JP3703318B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは特定の樹脂を含有する表面層を有する電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な有機光導電性化合物を有する電子写真感光体の開発が盛んに行われている。例えば、米国特許3837851号明細書にはトリアリルピラゾリンを含有する電荷輸送層を有する感光体、米国特許3871880号明細書にはペリレン顔料の誘導体を含有する電荷発生層と、電荷輸送層とを有する感光体等が記載されている。
【0003】
有機光導電性化合物は、化合物によって感度を有する波長域が異なり、例えば、特開昭61−272754号公報及び特開昭56−167759号公報には可視領域に高い感度を有する化合物が開示されており、また特開昭57−19576号公報及び特開昭61−228453号公報には赤外領域にまで感度を有する化合物が開示されている。これらの材料のうち、赤外領域に感度を示すものは、レーザビームプリンターやLEDプリンターに使用されその需要頻度は高くなってきている。
【0004】
一方、当然のことながら、電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、機械的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。特に繰り返し使用される電子写真感光体の表面には帯電、露光、現像、転写及びクリーニング等の電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。
【0005】
具体的には帯電時に発生するオゾンや窒素酸化物による劣化や、放電やクリーニングによる表面の摩耗や傷といった電気的及び機械的劣化に対する耐久性が求められている。中でも、比較的低い硬度を有するものが多い有機系の感光体の耐久性を向上させるための重要な要因として感光体表面の潤滑性と用いる樹脂の強度が挙げられる。
【0006】
潤滑性の向上については、特開平5−72753号公報、特開平6−51544号公報、特開平6−75415号公報及び特開平6−136108号公報にポリカーボネートの主鎖にシロキサン鎖を共重合させる方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のシロキサン構造を主鎖に直鎖状に共重合して潤滑性等を改善しようとすると、その量比により差は生じるものの、ポリカーボネート樹脂本来の機械的強度が低下してしまうことがあった。摩耗性は表面層の強度と潤滑性に依存するので、感光体の耐久性向上のためには、潤滑性の向上と樹脂の強度低下の低減を両立させる必要がある。
【0008】
また、使用前の感光体は、表面が非常に均一であるためクリーニングブレードとの密着性が高い(使用を開始した後は、感光体の表面が削れて粗面化されること、あるいはトナーや摩耗粉が存在すること等により、感光体表面とクリーニングブレードの潤滑性がやや改善される)ので、使用初期の潤滑性を高くしておかないと、ブレード反転やブレード鳴き(感光体とブレードの摩擦音)等のトラブルが発生し易い。特に、高湿環境では摩擦係数が高くなるので、この問題は初期のみならず使用中においても顕著である。
【0009】
また、直鎖状のシロキサン鎖を導入すれば、ポリマー膜内の応力が緩和されるため耐ソルベントクラック性は向上するが、やはり機械的強度が低下し易い。
【0010】
本発明の目的は、優れた潤滑性、強度及び耐ソルベントクラック性を有し、長寿命で高画質な電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位を有するポリアリレート樹脂またはポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0012】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置である。
【0013】
本発明においては、樹脂の主鎖中のシロキサン鎖を環状としたことにより、機械的強度の低下を抑えながら、応力緩和性及び表面潤滑性を向上させることができた。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明における環状シロキサン構造とは、シロキサン鎖が環を形成している構造である。そしてこの構造が、ポリアリレート樹脂及びポリカーボネート樹脂が有する構成単位の、側鎖としてではなく、主鎖として存在しているのである。より具体的には、ポリアリレート樹脂及びポリカーボネート樹脂を合成する際に用いるビスフェノールが有する両末端のフェニル基の間に、この構造が主鎖として存在するのである。
【0015】
表面層がポリアリレート樹脂を含有する場合、主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位は、下記式(1)で示されることが好ましい。
【0016】
【外7】
(式中、R1 乃至R4 及びR21乃至R28は同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、R5 乃至R20は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X1 乃至X4 は同一または異なって、置換もしくは無置換のアルキレン基を示し、aは0〜100の整数を示し、b、c、d及びeは同一または異なって、0〜10であり、かつb+c≧2及びd+e≧2である整数を示し、fは1〜10の整数を示す。)
【0017】
式(1)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基及びナフチル基等が挙げられ、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等が挙げられる。
【0018】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアルキレン基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、フェニル基及びナフチル基等のアリール基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0019】
式(1)中、左端の−0−は、X1 に対し、オルト、メタ及びパラのいずれの位置に結合してもよく、右端の
