JP3703312B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは特定の化合物を含有する表面層を有する電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な有機光導電性化合物を有する電子写真感光体の開発が盛んに行われている。例えば、米国特許3837851号明細書にはトリアリルピラゾリンを含有する電荷輸送層を有する感光体、米国特許3871880号明細書にはペリレン顔料の誘導体を含有する電荷発生層と、電荷輸送層とを有する感光体等が記載されている。
【0003】
有機光導電性化合物は、化合物によって感度を有する波長域が異なり、例えば、特開昭61−272754号公報及び特開昭56−167759号公報には可視領域に高い感度を有する化合物が開示されており、また特開昭57−19576号公報及び特開昭61−228453号公報には赤外領域にまで感度を有する化合物が開示されている。これらの材料のうち、赤外領域に感度を示すものは、レーザービームプリンターやLEDプリンターに使用されその需要頻度は高くなってきている。一方、当然のことながら、電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、機械的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。特に繰り返し使用される電子写真感光体の表面には帯電、露光、現像、転写及びクリーニング等の電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。
【0004】
具体的には帯電時に発生するオゾンや窒素酸化物による劣化や、放電やクリーニングによる表面の摩耗や傷といった電気的及び機械的劣化に対する耐久性が求められている。中でも、比較的低い硬度を有するものが多い有機系の感光体の耐久性を向上させるための重要な要因として、感光体表面の潤滑性と用いる樹脂の強度が挙げられる。
【0005】
潤滑性の向上については、特開平5−72753号公報及び特開平6−136108号公報にポリカーボネートの主鎖にシロキサン鎖を共重合させる方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シロキサン構造を主鎖として共重合して潤滑性等を改善しようとすると、その量比により差は生じるものの、ポリカーボネート樹脂本来の機械的強度が低下してしまうことがあった。摩耗性は表面層の強度と潤滑性との関係で決まるので、感光体の耐久性向上のためには、潤滑性の向上と樹脂の強度低下の低減を両立させる必要がある。
【0007】
また、使用前の感光体は、表面が非常に均一であるためクリーニングブレードとの密着性が高い(使用を開始した後は、表面が削れて粗面化されること、あるいはトナーや摩耗粉が存在すること等により、感光体表面とクリーニングブレードの潤滑性がやや改善される)ので、使用初期の潤滑性を高くしておかないと、ブレード反転やブレード鳴き等のトラブルが発生し易い。特に、高湿環境では摩擦係数が高くなるのでこの問題は顕著である。
【0008】
更に、表面層の潤滑性を向上させることは、トナーや紙粉等の付着抑制の効果もあり、表面層の摩耗による短寿命化のみならず、付着物等によって引き起こされる画像不良による短寿命をも防ぐことができる。
【0009】
本発明の目的は、優れた潤滑性及び強度を有し、長寿命で高画質な電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、支持体及び該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の表面層が、
下記式(1)で示されるシロキサンユニットを少なくとも2つ有し、該シロキサンユニット同士が該シロキサンユニット中の下記式(2)で示される2価以上の基を介して−O−Pc−CO−O−鎖(式中、Pcはポリカーボネート鎖を示す。)により結合しているシロキサン化合物
を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0011】
【化7】
Figure 0003703312
{式(1)中、R1、R2、R5及びR6は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示し、R3及びR4は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基及び下記式(2)で示される2価以上の基からなる群より選択される1つの基であり、(SiO)nに結合するR3及びR4のうちの少なくともひとつは下記式(2)で示される2価以上の基であり、m及びnは正の整数を示す。
【0012】
【化8】
Figure 0003703312
(式(2)中、R7乃至R11は同一または異なって、単結合、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示し、R7乃至R11の少なくともひとつは単結合を示す。)}
【0013】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
式(1)及び(2)中、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられ、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
【0015】
上記アルキル基及びアリール基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、フェニル基及びナフチル基等のアリール基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0016】
式(1)中、R1 及びR2 はそれぞれ1分子中に2種以上存在してもよい。つまり、2種以上の
【0017】
【化9】
Figure 0003703312
が1分子中に存在してもよい。
【0018】
また、m及びnは正の整数を示し、m+nが2〜200であることが好ましく、特には10〜100であることが好ましい。2に満たない場合は、十分な潤滑性が得られにくく、200を超えると十分な機械的強度が得られにくくなる。
【0019】
また、式(1)中、ポリカーボネート鎖とはカーボネート結合(−O−CO−O−)により結合されたポリマー鎖であり、好ましくは下記式(3)
【0020】
【化10】
Figure 0003703312
