JP3745312B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術は即時性、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンターの分野でも広く使われ応用されてきている。複写機やプリンターなどの電子写真装置に用いられる像保持部材の代表的なものの1つとして、電子写真感光体が挙げられる。
【0003】
電子写真感光体に用いられる材料は、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛に代表される無機材料があるが、近年では無公害性、高生産性、材料設計の容易性および将来性などの点から有機材料の開発がさかんに行われている。
【0004】
電子写真感光体には、当然ながら適用される電子写真プロセスに応じた電気的、機械的さらには光学的特性など様々な特性が要求される。
【0005】
特に、繰り返し使用される電子写真感光体に対しては、帯電、露光、現像、転写、クリーニングといった電気的、機械的な力が直接的または間接的に繰り返し加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。
【0006】
有機材料を用いた有機電子写真感光体においては、有機光導電物質をバインダー樹脂に溶解または分散して、塗膜を形成して用いるのが通常である。その塗膜は、有機光導電物質とバインダー樹脂を溶媒に溶解または分散後、塗布乾燥して形成される。
【0007】
バインダー樹脂としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体およびその共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの材料が用いられている。
【0008】
これらの有機電子写真感光体は、大量生産性に優れ、価格も比較的安価に生産可能であるといった多くの利点を有しているが、電子写真感光体として必要とされるすべての要求を満足しているわけではなく改善の余地がある。
電子写真としての機能性、特性に関しては、無機電子写真感光体より優れた電子写真感光体が生産されるに至ったが、他の特性、特に耐久性ということに対してさらなる改善が望まれている。
【0009】
電子写真感光体の高耐久化の試みとして、従来のポリカーボネート樹脂よりも芳香族ポリエステル樹脂(ポリアリレート樹脂)を表面層に用いた場合、電子写真感光体表面の機械的強度の向上により高耐久化が実現できることが提案されている(例えば、特開平08−217863号公報など)。
【0010】
さらなる高耐久化を目指す樹脂の改良策としては、機械的強度に強いモノマー構造をポリアリレート樹脂に組み込む試みがなされており、その中でも、ビフェニル構造は、自由体積を低下させることで機械的強度の向上が期待される構造であり、その電子写真への適応が提案されている(特開2000−227668号公報など)。
【0011】
しかしながら、ビフェニル構造を有する樹脂は、樹脂合成時に副生する不純物が、場合によっては電子写真特性に悪影響を及ぼす可能性があり、ビフェニル構造を有する樹脂で、強度の向上と良好な電子写真特性とを両立させることは困難であり、さらなる改善が望まれていた。
【0012】
樹脂からの不純物の除去には、1つの方法として樹脂を溶剤に再度溶解させ、その溶解液を、樹脂の溶解性は乏しいが不純物は溶解する溶媒中に滴下し、樹脂を析出させ不純物を溶解させることで不純物を除去する再沈法が用いられる。
【0013】
この工程を繰り返すことで樹脂純度を上げることができるが、一度生成した樹脂を再度溶解させる手間など煩わしさを伴う。そのため、再沈処理工程を繰り返すことはコストアップにつながり、極力この工程を回避することが好ましい。
【0014】
したがって、ビフェニル構造を有する樹脂においても、合成時に副生成物の生成量を低減させることが、再沈工程を簡略化し、かつ、電子写真感光体の表面層に使用する樹脂としての特性を満足させることが可能となる。
【0015】
以上述べたように、合成時に副生成物の生成量を低減させることが可能なビフェニル構造を有するポリアリレート樹脂の開発が必要とされている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記課題を解決し、良好な電子写真特性を維持し、さらに、繰り返し使用において安定した特性を持つ電子写真感光体を提供することである。
【0017】
また、そのような電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の改善に鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、支持体および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0019】
【化9】
【0020】
また、本発明は、支持体および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1−11)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体のポリアリレート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0021】
【化10】
【0022】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【0023】
【発明の実施の形態】
電子写真感光体に使用するための樹脂には、微小量の不純物が大きく特性に影響を及ぼすため、再沈処理といった精製工程を十分に行う必要がある。
特に、従来のビフェニル構造を有するポリアリレート樹脂はその傾向が強く、生産性といった点での改良が望まれていた。
【0024】
しかし、上記式(1−2)および(1−11)で示したように、ビフェニル構造の特定部位に置換基を導入することにより、再沈回数を低減しても電子写真特性を満足し得る結果が得られた。つまり、耐摩耗性、機械的強度の向上と共に、良好な電子写真特性を有する電子写真感光体を作製することができた。
【0025】
ビフェニル構造を有するポリアリレート樹脂は、樹脂作製時に副生すると思われる不純物により、電子写真特性の悪化を伴う傾向があり、それらを回避するために再沈処理といった十分な樹脂の精製工程を経ることが必要ではないかと考えたのだが、ビフェニル構造の特定部位に置換基を有させることで、精製工程を簡略化することが可能になったのである。
【0026】
