JP3740543B2 - 耐火物用バインダー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐火物用バインダーに関する。更に詳しくは鉄鋼用として高炉や転炉などの溶炉、溶銑や溶鋼輸送設備、溶銑予備処理炉、還元溶解炉、連続鋳造設備などに使用される不定形耐火物例えば出銑口充填材、目地材、焼き付き材や吹き付け材等の熱間補修材など、及び定形耐火物例えばスライディングノズル、スライディングゲート、炉底レンガ、炉壁レンガなどの不焼成耐火物、焼成耐火物のバインダー、また非鉄用としてアルミニュウム、銅などの溶解炉、ルツボ、取べ、浸漬管などの不定形耐火物及び定形耐火物用バインダーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記の如き分野に使用される耐火物用バインダーとしては、タール、ピッチやフェノール樹脂が広く使用されている。
【0003】
タール、ピッチは安価であり、熱処理過程で得られるカーボンが結合剤として作用し、残存するカーボンはソフトカーボン(易黒鉛化カーボン)であるため、溶銑及び溶融スラグに濡れがたく、耐食性に優れ、又熱衝撃による耐スポーリング性にも効果がある。
【0004】
しかし、タール、ピッチは沸点200〜500°Cの揮発成分を含有する熱可塑性化合物であるため、100〜500°Cの低温温度域の強度発現がえられず、800°C以上の焼成後の熱間強度も小さい欠点がある。例えば、出銑口充填材ではマッドガン開放後の強度が十分でなく(早期焼結性が得られない)、発煙、生吹きなどの問題を多発しやすく、熱間補修材では100〜500°Cで鉄皮又はレンガ面への接着強度が低く、補修効果が小さい。また、不焼成耐火物では圧縮成型後の素地強度、乾燥強度が小さく、低温での角カケ、ワレ、熱変形を生じ易い。
【0005】
また、タール、ピッチに代わるバインダーとしてフェノール樹脂が使用されている。フェノール樹脂はタール、ピッチと異なり、熱硬化性樹脂であり、100〜600°Cの低温温度域の強度発現が得られ、残存するカーボンはガラス状のハードカーボン(難黒鉛化カーボン)であり、残留炭素量も高く、800°C以上の焼成後の熱間強度も高く、溶銑及び溶融スラグに濡れがたく耐食性に優れる。また、不焼成耐火物では圧縮成型後の素地強度、乾燥強度が大きく、角カケ、ワレ、熱変形を生じず、不焼成化が可能である。しかし、フェノール樹脂はタール、ピッチに比較して著しく高価であり、熱衝撃による耐スポーリング性や高温流動性に劣ることが指摘されている。
【0006】
このために、近年、これらの耐火物の早期焼結性、熱間強度、耐食性および耐スポーリング性の向上のため、ピッチ類とフェノール樹脂を併用することが多用されるようになっている。例えば、フェノール樹脂に、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテル結合を有する液状化合物を添加し変性したタール、ピッチ類を相溶させたバインダー(特開昭56−323667公報)や、フェノール樹脂、精製ピッチ、高沸点フェノール類の三成分からなる耐火物バインダー(特開昭60−246256公報)が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
周知の通り、タール、ピッチ類は非極性の化合物であり、一方、フェノール樹脂は極性の化合物であるため、提案されたいずれの方法においても、タール、ピッチ類とフェノール樹脂の充分な相溶性が得られがたく、耐火物に早期焼結性、高温流動性、満足する優れた熱間強度、耐食性および耐スポーリング性が得られがたい。このため、ピッチ系のものとフェノール樹脂系のものとを混合して相溶させることによる両者の優れた長所を兼ね備えた耐火物用バインダーの開発がのぞまれている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、斯かる現状に鑑み、ピッチ系とフェノール樹脂系の上記用途に使用されるバインダーの難点を解消するため研究を続けて来た。この結果特定の、フェノール樹脂、ケトン化合物及びピッチ類から成る組成物が、耐火物用バインダーとして、耐火原料に配合し、混合・混練することにより、従来の耐火物の問題点を解消しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
【発明の構成】
