JP3748592B2 - 耐久防汚性繊維構造物およびその製造方法 - Google Patents
耐久防汚性繊維構造物およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は汚れ、特に油汚れの、付きにくさと落ち易さを兼備し、かつ耐久性に優れ、特にワーキングウェア、ユニフォーム等に適した防汚性繊維構造物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に防汚性の繊維構造物は、繊維を親水性樹脂で被覆して汚れを落ち易く加工したり、フッ素系の撥水撥油性樹脂で被覆して液体汚れをはじき易く加工する技術で得られている。
しかしながら、親水性樹脂の被覆では液体汚れは周囲に大きく拡がり易く、また撥水撥油性樹脂の被覆では一旦汚れが付着した場合は汚れが除去されにくく、また再汚染され易いという問題点がある。
【0003】
油汚れの、付きにくさと落ち易さの両方の性能を満足するために、親水性基を含有した撥水撥油性樹脂(特開平3−70757号公報)も開発されている。その他、第一工程で親水性樹脂を付与し、第二工程で撥水撥油性樹脂を付与する方法(特開平3−39880号公報)、さらには第一工程で親水性樹脂を付与したのち低温プラズマ処理を施し第一工程の親水性樹脂と第二工程の撥水撥油性樹脂をラジカル重合させ耐久性を向上させる方法(特公平7−30513号公報)が提案されている。
【0004】
しかしながら、親水性基を含有した撥水撥油性樹脂のみの付与では、架橋剤や触媒との併用でも充分な耐久性が得られず、繰り返し洗濯はワーキングウェア等で要求される性能は満足されない。さらに、第二工程で親水性樹脂と撥水撥油性樹脂とを付与した場合も、最上層が撥水撥油性樹脂で覆われていると、なんらかの力が加わるなどして、繊維中に汚れが浸透した場合には、洗濯液の浸入が撥水撥油性樹脂で妨げられるために充分除去されないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、適度な撥水性と撥油性によって汚れをはじき、かつ汚れが一旦付着してしまったら日常洗濯によって容易に落すことができる、汚れ離脱性の性能が優れた耐久防汚性繊維構造物を得ることができる。しかも汚れ離脱性に優れ、なおかつ、繰り返し洗濯後も汚れ離脱性が低下しない、耐久性に優れている繊維構造物を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)ポリエステル混率70〜100%からなる繊維表面が親水性樹脂で被覆され、上記親水性樹脂の上に親水基を有する撥水撥油性樹脂の層が最外層として形成されていることを特徴とする耐久防汚性繊維構造物。
(2)ポリエステル混率70〜100%からなる繊維構造物に、第一工程として親水性樹脂を付与し、次いで第二工程で親水基を有する撥水撥油性樹脂を付与処理することを特徴とする耐久防汚性繊維構造物の製造方法。
【0007】
本発明における繊維構造物とは、糸、織物、編物、不織布等をいい、いかなる形態でも差し支えない。
また、本発明の耐久防汚性繊維構造物を構成する繊維は、通常疎水性であるとされているポリエステルを70〜100%混用した繊維構造物である。また、繊維構造物には染料、顔料、酸化防止剤などを含有していても差し支えない。
【0008】
本発明でいう親水性樹脂とは、ポリエステル系、ポリアミド系、シリコン系およびアクリル系の樹脂など通常親水性を付与させるために使用される公知の樹脂をいい、下記の式(化1)のような、ポリエステル系樹脂が接着性に良好であり好ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
例えば、 ポリアミド系には、リケンレジン NSR−506(三木理研工業(株)製 商品名)、Lorotex A−25(BASFジャパン(株)製、商品名)、シリコン系には、 サンシリコン M−84(三洋化成工業(株)製、商品名)、ポロンSR−conc(信越化学工業(株)製、商品名)、アクリル系には、 ファインテックス 159(大日本インキ化学工業(株)製、商品名)、Perapret DK(BASFジャパン(株)製、商品名)等が挙げられ、ポリエステル系には、RX10(京浜化成工業(株)製、商品名)、SR1000(高松油脂工業(株)製、商品名)、SR6200(高松油脂(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0011】