【0020】
【外8】
は、
【0021】
【外9】
に対し、オルト、メタ及びパラのいずれの位置に結合してもよいが、便宜上、上記式のように示す。X4 に結合しているベンゼン環に結合する−0−も同様である。
【0022】
本発明においては、強度及び得られる電子写真感光体の感度の点で、R1 乃至R4 及びR21乃至R28が全て水素原子であることが好ましい。
【0023】
また、本発明において、機械的強度を優先的に発現させる際には、式(1)で示される構成単位中のシロキサン環を形成するSiOの数を4〜8とし、シロキサン環の数を1つとする(a=0、2≦b+c≦6)ことが好ましい。
【0024】
更に、本発明においては、機械的強度の点で、ポリアリレート樹脂が下記式(2)で示される構成単位も有していることが好ましい。
【0025】
【外10】
〔式中、R29乃至R40は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X5 は単結合、−0−、−S−及び下記式
【0026】
【外11】
(式中、R41及びR42は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。また、R41とR42は互いに結合することによって式中の炭素原子とともに置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基を形成してもよい。)で示される基を示す。〕
【0027】
式(2)中、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基としては、式(1)と同様の基が挙げられ、シクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基及びシクロヘプチリデン基等が挙げられる。また、これらの基が有してもよい置換基としては、式(1)における置換基と同様の基が挙げられる。
【0028】
式(2)中、右端の
【0029】
【外12】
は、
【0030】
【外13】
に対し、オルト、メタ、パラいずれの位置に結合してもよいが、便宜上、上記式のように示す。
【0031】
本発明においては、R30、R31、R33、R36乃至R39及びR40が全て水素原子であることが好ましい。
【0032】
また、表面層がポリカーボネート樹脂を含有する場合、主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位は、下記式(3)で示されることが好ましい。
【0033】
【外14】
(式中、R43乃至R46及びR63乃至R66は同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、R47乃至R62は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X6 乃至X9 は同一または異なって、置換もしくは無置換のアルキレン基を示し、gは0〜100の整数を示し、h、i、j及びkは同一または異なって、0〜10であり、かつh+i≧2及びj+k≧2である整数を示し、lは1〜10の整数を示す。)
【0034】
式(3)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基及びナフチル基等が挙げられ、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等が挙げられる。
【0035】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアルキレン基が含有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、フェニル基及びナフチル基等のアリール基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0036】
式(3)中、左端の−0−は、X6 に対し、オルト、メタ及びパラのいずれの位置に結合してもよく、右端の
【0037】
【外15】
は、X9に対し、オルト、メタ及びパラのいずれの位置に結合してもよいが、便宜上、上記式のように示す。
【0038】
本発明においては、強度及び得られる電子写真感光体の感度の点で、R43乃至R46及びR63乃至R66が全て水素原子であることが好ましい。
【0039】
また、機械的強度を優先的に発現させる際には、式(3)で示される構成単位中のシロキサン環を形成するSiOの数を4〜8とし、シロキサン環の数を1つとする(g=0、2≦h+i≦6)ことが好ましい。
【0040】
更に、本発明においては、機械的強度の点で、ポリカーボネート樹脂が下記式(4)で示される構成単位も有していることが好ましい。
【0041】
【外16】
〔式中、R67乃至R74は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X10は単結合、−0−、−S−及び下記式
【0042】
【外17】
(式中、R75及びR76は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。また、R75とR76は互いに結合することによって式中の炭素原子とともに置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基を形成してもよい。)で示される基を示す。〕
【0043】
式(4)中、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基としては、式(3)と同様の基が挙げられ、シクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基及びシクロヘプチリデン基等が挙げられる。また、これらの基が有しても良い置換基としては、式(3)における置換基と同様の基が挙げられる。
【0044】
本発明においては、R68、R69、R71及びR74の全てが水素原子であることが好ましい。
【0045】
以下の第1表に式(1)で示される構成単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限られるものではない。第1表中「−ph」はフェニル基を示し「↑」は同上であることを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
次に、式(2)で示される構成単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0049】
