JP3826489B2 - イオン交換樹脂およびその使用 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂に関する。このイオン交換樹脂は、フェノールとアセトンの縮合反応によってビスフェノールAを製造する際の触媒として有用である。ビスフェノールAは、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂の原料となる有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
フェノールとアセトンの縮合反応によってビスフェノールAを製造する際の触媒として、強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂と共にメルカプト基を有する化合物を併用する方法は公知であり、具体的には、反応系内にメルカプト基を有する化合物を共存させる方法(特公昭45−10337号公報、フランス国特許1373796号明細書等)、メルカプト基を有する化合物を強酸性イオン交換樹脂に共有結合させる方法(特公昭37−14721、特開昭56−21650、特開昭57−87846号、特開昭59−109503号公報等)、メルカプトアミン類を強酸性イオン交換樹脂にイオン結合させる方法等が知られている。
【0003】
これらの中で、メルカプトアミン類をイオン結合させた強酸性イオン交換樹脂を使用する方法は、1)メルカプトアミン類が生成物中に混入しない、2)触媒調製が容易であるという点で、メルカプト基を有する化合物を共有結合させる方法や、単に、反応系内にメルカプト基を有する化合物を共存させる方法よりも優れた方法である。
【0004】
メルカプトアミン類をイオン結合させた強酸性イオン交換樹脂を使用する方法としては、2−メルカプトエチルアミン(特公昭46−19953、特開昭62−298454号公報)、N−プロピルメルカプトアルキルアミン(特開昭60−137440号公報)をイオン結合させた強酸性イオン交換樹脂を用いる方法が知られている。また、四級アンモニウム塩をイオン結合させた強酸性イオン交換樹脂を使用する方法としては、N,N,N−トリメチル−2−メルカプトエチルアンモニウム、N−(2−ヒドロキシル−3−メルカプトプロピル)ピリジニウム、N−メチル−N−(2−ヒドロキシル−3−メルカプトプロピル)モルフォリウムおよびN−ベンジル−N,N−ジメチル−2−メルカプトエチルアンモニウム(チェコスロバキア国特許184988号公報)をイオン結合させた強酸性イオン交換樹脂を用いる方法が知られている。しかしながらいずれの方法でも、アセトン転化率は50〜75%程度しかないという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フェノール類とケトン類の反応によるビスフェノールの製造に好適な触媒を提供することを目的とする。特に、アセトンの転化率が高く、かつ良好な選択性および安定性を有する、アセトンとフェノールの縮合反応によりビスフェノールAを製造するための、強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的のため、鋭意検討した結果、特定のメルカプトアミン化合物により、変性された強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂が、ケトン類の転化率が高く、かつ良好な選択性を有するビスフェノールの製造触媒であることを見い出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記式(1)
【0007】
【化2】
Figure 0003826489
【0008】
(式中、nは1〜4の整数であり、XおよびYはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または炭素数5〜10のシクロアルキル基を表す)で示されるメルカプトアミン化合物が強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂にイオン結合している変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂に存する。
以下本発明につき詳細に説明する。
前記式(1)で示されるメルカプトアミン化合物において、nは1から4の整数であり、好ましくは1から3であり、より好ましくは1または2であり、特に好ましいのはnが1のときである。nが5の場合は触媒の寿命低下が予想されるため好ましくない。また、本発明では、フェニル基に置換しているアミン部分がピリジン環であるため、良好な活性、寿命を示す。アミン部分がアルキルアミン、アニリン骨格の場合には、活性は高いが、寿命低下がみられるため好ましくない。ピリジン環の置換位置は2〜6位のいずれでも好ましく、フェニル基上のメルカプトアルキル基とピリジン環の置換の位置関係は特に限定しないが、パラ位が特に好ましい。フェニル基には置換基はない方が好ましい。その他の置換基XおよびYはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または炭素数5〜10のシクロアルキル基であり、好ましくは水素または炭素数1〜2のアルキル基であり、特に好ましくは水素である。
【0009】
