JP3758383B2 - パワー半導体装置およびその組立方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワートランジスタモジュール,IGBTモジュール,インテリジェントパワーモジュールなどを実施対象としたパワー半導体装置に関し、詳しくはパッケージ構造,およびその組立方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】
まず、頭記したインテリジェントパワーモジュールを例に、従来におけるパワー半導体装置の組立構造を図4,図5(a),(b) に示す。各図において、1は端子一体型の外囲ケース(樹脂ケース)、2は外囲ケース1の上蓋、3は外囲ケース1の一方の側壁部にインサート成形して上方に引出した主回路端子(入力端子+,−,出力端子U,V,W)、4は外囲ケース1の他方側の側壁部から上方に引出した制御用信号端子であり、外囲ケース1には次記の構成になる電力用の主回路組立体5,および制御回路組立体6が組み込まれている。
【0003】
ここで、主回路組立体5は、パワー半導体素子(パワートランジスタ,IGBT,フリーホイーリングダイオードなど)5aをセラミックス板(板厚:0.6mm程度)を基材とした絶縁基板(セラミックス板5b-1の上下主面に回路パターン,放熱用の銅板5b-2,5b-3を接合したダイレクト・ボンディング・カッパー基板など)5bに搭載した構成になり、外囲ケース1の底面に開口した基板取付穴1a(絶縁基板5bの外形寸法に相応した角穴)へ下面側から嵌め込み、セラミックス板5b-1周縁を前記基板取付穴1aの周縁に沿って形成した段付き座面1a-1とを重ね合わせて、両者の間が接着剤(シリコーン系の接着剤)7で固着されている。なお、主回路組立体5の絶縁基板5aと外囲ケース1との間を固着する接着剤にシリコーン系接着剤7を採用するのは、セラミックス板5b-1と外囲ケース1との熱膨張差に起因して接着剤層に加わる応力をシリコーン系接着剤のゴム弾性を利用して吸収して接着剤の剥離を防ぐようにするためである。
【0004】
一方、制御回路組立体6はICなどの回路素子6aをプリント板6bに実装した構成になり、前記の主回路組立体5の側方に並べて外囲ケース1の底面に形成した凹状台座面1b(プリント板の外形寸法に相応した窪み)の上に載置して接着剤(エポキシ系接着剤など)8で固着されている。
【0005】
また、前記の主回路組立体5と主回路端子3の間,制御回路組立体6と制御用信号端子4の間,および主回路組立体5と制御回路組立体6の間はボンディングワイヤ9で接続され、さらに外囲ケース1の内部に封止樹脂(シリコーンゲル)10を充填した上で上蓋2が被着されている。なお、外囲ケース1は樹脂ケース以外に金属ケース,セラミックスケースを用いる場合もある。
【0006】
ここで、前記主回路組立体5を外囲ケース1に接着組立する際の手順について述べると、外囲ケース1の底面に開口した基板取付穴1aの内周面全域に液状の接着剤7を塗布した上で、絶縁基板5bを下面側から嵌め込み、セラミックス板5b-1の上面が段付き座面1a-1に殆ど密着するように押圧力を加え、この状態で接着剤7を加熱硬化させる。なお、この組立状態では前記接着剤7の層厚さは0.1mm以下となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記した従来の半導体装置のパッケージ構造では、特に外囲ケースに主回路組立体を接着剤で固着する際に次記のような問題点がある。
すなわち、主回路組立体5の通電に伴ってパワー素子5aから発熱する熱を冷却フィンを介して外部へ効率よく放熱させるには、組立状態で外囲ケース1の裏面と絶縁基板5bの裏面(放熱面)とを面一に合わせることが品質管理面で重要である。すなわち、図5に示した半導体装置の組立状態で、組立精度のばらつきから絶縁基板5bの裏面が外囲ケース1の裏面よりも0.1mm以上引っ込んでいると、絶縁基板5bを冷却フィンに密着させることが困難となって絶縁基板5bの放熱性が低下する。また、逆に絶縁基板5bの裏面が外囲ケース1の裏面よりも0.1mm(段差ΔS)以上突き出していると、外囲ケース1をその左右両端に開口しているボルト穴1cにボルトを通して冷却フィンに締結する際に、絶縁基板5bに反りを生じさせるような曲げ力が加わり、このために曲げに脆いセラミックス基板5b-1にクラック,割れが生じることがある。
