JP3760162B2 - インクジェットプリンタの用紙搬送装置およびインクジェットプリンタ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は，インクジェットプリンタに関し，特に，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に，インクジェットプリンタは，印刷用紙を印刷領域に搬送し，インクカートリッジが搭載されている印刷ヘッドで印刷用紙上にインクを噴射して文字やイメージを印刷した後，この印刷された印刷用紙をプリンタ本体の外に排出する。
【０００３】
上記のような一般のインクジェットプリンタは，給紙カセット，ピックアップローラ，駆動ローラ，送りローラ，排紙ローラ，及び印刷ヘッドを備える。
【０００４】
給紙カセットは，多数枚の印刷用紙を積載し，ピックアップローラは，給紙カセットに積載されている印刷用紙の最上部の印刷用紙の上面を押圧しながら回転できるように設けられる。駆動ローラは，給紙カセットの先端部と送りローラをつなぐ用紙経路の中間部に設けられ，ピックアップローラでピックアップした印刷用紙を送りローラまで搬送する。
【０００５】
送りローラは，印刷ヘッドの前方に印刷ヘッドのガイドロッドに並んで設けられ，駆動ローラから搬送される印刷用紙の先端がガイドロッドに平行して供給されるように用紙整列を行い，整列された印刷用紙を一定の幅をもって印刷ヘッドの下方に供給する。
【０００６】
印刷ヘッドは，送りローラに並ぶガイドロッドに沿って左右に移動しながらノズルからインクを噴射し，印刷用紙に文字やイメージ等を印刷する。
【０００７】
排紙ローラは，印刷ヘッドの後方に送りローラに並んで設けられ，印刷ヘッドを通って印刷が完了した印刷用紙を外部に排出する。
【０００８】
次に，上記のような構成を有するインクジェットプリンタの動作について，説明する。
【０００９】
ピックアップローラが回転すると，給紙カセットに積載されている印刷用紙の最上部にある１枚の印刷用紙がピックアップされて駆動ローラに搬送される。この駆動ローラは，ピックアップローラでピックアップした印刷用紙を送りローラまで搬送し，この送りローラは，駆動ローラから搬送された印刷用紙がガイドロッドに平行して供給できるように印刷用紙を整列する。この際，印刷用紙を整列する方法としては，送りローラが逆回転して印刷用紙を一定の距離駆動ローラ側に逆搬送した後，再び正回転することにより印刷用紙を整列する方法が従来では，用いられている。
【００１０】
このような方法で印刷用紙の整列を行うためには，送りローラは，逆回転する必要がある。しかし，駆動ローラや排紙ローラは，一方向回転のみをすればよい。従って，送りローラの駆動源と駆動ローラの駆動源を別に設けて使用するか，駆動ローラにクラッチを設けて必要に応じて駆動ローラに伝達される動力を断続することにより送りローラが正・逆回転できるようにすることが一般的である。この際，排紙ローラは，送りローラの駆動源により連動して駆動するように設けられることが一般的である。
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら，クラッチを用いて駆動ローラを断続するインクジェットプリンタは，以下のような問題点がある。
【００１２】
第一に，送りローラが印刷用紙の整列を行う間は，駆動ローラがピックアップされた印刷用紙を送りローラに搬送できないという問題点がある。なぜならば，送りローラが整列動作を行う間は逆回転するので，駆動ローラが休止しているためである。
【００１３】
第二に，印刷済みの印刷用紙を外部に排出する場合，印刷用紙の端部が完全に排紙ローラを離れる前は，送りローラが駆動ローラから搬送された印刷用紙の整列を行うことができないという問題点がある。なぜならば，逆回転すると排紙ローラも逆回転し，排紙されていた印刷用紙が送りローラに逆戻りするためである。
【００１４】
第三に，連続給紙ができないという問題点がある。連続給紙のためには，ピックアップローラでピックアップした印刷用紙の端部が駆動ローラを通ると途端にピックアップローラが再び積載されている印刷用紙から一枚をピックアップして駆動ローラに挟み込ませる必要がある。しかし，印刷用紙の端部が駆動ローラを通り，印刷用紙の先端が送りローラに挟み込まれると，送りローラが逆回転して印刷用紙を整列するため，この間は，駆動ローラが休止状態にあるようになる。従って，印刷用紙の連続休止が行われない。即ち，クラッチを使用して伝動を断続するインクジェットプリンタは，分当たりの印刷速度が遅いという問題点がある。
【００１５】
また，駆動ローラを別の駆動源で駆動する場合は，上記の第一と第三の問題は生じない。しかし，この場合でも上記の第二の問題による印刷速度が遅いという問題点は，依然として存在し，しかも，製造コストが高くなるということと駆動源を設置するスペースが更に必要になるという別の問題がある。
【００１６】
本発明は，従来のインクジェットプリンタの用紙搬送装置が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり，本発明の目的は，送りローラの回転方向が変わっても駆動ローラと排紙ローラの継続する一方向回転を可能にすることにより，印刷速度を向上することが可能な，新規かつ改良されたインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することである。
【００１７】
本発明の他の目的は，別の駆動源を使用することなく上記のような目的を達成することにより，製造コストが低く，且つ印刷速度の速い，新規かつ改良されたインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することである。
【００１８】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために，本発明の第１の観点によれば，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置であって，ピックアップした印刷用紙を印刷領域に搬送する駆動ローラの軸に同軸結合された駆動歯車と，駆動ローラから搬送された印刷用紙を整列する送りローラの軸に同軸結合された送り歯車と，印刷領域を通った印刷用紙を排出する排紙ローラの軸に同軸結合された排紙歯車と，送りローラの軸に回転力を供給するモーターと，及び送りローラの軸の回転力を駆動歯車と排紙歯車に伝達する伝動ユニットと，を備え，駆動歯車および排紙歯車が，送り歯車の回転方向に関わらず一定の方向に回転することを特徴とする，インクジェットプリンタの用紙搬送装置が提供される。
【００１９】
このとき，駆動ローラと排紙ローラは，モーターの回転方向が変わっても常時一方向回転を行うこととしてもよい。
【００２０】
また，伝動ユニットは，送り歯車と駆動歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチ及び駆動歯車と排紙歯車とを連結する回転力伝達機構を備え，送り歯車の回転方向が変わっても，駆動歯車の回転方向がスイング歯車クラッチにより印刷用紙を印刷領域に搬送する方向に一定に保持され，排紙歯車も駆動歯車と同一方向に回転することとしてもよい。
【００２１】
ここで，スイング歯車クラッチは，送り歯車と噛み合うスイング歯車と，スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと，第１のアームに設けられ，送り歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列，及び第２のアームに設けられ，送り歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と，を備え，送り歯車の回転方向に追従してスイングアームがスイング歯車の軸を中心にして旋回し，第１のスイング歯車列か第２のスイング歯車列が選択的に駆動歯車に連結されることを特徴とする。伝動ユニットは，駆動歯車から排紙歯車に回転力を伝達する回転力伝達機構を含み得ることとしてもよい。
【００２２】
上記の実施の形態では，伝動ユニットが送り歯車と駆動歯車との間に設けられるスイング歯車を含むことについて説明しているが，他の例としてスイング歯車が送り歯車と排紙歯車との間に設けられ得ることは当該分野における当業者にとっては明らかである。
【００２３】
また，このとき，第１のスイング歯車列は，１つの歯車から構成し，第２のスイング歯車列は，２つの歯車から構成することが好ましい。さらに，回転伝達機構は，駆動歯車に同軸結合された第１のプーリと，排紙歯車に同軸結合された第２のプーリ，及び第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと，を備えることを特徴とし，これら第１及び第２のプーリは，タイミングプーリであることが好ましい。
【００２４】
