JP3758695B2 - 加湿器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は加湿器に係る。この加湿器は従来にない高加湿能力を有しコンパクトであることが要求される分野で使用できる。また、従来出来なかった耐油性、耐溶剤性を有しているのでオイルミスト等を有してる空気中でも使用出来る。さらに、又加湿器から蒸発される蒸気がクリーンである為家庭内、クリーンルーム内、病院等で利用できる。
【0002】
【従来の技術】
従来から超音波方式、電熱板蒸発方式、自然蒸発方式等の加湿器が知られているが各々大なる欠点があった。
超音波方式においては水中に含まれるコンタミ(Ca,Siなど)を水分と一緒に空気中に放出し白粉を発生し人体や家具に影響を及ぼす欠点があった。又、室内や加湿器の周囲湿度の高低にかかわらず加湿し続け、結露しても一方的に加湿を続ける欠点があった。さらに超音波加湿器から放出される水分は5μm〜75μmの粒径で湿度とか蒸気でなくミストであるという欠点をもっていた。
【0003】
電熱板蒸発方式は電熱を使う為ランニングコストが高く水中に含まれるSi,Ca等のコンタミが電熱蒸発板上に短期間に蓄積し効率を下げる欠点があり、時々蓄積物のメンテナンスをやる必要があった。また、超音波方式と同様周囲の湿度に関係なく蒸気を放出し続ける欠点があった。
一方自然蒸発式の例として、疎水性高分子の多孔質膜を用いた膜式加湿器が知られている。これは、図7に示すように、水の通過を阻止し、水蒸気の通過を許容する疎水性多孔質膜41に補強材42を積層したシートを用いて袋帯状の中空構造体を形成し、内部には水の流路を確保するためのスペーサー43を配置し、図8に示すように通風路を確保するためのセパレータ44と共に渦巻状に巻き上げ、取付枠45に収納したものである。この加湿器を運転するには、注水口46より加湿用の水を袋帯状の中空構造体の内部に供給し、取付枠45の開口部へと空気を送る。これにより、中空構造体の内部の水は、疎水性多孔質膜を介して水蒸気として外部へ放出され、加湿される。(例えば、特公平3−6109号公報、特開昭63−32229号公報)
ところが、このタイプの加湿器は、前記袋帯状の中空構造体の内部に給水されると、中空構造体が膨張して空気の通路を狭くするために、加湿効率が低下したり、空気の圧力損失を増大させる。また、内部水圧によるシートの破壊を防ぐために、補強材が不可欠であった。
【0004】
このため、特開昭61−180842号公報には、中空構造体の中空部を複数本の通路に分割し且つ給水量を制御するための制御部を設けることが提案されている。しかしながら、この方法は構造が複雑となり、コスト上からも実用的でない。
このように従来の加湿膜は耐切削油性、耐染色性等に欠けるため、このような加湿膜を用いた加湿器を運転する場合は、加湿用水を前処理し、これらの不純物を除去する必要があったが、この前処理は、設備的にも大がかりとなり、コスト高となり実用的ではなかった。従って、切削油による汚染、加湿用水中の不純物による汚染が発生すると、加湿膜の全面交換が必要であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記の如き従来技術の問題点を解決し、クリーンな蒸気加湿ができ、水のミスト状態ではなく自然な湿度の加湿ができ、ランニングコスト、イニシャルコストが低く、水中又は空気中に含まれる油分による加湿膜の漏水等を防止し、かつ高加湿能力を有し、特に家庭内、工場等のクリーンルーム内、病院等で好適に使用できるコンパクトな加湿器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、ケーシング内に、加湿用水を保持するためのタンク、加湿ユニット、該タンクから該加湿ユニットに加湿用水を供給するための給水手段、該加湿ユニットに空気を供給するための送風手段、該空気の吸気口、該加湿ユニットにおいて加湿された空気を排出するための排気口を備えた加湿器において、該加湿ユニットは、連通多孔質構造を有し、平均孔径0.01〜10μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質高分子基材のノードとフィブリルから成る骨格が撥水性および撥油性を有する有機ポリマーで被覆され且つ連続気孔を維持し、撥水性、耐汚染性および透気性を有する加湿膜を含んで成ることを特徴とする加湿器を提供する。
