JP4617643B2 - フッ素含有光学活性四級アンモニウム塩、その製造方法、並びにそれを用いた光学活性α−アミノ酸誘導体の製造方法 - Google Patents

フッ素含有光学活性四級アンモニウム塩、その製造方法、並びにそれを用いた光学活性α−アミノ酸誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性四級アンモニウム塩、その製造方法、並びに当該アンモニウム塩の回収、精製方法に関する。本発明はまた、フッ素含有光学活性化合物を、水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤すなわちフルオラス溶剤を使用して回収、精製する方法に関する。本発明はまた、該塩を相間移動触媒として使用し、立体選択的に医、農薬合成中間体として有用な光学活性α−アミノ酸誘導体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性四級アンモニウム塩を相間移動触媒として使用し、光学活性α−アミノ酸誘導体を製造した後の触媒回収方法として、分層後の水相を酸により中和した後、有機溶剤を用いて抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製をして再利用する例が知られている(非特許文献1)。しかし当該方法では再利用時の触媒の活性は保持されるが、触媒回収率は72%とあり、触媒調製が多工程であることから、触媒回収率向上が課題となっている。また、工業化において、触媒回収方法の簡便化が望まれる。
【0003】
より簡便な触媒回収方法を指向したものとして、例えば、光学活性α−アミノ酸誘導体の製造における不斉相間移動触媒として有用な、光学活性アルカロイド(キニン、キニジン、シンコニン、シンコニジン)のいずれかのアンモニウム塩誘導体をポリスチレンやポリエチレングリコールなどの高分子との結合によって固定化させた下記式(15)
【0004】
【化15】
Figure 0004617643
に示す物質が知られている(例えばAの部位に高分子を導入した例として、非特許文献2〜非特許文献4、またBの部位での同じ例として、非特許文献3、またCの部位での同じ例として、非特許文献5)。しかしこれらは、高分子部位の導入によって選択性の大幅な低下が見られる場合(例えば非特許文献5)や、又90%ee以上の高い立体選択性を保持した高分子担持触媒でも、触媒回収後の再利用時の性能再現が確認されていない場合が多い(例えば非特許文献3、4)。一方、データとして明示されないが、再利用が可能であったという例が1例だけ知られている(例えば非特許文献2)が、この場合も基質の種類を替えると選択性が大幅に低下する点が課題となっている。
【0005】
一方、フッ素原子をC−F結合で分子骨格内に含有する光学活性四級アンモニウム塩として、アルカロイド誘導体としては、フッ素置換のベンジル基が導入された化合物が知られている(例えば非特許文献6、7)。また、ビナフチル由来による軸不斉含有光学活性四級アンモニウム塩誘導体として、4−フルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基(以上例えば非特許文献8)、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、または3,5−ビス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}フェニル基(以上例えば非特許文献9)、を置換基として有する光学活性アンモニウム触媒が知られている。しかしこれらはいずれもフッ素原子が、ベンゼン環に1〜3置換されるか、トリフルオロメチル基が1〜8ヶ所点在した形で存在しており、炭素数2以上で、すべての水素原子がフッ素原子で置換された置換基すなわちパーフルオロ基として含有したものは知られていない。
【0006】
パーフルオロアルキル基を含有する光学活性な不斉触媒配位子としては、例えば軸不斉含有ビナフトール誘導体(非特許文献10〜14)、光学活性なサレン誘導体(非特許文献15〜18)、光学活性なエフェドリン誘導体(非特許文献19)、光学活性アミノチオレート(非特許文献20)が知られている。これらはいずれも本発明とは異なる光学活性化合物を合成する目的で使用され、一部回収、再利用が検討されている。しかし、化学量論量使用する不斉プロトン化剤(非特許文献10)の他は、いずれも酸素−金属間の結合、または錯体形成させることにより触媒調製する必要がある化合物であり、分子自身が不斉触媒として機能する、光学活性な有機分子触媒は知られていない。また特に、炭素数が2以上のパーフルオロアルキル基を含有する光学活性四級アンモニウム塩は知られていない。また、該塩を不斉触媒として用いた例、および相間移動触媒として用いた例は知られていない。また、相間移動触媒を用いた反応が、有機相、水相、フルオラス相の3相系で実施された例は知られていない。更に、フルオラス溶剤を用いることにより、該塩を分離精製する、或いは反応後の触媒含有混合物から触媒のみを回収する例も知られていない。このときに触媒である該塩をほぼ定量的に回収する例も知られていない。そして更に、フルオラス溶剤で分層回収された該塩を同一の反応に不斉触媒として再利用し、反応性、立体選択性における触媒性能の保持を実証した例も知られていない。
【0007】
【非特許文献1】
Keiji. Maruoka et. al., Tetrahedron Lett.2000,41,8339−8342
【非特許文献2】
R. Chinchilla et. al., Tetrahedron: Asymm.,2000,11,3277−3281
【非特許文献3】
D. Cahard et. al., Synthesis,2001,11,1742−1746
【非特許文献4】
D. Cahard et. al., Tetrahedron: Asymm.,2001,12,983−986
【非特許文献5】
M. Benaglia et. al., Tetrahedron: Asymm.,2003,14,461−467
【非特許文献6】
H.G. Park et. al., Org.Lett.,2002,Vol.4,No.24,4245−4248
【非特許文献7】
B.R.Cho et. al., J.Org.Chem.,1987,52,4752−4756
【非特許文献8】
Keiji Maruoka et. al., J.Am.Chem.Soc.,2003,125,5139−5151
【非特許文献9】
Keiji.Maruoka et. al., J.Am.Chem.Soc.,2003,125,2054−2055
【非特許文献10】
S.Takeuchi et. al., Tetrahedron,2000,56,351−356
【非特許文献11】
S.Takeuchi et. al., Tetrahedron,2002,58,3963−3969
【非特許文献12】
K.S.Chan et. al., Tetrahedron,2002,58,3951−3961
【非特許文献13】
D. Sinou et. al., Tetrahedron: Asymm.,2002,13,1449−1456
【非特許文献14】
D. Sinou et. al., Chem. Commun.,2001,1220−1221
【非特許文献15】
D. Sinou et. al., Tetrahedron, 2002,58,3971−3976
【非特許文献16】
G.Pozzi et. al., Eur.J.Org.Chem.,1999,1947−1955
【非特許文献17】
G.Pozzi et. al., Chem. Commun.,2000,2171−2172
【非特許文献18】
G.Pozzi et. al., Tetrahedron,2002,58,3943−3949
【非特許文献19】
S.Takeuchi et. al., Tetrahedron,2001,57,5565−5571
【非特許文献20】
G.v.Koten et. al., Org.Lett.,1999,Vol.1,No.6,853−855
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その主たる目的とする課題は、
▲1▼グリシン誘導体の不斉アルキル化反応用の相間移動触媒として、90%ee以上の高い立体選択性を示し得る、新規の光学活性四級アンモニウム塩で、反応後の回収が容易であるものを提供すること、
▲2▼回収した該塩を再利用した場合に、触媒としての性能が保持できるような該塩を提供すること、
▲3▼反応後に該塩を高収率で容易に回収、分離精製する方法を提供すること、
▲4▼該塩の製造方法を提供すること、
▲5▼該塩を相間移動触媒として使用し、立体選択的に医、農薬合成中間体として有用な光学活性α−アミノ酸誘導体を製造する方法を提供すること、
▲6▼反応に利用後、回収した該塩を再利用し、触媒としての性能保持を実現すること、
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題の解決手段として、少なくともひとつの置換基がすべての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ基を包含した軸不斉含有新規光学活性アンモニウム塩が優れた触媒性能を有し、なおかつ合成工程が簡易であることを見出し、これを不斉相間移動触媒として使用後、水素原子がフッ素原子で置換されたフルオラス溶剤で抽出、再利用する事ができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
1)下記一般式(1)で示される光学活性四級アンモニウム塩。
【0011】
【化16】
Figure 0004617643
[上記一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、フッ素で置換されていてもよいメチル基、フッ素で置換されていてもよいエチル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のヘテロアルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、フッ素で置換されていてもよい炭素数5〜20のアリール基、フッ素で置換されていてもよい炭素数5〜35のアラルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数5〜35のヘテロアラルキル基を表す。但しR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12のうち少なくとも一つは、下記一般式(2)、
