JP3759862B2 - 人工透析器用ソケット - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工透析器のプラグと透析液チューブとを接続する人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法に係り、特に、ワンタッチでプラグへの着脱操作が可能であり、ソケットの接続作業性を高めることができるとともに、ソケット内部のロック用ボール、スプリング等の内部部品の洗浄性を高めることにより、人工透析器のプラグに装着する際の雑菌による汚染を確実に防止することができる人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
通常、図９に示すように、人工透析器（ダイヤライザ）１は、円筒形の容器内に中空糸型の半透膜細管が多数収容され、この細管内に患者の体内から取り出した血液を流通させるとともに、細管の外側に生理食塩水等の透析液を供給することにより、半透膜を介して生じる浸透圧によって血液中の体液を透析液側に抜き取る一方、透析液中の必要物質を血液側に補給して体内と交換させるというもので、人工透析器１に透析液を循環させるために、透析液の入口部と出口部の接続口に設けられたプラグ２に透析液のチューブ３をソケット４を介して接続している。
【０００３】
従来のソケット４は、図１０に示すように、プラグ２に接続するカップリング部５ａと透析液のチューブ３と接続するチューブ接続筒部５ｂを備えたソケット本体５と、ソケット４とプラグ２とのロック状態を保つロック用ボール６と、ソケット本体５のカップリング部５ａの外周に嵌め込まれ、ロック用ボール６をロック方向に押圧するスリーブ７と、スリーブ７を付勢するコイルスプリング７ａと、カップリング部５ａの内周面に設けられているＯリング８とから構成されている。
【０００４】
そして、人工透析器１側のプラグ２に対してソケット４を接続するには、スリーブ７を図中矢印で示す方向に後退操作してロック用ボール６をフリー状態とした後、プラグ２にソケット４のカップリング部５ａを差し込み、差し込み基準位置でプラグ２に設けられている環状溝部２ａにロック用ボール６が嵌まり込み、スリーブ７から手を離せば、バネ付勢されているスリーブ７によりロック用ボール６がロック方向に付勢されるため、プラグ２に対してソケット４の確実な装着が可能となる。
【０００５】
ところで、人工透析治療では、透析治療後、人工透析器１及びプラグ２は廃棄されるが、プラグ２と透析液チューブ３とを接続するためのソケット４は、洗浄及び滅菌処理を施して継続使用が可能である。
【０００６】
例えば、洗浄液中にソケット４を浸漬する方法や、図１１に示すように、洗浄用アダプタ９にソケット４を接続して洗浄液、あるいは消毒液を循環させることにより、ソケット４の内壁面を洗浄、あるいは消毒処理する方法も実施されている。
【０００７】
更に、近年、人工透析器内の透析膜のポアサイズが大きくなり、雑菌や、雑菌を産出する毒素が透析液側から血液側に移行する可能性が指摘され、特に、透析器を血液に注入する方式からなる透析濾過システムにおいては、透析液内に菌や毒素が存在すると、患者に対して発熱等の悪影響を与える等の不具合が生じていることから、ソケット４を継続使用する場合には、ソケット４の高い洗浄性が望まれているのが実情である。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の人工透析器用ソケット４は、人工透析器１のプラグ２に着脱操作する際、まず、スリーブ７を後退操作させて、ロック用ボール６をフリー状態にした後、カップリング部５ａをプラグ２に外嵌接続し、正規位置に接続した後、スリーブ７から手を離し、ロック用ボール６をロック方向にバネ付勢させて、ソケット４とプラグ２の接続を完了させるというものであるから、ソケット４の着脱操作時、それぞれ２操作が必要となり、ソケット４の接続作業性を低下させるという欠点が指摘されている。
【０００９】
更に、ソケット４を正規位置に差し込む作業は、勘を頼りに行なうため、確実な接続作業に時間を費し、このこともソケット４の接続作業性を低下させる要因となっている。
【００１０】
加えて、従来の人工透析器用ソケット４を継続使用する観点から見れば、従来のソケット４では、ソケット本体５のカップリング部５ａの内壁面をある程度洗浄はできても、洗浄用アダプタ９とラップするエリアは洗浄できず、しかも、Ｏリング８やＯリング８の収容溝８ａ並びにロック用ボール６の裏面側や内部のコイルスプリング７ａ等を確実に洗浄することができないため、内部に雑菌が残留するという恐れがあり、このことが継続使用を行なう上で大きな障害となっていた。
【００１１】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、人工透析器のプラグにワンタッチで簡単かつ確実に着脱操作できるとともに、カップリング部内壁面の洗浄はもとより、ロック用ボールの裏側やスプリング等の内部機構も確実に洗浄処理でき、継続使用しても衛生上、何等問題のない人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法を提供することを目的としている。
【００１２】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る人工透析器用ソケットは、人工透析器のプラグと透析液の供給乃至排出を行なう透析液チューブとを接続するソケットであって、人工透析器のプラグに外嵌接続するカップリング部と透析液チューブ接続筒部を有するソケット本体と、ソケット本体のカップリング部外周に嵌装される外装スリーブと、ソケット本体と外装スリーブとの間に進退可能に収容され、ロック用ボールを押圧するバネ付勢されたホルダとから構成され、プラグへの着脱時、ホルダが進退動作することにより、ワンタッチでプラグへの着脱操作を可能としたことを特徴とする。
【００１３】
ここで、プラグに対するソケットのロック機構としては、ソケット本体のカップリング部に開設される収容孔内にロック用ボールが収容され、カップリング部の外表面に外装スリーブが嵌装されており、カップリング部の外表面と外装スリーブ内面との間にロック用ボールを押圧するホルダがスプリングにより付勢された状態で収容されている。
【００１４】
そして、ホルダにより押圧されるロック用ボールが外装スリーブのテーパー面に沿って案内されることにより、カップリング部内壁面からロック方向にロック用ボールがバネ付勢され、プラグの環状溝部に上記ロック用ボールが係合することにより、プラグとソケットとのロック状態を維持できる。
【００１５】
上記ソケット本体、外装スリーブ、ホルダは、ＰＰＥ（ポリフェニレンエーテル）等、耐薬品性に優れた合成樹脂の射出成形体を使用するのが良い。
