JP3747783B2 - 鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体 - Google Patents

鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は鉄道車両の軸ハリ端部、詳しくは車軸を支持する軸箱部から前後方向に延びる軸ハリ端部の台車フレームへの連結用として用いられる防振ゴムブッシュ組付体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道車両において車軸を支える軸箱部から軸ハリを前後方向に延び出させ、その端部を防振ゴムブッシュを介して台車フレームに連結することが行われている。
図12はその一例を示している。
同図において200は台車フレーム,202は車輪,204は車軸であり、この車軸204を支持する軸箱部205から軸ハリ206が前後方向に延び出している。
【0003】
軸ハリ206の端部には筒状のハウジング部208が設けられており、このハウジング部208に防振ゴムブッシュ210が嵌合固定されている。
防振ゴムブッシュ210は、中心軸体212とその外側に配されたゴム弾性体214と、ゴム弾性体214の外周面に固着されたアウタ金具216とから成るもので、そのアウタ金具216において軸ハリ206のハウジング部208内に嵌合固定され、また中心軸体212において台車フレーム200に固定されている。
【0004】
この形態の連結装置においては、防振ゴムブッシュ210の弾性作用に基づいて、中心軸体212回りの軸ハリ206の回動運動が許容されるとともに、軸ハリ206と台車フレーム200との連結部位で振動及び衝撃が良好に吸収される。
【0005】
ところでこの防振ゴムブッシュに良好な耐久性を付与するために、通常これに予圧縮を与えることが行われている。
この場合、防振ゴムブッシュが図12(B)(イ)に示すような形状、即ちアウタ金具218が円筒形状且つ軸方向にストレートな形状をなしていれば、かかる防振ゴムブッシュに対して、一定の絞り代をもって絞り加工を施すことで、容易に所要の予圧縮を与えることができる。
【0006】
しかしながら図12(B)(ロ)に示しているように、防振ゴムブッシュが軸方向に一様な形状をなしていない場合、即ちインナ金具222,ゴム弾性体224,アウタ金具220がそれぞれ軸方向両端部に拡開状の鍔状部226を有している場合、上記絞り加工を施すことは困難であって、かかる絞り加工により防振ゴムブッシュに予圧縮を与えることは実際上難しい。
【0007】
この場合において図13に示しているようにアウタ金具216を軸直角方向に複数分割(図示の例では2分割)する一方、軸ハリ206端部のハウジング部208を半割体228Aと228Bとに2分割して、それらを締結ボルト230で軸直角方向に締結するようになし、その際に防振ゴムブッシュ210を軸直角方向に締め付けることで、かかる防振ゴムブッシュ210に対して予圧縮を与えることが可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのようにした場合、軸ハリ206端部のハウジング部208を半割体228Aと228Bとの分割構造としておかなければならないとともに、防振ゴムブッシュ210の軸ハリ206端部への組付けに際して、防振ゴムブッシュ210を正しい向きにセットした上で、締結ボルト230を締め付けることにより半割体228Aと228Bとを締結しなければならず、組付現場での工数,手間が面倒且つ多くなって組付作業性が悪いといった問題が生ずる。
【0009】
また例えば図13に示しているようにアウタ金具216が図中左右方向、即ち半割体228Aと228Bとの締結方向に分割している場合は良いが、これと直角方向にアウタ金具216が分割されているような場合、防振ゴムブッシュ210に対しての予圧縮の方向と、半割体228Aと228Bの締結方向とが異なることとなって、組付作業性が更に悪化する問題が生ずる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、(A)(イ)軸方向両端部に拡開状の鍔状部を有するインナ金具と、(ロ)該インナ金具の外周面に固着された、軸方向両端部に該インナ金具の鍔状部に対応した鍔状部を有するゴム弾性体と、(ハ)軸方向両端部に該鍔状部に