JP3757516B2 - イオン交換樹脂及びこれを用いるビスフェノールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂に関する。このイオン交換樹脂は、ビスフェノール、例えばフェノールとアセトンとの縮合反応によってビスフェノールAを製造する際の触媒として有用である。ビスフェノールAは、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂の原料となる有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
フェノールとアセトンとの縮合反応によってビスフェノールAを製造する際の触媒として、強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂とメルカプト基を有する化合物を併用する方法が種々提案されている。例えば強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を触媒とし、さらに反応系内にメルカプト基を有する化合物を共存させる方法(特公昭45−10337号公報、フランス国特許1373796号明細書等)、メルカプト基を有する化合物を強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂に共有結合させる方法(特公昭37−14721号、特開昭56−21650号、特開昭57−87846号、特開昭59−109503号公報等)、メルカプト基を有するアミンを強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂にイオン結合させる方法等が知られている。
これらの中で、メルカプト基を有するアミンをイオン結合させた変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を使用する方法は、触媒調製が容易であり、かつメルカプト基を有するアミンは生成物中に混入しないので、メルカプト基を有する化合物を共有結合させる方法や、単に、反応系内にメルカプト基を有する化合物を共存させる方法よりも優れた方法である。
【0003】
メルカプト基を有するアミンをイオン結合させた変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を使用する方法としては、2−メルカプトエチルアミン(特公昭46−19953号、特許2528469号公報)、N−プロピルメルカプトアルキルアミン(特公平3−36576号公報)、N,N−ジアルキルメルカプトアルキルアミン等(チェコスロバキア国特許219432号公報)をイオン結合させた変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を用いる方法が知られている。また、四級アンモニウム塩をイオン結合させた変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を使用する方法としては、N,N,N−トリメチル−2−メルカプトエチルアンモニウム、N−(2−ヒドロキシル−3−メルカプトプロピル)ピリジニウム、N−メチル−N−(2−ヒドロキシル−3−メルカプトプロピル)モルフォリウム及びN−ベンジル−N,N−ジメチル−2−メルカプトエチルアンモニウム(チェコスロバキア国特許184988号公報)をイオン結合させた変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を用いる方法が知られている。しかしながら、いずれの方法も、アセトン転化率は50〜75%程度という低い反応成績しか与えないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はフェノール類とケトン類とからのビスフェノールの製造に好適な触媒として有用な、特にアセトンとフェノールの縮合反応によりビスフェノールAを製造するに際し、高いアセトン転化率と良好な選択性を示し、かつ長期安定性を有する、変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂は、強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂のスルホン酸基の一部に、下記の一般式(1)で示される1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンがイオン結合したものである。
【化2】
【0006】
(式中、X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表わし、a及びbは、それぞれ独立して、1〜4の整数を表わす。但し、a及び/又はbが2〜4の場合には、複数のa及び/又はbのそれぞれは別のものを表わしてもよい)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明について詳細に説明すると、本発明に係る変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の調製に使用される1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンは、例えば4−ピペリジンアルカノールにクロロアルカノールを反応させ、得られたジオールをハロゲン化し、チオ酢酸と反応させたのち還元する等の方法により合成することができる。(1)式で表わされる化合物のいくつかを例示すると、1,4−ビス(2−メルカプトエチル)ピペリジン、1−(3−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン、1−(4−メルカプトブチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン、1−(5−メルカプトペンチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン、1−(1−メチル−2−メルカプトエチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン、1−(1−エチル−2−メルカプトエチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン、1−(2−メルカプトエチル)−4−(4−メルカプトブチル)ピペリジン、1−(1−メチル−2−メルカプトエチル)−4−(4−メルカプトブチル)ピペリジンなどが挙げられる。
【0008】