この理由として、ポリアリレート樹脂にビフェニル構造を導入する際には、樹脂合成時の原料にジヒドロキシビフェニルを使用し、重合時の反応時に何らかの影響によりジフェノキノンといった化合物が副生する場合があるが、原料に特定部位に置換基を有するジヒドロキシビフェニルを使用することにより、特定部位の立体反発により平面性が阻害されるため、ジヒドロキシビフェニルからジフェノキノンへの反応が進行しないことにより、不純物が生成しにくくなっていることが一因であると考えられる。
【0027】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0028】
上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂は、強度や溶解性などの他特性を付加するために、さらに上記式(1−11)で示される繰り返し構造単位を有してもよいし、さらに下記式(2)で示される繰り返し構造単位を有してもよい。
【0029】
【化11】
【0030】
式(2)中、R21〜R24は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアルコキシ基、または、ハロゲン原子を示す。X21は、エーテル、チオエーテル、または、下記式で示される構造を有する基である。
【0031】
【化12】
【0032】
上記式中、R25、R26は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、ハロゲン原子、または、R25とR26とが結合することによって形成されるアルキリデン基を示す。
【0033】
また、電子写真感光体の表面層は、その生産性の向上などのために、さらに下記式(3)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂や、下記式(4)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂を併せて含有してもよい。
【0034】
【化13】
【0035】
式(3)中、R31〜R34は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアルコキシ基、または、ハロゲン原子を示す。X31は、エーテル、チオエーテル、または、下記式で示される構造を有する基である。
【0036】
【化14】
【0037】
上記式中、R35、R36は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、ハロゲン原子、または、R35とR36とが結合することによって形成されるアルキリデン基を示す。
【0038】
【化15】
【0039】
式(4)中、R41〜R44は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアルコキシ基、または、ハロゲン原子を示す。X41は、エーテル、チオエーテル、または、下記式で示される構造を有する基である。
【0040】
【化16】
【0041】
上記式中、R45、R46は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、ハロゲン原子、または、R45とR46とが結合することによって形成されるアルキリデン基を示す。
【0042】
上記表現のアルキル基としては、炭素数1〜5であることがより好ましく、さらにはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であることがより一層好ましい。
【0043】
また、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0044】
また、アルコキシ基としては、炭素数1〜5であることが好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0045】
また、アルキリデン基としては、エチニリデン基などが挙げられる。
【0046】
また、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
【0047】
また、上記各基が有してもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられ、アルキル基としてはメチル基、エチル基、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アルコキシ機としてはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子としてはフッ素、塩素などが挙げられる。
【0048】
上記ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50000〜200000が好ましく、強度、生産性などの面から、80000〜150000がより好ましい。
【0049】
以下に、上記式(2)で示される繰り返し構造単位、上記式(3)で示される繰り返し構造単位の好適な具体例を示す。
【0050】
なお、上述のとおり、上記式(2)で示される繰り返し構造単位は、上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位との組み合わせで共重合体の形態のポリアリレート樹脂を形成するための繰り返し構造単位であり、一方、上記式(3)で示される繰り返し構造単位は、上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂と併せて用いる(ブレンドして用いる)ポリアリレート樹脂の繰り返し構造単位であるが、それらの好適な具体例としては、同じものが挙げられる。
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
これらの中でも、(23−1)、(23−2)、(23−3)、(23−6)、(23−7)が好ましく、さらには(23−2)、(23−7)がより好ましい。
【0054】
上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位と上記式(2)で示される繰り返し構造単位を有する共重合体のポリアリレート樹脂の場合、前者対後者の含有比は、95:5〜5:95であれば、それぞれの特性を効果的に引き出しやすいため好ましい。
【0055】
次に、上記式(4)で示される繰り返し構造単位の好適な具体例を示す。
【0056】
【化19】
【0057】
【化20】
【0058】
これらの中でも、(4−1)、(4−2)、(4−5)、(4−6)が好ましく、さらには(4−1)、(4−5)、(4−6)がより好ましい。