これらの親水性樹脂の処理剤は、繊維構造物の重量に対して樹脂成分として0.1〜1%付着させることが好ましい。0.1%以下では親水性が不足し、1%以上では第二工程の樹脂の性能を妨げたりする問題点がある。さらには0.2〜0.5%がのぞましい。親水性能を向上させる助剤を併用してもよい。
本発明に用いる親水性樹脂は繊維表面を連続して覆うことがのぞましく、吸尽法、浸漬法、パッド法、スプレー法等公知の方法で布帛に付着させた後、乾燥、また必要があれば、キュアリングを行なう。より好ましくは、浴中吸尽法を適用すれば、物理的作用により樹脂が繊維構造物に浸透し易く、繊維表面を均一に被覆することができる。親水基が繊維を充分に被覆すれば、疎水性繊維に付着した油汚れも洗濯により除去され易い。
【0012】
本発明に用いる親水基を有する撥水撥油性樹脂とは、樹脂の骨格の一部にOH基、COOH基、NH2基等の親水基を有するフッ素系の撥水撥油性樹脂をいう。含有する親水基としては、第一工程に用いられる親水性繊維樹脂との親和性等からOH基が好ましい。
具体的に本発明における親水基を有する撥水撥油性樹脂を例示すれば、下式の様なフッ素系の繊維処理剤が挙げられ、市販品としてはテックスガードTG990(ダイキン工業(株)製、商品名)、テックスガードTG−980(ダイキン工業(株)製、商品名)、AG−780(明成化学工業(株)製、商品名)、FC−248(住友スリーエム(株)製、商品名)等の繊維処理剤があるが、本発明はこれに限定されない。
【0013】
【化2】
【0014】
(式中YはOH基等の親水基、mは1〜10、nは7〜21)
本発明における親水基を有する撥水撥油性樹脂とは、樹脂の骨格の一部にOH基等の親水基を有するものが好ましく、汚れは樹脂先端の撥水撥油基によってはじかれる。しかし一旦繊維中に汚れが取り込まれた場合も骨格中の親水基が洗濯液を取り込みやすく、第一工程の親水性樹脂の性能が発揮され易いものである。最外層が撥水撥油樹脂のみで覆われる場合は洗濯液と親水樹脂層が接触しにくいため、繊維中に浸透した汚れには洗液は充分接触しない。
【0015】
この親水基を有する撥水撥油性樹脂は繊維重量に対し樹脂濃度で0.1〜2%使用することが好ましく、風合、性能を考慮し、通常は0.5〜1%がさらに好ましい。
前記の親水基を有する撥水撥油性樹脂とともに架橋剤、触媒等の助剤を併用すれば一層洗濯耐久性が向上する。助剤はメラミン系、ブロックイソシアネイト系、イミン系等が好ましく、中でもメラミン系が優れた効果を発揮する。ただし、樹脂成分として繊維重量の0.05〜0.25%が望ましく、0.25%以上であれば風合が硬化したり汚れ離脱性能が低下したりする。
【0016】
親水基を有する撥水撥油性樹脂及び助剤は公知のいかなる方法で繊維構造物に付与させてもよい。
また親水基を有する撥水撥油性樹脂及び助剤のみの付与では、洗濯離脱性が不十分でありまた初期の性能は比較的良好であるが耐久性に劣る問題点がある。本発明では第一工程での親水性樹脂の付与により、洗濯離脱性が向上し、また第二工程の親水基を有する撥水撥油性樹脂が充分浸透し、均一に付着するため耐久性も満足するものである。
【0017】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を説明する。
尚、物性は以下の方法で評価した。
1)汚れ離脱性
繊維構造物の表面に汚れとしてB重油を滴下し、JIS法の洗濯処理を行い、汚れが離脱したかどうか、防汚性能を確認した。
【0018】
即ち、B重油を0.1cc繊維構造物に滴下し、70g/cm2 の荷重をのせて、該重油を繊維構造物内に押し込む。1分後ろ紙を30分間繊維構造物と荷重の間にはさみ70g/cm2の荷重をのせ、過剰な汚れをろ紙に吸収させる。24時間放置後洗濯処理を1回を行ない、風乾して汚染用グレースケールにて級判定を行なう。また、30回洗濯処理した後、同様に汚れを滴下し、洗濯処理を行い耐久性の評価を行なった。5級が最も優れ、1級が最も劣ることを表わす。2)洗濯方法
JIS−L−0217 103法
3)風合
10名のパネラーにより一対比較で官能評価を行い、硬さが気にならない場合を○、硬さが気になる場合を×とし、○か×かの多い方を総合の評価とした。
【0019】
【実施例1】
