラB/Cは、セルコントローラC/C1〜C/C5のいずれかから異常データを受信すると、インジケータIDに異常発生を表示させる。バッテリコントローラB/Cの電力は、補助電池Bから供給される。
【0014】
セルコントローラC/C1〜C/C5は、バッテリコントローラB/Cからオン信号が送信されることにより電源オンし、オフ信号が送信されることにより電源オフする。バッテリコントローラB/Cは、車両のスイッチおよび組電池の充電のオン・オフに連動してオン/オフされる。
【0015】
図2は、セルコントローラC/C1内の回路ブロック図である。ここではセルコントローラC/C1を例に上げて説明するが、他のセルコントローラC/C2〜C/C5もセルコントローラC/C1と同様である。図2において、モジュール電池M1とセルコントローラC/C1とが接続されている。モジュール電池M1は、8つのセルC1〜C8が直列に接続されて構成されている。セルコントローラC/C1は、中央演算処理回路(以下、マイコン)CPUと、8つの差動増幅部D1〜D8と、8つの容量調整回路E1〜E8と、総電圧検出回路102とを有する。容量調整回路E1〜E8には、それぞれ容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8と、抵抗器R1〜R8とが設けられている。
【0016】
8つの差動増幅部D1〜D8は、セル電圧検出時に、それぞれセルC1〜C8の端子電圧Vc1〜Vc8を個別に検出し、検出電圧Vd1〜Vd8を出力する。総電圧検出回路102は、セル電圧検出時に、モジュール電池M1の総電圧を検出し、検出電圧Vnを出力する。マイコンCPUには不図示のA/D変換回路が内蔵されており、差動増幅部D1〜D8および総電圧検出回路102から出力される検出電圧Vd1〜Vd8およびVnを、それぞれデジタル値に変換する。マイコンCPUは、デジタル変換した電圧データに基づいて、セルC1〜C8の管理と電圧検出回路の故障診断とを行う。ここで、電圧検出回路は、差動増幅部D1〜D8と総電圧検出回路102とを含む。マイコンCPUには通信インターフェイス回路も内蔵されている。マイコンCPUは、セルC1〜C8の電池情報と差動増幅部D1〜D8および総電圧検出回路102の診断情報とをシリアル通信によりバッテリコントローラB/Cに送信する。送信端子がTx、受信端子がRxである。
【0017】
容量調整回路E1〜E8はセルC1〜C8を放電させる。容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8は、マイコンCPUから送られるオン信号によってオンされ、オフ信号によってオフされる。容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8がオンされると、対応する抵抗器R1〜R8を介してセルC1〜C8が放電される。マイコンCPUは、上述した電圧検出データからセルの容量のばらつき(詳しくはC1〜C8のセル電圧平均値より高い電圧を示す)を判断したセルに対し、このセルに対応する容量調整回路スイッチをオンして放電させる。
【0018】
バッテリコントローラB/Cは、以上説明したようにシリアル通信で送信される情報に基づいて、セルコントローラC/C1〜C/C5の制御を行う。車両の走行中や電池の充電中に行われる通常の制御では、セルコントローラC/C1〜C/C5からバッテリコントローラB/Cへ送られる電圧情報に基づいて、モジュール電池Mnを構成する各セルの充放電制御を行う。セルコントローラC/C1〜C/C5からバッテリコントローラB/Cへ異常データが送られると、インジケータIDに警告表示等を行わせて運転者に異常を報知するとともに、フェイルセーフ動作(入出力制限等)を行う。
【0019】
上記のセルコントローラC/C1〜C/C5で行われる処理について説明する。図3は、セルコントローラC/C1〜C/C5のマイコンCPUで実行される処理の流れを説明するフローチャートである。図3による処理は、バッテリコントローラB/Cから送信されるオン信号によってセルコントローラC/C1〜C/C5が電源オンされている間、繰り返し行われる。ここでは1つのセルコントローラC/C1のマイコンCPUの処理について説明するが、他のセルコントローラについても同様である。
【0020】
図3のステップS10において、マイコンCPUは、バッテリコントローラB/Cから送信される電圧検出開始信号を受信したか否かを判定する。マイコンCPUは、電圧検出開始信号を受信するとステップS10を肯定判定してステップS20へ進み、電圧検出開始信号を受信しない場合はステップS10を否定判定し、ステップS180へ進む。