(式中、X1 は単結合、−O−、−S−及び置換もしくは無置換のアルキリデン基を示し、R12乃至R19は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。)
で示される構成単位を有する。
【0021】
式(3)中、単結合とは式中の2つのベンゼン環を直接結合することを示し、アルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基、シクロペンチリデン基及びシクロヘキシリデン基等を示す。また、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基は、式(1)及び(2)のものと同様である。
【0022】
上記アルキリデン基、アルキル基及びアリール基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、フェニル基及びナフチル基等のアリール基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0023】
本発明においては、n個のR3 及びR4 のうちの少なくともひとつが式(2)で示される2価以上の基であるが、潤滑性の点からは該2価以上の基は10個以下であること、即ち、2つのシロキサンユニットを結合するポリカーボネート鎖が10個以下であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるシロキサン化合物(以下、本発明のシロキサン化合物ともいう)は、下記式(4)
【0025】
【化11】
Figure 0003703312
(式中、R20乃至R27は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示し、q個のR23及びR24のうちの少なくともひとつは置換もしくは無置換の水酸基を有するフェニル基を示し、p及びqは正の整数を示す。)
で示されるシロキサン化合物、下記式(5)
【0026】
【化12】
Figure 0003703312
(式中、X2 は単結合、−O−、−S−及び置換もしくは無置換のアルキリデン基を示し、R28乃至R35は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。)
で示されるビスフェノール及びホスゲンを用いて合成される。
【0027】
式(4)及び(5)中、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、単結合、アルキリデン基及びこれらの基が有してもよい置換基は、式(1)、(2)及び(3)のものと同様である。また、式(1)のR1 及びR2 と同様、R21及びR22はそれぞれ1分子中に2種以上存在してもよい。
【0028】
以下に、式(4)で示されるシロキサン化合物及び式(5)で示されるビスフェノールの好ましい具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0029】
【化13】
Figure 0003703312
【0030】
【化14】
Figure 0003703312
【0031】
【化15】
Figure 0003703312
【0032】
【化16】
Figure 0003703312
【0033】
【化17】
Figure 0003703312
【0034】
【化18】
Figure 0003703312
【0035】
【化19】
Figure 0003703312
【0036】
【化20】
Figure 0003703312
【0037】
【化21】
Figure 0003703312
【0038】
【化22】
Figure 0003703312
【0039】
これらの中では、(4−1)、(4−2)、(4−11)、(4−12)、(4−16)、(5−1)、(5−2)及び(5−13)が好ましい。
【0040】
本発明のシロキサン化合物の合成例を以下に示す。
【0041】
(合成例1)
10%水酸化ナトリウム水溶液500mlに、(5−13)で示されるビスフェノール134g(0.5mol)を加えて溶解した。この溶液にジクロロメタン300mlを加え攪拌し、溶液温度を10〜15℃に保ちながら、ホスゲン100gを1時間かけて導入した。ホスゲンを約70%吹き込んだところで(4−1)で示されるシロキサン化合物24.2g(0.015mol)を溶液に加えた。ホスゲンの導入が終了後、激しく攪拌し、0.2mlのトリエチルアミンを加え、1時間攪拌した。その後ジクロロメタン相をリン酸で中和し、更にpH7程度になるまで水洗を繰り返した。続いてこの液相をイソプロパノールに滴下し、沈殿物をろ過、乾燥することによって、白色粉状の重合体(本発明のシロキサン化合物)を得た。
【0042】
得られた重合体を赤外線吸収スペクトルで分析したところ、1750cm-1にカルボニル基による吸収、1240cm-1にエーテル結合による吸収及びカーボネート結合が確認された。また、3650〜3200cm-1の吸収はほとんどなく、水酸基は認められなかった。更に、1100〜1000cm-1のシロキサンに起因するピークも確認された。また、粘度平均分子量(Mv)は約22,000であった。この重合体は以下の構造を有する。
【0043】
【化23】
Figure 0003703312
r=50〜70
【0044】
(合成例2)
(4−1)で示されるシロキサン化合物の代わりに、(4−11)で示されるシロキサン化合物を39.2g(0.015mol)用い、更に分子量制御剤としてt−ブチルフェノールを0.1g用いた以外は、合成例1と同様にして合成し、本発明のシロキサン化合物を得た。
【0045】
化合物が以下の構造を有することを赤外線吸収スペクトルにより確認した。また、粘度平均分子量(Mv)は約25,000であった。
【0046】
【化24】
Figure 0003703312
r1+r2+・・・rx=50〜70
【0047】
本発明のシロキサン化合物の粘度平均分子量(Mv)は、10,000〜200,000であることが好ましく、特には15,000〜100,000であることが好ましい。
【0048】
本発明のシロキサン化合物は、優れた潤滑性及び優れた強度を有するが、より優れた強度を有する樹脂と混合して用いられることが好ましい。混合比は、本発明のシロキサン化合物1重量部に対して他の樹脂が1〜99重量部であることが好ましく、特には2〜30重量部であることが好ましい。
【0049】
本発明のシロキサン化合物は、ひとつのシロキサン鎖がひとつのポリカーボネート鎖と結合している場合(例えば、合成例1)、極めて優れた潤滑性を示すので、他の樹脂を混合する際に用いる量が少なくて済み、樹脂の強度を損なうことがない。また、ひとつのシロキサン鎖が2つ以上のポリカーボネート鎖と結合している場合(例えば、合成例2)、潤滑性の向上に加え、表面移行性が小さいため、混合系で用いても潤滑性が非常に長く持続するという特徴を有する。
