JP4371637B2 - 耐火物用バインダー及びそれを使用した耐火物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐火物用バインダー及びそれを使用した耐火物に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素は、スラグ等の溶融物に濡れにくい性質を有していることから、炭素含有耐火物は優れた耐用性を有している。そのため炭素含有耐火物は、近年、各種の溶融金属用容器の内張り耐火物、連続鋳造用ノズル、スライディングノズル、樋材、目地材、熱間補修材、マッド材等として広く使用されている。これらの耐火物はマグネシア−カーボン系、アルミナ−カーボン系、アルミナ−炭化ケイ素−カーボン系などの各種炭素含有耐火骨材に、バインダーとしてタール・ピッチ、フェノール樹脂等の有機樹脂が配合され、混合、混練され、必要に応じて所定形状に成形され、定形耐火物や不定形耐火物として利用されている。
【0003】
しかしながら、炭素含有耐火物の使用が拡大するに従って、耐火物中の炭素の溶鋼への溶出、いわゆるカーボンピックアップが問題となってきている。特に、近年では鋼の高品質化の要求が一段ときびしく、より炭素含有量の少ない耐火物への要求が高まってきている。
【0004】
しかし、より炭素含有量の少ない耐火物は、炭素やバインダーとして有機樹脂を使用しているため、▲1▼酸化されやすい、▲2▼耐火骨材同士の焼結が生じやすい、▲3▼耐スポーリング性に劣るという欠点があった。
【0005】
このために、特開平11−322405号公報には、耐火性原料と炭素質原料とを含む原料配合物において、該原料配合物の熱間残留分100重量%に対して、炭素質原料の固定炭素分が0.2〜5重量%であって、炭素質原料の少なくとも一部にカーボンブラックを使用したことを特徴とする低カーボン質の炭素含有耐火物が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11−322405号公報には、炭素質原料としてカーボンブラックを使用する例が開示されているが、耐酸化性、耐食性、耐スポーリング性いずれも十分な特性は得られなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はかかる現状に鑑み、各種の溶融金属用容器に使用する、より炭素含有量の少ない内張り耐火物、連続鋳造用ノズル、スライディングノズル、樋材、目地材、熱間補修材、マッド材等に関し、耐酸化性、耐食性及び耐スポーリング性に優れる耐火物を開発すべく研究を重ねてきた。その結果、カーボンブラックを加熱、黒鉛化して得られるグラファイト粒子を有機樹脂中に分散させてなる組成物、またはカーボンブラックと、金属、ホウ素、ケイ素から選ばれる1種または2種以上の元素の単体または該元素を含有する化合物とを加熱して得られるグラファイト粒子、いわば「複合グラファイト粒子」を有機樹脂中に分散させてなる組成物を耐火物用バインダーとして、耐火骨材に添加し、混合、混練し、必要に応じて成形することにより、従来の耐火物の問題点を解消しうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明はカーボンブラックを加熱、黒鉛化して得られるグラファイト粒子を有機樹脂中に分散させてなる組成物、またはカーボンブラックと、金属、ホウ素、ケイ素から選ばれる1種または2種以上の元素の単体または該元素を含有する化合物とを加熱して得られるグラファイト粒子、いわば「複合グラファイト粒子」を有機樹脂中に分散させてなる組成物を耐火物用バインダーとして提供することを目的としている。
【0009】
本発明において使用する、カーボンブラックを加熱、黒鉛化して得られるグラファイト粒子は、平均粒子径5〜500nm、好ましくは10〜200nmである。このような微細なグラファイト粒子を有機樹脂中に分散させることにより、安定で均一なバインダーが得られ、一般的な炭素含有耐火物だけでなく、より炭素含有量の少ない耐火物に使用することにより、グラファイト粒子、特に前述した複合グラファイト粒子のもつ耐酸化特性が効果的に発揮され、また耐食性、耐スポーリング性についても優れた特性を有する耐火物が得られる。
【0010】
グラファイト粒子の平均粒子径が500nmを超える場合は、有機樹脂中に分散させた時、不安定な不均一なバインダーとなり、5nm未満の場合には、分散しにくく、取り扱いが困難となり好ましくない。ここでいう平均粒子径とは、グラファイト粒子の一次粒子の数平均粒子径をいう。従って、例えば複数の一次粒子が会合した構造を有する粒子の場合には、それを構成する一次粒子が複数含まれているとして算出される。かかる粒子径は電子顕微鏡観察によって計測が可能である。
【0011】
上記の複合グラファイト粒子においては、グラファイト粒子自体の酸化開始温度がさらに高くなり、耐酸化性が改善され、ひいてはこの複合グラファイト粒子を有機樹脂中に分散させた組成物を炭素含有耐火物用バインダーとして使用すると、耐火物の耐酸化性、耐食性、耐スポーリング性がさらに改善される。特に、耐スポーリング性については、複合グラファイト粒子を使用することにより、耐火物の耐熱的スポーリング性のみならず、耐構造的スポーリング性をも向上させることができる。
【0012】
本発明において、グラファイト粒子の出発原料であるカーボンブラックは特に限定されるものではないが、直径が200nm以下の一次粒子からなるカーボンブラックが好ましく使用される。具体的にはファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのいずれをも用いることが可能である。
