JP3702861B2 - 組電池の電圧検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、組電池の電圧検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の単位電池(以下ではセルと呼ぶ)から構成される組電池を電源として、負荷を駆動する技術が知られている。一般に、組電池は当該組電池を構成するセルの端子電圧をそれぞれモニターすることにより、セル異常の有無が判定される。このような組電池の端子電圧をモニターする装置において、電圧検出系(電圧検出回路自身、セルおよび電圧検出回路間を接続する接続ラインなど)の故障診断を行うものがある。たとえば、特開2000−13917号公報には、電池の所定電流以上の放電時における所定期間中のセルの端子電圧低下率が所定値未満の場合、もしくは、セル端子電圧の値が所定範囲外に逸脱した場合に、電圧検出系の異常とみなす組電池の制御装置が開示されている。この装置では、電圧検出系の異常有無の判定が一定周期で繰り返され、電圧検出系の異常が判定されると、あらかじめ記憶されていたデータに基づいて端子電圧の推定が行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
セルの端子電圧は、負荷の状態やセルの劣化状態によって刻々と変化する。従来技術のように、電圧検出系の異常判定に用いるセルの端子電圧を放電中に検出すると、異常判定や端子電圧の推定に誤差が生じるおそれがある。
【0004】
本発明の目的は、負荷の状態などに起因する誤差を抑えるようにした組電池の電圧検出装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1に記載の発明は、複数の単位電池で構成される組電池を電源として負荷を駆動する組電池の電圧検出装置に適用され、単位電池ごとに設けられて単位電池の電圧を検出する電圧検出回路と、電圧検出回路および単位電池間の接続をオン/オフする第1のスイッチ回路と、所定の電圧を発生する電圧発生回路と、電圧発生回路および電圧検出回路間の接続をオン/オフする第2のスイッチ回路と、第1のスイッチ回路がオンされるとともに第2のスイッチ回路がオフされているとき、電圧検出回路で検出される電圧に応じて単位電池の充電状態を検出する一方、第1のスイッチ回路がオフされるとともに第2のスイッチ回路がオンされているとき、電圧検出回路で検出される電圧に応じて電圧検出回路の故障診断を行う診断装置と、診断装置で単位電池の充電状態が検出されているとき、電圧検出回路で検出された電池電圧を用いて単位電池の充放電制御値を決定し、診断装置で故障診断が行われているとき、故障診断前に電圧検出回路で検出された電池電圧を用いて単位電池の充放電制御値を決定する充放電制御回路とを備えることにより、上述した目的を達成する。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の組電池の電圧検出装置において、診断装置は、故障診断を行うとき、複数の単位電池のうち少なくとも1つの単位電池に対応する電圧検出回路を故障診断する一方で、故障診断中の電圧検出回路と異なる電圧検出回路に対応する単位電池の充電状態をさらに検出することを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の組電池の電圧検出装置において、充放電制御回路は、診断装置で故障診断が行われているとき、故障診断前に電圧検出回路で検出された複数の単位電池電圧の分布を演算し、この演算結果および故障診断中の電圧検出回路と異なる電圧検出回路で検出された電池電圧をそれぞれ用いて故障診断中の電圧検出回路に対応する単位電池電圧を推定することを特徴とする。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の組電池の電圧検出装置において、充放電制御回路は、推定された電池電圧と故障診断中の電圧検出回路と異なる電圧検出回路で検出された電池電圧とを用いて充放電制御値を決定することを特徴とする。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の組電池の電圧検出装置において、第1のスイッチ回路がオンされて所定時間が経過するまでの間、電圧検出回路によって複数回検出された電圧値を加重平均処理する平均処理回路をさらに備え、充放電制御回路は、所定時間が経過するまでの間、平均処理回路による加重平均値を用いて単位電池の充放電制御値を決定することを特徴とする。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の組電池の電圧検出装置において、充放電制御回路は、診断装置で故障診断が行われているとき、単位電池の充放電制御値を所定の値で制限することを特徴とする。
