JP3746915B2 - 高熱伝導性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い熱伝導性を有する組成物、たとえば半導体素子などの電子部品や電子部品が実装された基板などの発熱体に、ヒートシンクなどの放熱体を接合する際に、発熱体と放熱体との間の熱伝導を促進する目的で介在させられる熱伝導層もしくはその材料として好適に使用される組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のコンピュータシステムに使用される半導体素子などの電子部品は、高集積化(多機能化)され、しかも高速性が要求される。これにともない、電子部品の駆動時における発熱量が増大する傾向にあり、効率良く冷却を行わないと電子部品の性能低下を招くおそれがある。
【0003】
電子部品を冷却する方法の1つとして、電子部品やこれが実装される基板にヒートシンクを接合する方法が挙げられる。この場合、冷却効率を向上させるためには、ヒートシンクの性能を向上させることが必要であるばかりでなく、ヒートシンクと電子部品などとの間の接合部分の熱伝導を促進させることも重要である。すなわち、ヒートシンクの接合面の凹凸を低減すべく表面加工を施し、またヒートシンクに荷重をかけて接合界面の面積を向上しなければならない。しかしながら、これらの方法は、コスト的には不利である。
【0004】
このため、電子部品などとヒートシンクとの間に放熱性の高い組成物からなる熱伝導層を介在させることにより、冷却効率を向上させる手法が採用されている。すなわち、熱伝導性の高いフィラーと呼ばれる粉末を、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などのマトリックスに混ぜ込んで高い熱伝導性を有する組成物とし、これをヒートシンクと電子部品などとの接合部分に介在させることにより、冷却効率を向上させるのである。この場合、電子部品のショートを防止する目的で、マトリックスやフィラーとして絶縁性の高い材料を用いるのが好ましい。
【0005】
このような熱伝導層を構成する組成物としては、たとえば特公平6−19027号公報や特開平6−209057号公報に記載されたものがある。特公平6−19027号公報に記載の組成物は、水酸基含有オルガノポリシロキサン(シリコーンオイル)に熱伝導性の高い金属化合物、たとえば窒化アルミニウムや窒化ケイ素などを添加したものである。一方、特開平6−209057号公報に記載の組成物は、絶縁性を有するマトリックス、たとえばシリコーンオイルなどの高分子材料に、窒化アルミニウム焼結体の粉末を分散させたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
各公報に記載した組成物では、フィラーとして窒化アルミニウムや窒化ケイ素などといった窒化物が添加されている。しかしながら、これらの窒化物は、大気中の水分により加水分解してアルカリ性を示すため、フィラーとして窒化物を含む組成物を熱伝導体として使用したならば、加水分解した窒化物が、その周りの電子部品や基板、あるいはヒートシンクなどを腐食してしまうおそれがある。すなわち、窒化物は耐湿性の面で問題があるから、耐湿性のみに着目すれば、マトリックス内に添加するフィラーとしては、アルミナや酸化亜鉛(亜鉛華)などといった耐湿性に優れる無機酸化物のほうが好ましい。しかしながら、無機酸化物は、窒化物に比較して熱伝導性が低いため、無機酸化物をフィラーとする組成物では、高い熱伝導性を実現するのが困難である。
【0007】
また、シリコーンオイル、シリコーンゴム、あるいはシリコーンゲルなどのシリコーン樹脂は、ほとんど収縮しないため、熱硬化時の収縮力の大きいエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と比較すれば、フィラー添加によっても比較的に大きい熱伝導率を達成することができない。たとえば、フィラーとしての無機酸化物をマトリックスとしてのエポキシ樹脂に添加した場合には、2W/m・K以上の高い熱伝導率を得ることができるが、上記フィラーとシリコーン樹脂を組み合わせた場合には、0.8〜1.5W/m・K程度の熱伝導性しか達成できない。その反面、エポキシ樹脂は、接着強度が高い熱硬化性樹脂であるため、たとえば電子部品や基板などに問題が生じて部品の交換が必要になった場合に、部品交換が困難であるといった問題がある。これに対して、シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂などと比較して接着強度が低いため、部品交換容易性の観点からは、シリコーン樹脂が有用である。