【００１６】
そして、ソケット本体のカップリング部と外装スリーブとの間に進退可能に収容されるホルダは、スプリングにより前方向にバネ付勢されており、このホルダを後退させることにより、ロック用ボールを解放状態とすることができ、ホルダの後退動作は、プラグへの外嵌接続初期にも生じるが、ホルダの先端側に外装スリーブの先端面に設けた切欠きから外部に突出する突起を押圧することでも可能となる。
【００１７】
また、人工透析器のプラグにソケットを装着する際、ロック用ボールが一旦フリー状態となり、プラグ外周面に押圧され外側に移行し、次にプラグの環状溝部にロック用ボールが係合するというロック用ボールの動作に連繋して、ホルダは一旦後退した後前進し、正規のロック位置では外装スリーブの先端面からホルダの突起が所定寸法突出する状態であり、突起の突出寸法を目視することにより、ロック状態が確実かどうかを確認でき、突起に外装スリーブ先端面と識別できる色分けを施せば、ロック状態の確認を目視で簡単に行なえる。
【００１８】
更に、ソケット本体のカップリング部には、ロック用ボールが収容される収容孔から侵入する洗浄液がロック用ボールの裏側やスプリングに至る洗浄液の内部通路を構成できるようにロック用ボールの収容孔と対応する孔を開設し、双方により洗浄液が侵入する内部通路を構成しても良い。
【００１９】
また、ソケット本体のカップリング部の底壁面には、人工透析器のプラグ先端面と当接するシリコーンゴム等の端面シールを施しても良い。
【００２０】
以上の構成から明らかなように、本発明に係る人工透析器用ソケットは、プラグにソケットのカップリング部を外嵌装着すれば、ホルダが進退可能であるため、プラグの外表面がロック用ボールを外側に押圧し、ロック用ボールは、スリーブの内壁テーパー面に沿って後退動作した後、プラグの環状溝部でロック用ボールがホルダによりロック方向に付勢されるという構成であるため、ワンタッチでプラグへの着脱操作が可能となる。
【００２１】
更に、ホルダの先端部分を外部に突出する突起として形成すれば、ソケットの洗浄時、突起を押圧操作することにより、ホルダを後退動作させ、ロック用ボールを解放状態（浮いた状態）にでき、ロック用ボールの全表面をくまなく洗浄できる。
【００２２】
本発明の人工透析器用ソケットの洗浄方法は、人工透析器のプラグと透析液の供給乃至排出を行なう透析液チューブとを接続する人工透析器用ソケットの洗浄方法であって、シリンダ状のアダプタ本体の両端に設けられたソケット収容室内にソケット本体のカップリング部を装着し、アダプタ本体の両端に嵌装されたロック用カラーにより、ソケットのカップリング部外周とアダプタ本体とをロックし、アダプタ本体内に洗浄液を循環させることにより、ソケットの内壁全面を洗浄液に臨ませて洗浄することを特徴とする。
【００２３】
ここで、アダプタ本体の両端に設けたソケット収容室内にソケットのカップリング部を差し込めば、アダプタ本体に設けた押圧用突起がホルダの突起を押圧することにより、ソケットのロック用ボールが解放された（浮いた）状態でアダプタ本体にソケットを接続することができる。
【００２４】
また、アダプタ本体両端のソケット収容空間を連通する洗浄液通路を小径通路に設定すれば、ソケット収容室内での洗浄液の液圧を高めることにより、ソケット本体のカップリング部内壁面はもとより、ロック用ボールの全表面及びスプリング等の内部部品を確実に洗浄できる。
【００２５】
以上の構成から明らかなように、本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄方法によれば、ソケットを包持状態でアダプタ本体のソケット収容室内に装着して洗浄を行なうというものであるから、従来のアダプタのように、ラップ部分（接続部）の洗浄が行なえないという不具合がなく、ソケットの内壁面全面をくまなく洗浄でき、また、浸漬法に比べ、洗浄液の循環により高い洗浄性が得られる。
【００２６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【００２７】
図１は本発明に係る人工透析器用ソケットの構成を示す断面図、図２乃至図３は同ソケットの構成を示す分解斜視図並びに組付け前の状態を示す断面図である。また、図４は本発明に係る人工透析器用ソケットを人工透析器のプラグに接続する状態を示す説明図、図５は本発明に係る人工透析器用ソケットを洗浄処理する際に使用する洗浄用アダプタの構成を示す断面図、図６は同洗浄用アダプタをソケット装着方向からみた端面図、図７は同洗浄用アダプタに本発明に係るソケットを装着した状態を示す説明図、図８は本発明に係るソケットの洗浄方法の作用を示す説明図である。
【００２８】
図１乃至図３において本発明に係る人工透析器用ソケット１０の構成について説明する。
【００２９】
ソケット１０は、ソケット本体２０と、ソケット本体２０のカップリング部２１外表面に嵌装される外装スリーブ３０と、カップリング部２１に設けられるボールプランジャ機構４０とから大略構成されている。
【００３０】
更に詳しくは、ソケット本体２０は、人工透析器のプラグに外嵌接続するカップリング部２１とその反対側に透析液のチューブと接続する小径筒状のチューブ接続筒部２２とを備えており、カップリング部２１とチューブ接続筒部２２との間に円盤状のフランジ２３が形成されている。
【００３１】
そして、このソケット本体２０のカップリング部２１は、人工透析器のプラグの先端部分と当接して液密にシールするシリコーンゴムを素材とした端面シール２４が設けられているとともに、カップリング部２１には、ボールプランジャ機構４０のロック用ボール４１を収容するためのボール収容孔２５が４箇所に形成され、このボール収容孔２５から所定寸法離間した位置に後述する洗浄液の内部通路を構成する連通孔２６が開設されている。
【００３２】
次いで、ソケット本体２０のカップリング部２１の外表面に嵌装される外装スリーブ３０は、内部にボールプランジャ機構４０を収容する関係で、リヤ側スリーブ３１とフロント側スリーブ３２の前後２分割体からなり、リヤ側スリーブ３１の外周面に設けられた雄ネジ部３１１とフロント側スリーブ３２の内周面に形成した雌ネジ部３２１とを螺合させることにより一体化される。尚、リヤ側スリーブ３１とフロント側スリーブ３２の一体化は、係止爪による係着一体化構造を採用しても良い。
【００３３】
また、ボールプランジャ機構４０は、ソケット本体２０のカップリング部２１のボール収容孔２５内に収容されるロック用ボール４１と、このロック用ボール４１を押圧するホルダ４２と、ホルダ４２を前方向に付勢するコイルスプリング４３とから構成されており、ホルダ４２及びコイルスプリング４３は、ソケット本体２０のカップリング部２１の外表面と外装スリーブ３０の内表面とのスペースに嵌装され、特に、ホルダ４２が前後方向に沿って進退可能に収容されている。
