JP2003299962A - キラルジルコニウム触媒とアンチ選択性非対称アルドール反応方法 - Google Patents

キラルジルコニウム触媒とアンチ選択性非対称アルドール反応方法

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    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Abstract

(57)【要約】 【課題】 穏和な条件下にアンチ選択性非対称アルドー
ル反応を高効率で実現する。 【解決手段】 ジルコニウムテトラアルコキシドと、次
式; 【化1】 (式中のXは、同一または別異に、水素原子、臭素原子
の沃素原子または、パーフルオロアルキル基を示す。)
で表わされる化合物、並びに第1級アルコールと水とを
含有するキラルジルコニウム触媒を用い、シリルエノー
ルエーテルとアルデヒドとを反応させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、新規なキ
ラルジルコニウム触媒とこれを用いたアンチ選択性非対
称アルドール反応方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】非対称アルドール反応は、
キラルβ−ヒドロキシカルボニル化合物を構築する最も
有力な手段の一つである。最近の20年間で、これらキ
ラル化合物を取得するために幾つかのジアステレオ選択
性アルドール反応方法が開発され、そしてこれら反応の
幾つかは生物学的に重要な化合物の合成に適用されてい
る。さらに、これら反応のうち、触媒的エナンチオ選択
性反応、特に、キラルルイス酸によって介在されるシリ
ルエノールエーテルとアルデヒドとの触媒的非対称アル
ドール反応(Mukaiyama アルドール反応)は最も有力
で、かつ効率的な非対称アルドール反応法として確立さ
れてきている。また最近では、Sn、B、Cu、Ti等
に基づいて、この反応用の幾つかのキラルルイス酸が開
発され、高い反応性と選択性が達成されている。しかし
ながら、大部分の系では、これらの従来の反応方法は厳
密に無水の条件下で行われ、そしてより高い選択性を得
るためにはより低い温度が必要であった。さらに、プロ
ピオネート誘導体から誘導されたシリルエノールエーテ
ルの反応では、ほとんどのキラルルイス酸がシン−ジア
ステレオ選択性を示し、そして高い選択性でアンチ−ア
ルドールアダクトを与える触媒系はほとんどないことが
知られている。それ故に、有機合成反応においてはアン
チ−選択性の触媒的非対称アルドール反応のための方法
を開発することが重要な課題になっている。
【0003】このような状況において、この出願の発明
者らは、ジルコニウムアルコキシドから製造されるキラ
ルジルコニウム錯体とキラル2,2′−ビナフタレン−
1,1′−ジオール(BINOL)誘導体がアゾメチン
化合物を効果的に活性化して、触媒的非対称マンニッヒ
タイプの反応や、アザディールス−アルダー反応、スト
レッカー反応等が高い選択性で高収量で実施されること
を明らかにしてきた。発明者らの研究では、これらのキ
ラルジルコニウム触媒が優れた非対称環境を形成し、こ
れら触媒はアルデヒドを効果的に活性化することが期待
された。そこで、発明者らは、新規なキラルジルコニウ
ム錯体を使用することによってMukaiyamaアルドール反
応のための新規な触媒系を開発することを目的に研究を
進めてきた。
【0004】この出願の発明は以上のとおりの背景より
なされたものであって、アンチ選択性の非対称アルドー
ル反応を穏和な条件下で効率的に実施することのできる
新しい触媒系を提供し、これによる前記アルドール反応
を実現することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、第1には、ジルコニウム
テトラアルコキシドと、次式;
【0006】
【化2】
【0007】(式中のXは、同一または別異に、水素原
子、臭素原子、沃素原子またはパーフルオロアルキル基
を示す。)で表わされる化合物、並びに第一級アルコー
ルと水とを含有することを特徴とするキラルジルコニウ
ム触媒を提供する。
【0008】また、この出願の発明は、第2には、前記
の触媒の存在下に、シリルエノールエーテルとアルデヒ
ドとを反応させることを特徴とするアンチ選択性非対称
アルドール反応方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】この出願の発明は上記のとおりの