【0007】
本発明に用いる多孔質高分子基材は、基材の表面から裏面にかけて連通する多数の微細孔を有する高分子材料からなる。具体的には、耐熱性、耐腐食性を有するものが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンを延伸処理して得られる多孔質材料は、フィブリルと呼ばれる小繊維とノードと呼ばれる結節から構成された独特の連通多孔質構造を有しており、本発明で用いる有機ポリマーの微細粒子を安定してその構造体に取り込むことが出来、撥水性、耐熱性、耐薬品性にも優れている。
【0008】
多孔質高分子基材の孔径としては、本発明の有機ポリマーの粒子が入り込むことが必要であり、通常0.01〜10μm、特に0.1〜1μmの平均孔径のものが好ましい。この孔径が大きすぎると、耐水圧の低下をもたらし良くない。空孔率は、5〜95%、特に60〜95%のものが好ましい。空孔率が小さすぎると透湿度が小さくなって加湿効率が低下する。また大きすぎると多孔質材料の強度が低下する。厚みについては5〜1000μm、特に30〜100μmのものが好ましく、厚すぎると、透湿度が低下し、逆にあまり薄いものでは強度的に問題がある。
【0009】
多孔質高分子基材の骨格を被覆する有機ポリマーは撥水性及び撥油性を有する有機ポリマーであれば特に限定されないが、フッ素化有機側鎖を繰り返し表われるペンダント基として有するポリマーが好適である。この有機ポリマーは、ポリマー鎖のペンダント基が高くフッ素化されているので、基材である多孔質高分子材料の撥水性および撥油性を増大させる働きがある。
【0010】
フッ素化有機側鎖を繰り返して有する有機ポリマーとしては、具体的には、式
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、nは3〜13の基数であり、RはH又はCH3 である)
のフルオロアルキルアクリレート及びフルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルアリールウレタン、例えば
【0013】
【化2】
【0014】
フルオロアルキルアリルウレタン、例えば
【0015】
【化3】
【0016】
フルオロアルキルマレイン酸エステル、例えば
【0017】
【化4】
【0018】
フルオロアルキルウレタンアクリレート、フルオロアルキルアミド、フルオロアルキルスルホアミドアクリレート、などのモノマーを重合して得られるものが好適である。フッ素化アルキル部分は6〜16個の炭素原子を有することが好ましく、6〜12個の炭素原子を有することが最も好ましい。
撥水性及び撥油性を有するその他の有機ポリマーとして主鎖に脂肪族環構造を有するものもある。具体的には、次の一般式で示されるものなどを挙げることができる。
【0019】
【化5】
【0020】
(ただし、R1 はFまたはCF3 ,R2 はFまたはCF3 )
【0021】
【化6】
【0022】
(ただし、1は0〜5、mは0〜4、nは0〜1、1+m+nは1〜6、RはFまたはCF3 )
【0023】
【化7】
【0024】
(ただし、o,p,qは0〜5、o+p+qは1〜6)
これら一般式で示される含フッ素重合体の中でも、特に次のような環構造を有するものが好適に用いられる。
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
また、市販されている「AFポリマー」(デュポン社の商品名)、「サイトップ」(旭硝子の商品名)なども使用可能である。
また、上記の如きポリマーの撥水性及び撥油性を失なわない限り共重合体も使用できることはもちろんである。
ここで、共重合させる単量体としては、特に限定はされないが、フルオロオレフィン、フルオロビニルエーテルなどの含フッ素モノマーが望ましく、例えば四フッ化エチレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、あるいはカルボン酸基やスルホン酸基のような官能基を有するパーフルオロビニルエーテルなどが好適であり、さらにフッ化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなども使用可能である。