【外18】
【0050】
【外19】
【0051】
【外20】
【0052】
【外21】
【0053】
これらの中では、(2)−1、(2)−2、(2)−10、(2)−11及び(2)−16が特に好ましい。
【0054】
以下の第2表に式(3)で示される構成単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限られるものではない。第2表中「−ph」はフェニル基を示し、「↑」は同上であることを示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
次に、式(4)で示される構成単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0058】
【外22】
【0059】
【外23】
【0060】
【外24】
【0061】
これらの中では、(4)−1、(4)−2、(4)−10、及び(4)−13が特に好ましい。
【0062】
本発明に用いられるポリアリレート樹脂の合成方法は特に限定されない。例えばモノマーとして式(1)及び(2)を導く2種のビスフェノールとフタル酸を常法(例えば、界面重縮合法)により重縮合することによって得ることができる。
【0063】
また、本発明のポリカーボネート樹脂の合成方法も、特に限定されない。例えば、モノマーとして式(3)及び(4)を導くビスフェノールとホスゲンを常法により重縮合することによって得ることができる。
【0064】
(合成例1)
10%水酸化ナトリウム水溶液500mlに、構成単位例(1)−8で示される構造を中心骨格として有するシロキサン系ビスフェノール2.5g及びビスフェノールC17.5gを加えて溶解した。更に、重合触媒としてトリメチルベンジルアンモニウムクロライド0.05gを添加し、撹拌した。別に、テレフタル酸クロライドとイソフタル酸クロライドの等量混合物4.1gを300mlのジクロロメタン溶液に溶解した。このジクロロメタン溶液を上記水酸化ナトリウム水溶液に撹拌しながら添加し、重合を開始した。反応温度を25℃以下に保ちながら、3時間撹拌した。その後、酢酸を添加することによって反応を終了させ、水相が中性になるまで洗浄を繰り返した。次いで、撹拌下、この溶液をメタノール滴下し、ポリマーを沈殿させた。このポリマーを真空乾燥し、構成単位例(1)−8及び(2)−2で示される構成単位を有する本発明のポリアリレート樹脂を得た。
【0065】
(合成例2)
10%水酸化ナトリウム水溶液500mlに、ビスフェノールZ35gを加えて溶解した。この溶液にジクロロメタン300mlを加え撹拌し、溶液の温度を10〜15℃に保ちながら、ホスゲン100gを1時間かけて導入した。ホスゲンを約70%吹き込んだところで、構成単位例(3)−1で示される構造を中心骨格として有するシロキサン系ビスフェノール15.0gを溶液に加えた。ホスゲンの導入が終了後、激しく撹拌し、0.2mlのトリエチルアミンを加え、1時間撹拌した。その後、ジクロロメタン相をリン酸で中和し、更にpH7程度になるまで水洗を繰り返した。次いで、この液相をイソプロパノールに滴下し、沈殿物をろ過し、乾燥することによって、構成単位例(3)−1及び(4)−13で示される構成単位を有する本発明のポリカーボネート樹脂を得た。
【0066】
本発明のポリアリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は10,000〜200,000であることが好ましく、特には20,000〜150,000であることが好ましい。また、共重合比率は、重量基準で式(2)/(1)=99/1〜50/50が好ましく、特には97/3〜70/30であることが好ましい。式(1)の比率が1より少ない場合には、潤滑性及びトナー付着防止等の機能が発現されにくく、50より多い場合には、感光体表面層として十分な強度が得られにくくなる。
【0067】
また、本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は10,000〜150、000であることが好ましく、特には20,000〜100,000であることが好ましい。また、共重合比率は、重量基準で式(4)/(3)=99/1〜50/50であることが好ましく、特には97/3〜70/30であることが好ましい。式(3)の比率が1より少ない場合には、潤滑性及び耐ソルベントクラック性やトナー付着防止等の機能が発現されにくく、50より多い場合には、感光体表面層としての十分な強度が得られにくくなる。
【0068】
本発明の電子写真感光体の表面層は、感光層である場合と感光層上の保護層である場合に大別される。
【0069】
表面層が感光層である場合、感光層が電荷発生材料と電荷輸送材料を同一の層に含有する単一層型であるときには、その層が表面層である。
【0070】
また、感光層が、電荷発生材料を含有する電荷発生層上に電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を有する積層型である場合は、電荷輸送層が表面層であり、逆に電荷発生層が上層である場合には、電荷発生層が表面層である。
【0071】
本発明においては、電荷輸送層が表面層であることが、電子写真特性の点から好ましい。
【0072】
電荷輸送層は、電荷輸送材料とバインダー樹脂とを適当な溶剤を用いて溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。用いられる電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物及びチアゾール系化合物等が挙げられる。バインダー樹脂としては、電荷輸送層が表面層である場合は、本発明のポリアリレート樹脂及びポリカーボネート樹脂が、表面層でない場合は、各種樹脂が挙げられる。電荷輸送材料とバインダー樹脂の割合は、重量比で1:0.5〜1:2であることが好ましい。また、膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、特には15〜30μmであることが好ましい。
【0073】