【0012】
【化17】
Figure 0004617643
(上記一般式(2)中、Pfは炭素数2〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルキル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルケニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルキニル基、炭素数5〜20の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアリール基、炭素数5〜25の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアラルキル基、炭素数5〜25の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたヘテロアラルキル基を表す。nは、0〜4までの整数を表す。)
及び/又は下記一般式(3)
【0013】
【化18】
Figure 0004617643
(上記一般式(3)中、Pf、nは各々上記一般式(2)に示す定義と同じである。R13、R14は各々独立して、メチル基、エチル基、ビニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜25のアラルキル基、炭素数5〜25のヘテロアラルキル基、又は上記一般式(2)に示す置換基を表す。)
を表す。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、水酸化物イオン、チオシアン化物イオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、又はヘキサフルオロリン酸イオンを表す。また、二つのビナフチル部における軸不斉の組み合せは(R,R)又は(S,S)を表す。]
2)上記一般式(1)において、R1とR7、R3とR9、R4とR10、R5とR11、R6とR12が各々同一の置換基であり、且つR2とR8がともに上記一般式(3)に示される同一の置換基であり、且つX-がフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、チオシアン化物イオン、硫酸水素イオン、若しくは水酸化物イオンである化合物、
3)上記一般式(1)において、R1、R3、R5、R6、R7、R9、R11、R12がいずれも水素原子であり、且つR2、R4、R8、R10がいずれも一般式(3)に示される同一の置換基であり、且つX-が塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、若しくはp−トルエンスルホン酸イオンである化合物、
4)上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2であり、且つX-が臭化物イオンである化合物、
5) 下記一般式(4)で示される光学活性ビナフチル化合物
【0014】
【化19】
Figure 0004617643
[上記一般式(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、フッ素で置換されていてもよいメチル基、フッ素で置換されていてもよいエチル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のヘテロアルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、フッ素で置換されていてもよい炭素数5〜20のアリール基、フッ素で置換されていてもよい炭素数5〜35のアラルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数5〜35のヘテロアラルキル基を表す。
但しR1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも一つは上記一般式(2)若しくは上記一般式(3)で示される置換基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、p−トルエンスルホニルオキシ基を表す。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を表す。]
6)上記一般式(3)において、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに上記一般式(3)に示される同一の置換基である5)に記載の化合物。
【0015】
7)上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2であり、且つXが臭素原子である、6)に記載の化合物、
8)5)〜7)のいずれかに記載の上記一般式(4)で示される化合物にアンモニアを反応させることを特徴とする、1)〜4)のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるうちの、X-が塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンである化合物の製造方法、
9)下記一般式(5)で示される光学活性ビナフチルジヒドロキシル化合物、
【0016】
【化20】
Figure 0004617643
(上記一般式(5)中、R、R、R、R、R、Rは各々上記5)に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。)
10)上記一般式(5)において、R、R、R、Rがいずれも水素原子であり、且つR、Rがともに上記一般式(3)に示される同一の置換基である、9)に記載の化合物、
11)上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、10)に記載の化合物、
12)9)〜11)のいずれかに記載の上記一般式(5)で示される化合物にハロゲン源若しくはp−トルエンスルホニルクロリドを反応させることを特徴とする、5)〜7)のいずれかに記載の上記一般式(4)で示される化合物の製造方法、
13)下記一般式(6)で示される光学活性ビナフチルジエステル化合物、
【0017】
【化21】
Figure 0004617643
(上記一般式(6)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は各々上記5)に記載の一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。)
14)上記一般式(6)において、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基である、13)に記載の化合物、
15)上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、14)に記載の化合物、
16)13)〜15)のいずれかに記載の上記一般式(6)で示される化合物に水素アニオンを反応させることを特徴とする9)〜11)のいずれかに記載の上記一般式(5)で示される化合物の製造方法、
17)下記一般式(7)で示される光学活性ビナフチル化合物、
【0018】
【化22】
Figure 0004617643
(上記一般式(7)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は各々上記5)に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。)
18)上記一般式(7)において、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに上記一般式(3)に示される同一の置換基である、17)に記載の化合物、
19)上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、18)に記載の化合物、
20)17)〜19)のいずれかに記載の上記一般式(7)で示される化合物に、パラジウム触媒及び有機塩基の存在下、一酸化炭素及びメタノールを反応させることを特徴とする、13)〜15)のいずれかに記載の上記一般式(6)で示される化合物の製造方法、
21)下記一般式(8)で示される光学活性ビナフトール化合物、
【0019】
【化23】
Figure 0004617643
(上記一般式(8)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は各々上記5)に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。)
22)上記一般式(8)において、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基である、21)に記載の化合物、
23) 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、22)に記載の化合物、
24)21)〜23)のいずれかに記載の一般式(8)で示される化合物にトリフレート化剤を反応させることを特徴とする、17)〜19)のいずれかに記載の上記一般式(7)で示される化合物の製造方法、
25)下記一般式(9)で示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物、
【0020】
【化24】
Figure 0004617643
(上記一般式(9)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は各々上記5)に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。)
26)上記一般式(9)において、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに上記一般式(3)に示される同一の置換基である、25)に記載の化合物、
27)上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、26)に記載の化合物、