【0028】
通常のフッ素化モノマーの水性エマルジョン重合で得られる重合物の粒子は、0.1〜10μm程度の粒径となり、サブミクロンの多孔構造を持つ基材を均一に被覆することは困難であるが、本発明では、有機ポリマーを平均粒径が0.01〜0.5μmの微細な粒子とすることにより、多孔質高分子材料の微細構造によく入り込み、この骨格組織に均一な厚みの被覆を形成するようにすることが出来る。
【0029】
このような微細なポリマー粒子を含む水性ラテックスは、モノマーのマイクロエマルジョンを注意深く選択することにより可能にされた(PCT/US93/08884)。即ち、このモノマーマイクロエマルジョンは水、フルオロアルキル基を有する不飽和有機モノマー、フルオロ界面活性剤、及び任意に補助溶剤又は無機塩を混合して調製する。用いる量はフッ素化モノマー1〜40重量%、好ましくは5〜15重量%、界面活性剤1〜40重量%、好ましくは2〜25重量%、残部水である。
【0030】
ポリマー製造に際して別のモノマーも存在し得るが、ペルフルオロアルキル基を有するモノマーがモノマー合計量のうち少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%を成すべきである。このような追加されるモノマーには不飽和部分を含むエポキシ、カルボン酸、アミンなどある。
代表的なペルフルオロアルキル含有モノマーは先に説明した。
【0031】
用いるフッ素化界面活性剤は一般式Rf RYX(式中、Rf は1〜15個、好ましくは6〜9個の炭素数のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキルエーテル基であり、Rは例えば炭素数0〜4のアルキレン基又はアルキレンチオエーテル(−CH2 −S−CH2 −)結合である。)を有する。フッ素化アニオン界面活性剤では、Yは例えばカルボキシル基(COO−)、スルホン基(SO3 −)又はスルフェート基(SO4 −)であり、Xはアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンである。フッ素化ノニオン界面活性剤ではYは例えばエトキシエチレン(OCH2 CH2 )m 結合(式中、mは1〜15、好ましくは3〜9の整数)であり、Xは水酸基である。フッ素化カチオン界面活性剤ではYXは例えば第四級アンモニウム塩である。
【0032】
上記のマイクロエマルジョンを用いる単一バッチプロセスでポリマーマイクロエマルジョンを調製する場合、モノマーマイクロエマルジョンの温度を5〜100℃、好ましくは5〜80℃に調整し、フリーラジカル生成重合開始剤を添加する。好ましい開始剤にはペルスルフェート、アゾ系開始剤(例えば、2,2−アゾビス(2−アミドプロパン)ジヒドロクロリド)、過酸化物、光重合開始剤(例えば、紫外線重合開始剤、γ線重合開始剤)がある。開始剤の量はモノマー含分に対して0.01〜10重量%の範囲で変化できる。必要に応じて、補助溶剤、例えば、アルコール、アミンその他の両親媒性分子、又は塩を用いてマイクロエマルジョンの調製を促進することができる。
【0033】
重合開始剤を導入するとモノマーの重合が開始し反応が進行する。得られるポリマー粒子ラテックスは0.01〜0.5μmの平均粒子径、10,000以上、好ましくは20,000以上又は50,000以上のポリマー平均分子量を有する。異常に小さい粒径の粒子を含むポリマー系ではより大きい粒子のポリマー系と比べていくつかの利点がある。ポリマー系はコロイド分散体であり、通常濁りがなく透明である。小粒径粒子は均一な厚みの被覆を可能にし、多孔性基材の良好な透気性を維持する。前記の如く、ポリマー鎖のペンダント基が高くフッ素化されているものは、ポリマーを適用する基材の撥水性及び撥油性を増大する働きがある。
【0034】
このように製造したポリマーは、水性ラテックス中のポリマー濃度を通常2〜25%、好ましくは5〜10%程度にし、基材をコロイド分散体中に浸漬し、又はコロイド分散体を基材にスプレーして、コロイド分散体から直接に適用できる。又、塗布装置(コータ)によって適用してもよい。