好ましいメルカプトアミン化合物の具体例としては2−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、3−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、4−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、2−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、3−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、4−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、2−(3−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、3−(3−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、4−(3−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、2−〔3−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、3−〔3−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、4−〔3−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、2−(2−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、3−(2−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、4−(2−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、2−〔2−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、3−〔2−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン、4−〔2−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン等が挙げられる。
【0010】
該メルカプトアミン化合物の合成方法としては、例えば、ビニルフェニル基で置換されたピリジン体を、置換シリルチオールと反応させてシリルチオールエーテルとした後、シリル基を脱離させる事等により合成することができる。
強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂としては、特に限定されるものではないが、スルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる強酸性イオン交換樹脂が好ましく、共重合体中のジビニルベンゼン単位の含有量は、2〜40%が好ましい。イオン交換樹脂の交換容量は、水含有状態で0.5〜2.5meq/mlのものが、乾燥樹脂では3.0〜7.0meq/gのものが好ましい。イオン交換樹脂の粒径分布は、200〜1500μmの粒径の樹脂が95%以上含まれるようなものが好ましい。具体的には、例えば、アンバーリスト15、31、32(ローム&ハース社製商品名)、ダウエックス50w、88(ダウ・ケミカル社製商品名)、ダイヤイオンSK1B、SK102、SK104、PK208、PK212、RCP160H、RCP170H(三菱化学社製商品名)なとが例示できる。これらのイオン交換樹脂は酸型で使用する。ナトリウム型の場合は、塩酸等の酸で処理した酸型にして用いる。これらのイオン交換樹脂は水を含有した状態で市販されているが、脱水等の特別な処理をすることなくそのまま使用することができる。
【0011】
強酸性イオン交換樹脂のスルホン酸基にメルカプトアミン化合物を結合させるには、まず同アミン化合物を溶解する溶媒、例えば、水、アルコール類、エーテル類等に同アミン化合物を溶解させ、あらかじめ同じ溶媒に分散させた強酸性イオン交換樹脂に加え、適当な時間、例えば0.1〜10時間撹拌することによりなされる。例えば水溶媒中で結合する方法としては、同アミンをスルホン酸よりpkaが大きい酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸等の水溶液に加え、それぞれの塩とした水溶液を、予め水に分散させた強酸性イオン交換樹脂中に加え、0.1〜10時間撹拌する方法等が可能である。
【0012】
強酸性イオン交換樹脂に対する、メルカプトアミン化合物の使用量は、通常、強酸性イオン交換樹脂の全スルホン酸基に対し、2〜30モル%、好ましくは、5〜20モル%である。イオン結合量が2モル%以下ではメルカプトアミン化合物による触媒効果が十分発揮されず、また30%以上ではスルホン酸量の減少によって触媒活性が低下するおそれがあるため好ましくない。
本発明のメルカプトアミン化合物がイオン結合した強酸性イオン交換樹脂は、フェノール類とケトン類の縮合反応によって対応するビスフェノール類を生成させる方法適用した場合、従来から知られているアミン化合物に比べ、非常に高いアセトン転化率、ならびに選択性を示す。
【0013】
本発明のメルカプトアミン化合物がイオン結合した強酸性イオン交換樹脂(以下、変性樹脂と略記する)をアセトンとフェノールの縮合反応に使用する場合には、前処理として変性樹脂の体積の5〜200倍のイオン交換水を20〜80℃の温度で、液時空間速度(LHSV)0.5〜50hr-1で通液し、さらに変性樹脂の体積の5〜200倍のフェノールを40〜110℃の温度で、LHSV0.5〜50hr-1で通液する。この処理により変性樹脂は水からフェノールへ溶媒交換され、反応に使用できるようになる。
【0014】
本反応は通常、変性樹脂を充填した反応器にフェノールとアセトンを含有する原料混合物を連続的に供給して反応を行う固定床流通反応方式で行われる。原料混合物の供給はLHSV0.1〜20hr-1、好ましくは0.5〜10hr-1の範囲で行われる。反応温度は40〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲である。反応温度が40℃以下では反応速度が遅く、また120℃以上の温度では変性樹脂の劣化が著しく副生物も増加するため好ましくない。