また，伝動ユニットは，駆動歯車と噛み合う第１の中間歯車と，送り歯車と第１の中間歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと，排紙歯車と噛み合う第２の中間歯車，及び第１の中間歯車の回転力を第２の中間歯車に伝達する回転力伝達機構と，を備えて構成することとしてもよい。
【００２５】
また，上記課題を解決するために，本発明の第２の観点によれば，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置であって，モーターと，モーターにより回転する第１の歯車と，第２の歯車と，第３の歯車と，第１の歯車と第２の歯車との間に設けられ，第１の歯車の回転方向が変わっても第２の歯車が一定の方向に回転するようにするスイング歯車クラッチと，及び第２の歯車の回転力を第３の歯車に伝達する回転力伝達機構と，を備えることを特徴とする，インクジェットプリンタの用紙搬送装置が提供される。
【００２６】
このとき，スイング歯車クラッチは，第１の歯車と噛み合うスイング歯車と，スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと，第１のアームに設けられ，第１の歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列，及び第２のアームに設けられ，第２の歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と，を備え，第１の歯車の回転方向に追従してスイングアームがスイング歯車の軸を中心にして旋回し，第１のスイング歯車列か第２のスイング歯車列が選択的に第２の歯車に連結されることとしてもよい。
【００２７】
また，回転力伝達機構は，第２の歯車に同軸結合された第１のプーリと，第３の歯車に同軸結合された第２のプーリ，及び第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと，を備えることを特徴とし，第１のプーリ及び第２のプーリは，タイミングプーリであることが好ましい。
【００２８】
さらに，上記課題を解決するために，本発明の第３の観点によれば，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置であって，モーターと，モーターにより回転する第１の歯車と，第２の歯車と，第２の歯車と噛み合う第１の中間歯車と，第３の歯車と，第３の歯車と噛み合う第２の中間歯車と，第１の歯車と第１の中間歯車との間に設けられ，第１の歯車の回転方向が変わっても第１の中間歯車が一定の方向に回転するようにするスイング歯車クラッチと，及び第１の中間歯車の回転力を第２の中間歯車に伝達する回転力伝達機構と，を備えることを特徴とする，インクジェットプリンタの用紙搬送装置が提供される。
【００２９】
なお，スイング歯車クラッチは，第１の歯車の回転方向に追従してスイングアームがスイング歯車の軸を中心にして旋回し，第１のスイング歯車列か第２のスイング歯車列が選択的に第１の中間歯車に連結されることとしてもよい。また，回転力伝達機構は，第１の中間歯車に同軸結合された第１のプーリと，第２の中間歯車に同軸結合された第２のプーリ，及び第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと，を備えることとしてもよい。
【００３０】
また，上記課題を解決するために，本発明の第４の観点によれば，多数枚の印刷用紙が積載される給紙カセットと，この給紙カセットの上側に設けられ，印刷用紙をピックアップするピックアップローラと，このピックアップローラから搬送された印刷用紙を印刷領域に搬送する駆動ローラと，この駆動ローラから搬送された印刷用紙を整列する送りローラと，印刷領域を通った印刷用紙を排出する排紙ローラと，駆動ローラの軸に同軸結合された駆動歯車と，送りローラの軸に同軸結合された送り歯車と，排紙ローラの軸に同軸結合された排紙歯車と，送りローラの軸に回転力を供給するモーターと，駆動歯車と噛み合う第１の中間歯車と，送り歯車の回転方向が変わっても駆動歯車が印刷用紙を印刷領域に搬送する方向に一定に回転するようにし，送り歯車と第１の中間歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと，排紙歯車と噛み合う第２の中間歯車と，及び排紙ローラが駆動ローラと同一方向に回転するように第１の中間歯車と第２の中間歯車とを連結する回転力伝達機構と，を備えることを特徴とする，インクジェットプリンタが提供される。
【００３１】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照しながら，本発明にかかる装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお，本明細書及び図面において，実質的に同一の機能構成を有する構成要素については，同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【００３２】
図１は，一般的なインクジェットプリンタの構成を示す図である。図１に示すように，インクジェットプリンタは，給紙カセット１０，ピックアップローラ２０，駆動ローラ３０，送りローラ４０，排紙ローラ５０，及び印刷ヘッド９０等を備える。
【００３３】
給紙カセット１０は，多数枚の印刷用紙１を積載し，ピックアップローラ２０は，給紙カセット１０に積載されている印刷用紙１のうち，最上部の印刷用紙の上面を押圧しながら回転できるように設けられる。駆動ローラ３０は，給紙カセット１０の先端部と送りローラ４０をつなぐ用紙経路２５の中間部に設けられ，ピックアップローラ２０でピックアップした印刷用紙を送りローラ４０まで搬送する。
【００３４】
送りローラ４０は，印刷ヘッド９０の前方に印刷ヘッドのガイドロッド９１に並んで設けられ，駆動ローラ３０から搬送される印刷用紙の先端がガイドロッド９１に平行して供給されるように用紙整列を行い，整列された印刷用紙を一定の幅をもって印刷ヘッド９１の下方に供給する。
【００３５】
印刷ヘッド９０は，送りローラ４０に並ぶガイドロッド９１に沿って左右に移動しながらノズルからインクを噴射し，印刷用紙に文字やイメージ等を印刷する。
【００３６】
排紙ローラ５０は，印刷ヘッド９０の後方に送りローラ４０に並んで設けられ，印刷ヘッド９０の下を通って印刷が完了した印刷用紙をインクジェットプリンタの外部に排出する。
【００３７】
次に上記のような構造を有するインクジェットプリンタの用紙搬送装置の第１の実施の形態の構成について，図面を用いて説明する。図２は，本実施形態の用紙搬送装置の斜視図であり，図３は，図２に示された用紙搬送部の各部品間の連結関係を示す部分斜視図である。
【００３８】
図２および図３に示すように，用紙搬送装置は，駆動歯車３１と，送り歯車４１と，排紙歯車５１と，伝動ユニット７０とを備える。
【００３９】
駆動歯車３１は，駆動ローラの軸３３に同軸結合され，排紙歯車５１は，排紙ローラの軸５３に同軸結合される。送り歯車４１は，駆動源のモーター５から動力を伝達される送りローラ４０の軸に同軸結合される。
【００４０】
伝動ユニット７０は，駆動歯車３１と噛み合う第１の中間歯車６８と，送り歯車４１と第１の中間歯車６８との間に設けられるスイング歯車クラッチ６０と，排紙歯車５１と噛み合う第２の中間歯車６９と，及び第１の中間歯車６８と第２の中間歯車６９とを連結する回転力伝達機構とを備える。
【００４１】
スイング歯車クラッチ６０は，スイング歯車６１とスイングアーム６３とを備える。スイング歯車６１は，送り歯車４１と噛み合うように設けられる。スイングアーム６３は，Ｌ字状に成形された２つのアーム，即ち第１のアーム及び第２のアームを有している。スイングアーム６３の第１のアームには，第１のスイング歯車列６５が設けられ，第２のアームには，第２のスイング歯車列６７が設けられている。また，スイングアーム６３は，スイング歯車６１の回転方向に応じて第１のスイング歯車列６５か第２のスイング歯車列６７が選択的に第１の中間歯車６８に連結できるようにスイング歯車の軸６２に設けられている。従って，送り歯車４１の回転方向に追従してスイング歯車６１が回転し，スイング歯車６１の回転方向にスイングアーム６３がスイング歯車の軸６２を中心に旋回して第１のスイング歯車列６５と第２のスイング歯車列６７のいずれかが第１の中間歯車６８に連結されることで動力が伝達できるようになる。
【００４２】
なお，第１のスイング歯車列６５は，送り歯車４１の回転方向と同一方向の回転力が伝達できるように奇数個の歯車からなる。また，第２のスイング歯車列６７は，送り歯車４１の回転方向と逆方向の回転力を伝達するように偶数個の歯車からなる。本実施の形態では，第１のスイング歯車列６５は，１つの歯車からなり，第２のスイング歯車列６７は，２つの歯車からなる。
【００４３】
また，回転力伝達機構は，第１の中間歯車６８の回転力をその方向を変化させることなくそのまま第２の中間歯車６９に伝達するように構成される。本実施の形態では，第１の中間歯車６８に同軸結合された第１のプーリ７２と，第２の中間歯車６９に同軸結合された第２のプーリ７６，及び第１のプーリ７２と第２のプーリ７６とを連結するベルト７９とを備える。なお，第１のプーリ７２及び第２のプーリ７６とベルト７９は，それぞれタイミングプーリとタイミングベルトを使用することが好ましい。