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、電圧検出回路と単位電池との間をオフして電圧検出回路の故障を診断するとともに、当該単位電池に関して故障診断前に検出された電池電圧を用いて充放電制御値を決定するようにしたので、負荷の状態などに起因する電池電圧の変動による診断誤差および充放電制御誤差を抑えることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による組電池の電圧検出装置を搭載した車両の全体構成図である。なお、以下の実施の形態では、組電池を電気自動車の電源として適用した例を説明する。図1において、組電池は40個のセルC1〜C40が直列に接続されたものであり、セルC1〜C40は8個ずつまとめられて5つのモジュール電池M1〜M5を構成している。なお、組電池および各モジュール電池を構成するセルの数は、本説明による数量に限定されるものではない。5つのモジュール電池M1〜M5には、それぞれセルコントローラC/C1、C/C2、…、C/C5が接続されている。5つのセルコントローラC/C1〜C/C5は、それぞれCPU、メモリおよびタイマ回路を有し、モジュール電池Mnごとにモジュール電池Mn内の8個のセルを管理する。ここで、nは1〜5の整数である。
【0008】
セルコントローラC/Cnは後述する電圧検出回路を備え、
▲1▼セル電圧検出時に電圧検出回路で各モジュール電池Mn内の8個のセルのそれぞれの単セル電圧を検出するとともに、
▲2▼故障診断時に電圧検出回路で診断用基準電圧を検出する。
さらに、セルコントローラC/Cnは、
▲3▼各モジュール電池Mn内の8個のセルのそれぞれを容量調整するための信号を出力し、
▲4▼故障診断時に後述するスイッチでモジュール電池M1〜M5を電圧検出回路から切り離す一方、基準電圧源を電圧検出回路に接続する。
【0009】
電圧検出回路で検出された電圧データは、各セルコントローラC/Cn内のメモリに一旦記憶され、バッテリコントローラB/Cへ適宜送信される。なお、セルの容量調整については後述する。
【0010】
セルコントローラC/Cn内のタイマ回路は、後述するスイッチでモジュール電池M1〜M5を電圧検出回路に接続する際に、サージおよびチャタリングの影響を排除するために用いられる。具体的には、このタイマ回路によってスイッチオン後所定時間(たとえば、5秒)を計時する。セルコントローラC/Cnは、スイッチオン後5秒が経過するまでは電圧検出回路で複数回検出した電圧値を加重平均した値を電圧検出値とする。スイッチオン後5秒が経過した後は、電圧検出回路で1回検出した電圧値を電圧検出値とする。
【0011】
5つのセルコントローラC/C1〜C/C5は、バッテリコントローラB/Cによって管理される。バッテリコントローラB/Cは、CPU、メモリ、通信インターフェイス回路(不図示)、およびタイマ回路を備えている。通信インターフェイス回路は、シリアル通信により各セルコントローラC/C1〜C/C5と通信を行う。バッテリコントローラB/Cは、シリアル通信によってセルコントローラC/C1〜C/C5に故障診断指示などを送信するとともに、シリアル通信によって各セルコントローラC/C1〜C/C5から送信される電圧データを受信し、受信したデータに基づいて組電池を管理する。
【0012】
バッテリコントローラB/CのCPUは、通常、セルコントローラC/Cnにセル電圧の検出を行わせ、バッテリコントローラB/C内のタイマ回路で所定時間(たとえば、10分)が計時されるごとにセルコントローラC/Cnに診断用基準電圧の検出、すなわち、故障診断を行わせる。バッテリコントローラB/Cのメモリには、各セルコントローラC/Cnから受信した電圧検出データが逐次記憶される。バッテリコントローラB/Cは、メモリに記憶された電圧検出データを用いてバッテリ情報を演算し、演算結果を車両コントローラHCMへ送信する。バッテリ情報には、出力/回生制限要求が含まれる。セルコントローラC/C1〜C/C5からバッテリコントローラB/Cへ異常データが送られると、バッテリコントローラB/Cは出力/回生制限などのフェイルセーフ動作を行う。
【0013】
車両コントローラHCMは、アクセル操作量センサ、ブレーキ操作量センサ、および車速センサによる各検出値、ならびにバッテリコントローラB/Cから送信されたバッテリ情報を用いて車両の走行制御を行い、モータコントローラM/Cにトルク指令値を送信する。バッテリコントローラB/Cからセル異常を示すバッテリ情報が送られると、車両コントローラHCMはインジケータIDに警告表示等を行わせて運転者に異常を報知する。