【0008】
このように従来構造では、外囲ケース1に主回路組立体5を接着組立てする工程での組立精度のばらつきがそのまま欠陥の要因となるために、このことが製品の品質維持を図る上でのネックとなっている。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、組立状態で加わる外力に対して絶縁基板のセラミックス板をクラック割れから安全に保護し、併せて外囲ケースに主回路組立体を組付ける接着組立工程で高い組立精度が確保できるように改良したパワー半導体装置,およびその組立方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、セラミックス板を基材とする絶縁基板にパワー半導体素子を搭載した構成になる電力用の主回路組立体を、外囲ケースの底面に開口した基板取付穴に下方から嵌め込んでその周縁と前記基板取付穴の裏面側周縁に形成した段付き座面との間を接着剤で固着したパワー半導体装置において、絶縁基板の裏面と外囲ケースの裏面と同一面に揃えるとともに、前記外囲ケースの底面に開口した基板取付穴の段付き座面の周域に沿って、絶縁基板のセラミックス板周縁との間にゴム弾性を有するスペーサを分散介挿し、前記基板取付穴の段付き座面と絶縁基板の周縁との間に充填した接着剤の層厚さを0.5±0.3mmの範囲に確保(請求項1)ものとし、そのために次記のような具体的態様で接着組立てを行う。
【0010】
(1) スペーサをシリコーン系,ないしはエポキシ系,ウレタン系樹脂を材料とした凸起体となし、該スペーサを基板取付穴の段付き座面,もしくは絶縁基板のセラミックス板周縁に固着する(請求項2)。
【0011】
(2) 前記の接着剤として、ゴム弾性を有するシリコーン系,ないしはエポキシ系,ウレタン系の接着剤を用いる(請求項3)
(3) また、前記構成の組立方法として、主回路組立体の絶縁基板,および外囲ケースを接着用治具の平坦テーブル上に載置して各部品を定位置に支持し、この状態で外囲ケース側に形成した基板取付穴の段付き座面と絶縁基板のセラミックス板周縁との間を接着剤で接合する(請求項)。
【0012】
上記のように外囲ケースと絶縁基板との間を固着してシールする接着剤の層厚さを従来(0.1mm以下)と較べて十分に厚く設定することにより、製品を放熱フィンに取付けるなどの際に絶縁基板のセラミックス板に過大な外力が加わった場合でも、そのストレスを層厚の厚い接着剤層のゴム弾性が吸収してセラミックス板のクラック割れが防げるので、製品の信頼性が向上する。なお、この点については、発明者等が行った破壊テストの結果からも、従来製品と較べて破壊強度が1.3〜1.5倍に改善されることが確認されている。
【0013】
また、前項(1),(2) のように外囲ケース側の段付き座面と絶縁基板のセラミックス板との間にゴム弾性を有する突起状のスペーサを介挿し、ここでスペーサの突起高さを適正寸法に定めて接着組立てを行うことにより、段付き座面とセラミックス板との間に充填した接着剤の層厚を所定の厚さに確保することができるとともに、外力が加わった際にはスペーサが接着剤層と一緒に変形するのでストレスの吸収作用をいささかも阻害することはない。
【0014】
さらに、外囲ケースに主回路組立体を接着組立てする工程で、前項(3) の組立用治具を用いることにより、外囲ケースの裏面と絶縁基板の裏面とを同じ面上に揃えた状態で接着を行うことができ、これにより段付き座面とセラミックス板との間に所定層厚の接着剤層を保持しつつ、接着後の組立状態では高い組立精度が確保できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1〜図3の実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図5に対応する同一部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0016】