電荷発生層は、電荷発生材料を0.3〜4倍の重量のバインダー樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル及び液衝突型高速分散機等を使用してよく分散した分散液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。用いられる電荷発生材料としては、セレン−テルル;ピリリウム及びチアピリリウム系染料;及びフタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン系の顔料等が挙げられる。バインダー樹脂としては、電荷発生層が表面層の場合は、本発明のポリアリレート樹脂及びポリカーボネート樹脂が、表面層でない場合は、各種樹脂が挙げられる。また、膜厚は、5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることが好ましい。
【0074】
感光層が単層型の場合は、上述のような電荷発生材料や電荷輸送材料を上述のようなバインダー樹脂に分散及び溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、特には15〜30μmであることが好ましい。
【0075】
保護層は、本願発明のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂及び必要に応じて、有機物または無機物の抵抗制御剤を含有する溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。保護層の膜厚は、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。
【0076】
本発明においては、表面層に酸化防止剤や潤滑剤を添加することもできる。
【0077】
本発明に用いられる支持体は、導電性を有するものであればよく、アルミニウム及びステンレス等の金属、あるいは導電層を設けた金属、紙及びプラスチック等が挙げられ、形状はシート状及び円筒状等が挙げられる。
【0078】
本発明においては、支持体と感光層の間に干渉縞の防止や支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けても良い。かかる導電層は、カーボンブラック、金属粒子及び金属酸化物粒子等の導電性粉体をバインダー樹脂に分散した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることが好ましい。
【0079】
また、本発明においては、支持体と感光層、あるいは導電層と感光層の間に、必要に応じて接着機能及びバリアー機能を有する中間層を設けることができる。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン及びポリエーテルウレタン等が挙げられる。中間層は、これらを適当な溶剤に溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。膜厚は、0.05〜5μmであることが好ましく、特には0.3〜1μmであることが好ましい。
【0080】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0081】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0082】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0083】
像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0084】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0085】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12等の案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0086】
また、画像露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0087】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0088】
【実施例】
以下実施例に従って本発明をより詳細に説明する。実施例中「部」は重量部を表す。
【0089】
(実施例1)
30mmφ×357mmのアルミニウムシリンダー上に、以下の材料より構成される塗料を浸漬コーティング法で塗布し、140℃で30分熱硬化することによって、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0090】
導電性顔料:SnO2 コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール(0.2/0 .8) 20部
【0091】
次に、この導電層上にN−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部及びn−ブタノール30部の混合溶剤に溶解した溶液を浸漬コーティング法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
【0092】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン4部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部及びシクロヘキサノン60部を混合した溶液を1mmφガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。この分散液を中間層上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0093】
次に、電荷輸送層を形成するために、電荷輸送層用の塗料を調製した。
【0094】
前記例示の式(2)−1/式(1)−28=80/20(重量比)からなる共重合体(重量平均分子量Mw≒60,000)5部、ポリアリレート樹脂(ユニチカ(株)製U−100)5部、下記式で示されるトリアリールアミン化合物9部
【0095】
【外25】
【0096】
及び下記式で示されるスチリル化合物1部
【0097】
【外26】
をモノクロロベンゼン50部及びジクロロメタン50部の混合溶剤に溶解した。この溶液を電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃で1時間乾燥することによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0098】