対応した形状の拡開内面を有する、軸直角方向に複数分割されたアウタ金具とを備えた防振ゴムブッシュと、(B)該防振ゴムブッシュに対し軸方向に固定的に外装され、該防振ゴムブッシュを鉄道車両の軸ハリにおける筒状のハウジング部内に軸方向に圧入して組み付けるための圧入組付部材とを有し且つ該圧入組付部材は、軸直角方向に複数分割され、該軸直角方向の締付力により前記ゴム弾性体に対して該軸直角方向に予圧縮を与える剛性のアウタブロックを含んでおり且つ該圧入組付部材の外周面に、前記ハウジング部の内周面に対して軸方向に圧入される、該軸方向に実質的に直線状をなす圧入嵌合面が形成してあり、前記アウタブロックにて前記ゴム弾性体を予圧縮した状態で前記軸ハリに組付固定するようになしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記アウタ金具は、前記アウタブロックと別体且つ該アウタブロックに対して相対的に薄肉の板状部材にて形成してあり、軸方向両端部に前記ゴム弾性体の鍔状部に対応した鍔状部を有していて、内面が該ゴム弾性体に対し加硫接着してあることを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記圧入組付部材が、環状をなして前記アウタブロックに外嵌され、該アウタブロックを前記締付状態に拘束するアウタリングを更に含んでいることを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、請求項3において、前記アウタリングの外周面に前記圧入嵌合面が形成してあることを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記防振ゴムブッシュ組付体には、ブレーキ作用時における前記インナ金具の相対的な変位方向である前後方向位置において、前記ゴム弾性体の過大な変形を防止するストッパが一体に加硫接着してあることを特徴とする。
【0015】
請求項6のものは、請求項5において、前記ストッパが前記防振ゴムブッシュのインナ金具に加硫接着してあることを特徴とする。
【0016】
請求項7のものは、請求項5,6の何れかにおいて、前記ストッパが、ストッパ金具とゴム弾性体とを有しており、ブレーキ作用時に該ストッパ金具が前記アウタブロックに当ってストッパ作用をなすものとしてあることを特徴とする。
【0017】
【作用及び発明の効果】
上記のように請求項1の防振ゴムブッシュ組付体は、それぞれ軸方向両端部に鍔状部を有するインナ金具とアウタ金具及びそれらの間に挟まれたゴム弾性体とを含む防振ゴムブッシュと、その防振ゴムブッシュに外装され、防振ゴムブッシュを軸ハリにおける筒状のハウジング部内に軸方向に圧入して組み付けるための圧入組付部材とを含んで構成し、そしてその圧入組付部材における軸直角方向に複数分割された剛性のアウタブロックによる締付力でゴム弾性体を軸直角方向に予圧縮し、その状態で圧入組付部材の外周面に形成した圧入嵌合面において防振ゴムブッシュ組付体を軸ハリの筒状のハウジング部内に圧入するようになしたもので、この防振ゴムブッシュ組付体の場合、単にこれを筒状のハウジング部内に圧入するだけで軸ハリ端部、即ちハウジング部に組付固定することができる。
【0018】
即ち本発明によれば、従来のように軸ハリ端部の筒状のハウジング部を半割体に分割しておいて、組付現場でこれを締結ボルトで締結し、その際に防振ゴムブッシュに対して予圧縮を加えるといった複雑且つ面倒な作業をしなくても良くなり、組付現場における防振ゴムブッシュの組付作業性が飛躍的に向上する。
【0019】
かかる本発明は、従来、組付現場においてハウジング部を成す半割体228A,228Bにより行っていた防振ゴムブッシュの締付け、即ち軸直角方向の予圧縮を、これとは別体に構成した圧入組付部材のアウタブロックにて行うようになしたものと考えることができる。
そしてこのようにすることにより、単に圧入するだけで防振ゴムブッシュを軸ハリ端部のハウジング部内に組付固定し且つ防振ゴムブッシュ、詳しくはゴム弾性体に対し予圧縮を与えるといったことを容易に実現することができる。
【0020】
またそのとき同時に半割体228A,228Bの締付けによってゴム弾性体に予圧縮を与えるといったものではないため、防振ゴムブッシュの組付けの向き(回転方向の向き)の如何に拘わらず、支障なく且つ簡単に予圧縮を与えた状態でハウジング部内に組付作業することができる。
