以下に実施の形態として説明する電池システムを備えた駆動システム、あるいは電池システム、車載用電池システム、さらに電池モジュール、前記電池モジュールに使用されるセルコントローラ、さらには前記セルコントローラが有する回路基板や集積回路などの回路部品は、それぞれ高い信頼性を備えている。また以下に説明のシステムおよび回路基板や集積回路などの回路部品は、製品として使用されるための検討がなされており、信頼性の向上のみならずその他にも色々な課題の解決がなされている。その代表的なものを次に記載する。
〔信頼性の向上〕
図13に用いて後述する車両駆動システムは電池モジュールとインバータ装置と回転電機(以下モータと記す)230とを主要構成とし、上記インバータ装置220と電池モジュール900とが通信回線を介して情報をやり取りできる構造としている。特に電池モジュール900の診断結果がインバータ装置220の制御回路(以下MCUと記す)222に送られ、インバータ装置220と電池モジュール900とで異常状態など重要情報が共有される構造となっている。電池モジュール900はリチウム電池とインバータ装置220との電気回路を接続あるいは遮断するリレーRLPやRLNを有しており、上記リレーRLPやRLNはインバータ装置220のMCU222で制御される。インバータ装置220のMCU222はモータ230やインバータ装置220、電池モジュール900の状態に基づいて上記リレーRLPやRLNを制御できるので、システム全体の信頼性が向上する。またインバータ装置220のMCU222は上記リレーRLPやRLNの制御に対応してインバータを制御することでモータ230の消費電力や発電電力を制御でき、高い安全性や高い信頼性が得られる。
電池モジュール900は、リチウム電池セルを有するバッテリ部9とセルコントローラ80とバッテリコントローラ20とを主要構成として備え、セルコントローラ80はバッテリ部9が有するリチウム電池セルの端子電圧の計測および診断、充電状態SOCを調整するための放電動作を行い、バッテリコントローラ20はセルコントローラ80の計測結果および診断結果を受けて電池モジュール900の管理を行う。このように機能が分担されていることで電池モジュール900の信頼性や安全性が向上する。
セルコントローラ80はバッテリ部9が有する複数個のリチウム電池セルの各端子電圧を検出する機能を有する複数の集積回路を有している。リチウム電池を使用した電池モジュールは単電池と異なり、リチウム電池セルの端子電圧を高い信頼性を有して計測することが安全性の観点でたいへん重要である。一方車載機器は長期間高温あるいは低温の環境で使用され、一般産業機器の使用環境に比べ、過酷な環境に置かれることを考慮する必要がある。以下に説明する実施の形態では、集積回路はそれぞれリチウム電池セルの端子電圧を正しく計測しているかどうかを診断する診断回路を備えており、集積回路はそれぞれ定まった周期で繰り返し診断を実行している。集積回路あるいは上記集積回路を使用したセルコントローラ80は上述の構造を有しており、上記各集積回路また上記セルコントローラ80は高い信頼性を有している。
上述の如く、リチウム電池セルの劣化やリチウム電池セルの放電回路の診断に関する公知例は見受けられるが、リチウム電池セルの端子電圧の計測動作に関する診断の必要性は考えられていなかった。しかしより信頼性や安全性を向上する上で各集積回路の計測動作の診断が望ましいことが分かった。以下に説明する実施の形態では、各集積回路はそれぞれ端子電圧の計測動作が正しく行われているかどうかを、例えばマルチプレクサによるリチウム電池セルの端子電圧の選択が正常に行われているかどうか、を診断回路により繰り返し診断する構造となっている。従ってきわめて信頼性の高い集積回路を得ることができる。
〔集積回路の簡素化〕
以下に説明する実施の形態では、図4に示す如く、リチウム電池セルの端子電圧の計測と同期した周期で繰り返し診断が実施される構造であり、集積回路は計測の制御と診断の制御を総合的に実施でき、信頼性や安全性の向上に加え、集積回路の回路構成が比較的簡素化できる。
以下に説明する実施の形態では、図4に示す如く、集積回路の複数の診断を計測動作と同期して実施でき、集積回路全体の診断が総合的に実施される構成となっており、集積回路に関し高い信頼性を維持できる。なお、複数の診断とは、集積回路のバランススイッチの診断やアナログデジタル変換器の診断、マルチプレクサの診断、デジタル比較回路の診断などである。すなわち集積回路の本来の機能に加え、診断機能が追加されることとなるが、機能の増加に対し集積回路の動作全体および回路構成全体が統合的に動作する構造となっており、集積回路は比較的簡素化された構造となっている。
〔異常診断時間の短縮〕
リチウム電池を使用する車載用電池モジュールでは短時間に異常を検知し、できるだけ早く異常に対応することが望ましい。しかし一方使用電力が大きくなるにつれて、バッテリ部が有するリチウム電池セルの数が多くなり、使用する集積回路の数が多くなる。リチウム電池セルの異常診断に加え、各集積回路それ自身の診断を行う場合に、多数の診断項目を短時間に完了することが重要な課題となる。
以下に説明する実施の形態では、各集積回路は一旦計測動作や診断動作を開始するとそれぞれ独立して定められた周期で繰り返し、計測動作および診断動作を実施する構成となっている。従ってリチウム電池セルの数や集積回路の数が多いにもかかわらず電池システムや電池モジュールとしての計測動作や診断動作を短い時間で完了できる。例えば車両を短時間に始動し、走行しようとする場合であっても短い時間で上記計測および診断を実施できる。診断結果に基づく走行が可能となり、高い安全性を維持できる。
また集積回路やリチウム電池セルの異常に対し、電池モジュールや電池システムさらには図13に記載の駆動システムは、電池モジュールが授受する電力量の速やかな低減や速やかなリレーの開放などの対応が可能としている。各集積回路は独立して異常診断を行うと共に異常が検知されると異常をあらわする信号を速やかに出力する送受信回路を備えている。この送受信回路はOR回路288で例示する如くOR機能を有している。すなわち異常信号を受信すると自らの集積回路の診断結果に関係なく異常信号を出力する、また異常信号を受信していない場合であっても自らの集積回路で異常を検知すると異常信号を出力する機能を有している。従ってバッテリコントローラ20などの上位の制御回路は、集積回路から送られてきた上記異常信号の結果を調べることで、関係する複数の集積回路全体の異常診断結果を速やかに知ることができる。また特別に異常信号の送信を命令しなくても総合的な診断結果を得ることができるので、上位の制御回路の処理負荷の増大が押さえられる効果がある。
〔生産性の向上〕
以下に説明する実施の形態では、セルコントローラ80の基板上に集積回路を保持し、各リチウム電池セルのSOC調整のための放電状態調整用抵抗R1〜R4および図26や図27に示すノイズ除去用のコンデンサC1〜C6もまたセルコントローラ80の基板上に保持している。集積回路や放電状態調整用抵抗R1〜R4およびコンデンサC1〜C6をまとめてセルコントローラ80の基板上に保持する構造としているので、生産性が向上する。またこれらの回路部品を近接して配置することで、信頼性や安全性も向上する。
上記電気部品とリチウム電池セルとをコネクタおよび通信ハーネス50を使用して接続する構造としているので、作業性が向上する。
診断回路を各集積回路が内蔵する構造としているので、生産性が向上すると共に、信頼性や安全性が向上する。
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
〈セルコントローラの説明〉
図1は、車両用回転電機の駆動に使用される車両用電池システムのバッテリ部9およびセルコントローラ(以下、C/Cと略称する場合がある)80を説明する図である。
バッテリ部9は複数個の電池セルのグループGB1、・・・GBM、・・・GBNを有している。各グループは複数個の直列接続された電池セルBC1〜BC4を有している。従って、バッテリ部9は直列に接続された複数の電池セルを有している。この実施の形態では、例えば数十個、場合によっては数百個からなる多数の電池セルを有している。この実施の形態では各電池セルはリチウムイオン電池である。
各リチウム電池セルの端子電圧はその電池セルの充電状態で変化し、例えば充電状態30%程度の放電された状態では約3.3ボルト程度となり、充電状態70%程度の充電された状態では約3.8ボルト程度となる。正常な動作状態を超えて放電した過放電状態では、例えば2.5ボルト以下になる場合があり、また正常な動作範囲を超えて充電された過充電状態では4.2ボルト以上になる場合がある。直列接続された複数の電池セルBC1〜BC4は、端子電圧をそれぞれ計測することでそれぞれの充電状態SOCを把握できる。
本実施の形態では、各電池セルBC1〜BC12の端子電圧の計測を行い易くするなどの理由で、1グループを4個乃至6個の各電池セルBC1〜BC4で構成している。この図1に示す実施の形態では各グループを4個の電池セルすなわち、グループBG1やグループGBM、グループGBNをそれぞれ電池セルBC1〜BC4で構成している。図1で、グループBG1とグループGBMとの間およびグループGBMとグループGBNとの間には、電池セルを備えたグループがさらに存在しているが、同様の構成であり説明の煩雑さを避けるために省略する。
セルコントローラ80は、バッテリ部9を構成する各グループGB1、・・・GBM、・・・GBNに対応して集積回路3A、・・・3M、・・・3Nを有している。各集積回路は、各電池セルの端子電圧を検出するために電圧検出用の端子を備えており、各集積回路の電圧検出用の各端子V1乃至GNDは、各グループを構成する各電池セルの正極および負極にそれぞれ接続されている。また各集積回路は信号伝送のための送受信端子を有しており、これら各集積回路の送受信端子は以下に説明の如く直列接続され、信号伝送路を介してバッテリコントローラ20に接続されている。以下更に詳述する。
セルコントローラ80は各グループに対応して複数個、例えば数個から数十個、の集積回路を有しており、図1では、集積回路(以下ICと略称する場合がある)を3A、……、3M、……3N、として記載している。なお、集積回路3Aと、集積回路3Mとの間および集積回路3Mと集積回路3Nとの間にさらに同様の構成の集積回路が存在するが煩雑さを避けるため、これらは省略する。
各集積回路3A、……、3M、……、3Nは、それぞれ対応する各グループGB1、……GBM、……GBNを構成する各電池セル(以下、電池セルと称する場合がある)BC1〜BC4の電圧を検出する。また、各集積回路3A、……、3M、……、3Nは、全グループの全電池セルの充電状態SOC(State Of Charge)を均一化するため、各電池セルBC1〜BC4のSOCを個別に調整するための充電状態調整用抵抗R1〜R4が、スイッチ素子を介して各電池セルと並列に接続される構成となっている。スイッチ素子は図2を用いて後述する。
さらに集積回路3A、3M、3Nは、それぞれ対応する各グループGB1、……GBM、……GBNを構成する各電池セルBC1〜BC4の異常状態を検出する機能を有している。これらの集積回路は何れも同じ構造を有しており、各集積回路はそれぞれ電池セルの(1)端子電圧計測回路、(2)充電状態調整回路、(3)異常状態検出回路を有している。この実施の形態で異常状態とは、バッテリセルの過充電や過放電、バッテリセル温度の異常上昇などである。
集積回路3A、3M、3Nと上位のバッテリコントローラ20との信号の送受は、通信ハーネス50を介しておこなわれる。バッテリコントローラ20は車のシャーシ電位をグランド(GND)とし、12V以下の低電位で動作するようになっている。一方、各集積回路3A、3M、3Nは、対応するグループを構成する電池セルの電位が異なるので、それぞれ異なる電位に保持され、異なる電位で動作する。前述のとおり、電池セルの端子電圧は充電状態SOCに基づき変化するので、バッテリ部9の最低電位に対する各グループの電位は充電状態SOCに基づいて変化する。各集積回路3A、3M、3Nは、バッテリ部9の対応するグループの電池セルの端子電圧を検出し、あるいは、対応するグループの電池セルの充電状態SOCの調整のための放電制御などを行うので、対応するグループの電位に基づいて集積回路の基準電位を変化させる方が、集積回路に加わる電圧差が小さくなる。集積回路に加わる電圧差が小さい方が、集積回路の耐圧をより小さくできる、あるいは安全性や信頼性が向上するなどの効果があり、本実施形態では関係するグループの電位に基づいて集積回路の基準電位を変化させるようにしている。各集積回路の基準電位となるGND端子を関係するグループの電池セルのどこかに接続することで、集積回路の基準電位を関係するグループの電位に基づいて変化させることが可能となる。この実施形態では、各グループの最低位電位となる電池セルの端子を集積回路のGND端子と接続している。
また、集積回路の内部回路を動作させる基準電圧や電源電圧を各集積回路の内部で発生させるために、各集積回路のV1端子を、対応する各グループの最高位電位となる電池セルの正極端子に接続し、各集積回路のGND端子を各グループの最低位電位となる電池セルの負極端子に接続している。このような構成により、各グループの最高位電位と最低位電位との間の電位差すなわち電圧を受けて各集積回路は動作する。各集積回路の消費電力が電池グループ9の電池セルに均等に分担される構成となり、SOCのアンバランスを抑える効果がある。
バッテリコントローラ20の電源系統とセルコントローラ80の電源系統とは電位関係が異なっており、また電圧の値も大きく異なるので、バッテリコントローラ20に接続される通信ハーネス50は、各集積回路3A、3M、3Nの送受信端子が直列接続されている伝送路52、54と電気的に絶縁されていることが必要となる。そのため、電気的に絶縁するための絶縁回路が、集積回路で構成される伝送路52、54の入口側と出口側とにそれぞれ設けられている。
伝送路52、54の入口側に設けた絶縁回路を入口側インタフェースINT(E)で示し、出口側に設けた絶縁回路を出口側インタフェースINT(O)で示している。これら各インタフェースINT(E)、INT(O)は、電気信号を一旦光信号に変換し、その後再び電気信号に変換する回路を有し、この回路を介して情報を伝送する。その結果、バッテリコントローラ20の電気回路とセルコントローラ80の電気回路との間の電気的な絶縁が維持される。入口側のインタフェースINT(E)はフォトカプラPH1、PH2を有している。フォトカプラPH1はバッテリコントローラ20の送信端子TXと高電位側の集積回路3Aの受信端子RXとの間に設けられ、フォトカプラPH2はバッテリコントローラ20の送信端子FF−TESTと集積回路3Aの受信端子FFIとの間に設けられている。入口側インタフェースINT(E)内のフォトカプラPH1、PH2は上述のバッテリコントローラ20の各送信端子TX、FF−TESTと集積回路3Aの受信端子RXやFFIとの間の電気的な絶縁を維持している。
同様に、バッテリコントローラ20の受信端子と低電位側の集積回路3Nとの間には、出口側インタフェースINT(O)の各フォトカプラPH3、PH4が設けられ、バッテリコントローラ20の受信端子と集積回路3Nの各送信端子との間の電気的な絶縁が維持されている。詳述すると、集積回路3Nの送信端子TXとバッテリコントローラ20の受信端子RXとの間にフォトカプラPH3が設けられ、集積回路3Nの送信端子FFOとバッテリコントローラ20の受信端子FFとの間にフォトカプラPH4が設けられている。
バッテリコントローラ20の送信端子TXから送信される信号は、ループ状の通信路により集積回路3A、……、3M、……、3Nを経由して、受信端子RXで受信される。すなわち、バッテリコントローラ20の送信端子TXから送信される信号は、入口側インタフェースINT(E)内のフォトカプラPH1を介して集積回路3Aの受信端子RXで受信され、集積回路3Aの送信端子TXから送信されて集積回路3Mの受信端子RXで受信され、集積回路3Mの送信端子TXから送信されて集積回路3Nの受信端子RXで受信され、集積回路3Nの送信端子TXから送信されて出口側インタフェースINT(O)のフォトカプラPH3を介してバッテリコントローラ20の受信端子RXで受信される、ループ状の通信路が設けられており、このループ状の通信路を介してシリアル通信が行われる。なお、このシリアル通信により、各電池セルの端子電圧や温度などの計測値がバッテリコントローラ20に受信される。さらに、集積回路3A乃至3Nは、この伝送路を介してコマンドを受信すると自動的にウエイクアップ(Wake Up)状態になるよう構成されている。従って、バッテリコントローラ20から後述する通信コマンド292が伝送されると、各集積回路3A〜3Nはそれぞれスリープ状態から動作状態に状態遷移する。
各集積回路3A〜3Nはさらに異常診断を行い、異常がある場合に次の伝送路を介して1ビット信号が伝送される。各集積回路3A〜3Nは自分自身が異常と判断した場合、あるいは前の集積回路から異常を表す信号を受信端子FFIで受信した場合に、送信端子FFOから異常信号を送信する。一方、既に受信端子FFIで受信していた異常を表す信号が消えたり、あるいは自分自身の異常判断が正常判断となったりした場合に、送信端子FFOから伝送される異常信号は消える。この異常信号は本実施形態では1ビット信号である。バッテリコントローラ20は異常信号を集積回路に送信しないが、異常信号の伝送路が正しく動作することを診断するために、擬似異常信号であるテスト信号をバッテリコントローラ20の端子FFTESTから送信する。次に伝送路を説明する。
擬似異常信号であるテスト信号は、バッテリコントローラ20の送信端子FFTESTから、入口側インタフェースINT(E)のフォトカプラPH2を介して集積回路3Aの受信端子FFIに送信される。この信号を受け、集積回路3Aの送信端子FFOから異常を表す信号(以下異常信号と記す)が次の集積回路・・・集積回路3Mの受信端子FFIに送信される。異常信号はこのように順次送信され、集積回路3Nの送信端子FFOから出口側インタフェースINT(O)のフォトカプラPH4を介してバッテリコントローラ20の受信端子FFに送信される。送信路が正常に動作していれば、バッテリコントローラ20から送信された擬似異常信号は、送信路を介してバッテリコントローラ20の受信端子FFに戻る。このように擬似異常信号をバッテリコントローラ20が送受することで通信路の診断ができ、システムの信頼性が向上する。また上述のとおり、バッテリコントローラ20からの送信依頼が無くても、異常状態を検知した集積回路が次の集積回路に異常信号を送ることで、速やかに異常状態がバッテリコントローラ20に伝達される。従って異常に対する対応策を速やかに推進できる。
上記説明では、信号の伝送は、何れもバッテリ部9の電位の高いグループに対応する集積回路3Aから電位の低いグループに対応する集積回路3Nに向けておこなわれたが、これは一例である。この逆に、バッテリコントローラ20から、バッテリ部9の電位の低いグループに対応する集積回路3Nに信号を送信し、その後、順次電位の高いグループに対応した各集積回路(集積回路3Mを含む)に送り、最高電位のグループに対応した集積回路3AからインタフェースINTを介してバッテリコントローラ20に送るようにしても良い。電位の高い方から低い方へ、あるいは電位の低い方から高い方へ、電位変化に従って伝送路を構成することで集積回路間にフォトカプラなどの絶縁手段を設ける必要が無くなり、簡単な構成および安価な構成で伝送路を作ることができる。
図1に示す直流電源システムは、正極側のリレーRLPと負極側のリレーRLNを介してインバータ装置などの負荷に直流電力を供給する。このリレーRLPやRLNの開閉は、集積回路が異常を検知すると、バッテリコントローラ20からあるいはインバータ装置から制御される。
またバッテリコントローラ20は電流センサSiの出力を受け、バッテリ部9全体からインバータ装置に供給される電流を検知し、また電圧計Vdの出力により、バッテリ部9からインバータ装置に供給される直流電圧を検知する。
〈集積回路〉
図2は、集積回路3Aの一例を示す電子回路のブロック図である。上述したように、各集積回路3A、……、3M、……3Nはそれぞれ同一の構造となっている。したがって、集積回路3A以外の他の集積回路の構成は図2に示す構成と同じである。図2に示す集積回路3Aは、その集積回路に対応するバッテリ部9のグループGB1に含まれる各電池セルBC1〜BC4と接続されている。集積回路3Aを代表例として説明しているが、集積回路3A以外の集積回路はそれぞれ対応するバッテリ部9のグループと接続され、同様の動作を行う。なお、図1に示す如く集積回路3Aおよび抵抗R1〜R4はセルコントローラ80に設けられているが、セルコントローラ80に記載を省略する。
集積回路3Aの入力側端子は、グループGB1を構成する電池セルBC1からBC4に接続されている。電池セルBC1の正極端子は、入力端子V1を介して入力回路116に接続されている。この入力回路116は、後述するようにマルチプレクサを含む。電池セルBC1の負極端子であって電池セルBC2の正極端子は入力端子V2を介して、電池セルBC2の負極端子であって電池セルBC3の正極端子は入力端子V3を介して、電池セルB3の負極端子であって電池セルBC4の正極端子は入力端子V4を介して、それぞれ入力回路116に接続されている。電池セルBC4の負極端子は、集積回路3AのGND端子に接続されている。
電源回路121は、たとえばDC/DCコンバータ等で構成され、各電池セルBC1〜BC4からの電力を所定の定電圧に変換し、これらの電圧は集積回路3A内の各回路に駆動電源として供給され、あるいは状態を判断するために比較回路に比較基準電圧として供給される。
電圧検出回路122は、各電池セルBC1〜BC4のそれぞれの端子間電圧をデジタル値に変換する回路を有しており、デジタル値に変換された各端子間電圧はIC制御回路123に送られ、内部の記憶回路125に保持される。これらの電圧は診断などに利用されたり、図1に示すバッテリコントローラ20に通信回路127から送信されたりする。
IC制御回路123は、演算機能を有すると共に、記憶回路125、電源管理回路124、各種電圧の検知や状態診断を周期的に行うタイミング制御回路252を有している。記憶回路125は、例えばレジスタ回路で構成されており、電圧検出回路122で検出した各電池セルBC1〜BC4の各端子間電圧を各電池セルBC1〜BC4に対応づけて記憶し、また、その他の検出値を、予め定められたアドレスに読出し可能に保持する。電源管理回路124は電源回路121における状態を管理するように構成されている。
IC制御回路123には、通信回路127が接続され、この通信回路127を介して当該集積回路3Aの外部から信号を受信できる。例えば、バッテリコントローラ20から、入口側インタフェースINT(E)のフォトカプラPH1を介し、RX端子で通信コマンドを受信する。通信コマンドは通信回路127からIC制御回路123に送られ、ここで通信コマンドの内容が解読され、通信コマンド内容に応じた処理が行われる。例えば通信コマンドは、各電池セルBC1〜BC4の端子間電圧の計測値を要求する通信コマンド、各電池セルBC1〜BC4の充電状態を調整するための放電動作を要求する通信コマンド、当該集積回路3Aの動作を開始する通信コマンド(Wake UP)、動作を停止する通信コマンド(スリープ)、アドレス設定を要求する通信コマンド、等を含んでいる。
図2で、電池セルBC1の正極端子は、抵抗R1を介して集積回路3Aの端子B1に接続されている。この端子B1と端子V2との間にはバランシングスイッチ129Aが設けられている。バランシングスイッチ129Aには、このスイッチの動作状態を検出するための動作状態検出回路128Aが並列接続されている。このバランシングスイッチ129Aは放電制御回路132によって開閉が制御される。同様に、電池セルBC2の正極端子は抵抗R2を介して端子B2に接続され、この端子B2と端子V3との間にはバランシングスイッチ129Bが設けられている。バランシングスイッチ129Bには、このスイッチの動作状態を検出するための動作状態検出回路128Bが並列接続されている。このバランシングスイッチ129Aは放電制御回路132によって開閉が制御される。