【0021】
ステップS20において、マイコンCPUは、電圧検出回路(差動増幅部D1〜D8)から出力されるセルC1〜C8の検出電圧Vd1〜Vd8を取り込んでステップS30へ進む。ステップS30において、マイコンCPUは、電圧検出値Vd1〜Vd8を加算して総和電圧Vcを算出し、ステップS40へ進む。ステップS40において、マイコンCPUは、総電圧検出回路102によりモジュール電池M1の総電圧Vnを検出してステップS50へ進む。
【0022】
ステップS50において、マイコンCPUは、総電圧Vnに基づいてセルのSOC(充電状態)を算出する。図4は、セルの充電状態(充電容量)とセル電圧との関係を表す図である。図4において、横軸はセルの充電状態を表し、縦軸はセル電圧を表す。ラインAは、使用されるセル(たとえば、リチウムイオン電池)によって決まるSOC−電圧特性を示す。ここで、ラインAで示されるセル電圧に対し、たとえば、上下それぞれ電圧閾値Vx1で示される電圧範囲をX1領域とする。さらに、ラインAで示されるセル電圧に対し、たとえば、上下それぞれ電圧閾値Vx2で示される電圧範囲をX2領域とする。X1領域はラインAを含み、X2領域はX1領域を含む。このようなSOC−電圧特性、ならびにX1領域およびX2領域を示す情報は、セルコントローラC/C1〜C/C5内のROMにそれぞれ記憶されている。なお、本説明においてはX1領域およびX2領域の中心にラインAが位置するようにしたが、ラインAはX1領域およびX2領域の中心になくてもよい。
【0023】
マイコンCPUは、検出した総電圧Vnをセル数(ここでは8)で除し、上述したROM内のSOC−電圧特性を示す情報と照合してセルのSOCを算出し、ステップS60へ進む。ステップS60において、マイコンCPUは、総電圧Vnをセル数で除した結果を平均電圧VAVEとしてステップS70へ進む。ステップS70において、マイコンCPUは、ステップS50で算出したSOCに対応するX1領域の電圧閾値Vx1と、X2領域の電圧閾値Vx2とをROMより読出し、ステップS80へ進む。
【0024】
ステップS80において、マイコンCPUは、総和電圧Vcと総電圧Vnとの差の絶対値が所定値Y1以下であるか否かを判定する。ここで、所定値Y1は、総電圧検出回路102の異常を判定するための閾値である。マイコンCPUは、|Vc−Vn|≦Y1が成立する場合に、ステップS80を肯定判定してステップS90へ進む。この場合には、総電圧検出回路102は正常とみなす。マイコンCPUは、|Vc−Vn|≦Y1が成立しない場合に、ステップS80を否定判定してステップS150へ進む。ステップS150において、マイコンCPUは、総電圧検出回路102に異常が発生したとみなしてステップS120へ進む。
【0025】
ステップS90において、マイコンCPUは、各セル電圧Vdnと平均電圧VAVEとの差の絶対値が電圧閾値Vx1以下であるか否かを判定する。電圧Vdnは、各セルの検出電圧Vd1〜Vd8のそれぞれの値である。マイコンCPUは、全てのセルについて|Vdn−VAVE|≦Vx1が成立する場合に、ステップS90を肯定判定してステップS160へ進む。マイコンCPUは、少なくとも1つのセルについて|Vdn−VAVE|≦Vx1が成立しない場合に、ステップS90を否定判定してステップS100へ進む。ステップ160において、マイコンCPUは、電圧検出回路を構成する作動増幅部Dn(nは1〜8の整数)は正常とみなしてステップS130へ進む。
【0026】
ステップS100において、マイコンCPUは、各セル電圧Vdnと平均電圧VAVEとの差の絶対値が電圧閾値Vx2以下であるか否かを判定する。マイコンCPUは、少なくとも1つのセルについて|Vdn−VAVE|≦Vx2が成立する場合に、ステップS100を肯定判定してステップS110へ進む。ステップS110において、マイコンCPUは、当該セルに対応する作動増幅部Dn(nは1〜8の少なくとも1つの整数)に異常が発生したとみなしてステップS120へ進む。マイコンCPUは、少なくとも1つのセルについて|Vdn−VAVE|≦Vx2が成立しない場合に、ステップS100を否定判定してステップS170へ進む。ステップS170において、マイコンCPUは、セルCn(nは1〜8の少なくとも1つの整数)が異常とみなしてステップS120へ進む。
【0027】
ステップS120において、マイコンCPUは、異常データをバッテリコントローラB/Cへ送信してステップS130へ進む。異常データは、総送電圧検出回路102の異常を示すデータ、電圧検出回路の作動増幅部Dnの異常を示すデータ、セルCnの異常を示すデータのいずれかを含む。