【0021】
本発明においては、防振ゴムブッシュにおけるアウタ金具を、金属製としたアウタブロックと一体に構成しておくことも可能であるが、このアウタ金具は、アウタブロックと別体且つアウタブロックに対して相対的に薄肉の板状部材にて形成し、その軸方向両端部に鍔状部を設けて、その内面でゴム弾性体に加硫接着しておくことができる(請求項2)。
更にまた、上記圧入組付部材における外周面の圧入嵌合面を上記アウタブロックの外周面に形成しておくことができる。
【0022】
或いは圧入組付部材の構成要素として、アウタブロックに外嵌されてこれを締付状態に拘束するアウタリングを設けておくことができる(請求項3)。
このようにすれば、防振ゴムブッシュとアウタブロックとを、そのアウタブロックがゴム弾性体を軸直角方向に締め付け、予圧縮を与えた状態に、それら防振ゴムブッシュ,アウタブロックを拘束状態に予め組み付けておくことができ、防振ゴムブッシュの軸ハリ端部(ハウジング部)への組付作業性を更に改善することができる。
【0023】
このようにアウタリングを用いる場合において、上記圧入嵌合面を、そのアウタリングの外周面に形成しておくことができる(請求項4)。
尚アウタリングの外周面にこの圧入嵌合面を形成した場合、即ちアウタリングを直接軸ハリの筒状のハウジング部内に圧入するようになした場合、アウタリングは組付後においてもそのまま軸ハリへの組付状態で残されることとなる。
【0024】
但しアウタブロックの外周面に圧入嵌合面を形成し、アウタブロックを直接筒状のハウジング部内に圧入するようにした場合には、組付後においてアウタリングを取り外しておくことができる。
この場合、アウタリングは防振ゴムブッシュを軸ハリに組み付けるまでの間、単にアウタブロックを締付状態に拘束するだけの役割をなすこととなる。
【0025】
次に請求項5のものは、防振ゴムブッシュ組付体に、ブレーキ作用時におけるインナ金具の相対的な変位方向である前後方向位置において、ゴム弾性体の過大な変形を防止するストッパを一体に加硫接着したものである。
【0026】
近年、鉄道車両においては高速化が進んでおり、防振ゴムブッシュが低ばね定数化している。
更に車輪を前後の一方向からだけブレーキ掛けする片ブレーキ化が行われる傾向にある。
この場合、ブレーキ作用時に防振ゴムブッシュに対して前後方向に大きな荷重が作用する。
従って防振ゴムブッシュのばね定数を柔らかく(小さく)すると、ゴム弾性体がブレーキ作用時に前後に大きく変形してしまい、防振ゴムブッシュの耐久寿命を低下させる原因となるのみならず、ブレーキの効きも悪くしてしまう。
【0027】
ここにおいて本発明は、ゴム弾性体の過大な変形を防止するストッパを防振ゴムブッシュ組付体に一体に加硫接着したもので、これにより防振ゴムブッシュの耐久寿命を延ばすことができるとともにブレーキの効き自体も良好となすことができる。
【0028】
尚、ストッパを後付けで防振ゴムブッシュ組付体に対しボルト等により組み付けることも考えられるが、この場合、ストッパの組付けを含む防振ゴムブッシュ組付体の製造工程数が多くなり、生産性が悪くなるとともに、ボルトによる締付けが不十分である場合に使用中にストッパが脱落する恐れが生ずる。
【0029】
しかるに本発明ではストッパを防振ゴムブッシュ組付体に加硫接着により一体に設けているため、そのストッパを含む防振ゴムブッシュ組付体の製造工程数が少なく、生産性が良好である利点が得られる外、ボルトの緩み等によってストッパが使用中に脱落するといった恐れもなくすことができる。
【0030】
この場合において、上記ストッパは防振ゴムブッシュ自体に一体に加硫接着しておくことができ、特にそのインナ金具にこれを一体に加硫接着しておくことができる(請求項6)。
また上記ストッパはストッパ金具とゴム弾性体とで構成し、そのストッパ金具がアウタブロックに当ってストッパ作用をなすように構成しておくことができる(請求項7)。
【0031】
これら請求項1〜7において、ゴム弾性体は軸方向の一端から他端にかけて連続した形態をなすものとしておくことができる。
またアウタブロック或いはアウタ金具も同様に、軸方向の一端から他端にかけて連続した形態のものとしておくことができる。
【0032】
【実施例】