また、基材にモノマーマイクロエマルジョンを適用してから、マイクロエマルジョンの重合を光重合開始により行なうことも可能である。
【0035】
基材に被覆を行なった後、残っているすべての水、界面活性剤又は重合開始剤は熱風、赤外線、熱ロールなどを用いた加熱(例えば、150〜250℃)、水蒸気ストリッピング、真空蒸発など任意の便利な方法で除去することができる。
さらに、多孔性高分子基材の孔を形成する内部構造中に残った有機ポリマー粒子を溶融させることにより、多孔性基材の骨格を有機ポリマーで被覆することができる。上記水等の除去とこの溶融は同一処理で行なうことができる。
【0036】
この多孔質高分子基材の骨格を有機ポリマーで被覆するとき、基材である多孔質高分子材料の連続した孔構造を維持するように調整する。従来の水性エマルジョン重合で得られるフッ素化ポリマーでは、その粒子の大きさから、この孔構造を閉塞することになるが、上記したように、用いる有機ポリマーは、平均粒径が0.01〜0.5μmの微細な粒子であるため、連続した孔構造の維持が可能であり、多孔質高分子材料の空孔率を著しく低下させることがない。そして、これにより、本発明の加湿膜は、撥水性、耐汚染性を有するだけでなく、大きい透湿度を保持することが出来る。
【0037】
こうして、提供される加湿膜は、多孔性高分子基材である延伸多孔質PTFEの骨格を撥水性かつ撥油性の有機ポリマーで被覆しかつ連続気孔を維持しているので、疎水性高分子多孔膜に耐汚染性を付与しながらなおかつその多孔膜の高い透気性を保持することが可能である。このような加湿膜は、シート状で、種々の形態で用いることが出来る。例えば、親水性を有する、不織布、織布、編布等の布帛の両側に本発明の加湿膜を積層することにより、一体三層構造の加湿用シートを形成することが出来る。この加湿用シートは、空気流路確保のために一定間隔をあけて、適宜の枚数が設けられる。この場合、加湿用水は、中間層の布帛により保持され、水蒸気は、両側に積層された加湿膜を介して、空気中に放出される。あるいは、このシート状加湿膜を2枚重ね、端部を閉鎖して袋状とし、この内部に加湿用水を供給して袋状加湿膜としてもよい。この袋状加湿膜は、空気流路確保のために一定の間隔をおいて渦巻状に巻かれたり、プリーツ状に折り畳まれたりして設けられる。この場合も、加湿用水は、2枚の加湿膜を介して水蒸気として外部に放出される。
【0038】
また、この加湿膜は、チューブ状に形成して用いることも出来る。例えば、押出機等によりチューブ状に成型された高分子材料を延伸処理等により多孔質化して基材とし、これに前記有機ポリマーの粒子を被覆することにより、チューブ状加湿膜を得ることが出来る。あるいは、テープ状の多孔質高分子材料を螺旋状にラッピングしたり、寿司巻き状にラッピングして、チューブ状に成形して基材とし、成形の前または後に前記有機ポリマーをこの基材の骨格組織に被覆するようにしてもよい。このチューブ状加湿膜は、空気流路または加湿用水の流路確保のために所定の間隔をおいて複数本設けられる。この場合、このチューブ状加湿膜は、その内部または外部に加湿用水を供給し、その反対側に空気を供給することにより、同様に加湿膜を介して水蒸気を移動させる。
【0039】
この加湿膜には、任意に、織布、不織布、編布等の布帛を補強材として、加湿膜に積層することができる。これにより、加湿膜の強度の向上、加湿器製作時の加湿膜の取扱い性の向上等をはかることが出来る。
本発明において上記の加湿膜を用いて加湿ユニットを構成する場合、前記した不織布、編布、織布等の布帛からなる給水層の両面に、一体的に、加湿膜からなる水蒸発層が設けられた一体三層構造の加湿用シートを用いることが好適である。また、加湿ユニットは、端縁部が閉じられた上記の加湿用シートが、通風のための間隔をおいて、略平行に、複数個設けられており、該複数個の加湿用シートの各々の間の適宜の位置に給水用板状体が挟まれて上下の加湿用シートと接合されており、該給水用板状体には、複数個の加湿用シートおよび給水用板状体を貫通する給水用小穴が設けられているものから形成されることが好適である。
【0040】
図5を参照すると、本発明の加湿用シートは給水層28の両面に水蒸発層26,27を積層したものである。
給水層28はこれに供給された加湿用水を保持するのに役立ち、この加湿用水は水蒸発層26,27を通して水蒸気としてシート外へ(外部へ)と放出される。