1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンをイオン結合させるイオン交換樹脂としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる骨格とこれに結合したスルホン酸基を有する強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂が好ましく、共重合体中のジビニルベンゼン単位の含有量は2〜40%が好ましい。またイオン交換樹脂の交換容量は、含水状態で0.5〜2.5meq/mlのものが好ましい。イオン交換樹脂の粒径分布は、200〜1500μmの粒径のものが95%以上を占めるのが好ましい。市販品としては例えば、ダイヤイオンSK1B、SK102、SK104、PK208、PK212、RCP160H、RCP170H(三菱化学社製品、ダイヤイオンは三菱化学社の登録商標)、アンバーリスト15、31(ローム&ハース社製品)、ダウエックス50w、88(ダウケミカル社製品)などがある。
【0009】
これらのイオン交換樹脂は酸型で上述の1,4−ジアルキルメルカプトピペリジンとの結合に供する。市販品は通常はナトリウム型なので、塩酸等の酸で処理し酸型にして用いる。これらのイオン交換樹脂は含水状態で市販されているが、脱水等の特別な処理をすることなくそのまま使用することができる。
強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂のスルホン酸基に1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンを結合するには、適当な溶媒、例えば、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類等にこのメルカプトピペリジンを溶解させ、この溶液を同じ溶媒に分散させた強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂に加え、0.1〜10時間攪拌すればよい。例えば水溶媒中で結合するには、このメルカプトピペリジンをスルホン酸よりpka が大きい酸、例えば酢酸の水溶液に加え、酢酸塩として用いることも可能である。
【0010】
強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂に対する、1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンの結合量は、通常、強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の全スルホン酸基に対し、2〜30モル%、好ましくは3〜20モル%である。結合量が2モル%未満では1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンによる触媒効果が十分発揮されず、また30モル%を超えると遊離のスルホン酸基の減少によって触媒活性が低下するためいずれも好ましくない。
本発明に係る1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンがイオン結合した変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂は、他のものに比べ非常に高いアセトン転化率、及び4,4’−ビスフェノールA選択性を示す。
【0011】
上記のようにして得られた1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンがイオン結合した変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂は、調製の際の溶媒を含んでいるので、アセトンとフェノールの縮合反応に使用する場合には、前処理として、まず樹脂の体積の5〜200倍のイオン交換水を20〜80℃の温度で液時空間速度(LHSV)0.5〜50hr-1で樹脂に通液し、引続いて樹脂の体積の5〜200倍のフェノールを40〜110℃の温度で、LHSV0.5〜50hr-1で通液する。この処理により変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の溶媒はフェノールに置換され、反応に使用することができるようになる。
アセトンとフェノールの縮合反応は、通常、上述の処理を経た樹脂を充填した反応器に、フェノールとアセトンを含有する原料混合物を連続的に供給する固定床流通反応方式で行われる。原料混合物の供給は、LHSV0.1〜20hr-1、好ましくは0.5〜10hr-1の範囲で行われる。反応温度は40〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲である。反応温度が40℃以下では反応速度が遅く、また120℃以上の温度では樹脂の劣化が著しく副生物も増加するので、いずれも好ましくない。
【0012】
反応に供するフェノールとアセトンのモル比は、アセトン1モルに対してフェノールが5〜20モル、好ましくは7〜15モルの範囲である。フェノールの使用量が5モル倍未満では、副生成物の増加が顕著である。また、20モル倍を超えて使用しても反応成績には殆ど影響せず、むしろ反応混合物からのフェノールの回収量がいたずらに増大するため経済的ではない。
反応混合物から目的物質であるビスフェノールAを分離精製するには、例えば、反応混合物から未反応フェノールを回収してビスフェノールAとフェノールの付加体を結晶として分離し、次いで蒸留等の操作で付加体からフェノールを回収するという公知の方法で行うことができる。
【0013】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお実施例におけるアセトン転化率、4,4’−ビスフェノールA(4,4’−BPAと略記)選択率、変性率及びスルホン酸基残存率は次式により算出した(単位はいずれも%)。
【0014】
アセトン転化率=〔(供給したアセトン量−未反応アセトン量)/(供給したアセトン量)〕×100
4,4’−BPA選択率=〔(生成した4,4’−BPAのモル数)/(反応で消費されたアセトンのモル数)〕×100
変性率=〔(イオン交換樹脂と結合したメルカプト化合物のモル数)/(メルカプト化合物との反応に供したイオン交換樹脂のスルホン酸基のモル数)〕×100
スルホン酸基残存率=〔(反応後のイオン交換樹脂の遊離のスルホン酸基のモル数)/(メルカプト化合物との反応に供したイオン交換樹脂のスルホン酸基のモル数)〕×100
【0015】
実施例1
1−(5−メルカプトペンチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンがイオン結合した強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を触媒とするビスフェノールAの製造