【0008】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、高い熱伝導性および耐湿性を達成し、また電子部品やこれが実装される基板における冷却構造の接合部に使用された場合に、部品交換を容易ならしめることができる高熱伝導性組成物を提供することをその課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。すなわち、本発明により提供される高熱伝導性組成物は、熱伝導率の高いコア材を加水分解されにくいコート材で被覆した形態を有する第1フィラーと、この第1フィラーよりも平均粒径が小さい第2フィラーとを、高分子材料を主成分とするマトリックス中に分散させたことを特徴としている。
【0010】
上記組成物では、第1フィラーと、これよりも小粒な第2フィラーをマトリックス中に分散させた形態とされている。この構成では、マトリックス中に分散した第1フィラーの間に入り込んだかたちで第2フィラーが分散することとなる。つまり、平均粒径の小さい第2フィラーを混在させることにより、隣り合う第1フィラーどうしの間に第2フィラーが点在することとなり、第1フィラーのみを添加する場合に比べて、さらに高い熱伝導率を確保することができる。
【0011】
ここで、第1フィラーの平均粒径は、熱伝導性を高める目的で使用される公知のフィラーと同じ程度、たとえば5〜30μmの範囲とするのが好ましい。一方、第2フィラーの添加による効果を好適に得るためには、第2フィラーの平均粒径は、0.1〜2.0μmとするのが好ましい。
【0012】
第1フィラーのコア材の構成材料、すなわち熱伝導率の高い物質としては、たとえば酸化ベリリウム(BeO)や炭化ケイ素(SiC)の他、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)あるいは窒化ケイ素(SiN)などの窒化物が挙げられる。例示したこれらの化合物は、単独で使用しても、複数種の併用してもよい。各化合物を単独で使用する場合には、窒化物が好ましく使用され、その中でもとくに、窒化アルミニウムが最も好ましい。
【0013】
第1フィラーのコート材の構成材料、すなわち加水分解されにくい物質としては、たとえばシリカ(SiO2 )あるいはアルミナ(Al2 O3 )などの無機酸化物が挙げられる。
【0014】
第2フィラーとしては、第1フィラーと同様に、樹脂組成物の熱伝導性を向上させる機能を要求されることから、マトリックスよりも熱伝導率が高いことが望まれ、たとえば酸化亜鉛(ZnO)やアルミナ(Al2 O3 )などの無機酸化物の他、ダイヤモンドなどが用いられる。これらの物質は、各々単独で使用しても、複数種を併用してもよい。また、平均粒径を0.1〜2.0μmの範囲にできるのであれば、第1フィラーと同様に、窒化物などの熱導電性の高い物質を、無機酸化物などの加水分解されにくい物質で被覆した形態のものを第2フィラーとして使用してもよい。
【0015】
マトリックスを構成する主材料としては、公知の種々の高分子材料を使用することができるが、絶縁性や熱伝導性を考慮した場合、シリコーンオイル、シリコーンゲル、あるいはシリコーンゴム(シリコーンエラストマ)などのシリコーン樹脂が好ましい。また、マトリックスとしてシリコーンオイルを使用する場合には、長期間の使用に耐えうるように、シリコーンオイルの揮発性が低いことが望まれるから、たとえば分子量3000以上のものを使用するのが好ましい。
【0016】
なお、第1フィラーと第2フィラーとの比率は、たとえば9:1〜7:3の範囲とされる。第1フィラーに対する第2フィラーの比率が小さい場合には、第2フィラーを添加することによる効果を十分に得ることができない一方で、第1フィラーに対する第2フィラーの比率をあまりに大きくしても、一定以上の効果を期待できないことから、第1フィラーと第2フィラーの比率を上記した範囲とするのが妥当である。
【0017】