【0041】
給水層28を構成する材料としては、アクリル樹脂、ジアセテート樹脂、ナイロン等から得られる不織布、編布、織布を用いることができるが、加湿器運転時の目詰まり防止等の観点から不織布、編布が特に好ましい。
また、給水層28の厚さは任意の値をとることができるが、通常1〜10mm好ましくは2〜5mmである。また、目付けは不織布の場合、20〜1000g/m2 、特に200〜300g/m2 程度が好ましい。
【0042】
水蒸発層26,27は、既述のとおり、給水層28の両面に一体的に積層され、給水層28に保持されている水を水蒸気として外部に放出する機能を有するものであり、上記した加湿膜からなる。
なお、給水層の両面に積層される水蒸発層は、必ずしも同じ材料を用いる必要は無い。即ち、給水層の片面には無孔質透湿性樹脂からなる水蒸発層又は無孔質透湿性樹脂を多孔質高分子基材の少なくとも一面に含浸及び/又は積層して成る水蒸発層を設け、他の面には上記した加湿膜からなる水蒸発層を設けることもできる。ここで、多孔質高分子基材は前述のものと同様のものを用いることができる。また、無孔質透湿性樹脂は透湿性樹脂の連続被膜を形成するものであり、このようなものとしては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基等の親水性基を持つ高分子であって、水膨潤性でかつ水不溶性のものが好ましく用いられる。例えば、少なくとも一部が架橋されたポリビニルアルコール、酢酸セルロース、硝酸セルロース等の親水性ポリマや、ポリアミノ酸、ポリウレタン、親水性含フッ素ポリマ、シリコーン樹脂等が使用可能であるが、耐熱性、耐薬品性、加工性、透湿度等を考慮に入れるとポリウレタン樹脂、フッ素系透湿性樹脂が好ましい。
【0043】
フッ素系透湿性樹脂としてはスルホン酸系パーフルオロイオン交換樹脂、特開平4−139237号に開示されている含フッ素モノマと親水基含有モノマとのコポリマなどの使用が望ましい。
無孔質透湿性樹脂層の厚さは、通常3〜400μm、好ましくは5〜30μmである。このものの厚さが厚すぎると水蒸気透過量の低下をもたらし、加湿能力が不十分となる。従って、無孔質透湿性樹脂で必要とされる機械的強度、耐用性を満足させる範囲で極力薄い方が好ましい。また、この無孔質透湿性樹脂の透湿度は、少なくとも10000g/m2 ・day 以上、好ましくは30000〜70000g/m2 程度あった方がよい。
【0044】
給水層28と水蒸発層26,27との積層は、公知の方法で行うことが出来るが、例えば、給水層材料にグラビアパターンを施したロールでウレタン系接着剤を塗布し、その上に、水蒸発層を給水層に合わせてロール圧着する。この工程を給水層の上下面に連続して行う。この場合、接着剤を水蒸発層26,27面に塗布し、これを給水層28に圧着してもよい。なお、前記した有機ポリマの多孔質高分子基材の骨格への被覆工程は、給水層と水蒸気層との積層工程の後に行なってもよい。
【0045】
この加湿用シートは、給水層と水蒸発層が一体的に積層された構造となっているため、従来の中空状の加湿器用膜材と比較して、強度的にも改善されたものとなっており、水蒸発層の外側に織布、不織布、編布等の補強材を積層して内部水圧によるシートの破壊を防ぐといった必要は無い。しかしながら、製造時等における水蒸発層の損傷を防止する等の目的でこれを設けることは一向に差し支えない。
【0046】
この加湿用シートは、種々の形態で加湿器に用いることが出来る。その例を挙げると、先ず適宜の形状のシートの四方の端縁部を接着剤による接着又は熱融着等の方法で閉鎖する。熱融着の場合、中間層材料の不織布等を溶かして行う。このシートを複数個準備し、通風の為の間隔をおいて、略平行に並べて加湿ユニットとする。この加湿ユニットに給水する為に、各シート間の適宜の位置に板状体を挟んで上下のシートと接合し、板状体及びシートを上下に貫通する給水用小穴を設ける。あるいは、貫通するように予めシートと板状体に穴をあけておき、これを接合するようにしてもよい。接合には接着剤を用いるとよい。このように構成すると、加湿用水は、この給水用小穴を経由して、各シートに供給され、毛細管現象により、シート全域に行き渡ることになる。他の給水方法としては、各シートにチューブ等を用いて給水口を設け、この給水口を経由して加湿用水を供給してもよい。