1−(5−メルカプトペンチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンの合成;
500mlナス型フラスコに、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(広栄化学社製)20g(155ミリモル)と2−プロパノール100mlを仕込んだ。80℃、窒素気流下に攪拌しながら、これに15mlの2−プロパノールに溶解させた5−クロロペンタノール(Lancaster社製)8.6g(70ミリモル)を滴下した。80℃で2時間反応させたのち、2−プロパノールを留去し、得られた残液に25%水酸化ナトリウム水溶液11.3g(70ミリモル)を加え、酢酸エチルで数回抽出した。酢酸エチルを留去し、さらに減圧蒸留して1−(5−ヒドロキシペンチル)−4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(b.p.167〜175℃/0.7mmHg)7.0gを得た。
【0016】
クロロホルムに上記で得た1−(5−ヒドロキシペンチル)−4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン3.2g(15ミリモル)と、4.8g(41ミリモル)の塩化チオニル(和光純薬社製)を添加し、室温で一昼夜反応させた。クロロホルムを留去し、粗1−(5−クロロペンチル)−4−(2−クロロエチル)ピペリジン5.3gを得た。
この粗クロロ化物5.1gを水65mlに溶解し、チオ酢酸カリウム(和光純薬社製)4.6g(40ミリモル)を加え、加熱還流下で1時間反応させた。反応液を氷冷し、酢酸エチルで数回抽出した。次いで酢酸エチルを留去して、1−(5−アセチルチオペンチル)−4−(2−アセチルチオエチル)ピペリジン4.9gを得た。
【0017】
水素化リチウムアルミニウム(和光純薬社製)1.3g(36ミリモル)と乾燥エチルエーテルを乾燥した200ml3口フラスコに窒素気流下で仕込み、室温で攪拌しながら、これに上記で得たチオアセチル体4.9gをエチルエーテル15mlに溶解した溶液を滴下した。加熱還流下で1時間反応させたのち、水0.7g(39ミリモル)と酢酸2.4g(39ミリモル)を加え、過剰の水素化リチウムアルミニウムを分解したのち、濾過した。得られたエーテル溶液を脱水後、エーテルを留去し、続いて減圧蒸留して、1−(5−メルカプトペンチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン(b.p.144℃/0.5mmHg)1.0g(ガスクロマトグラフィー純度96%)を得た。
【0018】
変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の調製;
水切りをしたダイヤイオンSK104(H型)14.6gをイオン交換水20mlに懸濁させ、上記で得られた1−(5−メルカプトペンチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン950mg(3.8ミリモル)と酢酸0.25g(4.2ミリモル)をイオン交換水10mlに溶解させた水溶液と混合し、室温で10時間攪拌した。濾過してイオン交換樹脂を分離し、イオン交換水で洗浄して、1−(5−メルカプトペンチル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンが結合した変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基及びスルホン酸基の残存量の分析をしたところ、変性率は16.7%、スルホン酸基残存率は84.2%であった。
【0019】
ビスフェノールAの製造
上記で得た変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂14mlを、内径7.6mm、全長320mmのステンレスカラムに充填し、イオン交換水200mlをLHSV2hr-1で流し、引続いて70℃でフェノールをLHSV2hr-1で24時間流した。次にフェノール/アセトン=10/1(モル比)の混合液を70℃、LHSV1hr-1で通液し反応を行った。40時間後のアセトン転化率は98.3%、4,4’−BPA選択率は95.5%であり、150時間後のアセトン転化率は98.3%、4,4’−BPA選択率は95.0%であった。
【0020】
実施例2
1−(3−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンがイオン結合した強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を触媒とするビスフェノールAの製造
1−(3−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンの合成;
実施例1において、5−クロロペンタノールの代わりに3−クロロプロパノール(Aldrich社製)を70ミリモル用いた他は、実施例1と同様に反応を行い1−(3−ヒドロキシプロピル)−4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(bp.145〜150℃/1mmHg)を6.1g得た。
このものについて、実施例1と同様にして塩化チオニルによるクロル化、チオ酢酸カリウムによるチオアセチル化及び水素化リチウムアルミニウムによる還元を行い、減圧蒸留により1−(3−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン1.2g(bp.129〜135℃/1mmHg)を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、純度は96.5%であった。
【0021】
変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の調製;
水切りをしたダイヤイオンSK104(H型)14.6gをイオン交換水に懸濁させ、上記で得られた1−(3−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン840mg(3.8ミリモル)と酢酸0.25g(4.2ミリモル)をイオン交換水10mlに溶解させた水溶液と混合し、室温で10時間攪拌した。濾過してイオン交換樹脂を分離し、イオン交換水で洗浄して、1−(3−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンが結合した変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基及びスルホン酸基の残存量の分析をしたところ、変性率は15.9%、スルホン酸基残存率は83.9%であった。
【0022】