【0059】
上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂と、上記式(3)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂をブレンドして使用する場合、前者対後者の混合比は、95:5〜5:95、さらには80:20〜20:80であれば、それぞれの特性を効果的に引き出しやすいため好ましい。
【0060】
(合成例)
本発明の電子写真感光体に使用する、上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂および上記式(1−11)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体のポリアリレート樹脂は、常法によって合成することができる。
【0061】
一例として、上記式(1−11)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体のポリアリレート樹脂の合成例を以下に示す。
【0062】
10%水酸化ナトリウム水溶液に、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニルモノマーを加えて溶解した。
【0063】
さらに、重合触媒としてトリメチルベンジルアンモニウムクロライドを添加し攪拌した。別に、テレフタル酸クロライドとイソフタル酸クロライドの等量混合物をジクロロメタンに溶解させた。
【0064】
このジクロロメタン溶液を先に調製した水酸化ナトリウム水溶液に攪拌しながら添加し、重合を開始した。重合は反応温度を25℃以下に保ちながら、3時間攪拌を行った。
【0065】
その後、酢酸の添加により反応を終了させ、水相が中性になるまで水で洗浄を繰り返した。
【0066】
その後、再沈工程として、生成したポリアリレート樹脂を溶剤に再度溶解させ、攪拌下のメタノールに滴下しポリマーを沈殿させた。
【0067】
さらにポリマーを真空乾燥させて、上記式(1−11)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体のポリアリレート樹脂を得た。
【0068】
以下、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0069】
本発明の電子写真感光体は、感光層が電荷輸送物質と電荷発生物質とを同一の層に含有する単層型、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と電荷発生物質を含有する電荷発生層とを有する積層型のどちらでも構わないが、電子写真特性的には積層型が好ましい。
【0070】
また、積層型には、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した型(順層型)と電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した型(逆層型)があるが、順層型がより好ましい。
【0071】
本発明の電子写真感光体の電荷発生物質としては、通常知られているものが使用可能であり、例えば、セレン−テルル、ピリリウム、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクドリンなどの各顔料が挙げられる。
【0072】
これらの顔料は0.3〜4倍の重量のバインダー樹脂および溶剤ともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ミル、サンドミルアトライター、ロールミル、液衝突型高速分散機などを使用して、よく分散した分散液とする。
【0073】
積層型感光層を有する電子写真感光体の場合、この液を塗布し、乾燥することによって電荷発生層が得られる。
【0074】
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、さらには0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0075】
電荷輸送物質も、通常用いられるものが使用でき、例えば、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物、チアゾール系化合物などが挙げられる。これらの化合物はバインダー樹脂とともに溶剤に溶解し溶液とする。
【0076】
積層型感光層を有する電子写真感光体の場合、この液を塗布し、乾燥することによって電荷輸送層が得られる。
【0077】
電荷輸送層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、さらには15〜30μmであることがより好ましい。
【0078】
感光層が単層型の場合は、上述のような電荷発生物質や電荷輸送物質を、バインダー樹脂に分散し、溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0079】
単層型の感光層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、さらには15〜30μmであることがより好ましい。
【0080】
また、感光層の上に、感光層を保護することを目的として保護層を設けることもできる。
【0081】
保護層としては、バインダー樹脂を溶剤に溶解した溶液を、塗布し乾燥することにより得られる。必要に応じて電子写真感光体の材料や、抵抗値の制御のための導電材、潤滑性を持たせるための滑材などの添加することもできる。
【0082】
本発明においては、保護層を設ける場合は、少なくとも電子写真感光体の表面層にあたる保護層に、上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂または上記式(1−11)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体のポリアリレート樹脂を使用し、保護層を設けない場合は、少なくとも感光層に、詳しくいえば、感光層を構成する層のうち電子写真感光体の表面層にあたる層(例えば、順層型感光層の場合、電荷輸送層)に、上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂または上記式(1−11)で示される繰り返し構造単位を有する単独重合体のポリアリレート樹脂を使用する。
【0083】
本発明は、感光層を保護するための保護層を設けない層構成、すなわち、感光層が表面層である電子写真感光体に適用した場合に、その効果をより一層発揮することができる。
【0084】