本発明は、50℃の粘度が3000〜200000CPSであるベンジリックエーテル型熱硬化型フェノール樹脂と融点45〜75℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂の組み合わせからなるフェノール樹脂、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサンの少なくとも1種からなるケトン化合物、及びピッチ類を含有してなる耐火物用バインダーに係るものである。
【0010】
本発明に用いるフェノール樹脂はフェノール、クレゾール、キシレノール、粗製タール酸などのフェノール類とホルムアルデヒドとを反応させて得られるノボラック型熱可塑性フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂が使用され、更に詳しくはベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂とノボラック型熱可塑性フェノール樹脂の組み合わせからなるフェノール樹脂がピッチ類との相溶性に優れるために使用される。
【0011】
ベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂は、例えばフェノール類1モルとホルムアルデヒド1〜3好ましくは1.2〜2.0モルの条件下で、フェノール類とホルムアルデヒドとを二価金属の酸化物、水酸化物、酢酸塩、硼酸塩、炭酸塩などの適宜な触媒の存在下で縮合反応し、130°C程度以下の温度で減圧脱水してえられる。ベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂は粘稠状ないし半固形状で50°Cの粘度が3000〜200000cpsであり、その赤外線吸収スペクトルは1060cm−1にベンジリックエーテル結合に基づく強い特性吸収を示すものであり、130°C以下では熱硬化しない樹脂である。
【0012】
またノボラック型熱可塑性フェノール樹脂は公知のものが使用され、混練時の混和性、ピッチ類との相溶性の点から融点45〜70°Cのものが好ましい。
【0013】
本発明に用いるケトン化合物は、沸点150〜350°Cのジアセトンアルコール又は/及びシクロヘキサノンが混練時の安全性、高温安定性、高温流動性、ピッチ類との相溶性の点から使用される。本発明に於いて、フェノール樹脂とケトン化合物との割合は特に限定されないが、ピッチ類との相溶性の点でフェノール樹脂とケトン化合物の割合(重量)は90:10〜20:80、特に80:20〜30:70が好ましい。ケトン化合物の含有量が10%重量未満ではピッチ類との相溶性に劣り、耐食性及び耐スポーリング性が低下する。逆にケトン化合物の含有量が80%重量を越えると、早期焼結性や満足する熱間強度、耐食性が低下する。
【0014】
本発明に用いるピッチ類は公知の石油系、石炭系、木炭系のタールまたはピッチであり、更に詳しくは公知のコールタール、アスファルト、木タール、軟ピッチ(軟化点70°C以下のピッチ)中ピッチ(軟化点70〜85°Cのピッチ)、高ピッチ(軟化点85°C以上のピッチ)であり、また精製ピッチ(キノリン不溶分除去ピッチ)、高温処理ピッチ(メソフェイスピッチ、アモルファスピッチなど)が例示でき、液状、塊状、粉末状、粒状で用いることができる。
【0015】
本発明に於けるピッチ類の使用割合は特に限定されないが、フェノール樹脂とピッチ類の割合(重量)は90:5〜10:90、特に90:10〜30:70が好ましい。ピッチ類の含有量が5%未満では高温流動性および耐スポーリング性が低下する。ピッチ類の含有量が90%を超えると早期焼結性、熱間強度が低下する。
【0016】
更に本発明に於いてはアルミナ、シリカ、ジルコニヤ、マグネシヤ微粉や黒鉛微粉等を添加することにより、耐食性、耐熱性や耐スポーリング性を向上させることが出来る。
【0017】
本発明のバインダーはフェノール樹脂、ケトン化合物及びピッチ類を含有するものであるが、その製造方法は特に限定されない。
【0018】
その代表的な好ましい製造方法の一例は、先ずフェノール樹脂とケトン化合物を混合して溶液となし、この溶液にピッチ類を添加する方法、或いはフェノール樹脂にケトン化合物とピッチ類とを同時に添加する方法を例示出来る。
【0019】
また更に本発明に於いては、フェノール樹脂の製造中又は製造後いずれに於いても、ケトン化合物、又はこれとピッチ類とを添加することも出来る。
【0020】
バインダーの粘性は使用用途により適宜調整すればよいが、混練設備、混練温度、混練作業などから50〜70000cps/30°Cの粘度が好ましい。
【0021】