【００４４】
次に，上記のような構造を有する本実施の形態のインクジェットプリンタの用紙搬送装置の作用について図１〜図５を参照して説明する。
【００４５】
まず，ピックアップローラ２０で印刷用紙１をピックアップすると，モーター５により送りローラ４０が反時計回り方向に回転する。その結果，同軸結合された送り歯車４１も反時計回り方向に回転する。このように，送り歯車４１が反時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が時計回り方向に回転する。そうすると，スイング歯車６１と同軸上に設けられているスイングアーム６３も時計回り方向に旋回し，第１のスイング歯車列６５が第１の中間歯車６８に連結される。
【００４６】
この時，第１のスイング歯車列６５は，１つの歯車からなっているため，第１の中間歯車６８がスイング歯車６１と同様に時計回り方向に回転する。第１の中間歯車６８が時計回り方向に回転すると，この第１の中間歯車６８と噛み合っている駆動歯車３１が反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラから搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。
【００４７】
駆動ローラ３０により印刷用紙の先端が送りローラ４０に挟み込まれると，印刷用紙を整列するために送りローラ４０が逆回転し始める。送りローラ４０が逆回転すると，送りローラ４０の軸に同軸結合された送り歯車４１が時計回り方向に回転する。送り歯車４１が時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が反時計回り方向に回転する。スイング歯車６１が反時計回り方向に回転すると，スイングアーム６３が反時計回り方向に旋回して第２のスイング歯車列６７が第１の中間歯車６８に連結される。
【００４８】
この時，第２のスイング歯車列６７は，２つの歯車からなっているため，第１の中間歯車６８が，スイング歯車６１とは逆に時計回り方向に回転する。第１の中間歯車６８が時計回り方向に回転すると，この第１の中間歯車６８と噛み合っている駆動歯車３１が反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラから搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。即ち，送りローラ４０の回転方向が変わっても，駆動ローラ３０が継続して印刷用紙を送りローラ４０側に供給するようになる。従って，送りローラ４０が印刷用紙を整列する場合でも，ピックアップローラによる印刷用紙のピックアップを継続して行うことができるため，印刷用紙の連続する給紙が可能になる。
【００４９】
上記の送りローラ４０は，所定の回数時計回り方向に回転した後，再び反時計回り方向に回転することで，印刷用紙を印刷ヘッド９０の下方に搬送する。
【００５０】
送りローラ４０を通った印刷用紙１は，排紙ローラ５０側に搬送される。この時の排紙ローラ５０の回転方向は，以下の通りである。排紙ローラの軸５３には，排紙歯車５１が同軸結合されており，排紙歯車５１は，第２の中間歯車６９と噛み合っている。また，第２の中間歯車６９は，第１の中間歯車６８とタイミングベルト７９及びプーリ７２，７６で連結されている。従って，排紙歯車５１は，第１の中間歯車６８とは逆方向に回転するようになる。即ち，排紙歯車５１は，第１の中間歯車６８と噛み合っている駆動歯車３１と同一方向に回転するようになる。
【００５１】
ところで，前述したように，駆動歯車３１が送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転するため，排紙歯車５１も送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転する。即ち，排紙歯車５１に同軸結合された排紙ローラ５０は，送りローラ４０の回転方向に関わらず反時計回り方向に回転する。
【００５２】
従って，排紙ローラ５０により印刷済みの印刷用紙の排紙が完了する前に，送りローラ４０が印刷用紙を整列するために逆回転する場合でも，排紙ローラ５０は，反時計回り方向に回転し続けるため，印刷用紙の排出が持続的に行われる。
【００５３】
以上では，スイング歯車クラッチ６０が送り歯車４１と第１の中間歯車６８との間に設けられた場合について説明したが。スイング歯車クラッチ６０を，送り歯車４１と第２の中間歯車６９との間に設けることも可能であり，その伝動過程は，上述したそれと同一であるため，その詳細な説明を省く。
【００５４】
次に，本発明によるインクジェットプリンタの用紙搬送装置の第２の実施の形態について図面を参照して説明する。図６は，本発明によるインクジェットプリンタの用紙搬送装置の第２の実施の形態の構成を説明するための部分斜視図である。本実施の形態では，上述した第１の実施の形態と２つの中間歯車がないという点で相違している。
【００５５】
図６に示すように，本実施の形態の用紙搬送装置は，駆動歯車３１と，送り歯車４１と，排紙歯車５１と，伝動ユニット８０とを備える。
【００５６】
駆動歯車３１は，駆動ローラの軸３３に同軸結合され，排紙歯車５１は，排紙ローラの軸５３に同軸結合される。送り歯車４１は，駆動源のモーター５（図２参照）から動力を伝達される送りローラ４０の軸に同軸結合される。
【００５７】
伝動ユニット８０は，送り歯車４１と駆動歯車３１との間に設けられるスイング歯車クラッチ６０’と，駆動歯車３１と排紙歯車５１とを連結する回転力伝達機構とを備える。
【００５８】
スイング歯車クラッチ６０’は，スイング歯車６１とスイングアーム６３’とを備える。このスイング歯車６１は，送り歯車４１と噛み合うように設けられる。また，スイングアーム６３’は，駆動歯車３１を取り囲む形状に成形された２つのアーム，即ち第１のアーム及び第２のアームを有している。スイングアーム６３’の第１のアームには，第１のスイング歯車列６５’が設けられ，第２のアームには，第２のスイング歯車列６７’が設けられている。
【００５９】
また，スイングアーム６３’は，スイング歯車６１の回転方向に応じて，第１のスイング歯車列６５’または第２のスイング歯車列６７’が選択的に駆動歯車３１に連結できるようにスイング歯車の軸６２に設けられている。従って，送り歯車４１の回転方向に追従してスイング歯車６１が回転し，スイング歯車６１の回転方向にスイングアーム６３’がスイング歯車の軸６２を中心に旋回して第１のスイング歯車列６５’と第２のスイング歯車列６７’のいずれかが駆動歯車３１に連結されることで動力が伝達できるようになる。
【００６０】
なお，第１のスイング歯車列６５’は，送り歯車４１の回転方向と同一方向の回転力が伝達できるように偶数個の歯車からなる。また，第２のスイング歯車列６７’は，送り歯車４１の回転方向と逆方向の回転力を伝達するように奇数個の歯車からなる。本実施の形態では，第１のスイング歯車列６５’は，２つの歯車からなり，第２のスイング歯車列６７’は，３つの歯車からなる。
【００６１】
また，回転力伝達機構は，駆動歯車３１の回転力をその方向を変化させることなく，そのまま伝達するように構成される。本実施の形態では，回転力伝達機構となる伝動ユニット８０は，駆動歯車３１に同軸結合されたプーリ７３と，排紙歯車５１に同軸結合されたプーリ７７と，及び両プーリ７３，７７を連結するベルト７９とを備える。なお，これらの両プーリ７３，７７とベルト７９は，それぞれタイミングプーリとタイミングベルトを使用することが好ましい。
【００６２】
次に，上記のような構造を有する本実施の形態のインクジェットプリンタの用紙搬送装置の作用について図６を参照して説明する。
【００６３】
まず，ピックアップローラ２０（図１参照）で印刷用紙１をピックアップすると，モーターにより送りローラ４０が反時計回り方向に回転する。送りローラ４０が反時計回り方向に回転すると，同軸結合された送り歯車４１も反時計回り方向に回転する。送り歯車４１が反時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が時計回り方向に回転する。そうすると，スイング歯車６１と同軸上に設けられているスイングアーム６３’も時計回り方向に旋回し，第１のスイング歯車列６５’が駆動歯車３１に連結される。
【００６４】
この時，第１のスイング歯車列６５’は，偶数個の歯車からなっているため，駆動歯車３１がスイング歯車６１とは逆に反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラ２０から搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。
【００６５】