本発明の電子写真感光体に用いる支持体は、導電性を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成型したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したものなどが挙げられる。
【0085】
レーザービームプリンターなど画像入力がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止、または基盤の傷を被覆することを目的として、支持体と感光層との間、または、支持体と後述の中間層との間に導電層を設けてもよい。
【0086】
導電層は、カーボンブラック、金属粒子などの導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。
【0087】
導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、さらには10〜30μmがより好ましい。
【0088】
支持体と感光層との間、または、導電層と感光層との間には、接着機能や電荷バリアー機能を有する中間層を設けてもよい。
【0089】
中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタンなどが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。
【0090】
中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、さらには0.3〜1μmがより好ましい。
【0091】
上記電子写真感光体の各層の塗布方法は、限定はなく、浸漬塗布法、スプレー塗布法、バーコート法など通常知られている方法が使用できる。
【0092】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0093】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0094】
電子写真感光体1は、回転過程において、帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0095】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0096】
像転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0097】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0098】
なお、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0099】
また、帯電手段3や現像手段5が電子写真感光体のクリーニング機能を併せ持つ場合は、クリーニング手段は必ずしも必要ではない。
【0100】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。
【0101】
例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化し、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0102】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0103】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンターおよびレーザー製版など電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0104】
【実施例】
以下、実施例にしたがって、本発明をより詳細に説明する。
【0105】
実施例中、「部」は「質量部」を表す。
【0106】
(実施例1)
直径30mm×長さ357mmのアルミシリンダー上に、以下の材料より構成される塗料を浸漬塗布法にて塗布し、140℃で30分熱硬化することにより、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0107】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調整用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール=2/8 20部
【0108】
次に、この導電層上に、N―メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部を、メタノール65部およびn−ブタノール30部の混合溶剤に溶解した溶液を、浸漬塗布法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
次に下記式で示される構造を有するアゾ顔料を4部、
【0109】
【化21】
【0110】
ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBLS、積水化学製)2部およびシクロヘキサノン35部を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で12時間分散して、その後にメチルエチルケトン60部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。
【0111】
この分散液を中間層上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0112】
次に、下記式で示される構造を有するアミン化合物7部、
【化22】
【0113】
下記式で示される構造を有するアミン化合物1部、
【化23】
【0114】
バインダー樹脂として上記式(1−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂(Mw=100000、メタノールによる再沈処理1回)10部を、モノクロロベンゼン80部に溶解し、電荷輸送層用の塗布液を得た。
【0115】
この塗布液を、浸漬塗布法で塗布し、120℃、1時間乾燥し、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
【0116】
次に、評価について説明する。
装置はキヤノン(株)製複写機GP210(接触帯電方式)を用いた。
【0117】
電子写真特性の評価は、暗部電位Vd=−700Vとしたときの、明部電位Vlを測定した。
【0118】