また、本発明のバインダーに必要に応じてヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)等を硬化剤として添加して用いることが出来る。更に、本発明のバインダーの粘性調整剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールやポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加して用いることが出来る。
【0022】
本発明で使用される耐火原料はアルミナ、マグネシア、ジルコン、シャモット、炭化珪素、天然黒鉛、人造黒鉛、憐状黒鉛、コークス、無煙炭、などの耐火原料の1種以上の組み合わせで使用出来、さらに必要に応じて公知のAl、Si、Al−Mgなどの金属粉、SiC、Si3N4などの炭化物または窒化物、金属ファイバー、セラミックファイバー、カーボンファイバーなどのファイバー類を添加することができる。
【0023】
本発明のバインダーを使用するに際しては、該バインダーを耐火原料100重量部に1〜25重量部の割合で添加混合し、従来の方法で製造、製品にすることができる。この混練物は不定形耐火物ではスラリー状、ペースト状、パテ状、マッド状であり、不焼成耐火物では湿潤性のあるハイ土である。
【0024】
不定形耐火物ではこの混練物を高炉や転炉などの溶炉及び溶銑、溶鋼輸送設備に、出銑口充填材、目地材、焼き付き材や吹き付け材の熱間補修材などの不定形耐火物として使用することが出来、更に、不焼成耐火物ではこの混練物を耐火物の用途、製造設備などにあわせてフレクションプレス、オイルプレス、ラバープレスなどを用いて成型し、必要に応じて例えば110〜700°Cで加熱して使用することが出来る。また、1000°C以上で加熱する熱間補修材に使用しても効果を発揮する。
【0025】
また、本発明は、耐火物の混合・混練に際して、耐火物原料に予め、ピッチ類を添加し、フェノール樹脂とケトン化合物とからなる樹脂溶液とを別々に添加することも包含される。また、本発明のバインダーには更に公知の固形状あるいは粉末状のフェノール樹脂を添加して用いることも出来る。
【0026】
【実施例】
以下に参考例、実施例、対照例を示して本発明を具体的に説明する。但しこれ等の例に於いて、部とあるはいずれも重量部を示す。
【0027】
【参考例1】
フェノール1モルとホルムアルデヒド1.9モルに、酢酸亜鉛0.90重量%(フェノールに対する百分率)を加えて加熱して、250分間還流反応させた後、減圧下に130℃以下の温度で脱水して、ベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂BEP(粘度20000cps/50℃)を得た。このBEP50部、ジアセトンアルコール50部及び軟化点75℃のピッチ30部を100℃で加熱溶解し、粘度3300cps/30℃のバインダーAを得た。
【0028】
【対照例1】
表1に示す耐火骨材に上記バインダーA20部を加えて混練して、転炉炉底の熱間補修材を得た。該熱間補修材は適度な粘着性、流動性を有し、これを使用した場合は高温流動性に優れ、硬化時間20分以内という短時間で硬化し、耐食性は良好であった。表1に従来品の特性と比較して示した。
【0029】
【参考例2】
融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂50部、ジアセトンアルコール20部、シクロヘキサノン30部及び軟化点65℃のピッチ15部を100℃で加熱溶解し、粘度1800cps/30℃のバインダーBを得た。
【0030】
【対照例2】
表1に示す耐火骨材に上記バインダーB20部を加えて混練して、転炉炉底の熱間補修材を得た。この熱間補修材の特性を表1に示した。
【0031】
【参考例3】
参考例1のBEP15部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂35部、シクロヘキサノン20部、エチレングリコール30部及び軟化点75℃のピッチ60部を100℃で加熱溶解し、粘度6500cps/30℃のバインダーCを得た。
【0032】
【実施例1】
表1に示す耐火骨材に上記バインダーC20部を加えて混練して、転炉炉底の熱間補修材を得た。この熱間補修材の特性を表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
但し表1の従来品1のバインダーは融点80℃のノボラック型フェノール樹脂45重量%、ジエチレングリコール55重量%を100℃で加熱溶解した粘度4500cps/30℃のフェノール樹脂溶液である。
又従来品2は軟化点75℃のピッチ30部及びタール100部からなるものである。
【0035】
【参考例4】