また、マトリックス100重量部に対する第1フィラーおよび第2フィラーの添加量は、それぞれ59〜81重量部および8.5〜27重量部とされる。各フィラーの添加量をこのような範囲とするのが好ましいのは、各フィラーの添加量があまりに少ない場合には、熱伝導性改善の効果が十分に得られない一方で、添加量があまりに多い場合には、組成物の稠度が大きくなって使用上不便だからである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、図1は、本発明に係る高熱伝導性組成物の断面形態を表す模式図、図2は、種々のフィラーに対する耐湿性の評価結果を経時的に表したグラフ、図3および図4は、前記高熱伝導性組成物を熱伝導層として採用した冷却構造の一例および他の例をそれぞれ表す断面図である。
【0019】
図1に示したように、本発明に係る高熱伝導性組成物1は、マトリックス10中に、第1フィラー11および第2フィラー12をそれぞれ分散した形態とされている。
【0020】
マトリックス10としては、たとえばシリコーン樹脂などの高分子材料を主成分とするものが好ましく使用される。
【0021】
第1フィラー11は、マトリックス10よりもさらに高い熱伝導性を有するコア材11aを、加水分解されにくいコート材11bで被覆した形態を有している。なお、第1フィラー11の平均粒径は、熱伝導性を改善する目的で使用される公知のフィラーと同程度、たとえば5〜30μmの範囲とされる。
【0022】
コア材11aは、先にも述べたように、たとえば窒化物により構成される。窒化物としては、たとえば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素などが挙げられるが、これらの窒化物の熱伝導率は、それぞれ70〜240W/m・K、25〜60W/m・K、および30〜80W/m・Kである。このように、熱導電率の高い材料である窒化物をコア材11aとすれば、第1フィラー11全体としての高い熱伝導性が確保できるばかりか、高熱伝導性組成物1全体としても高い熱伝導性を確保することができる。
【0023】
コート材11bは、たとえばシリカ(SiO2 )あるいはアルミナ(Al2 O3 )などの無機酸化物により構成される。これらの酸化物は、加水分解されにくい物質であるから、第1フィラー11では、コート材11bによりコア材11aの加水分解が回避され、第1フィラー11の耐湿性が改善される。すなわち、たとえば窒化物は加水分解されてアルカリ性を示し、周りの部品などを腐食してしまうといった問題があるが、耐湿性が改善できれば、このようなアルカリ腐食の問題を回避することができる。
【0024】
この点を確認すべく、本発明者らは、窒化物を無機酸化物で被覆したフィラーと、被覆していない窒化物のそれぞれについて、耐湿性を評価した。すなわち、シリカでコートした窒化アルミニウム(ダウ・ケミカル(株)製;「scan 70」(サンプルA))、窒化アルミニウム(徳山曹達(株)社製;「高純度窒化アルミニウムF」(サンプルB))、窒化ホウ素(昭和電工(株)社製;「ジュウビーエヌVHP」(サンプルC))、および窒化ホウ素(電気化学工業(株)社製;「デンカボロンナイトライド」(サンプルD))について、耐湿性を評価した。具体的には、pHが6.5である弱酸性液を100ml保持した容器を4つ準備し、各容器内に、各サンプルを10gずつ添加し、溶液のpH変化を経時的に測定した。その結果を図2に示すが、被覆していない窒化アルミニウムは、翌日には溶液のpHが12を超えて強アルカリ性を示しており、被覆していない各窒化ホウ素は、溶液のpHが上昇してアルカリ性を示している。これに対して、シリカで被覆した窒化アルミニウムは、実験を行った11日間において、溶液のpHがほとんど変化しなかった。このように、コア材としての窒化アルミニウムが被覆層により守られて加水分解されにくく、耐湿性に優れていることが確認できた。
【0025】
第2フィラー12は、マトリックス10よりも熱伝導率の高い物質により構成するのが好ましく、たとえば酸化亜鉛やアルミナなどの無機酸化物の他、ダイヤモンドなどにより構成される。そして、第2フィラー12の平均粒径は、第1フィラー11よりも小さいもの、たとえば0.1〜2.0μmの範囲とされる。
【0026】
第2フィラー12としてマトリックス10よりも熱伝導性の高い材料を使用すれば、高熱伝導性組成物1全体としてさらに高い熱伝導性を確保することができる。また、第2フィラー12の平均粒径を、第1フィラー11のそれよりも小さくすれば、マトリックス10中に分散した第1フィラー11の間に入り込んだかたちで第2フィラー12が分散することとなるから、平均粒径の小さい第2フィラー12を混在させることにより、第1フィラー11のみを添加する場合に比べて、さらに高い熱伝導率を確保することができる。