電池セルBC3の正極端子は抵抗R3を介して端子B3に接続され、この端子B3はと端子V4との間にはバランシングスイッチ129Cが設けられている。バランシングスイッチ129Cには、このスイッチの動作状態を検出するための動作状態検出回路128Cが並列接続されている。このバランシングスイッチ129Cは放電制御回路132によって開閉制御される。電池セルBC4の正極端子は抵抗R4を介して端子B4に接続され、この端子B4と端子GNDとの間にはバランシングスイッチ129Dが設けられている。バランシングスイッチ129Dには、このスイッチの動作状態を検出するための動作状態検出回路128Dが並列接続されている。このバランシングスイッチ129Cは放電制御回路132によって開閉が制御される。
動作状態検出回路128A〜128Dは、それぞれ各バランシングスイッチ129A〜129Dの両端電圧を所定周期で繰り返し検出し、各バランシングスイッチ129A〜129Dが正常であるかどうかを検出する。バランシングスイッチ129A〜129Dは電池セルBC1〜電池セルBC4の充電状態を調整するスイッチで、これらスイッチが異常の場合、電池セルの充電状態を制御できなくなり、一部の電池セルが過充電あるいは過放電になる恐れがある。各バランシングスイッチ129A〜129Dの異常検出は、例えば、あるバランシングスイッチが導通している状態にも拘わらず、対応するバランシングスイッチの端子間電圧が電池セルの端子電圧を示す場合である。この場合は、バランシングスイッチが制御信号に基づく導通状態になっていないこととなる。一方、あるバランシングスイッチが開放状態であるにも拘わらず、対応するバランシングスイッチの端子間電圧が電池セルの端子電圧に比べて低い値である場合、この場合は、バランシングスイッチは制御信号に関係なく導通していることとなる。これらスイッチの動作状態検出回路128A〜128Dとしては、差動アンプ等で構成される電圧検出回路が用いられ、後述の異常判断回路131で上記判断を行う所定電圧と比較される。
バランシングスイッチ129A〜129Dは、たとえばMOS型FETで構成され、それぞれ対応する電池セルBC1〜BC4に蓄積された電力を放電させる作用をする。多数の電池セルが直列接続されているバッテリ部9に対してインバータなどの電気負荷が接続され、電気負荷に対する電流の供給は直列接続された多数の電池セルの全体で行われる。またバッテリ部9が充電される状態では、電気負荷からの電流の供給は直列接続された多数の電池セルの全体に対して行われる。直列接続された多数の電池セルが異なる充電状態(SOC)にあると、電気負荷への電流の供給は多数の電池セルの内の最も放電状態にある電池セルの状態により制限される。一方、電気負荷から電流が供給される場合、多数の電池セルの内の最も充電されている電池セルによって電流の供給が制限される。
このため直列接続された多数の電池セルの内、例えば平均状態を越えた充電状態にある電池セルに対して、電池セルに接続されているバランシングスイッチ129を導通状態とし、直列接続されている抵抗を介して放電電流を流す。これにより直列接続された電池セルの充電状態が互いに近づく方向に制御されることとなる。また他の方法として、最も放電状態にある電池セルを基準セルとし、基準セルとの充電状態の差に基づき放電時間を決める方法がある。他にも充電状態SOCを調整する色々の方法がある。充電状態は電池セルの端子電圧を基に演算で求めることができる。電池セルの充電状態とその電池セルの端子電圧は相関関係が有るので、各電池セルの端子電圧を近づけるようにバランシングスイッチ129を制御することで、各電池セルの充電状態を近づけることができる。
動作状態検出回路128A〜128Dによって検出されるバランシングスイッチを構成する各FETのソースとドレーン間の電圧は、電位変換回路130に出力される。各FETのソースとドレーン間の電位は集積回路3Aの基準電位に対してそれぞれ異なっており、このままでは比較判断が難しいので、電位変換回路130で電位をそろえ、次に異常判定回路131で異常判定する。また、電位変換回路130は、診断すべきバランシングスイッチ129をIC制御回路123からの制御信号に基づき選択する機能も有している。選択されたバランシングスイッチ129の電圧が異常判定回路131に送られ、異常判定回路131はIC制御回路123から制御信号に基づき、前記電位変換回路130からの信号である診断すべきバランシングスイッチ129の端子間電圧を判定電圧と比較し、各バランシングスイッチ129A1〜129Dが異常か否かを判定する。
放電制御回路132には、IC制御回路123から放電させるべき電池セルに対応したバランシングスイッチ129を導通させるための指令信号が送られ、この指令信号に基づき、放電制御回路132から、上述したようにMOS型FETから構成されるバランシングスイッチ129A〜129Dの導通を行うゲート電圧に相当する信号が出力される。IC制御回路123は、図1のバッテリコントローラ20から、電池セルに対応した放電時間の指令を通信により受け、上記放電の動作を実行する。
異常判定回路131によりバランシングスイッチ129A〜129Dの異常の有無が検出される。
IC制御回路123は、バランシングスイッチ129A〜129Dの異常を通信回路127の1ビット送信端子FFOから出力し、他の集積回路の通信回路127を介して前記バッテリコントローラ20に送信する。また、IC制御回路123は、バランシングスイッチ129A〜129Dの異常と、その異常であるバランシングスイッチを特定する情報を、通信回路127の送信端子TXを介してバッテリコントローラ20に送信する。
〈通信手段〉
図3は、各集積回路3A、……、3M、……3Nにおける通信コマンドの送受信方法を示した説明図である。図3(a)は、集積回路3Aの端子RXが受信する信号3A−RXおよび集積回路3Aの端子TXから送信される信号3A−TX、さらに次の集積回路3Bの端子RXが受信する信号3B−RXおよび次の集積回路3Bの端子TXから送信される信号3B−TX、さらにまた次の集積回路3Cの端子RXが受信する信号3C−RXおよびその集積回路3Cの端子TXから送信される信号3C−TXを示している。
信号3A−TXは集積回路3A内の抵抗RAと集積回路3B内の抵抗RBとで分圧されて信号3B−RXが形成され、信号3B−TXは集積回路3B内の抵抗RB'と集積回路3C内の抵抗RCで分圧されて信号3C−RXが形成される。以下直列接続された通信路において集積回路の内部の各抵抗により分圧されて受信信号の電位が定まる。
図3(b)は、前記信号3A−RX、3A−TX、3B−RX、3B−TX、3C−RX、および3C−TXのそれぞれの電位レベルを示している。
このように、電圧レベルの最上位のグループGB1より下流側のグループに向けて、閾値の電圧は、電池セル4個分の加算電圧と電池セル2個分の加算電圧との半分の電圧に設定するようにしている。このようにした理由は、集積回路3Bが管理する電池セルの各電圧を基準に集積回路3Aと同様な閾値で集積回路3AのTX端子からの信号を判定しようとした場合、上記信号のLowレベルが集積回路3Bに掛かる総電圧の1/2となってしまう不都合を回避させるためである。なお上記信号レベルは高電位側から低電位側への送信を前提として説明したが、低電位側から高電位側への送信も同様に抵抗分割によるレベルシフトを行うことで可能となる。
〈診断および計測、(1)動作スケジュール概要〉
図4は計測動作のタイミングを説明する図である。図2に示す集積回路3Aは計測動作と共に診断動作を行う機能を有しており、図4に記載の動作タイミングで繰り返し計測を行い、この計測に同期して診断を実行する。なお、上述した図1および図2はバッテリ部9を構成する各グループGB1〜GBNが、4個の電池セルを有している実施形態であるが、集積回路3A〜3Nは6個の電池セルに対応できる回路となっている。従って、各グループGB1〜GBNを構成する電池セルの数は、最大6個まで増やすことが可能である。そのため、図4の動作タイミングを示す図においても、電池セルが6個を前提として構成されている。
図1の各グループGB1〜GBNに対応付けて設けられた集積回路3A〜3Nには、各グループGB1〜GBNを構成する電池セル数がそれぞれセットされる。それにより、各集積回路3A〜3Nは関係付けられたグループの電池セル数に対応したステージ信号を発生する。このように構成することで、グループGB1〜GBNを構成する電池セル数を変えることが可能となり設計の自由度が増大すると共に、高速の処理が可能となる。
図4は上述のとおり、診断動作と計測動作のタイミングを説明する図である。上記計測動作のタイミングおよび測定周期、あるいは診断動作は、起動回路254と第1ステージカウンタ256および第2ステージカウンタ258からなるステージカウンタとにより管理される。ステージカウンタ256,258は、集積回路3A全体の動作を管理する制御信号(タイミング信号)を発生する。ステージカウンタ256,258は、実際には分離されていないが、ここでは理解しやすくするためにあえて分離して示した。上記ステージカウンタは通常のカウンタであっても良いし、シフトレジスタであっても良い。
起動回路254は、(1)伝送路から送られてくるWake UPを要求する通信コマンドを端子RXで受信すると、あるいは(2)集積回路のICの電源電圧が供給され所定の電圧に達すると、(3)あるいは車のスタータスイッチ(キースイッチ)が投入されたことを表す信号を受信すると、前記第1と第2のステージカウンタ256,258へリセット信号を出力して各ステージカウンタ256,258を初期状態とし、所定の周波数でクロック信号を出力する。すなわち上記(1)乃至(3)の条件で集積回路3Aは計測動作および診断動作を実行する。一方、伝送路からSleepを要求する通信コマンドを受信すると、あるいは該通信コマンドを所定時間以上受信出来ないと、起動回路254はステージカウンタ256,258がリセット状態すなわち初期状態に戻ったタイミングで、クロックの出力を停止する。このクロックの出力停止によりステージの進行が停止されるので、上記計測動作および診断動作の実行は停止状態となる。
起動回路254からのクロック信号を受け、第1ステージカウンタ256はステージSTG2の各期間(後述する[STGCalのRES]期間〜[STGPSBGの計測]期間のそれぞれ)内の処理タイミングを制御する計数値を出力し、デコーダ257は、ステージSTG2の各期間内の処理タイミングを制御するタイミング信号STG1を発生する。第2ステージカウンタ258の計数値が進むに従い、対応する期間が動作表260の左から右に切り替わる。第2ステージカウンタ258の計数値に応じて、各期間を特定するステージ信号STG2がデコーダ259から出力される。
第1ステージカウンタ256は下位のカウンタであり、第2ステージカウンタ258は上位カウンタである。第2ステージカウンタ258の計数値が「0000」で、第1ステージカウンタ256の計数値が「0000」〜「1111」の間は、ステージSTGCalのRES期間(以下では、[STGCal RES]期間と称する)を表す信号がデコーダ259から出力される。そして、[STGCal RES]期間に行われる種々の処理は、第1ステージカウンタ256の計数値「0000」〜「1111」に基づいて出力されるデコーダ257の信号に基づいて実行される。
なお、図4では、第1ステージカウンタ256は4ビットカウンタのように簡略して記載しているが、例えば、第1ステージカウンタ256が8ビットカウンタである場合には、1カウント毎に異なる処理動作が行われるとすると、256種類の処理が可能となる。第2ステージカウンタ258についても第1ステージカウンタ256の場合と同様であって、多数の計数を可能とすることで多数の処理が可能である。
第1ステージカウンタ256の計数値が「1111」となると[STGCalのRES]期間が終了し、第2ステージカウンタ258の計数値が「0001」となって[STGCalの計測]期間となる。そして、第1ステージカウンタ258が計数値「0001」である[STGCal 計測]期間においては、第1ステージカウンタ256の計数値「0000」〜「1111」に基づいてデコーダ257から出力される信号に基づいて種々の処理が実行される。そして、第1ステージカウンタ256の計数値が「1111」となると[STGCalの計測]期間が終了し、第2ステージカウンタ258の計数値が「0010」となって[STGCV1 RES]期間となる。この[STGCV1 RES]期間において第1ステージカウンタ256の計数値が「1111」となると[STGCV1 RES]期間を終了し、第2ステージカウンタ258の計数値が「0011」となって[STGCV1 計測]期間が開始される。
このように、図4の[STGCal RES]期間からスタートし、第2ステージカウンタ258の計数に従い順に動作期間が右側に移動し、[STGPSGB 計測]期間の終了で基本動作が終了する。この次に第2ステージカウンタ258が計数アップすると、再び[STGCal RES]期間がスタートする。
なお、図2に示す実施の形態では、バッテリ部9の各グループGB1〜GBNは4個の電池セルで構成されるので、表260のステージSTGCV5とステージSTGCV6は使用されない、あるいはスキップされてステージSTGCV5とステージSTGCV6は存在しない。また、強制的に第2ステージカウンタ258の内容を特定の計数値とすると、その計数値に対応した期間内の処理が実行される。
〈診断および計測、(2)各ステージにおける診断と計測〉
次に、図4の動作表260の行260Y1に記載の各ステージにおける、計測および診断の内容について説明する。前述したように各ステージはRES期間と計測期間とを有し、RES期間では診断動作が行われ、計測期間では計測動作、診断動作および計測された値に基づく被測定対象の診断が行われる。表260の行260Y3〜行260Y9に示す「丸印」は、それぞれの行に記載した診断項目が「丸印」が施された期間において実行されることを表している。これらの診断項目は、集積回路を含む制御装置、すなわち図2に記載の計測系あるいは電池セルの放電制御系の自己診断である。
なお、各ステージのRES期間では丸印で示す項目の診断を行うだけでなく、計測のために使用するアナログデジタル変換器122Aの初期化を行う。本実施の形態では、ノイズの影響を少なくするためにコンデンサを使用した充放電型のアナログデジタル変換器122Aを使用する、前に行われた動作時にコンデンサに蓄えられた電荷の放電などもこのRES期間で実施する。行260Y2の各ステージの計測期間では、アナログデジタル変換器122Aを使用した計測の実行や、計測された値に基づく被測定対象の診断を行う。
ステージSTGCalのRES期間では行260Y3〜行260Y9に示す自己診断を主に行い、行260Y6に記載するマルチプレクサとして機能する入力回路116の診断(HVMUX)、行260Y7に記載する入力回路116の切り替え動作を行う切り替え回路の診断(HVMUX信号選択)、更に行260Y9に記載する項目である、集積回路内部のデジタル比較動作を行う部分の選択信号の診断(図6の現在値記憶回路274や基準値記憶回路278の選択信号)などの診断を行う。
ステージSTGCalの計測期間では、行260Y3に記載する項目である、電池セルの充電状態の調整のためのバランシングスイッチ129の端子電圧の計測とバランシングスイッチ129の診断を行い、さらに合わせて行260Y5に記載する項目である、集積回路内部のデジタル比較回路の診断を行う。行260Y8に記載する診断では、各電池セルがオーバーチャージ(過放電)の状態になった場合にそれを検知するための閾値を発生する回路が正常かどうかを診断する。仮に閾値を発生する回路が異常になると正しい過放電診断を行えなくなる。また、ステージSTGCalの計測期間では、行260Y7および行260Y9の診断も行われる。なお、行260Y7に記載する診断項目と行260Y9に記載する項目は全てのステージのRES期間および計測期間おいて実行される。これらの診断実施周期は一例であり、毎回診断するのではなく、もっと長い間隔で行っても良い。
ステージSTGCV1〜ステージSTGCV6の計測期間では順に電池セルの端子電圧を計測し、さらに計測された値から各電池セルが過充電や過放電の状態にならないかを診断する。実際に過充電や過放電の状態にならないように、過充電や過放電の診断は安全性の幅を取って設定している。なお、図1や図2に示すようにグループGB1〜GBNの電池セルが4個の場合は、ステージSTGCV5とステージSTGCV6はスキップされる。ステージSTGVDDの計測期間では図2に示す電源回路121の出力電圧が計測される。ステージSTGTEMの計測期間では温度計の出力電圧が測定される。ステージSTGPSBGの計測期間では基準電圧が測定される。
診断動作に関しては、ステージSTGCV1〜ステージSTGPSBGのRES期間では、ステージSTGCalのRES期間と同様の診断動作が行われる。また、ステージSTGCV1〜ステージSTGTEMの計測期間では、いずれの期間においても、行260Y7および行260Y9に示す診断項目が実行される。ステージSTGTEMでは、行260Y4に記載する診断項目である集積回路内部のアナログ回路およびアナログデジタル変換器、基準電圧発生回路が、総合的に正常か否かを診断する。また、行260Y7および行260Y9に示す診断項目が実行される。基準電圧発生回路から出力される電圧は既知の電圧値であり、その電圧値の計測結果が所定に範囲に入っていない場合には上記回路のいずれかが異常と判断でき、制御を禁止すべき状態であることが診断できる。
〈診断および計測、(3)電池セルの端子電圧計測〉
図5は計測回路および診断回路を示す図である。入力回路116はマルチプレクサの働きをする回路であり、後述するようにマルチプレクサ118,120を備えている。入力回路116には、図4に示したデコーダ257,259から信号STG1,STG2が入力され、その信号に基づいてマルチプレクサによる選択動作が行われる。マルチプレクサ診断(HVMUX)においては、電圧検出回路122の差動増幅器262の出力信号が診断回路160に取り込まれ、後述するような診断が行われる。また、例えば電池セルBC1の電圧を計測する場合には、端子V1と端子V2とを選択すると電池セルBC1の電圧が入力回路116から電圧検出回路122に出力される。ここでは、電池セルの端子電圧計測について説明する。
電圧検出回路122は差動増幅器262とアナログデジタル変換器122Aとを有している。なお、電池セルBC1〜BC4(または、BC1〜BC6)は直列接続されているので、各端子電圧の負極電位が異なっている。そのため、基準電位(各集積回路3A〜3N内のGND電位)をそろえるために差動増幅器262を使用している。差動増幅器262の出力はアナログデジタル変換器122Aによりデジタル値に変換され、平均化回路264に出力される。平均化回路264は所定回数の測定結果の平均値を求める。その平均値は、電池セルBC1の場合には現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持される。平均化回路264は、平均化制御回路263に保持された測定回数の平均値を演算し、その出力を上述の現在値記憶回路274に保持する。平均化制御回路263が1を指令すれば、アナログデジタル変換器122Aの出力は、平均化されないでそのまま現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持される。平均化制御回路263が4を指令すれば、電池セルBC1の端子電圧の4回の計測結果が平均化され、その平均値が上記現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持される。4回の平均を演算するには、最初は図4のステージによる計測を4回行うことが必要となるが、4回目以降は最新の測定結果の中から4個の測定値を演算に使用することで、各測定毎に平均化回路264の平均化演算が可能となる。上述のとおり、所定回数の平均化を行う平均化回路264を設けることで、ノイズの悪影響を除去できる。図1に示すバッテリ部9の直流電力はインバータ装置に供給され、交流電力に変換される。インバータ装置による直流電力から交流電力への変換の際に電流の導通や遮断動作が高速に行われ、そのときに大きなノイズが発生するが、平均化回路264を設けることで、そのようなノイズの悪影響を少なくできる効果がある。
デジタル変換された電池セルBC1の端子電圧のデジタル値は現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持される。上記計測動作が図4の[STGCV1の計測]期間で行われる。その後、ステージSTGCV1の計測として示す時間内において、計測値に基づく診断動作が行われる。診断動作としては過充電診断と過放電診断である。先ず電池セルBC1の端子電圧のデジタル値は現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持され、次に、デジタルマルチプレクサ272は、現在値記憶回路274のレジスタCELL1から電池セルBC1の端子電圧を読み出してデジタル比較器270に送る。また、デジタルマルチプレクサ276は、基準値記憶回路278から過充電の判断基準値OCを読み出しデジタル比較器270へ送る。デジタル比較器270はレジスタCELL1からの電池セルBC1の端子電圧と過充電の判断基準値OCとを比較し、もし電池セルBC1の端子電圧が過充電の判断基準値OCより大きい場合には、フラグ記憶回路284に異常を表すフラグ[MFflag]をセットする。また、過充電を表すフラグ[OCflag]もセットする。実際には過充電状態が生じないように制御しており、このような状態はほとんど生じない。しかし、信頼性を担保するため、診断を繰り返し実行する。
過充電診断に続いて、さらに過放電の診断を行う。デジタルマルチプレクサ272が現在値記憶回路274のレジスタCELL1から電池セルBC1の端子電圧を読み出しデジタル比較器270に送る。またデジタルマルチプレクサ276が基準値記憶回路278から過放電の判断基準値ODを読み出しデジタル比較器270へ送る。前記デジタル比較器270はレジスタCELL1からの電池セルBC1の端子電圧と過放電の判断基準値ODとを比較し、もし電池セルBC1の端子電圧が過放電の判断基準値ODより小さい場合には、フラグ記憶回路284に異常を表すフラグ[MFflag]をセットする。また、過放電を表すフラグ[OCflag]もセットする。上述の過充電の場合と同様、実際には過放電状態が生じないように制御しており、このような過放電の状態はほとんど生じない。しかし、信頼性を担保するため、診断を繰り返し実行する。
上記説明は図4のステージSTGCV1の計測期間での電池セルBC1に関する計測と診断である。同様に次のステージSTGCV2では、図5の入力回路116は電池セルBC2の端子電圧を選択して電圧検出回路122へ出力する。電圧検出回路122はデジタル変換し、平均化回路264で平均値を演算し、現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持する。デジタル比較器270は、デジタルマルチプレクサ272によってレジスタCELL2から読み出された電池セルBC2の端子電圧を上記過充電の判断基準値OCと比較し、次に電池セルBC2の端子電圧を過放電の判断基準値ODと比較する。上記過充電の判断基準値OCとの比較や過放電の判断基準値ODとの比較で異常状態の判断を行い、もし異常状態であればフラグ記憶回路284に異常を表すフラグ[MFflag]をセットし、異常の原因を表すフラグ[OCflag]あるいはフラグ[ODflag]をセットする。
以下同様に図4のステージSTGCV3の計測期間で電池セルBC3の端子電圧の計測と過充電や過放電の診断を行い、ステージSTGCV4の計測期間で電池セルBC4の端子電圧の計測と過充電や過放電の診断を行う。
〈診断および計測、(4)診断〉
以下では、図4に示した各ステージのRES期間に行われる診断項目のうち、行260Y6に示したマルチプレクサ診断について説明する。
(第1の実施形態)