28)25)〜27)のいずれかに記載の上記一般式(9)で示される化合物に酸を作用させることを特徴とする、21)〜23)のいずれかに記載の上記一般式(8)で示される化合物の製造方法、
29)下記一般式(10)で示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物。
【0021】
【化25】
Figure 0004617643
[上記一般式(10)中、R1、R3、R5、R6は各々5)に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。]
で示される化合物にアルキルリチウムを作用させた後、引き続き下記一般式(11)
【0022】
【化26】
Figure 0004617643
[上記一般式(11)中、R13、R14、Pf、nは各々上記一般式(3)に示す定義と同じである。]
を作用させることを特徴とする、25)〜27)のいずれかに記載の上記一般式(9)で示される化合物の製造方法、
30)1)〜4)のいずれかに記載の一般式(1)で示される化合物の存在下、下記一般式(12)
【0023】
【化27】
Figure 0004617643
[上記一般式(12)中、R15、R16は水素原子、又はハロゲンで置換されていてもよい炭素数5〜10のアリール基を表す。ただしR15及びR16は同時に水素原子となることはない。R17は炭素数1〜6の直鎖の、分枝した又は環状のアルキル基を表す。Aは酸素原子、若しくは1つの水素原子と結合した窒素原子を示す。]
で示されるグリシンエステル若しくはアミドのシッフ塩基を、下記一般式(13)
【0024】
【化28】
Figure 0004617643
[上記一般式(13)中、R18は炭素数1〜10の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、炭素数3〜10の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、炭素数3〜10の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、又はハロゲン原子で核が1〜15置換されていてもよい炭素数5〜25のアラルキル基を表す。Yは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。]
で示されるハロゲン化アルキルと無機塩基の存在下、二相以上の溶液中で反応させ、下記一般式(14)
【0025】
【化29】
Figure 0004617643
[上記一般式(14)中、R15、R16、R17、R18、Aは上記と同じ定義である。また、*部の不斉炭素の立体配置は(R)又は(S)を示す。]
で示される化合物を立体選択的に製造する方法、
31)水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤、有機溶剤、および水の3相を含んでなる溶液中で、1)〜4)のいずれかに記載の一般式(1)で示されるアンモニウム塩を相間移動触媒として反応を行う方法、
32)水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤、有機溶剤、および水の3相を含んでなる溶液中で、29)に記載の反応を行う方法、
33)1)〜4)のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるアンモニウム塩の含有物から、有機溶剤、水、有機溶剤―水混合溶剤、及び/又は水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤を用いて当該アンモニウム塩を分層することを特徴とする、該アンモニウム塩の回収及び/又は精製方法、
34)30)に記載の方法によって上記一般式(14)の化合物を製造した後、1)〜4)のいずれかに記載の一般式(1)で示されるアンモニウム塩を含有する反応混合物から、有機溶剤、水、有機溶剤―水混合溶剤、及び/又は水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤を用いて分層することを特徴とする、該アンモニウム塩の回収方法、
35)30)に記載の方法によって上記一般式(14)の化合物を製造した後、1)〜4)のいずれかに記載の一般式(1)で示されるアンモニウム塩を含有する反応混合物から、有機溶剤、水、有機溶剤―水混合溶剤、及び/又は水素原子がフッ素原子で置換されたヘキサンを用いて分層することを特徴とする、該塩の回収方法、
36)34)〜35)のいずれかの方法によって回収された、1)〜4)のいずれかに記載の一般式(1)で示されるアンモニウム塩を、30)に記載の上記一般式(14)の化合物を製造するための不斉触媒として再度利用する方法、
である。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明において、上記一般式(1)に示される光学活性四級アンモニウム塩としては、上記定義に該当する化合物であれば特に限定するものではないが、上記一般式(1)において、R1とR7、R3とR9、R4とR10、R5とR11、R6とR12が各々同一の置換基であり、且つR2とR8がともに一般式(3)に示される同一の置換基であり、且つX-がフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、若しくは水酸化物イオンであるものが好ましく、中でも上記一般式(1)において、R1、R3、R5、R6、R7、R9、R11、R12がいずれも水素原子であり、且つR2、R4、R8、R10がいずれも一般式(3)に示される同一の置換基であり、且つX-が塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、若しくはp−トルエンスルホン酸イオンであるものがより好ましく、更にその中でも上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2であり、且つX-が臭化物イオンである化合物が最も好ましい。
【0028】
上記一般式(1)に示される化合物としては、具体的には、例えば、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムブロミド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[6−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムブロミド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−6−(2−パーフルオロオクチル)エチル]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムブロミド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル]アンモニウムブロミド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4,6−ビス(−トリス(2−パーフルオロオクチルエチル)シリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムブロミド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムフルオリド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムクロリド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムヨージド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムヒドロキシド、スピロ−ビス{(R)−1,1’−ビ−[4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウム−4−メチルベンゼンスルホネート、等が挙げられ、さらにそのエナンチオマーである(S)体が挙げられる。
【0029】
本発明において、上記一般式(4)に示される光学活性ビナフチル化合物としては、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基であるものが好ましく、中でも上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2であり、且つXが臭素原子である化合物が最も好ましい。
【0030】
本発明において、上記一般式(4)に示される光学活性ビナフチル化合物としては、具体的には、例えば、(R)−1,1’−ビ−{2−ブロモメチル−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ブロモメチル−6−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ブロモメチル−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−6−(2−パーフルオロオクチル)エチル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ブロモメチル−4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ブロモメチル−4,6−ビス[−トリス(2−パーフルオロオクチルエチル)シリル]}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−クロロメチル−4,6−ビス[(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヨードメチル−4,6−ビス((2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル)}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−(4−メチルベンゼンスルホニルオキシ)メチル−4,6−ビス[(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]}ナフチル、等が挙げられ、さらにそのエナンチオマーである(S)体が挙げられる。
【0031】