【0027】
以上に説明したように、本発明に係る高熱伝導性組成物1では、マトリックス10よりも熱伝導性の高い第1フィラー11および第2フィラー12を添加することにより、樹脂組成物1全体としての熱伝導性が高められている。そして、平均粒径の異なる大小2種類のフィラー11,12を混在させることにより、さらに熱伝導性が高められている。また、窒化物をコア材11aとし、無機酸化物をコート材12bとした構成の第1フィラー11を採用した高熱伝導組成物1では、窒化物の有する高い熱伝導性を有効利用しつつ、無機酸化物により耐湿性を改善してアルカリ腐食の問題を適切に回避することができる。さらに、マトリックス10としてシリコーン樹脂を採用した場合には、高熱伝導性組成物1の絶縁性も好適に確保される。
【0028】
このような特性を有する高伝導性組成物1は、たとえば半導体素子の冷却構造の熱伝導体として好ましく使用される。
【0029】
この冷却構造Xの一例としては、たとえば図3に示したように、フェイスダウン方式で基板2に実装された半導体素子3の裏面30側に、熱伝導層4を介してヒートシンク5が接合された構成のものがある。
【0030】
半導体素子3は、たとえば表面31側に複数の端子(図示略)が設けられており、これらの端子が、基板2に設けられた複数の端子20のうちの対応する端子20と、はんだバンプ21を介して導通接続されている。そして、半導体素子3の表面31と基板2との間が、絶縁性の高い樹脂6、たとえばエポキシ樹脂などを介して封止されている。
【0031】
ヒートシンク5は、基材50から複数の放熱フィン52が突出形成された形態とされ、表面積、すなわち放熱面積が大きく確保されている。
【0032】
熱伝導層4は、上述した高熱伝導性組成物1により構成されている。すなわち、半導体素子3とヒートシンク5の間が、熱伝導性および耐湿性に優れた組成物により接合されている。したがって、ヒートシンク5の接触面の凹凸を低減すべく表面加工を施し、またヒートシンク5に荷重をかけて、接触界面の面積を向上するまでもなく、高熱伝導性組成物1からなる熱伝導層4を介在させることにより、ヒートシンク5と半導体素子3との間の熱伝導を、効果的に促進することができる。これにより、冷却構造Xの高効率化を図り、半導体素子3などの電子部品の多機能化や高速化による駆動熱の増大に適切に対応することができる。
【0033】
もちろん、その他の形態の冷却構造、たとえば図4に示したように、基板2Aに接合された構成の冷却構造Yの熱伝導層4Aとしても、本発明の高熱伝導性組成物1を適用できるのはいうまでもない。この冷却構造Yは、半導体素子3Aが実装された基板2Aにおいて、半導体素子3Aが実装された表面2aとは反対の裏面2b側において構築されており、半導体素子3Aからの発熱を、基板2Aの裏面2b側から放熱するようになっている。このような構成の冷却構造Yにおいても、基板2Aとヒートシンク5Aの熱伝導が重要となることから、基板2Aとヒートシンク5Aの間に、本発明の高熱伝導性組成物1を介在させることにより、冷却構造Yの冷却効率を向上させることができる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明の実施例を、比較例とともに説明する。
【0035】
【実施例1】
本実施例では、シリコーンオイル(東芝シリコーン(株)製;「シリコーンオイルTSF451」)11gに、チタネート系カップリング剤0.2gとキシレン6gを添加してマトリックスとした。そして、シリカコート窒化アルミニウム(ダウ・ケミカル(株)製;「scan 70」)をふるいで粒径40μm以下とするとともに平均粒径を20μmとし、これを第1フィラーとした。この第1フィラーを、第2フィラーとしての平均粒径が1μmの酸化亜鉛(高純度化学(株)製;「ZnO」)と重量比で4:1の割合で混合して混合フィラーとし、この混合フィラー89gを、先に作製したマトリックスに添加して、回転式混練脱泡機での5分間混合を2回繰り返して本実施例の組成物を得た。このようにして得られた組成物について、熱伝導性および絶縁信頼性を評価した。その結果を表1および図5に示した。なお、絶縁信頼性については、2つのサンプルについて評価を行い、それぞれの結果を図5に示した。また、部品取り外し性について評価した。
【0036】
(熱伝導性の評価)