【0028】
図5は、本実施の形態で判定される異常の判定領域を説明する図である。図5において、横軸Xは、各セル電圧Vdnと平均電圧VAVEとの差の絶対値|Vdn−VAVE|である。縦軸Yは、総和電圧Vcと総電圧Vnとの差の絶対値|Vc−Vn|である。上述したステップS80で否定判定されるのは、総電圧検出回路異常判定領域51に対応する。この場合には、横軸に関係なく総電圧検出回路102の異常が判定される。一般に、電圧検出回路を構成する作動増幅部D1〜D8のうち複数が同時に異常となる可能性と、総電圧検出回路102のみが異常となる可能性とでは、総電圧検出回路102のみが異常になる方が可能性が高いと考えられる。そこで、総電圧検出回路異常判定領域51に該当する場合に、総電圧検出回路102の異常とみなすようにしている。
【0029】
上述したステップS90で肯定判定されるのは、正常判定領域52に対応する。この場合、総電圧検出回路102、電圧検出回路を構成する作動増幅部D1〜D8の全て、ならびにセルC1〜C8の全ての電圧分布が正常と判定される。上述したステップS100で肯定判定されるのは、電圧検出回路異常判定領域53に対応する。この場合には、Vx1<|Vdn−VAVE|≦Vx2を満たすセルに対応する作動増幅部Dn(nは1〜8の少なくとも1つの整数)の異常が判定される。上述したステップS100で否定判定されるのは、電圧分布異常判定領域54に対応する。この場合には、Vx2<|Vdn−VAVE|を満たすセルCn(nは1〜8の少なくとも1つの整数)の異常が判定される。判定領域54の場合にも、当該セルCnに対応する作動増幅部Dnが異常である可能性は高い。本実施の形態では、確実にセルCnの異常を判定する閾値Vx2を有することにより、上記領域52〜54による切分け判定を行うようにしている。
【0030】
ステップS130において、マイコンCPUは、マイコンCPUは、バッテリコントローラB/Cからセル検出電圧の送信要求を受信したか否かを判定する。マイコンCPUは、送信要求を受信するとステップS130を肯定判定してステップS140へ進み、送信要求を受信しない場合は判定処理を繰り返す。ステップS140において、マイコンCPUは、8つのセルC1〜C8の検出電圧をバッテリコントローラB/Cへ送信し、ステップS180へ進む。
【0031】
ステップS180において、マイコンCPUは、バッテリコントローラB/Cからセルの容量調整指示を受信したか否かを判定する。マイコンCPUは、容量調整指示を受信するとステップS180を肯定判定し、ステップS190へ進む。ステップS190において、マイコンCPUは、容量調整指示されたセルに対応する容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8のいずれかを、容量調整指示とともに受信される調整時間に基づいてオンさせる。マイコンCPUは、容量調整を行うと図3による処理を終了する。一方、マイコンCPUは、バッテリコントローラB/Cからの容量調整指示が受信されない場合は、ステップS180を否定判定して図3による処理を終了する。この場合には、容量調整を行わない。
【0032】
次に、上記のバッテリコントローラB/Cで行われる処理について説明する。図6は、バッテリコントローラB/CのマイコンCPUで実行される処理の流れを説明するフローチャートである。図6による処理は、車両のスイッチおよび組電池の充電のオンに連動して起動する。図6のステップS510において、マイコンCPUは、イグニッションスイッチがオンされたか否かを判定する。イグニッションスイッチがオンされている場合はステップS510を肯定判定してステップS520へ進み、イグニッションスイッチがオンされていない場合はステップS510を否定判定して判定処理を繰り返す。
【0033】
ステップS520において、マイコンCPUは、セルコントローラC/C1〜C/C5のそれぞれにに対して電源オン信号を送信してステップS530へ進む。ステップS530において、マイコンCPUは、セルコントローラC/C1〜C/C5のそれぞれに対して電圧検出を開始させる信号を送信してステップS540へ進む。ステップS540において、マイコンCPUは、セルコントローラC/C1〜C/C5から異常データが受信されたか否かを判定する。マイコンCPUは、異常データが受信された場合にステップS540を肯定判定してステップS550へ進み、異常データが受信されない場合にステップS540を否定判定してステップS560へ進む。ステップS550において、マイコンCPUは、インジケータIDに異常表示を行わせてステップS560へ進む。