【0013】
カーボンブラックで好適なものとして、ファースト・エクストルーディング・ファーネスブラック(FEF)、スーパー・アブレーション・ファーネスブラック(SAF)、ハイ・アブレーション・ファーネスブラック(HAF)、ファイン・サーマルブラック(FT)、ミディアム・サーマルブラック(MT)、セミ・レインフォーシング・ファーネスブラック(SRF)、ジェネラル・パーパス・ファーネスブラック(GPF)等のカーボンブラックがあげられる。これらを単独で、あるいは複数種を配合して使用可能である。
【0014】
カーボンブラックを加熱、黒鉛化(グラファイト化)する方法は特に限定されるものではないが、不活性雰囲気下において高温(通常2000℃以上)で加熱して黒鉛化することができる。また、カーボンブラックを誘導炉中で誘導加熱して黒鉛化することも可能である。かかる誘導加熱を採用することで、通常の加熱方法では極めて高温での処理を要する黒鉛化を容易に進行させることができ、経済的である。
【0015】
カーボンブラックが黒鉛化されることで、X線回折測定において、グラファイトの002回折線は広角側にシフトするが、本発明において、グラファイトの格子間距離dが3.47Å以下が好適である。格子間距離dが3.47Åを超える場合は、黒鉛化が不十分であり、本発明に用いた場合、耐火物の耐酸化性、耐食性、耐スポーリング性が不十分となる。
【0016】
本発明において、複合グラファイト粒子は、カーボンブラックと、金属、ホウ素、ケイ素から選ばれる1種または2種以上の元素の単体または該元素を含有する化合物を加熱して得られるが、金属、ホウ素、ケイ素から選ばれる元素の具体例として、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ホウ素およびケイ素の各元素があげられ、これらの元素を含有する化合物としては、これらの元素の酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物および金属アルコラートが例示できる。なかでも、耐火物の耐酸化性および耐食性の改善のために好ましいものとして、チタン、ホウ素及およびケイ素があげられる。
【0017】
複合グラファイト粒子中での各元素の存在形態は特に限定されるものではなく、粒子内部に含有されていても良いし、粒子表面を覆うような形で含まれていても良い。また、各元素は、その酸化物、窒化物、ホウ化物あるいは炭化物として含まれることができる。
【0018】
本発明において、グラファイト粒子を分散させる有機樹脂としては、タール・ピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂等が例示できる。耐火骨材との濡れ性や高残炭性および熱間強度の点からフェノール樹脂がより好適である。
【0019】
フェノール樹脂はフェノール、クレゾール、キシレノール、粗製タール酸などのフェノール類とホルムアルデヒドとを反応させて得られるノボラック型熱可塑性フェノール樹脂、レゾール型熱硬化性フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂が単独または組み合わせて使用できる。特に、ベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂、またはベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂とノボラック型熱可塑性フェノール樹脂の組み合わせからなるフェノール樹脂が加熱混合での安定性に優れるので好適である。ベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂は粘ちょう状ないしは半固形状樹脂で、50℃の粘度が3000〜200000cpsであり、その赤外吸収スペクトルは1060cm−1にベンジリックエーテル結合に基づく強い特性吸収を示すものであり、130℃以下では熱硬化しない樹脂である。
【0020】
本発明において使用する有機樹脂は、フェノール樹脂と溶剤とからなるフェノール樹脂溶液として用いることができる。溶剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール、カルビトール、メチルカルビトール、ジエチルカルビトール、メチルエチルカルビトールなどのカルビトール誘導体、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン化合物の1種または2種以上で用いることができる。フェノール樹脂と溶剤との割合は特に限定されないが、耐火物の耐食性の点で、重量割合でフェノール樹脂:溶剤の比が75:25〜40:60の範囲が好ましい。
【0021】
本発明において使用する有機樹脂とグラファイト粒子との使用割合は特に限定されないが、有機樹脂100重量部に対して、グラファイト粒子0.5〜25.0重量部が好ましい。グラファイト粒子が0.5重量部未満では十分な耐酸化性が得られず、25重量部を超えると耐火物用バインダーの粘性が高くなりすぎて、耐火骨材との濡れ性が悪くなる問題がある。
【0022】
本発明において、耐火物用バインダーの粘性は、その使用用途により適宜調整すれば良いが、混練設備、混練温度、混練作業を考慮すると100〜50000cps/30℃の範囲の粘性が好ましい。本発明の耐火物用バインダーには、必要に応じてヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)などの硬化剤を添加して用いることができる。