特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。 <キラルジルコニウム触媒>この出願の発明は、新規な
キラルジルコニウム触媒を提供するものであるが、この
触媒は、液相にある組成物として構成されることにな
る。この場合、前記の式で表わされる化合物は、リガン
ドとしての性格をもつものとして考慮される。
【0010】この出願の発明者による研究の初期段階で
は、たとえば、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキ
シド(Zr(OtBu)4)等のジルコニウムテトラアル
コキシドと(R)−3,3′−ジヨード−1,1′−ビ
ナフタレン−2,2′−ジオール((R)−3,3′−
2BINOL)および第一級アルコールから製造され
たジルコニウム錯体は、シリルエノールエーテルとアル
デヒドとのアルドール反応用の優れたルイス酸触媒であ
ることが示され、ほとんどの場合に、所望のアンチ−ア
ルドールアダクトが穏和な条件下で高収量、高いジアス
テレオ及びエナンチオ選択性で得られたが、脂肪族アル
デヒドとの反応での収量は他のアルデヒドとの反応の収
量より低いことが見いだされ、加えて、これら反応の中
には再現できないものがあることも明らかになった。そ
こで、発明者は反応条件を注意深く再検討し、そして最
終的に、この触媒系には少量の水が必須であることを見
いだした。たとえば表1に例示したように、3−フェニ
ルプロピオンアルデヒドと、フェニルプロピオネートか
ら誘導されたケテンシリルアセタール(2d)との反応
では、少量の水を添加することによって収量と選択性が
改善された。5〜20mol%の水を添加すると最良の
結果が得られた。
【0011】
【表1】
【0012】たとえばこのような結果から、この出願の
発明の触媒においては、水の添加量は、一般的には2〜
30mol%の範囲とすることが、より好ましくは5〜
20mol%の範囲とすることが考慮される。
【0013】この発明の触媒系では少量の水が重要な役
割を果たすことが示唆されたので、ベンズアルデヒドと
S−エチルエタンチオエートから誘導されたシリルエノ
ールエーテル(2a)とのモデルアルドール反応におけ
るアルコールの効果を検討した(表2)。水の効果はこ
れらの基質中で重要であり、そして水無しでは46%の
収量と4%のeeしか得られないことが明らかになった
(表2、エントリー1)。水の存在下では、エタノー
ル、プロパノール及びブタノールのような直鎖第一級ア
ルコールを使用する反応によって高収量と高いエナンチ
オ選択性が得られた(エントリー2〜4)。イソプロパ
ノールやtert−ブタノールのような第二級及び第三
級アルコールでは収量と選択性が低下した(エントリー
8及び9)。フェノールの場合もまた、より低い収量と
低い選択性であった(エントリー10)。80〜120
mol%のプロパノールを使用したとき、最良の収量と
エナンチオ選択性が得られた(エントリー12〜1
4)。
【0014】
【表2】
【0015】たとえば以上とおりの検討から、この出願
の発明の触媒においては、第一級アルコールの存在が欠
かせないものであることがわかる。その添加量について
は、一般的には20〜200mol%が目安とされ、よ
り好ましくは50〜120mol%、さらに反応基質の
種類によっては80〜120mol%の割合とすること
が考慮される。
【0016】第一級アルコールの種類については脂肪
族、脂環脂肪族、芳香脂肪族のうちの各種のものでよ
く、これらはフッ素原子等のハロゲン原子や、他の置換
基を適宜に有していてもよい。
【0017】触媒には、ジルコニウムテトラアルコキシ
ドが用いられるが、この場合のアルコキシド基として
は、直鎖あるいは分枝鎖状のアルキル基あるいは脂環式
基等をもつものでよく、なかでも、tert−Bu基等
の分枝鎖状のアルキル基を持つアルコキシドが好適なも
のとして例示される。これらのジルコニウムテトラアル
コキシドとしては、一般的には、反応基質に対して、1
〜100mol%の範囲での使用が考慮され、より好ま
しくは、5〜50mol%の範囲が実際的に考慮され
る。
【0018】一方、前記のリガンド化合物については、
同様に1〜100mol%の範囲での使用が、より好ま
しくは5〜60mol%の範囲での使用が考慮される。
【0019】触媒は、ジルコニウムテトラアルコキシド
とリガンド化合物、そして第一級アルコールと水とを混
合することによって調製される。この調製は、溶媒の存
在下で、合成反応系において行ってもよい。溶媒として
は、たとえばトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、
ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族(脂環
族)炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル系溶媒等
が好ましいものとして例示される。 <キラル触媒の構造>キラルジルコニウム触媒の構造に
ついて、NMR実験の知見を次に説明する。この触媒は
トルエン−d8中で1当量のジルコニウムテトラプロポ
キシド−プロパノールコンプレックス(Zr(OPr)
4−PrOH)、1当量の3,3′−I2BINOL及び
1当量のH2Oから製造された。1H及び13C−NMRは
室温で測定し、そして明確かつ単純なシグナルが観察さ
れた(図1)。この触媒は過剰のプロパノールの存在下
に室温で安定であり、そして1日後でも殆ど同じスペク
トルが得られることが明らかになった。13C−NMRス
ペクトルでは、遊離BINOLに相当するシグナル以外
に、ナフチル環に相当する新しい2種類のシグナルとプ
ロポキシド基に相当する2種類のシグナルが観察され
た。これら2種類のシャープなシグナルの存在によっ
て、この触媒は二量体構造を形成していることが強く示
唆された。また、1H−NMRスペクトルで、3.8、
4.0、4.8及び5.2ppmで酸素原子と直接結合
しているプロポキシドプロトンの特徴的なシグナルも観
察された。プロトンシグナルを統合すると、この触媒中
に2種類のプロポキシド部分が存在することが示唆され
た。
【0020】この触媒系における少量の水の役割もNM
R分析で明らかにされた。PrOHと水の不存在下で
は、Zr(OtBu)4と3,3′−I2BINOLを組
み合わせることによって明確な13C−NMRスペクトル
が得られた(図2、a)。この系にPrOHを加えたと
き、かなり複雑なシグナルが観察された(図2、b)。
他方、Zr(OtBu)4、3,3′−I2BINOL及
びPrOHからなる触媒系に水を加えたとき、再度明確
なシグナルが現れた(図2、c)。これらの結果から、
この触媒系における水の役割は触媒構造を規則正しくす
ることであると推定される。すなわち、水を加えること
によってオリゴマー構造から所望の二量体構造が形成さ
れる。この推定は次の試験によっても支持された:すな
わち、水の存在下でZr(OtBu)4、3,3′−I2
BINOL及びPrOHから触媒を製造し、そしてこの
触媒を使用して分子篩4Aの存在下でアルドール反応を
行ったところ、所望のアルドールアダクトが高い選択性
で得られた。この結果もまた、水がアルドール反応に影
響を与えるのではなく触媒の形成に影響を与えることを
示している。
【0021】この触媒の二量体構造を考慮して、発明者
は非対称アルドール反応における非直線的効果の可能性
を検討した。ベンズアルデヒドとS−エチルエタンチオ
エートから誘導されたシリルエノールエーテル(2a)
との反応をモデルとして選択し、そして3,3′−I2
BINOLからより低いエナンチオマー過剰で製造され
たキラルZr触媒を使用した。図3で示されているよう
に、かなりのレベルのプラスの非直線的効果が見いださ
れた。他方、それぞれ(R)−3,3′−I2BINO
L及び(S)−3,3′−I2BINOLからキラルZ
r触媒を製造した後、これらを組み合せ、そしてジルコ
ニウム触媒のeeと生成物のee間の相関関係を検討し
た。この場合には、これらの間に直線的な相関関係が見
られた(図4)。これらの結果もまた、この触媒の二量
体構造を支持しており、そしてこれらの実験に基づい
て、この触媒構造は図5に示されているとおりであると
推定された。 <非対称アルドール反応方法>すでに表1および表2に
も一例を示したが、この出願の発明における典型的な反
応操作について、表2に示したベンズアルデヒドとシリ
ルエノールエーテル2aとの反応として説明すると、
(R)−3,3′−ジヨード−1,1′−ビナフタレン
−2,2′−ジオール(0.048mmol)のトルエ
ン(1.0ml)中懸濁物に、トルエン(1.0ml)
中のZr(OtBu)4(0.040mmol)を室温で
加え、そしてこの溶液を30分間攪拌した。次に、トル
エン(0.5ml)中のプロパノール(0.32mmo
l)及びH2O(0.080mmol)を加え、そして
全体を室温で3時間攪拌した。0℃で冷却した後、トル
エン(0.75ml)中のベンズアルデヒド(0.40
mmol)及びトルエン(0.75ml)中のシリルエ
ノールエーテル2a(0.48mmol)を連続して加
えた。この混合物を18時間攪拌し、そして飽和NaH
CO3水を加えて反応を停止させた。ジクロロメタンを