【００３４】
そして、上記ホルダ４２は、ベースリング４２１に設けた段部４２２にコイルスプリング４３の端末が係止され、確実にコイルスプリング４３のバネ圧がホルダ４２に加わるように構成されているとともに、ホルダ４２の先端側には、ベースリング４２１から前方に突出する突起４２３が形成されており、この突起４２３は、フロント側スリーブ３２の先端面３２２に設けた切欠き３２３から外方に所定寸法突出し、ホルダ４２の進退動作により、突起４２３の突出量が可変する。
【００３５】
尚、この突起４２３は、後述するソケット１０の洗浄操作に有効に作用する。
【００３６】
このように、本発明に係るソケット１０は、ワンタッチで人工透析器のプラグに着脱が可能なように、ホルダ４２がソケット１０の差込み方向に沿って進退可能に設けられている。上記ホルダ４２はコイルスプリング４３のバネ力により、ロック用ボール４１を前方に押圧して、フロント側スリーブ３２の内面に形成されているテーパー面３２４に沿ってロック用ボール４１が図１中矢印方向にバネ付勢され、図示しないプラグとのロック状態を維持する。
【００３７】
一方、ホルダ４２がコイルスプリング４３のバネ圧に対して後退動作すれば、ロック用ボール４１が解放状態となるように構成されている。
【００３８】
このとき、ボール収容孔２５は、ソケット１０の差し込み方向に沿って長円状であり、かつ収容孔２５には、フロント側スリーブ３２のテーパー面３２４と平行なガイド縁部２５１が傾斜状に設けられており、ソケット１０のプラグへの着脱操作に応じて、ロック用ボール４１がプラグと干渉しない位置に後退する。
【００３９】
次いで、図４を基に、人工透析器５０のプラグ５１にソケット１０を接続する作業について説明すると、プラグ５１にソケット１０のカップリング部２１の開口を対面させる。そして、プラグ５１にソケット１０のカップリング部２１を外嵌接続する初期には、プラグ５１の外径とカップリング部２１の内径とが略等しいため、ロック用ボール４１がプラグ５１の外周面により外側へ押圧され、フロント側スリーブ３２のテーパー面３２４及びボール収容孔２５のガイド縁部２５１に沿ってロック用ボール４１が図中矢印ａ方向に後退することにより、ホルダ４２がコイルスプリング４３のバネ圧に対して後退する。次いで、挿入基準位置までソケット１０を差し込めば、プラグ５１の環状溝部５２にロック用ボール４１が嵌まり込み、ホルダ４２も前進動作し、ホルダ４２はロック用ボール４１をロック方向にバネ付勢する。
【００４０】
従って、ソケット１０をプラグ５１に接続するには、ホルダ４２が後退することにより、ロック用ボール４１を解放状態にできるため、ワンタッチ操作でプラグ５１への確実な接続が可能となる。また、ロック用ボール４１がプラグ５１の環状溝部５２内に係合しているかどうかは、ホルダ４２の突起４２３がフロント側スリーブ３２の先端面３２２から外方に突出しているかどうかを目視することにより確認できる。更に、この突起４２３とフロント側スリーブ３２の先端面３２２とを色違いにしておけば、プラグ５１へのソケット１０の確実なロック状態を目視でも確認できることになる。
【００４１】
一方、プラグ５１からソケット１０を取り外す作業は、ソケット１０を抜き方向に引き寄せれば、ホルダ４２が後退してロック用ボール４１が解放状態となるため、接続作業と同様、ワンタッチ操作でソケット１０を取り外すことができる。
【００４２】
ところで、本発明に係るソケット１０は、上述したように、プラグ５１への着脱操作がワンタッチで行なえ、人工透析治療時におけるソケット１０の接続作業性に優れるとともに、以下に記載する洗浄方法により特に高い洗浄効果が得られ、継続使用しても、衛生面において何等問題がない。
【００４３】
まず、図５，図６に基づいて、本発明に係るソケット１０を洗浄する際に使用する洗浄用アダプタ６０の構成について説明すると、洗浄用アダプタ６０は、金属製シリンダからなるアダプタ本体６１とこのアダプタ本体６１の両端に取り付けられるロック用カラー６２とから構成されており、双方のロック用カラー６２は、スプリング６３により突出方向にバネ付勢されており、アダプタ本体６１の先端面とロック用カラー６２の先端面とが面一になるまでロック用カラー６２が突出動作することにより、ロック用ボール６４がロックされる。尚、ロック用カラー６２をスプリング６３のバネ圧に対して中央側に引き込めば、ロック用ボール６４が解放状態となる。
【００４４】
そして、アダプタ本体６１の両端には、ソケット１０のカップリング部２１を抱え込み収容できるソケット収容室Ｓが設けられており、このソケット収容室Ｓは、ソケット１０の外装スリーブ３０の外径とほぼ等しい内径をもつ円筒状凹部として形成され、各収容スペースＳを区画するブロック６５には、小径通路６６が設けられている。そして、このブロック６５は、洗浄時、ストッパ壁の役目をして、ソケット収容室Ｓ内での洗浄液の液圧を高める機能をもっており、特に、ソケット１０を接続した際、ソケット１０におけるホルダ４２の突起４２３を押圧してロック用ボール４１を解放状態にする押圧用突起６７が形成されている。また、図中、符号６８はＯリングを示す。
【００４５】
図７は洗浄用アダプタ６０の両端に透析治療後のソケット１０を装着した状態を示すもので、まず、ロック用カラー６２を後退操作して、ロック用ボール６４をフリー状態に規制した後、ソケット１０をアダプタ本体６１のソケット収容室Ｓ内に装着し、ロック用カラー６２から手を離せば、ソケット本体２０のフランジ２３をＯリング６８でシールするとともに、フランジ２３のコーナー部を洗浄用アダプタ６０におけるロック用ボール６４でロックすることにより、洗浄用アダプタ６０にソケット１０を確実にロックすることができる。
【００４６】
このロック状態においては、洗浄用アダプタ６０にソケット１０のカップリング部２１が包持状に装着されるため、従来のように洗浄領域がアダプタ６０とラップすることがなく、カップリング部２１内面の全面に亘り確実に洗浄できるという利点がある。
【００４７】
更に、ソケット１０の正規取付状態では、ブロック６５に形成した押圧用突起６７がソケット１０のホルダ４２先端部分の突起４２３を押圧しており、ソケット１０におけるホルダ４２が後退し、そのため、ソケット１０のロック用ボール４１は、解放状態（浮いた状態）に規制され、ロック用ボール４１の裏側や内部通路２７内も確実に洗浄でき、高い洗浄性が得られる。
【００４８】