【0023】
また、本発明において使用する有機樹脂とグラファイト粒子からなる組成物にさらに公知のカーボンブラックを加えた耐火物用バインダーを使用することにより、耐火物の耐スポーリング性を向上させることができる。この場合のカーボンブラックの添加量は、有機樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部が好適である。カーボンブラックがDBP吸油量が80ml/100g以上である場合が特に好ましく、耐火物の耐酸化性、耐食性を維持しながら、耐スポーリング性をさらに向上させることができる。
【0024】
本発明の耐火物用バインダーを用いる場合、このバインダーを炭素を含有する耐火骨材100重量部に1〜25重量部の割合で添加、混練する。この混練物は不定形耐火物においてはスラリー状、ペースト状、マッド状であり、定形耐火物においては湿潤性のある粉末状原料の集合体、通常ハイ土と称されるものである。不定形耐火物ではこの混練物を内張り流し込み材、樋材、目地材、補修材、マッド材等の不定形耐火物として使用することができる。さらに、各種溶融金属用容器の内張り耐火物、連続鋳造用ノズル、スライディングノズルなどの定形耐火物ではこの混練物を用途に合わせて、フリクションプレス、オイルプレス、ラバープレスなどを用いて成形し、不焼成あるいは焼成耐火物として使用する。
【0025】
本発明の耐火物用バインダーを使用する炭素含有耐火物は炭素質原料として天然黒鉛、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭、カーボンブラック、ピッチ、コークス等を使用できる。炭素質以外の耐火骨材としてはアルミナ、マグネシア、スピネル、ジルコン、シャモット、珪石および炭化ケイ素などの耐火骨材を1種以上の組み合わせで使用できる。さらに、必要に応じて公知のAl、Al−Mg、Siなどの粉末を添加することができる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。但し、部とあるのは重量部を表す。
【0027】
合成例1:グラファイト粒子aの製造
カーボンブラック原料として、ファースト・エクストルーディング・ファーネスブラック(FEF)である新日化カーボン(株)製「ニテロン#10改」を使用した。これをカーボン炉中で、アルゴンガス雰囲気下、2100℃で3時間加熱処理して黒鉛化させた。得られた粒子のX線回折測定を行ったところ、グラファイト粒子が生成していることが判明した。グラファイトの格子間距離は3.40Åであり、平均粒子径は38nmであった。
【0028】
合成例2:グラファイト粒子bの製造
カーボンブラック原料として、ファイン・サーマル(FT)である新日化カーボン(株)製「HTC#20」を使用した。これを直径60mm、高さ30mm、肉厚1mmのカーボン製ルツボに充填した。直径8.2mmの銅製パイプを外径225mm、高さ50mmに3重巻きしたコイルを作製し、コイル内に外径190mm、内径110mm、高さ110mmの窒化ケイ素製ルツボを設置し、上記試料を充填したカーボン製ルツボを装入した。試料設置後、高周波発生装置からコイルに70kHz、12kWの高周波を9分間印加した。この間の温度変化を試料粉体中に差し込んだ熱電対で測定したところ、最高温度は1850℃であった。得られた粒子のX線回折測定を行ったところ、グラファイト粒子が生成していることが判明した。グラファイトの格子間距離は3.40Åであり、平均粒子径は70nmであった。
【0029】
合成例3:グラファイト粒子cの製造
カーボンブラック「ニテロン#10改」とホウ素粉末とを、炭素元素とホウ素のモル比が10:4となるように混合し、シリカ製ルツボに入れ、ルツボ上面にグラファイトシートを載せて、その両端に電極を接続した。電極に通電しグラファイトシートを発熱させ、上記混合物に着火させ、炭化物が生成する際の反応熱を利用した自己燃焼合成法によってグラファイト粒子cを得た。得られた粒子のX線回折測定を行ったところ、グラファイト粒子が生成していることが判明した。グラファイトの格子間距離は3.38Åであり、平均粒子径は40nmであった。また、B4Cの021回折線に由来する2θ=37.8°のピークも認められた。図1に当該X線回折チャートを示す。
【0030】
合成例4:グラファイト粒子dの製造
カーボンブラック「HTC#20」とチタン粉末とを、炭素元素とチタン元素のモル比が10:1となるように混合したものを合成例2と同様の方法で処理してグラファイト粒子dを得た。得られた粒子のX線回折測定を行ったところ、グラファイト粒子が生成していることが判明した。グラファイトの格子間距離は3.44Åであり、平均粒子径は71nmであった。また、TiCの200回折線に由来する2θ=41.5°のピークが認められた。
【0031】
合成例5:グラファイト粒子eの製造
カーボンブラック「ニテロン#10改」とトリメトキシボランとを、炭素元素とホウ素元素のモル比が10:1となるように混合したものを合成例2と同様の方法で処理してグラファイト粒子eを得た。得られた粒子のX線回折測定を行ったところ、グラファイト粒子が生成していることが判明した。グラファイトの格子間距離は3.40Åであり、平均粒子径は40nmであった。また、B4Cの021回折線に由来する2θ=37.8°のピークも認められた。
【0032】
【実施例1】