加えた後、有機層を分離し、そして水性層をジクロロメ
タンで2回抽出した。有機層を合わせ、そして無水Na
2SO4で乾燥した。ろ過しそして減圧下で濃縮した後、
残渣はTHF−1NHCl(20:1)を使用して0℃
で1時間処理した。次に、この溶液を飽和NaHCO3
水で塩基性とし、そしてジクロロメタンで抽出した。有
機層を合わせ、そして無水Na2SO4で乾燥した。ろ過
しそして減圧下で濃縮した後、粗製生成物を分離用薄層
クロマトグラフィー(ベンゼン−酢酸エチル=20:
1)で精製して所望のアルドールアダクトを得た。光学
的純度はキラルカラムを使用してHPLC分析で測定し
た。幾つかの化合物では、ヒドロキシ基のアセチル化又
はベンゾイル化の後に光学的純度を測定した。
【0022】そこで、以上のとおりの典型例を基にして
この出願の発明の非対称アルドール反応方法について説
明する。
【0023】まず、反応基質としてのアルデヒドとして
各種のものを用いた。その反応の結果を表3に例示し
た。
【0024】メチルイソブチレートから誘導されたケテ
ンシリルアセタール(2b)も良好に作用した。アルデ
ヒドに関しては、芳香族及びα,β−不飽和アルデヒド
は優れた収量と選択性を与えたが、脂肪族アルデヒドは
高い収量を示したが選択性は幾らか低かった。水を含有
する新規な触媒系を使用することによって収量とエナン
チオ選択性が改善されたことが注目される。
【0025】
【表3】
【0026】次に、この発明のキラルジルコニウム触媒
を使用してジアステレオ選択的アルドール反応を行っ
た。表4に例示したように、まず、メチルプロピオネー
トから誘導されたケテンシリルアセタール(2c)をベ
ンズアルデヒドとの反応で使用し、第一級アルコールと
してエタノールを使用したとき、反応は順調に進行して
所望のアンチ−アルドールアダクトが高収量、高いジア
ステレオ及びエナンチオ選択性で得られた。フェニルプ
ロピオネートから誘導されたケテンシリルアセタール
(2d)を使用すると、選択性はさらに改善された。ま
た、アニスアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、
シンナムアルデヒド及び3−フェニルプロピオンアルデ
ヒド等のような他のアルデヒドを用いた。これら全ての
場合において反応は順調に進行し、所望のアンチ−アル
ドールアダクトが高収量、高いジアステレオ及びエナン
チオ選択性で得られた。
【0027】
【表4】
【0028】これらの反応で観察された高いアンチ−選
択性は注目すべきであるが、シリルエノレートの幾何学
効果を検討することによって選択性に関する更に重要な
情報が明らかになった。すなわち、メチルプロピオネー
トから誘導された(E)−及び(Z)−シリルエノレー
トをベンズアルデヒドとの反応で使用したとき、次式に
示したように、両方の場合において高いアンチ−選択性
が得られ、そしてこれらの選択性がシリルエノレートの
幾何学と無関係であることが確認された。
【0029】
【化3】
【0030】次に、アルデヒド構造の効果に関する検討
を行った。Zr(OtBu)4、(R)−3,3′−I2
BINOL、プロパノール及び水からなるキラルジルコ
ニウム触媒を使用して他の脂肪族アルデヒドの反応を検
討した。表5に例示したとおり、ヘキサンアルデヒドや
ブタンアルデヒドのような直鎖脂肪族アルデヒドを使用
した場合には、反応は高い選択性で進行した。分岐アル
デヒドも順調に反応して、所望のアンチ−アダクトが良
好な収量、高いジアステレオ及びエナンチオ選択性で得
られた。
【0031】
【表5】
【0032】<触媒活性の改善>更に有効な触媒系を創
製するために、触媒活性の改善について検討した。ま
ず、(R)−3,3′−I2BINOLの6,6′位に
おけるより強力な電子求引性基の効果を、電子求引性基
として臭素、ヨード及びペンタフルオロエチル基を導入
することにより検討した。これらのBINOL誘導体は
文献未知の化合物であったので、次式に従って(R)−
3,3′−ジヨード−6,6′−ビス(ペンタフルオロ
エチル)−1,1′−ビナフチル−2,2′−ジオール
((R)−3,3′−I2−6,6′−(C262BI
NOL)の合成を開始した。
【0033】
【化4】
【0034】すなわち、(R)−6,6′−Br2BI
NOLをそのメトキシメチル(MOM)エーテルに変換
し、そしてI2を使用して6,6′位の臭素基を先ずヨ
ード基に変換し、そしてその後DMF中のCuC26
使用してペンタフルオロエチル基に変換して、(R)−
2,2′−ビス(メトキシメチロキシ)−6,6′−ビ
ス(ペンタフルオロエチル)−1,1′−ビナフチルを