【0047】
他の例としては、加湿用シートを長尺に形成し、四方の端縁部を閉鎖した後、スペーサを用いて一定の通風の為の間隔をあけて渦巻状に巻成したり、プリーツ状に折り畳んだりして加湿ユニットとすることも出来る。給水は、このシートに給水口を設けて行えばよい。
加湿ユニットは、必要に応じて加湿器用シートに排水口を設け、シート内に給水された加湿用水を洗浄の為に排出したり、あるいは、加湿器の運転中に排水口から一定の量の水を連続的に又は間欠的に排出して加湿用水の流れを作り、シート内の目詰まりを発生しにくくすることが出来る。
【0048】
上記の如く得られる加湿ユニットをケーシング内にセットして加湿器を構成するに当っては、ケーシング内に、加湿ユニット以外に、少なくとも加湿用水を保持するためのタンク、タンクから加湿ユニットに加湿用水を供給するための給水手段、加湿ユニットに空気を供給するための送風手段、空気の吸気口、加湿された空気を排出するための排気口を具備することが必要である。ヒーターを用いなくても、十分な加湿能力を有するが、ヒーターを用いて加湿用水を加熱し、加湿能力を更に向上させることは、一向に差し支えない。また、吸気口の周辺にフィルターを設けて取り入れる空気を浄化することもできる。具体的な構造例については実施例で説明する。
【0049】
【実施例】
以下の実施例において耐水圧、通気性及び透湿度を下記方法で測定した。
耐水圧
JIS L 1092 5.1項のB法に従った。また、切削油の耐圧試験もこれに準じた。
【0050】
通気性(ガーレー数)
JIS L 1096 6.27項のB法に準拠し、王研式透気度試験機により測定した。
透湿度
JIS L 1099中、4.2項のB法(酢酸カリウム法)により行なった。
【0051】
図1及び図2は本発明の実施例の加湿器の斜視図及び断面図である。
図中、1はケーシング(200mm×250mm×260mm)、2は加湿ユニット、3は加湿用水保持のための水タンク、4はタンクから加湿ユニットへ加湿用水を供給する給水チューブ、5は加湿ユニットに空気を送風するためのモーター付ファン、6は空気の吸気口、7は加湿ユニットにおいて加湿された空気を排出するための排気口、8は排気口7に設けた風方向制御プレート、9はフイルター、10は電気ボックス、11はコンセントとコードである。
【0052】
ファン5によって吸気された空気12は、吸気口6及びフイルター9を介して加湿ユニット2に至り、加湿ユニット2を通る間に加湿され、排気口7から湿った空気13として排出される。加湿ユニット2へは水タンク3からパイプ4を介して水が供給される。
図3に加湿ユニット、図4〜6に加湿ユニットに用いる加湿用シート及びスペーサを示す。加湿ユニットは加湿シート21と波板状スペーサ22を交互に積層して構成されるが、給水部23については波板状スペーサ22ではなく給水用板状体24を配置する。
【0053】
加湿用シート21は、図5に示すように、加湿膜26,27の間にアクリルの不織布(厚さ3mm,目付50g/m2)28を部分接着して挟持した上で、周縁部29を完全に融着してシート状としたもの(150mm×150mm×3mm)であるが、図4に示すように給水部23に給水用水穴30を有し、ここから不織布28内へ水が供給される。この加湿膜26,27及び加湿用シート21の具体的な製造方法は後に説明する。
【0054】
図6にスペーサ及び給水用板状体を示す。波板状スペーサ22は外形150mm×150mm、高さ2.5mm、ピッチ6.2mmの塩化ビニル樹脂製である。給水用板状体24は30mm×30mm×3mmの塩化ビニル樹脂製板で、中央に直径16mmの穴を有する。
これらの加湿シート21とスペーサ22、給水用板状体24とを図3の如く交互に重ね合わせ、加湿用シート21と給水用板状体24の接合部を接着して加湿ユニット(150mm×150mm×150mm)を作製する。この加湿ユニット2の加湿膜の表面積は1m2 であった。
【0055】