駆動ローラ３０により印刷用紙の先端が送りローラ４０に挟み込まれると，印刷用紙を整列するために送りローラ４０が逆回転し始める。送りローラ４０が逆回転すると，送りローラ４０の軸に同軸結合された送り歯車４１が時計回り方向に回転する。送り歯車４１が時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が反時計回り方向に回転する。スイング歯車６１が反時計回り方向に回転すると，スイングアーム６３’が反時計回り方向に旋回して第２のスイング歯車列６７’が駆動歯車３１に連結される。
【００６６】
この時，第２のスイング歯車列６７’は，奇数の歯車からなっているため，駆動歯車３１が，スイング歯車６１と同一に反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラ２０から搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。即ち，送りローラ４０の回転方向が変わっても駆動ローラ３０が継続して印刷用紙を送りローラ４０側に供給するようになる。
【００６７】
送りローラ４０は，所定の回数時計回り方向に回転した後，再び反時計回り方向に回転することで，印刷用紙を印刷ヘッド９０（図１参照）の下方に搬送する。
【００６８】
送りローラ４０を通った印刷用紙は，排紙ローラ５０側に搬送される。この時の排紙ローラ５０の回転方向は，以下の通りである。排紙ローラの軸５３には，排紙歯車５１が同軸結合されており，排紙歯車５１は，駆動歯車３１とタイミングベルト７９及びプーリ７３，７７で連結されている。従って，排紙歯車５１は，駆動歯車３１と同一方向に回転するようになる。
【００６９】
ところで，前述したように，駆動歯車３１が送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転するため，排紙歯車５１も送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転する。即ち，排紙歯車５１に同軸結合された排紙ローラ５０は，送りローラ４０の回転方向に関わらず，反時計回り方向に回転する。
【００７０】
従って，排紙ローラ５０により印刷済みの印刷用紙の排紙が完了する前に，送りローラ４０が印刷用紙を整列するために逆回転する場合でも，排紙ローラ５０は，反時計回り方向に回転し続けるため，印刷用紙の排出が持続的に行われる。
【００７１】
以上では，スイング歯車クラッチが送り歯車と駆動歯車との間に設けられた場合について説明したが。スイング歯車クラッチを，送り歯車と排紙歯車との間に設けることも可能であり，その伝動過程は，上述した伝動過程と同一であるため，その詳細な説明を省く。
【００７２】
以上，添付図面を参照しながら本発明に係るインクジェットプリンタの用紙搬送装置の好適な実施形態について説明したが，本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば，特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり，それらについても当然に本発明の技術的思想に属するものと了解される。
【００７３】
【発明の効果】
以上で説明したように，本発明に係るインクジェットプリンタの用紙搬送装置によると，送りローラの回転方向が変わっても駆動ローラと排紙ローラは，印刷用紙を給紙する方向に一方向回転を継続するため，送りローラによる印刷用紙の整列時でも印刷用紙の給紙及び排紙を行うことができる。従って，印刷速度が向上したインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することができる。
【００７４】
また，別の駆動源を使用することなく上記のような目的を達成することにより，製造コストが低く，且つ印刷速度が向上したインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】一般的なインクジェットプリンタの構造を示す概念図である。
【図２】本発明に係る用紙搬送装置の第１の実施の形態がアプリケーションされたインクジェットプリンタの用紙搬送部の斜視図である。
【図３】図２の用紙搬送部の各部品間の連結関係を示す部分斜視図である。
【図４】図２の用紙搬送装置における送り歯車が時計回り方向に回転する場合の伝動関係を示す図である。
【図５】図２の用紙搬送装置における送り歯車が反時計回り方向に回転する場合の伝動関係を示す図である。
【図６】本発明に係る用紙搬送装置の第２の実施の形態を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
１ 印刷用紙
１０ 給紙カセット
２０ ピックアップローラ
３０ 駆動ローラ
３１ 駆動歯車
４０ 送りローラ
４１ 送り歯車
５０ 排紙ローラ
５１ 排紙歯車
６０ スイング歯車クラッチ
６１ スイング歯車
６３，６３’ スイングアーム
６５，６５’ 第１のスイング歯車列
６７，６７’ 第２のスイング歯車列
６８ 第１の中間歯車
６９ 第２の中間歯車
７０，８０ 伝動ユニット
７２，７３，７６，７７ プーリ
７９ ベルト
９０ 印刷ヘッド
【発明の属する技術分野】
本発明は，インクジェットプリンタに関し，特に，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に，インクジェットプリンタは，印刷用紙を印刷領域に搬送し，インクカートリッジが搭載されている印刷ヘッドで印刷用紙上にインクを噴射して文字やイメージを印刷した後，この印刷された印刷用紙をプリンタ本体の外に排出する。
【０００３】
上記のような一般のインクジェットプリンタは，給紙カセット，ピックアップローラ，駆動ローラ，送りローラ，排紙ローラ，及び印刷ヘッドを備える。
【０００４】
給紙カセットは，多数枚の印刷用紙を積載し，ピックアップローラは，給紙カセットに積載されている印刷用紙の最上部の印刷用紙の上面を押圧しながら回転できるように設けられる。駆動ローラは，給紙カセットの先端部と送りローラをつなぐ用紙経路の中間部に設けられ，ピックアップローラでピックアップした印刷用紙を送りローラまで搬送する。
【０００５】
送りローラは，印刷ヘッドの前方に印刷ヘッドのガイドロッドに並んで設けられ，駆動ローラから搬送される印刷用紙の先端がガイドロッドに平行して供給されるように用紙整列を行い，整列された印刷用紙を一定の幅をもって印刷ヘッドの下方に供給する。
【０００６】
印刷ヘッドは，送りローラに並ぶガイドロッドに沿って左右に移動しながらノズルからインクを噴射し，印刷用紙に文字やイメージ等を印刷する。
【０００７】
排紙ローラは，印刷ヘッドの後方に送りローラに並んで設けられ，印刷ヘッドを通って印刷が完了した印刷用紙を外部に排出する。
【０００８】
次に，上記のような構成を有するインクジェットプリンタの動作について，説明する。
【０００９】
ピックアップローラが回転すると，給紙カセットに積載されている印刷用紙の最上部にある１枚の印刷用紙がピックアップされて駆動ローラに搬送される。この駆動ローラは，ピックアップローラでピックアップした印刷用紙を送りローラまで搬送し，この送りローラは，駆動ローラから搬送された印刷用紙がガイドロッドに平行して供給できるように印刷用紙を整列する。この際，印刷用紙を整列する方法としては，送りローラが逆回転して印刷用紙を一定の距離駆動ローラ側に逆搬送した後，再び正回転することにより印刷用紙を整列する方法が従来では，用いられている。
【００１０】
このような方法で印刷用紙の整列を行うためには，送りローラは，逆回転する必要がある。しかし，駆動ローラや排紙ローラは，一方向回転のみをすればよい。従って，送りローラの駆動源と駆動ローラの駆動源を別に設けて使用するか，駆動ローラにクラッチを設けて必要に応じて駆動ローラに伝達される動力を断続することにより送りローラが正・逆回転できるようにすることが一般的である。この際，排紙ローラは，送りローラの駆動源により連動して駆動するように設けられることが一般的である。
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら，クラッチを用いて駆動ローラを断続するインクジェットプリンタは，以下のような問題点がある。
【００１２】
第一に，送りローラが印刷用紙の整列を行う間は，駆動ローラがピックアップされた印刷用紙を送りローラに搬送できないという問題点がある。なぜならば，送りローラが整列動作を行う間は逆回転するので，駆動ローラが休止しているためである。
【００１３】
第二に，印刷済みの印刷用紙を外部に排出する場合，印刷用紙の端部が完全に排紙ローラを離れる前は，送りローラが駆動ローラから搬送された印刷用紙の整列を行うことができないという問題点がある。なぜならば，逆回転すると排紙ローラも逆回転し，排紙されていた印刷用紙が送りローラに逆戻りするためである。
【００１４】