【0015】
フェノールとアセトンのモル比は、アセトン1モルに対してフェノールが3〜30モル、好ましくは5〜20モルの範囲である。フェノールの使用量が3モル以下だと、副生成物が増加するため好ましくなく、30モル以上使用してもその効果にほとんど影響はなく、むしろ回収再使用するフェノールの量が増大するため経済的ではない。反応混合物から目的物質であるビスフェノールAを分離精製するには、例えば、未反応フェノールを回収しビスフェノールAとフェノールのアダクトを結晶として分離、蒸留等の操作でアダクトからフェノールを回収するという公知の方法で行うことができる。
【0016】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例、比較例中におけるアセトン転化率、4,4′−ビスフェノールA(4,4′−BPAと略記)選択率、変性率およびスルホン酸残存率は次式により算出した(単位はいずれも%)。
【0017】
【数1】
Figure 0003826489
【0018】
実施例1
2−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジンイオン交換樹脂
500ml三つ口フラスコに2−(p−トリル)ピリジン(東京化成社製)11.2g、N−ブロモこはく酸イミド12.3g、クロロホルム200mlを仕込み、赤外ランプで3時間加熱還流した。クロロホルムを留去し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、2−(4−ブロモメチルフェニル)ピリジン6.48gを得た。
この臭化物5.48gを、500mlナス型フラスコ中でTHF350mlに溶解し、チオ酢酸カリウム2.79gを加え、40℃で2時間撹拌した。氷冷下で1N水酸化ナトリウム溶液350mlを加え酢酸エチル300mlで抽出した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒留去し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により分離し2−(4−アセチルチオメチルフェニル)ピリジン3.4gを得た。
【0019】
100ml三つ口フラスコに無水ジエチルエーテル30mlと水素化アルミニウムリチウム0.31gを窒素気流下で仕込み、室温撹拌下、上記のチオアセテート1.65gの無水ジエチルエーテル20ml溶液を滴下した。1時間加熱還流した後、氷冷し、蒸留水0.16g、酢酸0.55gを加えた。無機物を濾別、酢酸エチルで洗浄した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒留去する事により2−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン1.21gが得られた。(ガスクロマトグラフィーによる純度99.2%)
【0020】
2−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン1.21gをメタノール30mlに溶解し、メタノール30mlに懸濁させたダイヤイオンK104(H型)20.0g(商品名:三菱化学社製、交換容量1.63meq/g)へ加え、室温で10時間撹拌した。イオン交換樹脂を濾過し、イオン交換水で洗浄し、変性イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基およびスルホン酸の残存量を分析したところ、変性率は14.8%であり、スルホン酸残存率は86.8%であった。
【0021】
この変性イオン交換樹脂14mlを内径7.6mm、全長320mmのステンレスカラムに充填し、イオン交換水200mlをLHSV2hr-1で流し、その後70℃でフェノールをLHSV2hr-1で24時間流した。次に、フェノール/アセトン=10/1(モル比)の混合液を70℃、LHSV1.0hr-1で通液し連続反応を行った。40時間後のアセトンの転化率は94.9%、4,4′−BPAの選択率は94.8%であり、300時間後のアセトンの転化率は94.5%、4,4′−BPAの選択率は94.4%であった。
【0022】
実施例2
4−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジンイオン交換樹脂
実施例1で使用した2−(p−トリル)ピリジンの代わりに、4−(p−トリル)ピリジンを次に示す方法で合成した。200ml三つ口フラスコに、マグネシウム2.67g、エーテル80mlを仕込み、4−メチルブロモベンゼン17.1gのエーテル20ml溶液を滴下した。発熱し、p−トリルマグネシウムブロマイドが生成した。上澄み液を100ml滴下管に移した。300mlの三つ口フラスコに塩化亜鉛13.6gとTHF50mlを仕込み、200℃で2時間加熱し、乾燥させパウダー状としたものに、窒素気流下、上記のp−トリルマグネシウムブロマイドのTHF溶液を室温で滴下し、p−トリルジンククロライドとした。
【0023】
500ml三つ口フラスコに窒素気流下、4−ブロモピリジン7.9gとTHF50m、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム1.16gを仕込み、上記で調整したp−トリルジンククロライドを滴下し、5時間室温で撹拌した。反応後THFを留去し、蒸留水150mlと、塩化ナトリウム35gを加えクロロホルム300mlで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、クロロホルムを留去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒クロロホルム:ヘキサン=9:1)で分離精製し、4−(p−トリル)ピリジン5.7gを得た。この4−(p−トリル)ピリジン用い、実施例1と同様に反応を行い、4−(4−ブロモメチルフェニル)ピリジンを得た。同じくチオ酢酸カリウムによるチオアセチル化、水素化リチウムアルミニウムによる還元を行い、4−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジンを得た。