図6,図33,34を参照して、マルチプレクサ診断動作の第1の実施形態について説明する。図33は、図5に示す回路の内、マルチプレクサ診断に関係する回路を示したものである。入力回路116は、図1に示す集積回路3A〜3Nの内部回路であり、マルチプレクサ118、120を有している。Z1〜Z4は、既知の一定電圧を発生する定電圧発生素子や回路であり、ここではツェナー素子が用いられている。各ツェナー素子Z1〜Z4は、定電流回路117の電流によって両端に一定の電圧Vzを発生する。ここでは、各ツェナー素子Z1〜Z4のツェナー電圧Vzは等しく設定されている。
診断回路160には、電圧比較回路162、判断回路164、OR回路166および電圧源VH,VLが設けられている。入力回路116および診断回路160にはSTG1、STG2信号が入力され、入力回路116および診断回路160に設けられたスイッチ(後述する)の動作は、STG1、STG2信号の指示に従って行われる。なお、図33に示すマルチプレクサ120の状態は、ステージSTGCV1における状態を示している。
マルチプレクサ120の診断は、図4の行260Y6に示すように、ステージSTGCal〜ステージSTGPSBGの全ての期間(RES期間、計測期間)において行われる。ここでは、それらを代表して、ステージSTGCV1〜STGCV4の各期間について説明する。各ステージSTGCV1〜STGCV4の計測期間では、マルチプレクサ120の診断を行ってマルチプレクサ120が正常動作することを確認した上で、電池セルの端子電圧の測定を行う。ステージSTGCal,ステージSTGVDD〜ステージSTGPSBGの計測期間についても同様の考え方であり、マルチプレクサ120の正常動作を確認してから計測を行う。
図6は、ステージSTGCV1〜ステージSTGCV4における動作を説明する図であり、時間の経過に従って表の左側から右側へと動作が進む。すなわち、このようなスイッチ接続動作が、STG1・STG2信号によって入力回路116および診断回路160に指示される。まず、ステージSTGCV1について説明する。マルチプレクサ120に関しては、ステージSTGCV1のRES期間および計測期間のいずれにおいても、スイッチSB1は接点MB1に接続され、スイッチSB2は接点MB2に接続される。一方、マルチプレクサ118に関しては、RES期間においてはスイッチSA1が接点MA1に接続され、計測期間ではスイッチSA1は接点MA2に接続される。マルチプレクサ118の他のスイッチSA2〜SA4は、いずれの期間においても開放状態とされる。
図33,34を参照して説明する。ステージSTGCV1のRES期間においてスイッチSA1が接点MA1に接続されると、ツェナー素子Z1のツェナー電圧Vzがマルチプレクサ120に入力される。そして、そのときのマルチプレクサ120の出力電圧を、差動増幅器262を介して電圧比較回路162に入力する。なお、電池セルBC1〜BC4(または、BC1〜BC6)は直列接続されているので、各端子電圧の負極電位が異なっている。そのため、上述したように、基準電位(各集積回路3A〜3N内のGND電位)をそろえるために差動増幅器262を使用している。
マルチプレクサ診断を行う[STGCV1 RES]期間では、電圧比較回路162のスイッチSC1が接続される。そして、マルチプレクサ120の出力電圧Vmが入力されたツェナー電圧Vzと一致するか否か、すなわちマルチプレクサ120が正常に動作しているか否かを確認するために、スイッチSD1を上限比較用の電圧源VHと接続する。電圧源VHの発生する電圧VHは、上述したツェナー電圧Vz(既知の電圧)より高く設定されている。判断回路164は、電圧比較回路162の出力から、Vm>VHであった場合、すなわち出力電圧Vmが入力されたツェナー電圧Vzと一致しなかった場合には、マルチプレクサ120のスイッチ接続状態が正常でないとして異常信号を出力する。
次いで、スイッチSD1を下限比較用の電圧源VLと接続する。電圧源VLの発生する電圧VLはツェナー電圧Vz(既知の電圧)より低く設定されている。判断回路164は、電圧比較回路162の出力から、Vm<VLであった場合、すなわち出力電圧Vmが入力されたツェナー電圧Vzと一致しなかった場合には異常信号を出力する。なお、ここでは差動増幅器262の出力を電圧比較回路162に入力して異常判断を行っているので、マルチプレクサ120の異常が発生した場合だけでなく、マルチプレクサ118や差動増幅器262に異常が発生した場合にも、判断回路164により異常を検出することができる。
診断回路160のOR回路166は、判断回路164から異常信号が入力されると異常信号を異常フラグ記憶回路168へと出力する。その結果、異常フラグ記憶回路168に異常フラグがセットされる。この異常フラグ記憶回路168は、図5に示すフラグ記憶回路284のMFflagレジスタと同じものである。異常フラグ記憶回路168は、異常フラグがセットされると、異常信号をOR回路166および通信回路127のOR回路288に出力する。そのため、異常フラグ記憶回路168に異常フラグが保持されていると、判断回路164から正常信号が出力されていてもOR回路166からは異常信号が出力される。
なお、詳細な回路は図示していないが、異常フラグ記憶回路168にセットされた異常フラグは、通信回路127を介して送られてくるコマンドにより、リセットすることが可能である。
異常フラグ記憶回路168に異常フラグが保持されると、異常信号がOR回路288へ常時出力される。OR回路288には、他の集積回路からの信号が入力端子FFIを介して入力される。OR回路288は、入力端子FFIを介して他の集積回路から異常信号が入力されると、または、異常フラグ記憶回路168から異常信号が入力されると、出力端子FFOから異常信号を出力する。すなわち、入力端子FFIに正常を表す信号が入力され、かつ異常フラグ記憶回路168に異常フラグが保持されていない条件においてのみ、正常を表す信号を出力端子FFOに出力する。
STG1・STG2信号に基づいて[STGCV1 RES]期間から[STGCV1 計測]期間へと移行すると、図6の動作図に示すように、マルチプレクサ118のスイッチSA1が接点MA2に接続されるとともに、診断回路160のスイッチSC1およびSD1が開放状態とされ、電池セルBC1の端子電圧計測が行われる。このとき、判断回路164は非動作状態とされ、判断回路164からOR回路166に対して正常/異常の信号は出力されない。このように、マルチプレクサ診断で正常と診断されたマルチプレクサ120のスイッチ状態を維持したまま、マルチプレクサ118のスイッチSA1を切り替えることにより端子電圧の測定を行うようにしているので、電池セルBC1の端子電圧計測を確実に行うことができる。なお、端子電圧計測の詳細については後述する。
[STGCV1 計測]期間が終了すると、ステージSTGCV2のRES期間に移行する。ステージSTGCV2においては、図34に示すようにスイッチSB1は接点MB2に接続され、スイッチSB2は接点MB3に接続される。図6に示すように、このスイッチ状態は、RES期間および計測期間のいずれにおいても保持される。一方、マルチプレクサ118に関しては、RES期間においてはスイッチSA1が接点MA2に接続され、スイッチSA2が接点MA3に接続される。また、計測期間においては、スイッチSA1は接点MA2に接続され、スイッチSA2は接点MA4に接続される。マルチプレクサ118の他のスイッチSA3およびSA4は、いずれの期間においても開放状態とされる。
マルチプレクサ診断を行う[STGCV2 RES]期間では、電圧比較回路162のスイッチSC1が接続される。そして、マルチプレクサ120の出力電圧Vmが入力されたツェナー電圧Vzと等しいか否か、すなわちマルチプレクサ120が正常に動作しているか否かを確認するために、スイッチSD1を上限比較用の電圧源VH(電圧VH)と接続する。上述したように、この電圧VHは、上述したツェナー電圧Vz(既知の電圧)より高く設定されている。判断回路164は、電圧比較回路162の出力から、Vm>VHであった場合には異常信号を出力する。
次いで、スイッチSD1を下限比較用の電圧源VL(電圧VL)と接続し、ツェナー電圧Vz(既知の電圧)より低く設定されている電圧VLを電圧比較回路162に入力する。判断回路164は、電圧比較回路162の出力から、Vm<VLであった場合には異常信号を出力する。電圧比較回路162から異常信号が出力されてから以後の処理は、上述したステージSTGCV1のRES期間の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。
[STGCV2 RES]期間が終了し、[STGCV2 計測]期間へと移行すると、図6の動作図に示すように、マルチプレクサ118のスイッチSA2が接点MA4に接続されるとともに、診断回路160のスイッチSC1およびSD1が開放状態とされ、電池セルBC2の端子電圧計測が行われる。[STGCV2 計測]期間の端子電圧計測においても、マルチプレクサ診断で正常と診断されたマルチプレクサ120のスイッチ状態を維持したまま、マルチプレクサ118のスイッチSA2を切り替えることにより端子電圧の測定を行うようにしているので、電池セルBC2の端子電圧計測を確実に行うことができる。
ステージSTGCV3においては、図6に示すように、RES期間および計測期間のいずれにおいても、スイッチSB1は接点MB4に接続され、スイッチSB2は接点MB5に接続される。一方、マルチプレクサ118に関しては、RES期間においてはスイッチSA3が接点MA5に接続され、スイッチSA4が接点MA6に接続される。また、計測期間においては、スイッチSA3は接点MA4に接続され、スイッチSA4は接点MA6に接続される。マルチプレクサ118の他のスイッチSA1およびSA2は、いずれの期間においても開放状態とされる。そして、[STGCV3 RES]期間におけるマルチプレクサ120の診断を、上述した[STGCV2 RES]期間の場合と同様に行う。[STGCV3 RES]期間が終了すると、[STGCV3 計測]期間において電池セルBC3の端子電圧を計測する。
ステージSTGCV4においては、図6に示すように、RES期間および計測期間のいずれにおいても、スイッチSB1は接点MB5に接続され、スイッチSB2は接点MB6に接続される。一方、マルチプレクサ118に関しては、RES期間においてはスイッチSA4が接点MA7に接続され、計測期間においては、スイッチSA4は接点MA6に接続される。マルチプレクサ118の他のスイッチSA1〜SA3は、いずれの期間においても開放状態とされる。そして、スイッチSC1,SD1に関して、上述したステージSTGCV1〜ステージSTGCV3と同様の動作を行って、マルチプレクサ120の診断と電池セルBC4の端子電圧計測を行う。
ステージSTGCV3およびステージSTGCV4のいずれにおいても、マルチプレクサ診断で正常と診断されたマルチプレクサ120のスイッチ状態を維持したまま、マルチプレクサ118のスイッチを切り替えることにより端子電圧の測定を行うようにしているので、電池セルBC3,BC4の端子電圧計測を確実に行うことができる。
(第2の実施形態)
図35は、マルチプレクサ診断動作の第2の実施形態を示す図である。第2の実施形態においては、入力回路116に設けられているツェナー素子Z1〜Z4のツェナー電圧Vz1〜Vz4は、すべて異なった値に設定されている。診断回路160には、各ツェナー素子Z1〜Z4に対応して、電圧源VH1〜VH4,VL1〜VL4が設けられている。その他の構成は、図33〜35に示した回路と同様である。
マルチプレクサ診断動作におけるマルチプレクサ118,120およびスイッチSC1の接続状態は、各期間とも図6に示したものと同一である。一方、比較用の電圧源を選択するスイッチSD1の接続状態は、以下に説明するように図6と異なっている。まず、図4に示す[STGCV1 RES]期間では、診断回路160は、入力されたSTG1・STG2信号に基づいてスイッチSD1をツェナー素子Z1に対応付けられた上限比較用の電圧源VH1に接続する。その結果、比較回路162には、電圧源VH1の電圧VH1と、差動増幅器262を介して入力されるマルチプレクサ120の出力Vmとが入力される。判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて、マルチプレクサ120が正常動作しているか否かを判断する。電圧VH1はツェナー素子Z1の発生するツェナー電圧Vz1よりも高く設定されており、判断回路164はVm>VH1であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz1と一致しなかった場合には、マルチプレクサ120のスイッチ接続状態が正常でないとして異常信号を出力する。
次に、スイッチSD1を、ツェナー素子Z1に対応付けられた下限比較用の電圧源VL1に接続する。電圧源VL1の電圧VL1はツェナー素子Z1のツェナー電圧Vz1よりも低く設定されており、判断回路164はVm<VL1であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz1と一致しなかった場合には、マルチプレクサ120のスイッチ接続状態が正常でないとして異常信号を出力する。電圧比較回路162から異常信号が出力されてから以後の処理(OR回路166以後の処理)は、上述した第1の実施形態の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。
[STGCV1 RES]期間が終了すると、STG1・STG2信号に基づいて[STGCV1 計測]期間へと進む。[STGCV1 計測]期間におけるスイッチ動作は図6に示すものと同一であり、マルチプレクサ118のスイッチSA1は接点MA2に接続され、診断回路160のスイッチSC1,SD1は開放状態とされる。その結果、電池セルBC1の端子電圧が差動増幅器262に入力される。
[STGCV2 RES]期間では、図6に示すようにマルチプレクサ118,120のスイッチSA1,SA2,SB1,SB2,SC1の開閉を制御する。そして、スイッチSD1をツェナー素子Z2に対応付けられた上限比較用の電圧源VH2に接続して、電圧源VH2の電圧VH2と差動増幅器262を介して入力されるマルチプレクサ120の出力Vmと比較する。電圧VH2はツェナー素子Z2の発生するVz2よりも高く設定されており、判断回路164はVm>VH2であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz2と一致しなかった場合に異常信号を出力する。次に、スイッチSD1を、ツェナー素子Z2に対応付けられた下限比較用の電圧源VL2に接続する。電圧源VL2の電圧VL2はツェナー素子Z2のツェナー電圧Vz2よりも低く設定されており、判断回路164はVm<VL2であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz2と一致しなかった場合に異常信号を出力する。電圧比較回路162から異常信号が出力されてから以後の処理(OR回路166以後の処理)は、上述した第1の実施形態の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。
[STGCV2 RES]期間が終了すると、STG1・STG2信号に基づいて[STGCV2 計測]期間へと進む。[STGCV2 計測]期間におけるスイッチ動作は図6に示すものと同一であり、マルチプレクサ118のスイッチSA1は接点MA2に、スイッチSA2は接点MA4にそれぞれ接続され、診断回路160のスイッチSC1,SD1は開放状態とされる。その結果、電池セルBC2の端子電圧が差動増幅器262に入力される。
[STGCV3 RES]期間では、図6に示すようにマルチプレクサ118,120のスイッチSA1,SA2,SB1,SB2,SC1の開閉を制御する。そして、スイッチSD1をツェナー素子Z3に対応付けられた上限比較用の電圧源VH3に接続して、電圧源VH3の電圧VH3と差動増幅器262を介して入力されるマルチプレクサ120の出力Vmと比較する。電圧VH3はツェナー素子Z3の発生するVz3よりも高く設定されており、判断回路164はVm>VH3であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz3と一致しなかった場合に異常信号を出力する。次に、スイッチSD1を、ツェナー素子Z3に対応付けられた下限比較用の電圧源VL3に接続する。電圧源VL3の電圧VL3はツェナー素子Z3のツェナー電圧Vz3よりも低く設定されており、判断回路164はVm<VL3であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz3と一致しなかった場合に異常信号を出力する。電圧比較回路162から異常信号が出力されてから以後の処理(OR回路166以後の処理)は、上述した第1の実施形態の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。
[STGCV3 RES]期間が終了すると、STG1・STG2信号に基づいて[STGCV3 計測]期間へと進む。[STGCV3 計測]期間におけるスイッチ動作は図6に示すものと同一であり、マルチプレクサ118のスイッチSA3は接点MA5に、スイッチSA4は接点MA6にそれぞれ接続され、診断回路160のスイッチSC1,SD1は開放状態とされる。その結果、電池セルBC3の端子電圧が差動増幅器262に入力される。
[STGCV4 RES]期間では、図6に示すようにマルチプレクサ118,120のスイッチSA1,SA2,SB1,SB2,SC1の開閉を制御する。そして、スイッチSD1をツェナー素子Z4に対応付けられた上限比較用の電圧源VH4に接続して、電圧源VH4の電圧VH4と差動増幅器262を介して入力されるマルチプレクサ120の出力Vmと比較する。電圧VH4はツェナー素子Z4の発生するVz4よりも高く設定されており、判断回路164はVm>VH4であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz4と一致しなかった場合に異常信号を出力する。次に、スイッチSD1を、ツェナー素子Z4に対応付けられた下限比較用の電圧源VL4に接続する。電圧源VL4の電圧VL4はツェナー素子Z4のツェナー電圧Vz4よりも低く設定されており、判断回路164はVm<VL4であった場合、すなわち出力Vmがツェナー電圧Vz4と一致しなかった場合に異常信号を出力する。電圧比較回路162から異常信号が出力されてから以後の処理(OR回路166以後の処理)は、上述した第1の実施形態の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。
[STGCV4 RES]期間が終了すると、STG1・STG2信号に基づいて[STGCV4 計測]期間へと進む。[STGCV4 計測]期間におけるスイッチ動作は図6に示すものと同一であり、マルチプレクサ118のスイッチSA4は接点MA6に接続され、診断回路160のスイッチSC1,SD1は開放状態とされる。その結果、電池セルBC4の端子電圧が差動増幅器262に入力される。
第2の実施形態では、マルチプレクサ120のスイッチSB1,SB2の接続状態に応じてツェナー素子Z1〜Z4の発生する一定電圧Vz1〜Vz4を互いに異なる値に設定したことにより、マルチプレクサ診断の診断精度の向上を図ることができる。例えば、第1の実施形態の[STGCV2 RES]期間において、マルチプレクサ120のスイッチ接続状態が図34に示すものではなくて、スイッチSB1が接点MB1に接続され,スイッチSB2が接点MB2に接続されているような状態が仮に発生した場合を考える。そのような場合であっても、判断回路164は、マルチプレクサ20の出力Vmがツェナー電圧Vzと一致していると判断し、異常信号出力せずに正常であることを示す信号を出力してしまうことになる。
しかしながら、第2の実施形態では、STG1・STG2信号で指示するマルチプレクサ120のスイッチ接続状態(すなわち、電池セル選択状態)に応じてツェナー電圧が異なる。そのため、上記で仮定したように、マルチプレクサ120のスイッチ接続状態とスイッチSD1が接続される電圧源とが対応していない場合には、判断回路164から異常信号が出力され、マルチプレクサ診断が確実に行われる。
(第3の実施形態)
図36〜38を参照して、マルチプレクサ診断動作の第3の実施形態について説明する。図37は、図5に示す回路の内、マルチプレクサ診断に関係する回路を示したものである。入力回路116は、マルチプレクサ120、定電流回路117、抵抗RおよびスイッチS1〜S4を備えている。マルチプレクサ120の出力端MP1と出力端MP2はそれぞれ差動増幅器262の入力端に接続されている。マルチプレクサ120の出力端MP1と電源ラインとの間には上記定電流回路117と抵抗RとスイッチS1の直列回路が接続されている。また出力端MP1と集積回路のアース(基準電位)との間にはスイッチS2と抵抗Rと定電流回路117との直列回路が接続されている。同様に出力端MP2と電源ラインとの間には定電流回路117と抵抗RとスイッチS3の直列回路が接続されており、出力端MP2と集積回路のアース(基準電位)との間にはスイッチS4と抵抗Rと定電流回路117との直列回路が接続されている。マルチプレクサ120には、電池セルBC1〜BC4を選択するためのスイッチSB1,SB2が設けられている。本実施形態におけるスイッチSB1,SB2は、図37に示すように各々5つのスイッチから成る。そして、スイッチSB1に設けられた5つのスイッチの開閉により電池セルBC1〜BV4の正極側を選択し、スイッチSB2に設けられた5つのスイッチの開閉により電池セルBC1〜BV4の負極側を選択する。入力回路116以外の回路構成は、第1の実施形態の図34の構成と同様である。
図36は第3の実施形態における動作図であり、この図を参照しながらマルチプレクサ120の診断動作について説明する。なお、図36は、図6に示す動作図のステージSTGCV3に対応する部分を示したものであり、ステージSTGCV3におけるスイッチS1〜S4の開閉動作を示す。[STGCV3 RES]期間の前半においてはマルチプレクサ120の開放動作の診断が行われ、[STGCV3 RES]期間の後半にはマルチプレクサ120の選択動作の診断が行われる。以下では、ステージSTGCV3のマルチプレクサ診断動作を例に説明するが、その他のステージのRES期間のマルチプレクサ診断動作も同様に行われる。
[STGCV3 RES]期間前半の開放動作診断では、マルチプレクサ120に設けられた一方のスイッチSB1の開放動作診断を行った後に、他方のスイッチSB2の開放動作診断を行う。スイッチSB1の開放動作診断では、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120のスイッチSB1,SB2に設けられた全てのスイッチを開状態とし、さらに、入力回路116に設けられたスイッチS2〜S4を開状態とし、スイッチS1を閉状態とする指令を入力回路116に送る。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD2に接続し、スイッチSD1を電圧源VHに接続するような指令が送られる。
スイッチS1が閉状態の場合、比較回路162の上側の入力端子(非反転入力端子)は定電流回路117および抵抗Rを介して高電位側電源に接続される。一方、比較回路162の下側の入力端子(反転入力端子)は電圧VHの電圧源VHに接続される。電圧VHは集積回路が接続されているリチウム電池セルグループすなわち4個あるいは6個のリチウム電池セル最大電圧かその電圧よりも若干低い電圧に設定されている。そのため、マルチプレクサ120のスイッチSB1が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の端子に入力される測定電圧は、正常判断条件「測定電圧>VH」を満足するはずである。判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧>VH」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧>VH」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へと出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