第三に，連続給紙ができないという問題点がある。連続給紙のためには，ピックアップローラでピックアップした印刷用紙の端部が駆動ローラを通ると途端にピックアップローラが再び積載されている印刷用紙から一枚をピックアップして駆動ローラに挟み込ませる必要がある。しかし，印刷用紙の端部が駆動ローラを通り，印刷用紙の先端が送りローラに挟み込まれると，送りローラが逆回転して印刷用紙を整列するため，この間は，駆動ローラが休止状態にあるようになる。従って，印刷用紙の連続休止が行われない。即ち，クラッチを使用して伝動を断続するインクジェットプリンタは，分当たりの印刷速度が遅いという問題点がある。
【００１５】
また，駆動ローラを別の駆動源で駆動する場合は，上記の第一と第三の問題は生じない。しかし，この場合でも上記の第二の問題による印刷速度が遅いという問題点は，依然として存在し，しかも，製造コストが高くなるということと駆動源を設置するスペースが更に必要になるという別の問題がある。
【００１６】
本発明は，従来のインクジェットプリンタの用紙搬送装置が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり，本発明の目的は，送りローラの回転方向が変わっても駆動ローラと排紙ローラの継続する一方向回転を可能にすることにより，印刷速度を向上することが可能な，新規かつ改良されたインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することである。
【００１７】
本発明の他の目的は，別の駆動源を使用することなく上記のような目的を達成することにより，製造コストが低く，且つ印刷速度の速い，新規かつ改良されたインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することである。
【００１８】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために，本発明の第１の観点によれば，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置であって，ピックアップした印刷用紙を印刷領域に搬送する駆動ローラの軸に同軸結合された駆動歯車と，駆動ローラから搬送された印刷用紙を整列する送りローラの軸に同軸結合された送り歯車と，印刷領域を通った印刷用紙を排出する排紙ローラの軸に同軸結合された排紙歯車と，送りローラの軸に回転力を供給するモーターと，及び送りローラの軸の回転力を駆動歯車と排紙歯車に伝達する伝動ユニットと，を備え，駆動歯車および排紙歯車が，送り歯車の回転方向に関わらず一定の方向に回転することを特徴とする，インクジェットプリンタの用紙搬送装置が提供される。
【００１９】
このとき，駆動ローラと排紙ローラは，モーターの回転方向が変わっても常時一方向回転を行うこととしてもよい。
【００２０】
また，伝動ユニットは，送り歯車と駆動歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチ及び駆動歯車と排紙歯車とを連結する回転力伝達機構を備え，送り歯車の回転方向が変わっても，駆動歯車の回転方向がスイング歯車クラッチにより印刷用紙を印刷領域に搬送する方向に一定に保持され，排紙歯車も駆動歯車と同一方向に回転することとしてもよい。
【００２１】
ここで，スイング歯車クラッチは，送り歯車と噛み合うスイング歯車と，スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと，第１のアームに設けられ，送り歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列，及び第２のアームに設けられ，送り歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と，を備え，送り歯車の回転方向に追従してスイングアームがスイング歯車の軸を中心にして旋回し，第１のスイング歯車列か第２のスイング歯車列が選択的に駆動歯車に連結されることを特徴とする。伝動ユニットは，駆動歯車から排紙歯車に回転力を伝達する回転力伝達機構を含み得ることとしてもよい。
【００２２】
上記の実施の形態では，伝動ユニットが送り歯車と駆動歯車との間に設けられるスイング歯車を含むことについて説明しているが，他の例としてスイング歯車が送り歯車と排紙歯車との間に設けられ得ることは当該分野における当業者にとっては明らかである。
【００２３】
また，このとき，第１のスイング歯車列は，１つの歯車から構成し，第２のスイング歯車列は，２つの歯車から構成することが好ましい。さらに，回転伝達機構は，駆動歯車に同軸結合された第１のプーリと，排紙歯車に同軸結合された第２のプーリ，及び第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと，を備えることを特徴とし，これら第１及び第２のプーリは，タイミングプーリであることが好ましい。
【００２４】
また，伝動ユニットは，駆動歯車と噛み合う第１の中間歯車と，送り歯車と第１の中間歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと，排紙歯車と噛み合う第２の中間歯車，及び第１の中間歯車の回転力を第２の中間歯車に伝達する回転力伝達機構と，を備えて構成することとしてもよい。
【００２５】
また，上記課題を解決するために，本発明の第２の観点によれば，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置であって，モーターと，モーターにより回転する第１の歯車と，第２の歯車と，第３の歯車と，第１の歯車と第２の歯車との間に設けられ，第１の歯車の回転方向が変わっても第２の歯車が一定の方向に回転するようにするスイング歯車クラッチと，及び第２の歯車の回転力を第３の歯車に伝達する回転力伝達機構と，を備えることを特徴とする，インクジェットプリンタの用紙搬送装置が提供される。
【００２６】
このとき，スイング歯車クラッチは，第１の歯車と噛み合うスイング歯車と，スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと，第１のアームに設けられ，第１の歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列，及び第２のアームに設けられ，第２の歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と，を備え，第１の歯車の回転方向に追従してスイングアームがスイング歯車の軸を中心にして旋回し，第１のスイング歯車列か第２のスイング歯車列が選択的に第２の歯車に連結されることとしてもよい。
【００２７】
また，回転力伝達機構は，第２の歯車に同軸結合された第１のプーリと，第３の歯車に同軸結合された第２のプーリ，及び第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと，を備えることを特徴とし，第１のプーリ及び第２のプーリは，タイミングプーリであることが好ましい。
【００２８】
さらに，上記課題を解決するために，本発明の第３の観点によれば，印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置であって，モーターと，モーターにより回転する第１の歯車と，第２の歯車と，第２の歯車と噛み合う第１の中間歯車と，第３の歯車と，第３の歯車と噛み合う第２の中間歯車と，第１の歯車と第１の中間歯車との間に設けられ，第１の歯車の回転方向が変わっても第１の中間歯車が一定の方向に回転するようにするスイング歯車クラッチと，及び第１の中間歯車の回転力を第２の中間歯車に伝達する回転力伝達機構と，を備えることを特徴とする，インクジェットプリンタの用紙搬送装置が提供される。
【００２９】
なお，スイング歯車クラッチは，第１の歯車の回転方向に追従してスイングアームがスイング歯車の軸を中心にして旋回し，第１のスイング歯車列か第２のスイング歯車列が選択的に第１の中間歯車に連結されることとしてもよい。また，回転力伝達機構は，第１の中間歯車に同軸結合された第１のプーリと，第２の中間歯車に同軸結合された第２のプーリ，及び第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと，を備えることとしてもよい。
【００３０】
また，上記課題を解決するために，本発明の第４の観点によれば，多数枚の印刷用紙が積載される給紙カセットと，この給紙カセットの上側に設けられ，印刷用紙をピックアップするピックアップローラと，このピックアップローラから搬送された印刷用紙を印刷領域に搬送する駆動ローラと，この駆動ローラから搬送された印刷用紙を整列する送りローラと，印刷領域を通った印刷用紙を排出する排紙ローラと，駆動ローラの軸に同軸結合された駆動歯車と，送りローラの軸に同軸結合された送り歯車と，排紙ローラの軸に同軸結合された排紙歯車と，送りローラの軸に回転力を供給するモーターと，駆動歯車と噛み合う第１の中間歯車と，送り歯車の回転方向が変わっても駆動歯車が印刷用紙を印刷領域に搬送する方向に一定に回転するようにし，送り歯車と第１の中間歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと，排紙歯車と噛み合う第２の中間歯車と，及び排紙ローラが駆動ローラと同一方向に回転するように第１の中間歯車と第２の中間歯車とを連結する回転力伝達機構と，を備えることを特徴とする，インクジェットプリンタが提供される。