【0014】
モータコントローラM/Cは、トルク指令値に基づいてインバータINVおよびモータMの出力を制御することにより、車両を駆動制御する。
【0015】
本発明は、セルコントローラC/Cnによるセル電圧検出時に、バッテリコントローラB/Cが最新のセル電圧検出データを用いてバッテリ情報を演算し、セルコントローラC/Cnによる診断用基準電圧検出(故障診断)時に、セルコントローラC/Cnが電圧検出回路からセルを切り離すとともに、バッテリコントローラB/Cがセルの切り離し前に検出された電圧検出データに基づく推定値を用いてバッテリ情報を演算することに特徴を有する。
【0016】
電圧検出回路について説明する。ここでは、セルコントローラC/C1に接続されている回路を例に上げて説明するが、他のセルコントローラC/C2〜C/C5についても、セルコントローラC/C1と同様の回路がそれぞれ接続されている。図1において、セルコントローラC/C1は、8つのセルC1〜C8が直列に接続されているモジュール電池M1を管理する。セルC1〜C8およびセルコントローラC/C1間には、9つのセルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41と、8つの差動増幅部D1〜D8と、8つの容量調整回路E1〜E8と、基準電圧源スイッチSWc1と、基準電圧源V1とがそれぞれ接続されている。容量調整回路E1〜E8は、それぞれ容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8と、抵抗器R1〜R8とで構成される。基準電圧源V1は、基準電圧源スイッチSWc1を介してセルスイッチSWa1の作動増幅部D1側の端子と接続され、当該端子とセルスイッチSWa41の作動増幅部D8側の端子との間に所定の電圧を印加するように構成されている。つまり、基準電圧源V1は、容量調整回路E1〜E8と並列に接続される。
【0017】
セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41、容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8、ならびに基準電圧源スイッチSWc1は、それぞれセルコントローラC/C1によって開閉制御される。セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41は、セル電圧検出時にオンされ、故障診断時(診断用基準電圧検出時)にオフされる。容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8は、容量調整時および故障診断時(診断用基準電圧検出時)にオンされ、セル電圧検出時であって容量調整しない場合にオフされる。基準電圧源スイッチSWc1は、セル電圧検出時にオフされ、故障診断時(診断用基準電圧検出時)にオンされる。
【0018】
電圧検出回路は、8つの差動増幅部D1〜D8によって構成される。作動増幅部D1〜D8はセル電圧検出時に、セルC1〜C8の単セル端子電圧を個別に検出し、検出電圧をそれぞれ出力する。一方、作動増幅部D1〜D8は故障診断時に、基準電圧源V1が抵抗器R1〜R8によって分圧された電圧を個別に検出し、検出電圧をそれぞれ出力する。セルコントローラC/C1のCPUには不図示のA/D変換回路が内蔵されており、差動増幅部D1〜D8から出力された検出電圧をそれぞれデジタル値に変換する。セルコントローラC/C1のCPUは、デジタル変換後の電圧データに基づいて、セルC1〜C8の管理と電圧検出回路の故障診断とを行う。
【0019】
容量調整回路E1〜E8は、セルC1〜C8をそれぞれ放電させる。容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8がオンされると、対応する抵抗器R1〜R8を介してセルC1〜C8が放電される。セルコントローラC/C1のCPUは、上述したセル電圧検出データから単セルの容量のばらつき(詳しくは単セルC1〜C8の単セル電圧最低値より高い電圧を示す)を判断したセルに対し、このセルに対応する容量調整回路スイッチをオンして放電させる。容量調整は、バッテリコントローラB/CからセルコントローラC/C1に容量調整指示が送信されると行う。
【0020】
上述したバッテリコントローラB/CのCPUで行われる処理について説明する。図2は、バッテリコントローラB/CのCPUで実行される処理の流れを説明するフローチャートである。図2のステップS10において、CPUは、車両の不図示のイグニション(IGN)スイッチがオンされたか否かを判定する。CPUは、IGNオンの場合にステップS10を肯定判定してステップS20へ進み、IGNオフの場合にステップS10を否定判定して判定処理を繰り返す。