なお、この実施形態では、定電流回路117の接続されている電源ラインの電圧と電池セルBC1の正極端子は同電位であり、電池セルBC1の正極端子が選択されている場合にはスイッチS1やS3による診断は行えない。一方アース電位と電池セルBC4の負極電位は同じであり、電池セルBC4の負極端子が選択されている場合、スイッチS2やS4による診断は行えない。しかし、その他の端子を選択した場合の診断は可能であるので、高い信頼性を確保できる。
続いて、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120のスイッチSB1,SB2に設けられた全てのスイッチを開状態とし、さらに、入力回路116に設けられたスイッチS1,S3およびS4を開状態とし、スイッチS2を閉状態とする指令を入力回路116に送る。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD2に接続し、スイッチSD1を電圧源VLに接続するような指令が送られる。
スイッチS2が閉状態の場合、比較回路162の上側の入力端子の電位は集積回路のGNDと同電位となる。一方、比較回路162の下側の入力端子は電圧VLの電圧源VLに接続される。電圧VLは0.5ボルト程度(集積回路のアース電圧より少し高い電圧、リチウム電池セルの端子間電圧より十分に低い電圧)に設定されている。そのため、マルチプレクサ120のスイッチSB1が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の端子に入力される測定電圧は、正常判断条件「測定電圧<VL」を満足するはずである。判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧<VL」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧<VL」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へ出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。このようなスイッチSB1に関する開放動作診断により、マルチプレクサ120のスイッチSB1が、指令通りに開放状態となっているか否かを診断することができる。
次に、マルチプレクサ120のスイッチSB2の開放動作診断を行う。この場合、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120のスイッチSB1,SB2に設けられた全てのスイッチを開状態とし、さらに、入力回路116に設けられたスイッチS1,S2およびS4を開状態とし、スイッチS3を閉状態とする指令を入力回路116に送る。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD1に接続し、スイッチSD1を電圧源VHに接続するような指令が送られる。
スイッチS3が閉状態の場合、比較回路162の上側の入力端子の電位は定電流回路117および抵抗Rを介して高電位側電源に接続される。一方、比較回路162の下側の入力端子は電圧VHの電圧源VHに接続される。そのため、マルチプレクサ120のスイッチSB2が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の端子に入力される測定電圧は、正常判断条件「測定電圧>VH」を満足するはずである。判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧>VH」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧>VH」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へと出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
次いで、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120のスイッチSB1〜SB2に設けられた全てのスイッチを開状態とし、さらに、入力回路116に設けられたスイッチS1〜S3を開状態とし、スイッチS4を閉状態とする指令を入力回路116に送る。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD1に接続し、スイッチSD1を電圧源VLに接続するような指令が送られる。
スイッチS4が閉状態の場合、比較回路162の上側の入力端子の電位は集積回路のGNDと同電位となる。一方、比較回路162の下側の入力端子は電圧VLの電圧源VLに接続される。そのため、マルチプレクサ120のスイッチSB2が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の端子に入力される測定電圧は、正常判断条件「測定電圧<VL」を満足するはずである。判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧<VL」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧<VL」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へと出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。このようなスイッチSB2に関する開放動作診断により、マルチプレクサ120のスイッチSB2が、指令通りに開放状態となっているか否かを診断することができる。
次いで、図36の[STGCV3 RES]期間後半で行われるマルチプレクサ120の選択動作診断について説明する。選択動作診断においても、マルチプレクサ120に設けられた一方のスイッチSB1の選択動作診断を行った後に、他方のスイッチSB2の選択動作診断を行う。スイッチSB1の選択動作診断においては、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120に対しては電池セルBC3を選択する動作を指示し、入力回路116に対してはスイッチS2〜S4を開状態とし、スイッチS1を閉状態とするように指示する。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD2に接続し、スイッチSD1を電圧源VHに接続するように指示する。
この場合、比較回路162の上側の入力端子は、定電流回路117および抵抗Rを介して高電位側電源に接続されるとともに、スイッチSB1を介して電池セルBC3の正極側に接続される。一方、比較回路162の下側の入力端子は電圧VHの電圧源VHに接続される。スイッチSB1が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の入力端子の電位は高電位側電源の電位程度まで上昇するが、スイッチSB1が正しく電池セルBC3の正極側に接続されていれば、入力端子の電位はセル電圧に影響され「測定電圧<VH」となるはずである。よって、判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧<VH」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧<VH」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へと出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
続いて、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120に対しては電池セルBC3を選択する動作を指示し、入力回路116に対してはスイッチS1、S3、S4を開状態とし、スイッチS2を閉状態とするように指示する。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD2に接続し、スイッチSD1を電圧源VLに接続するように指示する。
この場合、比較回路162の上側の入力端子は、スイッチS2を介して集積回路のGNDに接続されるとともに、スイッチSB1を介して電池セルBC3の正極側に接続される。一方、比較回路162の下側の入力端子は電圧VLの電圧源VLに接続される。スイッチSB1が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の入力端子の電位は集積回路のGND電位となるが、スイッチSB1が正しく電池セルBC3の正極側に接続されていれば、入力端子の電位はセル電圧に影響され「測定電圧>VL」となるはずである。よって、判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧>VL」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧>VL」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へと出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
スイッチSB2の選択動作診断においては、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120に対しては電池セルBC3を選択する動作を指示し、入力回路116に対してはスイッチS1、S2、S4を開状態とし、スイッチS3を閉状態とするように指示する。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD1に接続し、スイッチSD1を電圧源VHに接続するように指示する。
この場合、比較回路162の上側の入力端子は、定電流回路117および抵抗Rを介して高電位側電源に接続されるとともに、スイッチSB2を介して電池セルBC3の負極側に接続される。一方、比較回路162の下側の入力端子は電圧VHの電圧源VHに接続される。スイッチSB1が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の入力端子の電位は高電位側電源の電位程度まで上昇するが、スイッチSB2が正しく電池セルBC3の負極側に接続されていれば、入力端子の電位はセル電圧に影響され「測定電圧<VH」となるはずである。よって、判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧<VH」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧<VH」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へと出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
続いて、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120に対しては電池セルBC3を選択する動作を指示し、入力回路116に対してはスイッチS1〜S3を開状態とし、スイッチS4を閉状態とするように指示する。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1を接点MD1に接続し、スイッチSD1を電圧源VLに接続するように指示する。
この場合、比較回路162の上側の入力端子は、スイッチS4を介して集積回路のGNDに接続されるとともに、スイッチSB2を介して電池セルBC3の負極側に接続される。一方、比較回路162の下側の入力端子は電圧VLの電圧源VLに接続される。スイッチSB2が開放状態となっていれば、比較回路162の上側の入力端子の電位は集積回路のGND電位となるが、スイッチSB2が正しく電池セルBC3の負極側に接続されていれば、入力端子の電位はセル電圧に影響され「測定電圧>VL」となるはずである。よって、判断回路164は、比較回路162の出力に基づいて条件「測定電圧>VL」が満足されているか否かを判断し、「測定電圧>VL」が満足されない場合には異常信号をOR回路166へと出力する。OR回路166以後の処理は上述した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
このようにマルチプレクサ120の選択動作診断を図36の選択動作診断期間に示すように順に行うことで、マルチプレクサ120による電池セルBC3の選択動作が正常に行われているか否かを判断することができる。図36に示す[STGCV3 RES]期間が終了すると、[STGCV3 計測]期間に電池セルBC3の端子電圧計測が行われる。
図38は、電池セルBC3の端子電圧計測動作を説明する図である。この端子電圧計測動作においては、STG1・STG2信号は、マルチプレクサ120に対しては電池セルBC3を選択する動作を指示し、入力回路116に対してはスイッチS1〜S4を開放状態とするように指示する。また、診断回路160に対しては、スイッチSC1、SD1を開放状態とするように指示する。マルチプレクサ120の電池セルBC3選択状態に関しては、[STGCV3 RES]期間の診断動作によって正常と判断されているので、マルチプレクサ120からは電池セルBC3の端子電圧が出力される。
(第4の実施形態)
上述した第2の実施形態では、マルチプレクサ120の診断をアナログ回路により行ったが、図39,40に示す第4の実施形態では、デジタル回路を用いてマルチプレクサ120の診断を行うようにした。図39は第4実施形態における動作図であり、電池セルの端子電圧の計測が行われるステージSTGCV1〜STGCV4の部分の動作を示す。以下では、代表してステージSTGCV1のマルチプレクサ診断について説明するが、ステージSTGCV2〜STGCV4のマルチプレクサ診断も同様に行われる。なお、各ステージにおけるマルチプレクサ118,120のスイッチ接続状態は、第2実施形態の場合と同様である。
図40はマルチプレクサ診断に関係する回路を示す図で、ステージSTGCV1のRES期間のマルチプレクサ診断動作を示す。マルチプレクサ120のスイッチSB1は接点MB1に接続され、スイッチSB2は接点MB2に接続されている。マルチプレクサ118のスイッチSA1を接点MA1に接続すると、ツェナー素子Z1により発生するツェナー電圧Vz1がマルチプレクサ120に入力される。マルチプレクサ120の動作が正常であれば、マルチプレクサ120はツェナー電圧Vz1を出力電圧Vmとして出力するはずである。マルチプレクサ120の出力電圧Vmは差動増幅器262を介してアナログデジタル変換器122Aに入力され、そこでデジタル値に変換される。
診断動作時において、アナログデジタル変換器122Aで変換されたデジタル値は、現在値記憶回路274Aに設けられた診断電圧レジスタに保持される。現在値記憶回路274Aは第2実施形態の現在値記憶回路274に診断電圧レジスタを追加したものである。また、基準値記憶回路278Aは、アナログ電圧VH1〜VH4、VL1〜VL4に相当するデジタル値を保持するレジスタBC1VH〜BC4VH4、BC1VL〜BC4VLを備えている点が、第2実施形態の基準値記憶回路278と異なる。なお、基準値記憶回路278AのレジスタBC1VH〜BC4VH4、BC1VL〜BC4VLの値は、通信端子RXおよび内部のデータバス294を介して書き換え可能である。
まず、マルチプレクサ120の出力電圧Vmが既知の電圧であるツェナー素子Z1の電圧Vz1と同一であるか否かを確認する。そのために、デジタル比較回路162によって、アナログデジタル変換器122Aで変換されたデジタル値をレジスタBC1VHに保持されている値BC1VHと比較し、次に、上記デジタル値をレジスタBC1VLに保持されている値BC1VLと比較する。値BC1VHは電圧Vz1より高い値に設定されており、値BC1VLは電圧Vz1よりも低い値に設定されている。そして、判断回路164は、デジタル比較回路162の出力値に基づいて、マルチプレクサ120の動作が正常か否かを判断する。
本実施形態の場合も、第2実施形態の場合と同様に、マルチプレクサ120を含めたマルチプレクサ118や差動増幅器262、アナログデジタル変換器122Aに異常が発生すると、判断回路164によって異常発生を検知することができる。異常発生の検知により、異常フラグが異常フラグ記憶回路168にセットされる。異常フラグ記憶回路168から出力される異常信号の処理に関する動作は第2実施形態と同様なので、説明を省略する。判断回路164により異常判断されると、現在値記憶回路274Aの診断電圧レジスタに保持されている保持値は、異常時データ記憶回路275AのレジスタANBC1に記憶される。異常時データ記憶回路275Aに記録された異常データ情報は、データバス294や送受信レジスタ302/322、出力端子TXを介して送信命令により外部に出力されるので、異常原因の解明が可能となる。
[STGCV1 RES]期間の診断動作確認後、[STGCV1 計測]期間でスイッチSA1の接続が接点MA2に切り替わり、マルチプレクサ120に電池セルBC1の端子電圧が入力され、アナログデジタル変換器122Aでデジタル値に変換され、現在値記憶回路274AのレジスタCELL1に保持される。上述したのと同様の動作が、図39に示すようにステージSTGCV2、ステージSTGCV3、ステージSTGCV4、と順に行われる。
なお、本実施形態のようにデジタル変換を行ってデジタル比較回路に基づき診断を行う場合、ノイズの影響を受けやすい。そのようなノイズの影響を取り除くために、アナログデジタル変換を複数回行って、それらの平均値を用いるようにしても良い。図40に示す平均化回路264は、アナログデジタル変換器122Aを複数回動作させた値の平均を演算する回路である。特に、アナログデジタル変換の変換動作が高速の場合には、複数回動作させた平均値を自動的に演算し、その演算結果をアナログデジタル変換出力として使用するのが好ましい。
(第5の実施形態)
図41に示す第5の実施形態は、第3の実施形態における診断動作(図36)をデジタル的に行うようにしたものである。なお、診断動作時におけるスイッチSB1,SB2およびスイッチS1〜S4の接続状態は第3の実施形態の場合と同様である。上述した第4実施形態と同様に、アナログデジタル変換器122Aで変換されたデジタル値は、現在値記憶回路274Aに設けられた診断電圧レジスタに保持される。基準値記憶回路278Aには、第3の実施形態における電圧VH,VLに相当するデジタル値を保持するレジスタVH,VLが設けられている。なお、マルチプレクサ120の出力端MP1を診断する期間には、スイッチS5は出力端MP1に接続され、スイッチS6は接地電位に接続される。一方、マルチプレクサ120の出力端MP2を診断する期間には、スイッチ5はVccに接続され、スイッチS6は出力端MP2に接続される。
まず、マルチプレクサ120の出力電圧Vmが既知の電圧であるツェナー素子Z1の電圧Vz1と同一であるか否かを確認する。そのために、デジタル比較回路162によって、アナログデジタル変換器122Aで変換されたデジタル値をレジスタVHに保持されている値VHと比較し、次に、前記デジタル値をレジスタVLに保持されている値VLと比較する。そして、判断回路164は、デジタル比較回路162の出力値に基づいて、マルチプレクサ120の動作が正常か否かを判断する。ここでも、マルチプレクサ120を含めたマルチプレクサ118や差動増幅器262、アナログデジタル変換器122Aに異常が発生すると、判断回路164によって異常発生を検知することができる。異常発生の検知により、異常フラグが異常フラグ記憶回路168にセットされる。
判断回路164により異常判断されると、現在値記憶回路274Aの診断電圧レジスタに保持されている保持値は、異常時データ記憶回路275Aに記憶される。電池セルBC1の診断動作においては、マルチプレクサ120の開放動作診断で異常が発生すると、上記保持値は異常時データ記憶回路275AのレジスタBC1OPに保持される。また、マルチプレクサ120の選択動作診断で異常が発生した場合には、上記保持値は異常時データ記憶回路275AのレジスタBC1STに保持される。電池セルBC2〜BC4についても同様の動作が行われ、上記保持値が保持される異常時データ記憶回路275Aのレジスタは、電池セルBC2の場合にはレジスタBC2OPまたはBC2STに保持され、電池セルBC3の場合にはレジスタBC3OPまたはBC3STに保持され、電池セルBC4の場合にはレジスタBC4OPまたはBC4STに保持される。
(第6の実施形態)
上述した第1〜第5の実施形態ではマルチプレクサ診断を説明したが、第6の実施形態では、図4の行260Y7に示すHVMUX信号選択の診断について、図42に基づいて説明する。セルコントローラ80に設けられた各集積回路3A〜3Nでは、図4に示したステージカウンタ256,258の出力に基づいてマルチプレクサ120や他の回路が動作する。すなわち、各集積回路3A〜3Nは、内蔵するステージカウンタ256,258の出力に基づいて各集積回路の動作全体が制御される。マルチプレクサ120は、集積回路全体の動作を実現するための回路のひとつとして動作する。
マルチプレクサ120は多数のスイッチング回路から構成されており、マルチプレクサ120のスイッチング回路は、デコーダ回路から構成される選択回路2592の信号に基づいてON/OFF(開閉)動作を行う。そして、スイッチング回路のON/OFF動作に基づいて、マルチプレクサ120の選択動作が行われる。そのため、マルチプレクサ120自体は正常に動作するにもかかわらず、選択回路2592が誤った開閉信号をマルチプレクサ120に送信すると、マルチプレクサ120が誤った選択動作をしてしまうことになる。
例えば、電池セルBC3の端子電圧計測が行われる[STGCV3 計測]期間において、選択回路2592の誤作動により、マルチプレクサ120が電池セルBC2の端子電圧を選択してしまうことも起こりえる。そのような場合、電池セルBC3の過充電診断における端子電圧は電池セルBC3の端子電圧ではないため、電池セルBCに対する過充電診断がまったく行われない可能性も考えられる。本実施形態では、図42に示すように第2の選択回路2594を設けて、以下のようなHVMUX信号選択の診断を行うことにより、マルチプレクサ120に正しい開閉信号が送信されているか否かを確認できるようにし、上述したような事態が避けられるようにした。
上述した第二の選択回路2594は選択回路2592と全く同一の回路構成を有しており、選択回路2592および選択回路2594の両方にステージカウンタ256,258からの信号が入力される。そのため、2つの選択回路2592,2594が正常に動作している場合には、全く同一の開閉信号が選択回路2592,2594から出力されることになる。選択回路2592の開閉信号はマルチプレクサ120と診断回路2596とに入力され、選択回路2594の開閉信号は診断回路2596に入力される。診断回路2596は選択回路2592,2594から入力された2つの開閉信号を比較し、一致する場合にのみ選択回路2592は正常であると診断する。一方、一致しない場合には、選択回路2592,2594の少なくとも一方が異常状態である可能性があり、診断回路2596は異常信号をOR回路166へ出力する。
なお、図42の実施の形態では選択回路2592および選択回路2594は同一の回路とし、両回路の出力が一致した場合に正常と診断するようにした。しかし選択回路2592の入力信号に対して出力信号が正しいかどうかを診断する場合、選択回路2592の回路構成と選択回路2594の回路構成とを必ずしも一致させる必要はない。例えば、正しく動作している場合に選択回路2592の出力と選択回路2594の出力とが一定の関係にあるように選択回路2594を構成し、診断回路2596で一定の関係が生じているかどうかを診断するようにしても良い。