従って、図８に示すように、ソケット１０のチューブ接続筒部２２に洗浄液のホース（図示せず）を接続して、洗浄液を循環させれば、洗浄液はチューブ接続筒部２２の内部を通じてカップリング部２１の内部に案内され、洗浄用アダプタ６０のブロック６５のフラット状の壁面６５１にぶつかり、その一部が小径通路６６を通じて他方側のソケット１０に流れ込むが、カップリング部２１内での洗浄液の液圧が高く、かつロック用ボール４１が解放状態（浮いた状態）であるため、ロック用ボール４１の全表面をくまなく洗浄処理することができるとともに、ソケット１０のロック用ボール４１の収容孔２５と連通孔２６との間の内部通路２７内にも強制的に洗浄液が入り込み、スプリング４３や内部通路２７の壁面等を確実に洗浄処理することができ、従来、洗浄が困難であったロック用ボール４１の裏側や内部部品を確実に洗浄処理することができる。
【００４９】
尚、洗浄液に替えて、抗菌性をもつ消毒液を循環させれば、洗浄に加えて抗菌処理を施すことができ、人工透析治療における衛生面でより好適である。
【００５０】
また、本発明におけるソケット１０の洗浄方法においては、洗浄用アダプタ６０の両端に一対のソケット１０を嵌装したが、一方側のみにソケット１０を装着して、単一のソケット１０の洗浄、消毒に使用しても良い。
【００５１】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る人工透析器用ソケットによれば、ソケット本体と外装スリーブとの間にバネ付勢されたホルダを進退可能に収容し、ホルダの進退動作により、ロック用ボールを制御するという構成であるため、人工透析器のプラグにワンタッチで着脱が可能となり、人工透析治療におけるソケットの接続作業性を高めることができるという効果を有する。
【００５２】
更に、本発明に係る人工透析器用ソケットは、ソケット本体と外装スリーブとの間に進退可能なホルダをバネ付勢して内装し、ロック用ボールを上記ホルダの進退動作により制御するという構成であるため、洗浄用アダプタにソケットを接続する際、ホルダを後退動作させることにより、ロック用ボールを解放した状態でソケットと洗浄用アダプタとを接続することができることから、ソケットのロック用ボールの裏側やスプリング等、従来の洗浄が困難であった内部部品を確実に洗浄処理することができ、高い洗浄性が得られるため、在宅治療において、素人でも高い洗浄効果が得られ、透析液を汚染することなくソケットを継続使用できるという効果を有する。
【００５３】
また、本発明に係る人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法によれば、ソケットのカップリング部内壁面全面に亘り洗浄が可能であり、更に、ロック用ボールを解放状態とし、かつアダプタの洗浄液の液圧を高めることにより、従来、洗浄が困難であった部位も充分な洗浄が期待でき、雑菌の残留をなくし、衛生上も好ましいソケットの継続使用が可能になるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る人工透析器用ソケットの構成を示す断面図である。
【図２】図１に示す人工透析器用ソケットの構成を示す分解斜視図である。
【図３】図１に示す人工透析器用ソケットの各部品の組付け前の状態を示す断面図である。
【図４】本発明に係る人工透析器用ソケットを人工透析器のプラグに挿入する作業を示す工程を示す説明図である。
【図５】本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄方法に使用する洗浄用アダプタの構成を示す断面図である。
【図６】図５中Ａ矢視図である。
【図７】本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄方法を示すもので、洗浄用アダプタとソケットとの接続状態を示す断面図である。
【図８】本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄時の状態を示す説明図である。
【図９】人工透析器とソケットとの接続状態を示す説明図である。
【図１０】従来の人工透析器用ソケットの構成を示す断面図である。
【図１１】従来の人工透析器用ソケットの洗浄状態を示す説明図である。
【符号の説明】
１０ 人工透析器用ソケット
２０ ソケット本体
２１ カップリング部
２２ チューブ接続筒部
２３ フランジ
２４ 端面シール
２５ ボール収容孔
２６ 連通孔
２７ 内部通路
３０ 外装スリーブ
３１ リヤ側スリーブ
３２ フロント側スリーブ
３２２ 先端面
３２３ 切欠き
３２４ テーパー面
４０ ロックプランジャ機構
４１ ロック用ボール
４２ ホルダ
４２１ ベースリング
４２３ 突起
５０ 人工透析器
５１ プラグ
５２ 環状溝部
６０ 洗浄用アダプタ
６１ アダプタ本体
６２ ロック用カラー
６３ スプリング
６４ ロック用ボール
６５ ブロック
６６ 小径通路
６７ 押圧用突起
６８ Ｏリング
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工透析器のプラグと透析液チューブとを接続する人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法に係り、特に、ワンタッチでプラグへの着脱操作が可能であり、ソケットの接続作業性を高めることができるとともに、ソケット内部のロック用ボール、スプリング等の内部部品の洗浄性を高めることにより、人工透析器のプラグに装着する際の雑菌による汚染を確実に防止することができる人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
通常、図９に示すように、人工透析器（ダイヤライザ）１は、円筒形の容器内に中空糸型の半透膜細管が多数収容され、この細管内に患者の体内から取り出した血液を流通させるとともに、細管の外側に生理食塩水等の透析液を供給することにより、半透膜を介して生じる浸透圧によって血液中の体液を透析液側に抜き取る一方、透析液中の必要物質を血液側に補給して体内と交換させるというもので、人工透析器１に透析液を循環させるために、透析液の入口部と出口部の接続口に設けられたプラグ２に透析液のチューブ３をソケット４を介して接続している。
【０００３】
従来のソケット４は、図１０に示すように、プラグ２に接続するカップリング部５ａと透析液のチューブ３と接続するチューブ接続筒部５ｂを備えたソケット本体５と、ソケット４とプラグ２とのロック状態を保つロック用ボール６と、ソケット本体５のカップリング部５ａの外周に嵌め込まれ、ロック用ボール６をロック方向に押圧するスリーブ７と、スリーブ７を付勢するコイルスプリング７ａと、カップリング部５ａの内周面に設けられているＯリング８とから構成されている。
【０００４】