【0021】
ステップS20において、CPUは、バッテリコントローラB/C内のタイマ回路に計時をスタートさせてステップS30へ進む。ここで、計時のために設定するタイムカウント値Aは、たとえば、10minとする。ステップS30において、CPUは、カウント値が10minか否かを判定する。CPUは、カウント値が10minの場合にステップS30を肯定判定してステップS40へ進み、カウント値が10minでない場合にステップS30を否定判定して判定処理を繰り返す。
【0022】
ステップS40において、CPUは、セルコントローラC/C1〜C/C8に故障診断開始を指示する信号をそれぞれ送信してステップS50へ進む。故障診断開始信号は、セルコントローラC/C1〜C/C8で故障診断が順番に行われるように出力する。たとえば、CPUがセルコントローラC/C1に診断開始信号を送り、セルコントローラC/C1から診断終了を示す信号を受診するとセルコントローラC/C2に診断開始信号を送る。このように、1つのセルコントローラで診断が終了してから他のセルコントローラに対して診断開始を指示する。
【0023】
ステップS50において、CPUは、車両コントローラHCMに出力/回生制限を要求してステップS60へ進む。制限要求は、車両コントローラHCMが演算したトルク指令値に対し、たとえば、演算値の80%をモータコントローラM/Cへ出力するように要求するものである。制限要求を受けた車両コントローラHCMは、モータMで5KWの出力が必要と演算した場合に、演算値の80%である4KWの仕事をするようにトルク指令値を出力する。制限要求する理由は、故障診断時におけるセルの過放電/過充電を回避するためである。
【0024】
ステップS60において、CPUは、セルコントローラC/C1〜C/C8からそれぞれ送信された各単セルの電圧検出データを受信してバッテリコントローラB/C内のメモリに記憶し、ステップS70へ進む。これらの電圧データは、故障診断開始前に検出された電圧データである。ステップS70において、CPUは、バッテリコントローラB/C内のメモリに記憶した全セルC1〜C40の電圧値の分布を演算し、演算結果をバッテリコントローラB/C内のメモリに記憶してステップS80へ進む。
【0025】
ステップS80において、CPUは、全ての電圧検出回路の診断が終了したか否かを判定する。CPUは、全セルコントローラC/C1〜C/C8から診断終了を示す信号を受信すると、ステップS80を肯定判定してステップS130へ進み、全セルコントローラC/C1〜C/C8から診断終了を示す信号を受信していない場合に、ステップS80を否定判定してステップS90へ進む。
【0026】
ステップS90へ進む場合はいずれかのセルコントローラC/Cnで故障診断中の場合である。nの値は、本例の場合1〜5のいずれかである。ステップS90において、CPUは、故障診断を行っていないセルコントローラC/Cnから送信されたセル電圧検出データを受信してバッテリコントローラB/C内のメモリに記憶し、ステップS100へ進む。これらの電圧データは、最新の単セル検出電圧である。CPUはメモリに電圧データを記憶するとき、前回記憶したセルの電圧データを当該セルの最新の電圧データで更新する。
【0027】
ステップS100において、CPUは、故障診断していないセルコントローラC/Cnから送信された単セルの電圧検出データを受信し、受信した各単セルの電圧検出値と上述した電圧値の分布演算結果とを用いて故障診断中のセルコントローラC/Cnで管理される8つの単セルの電圧値を推定する。CPUは、単セル電圧の推定値をバッテリコントローラB/C内のメモリにそれぞれ記憶すると、ステップS105へ進む。
【0028】
ステップS105において、CPUは、故障診断が終了したセルコントローラC/Cnから診断(判定)結果を受信してバッテリコントローラB/C内のメモリに記憶し、ステップS110へ進む。このときCPUは、ステップS90による処理でメモリに記憶した最新の単セル検出電圧と、ステップS100による処理でメモリに記憶した単セル電圧の推定値との総和、すなわち、総電圧を算出し、この総電圧値をバッテリ情報に含めて車両コントローラHCMへ送信する。車両コントローラHCMでは、この総電圧値を用いて車両の制御を行う。
【0029】