〈診断および計測、(5)初期データの保持〉
図1に示す直流電源システムでは、車両が運転停止しており、運転者が運転を開始する前は、電池モジュール9からインバータ装置への電流供給が行われていない。各電池セルの充放電電流が流れていない状態で計測された各電池セルの端子電圧を使用すると、各電池セルの充電状態(SOC)が正確に求められるので、車両のキースイッチの操作やバッテリコントローラ20からのWake Upなどの通信コマンド292に基づき、各集積回路は独自に計測動作を開始する。図5で説明の計測動作が各集積回路において計測と電池セルの診断動作が開始され、平均化制御回路263に保持された回数の測定が行われると、平均化回路264で測定値の平均化を求める演算が行われる。その演算結果は先ず現在値記憶回路274に保持される。各集積回路はそれぞれ独立してその集積回路が関係しているグループの電池セル全てに対して測定計測および計測結果の平均値の演算を行い、演算結果を、それぞれの集積回路の現在値記憶回路274のレジスタCELL1〜レジスタCELL6に保持する。
各電池セルの充電状態(SOC)を正確に把握するために、各電池セルの充放電電流が流れていない状態で各電池セルの端子電圧を計測することが望ましい。上述のごとく各集積回路は独自に計測動作を開始することにより、バッテリ部9からインバータ装置への電流供給前に、各集積回路はそれぞれ関係する電池セル全ての端子電圧を計測し、現在値記憶回路274のレジスタCELL1〜レジスタCELL6に保持する。現在値記憶回路274に保持された計測値はその後の新たな計測結果により書き換えられてしまうので、電流供給開始前の測定結果は現在値記憶回路274のレジスタCELL1〜レジスタCELL6から初期値記憶回路275のレジスタBCELL1〜レジスタBCELL6に移され、初期値記憶回路275に保持される。このようにバッテリ部9からインバータ装置への電流供給を開始する前の計測値を初期値記憶回路275に保持するので、充電状態(SOC)の演算などの処理を後回しにして、優先度の高い診断のための処理を優先的に実行できる。優先度の高い処理を実行して、バッテリ部9からインバータ装置への電流供給を開始した後、初期値記憶回路275に保持された計測値に基づいて各電池セルの充電状態(SOC)を演算し、正確な状態検知に基づいて充電状態(SOC)を調整するための制御を行うことが可能となる。車両の運転者はできるだけ早く運転を開始したいとの希望を持つ場合があり、上述のとおりインバータ装置への電流供給を早く可能にすることが望ましい。
図5に記載の実施形態では、上述のごとく電気負荷であるインバータ装置に電流供給を始める前の計測値が現在値記憶回路274に保持されたタイミングで、デジタル比較回路270により過充電や過放電の診断、更には漏洩電流などの診断を実施できる。このためインバータ装置への直流電力の供給前に異常状態を把握することができる。もし、異常状態が発生していれば電流供給前に前記診断で異常を検知でき、インバータ装置への直流電力の供給を行わないなどの対応策が可能となる。さらに電流供給前の測定値は現在値記憶回路274の保持値を初期値記憶回路275に移して専用の初期値記憶回路275に保持し続けることができるので、安全性の向上や正確な充電状態(SOC)の把握において優れた効果がある。
〈通信コマンド〉
図7は、図2に示した集積回路3Aの内部に設けられた通信コマンドの送受信を行う通信回路127の回路およびその動作を説明する回路図であり、各集積回路を代表して集積回路3Aの回路構成でその動作を説明する、上述のとおり他の集積回路も構成や動作が同じである。通信回路127が有する受信端子RXに、前記バッテリコントローラ20から送られてくる通信コマンドは、8bitを1単位として全部で5つの部分を有し、5バイトを1つの基本構成としている。ただし以下に説明のとおり、5バイトより長くなる場合があり、特に5バイトに限定されるものではない。前記通信コマンドは端子RXから受信レジスタ322に入力され、保持される。なお、この受信レジスタ322はシフトレジスタであり、端子RXからシリアルに入力される信号が受信レジスタ322に入力された順にシフトされて通信コマンドの先頭部分がレジスタの先頭部であるブレークフィールド部324に保持され、以下順次保持される。
上述のように、受信レジスタ322に保持される通信コマンド292は、その先頭の8bitは信号が来たことを示す信号からなるブレークフィールド324、2番目の8bitは同期をとるための働きをする信号からなるシンクロナスフィールド326、3番目の8bitは各集積回路3A、……、3M、……、3Nのうちいずれの集積回路なのか、さらに命令の対象となる回路はどこかを示す対象アドレス、及指令の内容を示すアイデンティファイア328である。4番目の8bitは、通信内容(制御内容)を示すデータ330で前記命令を実行するために必要なデータを保持している。この部分は1バイトとは限らない。5番目の8bitは送受信動作の誤りの有無をチェックするためのチェックサム332であり、ノイズなどで正確に伝達できなかった場合の有無を検知できる。このように、バッテリコントローラ20からの通信コマンドは、ブレークフィールド324、シンクロナスフィールド326、アイデンティファイア(Identifier)328、データ330、およびチェックサム312の5つの部分から構成され、それぞれが1バイトで構成たれた場合は、通信コマンドは5バイトとなり、5バイト構成を基本としているが前記データ330は1バイトに限らない、必要に応じてさらに増加する場合がある。
シンクロナスフィールド326は送信側の送信クロックと受信側の受信クロックとの同期を合わせるために使用され、シンクロナスフィールド326の各パルスが送られてくるタイミングを同期回路342が検知し、同期回路342の同期をシンクロナスフィールド326の各パルスのタイミングに合わせ、この合わせられたタイミングで前記受信レジスタ322はそれに続く信号を受信する。このようにすることで、送られてくる信号と信号の真理値を判断する閾値との比較タイミングを正確に選択でき、送受信動作の誤りを少なくできる効果がある。
図1に示すように通信コマンド292は、バッテリコントローラ20から集積回路3Aの端子RXに送られ、集積回路3Aの端子TXから次の集積回路の端子RXに送られ、・・・さらに次の集積回路3Mの端子RXに送られ、集積回路3Mの端子TXから次の集積回路の端子RXに送られ、・・・更に次の集積回路3Nの端子RXに送られ、集積回路3Nの端子TXからバッテリコントローラ20の端子RXに送られる。このように通信コマンド292は各集積回路の送受信端子を直列にループ状に接続した伝送路52を使用して通信する。
各集積回路を代表して集積回路3Aの回路で説明するが、上述のとおり他の集積回路も構成や動作が同じである。集積回路3Aの端子RXに通信コマンド292が送信され、各集積回路は受信した通信コマンド292を次の集積回路に対して端子TXから送信する。上記動作において、受信した通信コマンド292の指示対象が自分自身かを図7のコマンド処理回路344で判断し、自分自身の集積回路が対象の場合に通信コマンドに基づく処理を行う。上述の処理が各集積回路で通信コマンド292の送受信に基づき順次行われる。
従って、受信レジスタ322に保持された通信コマンド292が集積回路3Aと関係しない場合であっても、受信した通信コマンド292に基づき次の集積回路への送信を行うことが必要となる。受信した通信コマンド292のアイデンティファイア部328の内容をコマンド処理回路344が取り込み、集積回路3A自身が通信コマンド292の指令対象かどうかを判断する。集積回路3A自身が通信コマンド292の指令対象でない場合は、アイデンティファイア部328およびデータ330の内容をそのまま送信レジスタ302のアイデンティファイア部308やデータ310の部分に移し、また送受信誤動作チェックのためのチェックサム312を入力して送信レジスタ302内の送信信号を完成し、端子TXから送信する。送信レジスタ302も受信レジスタ322と同様にシフトレジスタで作られている。
受信した通信コマンド292の対象が自分である場合、通信コマンド292に基づく指令を実行する。以下実行について説明する。
受信した通信コマンド292の対象が自分を含む集積回路全体に関する場合がある。例えばRESコマンドやWakeUPコマンド、Sleepコマンドがこのようなコマンドである。RESコマンドを受信するとコマンド処理回路344でコマンド内容を解読しRES信号を出力する。RES信号が発生すると、図5の現在値記憶回路274や初期値記憶回路275、フラグ記憶回路284の保持データが全て初期値である「ゼロ」になる。図5の基準値記憶回路278の内容は「ゼロ」にならないが、「ゼロ」になるようにしても良い。もし基準値記憶回路278の内容を「ゼロ」に変更すると、RES信号の発生後に図4に示す測定と診断が各集積回路で独自に実行されるので、診断の基準値となる基準値記憶回路278の値を速やかにセットすることが必要となる。この煩雑さを避けるために、基準値記憶回路278の内容はRES信号で変更されないように回路が構成されている。基準値記憶回路278の値は頻繁に変更される属性のデータではないので、以前の値を使用しても良い。もし変更の必要があれば他の通信コマンド292で個々に変更できる。RES信号で平均化制御回路263の保持値は所定値、例えば16となる。すなわち通信コマンド292で変更されなければ、16回の測定値の平均を演算するように設定される。
WakeUPコマンドがコマンド処理回路344から出力されると図4の起動回路254が動作を開始し、計測と診断動作が開始される。これにより、集積回路自身の消費電力は増加する。一方、Sleep信号がコマンド処理回路344から出力されると図4の起動回路254の動作が停止し、計測と診断動作が停止する。これにより、集積回路自信の消費電力は著しく減少する。
次に通信コマンド292によるデータの書き込みおよび変更を、図5を参照して説明する。通信コマンド292のアイデンティファイア328(図9)は選択すべき集積回路を示している。データ300が、アドレスレジスタ348や基準値記憶回路278へのデータ書き込み命令、あるいは平均化制御回路263や選択回路286へのデータ書き込み命令の場合は、コマンド処理回路344は命令内容に基づき書き込み対象を指定し、データ330を書き込み対象のレジスタに書き込む。
アドレスレジスタ348は集積回路自身のアドレスを保持するレジスタであり、この内容により自分のアドレスが決まる。RES信号でアドレスレジスタ348の内容はゼロとなり、集積回路自身のアドレスは「ゼロ」アドレスとなる。新たに命令によりアドレスレジスタ348の内容が変更されると、集積回路自身のアドレスは変更された内容に変わる。
通信コマンド292によりアドレスレジスタ348の記憶内容の変更の他に、上述のとおり図5に記載の基準値記憶回路278やフラグ記憶回路284,平均化制御回路263、選択回路286の保持内容を変更できる。これらに関し変更対象が指定されると、変更値であるデータ330の内容がデータバス294を介して変更対象の回路に送られ、保持内容が変更される。図5の回路はこの変更された内容に基づき動作を実行する。
通信コマンド292には集積回路内部に保持されているデータの送信命令が含まれている。アイデンティファイア328の命令で送信対象データの指定が行われる。例えば現在値記憶回路274や基準値記憶回路278の内部レジスタが指定されると、指定されたレジスタの保持内容がデータバス294を介して送信レジスタ302のデータ310の回路に保持され、要求されたデータ内容として送信される。このようにして、図1のバッテリコントローラ20は通信コマンド292により必要な集積回路の測定値や状態を表すフラグを取り込むことが可能となる。
〈集積回路のアドレス設定方法〉
上述した各集積回路3A、……、3M、……3Nのアドレスレジスタ348は信頼性の高い揮発性メモリで構成しており、揮発性メモリの内容が消えたり、保持内容の信頼性が維持できないと思われる場合に、新たなアドレスの設定を行うことができるように集積回路は構成されている。例えばセルコントローラ80が実行を開始する際に、例えばバッテリコントローラ20から各集積回路のアドレスレジスタ348を初期化するコマンドを送信する。このコマンドで各集積回路のアドレスレジスタ348を初期化、例えばアドレス「ゼロ」とし、その後それぞれの集積回路に新たにアドレスを設定する。各集積回路3A、……、3M、……3Nにおけるアドレスの新たな設定は、バッテリコントローラ20からのアドレス設定コマンドが各集積回路3A、……、3M、……3Nに送信されることによって行われる。
このように、コマンドにより各集積回路3A、……、3M、……3Nのアドレスを設定できる回路構成となっているため、各集積回路はアドレス設定のための端子およびこれら端子に接続される外部配線を不要とすることができる効果を奏する。またアドレス設定を通信コマンドの処理で行えるので、制御の自由度が増大する。
図8は、バッテリコントローラ20からの通信コマンド292により各集積回路3A、……、3M、……3Nのアドレスレジスタ348の設定手順の一例を説明する説明図、図9は、図8の通信コマンド292の送信に基づく図7の回路の動作を説明する説明図である。前記各集積回路3A、……、3M、……3Nは、通信コマンド292の送受信の順に、集積回路IC1、IC2、IC3、……、ICn−1、ICnとして示している。前記IC1、IC2、IC3、……、ICn−1、ICnに対して個々のアドレスが1、2、3、……n−1、nとなるように以下の方法で設定する。ICの符号とそのアドレス番号とを一致させたのは、以下の説明での理解をより容易にするためであり、一致させる必要はない。
図8は、バッテリコントローラ20及び各集積回路ICの通信コマンド292におけるメッセージの流れと、各集積回路ICの内部のアドレスレジスタ348に保持されるデータおよび送信レジスタ302のデータ310の内容を示している。最初に、例えばセルコントローラ80からの全ての集積回路のアドレスレジスタ348を初期状態とする通信コマンド292を送信し、各集積回路のアドレスレジスタ348を初期値である「ゼロ」とする。図8ではこの手順は省略されている。このような操作により、各集積回路IC1、IC2、IC3、……、ICn−1のアドレスレジスタ348には初期値例えば"ゼロ"が保持されている。図9で前記全集積回路のアドレスレジスタ348を初期状態とする通信コマンド292を集積回路IC1が受信すると、集積回路IC1の受信レジスタ322に通信コマンド292が保持され、アイデンティファイア328の内容をコマンド処理回路344のコマンド解読回路345が取り込み、アドレスレジスタ348を初期状態とするメッセージに基づきアドレスレジスタ348を初期化する。アイデンティファイア328の内容はそのまま送信レジスタ302のアイデンティファイア308にセットされ、次の集積回路IC2に送られる。アドレスレジスタ348を初期状態とする通信コマンド292を受信した集積回路ICは順にこのような動作を行い、全ての集積回路ICのアドレスレジスタ348が初期化される。最後にこのコマンドは集積回路ICNからバッテリコントローラ20に戻され、全ての集積回路ICのアドレスレジスタ348が初期化されたことをバッテリコントローラ20は確認できる。
上記確認に基づき、次に各集積回路ICのアドレス設定が行われる。具体的には、先ず、バッテリコントローラ20は「命令実行対象アドレスを"ゼロ"とし、さらにデータ330の値を"ゼロ"とし、データ330の値に"1"を加算してアドレスレジスタ348および送信用データ310にセットせよ」とのメッセージを意味する通信コマンド292を送信する。伝送路52の最初に位置する集積回路IC1の受信レジスタ322に上記通信コマンド292が入力される。この通信コマンド292のアイデンティファイア328の部分がコマンド解読回路345に取り込まれる。集積回路IC1のアドレスレジスタ348は受信時点では"ゼロ"であるので、(1)データ330の内容"ゼロ"に"1"を加算した値をアドレスレジスタ348にセットし、(2)さらに上記加算結果を送信レジスタ302のデータ310にセットする動作が実行される。
図9でコマンド解読回路345の解読に基づき、演算回路346は330の値"ゼロ"を取り込み、この値に"1"を加算する動作を行う。演算結果"1"はアドレスレジスタ348にセットされると共に、データ310にセットされる。この動作を図8で説明する。バッテリコントローラ20からの通信コマンド292を集積回路IC1が受信することで、集積回路IC1のアドレスレジスタ348は"1"となり、データ310は同様に"1"となる。集積回路IC1で通信コマンド292のデータ310が"1"に変えられ、集積回路IC2に送られる。集積回路IC1から送信された通信コマンド292のアイデンティファイア308はバッテリコントローラ20の送信時と同じであり、データ310の内容が変えられている。
集積回路IC2のアドレスレジスタ348には"ゼロ"が保持されているので、集積回路IC2も同様に図9に示すごとく、演算回路346は330の値"1"に"1"を加算し、アドレスレジスタ348とデータ310にセットする。集積回路IC2のアドレスレジスタ348は"0"から"2"に変更される。図8のごとく、集積回路IC2のアドレスレジスタ348は"0"から"2"に変更され更に送信レジスタ302のデータ310を"2"に変更して、次の集積回路IC3に送信される。このようにして集積回路IC3のアドレスレジスタ348は"0"から"3"に変更され、送信レジスタ302のデータ310は"3"に変更される。
以下、順次このような動作が繰り返され、集積回路ICn−1のアドレスレジスタ348は"0"から"n−1"に変更され、更に送信レジスタ302のデータ310を"n−1"に変更して、次の集積回路ICnに送信される。集積回路ICnのアドレスレジスタ348は"0"から"n"に変更され、送信レジスタ302のデータ310を"n"に変更される。集積回路ICnからバッテリコントローラ20に通信コマンド292が戻される。この戻された通信コマンド292のデータ330が"n"に変更されていることで、バッテリコントローラ20はアドレス設定動作が正しく行われたことを確認することができる。
このようにして、各集積回路IC1、IC2、IC3、IC4、……、ICn−1、ICnのアドレスレジスタ348には、順次、1、2、3、4、……、n−1、nが設定される。
本実施形態では、全集積回路のアドレスレジスタ348を初期値(ゼロ)にリセットする機能を各集積回路が備えているので、上記アドレス設定動作を確実に行うことができる。
〈アドレス設定の他の実施形態〉
図10を用いて、図9に記載の集積回路IC1、IC2、IC3、IC4、……、ICn−1、ICnに、バッテリコントローラ20から通信コマンド292を送信して、順次アドレスを設定する他の実施の形態を説明する。
先ず前提として、図8や図9の動作と同様に、バッテリコントローラ20から「全集積回路のアドレスレジスタ348の内容を初期値に、例えば"ゼロ"にする」メッセージを内容とする通信コマンド292を送信し、全集積回路のアドレスレジスタ348の内容を"ゼロ"にする。次に図10のステップ1で、前記バッテリコントローラ20から「アドレス"ゼロ〔初期値〕"の集積回路を対象とし、アドレスレジスタ348の内容を"1"に変え、送信される通信コマンド292の対象集積回路のアドレス"1"とする」メッセージを内容とする通信コマンド292を送信する。ここで「送信される通信コマンド292の対象集積回路のアドレス"1"とする」点についてはアドレス"1"以外の値であっても何ら問題ない、すなわち"ゼロ〔初期値〕"以外の値であれば実行可能である。
図1に示すごとく最初に通信コマンド292を最初に受信する集積回路は伝送路52の最初に位置する集積回路IC1(3A)である。集積回路IC1の通信回路127は図7に示すとおりで、受信レジスタ322に通信コマンド292が保持される。集積回路IC1のアドレスレジスタ348は既に"ゼロ〔初期値〕"の状態であり、アイデンティファイア328に基づきコマンド処理回路344は通信コマンド292のメッセージの実行対象と判断する。通信コマンド292のメッセージに従いアドレスレジスタ348の内容を"1"に変更する。更に送信レジスタ302のアイデンティファイア308の内容を変更し、通信コマンド292の実行対象のアドレスを"1"に変更する。変更された通信コマンド292を送信する。
通信コマンド292を次に受信する集積回路IC2はアドレスレジスタ348の内容が"ゼロ〔初期値〕"であり、集積回路IC2のコマンド処理回路344は実行対象ではないと判断し、受信した通信コマンド292をそのまま送信レジスタ302にセットし、通信コマンド292をそのまま次へ送信する。集積回路IC3以降は全ての集積回路ICにおいて同様にアドレスレジスタ348の内容が"ゼロ〔初期値〕"で実行対象外と判断され、実行されないで、通信コマンド292がバッテリコントローラ20に戻される。
前記通信コマンド292の戻りを確認し、次に図10ステップ2で示すごとく、前記バッテリコントローラ20から「アドレス"ゼロ〔初期値〕"の集積回路を対象とし、アドレスレジスタ348の内容を"2"に変え、送信される通信コマンド292の対象集積回路のアドレス"2"とする」メッセージを内容とする通信コマンド292を送信する。ここで「送信される通信コマンド292の対象集積回路のアドレス"2"とする」点についてはアドレス"2"以外の値であっても何ら問題ない、すなわちアドレス設定がダブらないように行われれば問題ない。最初に受信する集積回路IC1のアドレスレジスタ348は"1"であり、コマンド処理回路344は実行対象外と判断し、通信コマンド292はそのまま次の集積回路IC2に送信される。
次に受信する集積回路IC2はアドレスレジスタ348が"ゼロ"であり、コマンド処理回路344は通信コマンド292を実行し、アドレスレジスタ348に"2"をセットし、さらに通信コマンド292の実行対象を"2"に変更して次へ送信する。集積回路IC3以降は全てアドレスレジスタ348が"ゼロ"であり、実行対象外であるので、実行されないまま通信コマンド292はバッテリコントローラ20に戻される。
以下同様にバッテリコントローラ20が通信コマンド292を送信するごとに集積回路IC3のアドレスレジスタ348の内容が"ゼロ"から"3"に変更され、さらに集積回路IC4のアドレスレジスタ348の内容が"ゼロ"から"4"に変更される。そして集積回路ICnのアドレスレジスタ348の内容が"ゼロ"から"n"に変更される。
〈充電状態SOCの調整〉
図11は、バッテリ部9の電池セルの充電状態SOCを計測し、充電量の多い電池セルを選択し、これらの選択された電池セルについてそれぞれ放電時間を演算し、放電を実行する処理フローを示している。図中、左側は各集積回路の動作を示し、右側はメインコントローラ20側の動作を示す。
図11で、まずステップ400にて、バッテリコントローラ20から集積回路3Aを指令の対象として電池セルの初期状態の電圧の読み込みを要求する通信コマンド292を送信する。集積回路3Aが通信コマンド292を受信すると、図7に示すコマンド処理回路344は初期値記憶回路275の保持内容を送信レジスタ302のデータ310にセットし、次の集積回路に送信する(ステップ410)。
バッテリコントローラ20は、集積回路3Aの次の集積回路を指定して電池セルの初期状態の電圧の読み込みを行い、更に順に集積回路3Mおよび集積回路3Nの取り込みを行い、バッテリ部9の全電池セルの初期状態における電圧値をそれぞれの集積回路の初期値記憶回路275から取込む。
ステップ420にて、バッテリコントローラ20は、バッテリ部9全体の各電池セルの測定電圧を取り込み、例えば上記取り込んだ情報からそれぞれの電池セルの充電状態SOCを演算する。演算値の平均値を求め、平均値より大きい電池セルに対してステップ430にて、バランシングスイッチ129A〜129Dの導通時間を演算する。バランシングスイッチ129A〜129Dの導通時間の求め方は、上記方法に限るものではなく、色々な方法がある。何れの方法であっても、充電状態SOCの大きい電池セルに関係付けられたバランシングスイッチ129A〜129Dの導通時間が定められる。