【0024】
4−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン1.21gをメタノール30mlに溶解し、メタノール30mlに懸濁させたダイヤイオンK104(H型)20.0g(商品名:三菱化学社製、交換容量1.63meq/g)へ加え、室温で10時間撹拌した。イオン交換樹脂を濾過し、イオン交換水で洗浄し、変性イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基およびスルホン酸の残存量を分析したところ、変性率は14.4%であり、スルホン酸残存率は86.7%であった。
この変性樹脂を用い、実施例と同一条件で反応評価を行った。反応開始後40時間と300時間の反応結果を表−1、2に示す。
【0025】
実施例3
4−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジンイオン交換樹脂
100ml三つ口フラスコに、マグネシウム1.60g、THF50mlを仕込み、4−ビニルブロモベンゼン10.98gのTHF50ml溶液を滴下した。発熱し、4−ビニルフェニルマグネシウムブロマイドが生成した。上澄み液を100ml滴下管に移した。300mlの三つ口フラスコに塩化亜鉛8.72gとTHF50mlを仕込み、200℃で2時間加熱し、乾燥させパウダー状としたものに、窒素気流下、上記の4−ビニルフェニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液を室温で滴下し、4−ビニルフェニルジンククロライドとした。
【0026】
500ml三つ口フラスコに窒素気流下、4−ブロモピリジン6.32gとTHF50m、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム0.92gを仕込み、上記で調整した4−ビニルフェニルジンククロライドを滴下し、10時間室温で撹拌した。反応後THFを留去し、蒸留水150mlと、塩化ナトリウム25gを加えクロロホルム300mlで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、クロロホルムを留去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒クロロホルム:酢酸エチル=4:1)で分離精製し、4−(4−ビニルフェニル)ピリジン4.7gを得た。
【0027】
4−〔4−(2−ビニル)フェニル〕ピリジン2.5g、トリフェニルシリルチオール4.84g、ベンゼン70mlを仕込み、2,2′−アゾビス(イソブチルニトリル)0.68gを添加し、窒素気流下、3時間加熱還流した。溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィーで分離し、(展開溶媒酢酸エチル:ヘキサン=1:4)4−〔4−(2−トリフェニルシリルチオエチル)フェニル〕ピリジン3.4g(ガスクロマトグラフィー純度99%)を得た。
【0028】
500mlナスフラスコに4−〔4−(2−トリフェニルシリルチオエチル)フェニル〕ピリジン3.4gとクロロホルム200ml、メタノール100mlを加え、40℃で2時間加熱撹拌した。クロロホルムとメタノールを留去した後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:クロロホルム=1:10)により分離精製して、4−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン1.49gを得た。
【0029】
4−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕ピリジン1.49gをメタノール30mlに溶解し、メタノール30mlに懸濁させたダイヤイオンK104(H型)23.0g(商品名:三菱化学社製、交換容量1.63meq/g)へ加え、室温で10時間撹拌した。イオン交換樹脂を濾過し、イオン交換水で洗浄し、変性イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基およびスルホン酸の残存量を分析したところ、変性率は13.3%であり、スルホン酸残存率は83.9%であった。
この変性樹脂を用い、実施例と同一条件で反応評価を行った。反応開始後40時間と300時間の反応結果を表−1、2に示す。
【0030】
比較例1
2−アミノエタンチオール変性イオン交換樹脂
市販の2−アミノエタンチオール0.58gと酢酸0.46gをイオン交換水20mlに溶解し、イオン交換水30mlに懸濁させたダイヤイオンSK104(H型)(商品名)30.0gへ加え、室温で1時間撹拌した。イオン交換樹脂を濾過し、イオン交換水で洗浄し、変性イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基およびスルホン酸の残存量を分析したところ、変性率は15.2%であり、スルホン酸残存率は84.1%であった。
この変性樹脂を用い、実施例と同一条件で反応評価を行った。反応開始後40時間と300時間の反応結果を表−1、2に示す。
【0031】
比較例2