そして、人工透析器１側のプラグ２に対してソケット４を接続するには、スリーブ７を図中矢印で示す方向に後退操作してロック用ボール６をフリー状態とした後、プラグ２にソケット４のカップリング部５ａを差し込み、差し込み基準位置でプラグ２に設けられている環状溝部２ａにロック用ボール６が嵌まり込み、スリーブ７から手を離せば、バネ付勢されているスリーブ７によりロック用ボール６がロック方向に付勢されるため、プラグ２に対してソケット４の確実な装着が可能となる。
【０００５】
ところで、人工透析治療では、透析治療後、人工透析器１及びプラグ２は廃棄されるが、プラグ２と透析液チューブ３とを接続するためのソケット４は、洗浄及び滅菌処理を施して継続使用が可能である。
【０００６】
例えば、洗浄液中にソケット４を浸漬する方法や、図１１に示すように、洗浄用アダプタ９にソケット４を接続して洗浄液、あるいは消毒液を循環させることにより、ソケット４の内壁面を洗浄、あるいは消毒処理する方法も実施されている。
【０００７】
更に、近年、人工透析器内の透析膜のポアサイズが大きくなり、雑菌や、雑菌を産出する毒素が透析液側から血液側に移行する可能性が指摘され、特に、透析器を血液に注入する方式からなる透析濾過システムにおいては、透析液内に菌や毒素が存在すると、患者に対して発熱等の悪影響を与える等の不具合が生じていることから、ソケット４を継続使用する場合には、ソケット４の高い洗浄性が望まれているのが実情である。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の人工透析器用ソケット４は、人工透析器１のプラグ２に着脱操作する際、まず、スリーブ７を後退操作させて、ロック用ボール６をフリー状態にした後、カップリング部５ａをプラグ２に外嵌接続し、正規位置に接続した後、スリーブ７から手を離し、ロック用ボール６をロック方向にバネ付勢させて、ソケット４とプラグ２の接続を完了させるというものであるから、ソケット４の着脱操作時、それぞれ２操作が必要となり、ソケット４の接続作業性を低下させるという欠点が指摘されている。
【０００９】
更に、ソケット４を正規位置に差し込む作業は、勘を頼りに行なうため、確実な接続作業に時間を費し、このこともソケット４の接続作業性を低下させる要因となっている。
【００１０】
加えて、従来の人工透析器用ソケット４を継続使用する観点から見れば、従来のソケット４では、ソケット本体５のカップリング部５ａの内壁面をある程度洗浄はできても、洗浄用アダプタ９とラップするエリアは洗浄できず、しかも、Ｏリング８やＯリング８の収容溝８ａ並びにロック用ボール６の裏面側や内部のコイルスプリング７ａ等を確実に洗浄することができないため、内部に雑菌が残留するという恐れがあり、このことが継続使用を行なう上で大きな障害となっていた。
【００１１】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、人工透析器のプラグにワンタッチで簡単かつ確実に着脱操作できるとともに、カップリング部内壁面の洗浄はもとより、ロック用ボールの裏側やスプリング等の内部機構も確実に洗浄処理でき、継続使用しても衛生上、何等問題のない人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法を提供することを目的としている。
【００１２】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る人工透析器用ソケットは、人工透析器のプラグと透析液の供給乃至排出を行なう透析液チューブとを接続するソケットであって、人工透析器のプラグに外嵌接続するカップリング部と透析液チューブ接続筒部を有するソケット本体と、ソケット本体のカップリング部外周に嵌装される外装スリーブと、ソケット本体と外装スリーブとの間に進退可能に収容され、ロック用ボールを押圧するバネ付勢されたホルダとから構成され、プラグへの着脱時、ホルダが進退動作することにより、ワンタッチでプラグへの着脱操作を可能としたことを特徴とする。
【００１３】
ここで、プラグに対するソケットのロック機構としては、ソケット本体のカップリング部に開設される収容孔内にロック用ボールが収容され、カップリング部の外表面に外装スリーブが嵌装されており、カップリング部の外表面と外装スリーブ内面との間にロック用ボールを押圧するホルダがスプリングにより付勢された状態で収容されている。
【００１４】
そして、ホルダにより押圧されるロック用ボールが外装スリーブのテーパー面に沿って案内されることにより、カップリング部内壁面からロック方向にロック用ボールがバネ付勢され、プラグの環状溝部に上記ロック用ボールが係合することにより、プラグとソケットとのロック状態を維持できる。
【００１５】
上記ソケット本体、外装スリーブ、ホルダは、ＰＰＥ（ポリフェニレンエーテル）等、耐薬品性に優れた合成樹脂の射出成形体を使用するのが良い。
【００１６】
そして、ソケット本体のカップリング部と外装スリーブとの間に進退可能に収容されるホルダは、スプリングにより前方向にバネ付勢されており、このホルダを後退させることにより、ロック用ボールを解放状態とすることができ、ホルダの後退動作は、プラグへの外嵌接続初期にも生じるが、ホルダの先端側に外装スリーブの先端面に設けた切欠きから外部に突出する突起を押圧することでも可能となる。
【００１７】
また、人工透析器のプラグにソケットを装着する際、ロック用ボールが一旦フリー状態となり、プラグ外周面に押圧され外側に移行し、次にプラグの環状溝部にロック用ボールが係合するというロック用ボールの動作に連繋して、ホルダは一旦後退した後前進し、正規のロック位置では外装スリーブの先端面からホルダの突起が所定寸法突出する状態であり、突起の突出寸法を目視することにより、ロック状態が確実かどうかを確認でき、突起に外装スリーブ先端面と識別できる色分けを施せば、ロック状態の確認を目視で簡単に行なえる。
【００１８】
更に、ソケット本体のカップリング部には、ロック用ボールが収容される収容孔から侵入する洗浄液がロック用ボールの裏側やスプリングに至る洗浄液の内部通路を構成できるようにロック用ボールの収容孔と対応する孔を開設し、双方により洗浄液が侵入する内部通路を構成しても良い。
【００１９】
また、ソケット本体のカップリング部の底壁面には、人工透析器のプラグ先端面と当接するシリコーンゴム等の端面シールを施しても良い。
【００２０】
以上の構成から明らかなように、本発明に係る人工透析器用ソケットは、プラグにソケットのカップリング部を外嵌装着すれば、ホルダが進退可能であるため、プラグの外表面がロック用ボールを外側に押圧し、ロック用ボールは、スリーブの内壁テーパー面に沿って後退動作した後、プラグの環状溝部でロック用ボールがホルダによりロック方向に付勢されるという構成であるため、ワンタッチでプラグへの着脱操作が可能となる。
【００２１】