次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は台車フレームで、12は車輪、14は車軸であり、この車軸14を支持する軸箱部16から軸ハリ18が延び出している。
20は軸ばねであり、22はブレーキ装置である。
【0033】
図示のように、この例ではブレーキ装置22が車輪12の前後方向の一方のみ、即ち片側にのみ設けられており、車輪12に対して前後の一方だけからブレーキシュー23が押し出されて車輪12を制動するようになっている。即ちこの例では片ブレーキとされている。
【0034】
軸ハリ18の端部には筒状のハウジング部24が設けられており、このハウジング部24の内部に、防振ゴムブッシュ36(図3参照)が組付体26の状態で嵌合固定されている。
そしてその防振ゴムブッシュ36における中心軸体28に対して、台車フレーム10のアーム30がボルト32及びナット34により固定されている。
尚、この例では中心軸体28が防振ゴムブッシュ36におけるインナ金具を成している。
また図2に示しているように、ハウジング部24は周方向に連続した形態の円筒形状をなしている。
【0035】
本例では、軸ハリ18と台車フレーム10との連結装置が、軸ハリ18の端部に設けた筒状のハウジング部24と、防振ゴムブッシュ組付体26と、台車フレーム10のアーム30と、ボルト32及びナット34とで構成されている。
【0036】
図3,図4,図5及び図6〜図8に、上記防振ゴムブッシュ組付体26の具体的構成が示してある。
先ず図3において36は防振ゴムブッシュで、この防振ゴムブッシュ36は、そのインナ金具を成す上記中心軸体28と、その外周面に加硫接着により一体に固着されたゴム弾性体38と、更にそのゴム弾性体38の外周面に加硫接着にて一体に固着されたアウタ金具40とを有している。
【0037】
インナ金具としての中心軸体28は中実構造のもので、軸方向両端部に拡開状の一対の鍔状部42を有している。
この中心軸体28は、それら鍔状部42と42との間の中間軸部44が断面円形をなしており、更に鍔状部42から軸方向外方に突き出した軸端部46が、図3(A)及び図6〜図8に示しているように断面略台形状をなしている。
【0038】
これら軸端部46には、図中上下方向に貫通の固定孔48が設けられており、それら固定孔48において、上記ボルト32とナット34とにより台車フレーム10側のアーム30に固定されるようになっている。
【0039】
上記ゴム弾性体38は、図3(B)に示しているように軸方向両端部に、中心軸体28における鍔状部42に対応した拡開状の鍔状部50を有している。
更にそれら鍔状部50と50との間の部分が、図4(B)に示しているように上部52と下部54及び中間部56,58に区画されている。
【0040】
これら上部52,下部54と中間部56との間には浅いV字状の切欠部60が形成されている。
そしてそれら上部52と下部54との外周面に且つそれらの全周に亘って、上記のアウタ金具40が加硫接着により一体に固着されている。
このアウタ金具40は、図4(B)に示しているように軸直角方向に2分割された形態をなしていて、それぞれが上部52と下部54とに固着されている。
【0041】
これら一対のアウタ金具40もまた、図3(B)に示しているように軸方向両端部に拡開状の鍔状部62を有していてその鍔状部62の内側に拡開内面を形成しており、これら鍔状部62と中心軸体28における鍔状部42とで、ゴム弾性体38における鍔状部50をサンドイッチ状に挟み込んでいる。
尚ゴム弾性体38における上部52と下部54とは外周面が円弧形状をなしており、これに対応してアウタ金具40もまた円弧形状をなしている。
【0042】
尚、図4(B)に示しているように一方の中間部58の外周面にはストッパ金具66が加硫接着により一体に固着されており、これら中間部58とストッパ金具66とによってストッパ64が構成されている。
【0043】
このストッパ64は、ブレーキ作用時に後述のアウタブロック70にストッパ金具66が当ることによってストッパ作用をなし、ブレーキ作用時におけるゴム弾性体38の過大な変形を防止するものである。
このストッパ64は、図4(B)に示しているように中心軸体28の前後方向の片側において中心軸体28に一体に加硫接着されている。
【0044】