ステップ440にて、バッテリコントローラ20は、求められたバランシングスイッチの導通時間を該当する集積回路に、通信コマンド292にて送信する。
ステップ450にて、前記通電時間を受信した集積回路は、その指令に基づきバランシングスイッチ導通する。
ステップ460にてバランシングスイッチの導通時間をそれぞれ計測し、ステップ470にて、各バランシングスイッチ導通時間と導通時間経過とを比較し、導通時間の計測値が計算された導通時間に達したかを判断し、導通時間の計測値が計算された導通時間に達したバランシングスイッチについては次のステップ480に移行してステップ480を実行する。
ステップ480にて、バッテリコントローラ20は、該当する集積回路に対して導通時間が計算された通電時間に達したバランシングスイッチの開放を指令する通信コマンド292を送信する。この通信コマンド292を受け、ステップ490にて、該当する集積回路は、通信コマンド292にて指令されたバランシングスイッチのスイッチ駆動回路133からの駆動信号を停止し、バランシングスイッチを開状態とする。これにより該当する電池セルの放電が停止される。
〈各集積回路等が異常となっているか否かのテスト〉
図12は、各集積回路3A、…、3M、…、3Nまたは各電池セルが異常となっているか否かをテストするための処理フローを示している。図中、左側は各集積回路3A、…、3M、…、3Nの動作を示し、右側はメインコントローラ20の動作を示している。
ステップ500で、バッテリコントローラ20から集積回路3Aに状態(異常)検出のための通信コマンドを送信する。次に、ステップ510で、前記集積回路3Aから、前記状態(異常)検出の通信コマンドを、…、集積回路3M、…、集積回路3N、の順に送信し、バッテリコントローラ20に戻す。
ステップ520にて、各集積回路から送られてきたそれぞれの状態(異常)をバッテリコントローラ20は受信し、送られてきた状態(異常)の確認を行う。次にステップ530で、バッテリコントローラ20は、集積回路3A、…、3M、…、3Nのうちのどの集積回路に異常があるか、あるいは各グループの電池セルBC1〜BC4のうちどの電池セルに異常があるかを判定する。そして、全ての集積回路または対応する電池セルに異常が無かったと判定した場合、このフローは終了する。一方、集積回路3A、…、3M、…、3Nのうちいずれかの集積回路に異常が有ったと判定した場合、ステップ540に移行する。
ステップ540では、バッテリコントローラ20は、異常の有った集積回路のアドレスを指定して異常内容を特定する状態(異常内容)検出の通信コマンドを送信する。
ステップ550にて、アドレスの指定を受けた集積回路は、異常状態(異常内容)の原因となった計測値あるいは診断結果を送信する。ステップ560にて、バッテリコントローラ20は異常のあった集積回路と異常原因の確認を行う。図12の処理は、異常原因の確認で終了する。この後、異常原因に従い、リチウム電池からの直流電力の供給あるいは発電された電力による充電を行うかどうかを判断し、異常が有る場合には、直流電源システムとインバータ装置などの電気負荷との間のリレーを開状態にし、電力供給を停止する。
〈車両用電源システム〉
図13は、図1に基づき上述した直流電源システムを車両用回転電機の駆動システムに適用した回路図である。電池モジュール900は、バッテリ部9とセルコントローラ80とバッテリコントローラ20を有している。なお、図13では、バッテリ部9を構成する電池セルは、高電位側ブロック10と低電位側ブロック11の2つのブロックに分けられている。高電位側ブロック10と低電位側ブロック11とは、スイッチとヒューズとが直列接続された保守・点検用のSD(サービスディスコネクト)スイッチ6を介して直列接続されている。
高電位側ブロック10の正極は正極強電ケーブル81とリレーRLPを介してインバータ装置220の正極に接続されている。低電位側ブロック11の負極は負極強電ケーブル82とリレーRLNを介してインバータ装置220の負極に接続されている。高電位側ブロック10と低電位側ブロック11はSDスイッチ6を介して直列接続され、例えば公称電圧340V、容量5.5Ahの強電バッテリ(2つのバッテリ部9が直列接続された電源システムのバッテリ)を構成している。なお、SDスイッチ6のヒューズには、例えば、定格電流が125A程度のものを用いることができる。このような構成により高い安全性を維持できる。
前述のとおり、低電位側ブロック11の負極とインバータ装置220との間にリレーRLNが設けられ、高電位側ブロック10の正極とインバータ装置220との間にリレーRLPが設けられている。リレーRLPと並列に、抵抗RPREとプリチャージリレーRLPREとの並列回路が接続されている。正極側メインリレーRLPとインバータ装置220との間にはホール素子等の電流センサSiが挿入され、電流センサSiはジャンクションボックス内に内蔵されている。なお、電流センサSiの出力線はバッテリコントローラ20に導かれ、リチウム電池直流電源から供給される電流量をインバータ装置220が常時モニタできる構成となっている。
リレーRLPやリレーRLNは、例えば、定格電流が80A程度のものが使用され、プリチャージリレーRLPREには、例えば、定格電流が10A程度のものを用いることができる。また、抵抗RPREには、例えば、定格容量が60W、抵抗値が50Ω程度のもの、電流センサSiには、例えば、定格電流が±200A程度のものを用いることができる。
上述した負極強電ケーブル82および正極強電ケーブル81は、リレーRLPやリレーRLNおよび出力端子810,820を介して、ハイブリッド車のモータ230を駆動するインバータ装置220に接続される。このような構成とすることで高い安全性が維持できる。
インバータ装置220は、340Vの強電バッテリの電源から供給される直流電力を、モータ230を駆動するための3相交流電力に変換するインバータを構成しているパワーモジュール226と、MCU222と、パワーモジュール226を駆動するためのドライバ回路224と、約700μF〜約2000μF程度の大容量の平滑キャパシタ228とを有している。平滑キャパシタ228は電解キャパシタよりフィルムキャパシタの方が望ましい特性を得ることができる。車両に搭載される平滑キャパシタ228は車両の置かれている環境の影響を受け、摂氏マイナス数十度の低温から摂氏100度程度の広い温度範囲で使用される。温度が零度以下に低下すると電解キャパシタは急激に特性が低下し電圧ノイズを除去する能力が低下する。このため図1や図2に示す集積回路に大きなノイズが加わる恐れがある。フィルムキャパシタは温度低下に対する特性低下が少なく、集積回路に加わる電圧ノイズを低減できる。
MCU222は、上位コントローラ110の命令に従い、モータ230の駆動時に、負極側のリレーRLNを開状態から閉状態とした後に、プリチャージリレーRLPREを開状態から閉状態とし、平滑キャパシタ228を充電し、その後に正極側のリレーRLPを開状態から閉状態として、電源システム1の強電バッテリからインバータ装置220への電力の供給を開始する。なお、インバータ装置220は、モータ230の回転子に対するパワーモジュール226により発生する交流電力の位相を制御して、ハイブリッド車の制動時にはモータ230をジェネレータとして動作させ、すなわち回生制動制御を行い、ジェネレータ運転により発電された電力を強電バッテリに回生し強電バッテリを充電する。バッテリ部9の充電状態が基準状態より低下した場合、インバータ装置220は上記モータ230を発電機として運転し、上記モータ230で発電された3相交流はパワーモジュール226により直流電力に変換されて強電バッテリであるバッテリ部9に供給され、充電される。
上述のとおりインバータ装置220はパワーモジュール226を有しており、インバータ装置220は直流電力と交流電力との間の電力変換を行う。上位コントローラ110の命令に従い、モータ230をモータとして運転する場合は、モータ230の回転子の回転に対して進み方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合は、バッテリ部9から直流電力がパワーモジュール226に供給される。一方、モータ230の回転子の回転に対して遅れ方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合はモータ230から電力がパワーモジュール226に供給され、パワーモジュール226の直流電力がバッテリ部9へ供給される。結果的にモータ230は発電機として作用することとなる。
インバータ装置220のパワーモジュール226は導通および遮断動作を高速で行い直流電力と交流電力間の電力変換を行う。このとき例えば大電流を高速で遮断するので、直流回路の有するインダクタンスにより大きな電圧変動が発生する。この電圧変動を抑制するため大容量の平滑キャパシタ228が直流回路に設けられている。車載用のインバータ装置220ではパワーモジュール226の発熱が大きな問題であり、この発熱を抑えるにはパワーモジュール226の導通および遮断の動作速度を上げる必要がある。この動作速度を上げると上記インダクタンスによる電圧の跳ね上がりが増大し、より大きなノイズが発生する。このため平滑キャパシタ228の容量はより大きくなる傾向にある。
上記インバータ装置220の動作開始状態は平滑キャパシタ228の電荷は略ゼロであり、リレーRLPを閉じると大きな初期電流が流れ込む。強電バッテリから平滑キャパシタ228への初期流れ込み電流が大きくなるので、負極側メインリレーRLNおよび正極側メインリレーRLPが融着して破損するおそれがある。この問題を解決するため、MCU222は、負極側のリレーRLNを開状態から閉状態とした後に、正極側のリレーRLPを開状態に維持したまま、プリチャージリレーRLPREを開状態から閉状態として抵抗RPREを介して最大電流を制限しながら上述した平滑キャパシタ228を充電する。この平滑キャパシタ228が所定の電圧まで充電された後は、初期状態は解除され、プリチャージリレーRLPREおよび抵抗RPREは使用されず、上述したように、負極側のリレーRLNと正極側のリレーRLPを閉状態として電源システム1からパワーモジュール226へ直流電力を供給する。このような制御を行うことでリレー回路を保護すると共に、リチウム電池セルやインバータ装置220を流れる最大電流を所定値以下に低減でき、高い安全性を維持できる。
インバータ装置220の直流側回路のインダクタンスを低減することがノイズ電圧の抑制に繋がるので、平滑キャパシタ228はパワーモジュール226の直流側端子に接近して配置される。また、平滑キャパシタ228自身もインダクタンスを低減できるように構成されている。このような構成で平滑キャパシタ228の初期充電電流が供給されると、瞬間的に大きな電流が流れ込み、高熱を発生して損傷するおそれがある。しかし、上記プリチャージリレーRLPREと抵抗RPREとにより上記損傷を低減できる。インバータ装置220の制御はMCU222により行われるが、上述のとおり、平滑キャパシタ228を初期充電する制御もMCU222により行われる。
電源システム1の強電バッテリの負極と負極側のリレーRLNとの接続線、および強電バッテリの正極と正極側のリレーRLPとの接続線には、ケースグランド(車両のシャーシと同電位)との間にそれぞれキャパシタCN、CPが挿入されている。これらのキャパシタCN、CPは、インバータ装置220が発生させるノイズを除去して、弱電系回路の誤作動や、セルコントローラ80を構成するICのサージ電圧による破壊を防止するものである。インバータ装置220はノイズ除去フィルタを有しているが、これらのキャパシタCN、CPは、バッテリコントローラ20やセルコントローラ80の誤作動を防止する効果をさらに高め、電源システム1の耐ノイズの信頼性をさらに高めるために挿入されている。なお、図13において、電源システム1の強電系回路は太線で示している。これらの線には断面積の大きい平角の銅線が使用される。
なお、図13において、ブロアファン17は、バッテリ部9を冷却するためのファンで、バッテリコントローラ20からの指令によってONするリレー16を介して動作するようになっている。
〈車両用電源システムにおける動作フロー〉
図14は、図13に示した車両用電源システムにおける動作フローを示した図である。以下、ステップ順に説明する。
ステップ801にて、車両のキースイッチがONして、エンジン始動のための操作が行われると、あるいは車両の駐車状態から走行のための操作がなされた状態になると、あるいは各集積回路がSleep状態からWake up状態になると、ステップ802にて、バッテリコントローラ20が起動されると、バッテリコントローラ20の初期化がなされる。
ステップ803にて、CAN通信が行われるようになる。これにより各コントローラにいわゆる空メッセージが出され、各制御装置間の通信の状態確認が行われる。ステップ804にて、バッテリコントローラ20からセルコントローラ80に起動と初期化のための通信コマンド292が送信される。
各集積回路3A、…、3M、…、3Nは、通信コマンド292を受信することによりいわゆるウエイクアップ(Wake Up)状態となり、図7に記載のコマンド処理回路344からの出力に基づいて、図4の起動回路254が動作を開始するとともに、各集積回路のアドレスレジスタ348が初期化される。その後、図8や図10で説明の如く、各集積回路ICに新たなアドレスが設定される。
ステップ805で、各電池セルを全て直列に接続された総電池の電圧、電流が、図1に示した電圧計Vdおよび電流センサSiにより検出され、それぞれの出力がバッテリコントローラ20に入力される。また、たとえば図示しない温度センサによって温度の測定がなされる。
一方、ステップ804でセルコントローラ80は起動と初期化の通信コマンド292を受け、各集積回路3A、…、3M、…、3Nはこの通信コマンド292を受信することにより、図4に記載の第1ステージカウンタ256や第2ステージカウンタ258が動作を開始し(ステップ806)、動作表260に記載の計測を繰り返し実行する(ステップ807)。ステップ807にて、図4や図6で説明の如く、各集積回路は独自に各電池セルの端子電圧を測定し、その測定値を現在値記憶回路274や初期値記憶回路275に記憶する(ステップ808)。ステップ807における各電池セルの電圧測定結果から、ステップ809で各集積回路は独自に各電池セルの充放電、過放電の判定を行う。異常があれば図5のフラグ記憶回路284に診断フラグがセットされるので、バッテリコントローラ20は診断フラグを検知でき、異常を検知できる。各集積回路はそれぞれ独自に電池セル電圧の計測と電池セルの異常診断を行うので、多くの電池セルからバッテリ部9が構成されていても、全ての電池セルの状態を短時間に診断できる。この結果リレーRLPやリレーRLNの投入前に、全ての電池セルの状態を診断でき、高い安全性を維持できる。
ステップ810にて、各電池セルの状態検出がなされたことを確認し、ステップ811にて、初期化が完了するとともに、フラグ記憶回路284の診断フラグがセットされなかったことを確認することにより、異常状態が存在しないことを検知できる。異常が無いことを確認すると、図13に示したリレーRLNを閉じ、次にリレーRLPREを閉じ、最後にリレーRLPを閉じる。これにより、電池モジュール9からインバータ装置220への直流電力の供給が開始される。
ステップ801におけるキースイッチONの時点から電力供給開始可能までの経過時間は、約100msec以下にできる。このように短時間に直流電力の供給を可能とすることで、運転者の要求に十分対応することが可能となる。
さらにこの短期間の間に、各集積回路のアドレスが設定されるともに、各集積回路は関連する各グループの電池セルの全ての電圧を測定し、それら各測定結果は図5に記載の初期値記憶回路275に記憶され、更に異常診断を完了することが可能となる。
そして、各電池セルの電圧の測定は、リレーRLP、RLN、RLPREのそれぞれがONになる前において、すなわち、インバータ装置220とバッテリ部9とが電気的に接続される前になされる。このため、各電池セルの電圧の測定は、インバータ装置220への電力供給の前であり、電流供給前に測定された各電池セルの端子電圧から正確に充電状態SOCを求めることが可能となる。
その後、ステップ812にて通常モードとなり、ステップ813にて、各電池セルの電圧、電流、温度の測定が行われるようになる。この場合の測定は、ステップ812にてセルコントローラ80との通信を介して行われる。なお、温度の測定は、図示しない温度センサからの出力に基づくものである。
そして、上記電流供給前に測定された各電池セルの電圧、電流の測定値に基づき、必要に応じ、温度の測定値に基づき、ステップ815にて、放電時間(バランシング)の演算が行われる。その演算結果に基づいて、図2に示したバランシングスイッチ129A、129B、129C、129Dを制御するための導通時間がそれぞれの集積回路に送信される。ステップ816で、各集積回路は導通時間に基づきバランシングスイッチを閉じる制御を行う。この動作は、上述した図11に示したフローに従って行われる。
ステップ817にて、集積回路3A〜3Nまたは各電池セルが異常か否かのテストが行われる。次に、ステップ818にて、各電池セルの残量あるいは劣化等を含む状態の演算が行われる。
ステップ818にてバランシングスイッチ129A、129B、129C、129Dのそれぞれに対応して演算された導通時間にカウント数が達しているか否かが判定される。達していない場合には、ステップ813に戻り、ステップ816におけるバランシング、ステップ817におけるテスト、ステップ818における各電池セルの状態演算が繰り返される。
そして、ステップ818にて前記バランシングスイッチ129A、129B、129C、129Dの導通時間にカウント数が達した場合、カウント値が導通時間に達したバランシングスイッチ129A、129B、129C、129Dに対して、放電動作を停止するための開状態にする命令が、バッテリコントローラ20から該当の集積回路に送信される。バランシングスイッチを閉じて放電させる制御は、バッテリ部9の内充電状態SOCの大きい電池セルに対してのみ行われるので、充電状態SOCの小さい電池セルのバランシングスイッチは最初から開のまま維持される。上述のとおり、バッテリ部9のそれぞれの電池セルの充電状態SOCが演算され、それぞれの電池セルに対してバランシングスイッチの導通時間が演算され、バッテリコントローラ20の記憶装置に保持される。導通時間はそれぞれの電池セルの充電状態SOCに対応して決められるので、通常はそれぞれ異なる導通時間となる。もちろん最初から導通時間がゼロの電池セルが存在する。このためステップ818では各電池セルの通電時間と計数値とが比較され、通電時間が経過した電池セルの放電を制御している集積回路に対して、該当する電池セルの放電停止の指令を送信する。
〈通信終了シーケンス〉
図15は、たとえば図1や図13に示した車両用電源システムにおいて、バッテリコントローラ20のセルコントローラ80との通信を終了させるシーケンスを示す説明図である。
図15(a)は、バッテリコントローラ20の電源(VC)端子における電源供給の停止のタイミングを示した図である。図15(b)は、絶縁回路である入口側インタフェースINT(E)のフォトカプラPH1や、フォトカプラPH2および絶縁回路である出口側インタフェースINT(O)のフォトカプラPH3や、フォトカプラPH4の電源供給の停止のタイミングを示した図である。図15(c)は、バッテリコントローラ20からのTX端子やRX端子を介した送受信の停止のタイミングを示した図である。図15(d)は、バッテリコントローラ20からのWake−up端子を介した信号の停止のタイミングを示した図である。
この図から明らかとなるように、まず、バッテリコントローラ20からのTX端子やRX端子を介した送受信を停止する。さらに、バッテリコントローラ20からのWake−up端子からの信号をシステムとして使用している場合には、この信号の送信が停止する。次にバッテリコントローラ20の電源(VC)端子における電源供給の供給停止を行い、そして絶縁回路である入口側インタフェースINT(E)のフォトカプラPH1とPH2および絶縁回路である出口側インタフェースINT(O)のフォトカプラPH3とPH4の電源供給の停止を行う。
このような順序で上記各部の動作停止を行うことにより各集積回路を確実にスリープ状態とすることができるようになる。
なお、図16は上記図15で説明したWake−up端子からの信号を使用していないシステムの説明である。Wake−up端子からの信号を使用しないので図15(d)における信号停止が不要となる。他のシーケンスは図15の場合と同じである。
〈各集積回路と対応するグループの電池セルの構成〉
上述した実施形態では、各グループを構成する電池セルの数が同じであり、各グループに対応した集積回路3A、…、3M、…、3Nにおいて、それぞれ4個の電池セルが接続されていた。各集積回路3A、…、3M、…、3Nは、それぞれ4個の各電池セルから電圧等の情報を得、また該電池セルの充放電の制御を行うように構成されていた。また集積回路3A、…、3M、…、3Nのそれぞれが担当する電池セルはそれぞれ等しい数であった。
しかし、図17に示すように、バッテリ部9の各グループが有する電池セルの数を異なる数とすることができる。バッテリ部9を構成する電池セル数を自由に選択でき、グループ数の倍数とする必要がない。図17(a)は各グループの中の電池セルの数、図17(b)は各グループに対応した集積回路を示している。各集積回路の内部の現在値記憶回路274や初期値記憶回路275に保持される電池セルの端子電圧に関するデータの種類は異なる数となる。このデータがバッテリコントローラ20からの要求に基づきバッテリコントローラ20に送信される場合、それぞれ異なる数のデータを送信しても良いが、図17(c)に示す如く、決まった数に再配分して送信することができる。このように決まった数のデータを送受信することで、送信の信頼性を高くすることが可能となる。
図17(b)に示すように、各集積回路3A、…、3M、…3Nの関係するグループの電池セルの数はそれぞれ異なっている。図17(a)に示すように、最上段の集積回路3Aと最下段の集積回路3Nの関係するグループでは、それぞれ、例えば4個の電池セルを有していて、他のグループより電池セルの数が少なくなっている。バッテリ部9の端のグループではない内側のグループの電池セルの数は、端のグループの電池セルの数、4個より多いたとえば6個となっている。
電位の最上位の集積回路3Aあるいは最下位の集積回路3Nは、上述したようにフォトカプラPH1、PH4からなる絶縁回路を介してバッテリコントローラ20に接続されている。フォトカプラPH1、PH4の耐圧を低くすることが安全性や価格の面で好ましい。フォトカプラPH1、PH4に接続される集積回路が関係するグループの電池セルの数を少なくすることで、要求されるフォトカプラの耐圧を下げることが可能となる。すなわち、最上位の集積回路3Aと最下位の集積回路3Nにおいて、それぞれ、たとえば6個の電池セルを接続させて構成した場合に、それらとバッテリコントローラ20との間に接続されるフォトカプラの必要耐圧は6個分の電池セルの端子電圧の最大値より大きくすることが必要となる。セル数が増加するとそれに伴い要求される耐圧が増加する。
この場合、最上位の集積回路3Aと最下位の集積回路3Nに保持される電池セルの端子電圧の種類は4個となる。バッテリコントローラ20との通信におけるデータは、4個分の電池セルにおけるデータとなる。また、集積回路3Mを含む他の集積回路において、該バッテリコントローラ20との通信におけるデータは、6個分の電池セルにおけるデータとなる。
この実施形態では、図17(c)に示すように、集積回路3Aに接続される4個分の電池セルのデータ、次段の集積回路に接続される6個分の電池セルのデータのうち上段側に配置される4個分の電池セルのデータ、上記次段の集積回路に接続される6個分の電池セルのデータのうち下段側に配置される2個分の電池セルのデータおよびさらに次段の集積回路に接続される6個分の電池セルのデータのうち上段側に配置される2個分の電池セルのデータ、……、そして、最下段の集積回路3Nに接続される4個分の電池セルのデータというように、順次、4個分の電池セルのデータを単位として、全ての電池セルのデータを送受信するようになっている。