本発明において、上記一般式(1)で示される化合物は、上記一般式(4)で示される光学活性ビナフチル化合物にアンモニアを反応させることにより得ることができる。このとき、アンモニアとしては、通常10%〜飽和の、好ましくは20〜28wt%のアンモニア水を用いても良い。また、溶剤として水又はこれに反応に不活性な有機溶剤を添加しても良い。また、このとき反応系を封管する等してアンモニアの減損を防止することが好ましい。アンモニアの使用量は基質に対して通常1〜8当量、好ましくは2〜5当量用い、反応温度は通常5℃〜30℃で行い、溶液中の基質濃度は通常5〜20wt%で行い、反応時間は通常5〜72時間で、好ましくは10〜36時間で行えば、良好な収率で目的のアンモニウム塩を与える。
【0032】
本発明において、上記一般式(5)に示される光学活性ビナフチルジヒドロキシ化合物としては、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基であるものが好ましく、中でも上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である化合物が最も好ましい。
【0033】
本発明において、上記一般式(5)に示される光学活性ビナフチルジヒドロキシ化合物としては、具体的には、例えば、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシメチル−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシメチル−6−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシメチル−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−6−(2−パーフルオロオクチル)エチル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシメチル−4,6−ビス[(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシメチル−4,6−ビス[−トリス(2−パーフルオロオクチルエチル)シリル]}ナフチル、等が挙げられ、さらにそのエナンチオマーである(S)体が挙げられる。
【0034】
本発明において、上記一般式(4)に示される化合物のうちの光学活性ビナフチルジハロゲン化合物を製造する場合は、例えば、上記一般式(5)に示される光学活性ビナフチルジヒドロキシ化合物に、テトラヒドロフラン等の適当な溶剤中、トリフェニルホスフィン、及び四臭化炭素若しくは四塩化炭素等を反応させることにより得ることができる。このとき、溶液中の基質濃度は通常5〜20wt%、反応温度は通常−10℃〜50℃、好ましくは通常10℃〜30℃、反応時間は通常10分間〜10時間、好ましくは1時間〜5時間で行えば、良好な収率で目的のジハロゲン体を与える。
【0035】
本発明において、上記一般式(4)に示される化合物のうちの光学活性ビナフチルジスルホネート化合物を製造する場合は、例えば、上記一般式(5)に示される光学活性ビナフチルジヒドロキシ化合物に、ジクロロメタン等の適当な溶剤中、トリエチルアミンなどの酸捕捉剤存在下、p−トルエンスルホニルクロリド等を反応させることにより得ることができる。このとき、溶液中の基質濃度は通常5〜20wt%、反応温度は通常−40℃〜20℃、好ましくは通常−10℃〜10℃、反応時間は通常10分間〜10時間、好ましくは1時間〜5時間で行えば、良好な収率で目的のスルホニルオキシ体を与える。
【0036】
本発明において、上記一般式(6)に示される光学活性ビナフチルジエステル化合物としては、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基であるものが好ましく、中でも上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である化合物が最も好ましい。
【0037】
本発明において、上記一般式(6)に示される光学活性ビナフチルジエステル化合物としては、具体的には、例えば、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシカルボニル−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシカルボニル−6−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシカルボニル−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−6−(2−パーフルオロオクチル)エチル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシカルボニル−4,6−ビス[(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシカルボニル−4,6−ビス[−トリス(2−パーフルオロオクチルエチル)シリル]}ナフチル、等が挙げられ、さらにそのエナンチオマーである(S)体が挙げられる。
【0038】
本発明において、上記一般式(5)に示される光学活性ビナフチルジヒドロキシ化合物は、例えば、上記一般式(6)に示される光学活性ビナフチルジエステル化合物に、テトラヒドロフラン等の適当な溶剤中、LiAlH4等の水素アニオンを反応させることにより得られる。このとき、溶液中の基質濃度は通常5〜30wt%、反応温度は通常−20℃〜30℃、好ましくは−10℃〜10℃、反応時間は通常10分間〜5時間、好ましくは20分〜2時間で行えば、良好な収率で目的のジヒドロキシルメチル体を与える。
【0039】
本発明において、上記一般式(7)に示される光学活性ビナフチル化合物としては、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基であるものが好ましく、中でも上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である化合物が最も好ましい。
【0040】
本発明において、上記一般式(7)に示される光学活性ビナフチル化合物としては、具体的には、例えば、(R)−1,1’−ビ−{4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−2−トリフルオロメタンスルフォニル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{6−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−2−トリフルオロメタンスルフォニル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−6−(2−パーフルオロオクチル)エチル−2−トリフルオロメタンスルフォニル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{4,6−ビス[(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]−2−トリフルオロメタンスルフォニル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{4,6−ビス[−トリス(2−パーフルオロオクチルエチル)シリル]−2−トリフルオロメタンスルフォニル}ナフチル、等が挙げられ、さらにそのエナンチオマーである(S)体が挙げられる。
【0041】
本発明において、上記一般式(6)に示される光学活性ビナフチルジメチルエステル化合物は、例えば、上記一般式(7)に示される光学活性ビナフチル化合物に、ジメチルスルホキシド等の適当な溶剤中、パラジウム触媒及び酸を捕捉するためのジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基存在下、加圧してもよい一酸化炭素雰囲気下、一酸化炭素及びメタノールを反応させることにより得られる。このとき、溶液中の基質濃度は通常5〜30wt%、反応圧力は通常1〜30atm、好ましくは5〜20atm、反応温度は通常室温〜200℃、好ましくは80℃〜130℃、反応時間は通常24〜72時間で行われる。このとき使用するパラジウム触媒は、0価のものを用いても良いし、系内で2価のアセテート等から調製したものを用いても良く、使用量は基質に対して通常5〜20mol%用いる。またこのとき、塩基の使用量は基質に対して通常2〜8当量、好ましくは2.5〜5当量使用し、また、メタノールの使用量は基質に対して2〜200当量、好ましくは10〜50当量用いれば、良好な収率で目的のジエステル体を与える。
【0042】
本発明において、上記一般式(8)に示される光学活性ビナフトール化合物としては、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基であるものが好ましく、中でも上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である化合物が最も好ましい。
【0043】
本発明において、上記一般式(8)に示される光学活性ビナフトール化合物としては、具体的には、例えば、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシ−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシ−6−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシ−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−6−(2−パーフルオロオクチル)エチル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシ−4,6−ビス[(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−ヒドロキシ−4,6−ビス[−トリス(2−パーフルオロオクチルエチル)シリル]}ナフチル、等が挙げられ、さらにそのエナンチオマーである(S)体が挙げられる。
【0044】