〔実施例1〕
図1は本発明の請求項1,2に対応する実施例を示すものである。この実施例においては、半導体装置の組立構造は基本的に図5と同様であるが、図示実施例では従来構造と比べて次の点が相違する。
【0017】
まず、外囲ケース1の底面に開口した基板取付穴1aについて、外囲ケース1の裏面から基板取付穴1aの周縁に形成した段付座面1a-1までの深さ(高さ方向)寸法Hは次のように設定されている。すなわち、外囲ケース1の裏面と絶縁基板5bの裏面とを同一面に揃えて主回路組立体5の絶縁基板5bを外囲ケース1の基板取付穴1aに裏面側から挿入した仮組立状態で、絶縁基板5bのセラミックス板5b-1の上面と前記段付座面1a-1とが0.5mmの間隔を隔てて対向し合うように前記深さHを定める。
【0018】
また、前記した段付座面1a-1の周域に沿って、セラミックス板5b-1の周縁との間にゴム弾性を有するスペーサ11が分散して介挿されている。このスペーサ11は接着剤7と同じ種類のシリコーン系,ないしは多少ゴム弾性が低いエポキシ系,ウレタン系樹脂を材料とした直径1mm,高さが0.5mmより若干大き目な半球状の突起体であって、図示実施例ではスペーサ11が外囲ケース1側の段付座面1a-1の周域に沿って等間隔に3〜6箇所に接着されている。
【0019】
そして、外囲ケース1に主回路組立体5を組み込む接着組立工程では、あらかじめ段付座面1a-1を含めて外囲ケース1の基板取付穴1aの内周面にシリコーン系,ないしはエポキシ系,ウレタン系の接着剤7を厚く塗布しておき、外囲ケース1の裏面側から基板取付穴1aに主回路組立体5を挿入した後、前記したスペーサ11の先端が相手側部材であるセラミックス板5b-1の上面に突き当たるように加圧して外囲ケース1の裏面と絶縁基板5bの裏面とが同じ面に揃うようにセットし、この状態を保持して接着剤7を加熱硬化させる。
【0020】
これにより、接着後の組立状態では、基板取付穴1aの段付座面1a-1と絶縁基板5bのセラミックス板5b-1の上面との間に充填された接着剤7の層厚さDが0.5mmないしは0.5±0.3mmの範囲に確保されるようになる。なお、この接着剤7は外部から湿気などがケース内に侵入するのを阻止するシーリング材としての役目も果たす。
【0021】
〔実施例2〕
図2は先記実施例1の応用実施例を示すものであり、この実施例においては、先記した半球状突起体のスペーサ11が外囲ケース1の段付座面1a-1に対向して絶縁基板5bのセラミックス板5b-1の上面周域に分散して取付けられており、そのほかの構成,基板取付穴1aの深さ寸法などは図1と同様である。
【0022】
〔実施例3〕
図3は本発明の請求項に対応した組立方法の実施例を示すものである。この組立方法の実施には図示のような接着用治具12を用いて外囲ケース1と主回路組立体5の絶縁基板5bとの間を接着する。
【0023】
すなわち、接着用治具12は上面が平坦なテーブルで、外囲ケース1,主回路組立体5をテーブル上の定位置に位置決め支持するために、外囲ケースのボルト穴1cに嵌合する位置決めピン12a,および外囲ケース1の裏面を前記テーブル面に押し付ける押さえ具(一端を治具にねじ締結した板ばね)12bと、主回路組立体5の絶縁基板5bをテーブル面に押し付ける押さえ具(ばね付勢されたピン)12cを装備しいてる。なお、12dは接着工程で裏面側にはみ出した接着剤を逃がすように、外囲ケース1の基板取付穴1aの周域に沿ってテーブル上面に形成した凹溝である。
【0024】
そして、半導体装置の組立工程で外囲ケース1に主回路組立体5を接着する際には、先記実施例と同様に外囲ケース1の基板取付穴1aの内周面に接着剤7を塗布した後、図示のように接着用治具12のテーブル上に主回路組立体5の絶縁基板5b,および外囲ケース1を載置し、各部品を治具12の押さえ具12c,12dで定位置に加圧保持し、この状態で接着剤7を加熱硬化させる。
【0025】