電子写真感光体の耐久性評価は、A4サイズの普通紙を1枚複写ごとに1度停止する間欠モードにて10000枚の複写を行い、その後、電子写真感光体の表面の膜厚の摩耗量を測定した。
【0119】
(実施例2〜4)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、下表に示すポリアリレート樹脂(Mw=100000、再沈回数3回)を用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0120】
(実施例5、6)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、下表に示す共重合体のポリアリレート樹脂(Mw=100000)を用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0121】
(実施例7、8)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、下表に示す共重合体のポリアリレート樹脂と、下表に示すポリカーボネート樹脂を混合して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0122】
(実施例9〜13)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、下表に示すポリアリレート樹脂、または共重合体のポリアリレート樹脂と、下表に示すポリアリレート樹脂を混合して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0123】
(比較例1)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、具体例(4−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂(Mv=40000)のみを用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0124】
(比較例2)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、具体例(3−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂(ポリアリレートA型(ユニチカ(株)製U100))とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0125】
(比較例3)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、下記式(C−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂(特定位置に置換基を有さないビフェニル構造を有するポリアリレート樹脂)(Mw=100000、再沈回数1回)を用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0126】
【化24】
【0127】
(参考例1)
電荷輸送層用のバインダー樹脂として、上記式(C−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂(特定位置に置換基を有さないビフェニル構造を有するポリアリレート樹脂)(Mw=100000、再沈回数3回)を用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0128】
実施例1〜13、比較例1〜3、参考例1の評価結果を下表に示す。
【0129】
なお、下表における「テレ/イソ比」の「テレ」とは、ポリアリレート樹脂の繰り返し構造単位の右端が
【化25】
【0130】
という構造のものを指し、「イソ」とは、
【化26】
という構造のものを指す。「テレ/イソ比」とは、それらの比率を意味する。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例と比較例1や比較例2とを対比することで、ビフェニル構造を有するポリアリレート樹脂を電子写真感光体の表面層(電荷輸送層)に使用することによる耐久性の向上の効果が示されている。
【0133】
また、比較例3に示されるように、ビフェニル構造を有していても、特定位置に置換基を有さないビフェニルでは、十分な明部電位が得られず、電子写真感光体としての機能を十分に果たしているとは言い難い。
【0134】
参考例1に示されるように、比較例3で使用したポリアリレート樹脂の再沈処理を繰り返し行うことにより、電子写真特性が改善する傾向にあることはわかるが、コストなどを考えると好ましくない。
【0135】
実施例で示すように、ビフェニル構造の特定位置に置換基を配置することで、再沈の回数を低減しても良好な明部電位が得られ、かつ、耐摩耗性に優れ、耐久性の高い電子写真感光体の提供が可能である。この結果は、特定位置に置換基を配置することで、不純物の生成量を低下させることに起因していると考えられる。
【0136】
以上の結果より、特定位置に置換基を有するビフェニル構造を有するポリアリレート樹脂を電子写真感光体に使用する優位性は明らかである。
【0137】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な電子写真特性を維持し、さらに、繰り返し使用において安定した特性を持つ電子写真感光体を提供することができる。
【0138】
また、そのような電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 レール
Claims (8)
- 前記電子写真感光体の表面層が、さらに下記式(3)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂を含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記電子写真感光体の表面層が、さらに下記式(4)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂を含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が前記支持体側から電荷発生層および電荷輸送層をこの順に有し、前記電子写真感光体の表面層が該電荷輸送層である請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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