ステップS110において、CPUは、過放電および過充電の有無を判定する。CPUは、ステップS90による処理でメモリに記憶した最新の単セル検出電圧、およびステップS100による処理でメモリに記憶した単セル電圧の推定値について、あらかじめ定められている過放電電圧を下回ったり、あらかじめ定められている過充電電圧を上回ったりする場合に、ステップS110を肯定判定してステップS120へ進む。一方、CPUは、上記最新の単セル検出電圧および上記単セル電圧の推定値が上記過放電電圧値以上かつ上記過充電電圧以下である場合に、ステップS110を否定判定してステップS80へ戻る。
【0030】
ステップS120において、CPUは、車両コントローラHCMにさらなる出力/回生制限を要求してステップS80へ戻る。この場合の制限要求は、車両コントローラHCMが演算したトルク指令値に対し、たとえば、演算値の50%をモータコントローラM/Cへ出力するように要求するものである。
【0031】
上記ステップS80を肯定判定して進むステップS130において、CPUは、全セルコントローラC/C1〜C/C5から送信された単セルの電圧検出データを受信してバッテリコントローラB/C内のメモリにそれぞれ記憶し、ステップS140へ進む。これらの電圧データは、故障診断終了後の最新の単セル検出電圧である。ステップS140において、CPUは、過放電および過充電の有無を判定する。CPUは、ステップS130による処理でメモリに記憶した最新の単セルの検出電圧について、あらかじめ定められている過放電電圧を下回ったり、あらかじめ定められている過充電電圧を上回ったりする場合に、ステップS140を肯定判定してステップS150へ進む。一方、CPUは、上記最新の単セルの検出電圧が上記過放電電圧値以上かつ上記過充電電圧以下である場合に、ステップS140を否定判定してステップS160へ進む。なお、CPUは、上記ステップS105による処理でメモリに記憶した診断結果に異常が含まれる場合にもステップS150へ進む。
【0032】
ステップS150において、CPUは、車両コントローラHCMに現在の出力/回生制限を継続するように要求してステップS170へ進む。ステップS170において、CPUは、タイマ回路をリセットしてステップS180へ進む。ステップS180において、CPUは、車両の不図示のイグニション(IGN)スイッチがオフされたか否かを判定する。CPUは、IGNオフの場合にステップS180を肯定判定して図2による処理を終了する。CPUは、IGNオンの場合にステップS180を否定判定し、ステップS20へ戻る。
【0033】
ステップS160において、CPUは、車両コントローラHCMに現在の出力/回生制限を解除するように要求してステップS170へ進む。
【0034】
上記セルコントローラC/CnのCPUで行われる処理について説明する。図3は、セルコントローラC/C1のCPUで実行される処理の流れを説明するフローチャートである。ここでは、セルコントローラC/C1を例に上げて説明するが、他のセルコントローラC/C2〜C/C5についても同様である。図3のステップS200において、CPUは、車両の不図示のイグニション(IGN)スイッチがオンか否かを判定する。CPUは、IGNオンの場合にステップS200を肯定判定してステップS210へ進み、IGNオフの場合にステップS200を否定判定して判定処理を繰り返す。
【0035】
ステップS210において、CPUは、故障診断開始が指示されたか否かを判定する。CPUは、バッテリコントローラB/Cから故障診断開始を指示する信号を受信した場合にステップS210を肯定判定してステップS220へ進み、故障診断開始の指示信号を受信していない場合にステップS210を否定判定してステップS320へ進む。
【0036】
ステップS220において、CPUは、当該セルコントローラC/Cnで管理する8つのセルについて、単セルの端子電圧の検出を行う。CPUは、セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41をオン、容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8をオフ、基準電圧源スイッチSWc1をオフした状態で、差動増幅部D1〜D8による検出電圧をそれぞれ入力し、ステップS230へ進む。この場合の検出電圧は、単セルの端子電圧である。
【0037】
ステップS230において、CPUは、8つの単セルの電圧検出データをバッテリコントローラB/Cへ送信してステップS235へ進む。ステップS235において、CPUは、セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41をオフ、容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8をオン、基準電圧源スイッチSWc1をオンさせてステップS240へ進む。
【0038】