得た。3,3′位のリチオ化及びヨード化並びにMOM
基の脱保護後に、(R)−3,3′−I2−(C262
BINOLが無職の針状物として単離された。
【0035】他方(R)−6,6′−ジプロモ−3,
3′ジヨード−1,1′−ビナフチール−2、2′−ジ
オール((R)−6,6′−Br2−3,3′−I2BI
NOL)及び(R)−3,3′,6,6′−テトラコー
ド−1,1′−ビナフチル6−2,2′−ジオール
((R)−3,3′,6,6′−I4BINOLは次式
に従って合成した。まず、(R)−6,6′−Br2
INOLをそのメトキシメチル(MOM)エーテルに変
換し、6,6′位のプロモ基をリチオ化してトリメチル
シリル化し、そしてその後3,3位をリチオ化してヨー
ド化した。最後に、臭素又は一塩化ヨウ素(ICI)で
処理して、それぞれ(R)−3,3′−I2−6,6′
−Br2BINOL又は(R)−3,3′,6,6′−
4BINOLを得た。
【0036】
【化5】
【0037】次にベンズアルデヒドと、S−エチルプロ
パンチオエートから誘導されたシリルエノールエーテル
(2e)とのアルドール反応で、新規なBINOL誘導
体から製造されたジルコニウムコンプレックスの触媒活
性を評価した。3,3′−I 2BINOLから製造され
た触媒と比較して6,6′−ジ置換−3,3−I2BI
ONLから製造された新規な触媒はより高い活性を示
し、そして反応ははるかにより速く進行した。特に、
6,6′位のヨード及びペンタフルオロエチル基はより
良好な結果を示し、高いジアステレオ及びエナンチオ選
択性で所望のアンチ−アダクトを高収量で与えた(表
6)。この新しい触媒系は脂肪族アルデヒドの反応に成
功裏に適用された。ヘキサンアルデヒドと、フェニルプ
ロピオネート(2d)及びS−エチルプロパンチオエー
ト(2e)から誘導されたシリルエノールエーテルとの
反応では、(R)−3,3′,6,6′−I4BINO
Lを使用したとき最良の結果が得られた(表7)。
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】もちろん、この出願の発明は、以上の例に
よって限定されることはない。アルドール反応の基質化
合物であるアルデヒド、そしてシリルエノールエーテル
は各種のものであってよく、その際の反応温度、反応時
間、溶媒の使用、反応基質の使用割合等の条件が適宜に
定められてよいことは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明によって、新規なキラルジルコニウム触媒が提供さ
れ、また、これを使用して、穏和な条件下に所望のアダ
クトが高収量、高いジアステレオ及びエナンチオ選択性
で得られるアンチ−選択性の非対称アルドール反応方法
が提供される。第一級アルコールは触媒サイクルで重要
な役割を果たし、一方水は触媒形成に影響を与えること
が明らかにされるとともに、より強力な電子求引性基で
置換されたBINOLを使用することによって活性の高
い触媒が製造された。NMR研究によって、この触媒
は、トルエン中で堅固に二量体構造を形成することが明
らかにされた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ジルコニウム錯体触媒の1Hおよび13CのNM
Rスペクトルを例示した図である。
【図2】触媒における水の作用を例示したNMRスペク
トルを例示した図である。
【図3】低いeeを有する(R)−3,3′−I2BI
NOLから製造された触媒を使用するアルドール反応に
おける生成物のeeと(R)−3,3′−I2BINO
Lのee間の相関関係を例示した図である。
【図4】(R)−触媒と(S)−触媒を混合して製造さ
れた触媒を使用するアルドール反応おける生成物のee
間の相関関係を例示した図である。
【図5】推定される触媒の構造を示した図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジルコニウムテトラアルコキシドと、次
    式; 【化1】 (式中のXは、同一または別異に、水素原子、臭素原
    子、沃素原子またはパーフルオロアルキル基を示す。)
    で表わされる化合物、並びに第一級アルコールと水とを
    含有することを特徴とするキラルジルコニウム触媒。
  2. 【請求項2】 請求項1の触媒の存在下に、シリルエノ
    ールエーテルとアルデヒドとを反応させることを特徴と
    するアンチ選択性非対称アルドール反応方法。
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