図3の加湿ユニットは給水部23(24)が上方にあるが、図2の加湿器に組入れる際には給水部23(24)が下方にあり、かつ波板状スペーサ22の通風方向が上下方向になるような向きで加湿器中に配置する。これにより、図2において、吸気口6から入った空気は加湿ユニット2中を下方から上方に向って流れることができ、かつその間に加湿シートの加湿膜を介して透過してくる水蒸気を含んで湿った空気となり、排気口7から出てゆくことができる。
【0056】
また、加湿ユニット2は必要に応じて枠(図示せず)で固定して取扱いを容易にしてもよい。
以下に、加湿膜および加湿用シートの製造方法について説明する。
(撥水性、撥油性有機ポリマー調製例1)
100ミリリットルのガラス製反応器にフルオロアクリレート即ち
【0057】
【化10】
【0058】
(Du Pont製商品名Zonyl TA−N)10g、アンモニウムペルフルオロオクタノエート15g、蒸留水70gを入れ、攪拌しながら70℃に加熱した。淡緑色の清澄な(clear)マイクロエマルジョンが形成された。蒸留水5gに溶解した0.1gの過硫酸カリウムを反応器に入れて反応を開始させた。70℃で約1時間反応させた。それから反応混合物を室温まで冷却した。清澄なラテックスが得られ、室温で少なくとも24時間安定であった。ラテックスの平均粒径を測定すると擬弾性光散乱法で約0.03μmであった。得られたポリマの重量平均分子量を測定すると古典光散乱法で約1,000,000以上であった。
【0059】
(撥水性、撥油性有機ポリマー調製例2)
100ミリリットルのガラス製反応器にフルオロメタリレート(Dupont製商品名Zonyl TM)10g、アンモニウムペルフルオロオクタノエート20g、蒸留水65gを入れ、撹拌しながら75℃に加熱した。淡緑色の清澄マイクロエマルジョンが形成された。次に5gの蒸留水に溶解した0.1gの過硫酸アンモニウムを反応器に入れて反応を開始した。75℃で約1時間重合させてから反応混合物を室温まで冷却した。清澄ラテックスが得られ、室温で少なくとも24時間安定であった。ラテックスの平均粒径を擬弾性光散乱法で測定すると約0.03μmであった。重量平均分子量を古典光散乱法で測定すると1,000,000以上であった。
【0060】
(撥水性、撥油性有機ポリマー調製例3)
フッ素化モノマ、水素化モノマ、フッ素化界面活性剤、及び水素化界面活性剤の混合物を用いた。
100ミリリットルのガラス製反応器にフルオロアクリレート即ち(Du Pont製商品名Zonyl TA−N)4g、スチレン(Aldrich Chemical製)2g、アンモニウムペルフルオロオクタノエート3g、ナトリウムドデシルスルフェート(Aldrich製)7g、蒸留水80gを入れ、攪拌しながら70℃に加熱した。清澄マイクロエマルジョンが形成された。蒸留水5gに溶解した0.07gのカチオン重合開始剤(Wako製、V−50)を反応器に入れて反応を開始させた。70℃で約2時間重合させた。それから反応混合物を室温まで冷却した。清澄なラテックスが得られ、室温で少なくとも24時間安定であった。
【0061】
(加湿膜調製例)
PTFE多孔質膜(厚さ50μm、空孔率80%、平均孔径0.2μm、ガーレー数10秒)を撥水性、撥油性有機ポリマー調製例1で調製した水性ラテックスを蒸留水で3倍に希釈したものに浸漬し、余剰液体を滴下除去し、225℃のオーブン中に3分間置いた。この処理で水とフッ素化界面活性剤が除去されると共に、フッ素化ポリマが溶融し流動した。得られた膜のガーレー数を測定すると11秒であり、連続気孔が維持されていることが確認された。
【0062】
この処理膜の耐切削油性を上水道管用切削油(ミヤガワ50W)を用いた耐圧試験で評価した。また、同じく上記処理膜でたて10cm×よこ10cmの袋を作成し、袋中に水道水を連続的に供給しながら、60℃乾燥熱風を吹付け、袋内部の水を、膜を介して250cc/cm2 の量(50l)蒸発させた後、水中含有物が堆積した部分の膜の耐水性試験を実施した。
比較のために、上記有機ポリマ被覆処理を行なわない上記と同じPTFE多孔質膜について、上記と同じ評価試験を行なった。
【0063】
結果を下記表に示す。
(加湿用シートの調製例)