本発明の上記一般式(7)に示される光学活性ビナフチル化合物は、例えば、上記一般式(8)に示される光学活性ビナフトール化合物に、ジクロルメタン等の反応に不活性な溶剤中、トリエチルアミン等の有機塩基存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物やトリフルオロメタンスルホニルクロリド等のトリフレート化剤を反応させることにより得られる。このとき、溶液中の基質濃度は通常5〜30wt%、反応温度は通常−78℃〜室温、反応時間は通常30分間〜3時間で行えば、良好な収率で目的のジトリフレート体を与える。
【0045】
本発明において、上記一般式(9)に示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物としては、R1、R3、R5、R6がいずれも水素原子であり、且つR2、R4がともに一般式(3)に示される同一の置換基であるものが好ましく、中でも上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である化合物が最も好ましい。
【0046】
本発明において、上記一般式(9)に示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物としては、具体的には、例えば、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシメトキシ−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシメトキシ−6−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシメトキシ−4−(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル−6−(2−パーフルオロオクチル)エチル}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシメトキシ−4,6−ビス[(2−パーフルオロオクチルエチル)ジメチルシリル]}ナフチル、(R)−1,1’−ビ−{2−メトキシメトキシ−4,6−ビス[−トリス(2−パーフルオロオクチルエチル)シリル]}ナフチル、等が挙げられ、さらにそのエナンチオマーである(S)体が挙げられる。
【0047】
本発明において、上記一般式(8)に示される光学活性ビナフトール化合物は、例えば、上記一般式(9)に示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物に、ジクロロメタンやメタノール等の適当な溶剤中または混合溶剤中、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を反応させることにより得られる。このとき、有機酸の基質に対する使用量は、2〜3当量が好ましく、溶液中の基質濃度は通常5〜20wt%、反応温度は通常10℃〜80℃、好ましくは30℃〜60℃、反応時間は通常20分間〜48時間、好ましくは2時間〜24時間で行えば、良好な収率で目的のビナフトール体を与える。
【0048】
本発明において、上記一般式(9)に示される光学活性ビナフチル化合物は、例えば、上記式(10)に示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物に、テトラヒドロフラン等の適当な溶剤中、ブチルリチウム等を反応させ、臭素原子をリチウム原子に交換させた後、上記一般式(11)に示されるシリルクロリドを反応させることにより得られる。このとき、溶液中の基質濃度は通常5〜20wt%、反応温度は通常−100℃〜−50℃、好ましくは−85℃〜−75℃、アルキルリチウムの当量は、基質に対して8〜12当量、反応時間は通常20分間〜3時間、好ましくは30分間〜2時間で行えば、目的のリチオ体を与え、更にこれにアルキルシリルクロリドを基質に対して4〜8当量を同温にて添加し、反応温度は通常−80℃〜30℃、好ましくは0℃〜室温、反応時間は通常20分間〜2時間、好ましくは30分間〜1時間で行えば、良好な収率で目的物を与える。
【0049】
本発明において、上記一般式(10)に示されるビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物としては、上記定義に該当する化合物であれば特に限定するものではないが、R1、R3、R5、R6が水素原子であるものが好ましい。
【0050】
本発明において、上記一般式(11)に示されるシリルクロリドとしては、上記定義に該当する化合物であれば特に限定するものではないが、上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である化合物が最も好ましい。
【0051】
本発明において、上記一般式(10)に示される化合物は、対応するビナフトール体にテトラヒドロフラン等の溶剤中、水素化ナトリウム等を作用させ、アルコキシドとした後、クロロメチルメチルエーテルを添加する事によって得る事が出来る。このとき、溶液中の基質濃度は通常5〜20wt%、反応温度は通常−40℃〜室温、好ましくは−10℃〜0℃、反応時間は通常20分間〜3時間、好ましくは30分間〜2時間で行えば、目的物を良好な収率で与える。
【0052】
本発明において、上記一般式(1)に示される光学活性四級アンモニウム塩は不斉相間移動触媒として使用される。例えば、上記一般式(1)に示される光学活性四級アンモニウム塩を相間移動触媒として、上記一般式(12)に示されるグリシンエステルのシッフ塩基を、2相の溶剤中で、上記一般式(13)に示されるハロゲン化アルキルと不斉アルキル化反応させ、上記一般式(14)に示される化合物を立体選択的に製造する方法においては、溶剤はトルエン等の水と混和しない炭化水素系溶剤と、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属を5〜60wt%含む水溶液の5:1〜1:3混合液、好ましくは5:1〜1:1混合液を用い、溶液中の基質濃度は通常5〜20wt%、反応温度は通常−40℃〜10℃、好ましくは−25℃〜5℃、反応時間は通常1時間〜200時間、好ましくは5時間〜180時間で行われる。このとき使用する相間移動触媒の使用量は基質に対して0.5〜5mol%、好ましくは2.0〜4.0mol%用いれば、高収率、高立体選択的に目的の光学活性α−アミノ酸誘導体を得ることができる。また、上記製造方法において、相間移動触媒として、上記一般式(1)に示される光学活性四級アンモニウム塩を用いれば、触媒の軸不斉が(R,R)体のものを用いたときには、上記一般式(14)で示される生成物は(S)体を与え、逆に(S,S)体の触媒を用いたときには、生成物は(R)体を与える。
【0053】
本発明において、水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤、有機溶剤、および水の3相を含んでなる溶液中で、上記の反応を行うことができる。このとき使用する水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤としては、例えばパーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン等のパーフルオロ化されたアルカン類若しくはシクロアルカン類などのフルオラス溶剤が挙げられ、使用する有機溶剤に対する容積比で0.1〜1.0倍量添加した条件で行うことができる。
【0054】
本発明において、反応後に、触媒である光学活性四級アンモニウム塩を回収する方法は、本発明の方法であれば特に限定するものではないが、必要であれば反応液を水、及びトルエン等の有機溶剤を用いて希釈した後、例えばパーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン等のパーフルオロ化されたアルカン類若しくはシクロアルカン類などのフルオラス溶剤を用いて分層することにより、フルオラス相から触媒のみを高収率で回収できる。
【0055】
本発明において、回収した触媒の精製は、フルオラス溶液からフルオラス溶剤を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した後、ジクロロメタン/メタノール混合溶剤など極性の比較的高い有機溶剤で溶出する事で精製可能である。また、フルオラス溶剤を濃縮した粗回収物をそのまま再反応用の触媒として用いる事も可能である。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、
▲1▼グリシン誘導体の不斉アルキル化反応用の軸不斉含有スピロ型相間移動触媒として有効な新規の光学活性四級アンモニウム塩が提供され、
▲2▼当該光学活性四級アンモニウム塩は製造、回収、精製が容易であり、再利用しても触媒活性が高い、
ものである。
【0057】
当該光学活性四級アンモニウム塩は、相間移動触媒として使用することによって、立体選択的に医、農薬合成中間体として有用な光学活性α−アミノ酸誘導体を製造することが出来、本発明は工業的に極めて有用である。
【0058】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
実施例1 (R)−1,1’−ビ−(4 ,6−ジブロモ−2−メトキシメトキシ)ナフチル(2)の合成(前駆体の合成)
【0060】
【化30】
Figure 0004617643
アルゴン雰囲気下、化合物1(6.02g,10mmol)のテトラヒドロフラン溶液(50mL)へ、60%水素化ナトリウム(0.880g,22mmol)を0℃で加え10分間攪拌した。ついで、クロロメチルメチルエーテル(1.67mL,22mmol)を0℃で加えた後、反応混合物を室温まで昇温し、1時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を水にあけジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮後、得られた白色固体にヘキサン(30mL)を加え、これを濾過することで、化合物2(6.90g,10mmol)を定量的に得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.43(2H,d,J=2.4Hz,Ar−H),7.94(2H,s,Ar−H),7.33(2H,dd,J=2.4Hz,9.2Hz,Ar−H),6.96(2H,d,J=9.2Hz,Ar−H),5.07(2H,d,J=7.2Hz,Ar−OCH2),4.98(2H,d,J=7.2Hz,Ar−OCH2),3.20(6H,s,OCH3).