本例において、防振ゴムブッシュ組付体26は上記構成の防振ゴムブッシュ36と、これを前述の軸ハリ18端部の筒状のハウジング部24の内周面76(図2参照)に対して軸方向に圧入し、組み付けるための圧入組付部材68とを含んで構成してある。
この圧入組付部材68は、図3(B)に示しているようにその主体を成す剛性の(金属製の)アウタブロック70と、一対の金属製のアウタリング72とを有している。
【0045】
アウタブロック70は、図4,図7,図8に示しているように円筒体を軸直角方向に2分割した半筒形状をなしており、それぞれが上下一対のアウタ金具40の外周面に外嵌状態に嵌装されている。
これら一対のアウタブロック70は防振ゴムブッシュ36、詳しくはゴム弾性体38を所定の締め代で軸直角方向に締め付け、軸直角方向に予圧縮するためのもので、図4(B)に示しているようにその予圧縮を与えるに必要な隙間Sを隔てて、互いに上下に対向する状態で配置されている。
【0046】
これら一対のアウタブロック70の軸方向両端部には、図5,図7,図8,図9に示しているように浅い嵌込溝74が形成されており、そこに一対のアウタリング72のそれぞれが軸方向の互いに逆側から嵌め込まれている。
【0047】
これら一対のアウタリング72は、ゴム弾性体38に対し軸直角方向に予圧縮を与える状態に各アウタブロック70を拘束するもので、その外周面には軸方向全長に亘って軸方向にストレート形状をなす圧入嵌合面78が形成してある。
即ちこれらアウタリング72は、その外周面がアウタブロック70の外周面に対し軸直角方向外方に突き出しており、そしてその突き出した部分全体の外周面が圧入嵌合面78とされている。
【0048】
次に本例の防振ゴムブッシュ36を軸ハリ18端部の筒状のハウジング部24に組み付ける際の手順を以下に説明する。
先ず中心軸体28とゴム弾性体38とアウタ金具40とを一体に加硫接着して成る防振ゴムブッシュ36を製造し、そして図7及び図8に示しているように、その防振ゴムブッシュ36におけるアウタ金具40の外面にアウタブロック70を嵌め合せるようにして装着する。
【0049】
そして上下一対のアウタブロック70に対して軸直角方向に外力を加えてゴム弾性体38を軸直角方向に締め付け、同方向に所定の予圧縮を与える。
そしてその状態で、図5及び図9に示しているようにアウタブロック70に対して一対のアウタリング72を軸方向の前方と後方とから嵌込溝74に嵌め込み、それらアウタリング72によってアウタブロック70を締付状態に拘束する。即ちゴム弾性体38を予圧縮した状態に拘束する。
【0050】
図6はこのようにして組み付けた防振ゴムブッシュ組付体26の全体的な外観を示している。
このようにして構成した防振ゴムブッシュ組付体26を軸ハリ18端部のハウジング部24に組み付けるには、ただ単にこれを軸方向に圧入するだけで良い。その後防振ゴムブッシュ36における中心軸体28に対し、台車フレーム10のアーム30をボルト32とナット34とにより固定すれば、軸ハリ18が防振ゴムブッシュ36を介して台車フレーム10に連結された状態となる。
【0051】
以上のような本例の防振ゴムブッシュ組付体26の場合、単にこれを筒状のハウジング部24内に圧入するだけで軸ハリ18端部、即ちハウジング部24に組付固定することができる。
従って本例によれば、従来のように軸ハリ18端部の筒状のハウジング部24を半割体に分割しておいて、組付現場でこれを締結ボルトで締結し、その際に防振ゴムブッシュ36に対して予圧縮を与えるといった複雑且つ面倒な作業をしなくても良く、組付現場において防振ゴムブッシュ36を簡単に組み付けることができる。
【0052】
尚、アウタリング72を用いないでアウタブロック70を適宜の手段で(例えばボルト等で)防振ゴムブッシュ36のアウタ金具40に固定しておき、その状態でこれらを防振ゴムブッシュ組付体として、アウタブロック70の外周面に形成した圧入嵌合面において軸ハリ18のハウジング部24内に圧入するといったことも可能である。
【0053】
これに対し、本例ではアウタリング72を用いて予めアウタブロック70を、ゴム弾性体38に対し所定の予圧縮を与える状態に拘束するようにしているため、ゴム弾性体38に対して適正量の予圧縮を与えることができるとともに組付けに際しての組付作業性も良好である。
【0054】
また本例では防振ゴムブッシュ組付体26に、具体的には防振ゴムブッシュ36にストッパ64が一体に加硫接着してあるため、ブレーキ作用時においてゴム弾性体38が過大に変形するのを防止でき、防振ゴムブッシュ36の耐久寿命を効果的に延長できる利点が得られる。