図13に示した車両用電源システムにおいて、たとえばバッテリコントローラ20と上位コントローラ110との間の通信において一度に送れるデータの量が制限されている(たとえば上限のデータ量が電池セル4個分等)。したがって、図17(c)に示すバッテリ部9の構成を採用することにより、上記制限量を超えることのない量の信号の送受ができ、信頼性のある信号の送受を行うことができるようになる。
上述した実施形態では、最上段と最下段の各集積回路3A、3Nに接続される電池セルの数を4個とし、それ以外の集積回路に接続される電池セルの数を6個としている。しかし、これに限定されることはなく、最上段と最下段の集積回路3A、3Nに接続される電池セルの数がそれ以外の集積回路に接続される電池セルの数よりも少なければ同様の効果を奏し、どちらか1方が少ない場合には少ない方のフォトカプラの耐圧を下げることができる。
また、上述した実施形態では、各集積回路に接続される電池セルの数が異なっているにも拘わらず、順次、4個分の電池セルのデータを単位として送受信している。しかし、単位とする電池セルのデータは、4個分に限定されることはなく、各集積回路にそれぞれ接続される電池セルの数において、最も多い電池セルの数よりも少ない数分の電池セルのデータを単位として送受信するようにしても同様の効果が得られる。
〈電池モジュールの構成〉
図18および図19に、前記バッテリ部9とセルコントローラ80とを備えた電池モジュール900の具体的な構成の一例を示している。電池モジュール900は、上蓋46と下蓋45とからなり金属製で略直方体状のバッテリケース9aを有していて、インバータ装置220などの電力消費あるいは発電装置へ直流電力を供給する、あるいは直流電力を受電するための出力端子810,820を備えている。バッテリケース9a内には、複数個の組電池19が収容固定されている。電池モジュール900は金属ケースであるバッテリケース9aで覆われており、バッテリケース9a内には、電圧や温度を検出するための配線が多数存在しているが、これらが電気的な外部からのノイズから保護されている。また上述のとおり、電池セルはバッテリケース9aとその外側の容器で保護されており、仮に交通事故が発生したとしても電源システムの安全性が維持される。
本実施の形態で電池セルは、正極活物質をリチウムマンガン複酸化物、負極活物質を非晶質炭素とし、熱伝導性の高いケーシングで被覆した円柱状のリチウム二次電池である。このリチウム二次電池の電池セルは、公称電圧が3.6V、容量が5.5Ahであるが、充電状態が変わると電池セルの端子電圧が変化する。電池セルの充電量が減少すると2.5ボルトくらいに低下し、電池セルの充電量が増大すると4.3ボルト程度に増大する。
本実施形態では、各電池セルは検出用ハーネス32や強電ケーブル81と82などの接続作業を容易にし、さらに安全性が維持できる。
図18乃至図19に示すように、下蓋45には2個の電池ブロック10と11が並設するように固定されている。一方の端部には、図20に記載のセルコントローラ(以下、C/Cと略称する。)80を内蔵したセルコントローラボックス(C/Cボックス)79がネジ固定されている。図20に示すように、C/C80は横長で両面にプリント配線された一枚基板で構成されており、C/Cボックス79内に上下各4箇所に形成された丸穴を介して直立状態でネジ固定されている。組電池を構成する電池セルの側面に対向する関係にICを備えた基板が配置され、このような構造としたため、電池モジュール900全体が比較的小空間に収納可能となっている。また、各組電池とC/C80との配線の煩雑さを解消できる。
C/C80を構成する基板の左右両側端部には電池ブロック10と11を構成する各電池セルと検出用ハーネス32を介して接続のためのコネクタ48、49がそれぞれ距離を置いて設けられている。検出用ハーネス32の基板側である一方側に取り付けられたハーネスコネクタ(図示せず)がC/C80のコネクタ48、49に接続されている。すなわち、図19に示すように、検出用ハーネス32は電池ブロック10、11毎に設けられている。電池モジュール900は2つの電池ブロック10と電池ブロック11とに分割されて収容されるため、C/C80には2つのコネクタ48、49が実装されている。2つの組電池ブロック10、11はそれぞれコネクタを使用して接続しているので、配線作業に優れ、メンテナンスも行い易い。コネクタ48と49の一方が、直列接続された電池セルの高電圧側電池セルとの接続に使用され、コネクタ48と49の他方が、直列接続された電池セルの低電圧側電池セルとの接続に使用される。このように直列接続された電池セルとC/C80との接続を、直列接続されている電池セルの電位に基づいて複数個に分け、電位状態による上記分割に対応させた複数個のコネクタを使用して電池セルとC/C80との接続を行っている。これにより、各コネクタにより接続される接続内での電位差を小さくできる。このような構成とすることで耐電圧や電流の漏洩さらには絶縁破壊に関して優れた効果が得られる。また各コネクタの接続や開放作業において、コネクタ全体が同時に接続または開放することは困難であり、接続や開放の過程で部分的な接続状態が生じてしまう。上記構成では各コネクタが受け持つ電圧差を小さくできるので、接続や開放の過程で生じる部分接続による電気的な悪影響を抑制できる。
また、C/C80の基板には、電池モジュール900に収容された単電圧の直列接続に対して複数のICが用意されている。1個のICが何個の電池セルを受け持つかは、各ICの処理能力により決まる。この実施形態では、4個の電池セルに対して1個のICを使用している。しかし、5個や6個の電池セルに対して1個のICを使用しても良い。また同一システム内で、4個の電池セルに対して1個のICを使用する部分と6個の電池セルに対して1個のICを使用する部分と組み合わせても良い。直列接続された電池セルの個数が、各ICが受け持つことのできる最適数の倍数とは限らない。この実施形態では4の倍数となっているが、通常4の倍数となるとは限らないので、1個のICが受け持つ電池セルの数が同じシステム内で異なることが生じるが、大きな問題とはならない。
直列接続された電池セルを、1個のICが受け持つ電池セルの数に基づいて複数個のグループに分け、グループ毎に対応するICが決められ、対応するICによって対応するグループを構成する電池セルの端子電圧が測定される。上述のとおり、各グループを構成する電池セルの数は異なっていてもよい。
また、C/C80の基板からはバッテリコントローラ20と通信するための通信ハーネス50が導出されており、通信ハーネス50はその先端部にコネクタを有している。このコネクタは、バッテリコントローラ20側のコネクタ(不図示)に接続されている。なお、C/C80の基板には、抵抗、キャパシタ、フォトカプラ、トランジスタ、ダイオード等のチップ素子が実装されているが、図20ではこれらの素子については煩雑さを避けるため省略している。C/C80の基板では、2つの組電池ブロックに対してそれぞれコネクタ48、49が設けられており、このコネクタとは別にバッテリコントローラ20と通信するための通信ハーネス50が設けられている。このようにコネクタ48、49と通信ハーネス50とを別々に設けることで、配線作業が容易となり、またメンテナンスも容易となる。また上述のとおり、コネクタ48と49の一方は直列接続された高電圧側の電池セルとC/C80の基板との接続を行い、コネクタ48と49の他方は直列接続された低電圧側の電池セルとC/C80の基板との接続を行うので、各コネクタが受け持つ範囲での電圧差を小さくできる。コネクタ接続時または開放時に瞬間的に一部のみ接続されている部分接続状態が生じるが、各コネクタが受け持つ範囲での電圧差を小さくできるので、部分接続状態がもたらす悪影響を小さくできる。
下蓋45に並設固定された組電池ブロック10、11同士は、図示を省略したブロック間接続ブスバにより直列に接続されている。下蓋ベースの正面部には、正極強電ケーブル81、負極強電ケーブル82の電力を外部に供給する、あるいは外部から受電するための出力端子810,820が設けられている。
〈各電池セルの診断〉
図1に記載の各集積回路3A・・・集積回路3M・・・集積回路3Nの内部処理動作で行われている各電池セルの計測と過充電や過放電の診断動作を説明する。図4の動作表260の行260Y1に記載のステージSTGCV1〜ステージSTGCV6において各電池セルの端子電圧の取り込みと診断が行われる。ステージSTGCV1の計測の期間で、先の説明のごとく、図5の選択回路120はVCC(V1)とVC2(V2)を選択する。この動作により図2のバッテリセルBC1の端子電圧が選択され、電位シフト機能を有する差動増幅器262を介して電圧検出回路122Aに入力される。電圧検出回路122Aでデジタル値に変換され、平均化回路264で今回の測定を含め最も新しい所定回数の測定値を基に平均値が演算され、現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持される。
現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持された測定値を基に、電池セルBC1の過充電や過放電の診断が図4のステージSTGCV1の計測期間内で行われる。この診断に入る前にバッテリコントローラ20から診断のための基準値が各集積回路に送信され、過充電の診断基準OCが基準値記憶回路278のレジスタに、また過放電の診断基準ODが基準値記憶回路278のレジスタにそれぞれ保持される。さらにバッテリコントローラ20から通信コマンド292で基準値の送信ができない、あるいはノイズその他の原因で誤った値が基準値記憶回路278に保持されたとしても、過充電の異常状態を把握できるように、通信コマンド292で書き換えできない過充電基準値OCFFOを予め保持している。
〈過充電の診断〉
ステージSTGCV1の計測における端子電圧の計測に続いて、測定された端子電圧値がデジタル比較回路270により過充電の判断値OCと比較される。すなわち、現在値記憶回路274のレジスタCELL1〜CELL6、レジスタVDDに保持されている複数個の測定値さらにVDD値乃至基準電源(PSBG)の中から、図4の第1ステージカウンタ256や第2ステージカウンタ258の出力に基づきデコーダ257やデコーダ259により作られた選択信号により、レジスタCELL1の測定値が選択されてデジタル比較回路270に入力される。また、同様に上記デコーダ257やデコーダ259により生成された選択信号により、基準値記憶回路278に保持された複数の基準値の中から過充電診断基準値OCが選択され、デジタル比較回路270はレジスタCELL1内の電池セルBC1の測定値と過充電診断基準値OCとを比較する。デジタル比較回路270は、電池セルBC1の測定値が過充電診断基準値OCより大きい時に異常を示す比較結果を出力する。デジタルマルチプレクサ282は上記デコーダ257やデコーダ259により生成された選択信号によりデジタル比較回路270の出力の記憶先を選択する。電池セルBC1の診断結果がもし異常であれば、フラグ記憶回路284のレジスタMFflagおよびレジスタOCflagにその異常診断結果が保持される。すなわちMFflagおよびOCflagがセットされた状態となる。上記異常フラグは集積回路の端子FFOから出力され、バッテリコントローラ20に伝えられる。
次に信頼性を向上するために、デジタル比較回路270は電池セルBC1の測定値と過充電診断基準値OCFFOとを比較する。電池セルBC1の測定値が過充電診断基準値OCFFOより大きい場合に、過充電に関する異常として、フラグ記憶回路284のレジスタMFflagおよびレジスタOCflagにその異常診断結果が保持される。異常フラグがフラグ記憶回路284にセットされると上述と同様にバッテリコントローラ20に伝送される。過充電診断基準値OCFFOはバッテリコントローラ20から書き換えできない基準値であり、バッテリコントローラ20のプログラムや動作に異常が生じても過充電診断基準値OCFFOは変更されないので信頼性の高い判断ができる。過充電診断基準値OCはバッテリコントローラ20から変更できるのできめ細かい判断が可能となり、また上述のとおり、過充電診断基準値OCFFOはバッテリコントローラ20や伝送路の状態に係わらず維持される信頼性の高いデータであり、これら2種のデータを使用して診断することで信頼性の高い診断が実現できる。
〈過放電の診断〉
ステージSTGCV1の計測の期間でさらに引き続き電池セルBC1の過放電の診断が行われる。現在値記憶回路274のレジスタCELL1に記憶された電池セルBC1の測定値と基準値記憶回路278の基準値ODとがデジタル比較回路270で比較される。電池セルBC1の測定値が基準値記憶回路278の基準値ODより小さい場合に異常と判断して異常信号を出力する。デコーダ257とデコーダ259の出力に基づく選択信号によりデジタルマルチプレクサ282はフラグ記憶回路284のMFflagとODflagを選択し、デジタル比較回路270から出力された異常信号はレジスタMFflagとレジスタODflagにセットされる。
上記各項目の診断で、もしMFflagがセットされると、そのフラグは、OR回路288を介して1ビット出力端FFOから出力され、バッテリコントローラ20に送信される。
選択回路286の機能をバッテリコントローラ20からの通信コマンド292で変えることができ、端子FFOから出力されるフラグをどのフラグまで含めるかを選択的に変更できる。例えばフラグ記憶回路284のMFflagをセットする条件を過充電異常だけとしても良い。この場合、デジタル比較回路270の過放電異常診断出力はレジスタMFflagにはセットせず、ODflagのみセットする。ODflagを端子FFOから出力するかどうかは選択回路286の設定条件で決まるようにすることが可能である。この場合は、設定条件をバッテリコントローラ20から変更できるので、多様な制御に対応できる。
図4の動作表260の行260Y1に記載のステージSTGCV1に続き、次にステージSTGCV2の期間となる。図6で選択回路120はVC2(V2)とVC3(V3)とを選択することにより、図2の電池セルBC2の端子電圧が選択される。上述のステージSTGCV1と同様の動作により、電池セルBC2の端子電圧が122Aによりデジタル変換され、平均化回路264で今回の測定結果を含む最新の所定回数の測定値の平均が演算され、現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持される。測定結果の保持位置の選択は他の測定値に対する場合と同様、図4のデコーダ257とデコーダ259の出力に基づいて行われる。
次に上述のステージSTGCV1と同様、図4のデコーダ257とデコーダ259の出力に基づいて、現在値記憶回路274から電池セルBC2の測定値が選択され、基準値記憶回路278の過充電診断基準値OCが選択され、デジタル比較回路270により比較されることで診断が行われる。診断内容と動作は上述のステージSTGCV1と同様である。
以下ステージSTGCV3乃至ステージSTGCV6についても上記ステージSTGCV1や上記ステージSTGCV2と同様の動作内容で、図5の回路により計測に引き続き診断が行われる。
〈充電状態SOCの調整と端子電圧の計測〉
バッテリ部9を構成する各電池セルの充電状態SOCを調整のためにバランシングスイッチ129A〜129Fを制御し、充電量が多い電池セルの電力を放電用の抵抗を介して放電する制御に関しては上述した。バランシングスイッチ129A〜129Fの開閉制御は各電池セルの端子電圧の検出に悪影響を及ぼす可能性がある。すなわち、図2の回路でバランシングスイッチ129が閉じると抵抗R1からR4を介して放電電流が流れ、電池セルBC1〜BC4の端子電圧の計測精度を低下させる。
上記バランシングスイッチ129A〜129Fの開閉制御はバッテリ部9全体の電池セルの状態に基づいて行うことが必要である。従って図1に示すバッテリコントローラ20が処理することが望ましく、バッテリコントローラ20の指令に基づき各集積回路3A〜3Nがバランシングスイッチ129A乃至129Fを制御することが望ましい。一方各電池セの端子電圧の計測に関しては、各集積回路3A〜3Nがそれぞれ担当するグループの電池セル電圧の計測を独自に行い、バッテリコントローラ20から計測値の送信命令を受けたときに、独自に計測し保持していた端子電圧の計測値を速やかに送信することが望ましい。従って制御を行う回路が異なる上記バランシングスイッチ129A〜129Fの制御と各電池セルの端子電圧の計測との調和を図り、両方制御を総合的に実行することが必要である。
図21から図25を用いて上記両方の制御を実現する具体的構成を説明する。以下の説明では、図1や図2に示す放電用の抵抗R1からR4に加え、実際の製品ではノイズの影響を取り除くためコンデンサC1〜C6を設けることが望ましく、図1や図2の回路にノイズ除去用のコンデンサを追加した回路を図21、図22、図26、図27に示す、なお図1や図2では電池セルの数を4個としているが、図21、図22、図26、図27では6個として記載している。なお上記抵抗やコンデンサは破線で示す集積回路と共に破線80で示すセルコントローラに保持されており、図20に示す通信ハーネス50を介してバッテリブロックの各電池セルBC1からBC6と接続されている。
図21に記載の放電用の抵抗R1〜R6を利用して、ノイズの影響を更に低減するように工夫した回路を図22に示す。図23および図24は、計測制御と充電状態SOCの調整のための放電制御の動作を示す図であり、図23は図21に示す回路の動作を示し、図24は図22に示す回路の動作を示す。また図23や図24に示す制御を行うための回路を図25に示す。
図21の回路において、ステージSTGCV1では電池セルBC1の端子電圧が計測され、次のステージSTGCV2では電池セルBC2の端子電圧が計測される。以下順に電池セルBC3〜BC6の端子電圧の計測が実行される。このようにして計測を繰り返すことにより電池セルの端子電圧の状態を常に監視することが可能となる。
例えば、バランシングスイッチ129Bが充電状態SOCの調整のために閉状態とすると、バランシングスイッチ129Bと抵抗R2を介して放電電流が流れており、この放電電流による電池セルBC2の内部抵抗や配線抵抗が影響して、選択回路120に入力される電圧VC2はバランシングスイッチ129Bが開状態のときの端子電圧より低い値となる。すなわちバランシングスイッチ129Bが閉じることで入力回路116に入力される端子電圧が低い値となり、測定精度が低下する。
上記測定精度の低下を防ぐため、図23に記載のように電池セルBC1の端子電圧を計測するステージSTGCV1では充電状態SOCの制御を一次的に停止して、バランシングスイッチ129Aを開状態とし、電池セルBC1の端子電圧を計測する。次の電池セルBC2の端子電圧を計測するステージSTGCV2では充電状態SOC制御を一次的に停止して、バランシングスイッチ129Bを開状態とし、電池セルBC2の端子電圧を計測する。以下順にバランシングスイッチ129Cから129F(図23のBSW3からBSW6)をそれぞれ開状態として電池セルの端子電圧を計測する。
各ステージSTGCV1〜STGCV6のそれぞれの計測期間において、充電状態SOCの調整のための制御を停止しても良い。あるいは、各ステージSTGCV1からSTGCV6の期間内で実際に端子電圧を計測する短い時間のみ、充電状態SOCの調整のための制御を停止しても良い。
次に図22に示す回路について説明する。直列接続の電池セルBC1乃至BC6からインバータ装置に供給する電力線には大きなノイズが混在している。このノイズの影響を少なくするためには、図22に示す回路では、各電池セル端子と入力回路116の入力端との間に抵抗RA1から抵抗RA7を挿入している。上記抵抗RA1から抵抗RA7は、コンデンサC1からコンデンサC7と共にノイズ除去を行い、集積回路をノイズから保護する。
図22に記載の回路で、充電状態SOCの調整のためにバランシングスイッチ129Aを閉じると、電池セルBC1の放電電流は抵抗R1とバランシングスイッチ129Aと抵抗RA2とを通して流れる。バランシングスイッチ129Aが閉じた状態の放電電流が抵抗RA2を流れるため、電池セルBC1の端子電圧の計測だけでなく、電池セルBC2の端子電圧の計測にも影響を及ぼす。従って電池セルBC2の端子電圧の計測時にはバランシングスイッチ129Aとバランシングスイッチ129Bの両方の開放が必要となる。同様に電池セルBC3の端子電圧の計測時にはバランシングスイッチ129Bとバランシングスイッチ129Cの両方の開放が必要となり、以下同様に他の電池セルの計測時も同様である。
図24は、図22に記載の回路において、電池セルの計測を行うときのバランシングスイッチ129の強制開放の状況を示している。ステージSTGCV2では図22の電池セルCB2の端子電圧の計測が行われるので、バランシングスイッチ129Aおよび129Bの充電状態SOCの調整のための制御を停止し、これらのバランシングスイッチ129Aおよび129Bを開放状態に維持する。この場合ステージSTGCV2の期間全体に渡り、バランシングスイッチ129Aおよび129Bの充電状態SOCの調整のための制御を停止しても良いし、前記ステージSTGCV2の期間中の実際に電圧を計測する短い期間のみバランシングスイッチ129Aおよび129Bの充電状態SOCの調整のための制御を停止しても良い、ことは上述の図23の場合と同じである。
また図24のステージSTGCV3では図22の電池セルB3の端子電圧の計測が行われるので、電池セルBC3の端子電圧の計測期間はバランシングスイッチ129Bおよび129Cの充電状態SOCの調整のための制御を停止し、計測期間はバランシングスイッチ129Bおよび129Cを開放状態に維持する。この場合、ステージSTGCV3の期間全体に渡り、バランシングスイッチ129Bおよび129Cの充電状態SOCの調整のための制御を停止しても良い。あるいは、前記ステージSTGCV3の期間中の実際に電圧を計測する短い期間のみ、バランシングスイッチ129Bおよび129Cの充電状態SOCの調整のための制御を停止するようにしても良いことは上述と同じである。
ステージSTGCV4あるいはステージSTGCV5では電池セルBC4あるいはBC5の端子電圧の計測が行われるので、バランシングスイッチ129Cおよび129Dあるいはバランシングスイッチ129Dおよび129Eを開放状態に維持する。ステージSTGCV6では電池セルBC6の端子電圧の計測が行われる。このため電池セルBC6の端子電圧の計測期間はバランシングスイッチ129Fを開放状態に維持する。
尚図23や図24で矢印←→で示した期間は充電状態SOCの調整のためのバランシングスイッチ129A〜129Fの制御が行われる期間である。また「オフ」と記載した期間は充電状態SOCの調整のためのバランシングスイッチ129A〜129Fの制御を停止し、強制的に開放状態にする期間を示している。以上の様にバッテリコントローラ20で行う充電状態SOCの調整制御に優先して電池セル端子電圧の測定期間には関係するバランシングスイッチ129を強制的に開放することで、電池セル端子電圧の測定精度を向上することができる。
次に、図25に記載の回路を用いて上記バランシングスイッチ129の開放動作を説明する。まず充電状態SOCの調整を行うための制御値が図14のステップ815で演算され、演算結果に基づき各集積回路3A・・・3M・・・3Nに通信コマンド292により送られてくる。各集積回路3A・・・3M・・・3Nでは、図2や図7に示す通信回路127で受信し、受信結果に基づいて各バランシングスイッチ129A〜129Fが制御される。
図25に示すデータ330は、図7の受信レジスタ322のデータ330の部分を拡大して示しており、データ330の内容が放電制御回路1321〜1326に入力される。入力される制御信号は例えば「1」または「ゼロ」を示す信号で、「1」はバランシングスイッチ129を閉じて放電する制御を表し、「ゼロ」はバランシングスイッチ129を開いて放電しない制御を意味する。これらの制御信号は放電制御回路1321〜1326に保持され、この保持データに基づきバランシングスイッチ129A〜129Fはそれぞれ制御される。