実施例2 (R)−1,1’−ビ−{4 ,6−ビス(2−パーフルオロオクチルエチルジメチルシリル)−2−メトキシメトキシ}ナフチル(3)の合成
【0061】
【化31】
Figure 0004617643
アルゴン雰囲気下、化合物2(0.207g,0.30mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)へ、1.40M tert−ブチルリチウム溶液(1.93mL,2.7mmol)を−78℃で滴下し15分間攪拌した。ついで、ジメチル(パーフルオロオクチル)エチルクロロシラン(1.80mmol)を−78℃で加えた後、反応混合物を室温まで昇温し、4時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を水にあけジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ジエチルエーテル/へキサン混合溶媒で溶出し、化合物3を85%の収率で得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.21(2H,s,Ar−H),7.74(2H,s,Ar−H),7.30(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),7.18(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),5.07(2H,d,J=6.8Hz,Ar−OCH2),4.95(2H,d,J=6.8Hz,Ar−OCH2),3.10(6H,s,OCH3),2.16−1.95(8H,m,CH2CF2),1.32−1.27(4H,m,SiCH2),1.02−0.98(4H,m,SiCH2),0.61(12H,s,SiCH3),0.37(6H,s,SiCH3),0.36(6H,s,SiCH3).
実施例3 (R)−1,1’−ビ−{4 ,6−ビス(2−パーフルオロオクチルエチルジメチルシリル)−2−ヒドロキシ}ナフチル(4)の合成
【0062】
【化32】
Figure 0004617643
化合物3(0.30mmol)のジクロロメタン(10mL)およびメタノール(10mL)溶液へ、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.114g,0.60mmol)を室温で加え、50℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を水にあけジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、、化合物4を定量的収率で得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.23(2H,s,Ar−H),7.58(2H,s,Ar−H),7.39(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),7.20(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),5.01(2H,s,OH),2.13−1.97(8H,m,CH2CF2),1.33−1.28(4H,m,SiCH2),1.04−0.99(4H,m,SiCH2),0.61(12H,s,SiCH3),0.37(12H,s,SiCH3).
実施例4 (R)−1,1’−ビ−{4 ,6−ビス(2−パーフルオロオクチルエチルジメチルシリル)−2−トリフルオロメタンスルフォニル}ナフチル(5)の合成
【0063】
【化33】
Figure 0004617643
アルゴン雰囲気下、化合物4(3.70mmol)のジクロロメタン溶液(25mL)へ、トリエチルアミン(11.1mmol)を加えた後、−78℃まで冷却した。次いでトリフルオロメタンスルホン酸無水物(11.1mmol)を滴下し、反応混合物を室温まで昇温して1時間攪拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液にあけジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ジエチルエーテル/へキサン混合溶媒で溶出し化合物5を定量的収率で得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.33(2H,s,Ar−H),7.72(2H,s,Ar−H),7.47(2H,dd,J=1.2Hz,8.4Hz,Ar−H),7.32(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),2.05−1.87(8H,m,CH2CF2),1.35−1.24(4H,m,SiCH2),1.05−1.01(4H,m,SiCH2),0.66(6H,s,SiCH3),0.64(6H,s,SiCH3),0.43(6H,s,SiCH3),0.41(6H,s,SiCH3).
実施例5 (R)−1,1’−ビ−{4 ,6−ビス(2−パーフルオロオクチルエチルジメチルシリル)−2−メトキシカルボニル}ナフチル(6)の合成
【0064】
【化34】
Figure 0004617643
アルゴン雰囲気下、化合物5(0.70mmol)、Pd(OAc)2(15mol%)、dppp(16.5mol%)に、iPr2NEt(0.51mL)、MeOH(1.0mL)、DMSO(2.0mL)を加えた後、反応容器をCO雰囲気下15atmに加圧し、100℃にて24時間攪拌した。反応混合物を水にあけ酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ジエチルエーテル/へキサン混合溶媒で溶出し化合物6を、70%の収率で得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.36(2H,s,Ar−H),8.29(2H,s,Ar−H),7.33(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),7.23(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),3.50(6H,s,CO2CH3),2.18−1.93(8H,m,CH2CF2),1.35−1.31(4H,m,SiCH2),1.04−1.00(4H,m,SiCH2),0.53(12H,s,SiCH3),0.38(12H,s,SiCH3).
実施例6 (R)−1,1’−ビ−{4 ,6−ビス(2−パーフルオロオクチルエチルジメチルシリル)−2−ヒドロキシメチル)}ナフチル(7)の合成
【0065】
【化35】
Figure 0004617643
アルゴン雰囲気下、LiAlH4(1.30mmol)のテトラヒドロフラン溶液に、化合物6(0.44mmol)を0℃で加えた後、1時間攪拌した。反応混合物をMeOH、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液で失活させ、ジエチルエーテルにて抽出した。無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにに付し、ジエチルエーテル/へキサン混合溶媒で溶出し化合物7を定量的収率で得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.27(2H,s,Ar−H),7.90(2H,s,Ar−H),7.33(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),7.10(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),4.43(2H,d,J=11.6Hz,ArCH2),4.14(2H,d,J=11.6Hz,ArCH2),3.20(2H,br s,OH),2.16−1.98(8H,m,CH2CF2),1.34−1.29(4H,m,SiCH2),1.06−1.01(4H,m,SiCH2),0.63(12H,s,SiCH3),0.37(12H,s,SiCH3).