ステップS240において、CPUは、差動増幅部D1〜D8による検出電圧をそれぞれ入力し、ステップS250へ進む。この場合の検出電圧は、基準電圧源V1による電圧が抵抗器R1〜R8によってそれぞれ分圧されたものである。ここで、各抵抗器R1〜R8の抵抗値を同じにすれば、差動増幅部D1〜D8のそれぞれに、基準電圧源V1による電圧の1/8がそれぞれ印加される。なお、セルC1〜C8は作動増幅部D1〜D8と切り離されているので、セル電圧に変動が生じても差動増幅部D1〜D8による検出電圧に影響がおよぶことがない。
【0039】
ステップS250において、CPUは、差動増幅部D1〜D8が正常であるか故障であるかを判定する。CPUは、差動増幅部によって検出される基準電圧値が、基準電圧源V1による電圧の1/8に対して所定値未満の差異で検出される場合にその差動増幅部が正常であると診断し、所定値以上の差異で検出される場合にその差動増幅部に故障が生じていると診断する。差動増幅部によって検出されるべき電圧値は、CPUにあらかじめ与えられている。CPUは、故障診断結果をセルコントローラC/C1内のメモリに記憶し、ステップS260へ進む。
【0040】
ステップS260において、CPUは、診断(判定)結果をバッテリコントローラB/Cへ送信してステップS270へ進む。ステップS270において、CPUは、セルコントローラC/C1の全ての差動増幅部D1〜D8について故障診断が終了したか否かを判定する。CPUは、故障診断が終了した場合にステップS270を肯定判定してステップS280へ進み、故障診断が終了していない場合にステップS270を否定判定してステップS240へ戻って診断処理を繰り返す。ステップS280へ進む場合は、CPUからバッテリコントローラB/Cへ故障診断終了を示す信号を送信する。
【0041】
ステップS280において、CPUは、セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41をオン、容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8をオフ、基準電圧源スイッチSWc1をオフさせてステップS290へ進む。ステップS290において、CPUは、セルコントローラC/C1内のタイマ回路に計時をスタートさせてステップS300へ進む。ここで、計時のために設定するタイムカウント値Bを、たとえば、5secとおく。ステップS300において、CPUは、カウント値が5secか否かを判定する。CPUは、カウント値が5secの場合にステップS300を肯定判定してステップS320へ進み、カウント値が5secでない場合にステップS300を否定判定してステップS310へ進む。
【0042】
ステップS310において、CPUは、当該セルコントローラC/Cnで管理する8つのセルについて、単セルの端子電圧の検出を行う。CPUは、作動増幅部D1〜D8によってそれぞれ複数回電圧を検出し、これら複数の電圧検出値を加重平均処理して電圧検出値とする。CPUは、電圧検出値をバッテリコントローラB/Cへ送信するとステップS300へ戻る。
【0043】
ステップS320において、CPUは、当該セルコントローラC/Cnで管理する8つのセルについて、単セルの端子電圧の検出を行う。CPUは、作動増幅部D1〜D8によってそれぞれ電圧を1回検出し、この電圧検出値をバッテリコントローラB/Cへ送信する。なお、上述したステップS220およびステップS240における電圧検出は、本ステップと同様に1回の検出でよい。CPUはさらに、車両の不図示のイグニション(IGN)スイッチがオフされたか否かを判定する。CPUは、IGNオフの場合にステップS320を肯定判定して図3による処理を終了する。CPUは、IGNオンの場合にステップS320を否定判定し、ステップS210へ戻る。
【0044】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)セルコントローラC/C1における単セルの電圧検出時に、セルC1〜C8と差動増幅部D1〜D8との間のセルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41をオンし、差動増幅部D1〜D8でセルC1〜C8の端子電圧をそれぞれ検出するようにした。1つのセルの電圧を1つの差動増幅部で検出するので、複数の差動増幅部で検出する場合に比べてコストを低減することができる。