実施例1のBEP70部、ジアセトンアルコール30部及び軟化点75℃のピッチ15部を100℃で加熱溶解し、粘度35000cps/30℃のバインダーDを得た。
【0036】
【実施例2】
表2に示す耐火骨材に上記バインダーD8部を加えて加熱混練し、湿潤性のあるハイ土を得た。このハイ土を所定の型枠に投入し、1000kg/cm2の圧力で成形し、しかるのちに250℃で48時間加熱処理を施し、スライディングノズルを得た。このスライディングノズルを実機で使用したところ、熱衝撃による耐スポーリング性にも効果があり、耐食性も良好であった。表2に従来品の特性と比較して示した。
【0037】
【参考例5】
参考例1のBEP20部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂20部、シクロヘキサノン50部及び軟化点65℃のピッチ60部を100℃で加熱溶解し、粘度2000cps/30℃のバインダーEを得た。
【0038】
【実施例3】
表2に示す耐火骨材に上記バインダーE8部を加えて混練して、実施例2と同様に成形してスライディングノズルを得た。このスライディングノズルの特性を表2に示した。
【0039】
【参考例6】
参考例1のBEP10部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂40部、シクロヘキサノン40部、エチレングリコール10部及び軟化点75℃のピッチ60部を100℃で加熱溶解し、粘度5000cps/30℃のバインダーFを得た。
【0040】
【実施例4】
表2に示す耐火骨材に上記バインダーF8部を加えて混練し、実施例2と同様に成形してスライディングノズルを得た。このスライディングノズルの特性を表2に示した。
【0041】
【参考例7】
参考施例1のBEP35部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂15部、ジアセトンアルコール20部、シクロヘキサノン30部及び軟化点75℃のピッチ30部を100℃で加熱溶解し、粘度2800cps/30℃のバインダーGを得た。
【0042】
【実施例5】
表2に示す耐火骨材に上記バインダーG8部を加えて混練し、実施例2と同様に成形してスライディングノズルを得た。このスライディングノズルの特性を表2に示した。
【0043】
【表2】
【0044】
従来のバインダーを使用した従来品3及び4に比べて、実施例2〜5のスライディングノズルは熱間曲げ強度、耐スポーリング性及び耐食性が著しく優れていることがわかる。
【0045】
【発明の効果】
50℃の粘度が3000〜200000CPSのベンジリック型熱硬化性フェノール樹脂と融点45〜70℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂の組み合せから成るフェノール樹脂、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサノンの少なくとも1種からなるケトン化合物、及びピッチ類を含有してなる本発明のバインダーを耐火原料に配合することにより、鉄鋼用として高炉や転炉などの溶炉及び溶銑、溶鋼輸送設備、溶銑予備処理炉、還元溶解炉、連続鋳造設備などに使用される不定形耐火物即ち出銑口充填材、目地材、焼付き材や吹き付け材の熱間補修材など、及び定形耐火物即ちスライディングノズル、スライディングゲート、炉底レンガ、炉壁レンガなどの不焼成耐火物、焼成耐火物のバインダー、また非鉄用としてアルミニュウム、銅などの溶解炉、ルツボ、取べ、浸漬管などの不定形耐火物などに優れた早期焼結性、高温流動性、熱間強度、耐食性及び耐スポーリング性を付与することができる。
Claims (2)
- 50℃の粘度が3000〜200000CPSであるベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂と融点45〜75℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂の組み合わせからなるフェノール樹脂、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサノンの少なくとも1種からなるケトン化合物、及びピッチ類を含有してなる耐火物用バインダー。
- フェノール樹脂とケトン化合物の割合(重量)が、前者:後者=90:10〜20:80であり、フェノール樹脂とピッチ類との割合(重量)が、前者:後者=90:5〜10:90である請求項1に記載の耐火物用バインダー。
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