【００３１】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照しながら，本発明にかかる装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお，本明細書及び図面において，実質的に同一の機能構成を有する構成要素については，同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【００３２】
図１は，一般的なインクジェットプリンタの構成を示す図である。図１に示すように，インクジェットプリンタは，給紙カセット１０，ピックアップローラ２０，駆動ローラ３０，送りローラ４０，排紙ローラ５０，及び印刷ヘッド９０等を備える。
【００３３】
給紙カセット１０は，多数枚の印刷用紙１を積載し，ピックアップローラ２０は，給紙カセット１０に積載されている印刷用紙１のうち，最上部の印刷用紙の上面を押圧しながら回転できるように設けられる。駆動ローラ３０は，給紙カセット１０の先端部と送りローラ４０をつなぐ用紙経路２５の中間部に設けられ，ピックアップローラ２０でピックアップした印刷用紙を送りローラ４０まで搬送する。
【００３４】
送りローラ４０は，印刷ヘッド９０の前方に印刷ヘッドのガイドロッド９１に並んで設けられ，駆動ローラ３０から搬送される印刷用紙の先端がガイドロッド９１に平行して供給されるように用紙整列を行い，整列された印刷用紙を一定の幅をもって印刷ヘッド９１の下方に供給する。
【００３５】
印刷ヘッド９０は，送りローラ４０に並ぶガイドロッド９１に沿って左右に移動しながらノズルからインクを噴射し，印刷用紙に文字やイメージ等を印刷する。
【００３６】
排紙ローラ５０は，印刷ヘッド９０の後方に送りローラ４０に並んで設けられ，印刷ヘッド９０の下を通って印刷が完了した印刷用紙をインクジェットプリンタの外部に排出する。
【００３７】
次に上記のような構造を有するインクジェットプリンタの用紙搬送装置の第１の実施の形態の構成について，図面を用いて説明する。図２は，本実施形態の用紙搬送装置の斜視図であり，図３は，図２に示された用紙搬送部の各部品間の連結関係を示す部分斜視図である。
【００３８】
図２および図３に示すように，用紙搬送装置は，駆動歯車３１と，送り歯車４１と，排紙歯車５１と，伝動ユニット７０とを備える。
【００３９】
駆動歯車３１は，駆動ローラの軸３３に同軸結合され，排紙歯車５１は，排紙ローラの軸５３に同軸結合される。送り歯車４１は，駆動源のモーター５から動力を伝達される送りローラ４０の軸に同軸結合される。
【００４０】
伝動ユニット７０は，駆動歯車３１と噛み合う第１の中間歯車６８と，送り歯車４１と第１の中間歯車６８との間に設けられるスイング歯車クラッチ６０と，排紙歯車５１と噛み合う第２の中間歯車６９と，及び第１の中間歯車６８と第２の中間歯車６９とを連結する回転力伝達機構とを備える。
【００４１】
スイング歯車クラッチ６０は，スイング歯車６１とスイングアーム６３とを備える。スイング歯車６１は，送り歯車４１と噛み合うように設けられる。スイングアーム６３は，Ｌ字状に成形された２つのアーム，即ち第１のアーム及び第２のアームを有している。スイングアーム６３の第１のアームには，第１のスイング歯車列６５が設けられ，第２のアームには，第２のスイング歯車列６７が設けられている。また，スイングアーム６３は，スイング歯車６１の回転方向に応じて第１のスイング歯車列６５か第２のスイング歯車列６７が選択的に第１の中間歯車６８に連結できるようにスイング歯車の軸６２に設けられている。従って，送り歯車４１の回転方向に追従してスイング歯車６１が回転し，スイング歯車６１の回転方向にスイングアーム６３がスイング歯車の軸６２を中心に旋回して第１のスイング歯車列６５と第２のスイング歯車列６７のいずれかが第１の中間歯車６８に連結されることで動力が伝達できるようになる。
【００４２】
なお，第１のスイング歯車列６５は，送り歯車４１の回転方向と同一方向の回転力が伝達できるように奇数個の歯車からなる。また，第２のスイング歯車列６７は，送り歯車４１の回転方向と逆方向の回転力を伝達するように偶数個の歯車からなる。本実施の形態では，第１のスイング歯車列６５は，１つの歯車からなり，第２のスイング歯車列６７は，２つの歯車からなる。
【００４３】
また，回転力伝達機構は，第１の中間歯車６８の回転力をその方向を変化させることなくそのまま第２の中間歯車６９に伝達するように構成される。本実施の形態では，第１の中間歯車６８に同軸結合された第１のプーリ７２と，第２の中間歯車６９に同軸結合された第２のプーリ７６，及び第１のプーリ７２と第２のプーリ７６とを連結するベルト７９とを備える。なお，第１のプーリ７２及び第２のプーリ７６とベルト７９は，それぞれタイミングプーリとタイミングベルトを使用することが好ましい。
【００４４】
次に，上記のような構造を有する本実施の形態のインクジェットプリンタの用紙搬送装置の作用について図１〜図５を参照して説明する。
【００４５】
まず，ピックアップローラ２０で印刷用紙１をピックアップすると，モーター５により送りローラ４０が反時計回り方向に回転する。その結果，同軸結合された送り歯車４１も反時計回り方向に回転する。このように，送り歯車４１が反時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が時計回り方向に回転する。そうすると，スイング歯車６１と同軸上に設けられているスイングアーム６３も時計回り方向に旋回し，第１のスイング歯車列６５が第１の中間歯車６８に連結される。
【００４６】
この時，第１のスイング歯車列６５は，１つの歯車からなっているため，第１の中間歯車６８がスイング歯車６１と同様に時計回り方向に回転する。第１の中間歯車６８が時計回り方向に回転すると，この第１の中間歯車６８と噛み合っている駆動歯車３１が反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラから搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。
【００４７】
駆動ローラ３０により印刷用紙の先端が送りローラ４０に挟み込まれると，印刷用紙を整列するために送りローラ４０が逆回転し始める。送りローラ４０が逆回転すると，送りローラ４０の軸に同軸結合された送り歯車４１が時計回り方向に回転する。送り歯車４１が時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が反時計回り方向に回転する。スイング歯車６１が反時計回り方向に回転すると，スイングアーム６３が反時計回り方向に旋回して第２のスイング歯車列６７が第１の中間歯車６８に連結される。
【００４８】
この時，第２のスイング歯車列６７は，２つの歯車からなっているため，第１の中間歯車６８が，スイング歯車６１とは逆に時計回り方向に回転する。第１の中間歯車６８が時計回り方向に回転すると，この第１の中間歯車６８と噛み合っている駆動歯車３１が反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラから搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。即ち，送りローラ４０の回転方向が変わっても，駆動ローラ３０が継続して印刷用紙を送りローラ４０側に供給するようになる。従って，送りローラ４０が印刷用紙を整列する場合でも，ピックアップローラによる印刷用紙のピックアップを継続して行うことができるため，印刷用紙の連続する給紙が可能になる。
【００４９】
上記の送りローラ４０は，所定の回数時計回り方向に回転した後，再び反時計回り方向に回転することで，印刷用紙を印刷ヘッド９０の下方に搬送する。
【００５０】
送りローラ４０を通った印刷用紙１は，排紙ローラ５０側に搬送される。この時の排紙ローラ５０の回転方向は，以下の通りである。排紙ローラの軸５３には，排紙歯車５１が同軸結合されており，排紙歯車５１は，第２の中間歯車６９と噛み合っている。また，第２の中間歯車６９は，第１の中間歯車６８とタイミングベルト７９及びプーリ７２，７６で連結されている。従って，排紙歯車５１は，第１の中間歯車６８とは逆方向に回転するようになる。即ち，排紙歯車５１は，第１の中間歯車６８と噛み合っている駆動歯車３１と同一方向に回転するようになる。
【００５１】
ところで，前述したように，駆動歯車３１が送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転するため，排紙歯車５１も送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転する。即ち，排紙歯車５１に同軸結合された排紙ローラ５０は，送りローラ４０の回転方向に関わらず反時計回り方向に回転する。
【００５２】