16×16mm角、厚さ2mmの銅板の4つの角のそれぞれに、厚さ250μmのスペーサを取り付け、スペーサを避けるようにして上記した組成物を塗布し、スペーサを取り付けていない同様な大きさの銅板を押し付けることにより、2枚の銅板の間に組成物層が介在するサンドイッチ構造のサンプルを作製した。そして、このサンプルの一方の銅板に、熱源により35Wの出力で熱を与えるとともに、他方の銅板を5℃の冷却水で冷却したときの温度差ΔTを測定し、この値およびサンプルの設計値を下記の式に代入して熱伝導率を算出することにより熱伝導性を評価した。
【0037】
【化1】
【0038】
(部品取り外し性の評価)
熱伝導体として、上記した手法により作製した組成物を用いて図3および図4に示した冷却構造をそれぞれ構築し、ヒートシンクに対して剪断方向(図中の矢印方向)にそれぞれ力を加え、ヒートシンクが取り外されたときの力の大きさにより部品の取り外し性を評価した。なお、半導体素子の平面視面積は16×16mm、ヒートシンクの接合面の面積は16×16mm、図4の基板の平面視面積は45×45mmとした。このとき、ヒートシンクの取り外し力が、図3に示した冷却構造では、0.7kgf/cm2 であり、図4に示した冷却構造では0.7kgf/cm2 であった。
【0039】
(絶縁信頼性の評価)
銅板の表面に、厚みが100μmとなるようにして上記手法により作製した組成物を塗布して絶縁膜を形成し、この絶縁膜に電圧を印加してその絶縁性を経時的に観測した。具体的には、絶縁膜が形成された銅板を、温度が85℃、相対湿度が85%に設定された高温高湿室内に放置するとともに、絶縁膜の表面に、互いの距離が75μmとなるようにして一対のプローブをそれぞれ接触させて、プローブ間に3.2Vの電圧を継続的に印加し、プローブ間の電圧を経時的に測定した。
【0040】
【実施例2】
本実施例では、シリコーンオイルに代えて、シリコーンゲル(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製;「SE1885」)を用いてマトリックスを作製し、第2フィラーとして酸化亜鉛に代えて、平均粒径が1μmのダイヤモンド(東名ダイヤモンド(株)製;「ダイヤモンド」)を用いた以外は実施例1と同様にして組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様な手法により、熱伝導性を評価した。その結果を表1に示した。なお、シリコーンゲルは、2液性なので、A剤(主剤)およびB剤(硬化剤)をそれぞれ別個に作製した。
【0041】
【実施例3】
本実施例では、シリコーンオイルに代えて、シリコーンゲル(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製;「シリコーンゲル SE1875」)を用いてマトリックスを作製した以外は実施例1と同様にして組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様な手法により、熱伝導性を評価した。その結果を表1に示した。
【0042】
【実施例4】
本実施例では、第2フィラーとして酸化亜鉛に代えて、平均粒径が1μmのダイヤモンド(東名ダイヤモンド(株)製;「ダイヤモンド」)を用いた以外は実施例1と同様にして組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様のして手法により熱伝導性を評価した。その結果を表1に示した。
【0043】
【実施例5】
本実施例では、シリコーンオイルに代えて、シリコーンエラストマ(東レ・ダウ・ユーニング・シリコーン(株)製;「SE1885」)を用いた以外は実施例1と同様にして組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様の手法により熱伝導性を評価した。その結果を表1に示した。
【0044】
【実施例6】
本実施例では、第2フィラーとして、酸化亜鉛に代えて平均粒径が1μmのアルミナ(アドヌテックス(株)製;「Ao−902」)を用いた以外は実施例1と同様にして組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様の手法により熱伝導性を評価した。その結果を表1に示した。
【0045】
【比較例1】