【0050】
混合する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂が好ましく、下記式(6)で示される構成単位を有することが好ましい。
【0051】
【化25】
Figure 0003703312
(式中、X3 は単結合、−O−、−S−及び置換もしくは無置換のアルキリデン基を示し、R36乃至R43は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。)
式(6)中、単結合、アルキリデン基、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基は、式(3)のものと同様である。
【0052】
以下に、式(6)で示される構成単位の好ましい具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0053】
【化26】
Figure 0003703312
【0054】
【化27】
Figure 0003703312
【0055】
【化28】
Figure 0003703312
【0056】
【化29】
Figure 0003703312
【0057】
これらの中では、(6−1)、(6−2)及び(6−13)が好ましい。
【0058】
以下、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0059】
本発明の電子写真感光体の表面層は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料とを同一の層に含有する単層型の場合はその層であり、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層と電荷発生材料を含有する電荷発生層とを有する積層型の場合は電荷輸送層である。本発明においては、電子写真特性の点から積層型であることが好ましい。また、本発明においては、表面層が感光層上の保護層であってもよい。保護層は導電性金属酸化物等の導電性粒子を含有してもよい。
【0060】
電荷輸送層は、バインダー樹脂としての本発明のシロキサン化合物及び電荷輸送材料、更に必要に応じて他のバインダー樹脂とを適当な溶剤を用いて溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。用いられる電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物及びチアゾール系化合物等が挙げられる。電荷輸送材料とバインダー樹脂の割合は、重量比で1:0.5〜1:2であることが好ましい。また、膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には15〜30μmであることが好ましい。
【0061】
電荷発生層は電荷発生材料を0.3〜4倍の重量のバインダー樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル及び液衝突型高速分散機等を使用してよく分散した分散液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。本発明に用いられる電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン系の各顔料等が挙げられる。また、膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることが好ましい。
【0062】
感光層が単層型の場合は、上述のような電荷発生材料や電荷輸送材料を上述のようなバインダー樹脂に分散し及び溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には15〜30μmであることが好ましい。
【0063】
本発明においては、表面層に酸化防止剤や潤滑剤を添加することもできる。
【0064】
本発明に用いられる支持体は、導電性を有するものであればよく、アルミニウム及びステンレス等の金属、あるいは導電層を設けた金属、紙及びプラスチック等が挙げられ、形状はシート状及び円筒状等が挙げられる。
【0065】
本発明においては、支持体と感光層の間に、干渉縞の防止や支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けても良い。かかる導電層は、カーボンブラック、金属粒子及び金属酸化物粒子等の導電性粉体をバインダー樹脂に分散した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることが好ましい。
【0066】
また、本発明においては、支持体と感光層、あるいは導電層と感光層の間に、必要に応じて接着機能及びバリアー機能を有する中間層を設けることができる。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン及びポリエーテルウレタン等が挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μmであることが好ましく、特には0.3〜1μmであることが好ましい。
【0067】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0068】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0069】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0070】
像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0071】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0072】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12等の案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0073】
また、画像露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0074】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0075】
