JP3749861B2 - 磁性ゴム組成物 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は実用的な磁力特性および機械的特性を持ち、耐熱性および耐油性に優れ、かつ加工性も考慮された磁性ゴム組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
ゴム素材に磁力特性を持たせるためには、希土類、フェライト等の磁性粉末を添加して使用される。希土類は高磁力が期待できるものの、フェライトを使用したものに比べてコストが高くなってしまう。そのため、磁性ゴム組成物には一般的にフェライト粉末が多く用いられている。フェライトには、一般にバリウム系とストロンチウム系があり、後者のストロンチウム系の方が磁力は優れている。
【０００３】
【従来技術の欠点】
実用的な磁力特性を持たせるためには、ゴム素材にフェライトを高充填する必要がある。このためゴム組成物の粘度が高くなり、混練、押し出し、成形等、加工作業が困難となり、また、通常の配合に比べて加硫後のゴム物性、すなわち機械的特性が大きく低下する。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、数々の配合を検討し、又磁性試験を行った結果、実用的な磁力特性および機械的特性をあわせ持ち、耐熱性および耐油性に優れ、かつ加工性も考慮された磁性ゴム組成物が得られることを見出した。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
磁性ゴム組成物の磁力特性は、配合物中のフェライトの含有率およびその配向度に大きく影響され、フェライト含有率の高いものほど、その配合物の磁力特性は優れているが、フェライト含有率が高くなるにしたがって加工作業が困難になる。また、フェライト含有率が同じ場合には、その配向度が高いものほど磁力特性は優れている。
一方、フェライトを添加したゴムの粘度が高くなると、配合物中のフェライトの配向度は低下する傾向があり、加工作業性についても不利となる。
【０００６】
したがって、ゴムの粘度が低い方が磁力特性及び加工作業性の面で有利となる。
そこで、本発明においては実用的な磁気特性をもたせるためにフェライトを高充填し、かつゴムの粘度を低下させるため、脂肪酸金属塩を添加する。
本発明に使用するフェライトとしては平均粒径１．０〜１．４μm、圧縮密度３．０〜４．０g/cm³であるストロンチウムフェライトを配合物全体に対して７４〜９４重量％になるように添加する。配合物に対する充填率が７４重量%未満だと実用的な磁気特性は得られず、９４重量%を超えると加工作業性が著しく低下する。
【０００７】
本発明に使用する脂肪酸金属塩は一般的に(RCOO)ｎMで表される化合物で、Rはアルキル基またはアリール基であり、MはNa、K、Ca、Mg、Al、Zn、Pb、Feなどの金属であり、nはこれらの金属原子価と同じ値である。かかる脂肪酸金属塩は、ゴム素材100重量部当り約1〜5重量部の割合で用いられる。このとき、脂肪酸金属塩をそれぞれ単独もしくは2種類以上併用しても良い。または、脂肪酸金属塩とその他の加工助剤、滑剤を2種類以上併用しても良い。脂肪酸金属塩は0.1重量部未満だと粘度を低下させる効果が見られず、10重量部を超えると、機械的特性が著しく低下する。
【０００８】
また、シランカップリング剤を０．１〜５重量部、好ましくは０．５〜２重量部添加することで、フェライトとポリマーとの相互作用を向上させ、機械的特性、特に引張強さが向上する。シランカップリング剤が0.1重量部未満だと機械的特性向上の効果が見られず、５重量部を超えると成形作業性に悪影響を及ぼすこととなる。
【０００９】
本発明で使用するゴム素材としては、耐油性の良好なゴム素材としてアクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、フッ素ゴムのうちから１種あるいは２種以上を適当にブレンドして使用することができる。
【００１０】
本発明において得られる組成物には、通常ゴムに用いられる配合剤を任意に配合することができる。例えば、充填剤として、カーボンブラック、また、シリカ、クレーなどの白色充填剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、架橋剤、架橋促進剤などを任意に配合することもできる。
【００１１】
本発明において得られる磁性ゴム組成物は、一般的な混練用装置、すなわち、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサー、あるいはニ軸押出し機などで混練することができる。
【００１２】
【実施例】
以下にその実施例を示す。ゴム素材100重量部に対し、所定の充填率になるようにフェライト及びその他配合剤を加圧型ニーダーにて混練する。シート状に形成した後、190℃で2分間プレス加硫し2mm厚のシートを成形した。加工性についてはMPT（モンサント社製）にて９０℃、Ｓ／Ｒ＝１００sec^-1における押し出し時の粘度を測定した。磁気特性については振動式BHカーブトレーサーにて測定した。常態物性及び耐油性についてはJIS規格に準じて試験を行った。それらの結果を【表1】に示す。
【００１３】
【表1】

【００１４】
【発明の効果】
本発明により、ゴム組成物の粘度を約５０%低下させることができ、これにより、同程度のフェライト充填率において磁気特性が１０〜１５％向上し、混練、押し出し、成形性等の加工作業性も改良される。ゴムの粘度を同等にした場合には、さらにフェライトを高充填することができるため、磁気特性が２５〜３０％向上する。また、本発明により、実用上十分な機械的特性、例えば、引張強さが4MPa以上を有する磁性ゴム組成物が得られる。

Claims (1)

1. 耐油性を有するゴム素材１００重量部に対して
   １．ストロンチウム-フェライト（配合物全体の７４〜９４重量％を占めること）、
   ２．（ＲＣＯＯ）ｎMで表される化合物で、Rはアルキル基またはアリール基であり、MはＮａ、Ｋ、Ｃａ、Ｍｇ、Ａｌ、Ｚｎ、Ｐｂ、Ｆｅなどの金属であり、ｎはこれらの金属原子価と同じ値である脂肪酸の金属塩（１〜５重量部）、
   ３. Ｘ‐Ｓｉ（Ｙ）3 または（Ｙ）3Ｓｉ−Ｓ（ｎ）−Ｓｉ（Ｙ）3で表される化合物で、Ｘはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などであり、Ｙはメトキシ基、エトキシ基、または塩素基のいずれかであり、またＳ（ｎ）はスルフィド基でｎ＝１〜４であるシランカップリング剤（０．１〜５重量部）、
   上記１．〜３．を添加してなるゴム組成物。