放電制御回路1321〜1326の保持データはANDゲート12〜62に加えられ、さらにORゲート11〜ORゲート61を介してバランシングスイッチ129A〜129Fを駆動する。一方これら充電状態SOCの調整のための制御に優先してバランシングスイッチ129A〜129Fを優先制御する場合は、各ANDゲート12〜ANDゲート62で上記放電制御回路1321〜1326に基づく信号を遮断する。この遮断期間は図29や図30で説明の期間であり、デコーダ257やデコーダ259の出力に基づいて電池の端子電圧の計測が行われるので、このデコーダ257やデコーダ259の出力に基づいて回路2802から制御停止信号を各ANDゲート12〜ANDゲート62に送る。
各ANDゲート12〜ANDゲート62を開放して充電状態SOCの調整のための制御を停止している期間は、ANDゲート11〜ANDゲート61が閉じており、ORゲート12〜ORゲート62の出力により、バランシングスイッチ129A〜129Fが駆動される。従って、各ANDゲート12〜ANDゲート62が開放しANDゲート11〜ANDゲート61が閉じている期間は、計測が最適に行われるように、計測制御回路2811〜計測制御回路2861からバランシングスイッチ129A乃至129Fを制御する制御信号を出力することができる。また、後述する検出用ハーネス32の異常診断を行う場合は、診断制御回路2812乃至診断制御回路2862からバランシングスイッチ129A乃至Fを制御する制御信号を出力する。
このように各集積回路は3A・・・3M・・・3Nは、充電状態SOCの調整のための制御に優先して充電状態SOC調整制御を停止し、停止期間に各集積回路は独自にバランシングスイッチ129A〜129Fを制御できる回路を有するので、正確な測定や診断が可能なる効果がある。
〈ADC、差動増幅器262、基準電圧の診断〉
図4に示す動作表260の行260Y1に記載のステージSTGPSBGで内部基準電圧やアナログおよび電圧検出回路122Aの診断を行う。図5に記載のアナログ回路やデジタル回路を動作させるための電源電圧を集積回路内部の電源回路121(図2)で発生する。電源電圧を絶対的な基準電源に基づいて発生すると高精度の前記電源電圧を比較的容易に得ることができる。しかし一方絶対的な基準電圧が変化すると、電源電圧が変化してしまう心配がある。
ステージSTGPSBGでは基準電源の診断およびアナログ回路や電圧検出回路122Aの診断を効率良く行うことができる。以下具体的に説明する。
図5の回路で、入力回路116は基準電源とGNDを選択する。この選択により、GNDの電位と基準電源との差電圧が差動増幅器262に入力され、電位シフトとスケール合わせが行われ、アナログデジタル変換器122Aに入力される。アナログデジタル変換器122Aは入力信号をデジタル値に変換し、このデジタル信号は、デコーダ257とデコーダ259に基づき、現在値記憶回路274にデータPSBGとしてPSBGレジスタに保持される。
基準電源は関係する回路の動作が正常であればその電圧は既知であり、基準電源の既知の電圧より少し小さい値である基準電源の下位許容値(PSBGmin)と基準電源の既知の電圧より少し大きい値である基準電源の上位許容値(PSBGmax)を、基準値記憶回路278のレジスタに予め割り当てた下位許容値と上位許容値の保存領域とにそれぞれ保持する。これらの値は、基準電源が正常な電圧であれば、基準電源の下位許容値と上位許容値との間の値である。またアナログ回路が正常に動作しない場合、例えば差動増幅器262が正常でない場合は、例え基準電源が正常な電圧であってもアナログデジタル変換器122Aの出力は正常な範囲から外れることとなる。またアナログデジタル変換器122Aが正常でない場合も、アナログデジタル変換器122Aの出力は正常な範囲から外れることとなる。
従って、現在値記憶回路274の保持値「基準電源」が、基準値記憶回路278に保持されている基準電源の下位許容値と上位許容値との間にあるかどうかをデジタル比較回路270で比較し、診断する。
デコーダ257とデコーダ259との出力に基づいてデジタルマルチプレクサ272は計測値「基準電源」を選択してデジタル比較回路270に送り、また、デコーダ257とデコーダ259との出力に基づいてデジタルマルチプレクサ272は基準電源の下位許容値を選択してデジタル比較回路270に送る。デジタル比較回路270は、計測値「基準電源」が基準電源の下位許容値より小さい場合に異常として、デコーダ257とデコーダ259との出力に基づいてデジタルマルチプレクサ282が選択した異常フラグの保持レジスタ、本実施形態ではフラグ記憶回路284のレジスタMFflagに異常フラグを保持する。計測値「基準電源」が基準電源の下位許容値より大きい場合には正常と判断し、フラグ記憶回路284の異常フラグのセットは行われない。
ステージSTGPSBGの期間において、さらにデジタルマルチプレクサ272はデコーダ257とデコーダ259との出力に基づいて計測値「基準電源」を選択してデジタル比較回路270に送り、また、デコーダ257とデコーダ259との出力に基づいてデジタルマルチプレクサ272は基準電源の上位許容値を選択してデジタル比較回路270に送る。デジタル比較回路270は計測値「基準電源」が基準電源の上位許容値より大きい場合に異常として、デコーダ257とデコーダ259との出力に基づいてデジタルマルチプレクサ282が選択した異常フラグの保持レジスタ、本実施形態ではフラグ記憶回路284のレジスタMFflagに異常フラグを保持する。計測値「基準電源」が基準電源の上位許容値より小さい場合には正常と判断し、フラグ記憶回路284の異常フラグのセットは行われない。このようにしてアナログ増幅器である差動増幅器262やアナログデジタル変換器122Aが正常に動作しているかどうかの診断を、ステージSTGPSBGの期間に実行することができ、高い信頼性を維持できる。
〈デジタル比較回路の診断〉
図4に記載の動作表260のステージSTGCalでデジタル比較回路の診断が行われる。以下その動作を説明する。デジタルマルチプレクサ272はデコーダ257とデコーダ259の出力に基づき増加演算値280を選択する。この増加演算値280は、基準値記憶回路278に保持されている基準値、例えば基準値OCに所定値を加算して得られた値である。デジタルマルチプレクサ276が基準値記憶回路278に保持されている基準値の一つ、本実施形態では基準値OCを選択し、デジタル比較回路270に比較対象として入力する。さらにまた、選択された基準値OCに所定値、例えば"1"を加算して得られた増加演算値280をデジタルマルチプレクサ272を介してデジタル比較回路270に入力する。デジタル比較回路270が基準値OCより増加演算値280を大きいと判断すれば、デジタル比較回路270は正しく動作していることになる。
次に、デジタルマルチプレクサ272はデコーダ257とデコーダ259の出力に基づき減少演算値281を選択する。この減少演算値281は、基準値記憶回路278に保持されている基準値、例えば基準値OCから所定値、例えば"1"を減算して得られた値である。デジタルマルチプレクサ276が基準値記憶回路278に保持されている基準値の一つ、本実施形態では基準値OCを選択し、デジタル比較回路270に比較対象として入力する。さらにまた、選択された基準値OCに所定値、例えば"1"を減算して得られた減少演算値281をデジタルマルチプレクサ272を介してデジタル比較回路270に入力する。デジタル比較回路270が基準値OCより減少演算値281を小さいと判断すれば、デジタル比較回路270は正しく動作していることになる。
以上の様に、基準値記憶回路278に保持された基準値OCを、この基準値OCに所定値を加算した値と比較し、あるいは所定値を減算した値と比較することで比較器の動作が正常かどうかを診断することができる。
増加演算値280や減少演算値281を使用する目的は、比較対象に対して大小関係が既知である条件を作り出して比較結果を診断することであり、所定値の加算や減算の代わりに、データを上位側にシフトあるいは下位側にシフトさせた値を使用しても良い。この場合は、所定値4で乗算や減算したことになり、上述のごとく既知の大小関係を作り出すことが可能となる。
図26と図27に基づいて、電池セルBCの正極および負極とセルコントローラ80とを接続する検出用ハーネス32に異常が発生した場合の診断について説明する。図26は図1乃至図2の検出用ハーネス32の内のハーネスL2が断線した場合である。また図27は図22の回路の検出用ハーネス32の内の上記と同様ハーネスL2が断線した場合である。断線の原因としては、図19に示す各電池セルと検出用ハーネス32との接続部や、図20に示すセルコントローラ80と各ハーネスとの接続部のコネクタ48や49の接触不良が考えられ、またまれには検出用ハーネス32そのものの断線の可能性がある。
各電池セルの異常の可能性を検知し、異常が生じないようにすることが大切である。仮に電池セルと各集積回路間の電気的な接続に異常が生じると上記電池セルの異常の可能性を検知できなくなる。上記図26や図27における電池セルと各集積回路間の電気的な接続に異常が生じたことを検知する検知方法を、図28を用いて説明する。なお上記図26や図27の基本的な動作は先に説明のとおりであり、また検出用ハーネス32の内のハーネスL2が断線したとして説明するが、ハーネスL1からL7のどの線であっても同じように異常の診断が可能である。
図28において、バランシングスイッチ129Aから129Cが開状態で検出用ハーネス32のハーネスL2が断線しても、コンデンサC2を含む色々な静電容量があるので、選択回路120に入力される電圧VC2は見かけ上では、電池セルの端子電圧V2に近い正常値を示す可能性がある。従ってこのままでは異常を検知できない。
従って次に、診断したい検出用ハーネス32のL2を介して放電電流を流すバランシングスイッチ129Bを閉じる。バランシングスイッチ129Bを閉じることにより、検出用ハーネス32のうちハーネスL2とL3の回路間に存在するコンデンサC2を含む静電容量に蓄えられていた電荷が放電され、選択回路120の入力電圧VC2は急激に低下する。もし断線していなければ電池セルBC2から電流が供給されるので、入力回路116の入力電圧VC2はほとんど低下しない。
先の図23や図24で説明した電池セルBC2の端子電圧の計測ステージで電池セルBC2の端子電圧が計測される(計測1)。先に説明の如くこの測定期間はバランシングスイッチ129Bを開状態とする。検出用ハーネス32のうちハーネスL2とL3との回路間に存在するコンデンサC2を含む静電容量に電荷が流れ込み蓄積されるので、入力回路116の入力電圧VC2は少し上昇するが、それでも上記計測1で計測された電圧VC2は正常電圧に比べれば非常に低い電圧である。測定された電圧VC2は、図5に示す現在値記憶回路274のBC2に保持される。
上記の状況下では、測定に引き続き行われる電池セルBC2の診断において、現在値記憶回路274から読み出された測定値が基準値記憶回路278の過放電閾値OD以下の異常値であることから、デジタル比較器270で異常の診断が可能となる。異常の診断結果はフラグ記憶回路284のレジスタMFflagにセットされる。断線時の電圧VC2は過放電閾値ODより低くなるので、過放電閾値ODよりさらに低い断線閾値を設け、断線閾値と現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持された計測値とをデジタル比較器270で比較することで断線判断が簡単に可能となる。図5で基準値記憶回路278のレジスタOCFFOの値を前記断線閾値の値とすることで、常時断線検知が可能となる。
図28において、バランシングスイッチ129Bを開状態とした後、バランシングスイッチ129Aと129Cとを閉じると、コンデンサC2には電池セルBC1とBC2の直列接続の電圧が加わることとなり、コンデンサC2の端子電圧は非常に高くなる。このため計測1の後直ちにバランシングスイッチ129Aと129Cとを閉じ、電池セルBC2に対して再度測定を行う(計測2)と、今度は電圧VC2は、過充電閾値をはるかに超えた非常に高い値となっているので、簡単に断線検知が可能となる。
上述のとおり、図5に記載の現在値記憶回路274のレジスタCELL2に上記計測2の測定結果が保持される。現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持された計測値をデジタル比較器270で断線検知のための閾値と比較して、断線の検知を行っても良いし、バッテリコントローラ20のソフトウエアの処理に基づき断線診断を行っても良い。
図29はバッテリコントローラ20からの通信コマンド292により診断を行う方法である。先に説明のとおり、検出用ハーネス32のうちハーネスL2が断線したとする。予め定められたタイミングで断線診断のための通信コマンド292を送信する。この通信コマンド292は診断対象の集積回路を特定すると共に「バランシングスイッチ129を全て開にせよ」の命令である。すなわち通信コマンド292のデータ330は開を意味する「ゼロ」となっている。この命令を受けると、この命令の対象集積回路はバランシングスイッチ129を開にする。
次に、予め決められたタイミングで診断対象の検出用ハーネス32が接続されている電池セルを放電するため、バランシングスイッチ129Bに閉命令を送りバランシングスイッチ129Bを閉じる。ハーネスL2が断線していた場合、マルチプレクサ120への入力信号VC2はほとんどゼロとなる。その後、集積回路のステージ信号に基づく電池セルBC2の測定ステージにおいて、バッテリコントローラ20からの命令が出力される前に、バランシングスイッチ129Bが開状態となり、電池セルBC2の端子電圧を計測するための計測が行われる。ハーネスL2が断線していた場合、マルチプレクサ120への入力信号VC2は非常に低い電圧であり、この低い電圧が図5の現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持される。
集積回路は独自に短い周期で電池セル端子の計測を行っているので、バランシングスイッチ129Bが再び開状態となり、電池セルBC2の端子電圧を計測するための計測が行われる。ハーネスL2が断線していた場合、計測結果は非常に低い値であり、この値が現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持される。
バッテリコントローラ20から診断結果を取り込む命令を受けると、集積回路は現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持されている計測結果を送信する。この計測結果を受信し、過放電状態よりさらに低い計測結果に基づき、バッテリコントローラ20は断線の検知を行うことができる。すなわち集積回路から送られてきた計測結果を図29に記載の閾値ThL1と比較し、この閾値ThL1より測定結果が下であれば断線と判断し、リチウム電池を使用した直流電源とインバータとの接続を切り離す準備を開始し、準備が出来次第リレーRLPやRLNを開にする。
さらに正確を期すため、バッテリコントローラ20はバランシングスイッチ129Aと129Cを閉じ、バランシングスイッチ129Bを開く命令を送信する。もし断線している場合、診断する電池セルの両隣のバランシングスイッチ129を閉じると選択回路120への入力電圧VC2が非常に大きくなるので、過充電閾値より大きな電圧が測定されることとなる。この計測結果が現在値記憶回路274のレジスタCELL2に保持される。
バッテリコントローラ20から計測結果の取り込み命令を受信すると、集積回路は計測値をバッテリコントローラ20に送信する。バッテリコントローラ20は計測結果を受信し、過充電の閾値より高い断線検知用の閾値ThL2と比較し、計測結果が前記閾値ThL2より大きい場合に断線と判断する。計測1または計測2の結果と閾値ThL1との比較、あるいは計測1と計測2の平均値と閾値ThL1との比較でも正確に断線検知が可能であるが、さらに閾値ThL1と比較することにより、非常に高い精度で断線の検知を行うことができる。しかも、通常の電池セルの端子電圧の計測動作を利用して行うことができ、容易である。また、特別な回路を多く増やすことがなく、既に有している充電状態SOCを制御するためのバランシングスイッチ129を利用して診断することができ、簡単である。
次に各集積回路内で自動的に断線を診断する方法を図30乃至図32を用いて説明する。図4に記載のステージ信号に基づいて電池セルの単位電圧の計測と断線診断を行うことにより、自動的に断線の診断を実施することができる。図30に具体的な計測および診断のスケジュールを示し、図32に具体的な回路を示す。
図30の上段は、ステージ信号のm回目およびm+1回目の周期の集積回路3Aの計測と断線診断を示し、中断は集積回路3Aの次の集積回路3Bの計測と断線診断を示し、下段は集積回路3Bのさらに次の集積回路3Cの計測と断線診断を示す。集積回路3Bは集積回路3Aから同期信号を受けて、また集積回路3Cは集積回路3Bから同期信号を受けて、それぞれ図4に示すステージの処理が開始される。なお、図30において、表示「ON」はバランシングスイッチ129を閉じる制御を行っている期間を意味し、「OFF」はバランシングスイッチ129を開く制御を行っている期間を意味する。「計測」は電池セルの端子電圧の計測と断線診断の制御を行っている期間を意味する。「ON」や「OFF」や「計測」の記載の無い部分は充電状態SOCを行っている期間である。
集積回路3AのステージSTGCalでバランシングスイッチ129Aを閉じる。もし検出用ハーネス32に断線があれば、バランシングスイッチ129Aを閉じることで、図28で説明のとおり、選択回路120の入力電圧は非常に小さくなるので、ステージSTGCV1で計測される電池セルBC1の端子電圧は異常に小さい値として図31のアナログデジタル変換器122Aで検出される。したがって、現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持される計測値が非常に小さい値となる。なお、ステージSTGCV1での計測精度を上げるため、バランシングスイッチ129Bも開状態に制御される。
計測に引き続き行われる断線診断において、現在値記憶回路274のレジスタCELL1に保持された計測値と基準値記憶回路278に保持された断線診断の閾値ThL1とがデジタル比較器270で比較される。もしレジスタCELL1に保持された計測値が断線診断の閾値ThL1より小さければ、断線を理由とする異常が発生したとしてフラグ記憶回路284の診断フラグが「1」となる。この診断フラグのセットは、直ちにバッテリコントローラ20に伝送されることは既に図6で説明のとおりである。なお、図31の基本動作は既に図5などで説明したとおりである。
断線などの異常が無ければ、ステージSTGCV1で計測される電池セルBC1の端子電圧は正常な値を示し、デジタル比較器270の診断でも異常検出は行われない。図30のm周期では、奇数番目の電池セルのみの端子電圧の計測および診断が行われる。電池セルBC1の次に電池セルBC3の端子電圧の計測と断線診断が行われる。ステージSTGCV2において、電池セルBC3のバランシングスイッチ129Cを一度閉じ、次にステージSTGCV3でバランシングスイッチ129Cを開にして電池セルBC3の端子電圧の計測を行う。さらに図31のデジタル比較器270で上記説明と同様に断線診断を行う。ステージSTGCV3における電池セルBC3の端子電圧の検出精度や診断精度を高めるため、バランシングスイッチ129Cの両隣のバランシングスイッチ129Bと129Dは図30に示すとおり、開状態に維持する。
同様にステージSTGCV5において、電池セルBC3の端子電圧の計測と診断を行うためバランシングスイッチ129Dや129Fを開状態に保持する。上記計測および診断は、奇数番目の電池セルBC1、BC3、BC5について行われる。同様に電池セルBC2、BC4、BC6の計測や診断はつぎのm+1の周期で行われる。このように図30では奇数番目の電池セルと偶数番目の電池セルで、計測と診断はそれぞれステージ周期の異なる周期で行うようにしている。
集積回路3BのステージSTGCV1での電池セルBC1に関する計測と診断では、一つ前の集積回路3Aのバランシングスイッチ129Fが開状態に保たれることが必要である。このため集積回路3Aから同期信号を集積回路3Bに送り、集積回路3Bは集積回路3Aの同期信号に同期してステージを発生する。この実施形態では、集積回路3Aからの同期信号を受けて最初のステージ信号STGCalの発生を開始している。
このように隣接する集積回路において、一方の集積回路の所定周期で他方の集積回路に同期信号を送り、この同期信号を受けて他方の集積回路は決まったステージ信号をスタートさせるようにしているので、一方の集積回路の他方側の電池セルすなわち集積回路3Aの電池セルBC6の計測の期間は、他方の集積回路3Bの電池セルBC1のバランシングスイッチ129Aは開に保持される。また他方の集積回路3Bの電池セルBC1の計測期間は、一方の集積回路3Aの他方側の電池セルBC6のバランシングスイッチ129Fを開に保持する。
図30において、集積回路3Bと3Cについても上記と同様であり、集積回路3Bの特定のステージで同期信号が集積回路3Bから集積回路3Cに送られる。このようにすることで計測される電池セルと直列接続されている両隣の電池セルのバランシングスイッチ129を開に維持し、正確な計測と正確な診断を実現している。
図32に示す回路には、図1の回路に同期信号を送るための伝送路56が設けられている。その他の回路と動作は既に図1で説明のとおりである。図38に示すように、集積回路3Aの同期信号出力端SYNOから集積回路3Bの同期信号入力端SYNIに同期信号が送信される。同様に・・・集積回路3M−1の同期信号出力端SYNOから集積回路3Mの同期信号入力端SYNIに同期信号が送信され、・・・集積回路3N−1の同期信号出力端SYNOから集積回路3Nの同期信号入力端SYNIに同期信号が送信される。
上記図30や図32では電位の高い集積回路から隣接する電位の低い集積回路に同期信号を送信したが、これは一例であり、電位の低い集積回路から電位の高い集積回路へ同期信号を送信するようにしても問題ない。重要なことは隣接する集積回路内のステージ信号を、互いに同期して発生することである。
以上の様にバランシングスイッチ129を利用して断線診断を簡単に行うことが可能である。
以上説明したように、本実施の形態では、集積回路内の異常、すなわち、集積回路内のマルチプレクサ120、差動増幅器262、AD変換器122A、デジタル比較回路270などの診断や断線診断等を行うことにより、セルコントローラ80における集積回路の信頼性の向上を図ることができ、それにより、電池システムの信頼性をより高めることができる。
また、特許文献1に記載した従来の電池システムでは、電池セルの過充電や過放電を診断するようにしているので、その結果に基づいて電池セルの状態を適切に保つことができる。しかし、過充電や過放電を診断する際に計測される端子電圧の信頼性が低いと、すなわち端子電圧計測系に異常が発生した場合には、過充電や過放電の診断そのものの信頼性が低下し、判断を誤るおそれがある。しかし、本実施の形態の電池システムでは、端子電圧を選択するマルチプレクサ120の選択動作を集積回路が自己診断しているので、計測動作そのものの診断を行うことができ、正常に計測された計測値に基づく過充電診断や過放電の診断を行うことができる。
さらに、端子電圧の計測と同期してマルチプレクサ120等の動作診断を行うことで、計測時におけるマルチプレクサ120の誤動作を確実に捉えることができ、電池システムの信頼性がより高まる。
また、異常診断結果を伝送路54で集積回路からバッテリコントローラ20に送信することで、集積回路の異常に対して、素早く的確に対処することが可能となる。特に、計測値を伝送する伝送路52と別に異常信号送信用の伝送路54を設けて、常時、異常・正常を示す信号をバッテリコントローラ20に送信することで、常に、集積回路の状態をかんしすることができ、集積回路の異常に対する対応をより素早く行うことができる。
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。