以下実施例に従って本発明をより詳細に説明する。実施例中「部」は重量部を表す。
〔実施例1〕
30φ×254mmのアルミニウムシリンダー上に、以下の材料より構成される塗料を浸漬コーティング法で塗布し、140℃で30分熱硬化することによって、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0076】
導電性顔料:SnO2 コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール、メトキシプロパノール0.2/0.8 20部
【0077】
次に、この導電層上に、N−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部及びn−ブタノール30部の混合溶剤に溶解した溶液を浸漬コーティング法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
【0078】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン4部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部及びシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。この分散液を中間層上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0079】
次に、電荷輸送層を形成するために、電荷輸送層用の塗料を調製した。
【0080】
ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ200、三菱瓦斯化学製)7部、合成例1で得られたシロキサン化合物3部、下記式で示されるトリアリールアミン化合物9部
【0081】
【化30】
Figure 0003703312
及び下記式で示されるスチリル化合物1部
【0082】
【化31】
Figure 0003703312
をモノクロロベンゼン50部及びジクロロメタン50部の混合溶剤に溶解した。この溶液を電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃で1時間乾燥することによって、膜厚が23μmの電荷輸送層を形成した。
【0083】
得られた電子写真感光体を、ヒューレットパッカード社製レーザービームプリンター「レーザージェット4プラス」用のカートリッジに装着した。このカートリッジを本体に設置する前に現像器と一次帯電ローラーを取りはずし、感光体駆動部に駆動モーターとトルクメーターを取りつけ、通常のプロセススピード(約94mm/sec)におけるトルク値を測定した。この値が小さい程、感光体のクリーニングブレードに対する潤滑性が高いことを示す。
【0084】
その後、カートリッジを元の状態に戻し、本体に装着して32℃、85%RH環境でA4のハーフトーン画像で3,000枚の画像出し耐久試験を行い、削れ量を測定し、また、目視により3,000枚後の画像を評価した。削れ量測定にはフィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープ タイプE111)を用いた。
【0085】
更に、耐久後の感光体についても、初期と同様にしてトルク値を測定した。
【0086】
結果を表1に示す。
【0087】
〔実施例2〕
ブレンドするポリカーボネート樹脂の量を9.5部とし、本発明のシロキサン化合物の量を0.5部とした以外は、実施例1と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0088】
結果を表1に示す。
【0089】
〔実施例3〜7〕
本発明のシロキサン化合物及びブレンドするバインダー樹脂を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0090】
なお、本発明のシロキサン化合物の合成は合成例1と同様にして行った。
【0091】
結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例8〕
ブレンドするポリカーボネート樹脂を用いず、本発明のシロキサン化合物のみを10部用いた以外は、実施例3と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0093】
結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例9〕
本発明のシロキサン化合物として合成例2で得られたシロキサン化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0095】
結果を表1に示す。
【0096】
〔実施例10〜14〕
本発明のシロキサン化合物及びブレンドするバインダー樹脂を表1に示すものとした以外は、実施例9と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0097】
なお、本発明のシロキサン化合物の合成は合成例2と同様にして行った。
【0098】
結果を表1に示す。
【0099】
〔実施例15〕
ブレンドするポリカーボネート樹脂の量を9部とし、本発明のシロキサン化合物の量を1部とした以外は、実施例14と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0100】
結果を表1に示す。
【0101】
〔実施例16〕
ブレンドするポリカーボネート樹脂を用いず、本発明のシロキサン化合物のみを10部用いた以外は、実施例12と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0102】
結果を表1に示す。
【0103】
〔実施例17〕
本発明のシロキサン化合物を(4−19)で示されるシロキサン化合物及び(5−16)で示されるビスフェノールを用いて合成したものとした以外は、実施例16と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0104】
結果を表1に示す。
【0105】
〔実施例18及び19〕
本発明のシロキサン化合物及びブレンドするバインダー樹脂を表1に示すものとした以外は、実施例9と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0106】
なお、本発明のシロキサン化合物の合成は合成例2と同様にして行った。
【0107】