(2)セルコントローラC/C1における作動増幅部D1〜D8の故障診断時に、セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41をオフするとともに、セル基準電圧源スイッチSWc1、ならびに容量調整回路スイッチSWb1〜SWb8をオン(ステップS235)して基準電圧源V1から出力される電圧を容量調整回路E1〜E8に印加する。このとき、差動増幅部D1〜D8のそれぞれで基準電圧源V1による電圧の1/8を検出し(ステップS240)、あらかじめ記憶されている値に対して所定値未満の差異で検出された場合にその差動増幅部が正常であると診断し、所定値以上の差異で検出された場合にその差動増幅部に故障が生じていると診断するようにした。これにより、どの差動増幅部に故障が生じているかがすぐわかる上に、故障診断中にセルC1〜C8が作動増幅部D1〜D8と切り離されているので、車両の運転状態によってセル電圧に変動が生じても検出される電圧に影響がおよぶことがないから、電圧検出回路(作動増幅部D1〜D8)の故障診断を正確に行うことができる。
(3)上記(2)の故障診断時に、容量調整回路E1〜E8を用いて基準電圧源V1による電圧を分圧し、分圧後の電圧を差動増幅部D1〜D8のそれぞれに印加するようにしたので、故障診断時の基準電圧印加のために新たな回路を追加する必要がないので、コストの増加を抑えることができる。
(4)セルコントローラC/C1〜C/C5の各CPUは、故障診断前に、全セルC1〜C40の単セル電圧検出データをバッテリコントローラB/Cに送信する(ステップS230)。バッテリコントローラB/C内のCPUは、全セルC1〜C40の電圧分布を演算し、演算結果をバッテリコントローラB/C内のメモリに記憶しておく(ステップS70)。セルコントローラC/C1で故障診断が行われているとき、バッテリコントローラB/CのCPUは、故障診断していないセルコントローラC/C2〜C/C5から送信された単セルC9〜C40の電圧検出データをそれぞれ受信し(ステップS90)、受信した単セルC9〜C40の電圧検出値と上記分布演算結果とを用いて、作動増幅部D1〜D8と切り離されているセルC1〜C8のセル電圧値を推定する(ステップS100)。バッテリコントローラB/CのCPUは、ステップS90の処理による単セルC9〜C40の最新の端子電圧、およびステップS100の処理による単セルC1〜C9の端子電圧の推定値から総電圧を算出し、この総電圧値をバッテリ情報に含めて車両コントローラHCMへ送信するようにした。これにより、故障診断中のため現在の単セル電圧が検出されないセルが存在する場合でも、当該セルの最新の電圧を推定することができる。また、車両コントローラHCMが上記電圧推定値を用いて算出した総電圧値によって車両の制御を行うので、故障診断をしていないときと同様に車両の駆動制御を行うことができる。さらに、故障診断のために作動増幅部と切り離すセルを全セルの一部(上記の例ではC1〜C8)としたので、電圧値を推定するセルの数を少なく抑えることができるから、車両の駆動制御への影響が最小限にとどめられる。
(5)セルコントローラC/C1における故障診断時に、バッテリコントローラB/CのCPUが車両コントローラHCMに出力/回生制限要求を出力する(ステップS50)ようにしたので、セルの過充電および過放電を回避することができる。
(6)セルコントローラC/C1のCPUは、セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41をオン(ステップS280)して所定時間(上記の例では5sec)が経過するまでの間(ステップS300を否定判定)、作動増幅部D1〜D8によってそれぞれ複数回電圧を検出し、これら複数の電圧検出値を加重平均処理して電圧検出値とする(ステップS310)ようにした。この結果、故障診断中(セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41がオフ時)にセル電圧に急激な変動が生じた場合に、この電圧変動の影響を平均処理で緩和できるから、セルスイッチSWa1〜SWa8およびSWa41のオン直後の車両の駆動制御への影響を最小限にとどめることができる。
【0045】
以上の説明では、電気自動車を例にあげて説明したが、エンジンとモータとを搭載したハイブリッド車両(HEV)など組電池を有するものであれば、本発明を提供することができる。
【0046】
また、車両以外でも負荷を駆動する電源に組電池を用いるものであれば、本発明を適用することができる。
【0047】