【0055】
更にまたストッパ64が加硫接着により防振ゴムブッシュ36に一体的に構成してあるため、これをボルト等で後付けで組み付ける場合と異なって、ストッパ64を含む防振ゴムブッシュ36の製造が容易で生産性が高く、加えてボルト等の緩みによって使用中にストッパ64が脱落するといった心配がない利点を有している。
【0056】
尚、この例ではストッパ64を中心軸体28の前後方向の一方にのみ設けているが、前方と後方との両方に設けるといったことも可能である。
更にこのストッパ64をインナ金具である中心軸体28の側ではなく、アウタブロック70の側に加硫接着により一体的に設けておくといったことも可能である。
【0057】
本例ではまた、アウタブロック70よりゴム弾性体38を軸直角方向に締め付けることによってゴム弾性体38に予圧縮を与えるようにしているため、ゴム弾性体38を軸方向の一端から他端にかけて連続した形態で構成することができ、これによりゴム弾性体38のゴムボリュームを大きく取ることができ、また締め代を大きく取ることができる。
従ってゴム弾性体38自身のばね定数を柔らかく設定することができる利点を有する。
【0058】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明においては上例以外の他の様々な形態で防振ゴムブッシュ組付体を構成することができる。
例えば上例ではアウタリング72をアウタブロック70の外周面より軸直角方向外方に突き出して、そのアウタリング72の外周面を軸ハリ18のハウジング部24内に圧入嵌合するようになしているが、場合によってアウタブロック70の外周面をアウタリング72の外周面よりも軸直角方向外方に突出させて、その外周面を圧入嵌合面となし、これを軸ハリのハウジング部内に圧入嵌合するようになすことも可能である。
【0059】
尚この場合、アウタリング72は圧入によってその使命を終えるため、そのまま装着状態としておいても良いし、組付け後においてこれを取り外すようにしても良い。
また上例では中心軸体28がインナ金具を成しているが、防振ゴムブッシュにおけるインナ金具をこれとは別途に構成するといったことも可能である。
【0060】
また場合によって、アウタリング72の内周面又はアウタブロック70における嵌込溝74の外周面の一方に周方向に沿って嵌合溝を他方に嵌合突起を設けて嵌合させるようになすことも可能である。
こうすることによってアウタリング72のアウタブロック70からの脱落を良好に防止することができる。
【0061】
またアウタリングをアウタブロックの軸方向全長に亘る軸方向長を有するものとなし、一つのアウタリングをアウタブロック外周面に嵌め合せるようになすことも可能である。
この場合アウタリングの軸方向両端部を内側に曲げ返して脱落を防止するようになすことができる。
更にまたアウタブロック外周面を軸方向にストレートな面となしておくことができる。
【0062】
更にまた、上例では防振ゴムブッシュ36におけるアウタ金具40とアウタブロック70とを別々の部材で構成するとともにそれらを互いに分離した形態としているが、場合によって別々の部材で構成したアウタ金具40とアウタブロック70とを予め固着しておいて、アウタブロック70をアウタ金具40とともにゴム弾性体38に一体的に加硫接着するようになしても良いし、或いは更に進んで、図10に示すように上記実施例におけるアウタ金具40とアウタブロック70とを一体成形品として、つまり図11にも示しているように独立した別体のアウタ金具を有しない形態で構成するといったことも可能である。
【0063】
またアウタブロック70は、これを鋳物製となしたり、鍛造で成形したり、切削で成形したり、更にはまたアウタブロック70の構成材としてパイプを用いることも可能である。
この他本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】鉄道車両における軸ハリを本実施例の防振ゴムブッシュ組付体を介して台車フレームに連結した状態を示す図である。
【図2】同じ実施例の防振ゴムブッシュ組付体とその周辺部を示す図である。
【図3】同じ実施例の防振ゴムブッシュ組付体を組付状態で示す正面図及び一部を切り欠いて示す側面図である。