【0034】
ステップS560において、マイコンCPUは、セルコントローラC/C1〜C/C5のそれぞれに対して各セルの電圧検出値の送信を要求してステップS570へ進む。ステップS570において、マイコンCPUは、セルコントローラC/C1〜C/C5からセル電圧値の受信を完了したか否かを判定する。マイコンCPUは、セル電圧値の受信を完了するとステップS570を肯定判定してステップS580へ進み、セル電圧値の受信が完了されない場合はステップS570を否定判定してステップS560へ戻る。
【0035】
ステップS580において、マイコンCPUは、各セルの電圧値の平均値を演算してステップS590へ進む。なお、異常データが受信されている場合には、マイコンCPUはフェイルセーフ動作を行う。すなわち、異常と判断された電圧検出回路によって検出されるセルの電圧値を用いずに、正常と判断されるセルの電圧値の平均値を演算する。
【0036】
ステップS590において、マイコンCPUは、セル電圧の分布を演算し、演算した平均値と分布とから異常と思われるセルを特定してステップS600へ進む。ステップS600において、マイコンCPUは、セルの電圧平均値とセル電圧の分布により、各セルごとに容量調整を行う必要があるか否かを判定する。マイコンCPUは、セルに対する容量調整が必要な場合にステップS600を肯定判定してステップS660へ進み、容量調整が不要な場合にステップS600を否定判定してステップS610へ進む。
【0037】
ステップS660において、マイコンCPUは、容量調整を行う必要があるセルに対して、それぞれの容量調整時間を演算してステップS670へ進む。ステップS670において、マイコンCPUは、セルコントローラC/C1〜C/C5のそれぞれに対して容量調整が必要なセルに対する個別の容量調整時間を送信し、ステップS530へ戻る。一方、マイコンCPUは、容量調整が不要の場合にステップS660を否定判定してステップS610へ進む。ステップS610において、マイコンCPUは、各セル電圧値に基づいて総電圧を演算してステップS620へ進む。
【0038】
ステップS620において、マイコンCPUは、不図示の容量計の容量表示を行うための電池容量や電池劣化状態等の演算を行うとともに、演算された電池容量や電池劣化状態等の信号を車両制御する不図示のコントローラ等に出力し、ステップS630へ進む。ステップS630において、マイコンCPUは、イグニッションスイッチがオフされたか否かを判定する。イグニッションスイッチがオフされた場合はステップS630を肯定判定してステップS640へ進み、イグニッションスイッチがオフされていない場合はステップS630を否定判定してステップS530へ戻る。ステップS640において、マイコンCPUは、セルコントローラC/C1〜C/C5に対して電源オフ信号を送信してステップS650へ進む。ステップS650において、マイコンCPUは、バッテリコントローラB/C自身の電源をオフして図6による処理を終了する。
【0039】
以上説明した実施の形態についてまとめる。
(1)セルコントローラC/C1におけるセル電圧検出時に、セルC1〜C8の電圧Vd1〜Vd8を差動増幅部D1〜D8でそれぞれ検出し、セルC1〜C8によって構成されるモジュール電池M1の総電圧Vnを総電圧検出回路102で検出するようにした。1つのセルの電圧を1つの差動増幅部で検出するので、2つの差動増幅部で1つのセルの電圧を検出する従来の技術と異なり、コストを低減することができる。
(2)セルコントローラC/C1における故障診断を以下のように判定するようにしたので、総電圧検出回路102、作動増幅部DnおよびセルCnの異常をそれぞれ判定できる。これにより、故障原因を切分けられるので故障発生時に復旧作業がやりやすくなる。
▲1▼総電圧Vnと総和電圧Vc(=Vd1+Vd2+,…,+Vd8)との差の絶対値が閾値Y1を超えるとき、総電圧検出回路102を異常とみなす。
▲2▼セル電圧Vdnと平均電圧VAVE(=Vn/8)との差の絶対値が電圧閾値Vx1以下の場合に差動増幅部D1〜D8およびセルC1〜C8を正常とみなす。
▲3▼セル電圧Vdnと平均電圧VAVE(=Vn/8)との差の絶対値が電圧閾値Vx1より大きく、かつ電圧閾値Vx2以下の場合に差動増幅部Dnを異常とみなす。
▲4▼セル電圧Vdnと平均電圧VAVE(=Vn/8)との差の絶対値が電圧閾値Vx2より大きい場合にセルCnを異常とみなす。