特許請求の範囲における各構成要素と、発明の実施の形態における各構成要素との対応について説明する。単位電値は、たとえば、セルC1〜40によって構成される。電圧検出回路は、たとえば、差動増幅部D1〜D40によって構成される。第1のスイッチは、たとえば、セルスイッチSWa1〜SWa45によって構成される。電圧発生回路は、たとえば、基準電圧源V1〜V5によって構成される。第2のスイッチは、たとえば、基準電圧源スイッチSWc1〜SWc5によって構成される。充電状態は、たとえば、過充電が対応する。診断装置は、たとえば、セルコントローラC/C1〜C/C5のCPUによって構成される。充放電制御回路は、たとえば、バッテリコントローラB/CのCPUによって構成される。充放電制御値は、たとえば、出力/回生制限値が対応する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による組電池の電圧検出装置を搭載した車両の全体構成図である。
【図2】バッテリコントローラのCPUで実行される処理の流れを説明するフローチャートである。
【図3】セルコントローラのCPUで実行される処理の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
B/C…バッテリコントローラ、 C1〜C40…セル、
C/C1〜C/C5…セルコントローラ、
D1〜D40…差動増幅部、 E1〜E40…容量調整回路、
HCM…車両コントローラ、 M1〜M5…モジュール電池、
R1〜R40…抵抗器、 SWa1〜SWa45…セルスイッチ、
SWb1〜SWb40…容量調整回路スイッチ、
SWc1〜SWc5…基準電圧源スイッチ、
V1〜V5…基準電圧源

Claims (6)

  1. 複数の単位電池で構成される組電池を電源として負荷を駆動する組電池の電圧検出装置において、
    前記単位電池ごとに設けられて単位電池の電圧を検出する電圧検出回路と、
    前記電圧検出回路および前記単位電池間の接続をオン/オフする第1のスイッチ回路と、
    所定の電圧を発生する電圧発生回路と、
    前記電圧発生回路および前記電圧検出回路間の接続をオン/オフする第2のスイッチ回路と、
    前記第1のスイッチ回路がオンされるとともに前記第2のスイッチ回路がオフされているとき、前記電圧検出回路で検出される電圧に応じて前記単位電池の充電状態を検出する一方、前記第1のスイッチ回路がオフされるとともに前記第2のスイッチ回路がオンされているとき、前記電圧検出回路で検出される電圧に応じて前記電圧検出回路の故障診断を行う診断装置と、
    前記診断装置で前記単位電池の充電状態が検出されているとき、前記電圧検出回路で検出された電池電圧を用いて前記単位電池の充放電制御値を決定し、前記診断装置で前記故障診断が行われているとき、前記故障診断前に前記電圧検出回路で検出された電池電圧を用いて前記単位電池の充放電制御値を決定する充放電制御回路とを備えることを特徴とする組電池の電圧検出装置。
  2. 請求項1に記載の組電池の電圧検出装置において、
    前記診断装置は、前記故障診断を行うとき、前記複数の単位電池のうち少なくとも1つの単位電池に対応する電圧検出回路を故障診断する一方で、前記故障診断中の電圧検出回路と異なる電圧検出回路に対応する単位電池の充電状態をさらに検出することを特徴とする組電池の電圧検出装置。
  3. 請求項2に記載の組電池の電圧検出装置において、
    前記充放電制御回路は、前記診断装置で前記故障診断が行われているとき、前記故障診断前に前記電圧検出回路で検出された複数の単位電池電圧の分布を演算し、この演算結果および前記故障診断中の電圧検出回路と異なる電圧検出回路で検出された電池電圧をそれぞれ用いて前記故障診断中の電圧検出回路に対応する単位電池電圧を推定することを特徴とする組電池の電圧検出装置。
  4. 請求項3に記載の組電池の電圧検出装置において、
    前記充放電制御回路は、前記推定された電池電圧と前記故障診断中の電圧検出回路と異なる電圧検出回路で検出された電池電圧とを用いて前記充放電制御値を決定することを特徴とする組電池の電圧検出装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の組電池の電圧検出装置において、
    前記第1のスイッチ回路がオンされて所定時間が経過するまでの間、前記電圧検出回路によって複数回検出された電圧値を加重平均処理する平均処理回路をさらに備え、
    前記充放電制御回路は、前記所定時間が経過するまでの間、前記平均処理回路による加重平均値を用いて前記単位電池の充放電制御値を決定することを特徴とする組電池の電圧検出装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の組電池の電圧検出装置において、
    前記充放電制御回路は、前記診断装置で前記故障診断が行われているとき、前記単位電池の充放電制御値を所定の値で制限することを特徴とする組電池の電圧検出装置。
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