従って，排紙ローラ５０により印刷済みの印刷用紙の排紙が完了する前に，送りローラ４０が印刷用紙を整列するために逆回転する場合でも，排紙ローラ５０は，反時計回り方向に回転し続けるため，印刷用紙の排出が持続的に行われる。
【００５３】
以上では，スイング歯車クラッチ６０が送り歯車４１と第１の中間歯車６８との間に設けられた場合について説明したが。スイング歯車クラッチ６０を，送り歯車４１と第２の中間歯車６９との間に設けることも可能であり，その伝動過程は，上述したそれと同一であるため，その詳細な説明を省く。
【００５４】
次に，本発明によるインクジェットプリンタの用紙搬送装置の第２の実施の形態について図面を参照して説明する。図６は，本発明によるインクジェットプリンタの用紙搬送装置の第２の実施の形態の構成を説明するための部分斜視図である。本実施の形態では，上述した第１の実施の形態と２つの中間歯車がないという点で相違している。
【００５５】
図６に示すように，本実施の形態の用紙搬送装置は，駆動歯車３１と，送り歯車４１と，排紙歯車５１と，伝動ユニット８０とを備える。
【００５６】
駆動歯車３１は，駆動ローラの軸３３に同軸結合され，排紙歯車５１は，排紙ローラの軸５３に同軸結合される。送り歯車４１は，駆動源のモーター５（図２参照）から動力を伝達される送りローラ４０の軸に同軸結合される。
【００５７】
伝動ユニット８０は，送り歯車４１と駆動歯車３１との間に設けられるスイング歯車クラッチ６０’と，駆動歯車３１と排紙歯車５１とを連結する回転力伝達機構とを備える。
【００５８】
スイング歯車クラッチ６０’は，スイング歯車６１とスイングアーム６３’とを備える。このスイング歯車６１は，送り歯車４１と噛み合うように設けられる。また，スイングアーム６３’は，駆動歯車３１を取り囲む形状に成形された２つのアーム，即ち第１のアーム及び第２のアームを有している。スイングアーム６３’の第１のアームには，第１のスイング歯車列６５’が設けられ，第２のアームには，第２のスイング歯車列６７’が設けられている。
【００５９】
また，スイングアーム６３’は，スイング歯車６１の回転方向に応じて，第１のスイング歯車列６５’または第２のスイング歯車列６７’が選択的に駆動歯車３１に連結できるようにスイング歯車の軸６２に設けられている。従って，送り歯車４１の回転方向に追従してスイング歯車６１が回転し，スイング歯車６１の回転方向にスイングアーム６３’がスイング歯車の軸６２を中心に旋回して第１のスイング歯車列６５’と第２のスイング歯車列６７’のいずれかが駆動歯車３１に連結されることで動力が伝達できるようになる。
【００６０】
なお，第１のスイング歯車列６５’は，送り歯車４１の回転方向と同一方向の回転力が伝達できるように偶数個の歯車からなる。また，第２のスイング歯車列６７’は，送り歯車４１の回転方向と逆方向の回転力を伝達するように奇数個の歯車からなる。本実施の形態では，第１のスイング歯車列６５’は，２つの歯車からなり，第２のスイング歯車列６７’は，３つの歯車からなる。
【００６１】
また，回転力伝達機構は，駆動歯車３１の回転力をその方向を変化させることなく，そのまま伝達するように構成される。本実施の形態では，回転力伝達機構となる伝動ユニット８０は，駆動歯車３１に同軸結合されたプーリ７３と，排紙歯車５１に同軸結合されたプーリ７７と，及び両プーリ７３，７７を連結するベルト７９とを備える。なお，これらの両プーリ７３，７７とベルト７９は，それぞれタイミングプーリとタイミングベルトを使用することが好ましい。
【００６２】
次に，上記のような構造を有する本実施の形態のインクジェットプリンタの用紙搬送装置の作用について図６を参照して説明する。
【００６３】
まず，ピックアップローラ２０（図１参照）で印刷用紙１をピックアップすると，モーターにより送りローラ４０が反時計回り方向に回転する。送りローラ４０が反時計回り方向に回転すると，同軸結合された送り歯車４１も反時計回り方向に回転する。送り歯車４１が反時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が時計回り方向に回転する。そうすると，スイング歯車６１と同軸上に設けられているスイングアーム６３’も時計回り方向に旋回し，第１のスイング歯車列６５’が駆動歯車３１に連結される。
【００６４】
この時，第１のスイング歯車列６５’は，偶数個の歯車からなっているため，駆動歯車３１がスイング歯車６１とは逆に反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラ２０から搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。
【００６５】
駆動ローラ３０により印刷用紙の先端が送りローラ４０に挟み込まれると，印刷用紙を整列するために送りローラ４０が逆回転し始める。送りローラ４０が逆回転すると，送りローラ４０の軸に同軸結合された送り歯車４１が時計回り方向に回転する。送り歯車４１が時計回り方向に回転すると，スイング歯車６１が反時計回り方向に回転する。スイング歯車６１が反時計回り方向に回転すると，スイングアーム６３’が反時計回り方向に旋回して第２のスイング歯車列６７’が駆動歯車３１に連結される。
【００６６】
この時，第２のスイング歯車列６７’は，奇数の歯車からなっているため，駆動歯車３１が，スイング歯車６１と同一に反時計回り方向に回転する。駆動歯車３１が反時計回り方向に回転すると，駆動ローラ３０も反時計回り方向に回転し，ピックアップローラ２０から搬送された印刷用紙を送りローラ４０側に搬送するようになる。即ち，送りローラ４０の回転方向が変わっても駆動ローラ３０が継続して印刷用紙を送りローラ４０側に供給するようになる。
【００６７】
送りローラ４０は，所定の回数時計回り方向に回転した後，再び反時計回り方向に回転することで，印刷用紙を印刷ヘッド９０（図１参照）の下方に搬送する。
【００６８】
送りローラ４０を通った印刷用紙は，排紙ローラ５０側に搬送される。この時の排紙ローラ５０の回転方向は，以下の通りである。排紙ローラの軸５３には，排紙歯車５１が同軸結合されており，排紙歯車５１は，駆動歯車３１とタイミングベルト７９及びプーリ７３，７７で連結されている。従って，排紙歯車５１は，駆動歯車３１と同一方向に回転するようになる。
【００６９】
ところで，前述したように，駆動歯車３１が送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転するため，排紙歯車５１も送り歯車４１の回転方向に関わらず一定に反時計回り方向に回転する。即ち，排紙歯車５１に同軸結合された排紙ローラ５０は，送りローラ４０の回転方向に関わらず，反時計回り方向に回転する。
【００７０】
従って，排紙ローラ５０により印刷済みの印刷用紙の排紙が完了する前に，送りローラ４０が印刷用紙を整列するために逆回転する場合でも，排紙ローラ５０は，反時計回り方向に回転し続けるため，印刷用紙の排出が持続的に行われる。
【００７１】
以上では，スイング歯車クラッチが送り歯車と駆動歯車との間に設けられた場合について説明したが。スイング歯車クラッチを，送り歯車と排紙歯車との間に設けることも可能であり，その伝動過程は，上述した伝動過程と同一であるため，その詳細な説明を省く。
【００７２】
以上，添付図面を参照しながら本発明に係るインクジェットプリンタの用紙搬送装置の好適な実施形態について説明したが，本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば，特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり，それらについても当然に本発明の技術的思想に属するものと了解される。
【００７３】
【発明の効果】
以上で説明したように，本発明に係るインクジェットプリンタの用紙搬送装置によると，送りローラの回転方向が変わっても駆動ローラと排紙ローラは，印刷用紙を給紙する方向に一方向回転を継続するため，送りローラによる印刷用紙の整列時でも印刷用紙の給紙及び排紙を行うことができる。従って，印刷速度が向上したインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することができる。
【００７４】
また，別の駆動源を使用することなく上記のような目的を達成することにより，製造コストが低く，且つ印刷速度が向上したインクジェットプリンタの用紙搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】一般的なインクジェットプリンタの構造を示す概念図である。
【図２】本発明に係る用紙搬送装置の第１の実施の形態がアプリケーションされたインクジェットプリンタの用紙搬送部の斜視図である。
【図３】図２の用紙搬送部の各部品間の連結関係を示す部分斜視図である。
【図４】図２の用紙搬送装置における送り歯車が時計回り方向に回転する場合の伝動関係を示す図である。
【図５】図２の用紙搬送装置における送り歯車が反時計回り方向に回転する場合の伝動関係を示す図である。