4−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕−N,N−ジメチルアニリン交換樹脂
100ml三つ口フラスコに、マグネシウム1.60g、THF50mlを仕込み、4−ビニルブロモベンゼン10.98gのTHF50ml溶液を滴下した。発熱し、4−ビニルフェニルマグネシウムブロマイドが生成した。上澄み液を100ml滴下管に移した。300mlの三つ口フラスコに塩化亜鉛8.72gとTHF50mlを仕込み、200℃で2時間加熱し、乾燥させパウダー状としたものに、窒素気流下、上記の4−ビニルフェニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液を室温で滴下し、4−ビニルフェニルジンククロライドとした。
【0032】
500ml三つ口フラスコに窒素気流下、4−ブロモ− N N −ジメチルアニリン6.32gとTHF50ml、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム0.92gを仕込み、上記で調整した4−ビニルフェニルジンククロライドを滴下し、10時間室温で撹拌した。反応後THFを留去し、残留水100mlと、塩化ナトリウム25gを加えクロロホルム300mlで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、クロロホルムを留去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン:クロロホルム=7:3)で分離精製し、4−(4−ビニルフェニル)−N,N−ジメチルアニリン5.7gを得た。
【0033】
100ml三つ口フラスコに4−(4−ビニルフェニル)−N,N−ジメチルアニリン3.91g、トリフェニルシランチオール20.1g、ベンゼン35mlを仕込み、2,2′−アゾビス(イソブチルニトリル)0.86gを添加し、窒素気流下、2時間加熱還流した。溶媒を留去した後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:ヘキサン=4:1)で分離精製し、4−〔4−(2−トリフェニルシリルチオエチル)フェニル〕−N,N−ジメチルアニリン3.3g(ガスクロマトグラフィー純度99%)を得た。
【0034】
100ml三つ口フラスコに4−〔4−(2−トリフェニルシリルチオエチル)フェニル〕−N,N−ジメチルアニリン3.3gをクロロホルム70mlに溶解し、トリフルオロ酢酸8.6gを加えて室温で3時間撹拌した。反応溶液に1N水酸化ナトリウム溶液120mlを加え、分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、クロロホルムを留去した後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)により分離精製して、4−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕−N,N−ジメチルアニリン1.61gを得た。
【0035】
4−〔4−(2−メルカプトエチル)フェニル〕−N,N−ジメチルアニリン1.51gをメタノール30mlに溶解し、メタノール30mlに懸濁させたダイヤイオンK104(H型)21.0g(商品名:三菱化学社製、交換容量1.63meq/g)へ加え、室温で10時間撹拌した。イオン交換樹脂を濾過し、イオン交換水で洗浄し、変性イオン交換樹脂を得た。
メルカプト基およびスルホン酸の残存量を分析したところ、変性率は11.4%であり、スルホン酸残存率は88.6%であった。
この変性樹脂を用い、実施例と同一条件で反応評価を行った。反応開始後40時間と300時間の反応結果を表−1、2に示す。
【0036】
【表1】
Figure 0003826489
【0037】
【表2】
Figure 0003826489
【0038】
【発明の効果】
この変性樹脂を用い、実施例と同一条件で反応評価を行った。反応開始後40時間と300時間の反応結果を表に示した。
本発明のイオン交換樹脂を使用すれば、フェノールとアセトンとの縮合反応により、高いアセトン転化率および高い4,4′−ビスフェノールA選択率で、かつその性能を長時間持続しながら、効率的にビスフェノールAを製造することができる。

Claims (5)

  1. 下記一般式
    Figure 0003826489
    (式中、nは1〜4の整数であり、XおよびYはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または炭素数5〜10のシクロアルキル基を表す)で示されるメルカプトアミン化合物が強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂にイオン結合している変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂。
  2. イオン結合したメルカプトアミン化合物の量が、スルホン酸基の2〜30モル%である請求項1記載のイオン交換樹脂。
  3. イオン交換樹脂が、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる骨格を有することを特徴とする請求項1または2に記載のイオン交換樹脂。
  4. 請求項1〜3記載の変性強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂の存在下、フェノール類とケトン類を縮合することを特徴とするビスフェノールの製造方法。
  5. フェノール類が非置換フェノールであり、ケトン類がアセトンであることを特徴とする請求項4記載のビスフェノールの製造方法。
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