更に、ホルダの先端部分を外部に突出する突起として形成すれば、ソケットの洗浄時、突起を押圧操作することにより、ホルダを後退動作させ、ロック用ボールを解放状態（浮いた状態）にでき、ロック用ボールの全表面をくまなく洗浄できる。
【００２２】
本発明の人工透析器用ソケットの洗浄方法は、人工透析器のプラグと透析液の供給乃至排出を行なう透析液チューブとを接続する人工透析器用ソケットの洗浄方法であって、シリンダ状のアダプタ本体の両端に設けられたソケット収容室内にソケット本体のカップリング部を装着し、アダプタ本体の両端に嵌装されたロック用カラーにより、ソケットのカップリング部外周とアダプタ本体とをロックし、アダプタ本体内に洗浄液を循環させることにより、ソケットの内壁全面を洗浄液に臨ませて洗浄することを特徴とする。
【００２３】
ここで、アダプタ本体の両端に設けたソケット収容室内にソケットのカップリング部を差し込めば、アダプタ本体に設けた押圧用突起がホルダの突起を押圧することにより、ソケットのロック用ボールが解放された（浮いた）状態でアダプタ本体にソケットを接続することができる。
【００２４】
また、アダプタ本体両端のソケット収容空間を連通する洗浄液通路を小径通路に設定すれば、ソケット収容室内での洗浄液の液圧を高めることにより、ソケット本体のカップリング部内壁面はもとより、ロック用ボールの全表面及びスプリング等の内部部品を確実に洗浄できる。
【００２５】
以上の構成から明らかなように、本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄方法によれば、ソケットを包持状態でアダプタ本体のソケット収容室内に装着して洗浄を行なうというものであるから、従来のアダプタのように、ラップ部分（接続部）の洗浄が行なえないという不具合がなく、ソケットの内壁面全面をくまなく洗浄でき、また、浸漬法に比べ、洗浄液の循環により高い洗浄性が得られる。
【００２６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【００２７】
図１は本発明に係る人工透析器用ソケットの構成を示す断面図、図２乃至図３は同ソケットの構成を示す分解斜視図並びに組付け前の状態を示す断面図である。また、図４は本発明に係る人工透析器用ソケットを人工透析器のプラグに接続する状態を示す説明図、図５は本発明に係る人工透析器用ソケットを洗浄処理する際に使用する洗浄用アダプタの構成を示す断面図、図６は同洗浄用アダプタをソケット装着方向からみた端面図、図７は同洗浄用アダプタに本発明に係るソケットを装着した状態を示す説明図、図８は本発明に係るソケットの洗浄方法の作用を示す説明図である。
【００２８】
図１乃至図３において本発明に係る人工透析器用ソケット１０の構成について説明する。
【００２９】
ソケット１０は、ソケット本体２０と、ソケット本体２０のカップリング部２１外表面に嵌装される外装スリーブ３０と、カップリング部２１に設けられるボールプランジャ機構４０とから大略構成されている。
【００３０】
更に詳しくは、ソケット本体２０は、人工透析器のプラグに外嵌接続するカップリング部２１とその反対側に透析液のチューブと接続する小径筒状のチューブ接続筒部２２とを備えており、カップリング部２１とチューブ接続筒部２２との間に円盤状のフランジ２３が形成されている。
【００３１】
そして、このソケット本体２０のカップリング部２１は、人工透析器のプラグの先端部分と当接して液密にシールするシリコーンゴムを素材とした端面シール２４が設けられているとともに、カップリング部２１には、ボールプランジャ機構４０のロック用ボール４１を収容するためのボール収容孔２５が４箇所に形成され、このボール収容孔２５から所定寸法離間した位置に後述する洗浄液の内部通路を構成する連通孔２６が開設されている。
【００３２】
次いで、ソケット本体２０のカップリング部２１の外表面に嵌装される外装スリーブ３０は、内部にボールプランジャ機構４０を収容する関係で、リヤ側スリーブ３１とフロント側スリーブ３２の前後２分割体からなり、リヤ側スリーブ３１の外周面に設けられた雄ネジ部３１１とフロント側スリーブ３２の内周面に形成した雌ネジ部３２１とを螺合させることにより一体化される。尚、リヤ側スリーブ３１とフロント側スリーブ３２の一体化は、係止爪による係着一体化構造を採用しても良い。
【００３３】
また、ボールプランジャ機構４０は、ソケット本体２０のカップリング部２１のボール収容孔２５内に収容されるロック用ボール４１と、このロック用ボール４１を押圧するホルダ４２と、ホルダ４２を前方向に付勢するコイルスプリング４３とから構成されており、ホルダ４２及びコイルスプリング４３は、ソケット本体２０のカップリング部２１の外表面と外装スリーブ３０の内表面とのスペースに嵌装され、特に、ホルダ４２が前後方向に沿って進退可能に収容されている。
【００３４】
そして、上記ホルダ４２は、ベースリング４２１に設けた段部４２２にコイルスプリング４３の端末が係止され、確実にコイルスプリング４３のバネ圧がホルダ４２に加わるように構成されているとともに、ホルダ４２の先端側には、ベースリング４２１から前方に突出する突起４２３が形成されており、この突起４２３は、フロント側スリーブ３２の先端面３２２に設けた切欠き３２３から外方に所定寸法突出し、ホルダ４２の進退動作により、突起４２３の突出量が可変する。
【００３５】
尚、この突起４２３は、後述するソケット１０の洗浄操作に有効に作用する。
【００３６】
このように、本発明に係るソケット１０は、ワンタッチで人工透析器のプラグに着脱が可能なように、ホルダ４２がソケット１０の差込み方向に沿って進退可能に設けられている。上記ホルダ４２はコイルスプリング４３のバネ力により、ロック用ボール４１を前方に押圧して、フロント側スリーブ３２の内面に形成されているテーパー面３２４に沿ってロック用ボール４１が図１中矢印方向にバネ付勢され、図示しないプラグとのロック状態を維持する。
【００３７】
一方、ホルダ４２がコイルスプリング４３のバネ圧に対して後退動作すれば、ロック用ボール４１が解放状態となるように構成されている。
【００３８】
このとき、ボール収容孔２５は、ソケット１０の差し込み方向に沿って長円状であり、かつ収容孔２５には、フロント側スリーブ３２のテーパー面３２４と平行なガイド縁部２５１が傾斜状に設けられており、ソケット１０のプラグへの着脱操作に応じて、ロック用ボール４１がプラグと干渉しない位置に後退する。
【００３９】