【図4】図3におけるア−ア断面図及びイ−イ断面図である。
【図5】同じ実施例の防振ゴムブッシュ組付体をアウタリングを嵌め込む前の状態で示す断面図である。
【図6】同じ実施例の防振ゴムブッシュ組付体を外観状態で示す斜視図である。
【図7】同じ実施例の防振ゴムブッシュ組付体を各部材に分解して示す分解斜視図である。
【図8】図7におけるアウタ金具を組み付けた状態で示す分解斜視図である。
【図9】図8におけるアウタブロックを組み付けた状態で示す分解斜視図である。
【図10】本発明の他の実施例を示す図である。
【図11】図10における防振ゴムブッシュ組付体を各部材に分解して示す分解斜視図である。
【図12】従来の防振ゴムブッシュを用いた軸ハリと台車フレームとの連結構造を示す図である。
【図13】図12における防振ゴムブッシュとその周辺部を示す図である。
【符号の説明】
18 軸ハリ
24 ハウジング部
26 防振ゴムブッシュ組付体
28 中心軸体(インナ金具)
36 防振ゴムブッシュ
38 ゴム弾性体
40 アウタ金具
42,50,62 鍔状部
64 ストッパ
66 ストッパ金具
68 圧入組付部材
70 アウタブロック
72 アウタリング
78 圧入嵌合面

Claims (7)

  1. (A)(イ)軸方向両端部に拡開状の鍔状部を有するインナ金具と、(ロ)該インナ金具の外周面に固着された、軸方向両端部に該インナ金具の鍔状部に対応した鍔状部を有するゴム弾性体と、(ハ)軸方向両端部に該鍔状部に対応した形状の拡開内面を有する、軸直角方向に複数分割されたアウタ金具とを備えた防振ゴムブッシュと
    (B)該防振ゴムブッシュに対し軸方向に固定的に外装され、該防振ゴムブッシュを鉄道車両の軸ハリにおける筒状のハウジング部内に軸方向に圧入して組み付けるための圧入組付部材と
    を有し且つ該圧入組付部材は、軸直角方向に複数分割され、該軸直角方向の締付力により前記ゴム弾性体に対して該軸直角方向に予圧縮を与える剛性のアウタブロックを含んでおり且つ該圧入組付部材の外周面に、前記ハウジング部の内周面に対して軸方向に圧入される、該軸方向に実質的に直線状をなす圧入嵌合面が形成してあり、前記アウタブロックにて前記ゴム弾性体を予圧縮した状態で前記軸ハリに組付固定するようになしてあることを特徴とする鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体。
  2. 請求項1において、前記アウタ金具は、前記アウタブロックと別体且つ該アウタブロックに対して相対的に薄肉の板状部材にて形成してあり、軸方向両端部に前記ゴム弾性体の鍔状部に対応した鍔状部を有していて、内面が該ゴム弾性体に対し加硫接着してあることを特徴とする鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記圧入組付部材が、環状をなして前記アウタブロックに外嵌され、該アウタブロックを前記締付状態に拘束するアウタリングを更に含んでいることを特徴とする鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体。
  4. 請求項3において、前記アウタリングの外周面に前記圧入嵌合面が形成してあることを特徴とする鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記防振ゴムブッシュ組付体には、ブレーキ作用時における前記インナ金具の相対的な変位方向である前後方向位置において、前記ゴム弾性体の過大な変形を防止するストッパが一体に加硫接着してあることを特徴とする鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体。
  6. 請求項5において、前記ストッパが前記防振ゴムブッシュのインナ金具に加硫接着してあることを特徴とする鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体。
  7. 請求項5,6の何れかにおいて、前記ストッパが、ストッパ金具とゴム弾性体とを有しており、ブレーキ作用時に該ストッパ金具が前記アウタブロックに当ってストッパ作用をなすものとしてあることを特徴とする鉄道車両の軸ハリ連結用防振ゴムブッシュ組付体。
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