【図６】本発明に係る用紙搬送装置の第２の実施の形態を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
１ 印刷用紙
１０ 給紙カセット
２０ ピックアップローラ
３０ 駆動ローラ
３１ 駆動歯車
４０ 送りローラ
４１ 送り歯車
５０ 排紙ローラ
５１ 排紙歯車
６０ スイング歯車クラッチ
６１ スイング歯車
６３，６３’ スイングアーム
６５，６５’ 第１のスイング歯車列
６７，６７’ 第２のスイング歯車列
６８ 第１の中間歯車
６９ 第２の中間歯車
７０，８０ 伝動ユニット
７２，７３，７６，７７ プーリ
７９ ベルト
９０ 印刷ヘッド
Claims (15)
- 印刷のために印刷用紙を搬送するインクジェットプリンタの用紙搬送装置であって，
ピックアップした前記印刷用紙を印刷領域に搬送する駆動ローラの軸に同軸結合された駆動歯車と；
前記駆動ローラから搬送された前記印刷用紙を整列する送りローラの軸に同軸結合された送り歯車と；
前記印刷領域を通った前記印刷用紙を排出する排紙ローラの軸に同軸結合された排紙歯車と；
前記送りローラの軸に回転力を供給するモーターと；及び
前記送りローラの軸の回転力を前記駆動歯車と排紙歯車に伝達する伝動ユニットと；
を備え，
前記駆動歯車および前記排紙歯車が，前記送り歯車の回転方向に関わらず一定の方向に回転することを特徴とする，インクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記伝動ユニットは，
前記送り歯車と前記駆動歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと；及び
前記駆動歯車と前記排紙歯車とを連結する回転力伝達機構と；
を備えることを特徴とする，請求項１に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記スイング歯車クラッチは，
前記送り歯車と噛み合うスイング歯車と；
前記スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと；
前記第１のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列と；及び
前記第２のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と；
を備え，
前記送り歯車の回転方向に追従して前記スイングアームが前記スイング歯車の軸を中心にして旋回し，前記第１のスイング歯車列か前記第２のスイング歯車列が選択的に前記駆動歯車に連結されることを特徴とする，請求項２に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記伝動ユニットは，
前記送り歯車と前記排紙歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと；及び
前記駆動歯車と前記排紙歯車とを連結する回転力伝達機構と；
を備えることを特徴とする，請求項１に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記スイング歯車クラッチは，
前記送り歯車と噛み合うスイング歯車と；
前記スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと；
前記第１のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列と；及び
前記第２のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と；
を備え，
前記送り歯車の回転方向に追従して前記スイングアームが前記スイング歯車の軸を中心にして旋回し，前記第１のスイング歯車列または第２のスイング歯車列が選択的に前記排紙歯車に連結されることを特徴とする，請求項４に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記第１のスイング歯車列は，奇数個の歯車を備えることを特徴とする，請求項３または５に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。
- 前記第２のスイング歯車列は，偶数個の歯車を備えることを特徴とする，請求項３または５に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。
- 前記回転力伝達機構は，
前記駆動歯車に同軸結合された第１のプーリと；
前記排紙歯車に同軸結合された第２のプーリと；及び
前記第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと；
を備えることを特徴とする，請求項２または４に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記第１のプーリ及び前記第２のプーリがそれぞれタイミングプーリであることを特徴とする，請求項８に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。
- 前記伝動ユニットは，
前記駆動歯車と噛み合う第１の中間歯車と；
前記送り歯車と前記第１の中間歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと；
前記排紙歯車と噛み合う第２の中間歯車と；及び
前記第１の中間歯車と前記第２の中間歯車とを連結する回転力伝達機構と；
を備えることを特徴とする，請求項１に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記スイング歯車クラッチは，
前記送り歯車と噛み合うスイング歯車と；
前記スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと；
前記第１のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列と；及び
前記第２のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と；
を備え，
前記送り歯車の回転方向に追従して前記スイングアームが前記スイング歯車の軸を中心にして旋回し，前記第１のスイング歯車列か第２のスイング歯車列が選択的に前記第１の中間歯車に連結されることを特徴とする，請求項１０に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 前記回転力伝達機構は，
前記第１の中間歯車に同軸結合された第１のプーリと；
前記第２の中間歯車に同軸結合された第２のプーリと；及び
前記第１のプーリと第２のプーリとを連結するベルトと；
を備えることを特徴とする，請求項１０に記載のインクジェットプリンタの用紙搬送装置。 - 多数枚の印刷用紙が積載される給紙カセットと；
前記給紙カセットの上側に設けられ，前記印刷用紙をピックアップするピックアップローラと；
前記ピックアップローラから搬送された印刷用紙を印刷領域に搬送する駆動ローラと；
前記駆動ローラから搬送された前記印刷用紙を整列する送りローラと；
前記印刷領域を通った前記印刷用紙を排出する排紙ローラと；
前記駆動ローラの軸に同軸結合された駆動歯車と；
前記送りローラの軸に同軸結合された送り歯車と；
前記排紙ローラの軸に同軸結合された排紙歯車と；
前記送りローラの軸に回転力を供給するモーターと；
前記駆動歯車と噛み合う第１の中間歯車と；
前記送り歯車と前記第１の中間歯車との間に設けられるスイング歯車クラッチと；
前記排紙歯車と噛み合う第２の中間歯車と；及び
前記第１の中間歯車と前記第２の中間歯車とを連結する回転力伝達機構と；
を備えることを特徴とする，インクジェットプリンタ。 - 前記スイング歯車クラッチは，
前記送り歯車と噛み合うスイング歯車と；
前記スイング歯車の軸に設けられ，第１のアーム及び第２のアームを有するスイングアームと；
前記第１のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と同一方向の回転力を伝達する第１のスイング歯車列と；及び
前記第２のアームに設けられ，前記送り歯車の回転方向と逆方向の回転力を伝達する第２のスイング歯車列と；
を備え，
前記送り歯車の回転方向に追従して前記スイングアームが前記スイング歯車の軸を中心にして旋回し，前記第１のスイング歯車列または前記第２のスイング歯車列が選択的に前記第１の中間歯車に連結されることを特徴とする，請求項１３に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記回転力伝達機構は，
前記第１の中間歯車に同軸結合された第１のプーリと；
前記第２の中間歯車に同軸結合された第２のプーリと；及び
前記第１のプーリと前記第２のプーリとを連結するベルトと；
を備えることを特徴とする，請求項１４に記載のインクジェットプリンタ。
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