次いで、図４を基に、人工透析器５０のプラグ５１にソケット１０を接続する作業について説明すると、プラグ５１にソケット１０のカップリング部２１の開口を対面させる。そして、プラグ５１にソケット１０のカップリング部２１を外嵌接続する初期には、プラグ５１の外径とカップリング部２１の内径とが略等しいため、ロック用ボール４１がプラグ５１の外周面により外側へ押圧され、フロント側スリーブ３２のテーパー面３２４及びボール収容孔２５のガイド縁部２５１に沿ってロック用ボール４１が図中矢印ａ方向に後退することにより、ホルダ４２がコイルスプリング４３のバネ圧に対して後退する。次いで、挿入基準位置までソケット１０を差し込めば、プラグ５１の環状溝部５２にロック用ボール４１が嵌まり込み、ホルダ４２も前進動作し、ホルダ４２はロック用ボール４１をロック方向にバネ付勢する。
【００４０】
従って、ソケット１０をプラグ５１に接続するには、ホルダ４２が後退することにより、ロック用ボール４１を解放状態にできるため、ワンタッチ操作でプラグ５１への確実な接続が可能となる。また、ロック用ボール４１がプラグ５１の環状溝部５２内に係合しているかどうかは、ホルダ４２の突起４２３がフロント側スリーブ３２の先端面３２２から外方に突出しているかどうかを目視することにより確認できる。更に、この突起４２３とフロント側スリーブ３２の先端面３２２とを色違いにしておけば、プラグ５１へのソケット１０の確実なロック状態を目視でも確認できることになる。
【００４１】
一方、プラグ５１からソケット１０を取り外す作業は、ソケット１０を抜き方向に引き寄せれば、ホルダ４２が後退してロック用ボール４１が解放状態となるため、接続作業と同様、ワンタッチ操作でソケット１０を取り外すことができる。
【００４２】
ところで、本発明に係るソケット１０は、上述したように、プラグ５１への着脱操作がワンタッチで行なえ、人工透析治療時におけるソケット１０の接続作業性に優れるとともに、以下に記載する洗浄方法により特に高い洗浄効果が得られ、継続使用しても、衛生面において何等問題がない。
【００４３】
まず、図５，図６に基づいて、本発明に係るソケット１０を洗浄する際に使用する洗浄用アダプタ６０の構成について説明すると、洗浄用アダプタ６０は、金属製シリンダからなるアダプタ本体６１とこのアダプタ本体６１の両端に取り付けられるロック用カラー６２とから構成されており、双方のロック用カラー６２は、スプリング６３により突出方向にバネ付勢されており、アダプタ本体６１の先端面とロック用カラー６２の先端面とが面一になるまでロック用カラー６２が突出動作することにより、ロック用ボール６４がロックされる。尚、ロック用カラー６２をスプリング６３のバネ圧に対して中央側に引き込めば、ロック用ボール６４が解放状態となる。
【００４４】
そして、アダプタ本体６１の両端には、ソケット１０のカップリング部２１を抱え込み収容できるソケット収容室Ｓが設けられており、このソケット収容室Ｓは、ソケット１０の外装スリーブ３０の外径とほぼ等しい内径をもつ円筒状凹部として形成され、各収容スペースＳを区画するブロック６５には、小径通路６６が設けられている。そして、このブロック６５は、洗浄時、ストッパ壁の役目をして、ソケット収容室Ｓ内での洗浄液の液圧を高める機能をもっており、特に、ソケット１０を接続した際、ソケット１０におけるホルダ４２の突起４２３を押圧してロック用ボール４１を解放状態にする押圧用突起６７が形成されている。また、図中、符号６８はＯリングを示す。
【００４５】
図７は洗浄用アダプタ６０の両端に透析治療後のソケット１０を装着した状態を示すもので、まず、ロック用カラー６２を後退操作して、ロック用ボール６４をフリー状態に規制した後、ソケット１０をアダプタ本体６１のソケット収容室Ｓ内に装着し、ロック用カラー６２から手を離せば、ソケット本体２０のフランジ２３をＯリング６８でシールするとともに、フランジ２３のコーナー部を洗浄用アダプタ６０におけるロック用ボール６４でロックすることにより、洗浄用アダプタ６０にソケット１０を確実にロックすることができる。
【００４６】
このロック状態においては、洗浄用アダプタ６０にソケット１０のカップリング部２１が包持状に装着されるため、従来のように洗浄領域がアダプタ６０とラップすることがなく、カップリング部２１内面の全面に亘り確実に洗浄できるという利点がある。
【００４７】
更に、ソケット１０の正規取付状態では、ブロック６５に形成した押圧用突起６７がソケット１０のホルダ４２先端部分の突起４２３を押圧しており、ソケット１０におけるホルダ４２が後退し、そのため、ソケット１０のロック用ボール４１は、解放状態（浮いた状態）に規制され、ロック用ボール４１の裏側や内部通路２７内も確実に洗浄でき、高い洗浄性が得られる。
【００４８】
従って、図８に示すように、ソケット１０のチューブ接続筒部２２に洗浄液のホース（図示せず）を接続して、洗浄液を循環させれば、洗浄液はチューブ接続筒部２２の内部を通じてカップリング部２１の内部に案内され、洗浄用アダプタ６０のブロック６５のフラット状の壁面６５１にぶつかり、その一部が小径通路６６を通じて他方側のソケット１０に流れ込むが、カップリング部２１内での洗浄液の液圧が高く、かつロック用ボール４１が解放状態（浮いた状態）であるため、ロック用ボール４１の全表面をくまなく洗浄処理することができるとともに、ソケット１０のロック用ボール４１の収容孔２５と連通孔２６との間の内部通路２７内にも強制的に洗浄液が入り込み、スプリング４３や内部通路２７の壁面等を確実に洗浄処理することができ、従来、洗浄が困難であったロック用ボール４１の裏側や内部部品を確実に洗浄処理することができる。
【００４９】
尚、洗浄液に替えて、抗菌性をもつ消毒液を循環させれば、洗浄に加えて抗菌処理を施すことができ、人工透析治療における衛生面でより好適である。
【００５０】
また、本発明におけるソケット１０の洗浄方法においては、洗浄用アダプタ６０の両端に一対のソケット１０を嵌装したが、一方側のみにソケット１０を装着して、単一のソケット１０の洗浄、消毒に使用しても良い。
【００５１】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る人工透析器用ソケットによれば、ソケット本体と外装スリーブとの間にバネ付勢されたホルダを進退可能に収容し、ホルダの進退動作により、ロック用ボールを制御するという構成であるため、人工透析器のプラグにワンタッチで着脱が可能となり、人工透析治療におけるソケットの接続作業性を高めることができるという効果を有する。
【００５２】
更に、本発明に係る人工透析器用ソケットは、ソケット本体と外装スリーブとの間に進退可能なホルダをバネ付勢して内装し、ロック用ボールを上記ホルダの進退動作により制御するという構成であるため、洗浄用アダプタにソケットを接続する際、ホルダを後退動作させることにより、ロック用ボールを解放した状態でソケットと洗浄用アダプタとを接続することができることから、ソケットのロック用ボールの裏側やスプリング等、従来の洗浄が困難であった内部部品を確実に洗浄処理することができ、高い洗浄性が得られるため、在宅治療において、素人でも高い洗浄効果が得られ、透析液を汚染することなくソケットを継続使用できるという効果を有する。