ポリエステル糸150d、48fと綿糸45/1を用い、ポリエステル混率70%、綿混率30%の綾織物(目付250g)の繊維構造物を得た。この繊維構造物を精錬後、分散染料と反応染料を用い液流染色機にて染色、乾燥した。染色時に第一工程の親水性樹脂の付与を同浴で実施した。親水性樹脂は、吸水加工剤クラミカルRX10(京浜化成工業(株)製、商品名)を用い、浴中吸尽加工後熱処理を行なった。
【0020】
第二工程は、親水基を有する撥水撥油性樹脂としてテックスガードTG990(ダイキン工業(株)製、商品名)助剤としてスミテックスレジンM−3(以下M3)(住友化学工業(株)製、商品名)、スミッテクスアクセロレーター(住友化学工業(株)製、商品名)をM3配合量の10%を配合して用い、ゴムロールにて絞り率70%にて絞り、100℃×2分、160℃×1分の熱処理を施した。親水性樹脂と撥水撥油性樹脂および助剤等(以下加工剤と称す)の配合と得られた繊維構造物の汚れ離脱性の性能を表1に示す。
【0021】
【実施例2】
加工剤として下記の配合を用いた以外は精錬、染色、第一工程、第二工程とも実施例1と同様な方法で加工した。汚れ離散性の評価結果を表2に示す。
第一工程加工剤 クラミカルRX10 1.5%
第二工程加工剤 テックスガードTG990 5.0%
スミテックスレジンM−3 0.3%
スミッテクスアクセロレーター 0.03%
【0022】
【比較例1】
第二工程の加工剤のみ、フッ素系の撥水撥油性樹脂にOH基のない下記の配合を用いた以外は、精錬、染色、第一工程、第二工程とも実施例2と同様な方法で加工した。評価結果を表2に示す。
第二工程加工剤 アサヒガードLS317(明成化学工業(株)製)5.0%
スミテックスレジンM−3 0.3%
スミッテクスアクセロレーター 0.03%
【0023】
【比較例2】
第二工程を除いた以外は、精錬、染色、第一工程を実施例2と同様の加工を行なった。評価結果を表2に示す。
【0024】
【比較例3】
実施例2の第一工程を除いた以外は、精錬、染色、第二工程を実施例2と同様に実施した。評価結果を表2に示す。
【0025】
【実施例3】
第一工程はPAD・DRY法で行い、熱処理を施したのち第二工程へ進んだ以外は、精錬、染色、第一工程、第二工程とも実施例2と同様に実施した。評価結果を表2に示す。
【0026】
【実施例4】
ポリエステル150d、48fからなるポリエステル100%の綾織物(目付150g)を用いた以外は、実施例2と同様に精錬、染色、加工し、評価した。汚れ離脱性の評価結果を表3に示す。
【0027】
【比較例4】
第二工程の加工剤を比較例1で用いたもの用いた以外は、精錬、染色、第一工程、第二工程とも実施例4と同様な方法で加工した。結果を表3に示す。
【0028】
【比較例5】
第二工程を除いた以外は、実施例4と同様の加工を行なった。結果を表3に示す。
【0029】
【比較例6】
第一工程を除いた以外は、実施例4と同様に精錬、染色、第二工程を実施した。結果を表3に示す。
表2、表3から実施例2、3、4の防汚性が優れていることが明らかである。また、グレースケール判定では比較例2、比較例5が比較的よい結果になっている。しかしながら、この場合は吸水性のみを有するため、滴下した重油は周囲に大きく広がり品位が劣るものとなった。グレースケール判定による汚れ離脱性はよい結果となったが、面積を考慮し評価すると性能は満足されるものではない。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【発明の効果】
本発明の耐久性防汚性繊維構造物の製造方法は、油汚れが付着しにくく、かつなんらかの力により汚れが繊維中に付着してしまった場合も、日常の洗濯により容易に落とすことができる汚れ離脱性が優れた耐久防汚性繊維構造物を得ることができる。
【0034】
しかも、得られた耐久防汚性繊維構造物は、従来のものに比較して、汚れ離脱性が、繰り返し洗濯に対し優れた耐久性を示すものであり、ユニフォーム、ワーキングウェア等に適した素材である。
Claims (2)
- ポリエステル混率70〜100%からなる繊維表面が親水性樹脂で被覆され、上記親水性樹脂の上に親水基を有する撥水撥油性樹脂の層が最外層として形成されていることを特徴とする耐久防汚性繊維構造物。
- ポリエステル混率70〜100%からなる繊維構造物に、第一工程として親水性樹脂を付与し、次いで第二工程として親水基を有する撥水撥油性樹脂を付与処理することを特徴とする耐久防汚性繊維構造物の製造方法。
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