(3)電池のSOC−電圧特性を示す情報をあらかじめROMに記憶し、平均電圧VAVEをROM内の情報と照合してモジュール電池M1を構成するセルのSOCを算出し(ステップS50)、このSOCに基づいて電圧閾値Vx1およびVx2を設定する(ステップS70)ようにしたので、異常判定を正確に行うことができる。
【0040】
以上の説明では、電気自動車を例にあげて説明したが、エンジンとモータとを搭載したハイブリッド車両(HEV)にも本発明を提供することができる。
【0041】
特許請求の範囲における各構成要素と、発明の実施の形態における各構成要素との対応について説明する。単位電池は、たとえば、セルC1〜C40が対応する。電圧検出回路は、たとえば、差動増幅部D1〜D8によって構成される。診断手段および充電状態検出回路は、たとえば、セルコントローラC/C1〜C/C5のマイコンCPUによって構成される。第1の閾値は、第1の電圧閾値Vx1が対応する。第2の閾値は、第2の電圧閾値Vx2が対応する。第3の閾値は、所定値Y1が対応する。記憶回路は、たとえば、セルコントローラC/C1〜C/C5のROMによって構成される。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による車両用組電池の全体構成図である。
【図2】セルコントローラ内の回路ブロック図である。
【図3】セルコントローラのマイコンで行われる処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】セルの充電状態(充電容量)とセル電圧との関係を表す図である。
【図5】異常の判定領域を説明する図である。
【図6】バッテリコントローラのマイコンで行われる処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】各セルの電圧を検出する従来の電圧検出回路のブロック図である。
【符号の説明】
102…総電圧検出回路、 B/C…バッテリコントローラ、
C1〜C40…セル、 C/C1〜C/C5…セルコントローラ、
CPU…マイコン、 D1〜D8…差動増幅部、
E1〜E8…容量調整回路、 ID…インジケータ、
M1〜M5…モジュール電池、
SWb1〜SWb8…容量調整回路スイッチ、
VAVE…平均電圧、 Vc…総和電圧、
Vdn(Vd1〜Vd8)…セル電圧、Vn…総電圧
Claims (5)
- 複数の単位電池で構成される組電池の電圧検出装置において、
前記単位電池ごとに設けられ、前記単位電池の電圧を検出する単位電圧検出回路と、
前記複数の単位電池による総電圧を検出する総電圧検出回路と、
電池の充電状態−電圧の関係を示す情報を記憶する記憶回路と、
前記総電圧検出回路で検出された総電圧と、前記記憶回路に記憶されている情報とに基づいて、前記単位電池の充電状態を検出する充電状態検出回路と、
前記単位電圧検出回路で検出された単位電池の電圧と前記総電圧を単位電池当たりに換算した電圧との差の絶対値を、前記記憶回路に記憶されている前記充電状態に応じて許容される電圧上下限値の幅と比較し、この比較結果に応じて前記単位電圧検出回路および前記単位電池それぞれの異常有無を診断する診断手段とを備えることを特徴とする組電池の電圧検出装置。 - 請求項1に記載の組電池の電圧検出装置において、
前記診断手段は、前記単位電池の電圧と前記総電圧を単位電池当たりに換算した電圧との差の絶対値が第1の電圧上下限値の幅より大きく、かつ第2の電圧上下限値の幅以下のとき、前記単位電圧検出回路の異常と判定することを特徴とする組電池の電圧検出装置。 - 請求項2に記載の組電池の電圧検出装置において、
前記診断手段は、前記差の絶対値が前記第2の電圧上下限値の幅より大きいとき、前記単位電池の異常と判定することを特徴とする組電池の電圧検出装置。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の組電池の電圧検出装置において、
前記診断手段は、前記複数の単位電池の電圧の和と前記総電圧との差の絶対値が所定の電圧判定閾値より大きいとき、前記総電圧検出回路の異常と判定することを特徴とする組電池の電圧検出装置。 - 請求項1に記載の組電池の電圧検出装置において、
前記充電状態検出回路は、前記総電圧を単位電池当たりに換算した電圧と前記記憶回路に記憶されている情報とを照合して、前記単位電池の充電状態を検出することを特徴とする組電池の電圧検出装置。
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