実施例7 (R)−1,1’−ビ−{4 ,6−ビス(2−パーフルオロオクチルエチルジメチルシリル)−2−ブロモメチル}ナフチル(8)の合成
【0066】
【化36】
Figure 0004617643
化合物7(0.20mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)へ、トリフェニルホスフィン(0.315g,1.2mmol)および四臭化炭素(0.398g,1.2mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を水にあけジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ヘキサン溶媒で溶出し、化合物8を定量的収率で得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.25(2H,s,Ar−H),7.89(2H,s,Ar−H),7.35(2H,dd,J=1.2Hz,8.4Hz,Ar−H),7.09(2H,d,J=8.4Hz,Ar−H),4.23(4H,s,ArCH2),2.17−1.97(8H,m,CH2CF2),1.34−1.25(4H,m,SiCH2),1.04−1.00(4H,m,SiCH2),0.64(12H,s,SiCH3),0.38(12H,s,SiCH3).
実施例8 スピロ−ビス−{(R)−1,1’−ビ −[4,6−ビス(2−パーフルオロオクチルエチルジメチルシリル)]ナフチル−2,2’−ジメチル}アンモニウムブロミド(9)の合成
【0067】
【化37】
Figure 0004617643
化合物8(3.15mmol)に、28%アンモニア水(0.77mL,12.6mmol)、アセトニトリル(5mL)を加えた後、封管し、反応容器を還流下24時間攪拌した。反応混合物を水にあけジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタン/メタノール混合溶媒で溶出し化合物9を、35%の収率で得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)σ 8.41(4H,s,Ar−H),8.06(4H,s,Ar−H),7.39(4H,d,J=8.4Hz,Ar−H),7.25(4H,d,J=8.4Hz,Ar−H),4.48(4H,d,J=13.6Hz,ArCH2),4.26(4H,d,J=13.6Hz,ArCH2),2.20−1.98(16H,m,CH2CF2),1.44−1.40(8H,m,SiCH2),1.07−1.03(8H,m,SiCH2),0.84(12H,s,SiCH3),0.79(12H,s,SiCH3),0.60(12H,s,SiCH3),0.43(12H,s,SiCH3).
実施例9 化合物(9)を光学活性相間移動触媒として用いた不斉アルキル化反応と触媒回収および触媒の再利用。
【0068】
アルゴン雰囲気下、一般式(12)に相当する化合物(10)(0.3mmol)、および一般式(1)に相当する化合物(9)(0.009mmol)のトルエン(3.0mL)溶液に、0℃でベンジルブロミド(11)(0.36mmol)を加えた。次いで、50%水酸化カリウム水溶液(1.0mL)滴下し、混合物を同温にて激しく96時間攪拌した。混合物を水(3.0mL)およびトルエン(3.0mL)で希釈した後、FC−72(パーフルオロへキサン)(3.0mL×3)で化合物(9)を抽出した。フルオラス溶剤を減圧留去して得られた残渣(触媒として定量的に回収)は、それ以上精製せず、次の反応に再利用した。化合物(12)を主として含む粗生成物のトルエン/水混合溶液は、エーテルにて抽出後、抽出された有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後に、減圧濃縮をおこない、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、アルキル化化合物12を得た。結果を表1に示す。
【0069】
【化38】
Figure 0004617643
実施例10
実施例9に続いて、再利用のために回収した触媒を用いて、同一の反応スケールで同一の反応操作、同一の後処理をを繰り返した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例11
実施例10に引き続いてさらに再度回収された触媒を用いて、同一の反応スケールで同一の反応操作、同一の後処理をを繰り返した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
Figure 0004617643
実施例12−13 化合物(9)を光学活性相間移動触媒として用いた不斉アルキル化反応
【0072】
【化39】
Figure 0004617643
下記表2中のR−Yに示す基質を用いる以外は、実施例9と同じ方法で化合物(9)を触媒として用いた不斉アルキル化反応をおこなった。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
Figure 0004617643
尚、各反応生成物の光学純度は、J.Am.Chem.Soc.1999,Vol.121,No.27,6519−6520に記載の方法に従って決定した。

Claims (31)

  1. 下記一般式(1)で示される光学活性四級アンモニウム塩。
    Figure 0004617643
    [上記一般式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、フッ素で置換されていてもよいメチル基、フッ素で置換されていてもよいエチル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、フッ素で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、フッ素で置換されていてもよい炭素数7〜35のアラルキル基を表す。但しR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12のうち少なくとも一つは、下記一般式(2)、
    Figure 0004617643
    (上記一般式(2)中、Pfは炭素数2〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルキル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルケニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルキニル基、炭素数6〜20の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアリール基、炭素数7〜25の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアラルキル基を表す。nは、0〜4までの整数を表す。)
    及び/又は下記一般式(3)
    Figure 0004617643
    (上記一般式(3)中、Pf、nは各々上記一般式(2)に示す定義と同じである。R13、R14は各々独立して、メチル基、エチル基、ビニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜25のアラルキル基、又は上記一般式(2)に示す置換基を表す。)
    を表す。Xは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、水酸化物イオン、チオシアン化物イオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、又はヘキサフルオロリン酸イオンを表す。また、二つのビナフチル部における軸不斉の組み合せは(R,R)又は(S,S)を表す。]
  2. 上記一般式(1)において、RとR、RとR、RとR10、RとR11、RとR12が各々同一の置換基であり、且つRとRがともに上記一般式(3)に示される同一の置換基であり、且つXがフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、チオシアン化物イオン、硫酸水素イオン、若しくは水酸化物イオンである、請求項1に記載の化合物。
  3. 上記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R11、R12がいずれも水素原子であり、且つR、R、R、R10がいずれも上記一般式(3)に示される同一の置換基であり、且つXが塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、若しくはp−トルエンスルホン酸イオンである、請求項2に記載の化合物。
  4. 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2であり、且つXが臭化物イオンである、請求項3に記載の化合物。
  5. 下記一般式(4)で示される光学活性ビナフチル化合物。
    Figure 0004617643
    [上記一般式(4)中、R、R、R、R、R、Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、フッ素で置換されていてもよいメチル基、フッ素で置換されていてもよいエチル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、フッ素で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、フッ素で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、フッ素で置換されていてもよい炭素数7〜35のアラルキル基を表す。但しR、R、R、R、R、Rのうち少なくとも一つは請求項1に記載の上記一般式(2)若しくは上記一般式(3)で示される置換基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、p−トルエンスルホニルオキシ基を表す。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を表す。]
  6. 上記一般式(4)において、R、R、R、Rがいずれも水素原子であり、且つR、Rがともに上記一般式(3)に示される同一の置換基である、請求項5に記載の化合物。
  7. 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2であり、且つXが臭素原子である、請求項6に記載の化合物。