得られた電子写真感光体を次のように評価した。
【0099】
キヤノン(株)製複写機GP−215(ローラ接触帯電方式)にこの感光体を装着した。30℃、85%RH環境において、1枚毎に1回停止する間欠モードでA4で20,000枚の画像出し耐久試験を行い、摩耗量を測定し、また、目視により画像を評価した。摩耗量測定にはフィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープ タイプE111)を用いた。
【0100】
また、耐ソルベントクラック製は感光体表面に皮脂を付着させ、72時間放置した後、顕微鏡観察によりソルベントクラックの有無を確認した。
【0101】
結果を第3表に示す。
【0102】
(実施例2〜11)
電荷輸送層のバインダー樹脂を第3表に示すものに代えた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し評価した。
【0103】
結果を第3表に示す。
【0104】
(比較例1)
電荷輸送層のバインダー樹脂を式(2)−1のみであるビスフェノールA型アリレート樹脂(Mw≒60,000、ユニチカ(株)製U−100)に変えた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0105】
結果を第3表に示す。
【0106】
(比較例2)
電荷輸送層のバインダー樹脂を下記式(A)で示される化合物に代えた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し評価した。
【0107】
結果を第3表に示す。
【0108】
【外27】
【0109】
【表5】
【0110】
(実施例12)
電荷輸送層のバインダー樹脂を式(2)−1/式(1)−1=90/10(重量比)からなる共重合体10部とした以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、評価した。また、キヤノン(株)製複写機GP−55(コロナ帯電方式)にも装着し同様に耐久試験を行った。
【0111】
結果を第4表に示す。
【0112】
(実施例13〜17)
電荷輸送層のバインダー樹脂を第4表に示すものに代えた以外は実施例12と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0113】
結果を第4表に示す。
【0114】
(比較例3及び4)
比較的1及び2で得られた感光体を実施例12と同様にして評価した。
【0115】
結果を第4表に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
(実施例18)
30mmφ×254mmのアルミニウムシリンダー上に、以下の材料より構成される塗料を浸漬コーティング法で塗布し、140℃で30分熱硬化することによって、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0118】
導電性顔料:SnO2 コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール(0.2/0 .8) 20部
【0119】
次に、この導電層上にN−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部及びn−ブタノール30部の混合溶剤に溶解した溶液を浸漬コーティング法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
【0120】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン4部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部及びシクロヘキサノン60部を混合した溶液を1mmφガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。この分散液を中間層上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0121】
次に、電荷輸送層を形成するために、電荷輸送層用の塗料を調製した。
【0122】
前記例示の式(4)−13/式(3)−1=90/10(重量比)からなる共重合体(粘度平均分子量Mv≒40,000)10部、下記式で示されるトリアリールアミン化合物9部
【0123】
【外28】
【0124】
及び下記式で示されるスチリル化合物1部
【0125】
【外29】
をモノクロロベンゼン50部及びジクロロメタン50部の混合溶剤に溶解した。この溶液を電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃で1時間乾燥することによって、膜厚が23μmの電荷輸送層を形成した。
【0126】
得られた電子写真感光体を次のように評価した。
【0127】
ローラ接触帯電手段を有するヒュレットパッカー社製レーザービームプリンター「レーザージェット4プラス」に感光体を装着した。30℃、80%RH環境において、1枚毎に1回停止する間欠モードでA4で3,000枚の画像出し耐久試験を行い、摩耗量を測定し、また、目視により画像を評価した。摩耗量測定にはフィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープ タイプE111)を用いた。
【0128】
また、耐ソルベントクラック性は感光体表面に皮脂を付着させ、36時間放置した後、顕微鏡観察によりソルベントクラックの有無を確認した。
【0129】
結果を第5表に示す。
【0130】
(実施例19〜28)
電荷輸送層のバインダー樹脂を第5表に示すものに代えた以外は実施例18と同様にして感光体を作製し評価した。
【0131】
結果を第5表に示す。
【0132】
(比較例5)
電荷輸送層のバインダー樹脂を式(4)−13のみであるビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(Mv=40000、三菱瓦斯化学製ユーピロンZ)に代えた以外は実施例18と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0133】
結果を第5表に示す。
【0134】
(比較例6)
電荷輸送層のバインダー樹脂を下記式(B)で示される化合物に代えた以外は実施例18と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0135】