【００５３】
また、本発明に係る人工透析器用ソケット並びにその洗浄方法によれば、ソケットのカップリング部内壁面全面に亘り洗浄が可能であり、更に、ロック用ボールを解放状態とし、かつアダプタの洗浄液の液圧を高めることにより、従来、洗浄が困難であった部位も充分な洗浄が期待でき、雑菌の残留をなくし、衛生上も好ましいソケットの継続使用が可能になるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る人工透析器用ソケットの構成を示す断面図である。
【図２】図１に示す人工透析器用ソケットの構成を示す分解斜視図である。
【図３】図１に示す人工透析器用ソケットの各部品の組付け前の状態を示す断面図である。
【図４】本発明に係る人工透析器用ソケットを人工透析器のプラグに挿入する作業を示す工程を示す説明図である。
【図５】本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄方法に使用する洗浄用アダプタの構成を示す断面図である。
【図６】図５中Ａ矢視図である。
【図７】本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄方法を示すもので、洗浄用アダプタとソケットとの接続状態を示す断面図である。
【図８】本発明に係る人工透析器用ソケットの洗浄時の状態を示す説明図である。
【図９】人工透析器とソケットとの接続状態を示す説明図である。
【図１０】従来の人工透析器用ソケットの構成を示す断面図である。
【図１１】従来の人工透析器用ソケットの洗浄状態を示す説明図である。
【符号の説明】
１０ 人工透析器用ソケット
２０ ソケット本体
２１ カップリング部
２２ チューブ接続筒部
２３ フランジ
２４ 端面シール
２５ ボール収容孔
２６ 連通孔
２７ 内部通路
３０ 外装スリーブ
３１ リヤ側スリーブ
３２ フロント側スリーブ
３２２ 先端面
３２３ 切欠き
３２４ テーパー面
４０ ロックプランジャ機構
４１ ロック用ボール
４２ ホルダ
４２１ ベースリング
４２３ 突起
５０ 人工透析器
５１ プラグ
５２ 環状溝部
６０ 洗浄用アダプタ
６１ アダプタ本体
６２ ロック用カラー
６３ スプリング
６４ ロック用ボール
６５ ブロック
６６ 小径通路
６７ 押圧用突起
６８ Ｏリング
Claims (6)
- 人工透析器のプラグと透析液の供給乃至排出を行なう透析液チューブとを接続するソケットであって、
人工透析器のプラグに外嵌接続するカップリング部と透析液チューブ接続筒部とを有すると共に、カップリング部には差し込み方向へ細長い長円状のボール収容孔が形成されたソケット本体と、
ソケット本体のカップリング部外周に嵌装される外装スリーブと、
ソケット本体のカップリング部の外表面と外装スリーブの内表面とのスペースに進退可能に収容され、ボール収容孔に収容されたロック用ボールを前方へ押圧するようにバネ付勢されたホルダとから構成され、
プラグへの装着過程で、先ず、ロック用ボールがプラグ外周面に押されてホルダと共に長円状ボール収容孔内をその後端解放位置へと後退することにより、ロック用ボールが一時的に解放状態となり、次いで、ロック用ボールが付勢バネの作用でホルダと共に長円状ボール収容孔内をその前端ロック位置へと前進することにより、ロック用ボールがプラグの環状溝部に嵌り込んでロック状態となることにより、ワンタッチでプラグへの装着が可能となることを特徴とする人工透析器用ソケット。 - ホルダの先端部が外装スリーブの先端面より外方に突出する突起として形成され、ソケットの洗浄時、上記ホルダの突起を押圧操作することにより、ホルダを後退させ、ロック用ボールの拘束を解除し、ロック用ボールを解放状態とできることを特徴とする請求項１に記載の人工透析器用ソケット。
- ホルダ先端部の突起と外装スリーブの先端面とが目視識別可能に構成されていることを特徴とする請求項１又は２項に記載の人工透析器用ソケット。
- ソケット本体のカップリング部には、ロック用ボールの収容孔から後方へ所定寸法離間した位置に洗浄液の内部通路を構成する連通孔が開設され、ソケットの洗浄時、ロック用ボールの収容孔と連通孔との間の内部通路内にも洗浄液が入り込むようにしたことを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の人工透析器用ソケット。
- ソケット本体のカップリング部の内壁面には、人工透析器のプラグ先端部と当接する端面シールが設けられていることを特徴とする請求項１〜４項のいずれかに記載の人工透析器用ソケット。
- 人工透析器のプラグと透析液の供給乃至排出を行なう透析液チューブとを接続する人工透析器用ソケットと、この人工透析用ソケットを洗浄するための洗浄用アダプタとの組み合わせであって、
前記人工透析器用ソケットは、
人工透析器のプラグに外嵌接続するカップリング部と透析液チューブ接続筒部とを有すると共に、カップリング部には差し込み方向へ細長い長円状のボール収容孔が形成されたソケット本体と、
ソケット本体のカップリング部外周に嵌装される外装スリーブと、
ソケット本体のカップリング部の外表面と外装スリーブの内表面とのスペースに進退可能に収容され、ボール収容孔に収容されたロック用ボールを前方へ押圧するようにバネ付勢されたホルダとから構成され、かつ
前記ソケット本体のカップリング部には、ロック用ボールの収容孔から後方へ所定寸法離間した位置に洗浄液の内部通路を構成する連通孔が開設され、さらに前記ホルダの先端部が外装スリーブの先端面より外方に突出する突起として形成され、
前記洗浄用アダプタは、
ブロックを境にして両側にソケットのカップリング部をシール材を介して包持収容できるソケット収容室を備えるとともに、各収容室間を連通する小径通路がブロックに貫通形成されたアダプタ本体と、
アダプタ本体の両端に嵌装され、ソケットをロックするロック用カラーとから構成され、かつ
アダプタ本体のソケット収容室の底壁面には、ホルダの突起を押圧する押圧用突起が設 けられており、
それにより、アダプタ本体のソケット収容室内にソケットのカップリング部を差し込み、先端突起を介してソケットのホルダを後退させ、ロック用ボールを解放状態にして、アダプタ本体とソケットとをロックし、アダプタ本体内に洗浄液を循環させることにより、ソケットの内壁並びに内部通路内の収容物を洗浄液に晒すように構成した、ことを特徴とする人工透析器用ソケットと洗浄用アダプタとの組み合わせ。
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