  8. 請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の一般式(4)で示される化合物にアンモニアを反応させることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるうちの、Xが塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンである化合物の製造方法。
  9. 下記一般式(5)で示される光学活性ビナフチルジヒドロキシル化合物。
    Figure 0004617643
    [上記一般式(5)中、R、R、R、R、R、Rは各々上記請求項5に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。]
  10. 上記一般式(5)において、R、R、R、Rがいずれも水素原子であり、且つR、Rがともに上記一般式(3)に示される同一の置換基である、請求項9に記載の化合物。
  11. 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、請求項10に記載の化合物。
  12. 請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の上記一般式(5)で示される化合物にハロゲン源若しくはp−トルエンスルホニルクロリドを反応させることを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の上記一般式(4)で示される化合物の製造方法。
  13. 下記一般式(6)で示される光学活性ビナフチルジエステル化合物。
    Figure 0004617643
    [上記一般式(6)中、R、R、R、R、R、Rは各々上記請求項5に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。]
  14. 上記一般式(6)において、R、R、R、Rがいずれも水素原子であり、且つR、Rがともに上記一般式(3)に示される同一の置換基である、請求項13に記載の化合物。
  15. 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、請求項14に記載の化合物。
  16. 請求項13乃至請求項15のいずれかに記載の上記一般式(6)で示される化合物に水素アニオンを反応させることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の一般式(5)で示される化合物の製造方法。
  17. 下記一般式(7)で示される光学活性ビナフチル化合物。
    Figure 0004617643
    [上記一般式(7)中、R、R、R、Rがいずれも水素原子であり、且つR、Rがともに請求項1に記載の上記一般式(3)に示される同一の置換基である。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。]
  18. 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、請求項17に記載の化合物。
  19. 請求項17又は請求項18に記載の上記一般式(7)で示される化合物に、パラジウム触媒及び有機塩基の存在下、一酸化炭素及びメタノールを反応させることを特徴とする、請求項13乃至請求項15のいずれかに記載の上記一般式(6)で示される化合物の製造方法。
  20. 下記一般式(8)で示される光学活性ビナフトール化合物。
    Figure 0004617643
    [上記一般式(8)中、R、R、R、Rがいずれも水素原子であり、且つR、Rがともに請求項1に記載の上記一般式(3)に示される同一の置換基である。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。]
  21. 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、請求項20に記載の化合物。
  22. 下記一般式(9)で示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物。
    Figure 0004617643
    [上記一般式(9)中、R、R、R、Rがいずれも水素原子であり、且つR、Rがともに請求項1に記載の上記一般式(3)に示される同一の置換基である。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。]
  23. 上記一般式(3)において、R13、R14がともにメチル基であり、Pfがすべての水素原子がフッ素原子で置換されたn−オクチル基であり、nが2である、請求項22に記載の化合物。
  24. 下記一般式(10)で示される光学活性ビナフチルビスメトキシメチルエーテル化合物
    Figure 0004617643
    [上記一般式(10)中、R、R、R、Rは各々上記請求項5に記載の上記一般式(4)に示す定義と同じである。また、ビナフチル部における軸不斉は(R)又は(S)を示す。]
    で示される化合物にアルキルリチウムを作用させた後、引き続き下記一般式(11)
    Figure 0004617643
    [上記一般式(11)中、R13、R14、Pf、nは、Pfは炭素数2〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルキル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルケニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアルキニル基、炭素数6〜20の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアリール基、炭素数7〜25の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたアラルキル基を表す。nは、0〜4までの整数を表し、R13、R14は各々独立して、メチル基、エチル基、ビニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、炭素数3〜18の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜25のアラルキル基、又は請求項1に記載の上記一般式(2)に示す置換基を表す。]
    を作用させることを特徴とする、請求項22又は請求項23に記載の上記一般式(9)で示される化合物の製造方法。
  25. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の上記一般式(1)で示される化合物の存在下、下記一般式(12)
    Figure 0004617643
    [上記一般式(12)中、R15、R16は水素原子、又はハロゲンで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。ただしR15及びR16は同時に水素原子となることはない。R17は炭素数1〜6の直鎖の、分枝した又は環状のアルキル基を表す。Aは酸素原子、若しくは1つの水素原子と結合した窒素原子を示す。]
    で示されるグリシンエステル若しくはアミドのシッフ塩基を、下記一般式(13)
    Figure 0004617643
    [上記一般式(13)中、R18は炭素数1〜10の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキル基、炭素数3〜10の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルケニル基、炭素数3〜10の直鎖の、分岐した若しくは環式のアルキニル基、又はハロゲン原子で核が1〜15置換されていてもよい炭素数7〜25のアラルキル基を表す。Yは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。]
    で示されるハロゲン化アルキルと無機塩基の存在下、二相以上の溶液中で反応させ、下記一般式(14)
    Figure 0004617643
    [上記一般式(14)中、R15、R16、R17、R18、Aは上記と同じ定義である。また、*部の不斉炭素の立体配置は(R)又は(S)を示す。]
    で示される化合物を立体選択的に製造する方法。
  26. 水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤、有機溶剤、および水の3相を含んでなる溶液中で、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるアンモニウム塩を相間移動触媒として、グリシン誘導体の不斉アルキル化反応を行う方法。
  27. 水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤、有機溶剤、および水の3相を含んでなる溶液中で、請求項25に記載の反応を行う方法。
  28. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるアンモニウム塩の含有物から、有機溶剤、水、有機溶剤―水混合溶剤、及び/又は水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤を用いて当該アンモニウム塩を分層することを特徴とする、該塩の回収及び/又は精製方法。
  29. 請求項25に記載の方法によって上記一般式(14)の化合物を製造した後、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるアンモニウム塩を含有する反応混合物から、有機溶剤、水、有機溶剤―水混合溶剤、及び/又は水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤を用いて分層することを特徴とする、該アンモニウム塩の回収方法。
  30. 請求項25に記載の方法によって上記一般式(14)の化合物を製造した後、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるアンモニウム塩を含有する反応混合物から、有機溶剤、水、有機溶剤―水混合溶剤、及び/又は水素原子がフッ素原子で置換されたヘキサンを用いて分層することを特徴とする、該アンモニウム塩の回収方法。
  31. 請求項29又は請求項30に記載の方法によって回収された、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の上記一般式(1)で示されるアンモニウム塩を、請求項25に記載の上記一般式(14)の化合物を製造するための不斉触媒として再度利用する方法。
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