これにより、接着剤硬化後の組立状態では、外囲ケース1の裏面と絶縁基板5bの裏面が同一面上に揃い、図5で述べたような段差ΔSの発生を抑えた高い組立精度が確保できる。しかも、外囲ケース1に開口した基板取付穴1aの深さを図1と同様に設定しておくことにより、実施例1,2で述べたスペーサ11を用いなくても、接着後の組立状態では、基板取付穴1aの段付座面1a-1と絶縁基板5bのセラミックス板5b-1の上面との間に充填された接着剤7の層厚さDを所定の厚さである0.5±0.3mmの範囲に確保できる。
なお、この実施例の接着用治具12は、スペーサ11を用いた先記実施例1,2の接着組立工程にも同様に使用することができるのは勿論である。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、製品を使用先で冷却フィンに取付ける際のボルト締結で絶縁基板のセラミックス板に大きな外力が加わった場合でも、ゴム弾性を有する層厚の厚い接着剤がストレスを吸収してセラミックス板をクラック割れから安全に保護することができて製品の信頼性が向上する。なお、この点については発明者等が行った破壊テストからも、従来製品と較べて1.3〜1.5倍の過大な外力に耐えることが実証されている。また、接着部に請求項1,2のスペーサを付加することにより、接着組立ての際に接着剤の層厚を所定の厚さ0.5±0.3 mm の範囲に確保することができる。
【0027】
さらに請求項の接着用治具を採用することにより、組立状態では外囲ケースの裏面と絶縁基板の裏面が同一面に揃って両者の間に段差のない高い組立精度が確保できるなど、半導体装置の組立工程における信頼性の向上,製品の品質安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に対応したパワー半導体装置の要部構造の断面図
【図2】本発明の実施例2に対応したパワー半導体装置の要部構造の断面図
【図3】本発明の実施例3に対応する接着用治具を用いたパワー半導体装置の接着組立工程の状態を表す図
【図4】本発明の実施対象となるインテリジェントパワーモジュールの外観斜視図
【図5】従来におけるパワー半導体装置の組立構造を表す構成図であり、(a) は半導体装置全体の側視断面図、(b) は(a) 図におけるA部の詳細構造を表す拡大図
【符号の説明】
1 外囲ケース
1a 基板取付穴
1a-1 段付座面
5 主回路組立体
5a パワー半導体素子
5b 絶縁基板
5b-1 セラミックス板
7 接着剤
11 スペーサ
12 接着用治具

Claims (4)

  1. 外囲ケースに電力用の主回路組立体を組み込んだパワー半導体装置であり、前記主回路組立体がセラミックス板を基材とする絶縁基板にパワー半導体素子を搭載した構成になり、該絶縁基板を前記外囲ケースの底面に開口した基板取付穴に下方から嵌め込んでその周縁と前記基板取付穴の裏面側周縁に形成した段付き座面との間を接着剤で固着したものにおいて、
    絶縁基板の裏面と外囲ケースの裏面と同一面に揃えるとともに、前記外囲ケースの底面に開口した基板取付穴の段付き座面の周域に沿って、絶縁基板のセラミックス板周縁との間にゴム弾性を有するスペーサを分散介挿し、前記基板取付穴の段付き座面と絶縁基板の周縁との間に充填した接着剤の層厚さを0.5±0.3mmの範囲に確保したことを特徴とするパワー半導体装置。
  2. 請求項記載のパワー半導体装置において、スペーサがシリコーン系,ないしはエポキシ系,ウレタン系樹脂からなる突起体であり、該スペーサを基板取付穴の段付き座面,もしくは絶縁基板のセラミックス板周縁に固着したことを特徴とするパワー半導体装置。
  3. 請求項1記載のパワー半導体装置において、接着剤がゴム弾性を有するシリコーン系,ないしエポキシ系,ウレタン系の接着剤であることを特徴とするパワー半導体装置。
  4. 請求項1記載のパワー半導体装置において、主回路組立体の絶縁基板,および外囲ケースを接着用治具の平坦なテーブル上に載置して各部品を定位置に支持し、この状態で外囲ケース側に形成した基板取付穴の段付き座面と絶縁基板のセラミックス板周縁との間を接着剤で固着したことを特徴とする半導体装置の組立方法。
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