結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
Figure 0003703312
【0109】
〔比較例1〕
本発明のシロキサン化合物を用いず、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂のみを10部用いた以外は、実施例1と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0110】
結果を表2に示す。
【0111】
〔比較例2〕
本発明のシロキサン化合物の代わりに下記式(A)に示される構造を有する直鎖状のシロキサン系ポリカーボネート共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0112】
結果を表2に示す。
【0113】
【化32】
Figure 0003703312
s/t=0.8/0.2、Mv≒30,000
【0114】
〔比較例3〕
直鎖状のシロキサン系ポリカーボネート共重合体の量を5部とし、ブレンドするポリカーボネート樹脂の量を5部とした以外は、比較例2と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0115】
結果を表2に示す。
【0116】
〔比較例4〕
ブレンドするポリカーボネート樹脂を用いず、直鎖状のシロキサン系ポリカーボネート共重合体のみを10部用いた以外は、比較例2と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0117】
結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
Figure 0003703312
【0119】
【発明の効果】
以上の説明のように、本発明によれば、潤滑性を向上させることができた。更に、従来は、表面層の潤滑性を向上させるために多くの潤滑成分(例えばシロキサン鎖)を含有させなければならなかったため、樹脂本来の強度を低下させていたが、本発明では少量の使用でも高い潤滑性が得られるため、樹脂強度の低下を抑制できる。これにより、高い潤滑性と優れた耐摩耗性を持った表面層が可能となった。また、繰り返し使用において感光体の表面層が摩耗した場合でも、潤滑性が低下しにくいため、クリーニングブレードの反転や、摩擦係数の増加を長期に渡り抑制することができる。これらのことから、良好な画像が得られ長寿命な電子写真感光体、及び該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。

Claims (7)

  1. 支持体及び該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
    該電子写真感光体の表面層が、
    下記式(1)で示されるシロキサンユニットを少なくとも2つ有し、該シロキサンユニット同士が該シロキサンユニット中の下記式(2)で示される2価以上の基を介して−O−Pc−CO−O−鎖(式中、Pcはポリカーボネート鎖を示す。)により結合しているシロキサン化合物
    を含有することを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0003703312
    {式(1)中、R1、R2、R5及びR6は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示し、R3及びR4は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基及び下記式(2)で示される2価以上の基からなる群より選択される1つの基であり、(SiO)nに結合するR3及びR4のうちの少なくともひとつは下記式(2)で示される2価以上の基であり、m及びnは正の整数を示す。
    Figure 0003703312
    (式(2)中、R7乃至R11は同一または異なって、単結合、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示し、R7乃至R11の少なくともひとつは単結合を示す。)}
  2. 前記ポリカーボネート鎖が下記式(3)で示される構成単位を有する請求項1記載の電子写真感光体。
    Figure 0003703312
    (式(3)中、X 1 は単結合、−O−、−S−及び置換もしくは無置換のアルキリデン基からなる群より選択される1つの基を示し、R 12 乃至R 19 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示す。)
  3. 前記シロキサン化合物が下記式(4)で示されるシロキサン化合物、下記式(5)で示されるビスフェノール及びホスゲンを用いて合成されたものである請求項1または2記載の電子写真感光体。
    Figure 0003703312
    (式(4)中、R 20 乃至R 27 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示し、q個のR 23 及びR 24 のうちの少なくともひとつは置換もしくは無置換の水酸基を有するフェニル基を示し、p及びqは正の整数を示す。)
    Figure 0003703312
    (式(5)中、X 2 は単結合、−O−、−S−及び置換もしくは無置換のアルキリデン基からなる群より選択される1つの基を示し、R 28 乃至R 35 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示す。)
  4. 前記表面層が更にポリカーボネート樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記ポリカーボネート樹脂が下記式(6)で示される構成単位を有する請求項4記載の電子写真感光体。
    Figure 0003703312
    (式(6)中、X 3 は単結合、−O−、−S−及び置換もしくは無置換のアルキリデン基からなる群より選択される1つの基を示し、R 36 乃至R 43 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基からなる群より選択される1つの基を示す。)
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくともひとつの手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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