ビスフェノールAの製造;
上記で得た変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂14mlを用いた以外は、実施例1と同様にして溶媒置換及びフェノールとアセトンの縮合反応を行った。その結果、40時間後のアセトン転化率は97.0%、4,4’−BPA選択率は95.2%であり、150時間後のアセトン転化率は97.1%、4,4’−BPA選択率は95.2%であった。
【0023】
比較例1
1−エチル−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンがイオン結合した強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を触媒とするビスフェノールAの製造
1−エチル−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンの合成;
300ml4口フラスコに、塩化チオニル13.4g(113ミリモル)とクロロホルム50mlを仕込んだ。室温で攪拌しながら、これに4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン10g(77ミリモル)をクロロホルム40mlに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後室温でさらに2.5時間反応させた。減圧にして過剰の塩化チオニル及びクロロホルムを留去し、粗4−(2−クロロエチル)ピペリジン塩酸塩13.7gを得た。
【0024】
300mlナス型フラスコに、水酸化カリウム4.0g(71ミリモル)と水48mlを仕込んだ。攪拌しながら、これにチオ酢酸4.6g(60ミリモル)を加え、さらに10分間室温で攪拌した。この溶液に上記で得られたクロル化物10gを水30mlに溶解させた水溶液を約30分間で滴下した。滴下終了後加熱還流下で1時間反応させた。反応液を100mlのエーテルで抽出することを3回繰り返した。脱水後エーテルを留去し、1−アセチル−4−(2−アセチルチオエチル)ピペリジン7.8gを得た。
300ml4口フラスコに、水素化リチウムアルミニウム3.7g(96ミリモル)及び乾燥エーテル100mlを仕込み、室温で攪拌しながら、これに窒素気流下、上記のチオアセチル体6.0g(32ミリモル)をエーテル20mlに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、加熱還流下で1時間反応させた。反応終了後氷冷し、水1.7g(96ミリモル)及び酢酸6.3g(105ミリモル)を加え、過剰の水素化リチウムアルミニウムを分解したのち濾過した。得られたエーテル溶液からエーテルを留去し、1−エチル−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン1.1gを得た。
【0025】
変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の調製;
水切りをしたダイヤイオンSK104(H型)14gをイオン交換水20mlに懸濁させ、上記で得られた1−エチル−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジン654mg(3.8ミリモル)及び酢酸0.27g(4.5ミリモル)を、水20mlとメタノール5mlの混合液に溶解させた溶液を加え、室温で2時間攪拌した。濾過してイオン交換樹脂を分離し、イオン交換水で洗浄して、1−エチル−4−(2−メルカプトエチル)ピペリジンが結合した変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基及びスルホン酸基の残存量の分析をしたところ、変性率は15.0%、スルホン酸基残存率は86.8%であった。
【0026】
ビスフェノールAの製造;
上記で得た変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂14mlを用いた以外は、実施例1と同様にして溶媒置換及びフェノールとアセトンの縮合反応を行った。40時間後及び150時間後の反応結果を表1に示した。
【0027】
比較例2
メルカプト化合物として2−メルカプトエチルアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を調製した。変性率は15.2%であった。
この変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてビスフェノールAの製造を行い、結果を表1に示した。
【0028】
比較例3
メルカプト化合物としてN−エチルビス(2−メルカプトエチル)アミンを用いた以外は、実施例1と同様にして変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を調製した。変性率は9.1%であった。
この変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてビスフェノールAの製造を行い、結果を表1に示した。
【0029】
【発明の効果】
本発明に係る1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンが結合した変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を使用すれば、フェノールとアセトンとの縮合反応により、高いアセトン転化率および高い4,4’−ビスフェノールA選択率で、かつその性能を長時間持続しながら、効率的にビスフェノールAを製造することができる。
【0030】
【表1】
Claims (6)
- スルホン酸基の2〜30モル%に1,4−ジメルカプトアルキルピペリジンが結合していることを特徴とする請求項1記載の変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂。
- スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる骨格を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の存在下に、フェノール類とケトン類とを反応させることを特徴とするビスフェノールの製造方法。
- フェノール類がフェノールであり、ケトン類がアセトンであることを特徴とする請求項4記載のビスフェノールの製造方法。
- 反応に供するアセトンとフェノールとのモル比が、アセトン1モルに対しフェノール5〜20モルであることを特徴とする請求項5記載のビスフェノールの製造方法。
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