加湿膜調製例で作製したフッ素化有機ポリマ処理PTFE膜の片面に、グラビアパターンロール(開孔率70%に設定)を用いて接着剤(ウレタン樹脂)を塗布し、この面にアクリルの不織布(厚さ3mm、目付50g/m)を合わせ、圧力3kg/cm2 、速度5m/分の条件でロール圧着を行った。その後、アクリル不織布の他の面にも同じ方法、条件で、同じ有機ポリマ処理PTFE膜を圧着した。この様に連続して3層一体構造としたシートを150mm×150mm×3mmに切断し、四方の端部を加熱加圧によりシールし、加湿用シートとした。なお、加湿用シートの透湿度は50,000g/m2 ・24hrであった。
【0064】
上記の如く作製した加湿器(図1、図2)を用い、温度22〜30℃、相対湿度55%の周囲条件中で、風量2m3 /分で加湿実験を行なったところ、加湿量は22℃で130g/時、25℃で168g/時、30℃で250g/hであった。
上記の表の加湿量は、家庭用として使用しうるに十分過ぎる値である。この加湿器は、ヒーターを使用せず火災に対して安全であり、又加湿ユニット自体が周囲の湿度で放出する湿気を自己調整するという機能を有しており、適度の湿度になる。よってイニシャルコストだけでなくランニングコストも低い加湿器を得ることができる。
【0065】
【発明の効果】
従来の家庭用加湿器は、ファンモーターの他に、振動板や熱板を伴いランニングコストが高いが、本発明の加湿器はこれらを使用しなくてもよい。また、本発明の加湿器は、ヒーターを用いて加湿用水を加熱しなくても、十分な加湿能力を有し、コンパクトであり、特に、家庭内、工場等のクリーンルーム内、病院等で好適に使用出来る。また、本発明の加湿器は湿度の自己調整機能を有し、かつ周囲の湿度を自己調整しながら加湿できる。さらに、オイルミスト、等が外部より侵入しても耐水圧力は低下せず漏水の原因とならない。本発明の加湿器はH2 Oの水分しか透過せず、従来型のようにコンタミも水分と同時に放出するのに比べてクリーンな加湿が可能であり、人間の生活環境をより良くする事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】加湿器の外観図。
【図2】加湿器の縦断面図。
【図3】加湿ユニットの斜視図。
【図4】加湿用シートの斜視図。
【図5】加湿用シートの横断面図。
【図6】スペーサ及び給水用板状体の斜視図。
【図7】従来の加湿用中空構造体の横断面図。
【図8】従来の加湿ユニットの斜視図。
【符号の説明】
1…ケーシング
2…加湿ユニット
3…水タンク
4…給水チューブ
5…ファン
6…吸気口
7…排気口
8…風方向制御プレート
9…フイルター
10…電気ボックス
21…加湿シート
22…波板状スペーサ
23…給水部
24…給水用板状体
28…不織布
30…給水用小穴
Claims (5)
- ケーシング内に、加湿用水を保持するためのタンク、加湿ユニット、該タンクから該加湿ユニットに加湿用水を供給するための給水手段、該加湿ユニットに空気を供給するための送風手段、該空気の吸気口、該加湿ユニットにおいて加湿された空気を排出するための排気口を備えた加湿器において、該加湿ユニットは、連通多孔質構造を有し、平均孔径0.01〜10μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質高分子基材のノードとフィブリルから成る骨格が撥水性および撥油性を有する有機ポリマーで被覆され且つ連続気孔を維持し、撥水性、耐汚染性および透気性を有する加湿膜を含んで成ることを特徴とする加湿器。
- 前記加湿ユニットは、不織布、編布、織布等の布帛からなる給水層の両面に、一体的に、前記加湿膜を水蒸発層として設けた加湿シートを含んで成る請求項1記載の加湿器。
- 前記加湿ユニットは、端縁部が閉じられた請求項2に記載の加湿用シートが、通風のための間隔をおいて、略平行に、複数個設けられており、該複数個の加湿用シートの各々の間の適宜の位置に給水用板状体が挟まれて加湿用シートと接合されており、複数個の加湿用シートおよび給水用板状体を貫通する給水用小穴が設けられているものから形成されている請求項2に記載の加湿器。
- 前記有機ポリマーが繰り返し表われるペンダント基としてフッ素化有機側鎖を有する有機ポリマーである請求項1,2または3に記載の加湿器。
- 前記吸入口の周辺に、更にフイルターを備えている請求項1〜4のいずれか1項に記載の加湿器。
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