本比較例では、第1フィラーとして、窒化アルミニウムをシリコン系カップリング剤により被覆した平均粒径が15μmのものを用い、マトリックスとして、シリコーンオイルを用いたシリコーンコンパウンド(信越化学工業(株);「G765」)について、実施例1と同様の手法により熱伝導性および絶縁信頼性を評価した。熱伝導性の評価結果については表1に、絶縁信頼性の評価結果については図5に示した。なお、絶縁信頼性については、2つのサンプルについて評価を行い、それぞれの結果を図5に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から明らかなように、窒化アルミニウムのコア材を、シリカで被覆した第1フィラーを採用し、これよりも小径の第2フィラーを混在させた各実施例の組成物は、従来において、マトリックスとしてシリコーン樹脂を採用した組成物では困難であった2W/m・K以上の熱伝導率が達成されている。
【0048】
そして、マトリックスとしてシリコーンオイルを採用した実施例1の組成物を、熱伝導層として採用した冷却構造では、ヒートシンクの取り外し力が、図3に示した冷却構造では、0.7kgf/cm2 であり、図4に示した冷却構造では0.7kgf/cm2 であった。このように、実施例1の組成物を熱伝導層として採用した場合には、ヒートシンクの取り外しに要する力が小さくて済み、部品の交換性が良好なものとされている。
【0049】
また、図5に示したように、実施例1と比較例1の組成物の絶縁信頼性を比較した場合、測定開始から50時間程度までは実施例1および比較例1の組成物ともに高い絶縁信頼性を示しているが、比較例1の組成物については、50時間から100時間経過後において、測定される電圧値が大きくなり始め、数100時間経過後には、全く絶縁性がなくなっている。一方、比較例1の組成物が絶縁性がなくった時点においても、実施例1の組成物では全く絶縁性が低下しておらず、実施例1の組成物は絶縁信頼性が高いことが確認された。これは、実施例1の組成物では、コア材を加水分解されにくいシリカで被覆した第1フィラーを採用しているのに対し、比較例1の組成物では、コア材をカップリング剤で被覆している点に起因している考えられる。
【0050】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の高熱伝導性組成物は、高い熱伝導性および耐湿性が達成される。また、上記高熱伝導性組成物が電子部品の冷却構造の接合部に使用された場合に、アルカリ腐食の問題を回避しつつ、冷却構造の冷却効率を高めるとともに、部品交換を容易ならしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高熱伝導性組成物の断面形態を表す模式図である。
【図2】窒化物(AlN、BN)およびシリカコートした窒化物(AlN)の耐湿性の評価結果を経時的表したグラフである。
【図3】前記樹脂組成物を熱伝導体として採用した半導体素子の冷却構造の一例を表す断面図である。
【図4】前記樹脂組成物を熱伝導体として採用した半導体素子の冷却構造の他の例を表す断面図である。
【図5】実施例1の樹脂組成物と比較例1の組成物について、絶縁性の経時的変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1 高熱導電性組成物
10 マトリックス
11 第1フィラー
11a コア材
11b コート材
12 第2フィラー
Claims (4)
- 熱伝導率の高いコア材を加水分解されにくいコート材で被覆した形態を有する平均粒径5〜30μmの第1フィラーと、平均粒径が0.1〜2.0μmの第2フィラーとを、高分子材料を主成分とするマトリックス中に分散させたことにより、上記第1フィラーの粒子間に第2フィラーの粒子が入り込んでいることを特徴とする、高熱伝導性組成物。
- 上記コア材は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1つの窒化物を含んでおり、上記コート材は、シリカあるいはアルミナのうちの少なくとも1つの無機酸化物を含んでいる、請求項1に記載の高熱伝導性組成物。
- 上記第2フィラーは、酸化亜鉛、アルミナ、およびダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくも1つの物質を含んでいる、請求項1または2に記載の高熱伝導性組成物。
- 上記高分子材料は、シリコーンオイル、シリコーンゲル、あるいはシリコーンゴムである、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の高熱伝導性組成物。
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