結果を第5表に示す。
【0136】
【外30】
【0137】
【表7】
【0138】
(実施例29)
電荷輸送層のバインダー樹脂として式(4)−1/式(3)−28=70/30(重量比)からなる共重合体5部及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂5部の混合物を用いた以外は実施例18と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0139】
結果を第6表に示す。
【0140】
(実施例30〜36)
電荷輸送層のバインダー樹脂を第6表に示すものに代えた以外は実施例29と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0141】
結果を第6表に示す。
【0142】
【表8】
【0143】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、優れた潤滑性、強度及び耐ソルベントクラック性を有し、長寿命で高画質な電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
Claims (13)
- 支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位を有するポリアリレート樹脂またはポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記表面層に含有する樹脂が主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位を有するポリアリレート樹脂である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記ポリアリレート樹脂が有する主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位が下記式(1)
【外1】
(式中、R1乃至R4及びR21乃至R28は同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、R5乃至R20は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X1乃至X4は同一または異なって、置換もしくは無置換のアルキレン基を示し、aは0〜100の整数を示し、b、c、d及びeは同一または異なって、0〜10であり、かつb+c≧2及びd+e≧2である整数を示し、fは1〜10の整数を示す。)
で示される請求項1または2に記載の電子写真感光体。 - 前記式(1)のR1乃至R4及びR21乃至R28が全て水素原子である請求項3に記載の電子写真感光体。
- 前記ポリアリレート樹脂が更に下記式(2)
【外2】
〔式中、R29乃至R40は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X5は単結合、−0−、−S−及び下記式
【外3】
(式中、R41及びR42は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。また、R41とR42は互いに結合することによって式中の炭素原子とともに置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基を形成してもよい。)で示される基を示す。〕
で示される構成単位を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。 - 前記式(2)のR30、R31、R33、R36乃至R39及びR40が全て水素原子である請求項5に記載の電子写真感光体。
- 前記表面層に含有する樹脂が主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位を有するポリカーボネート樹脂である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記ポリカーボネート樹脂が有する主鎖に環状シロキサン構造を有する構成単位が下記式(3)
【外4】
(式中、R43乃至R46及びR63乃至R66は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、R47乃至R62は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X6乃至X9は同一または異なって、置換もしくは無置換のアルキレン基を示し、gは0〜100の整数を示し、h、i、j及びkは同一または異なって、0〜10であり、かつh+i≧2及びj+k≧2である整数を示し、lは1〜10の整数を示す。)
で示される請求項1または7に記載の電子写真感光体。 - 前記式(3)のR43乃至R46及びR63乃至R66が全て水素原子である請求項8に記載の電子写真感光体。
- 前記ポリカーボネート樹脂が更に下記式(4)
【外5】
〔式中、R67乃至R74は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、X10は単結合、−0−、−S−及び下記式
【外6】
(式中、R75及びR76は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。また、R75とR76は互いに結合することによって式中の炭素原子とともに置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基を形成してもよい。)で示される基を示す。〕
で示される構成単位を有する請求項1、7、8及び9のいずれかに記載の電子写真感光体。 - 前記式(4)のR68、R69、R71及びR74の全てが水素原子である請求項10に記載の電子写真感光体。
- 請求項1乃至11のいずれかに記載の電子写真感光体、及び帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくともひとつの手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1乃至11のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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