融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂65部、エチレングリコール35部を100℃で加熱溶解し、グラファイト粒子a10部を加えて分散させ、粘度25000cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーAを得た。表1に示す耐火骨材に上記バインダーA3部を加えて加熱混練し、フリクションプレスで成形した後、260℃で10時間ベーキング処理して不焼成耐火物を得た。この不焼成耐火物の特性を表1に従来品と比較して示した。
【0033】
【実施例2】
実施例1と同じノボラック型熱可塑性フェノール樹脂35部、レゾール型熱硬化性フェノール樹脂15部、ジエチレングリコール30部、カルビトール20部を60℃で加熱溶解し、グラファイト粒子b10部を加えて分散させ、粘度7000cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーBを得た。表1に示す耐火骨材にバインダーB3部を添加、加熱混練後、実施例1と同様にして不焼成耐火物を得た。この不焼成耐火物の特性を表1に示した。
【0034】
【実施例3】
フェノール1モルとホルムアルデヒド1.9モルに、酢酸亜鉛0.90重量%(フェノールに対する百分率)を加えて加熱して250分間還流反応させた後減圧下に130℃以下の温度で脱水してベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂BEP(粘度20000cps/50℃)を得た。このBEPを55部、エチレングリコール35部、ジアセトンアルコール10部を100℃で加熱溶解し、グラファイト粒子c5部を加えて分散させ、粘度4500cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーCを得た。表1に示す耐火骨材に上記バインダーCを添加、加熱混練して、実施例1と同様に成形し、不焼成耐火物を得た。この不焼成耐火物の特性を表1に合わせて示した。
【0035】
【実施例4】
実施例3のBEP20部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂40部、エチレングリコール20部、ジエチレングリコール20部を100℃で加熱溶解し、グラファイト粒子d18部を加えて分散させ、粘度38000cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーDを得た。表1に示す耐火骨材に上記バインダーD3部を加えて加熱混練し、実施例1と同様に成形して不焼成耐火物を得た。この不焼成耐火物の特性を表1に合わせて示した。
【0036】
【実施例5】
実施例3のBEP20部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂30部、エチレングリコール15部、ジエチレングリコール35部を100℃で加熱溶解し、グラファイト粒子e10部を加えて分散させ、粘度9000cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーEを得た。表1に示す耐火骨材に上記バインダーE3部を加えて加熱混練し、実施例1と同様に成形して不焼成耐火物を得た。この不焼成耐火物の特性を表1に合わせて示した。
【0037】
【実施例6】
実施例3のBEP20部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂40部、エチレングリコール30部、シクロヘキサノン10部を100℃で加熱溶解し、グラファイト粒子c7部、さらにDBP吸油量126ml/100gのカーボンブラック「ニテロン#10改」3部を加えて分散させ、粘度18000cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーFを得た。表1に示す耐火骨材に上記バインダーF3部を加えて加熱混練し、実施例1と同様に成形して不焼成耐火物を得た。この不焼成耐火物の特性を表1に合わせて示した。
【0038】
【実施例7】
実施例3のBEP20部、融点60℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂40部、エチレングリコール20部、ジエチレングリコール20部を100℃で加熱溶解し、グラファイト粒子d18部を加えて分散させ、粘度38000cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーDを得た。表1に示す耐火骨材に上記バインダーD3部を加えて加熱混練し、実施例1と同様に成形して不焼成耐火物を得た。この不焼成耐火物の特性を表1に合わせて示した。
【0039】
比較例1および2に用いた従来のバインダーHは融点68℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂60部、エチレングリコール40部を100℃で加熱溶解した、粘度25000cps/30℃のノボラック型熱可塑性フェノール樹脂溶液である。従来のバインダーを使用した比較例1、2に比べて、本発明品1〜6の低炭素品、本発明品7の一般的な炭素量の例の不焼成耐火物は耐酸化性、耐食性及び耐スポーリング性いずれも顕著に優れていることがわかる。
【0040】
【実施例8】
実施例3に示したバインダーC3部を、表2に示したアルミナ−炭化ケイ素−カーボン質の耐火骨材に加えて加熱混練して、実施例1と同様に成形し不焼成耐火物を得た。この耐火物の特性を表2に合わせて示した。
【0041】
比較例3に用いた従来のバインダーIは融点60℃のレゾール型熱硬化性フェノール樹脂60部、エチレングリコール40部を溶解した、粘度5000cps/30℃の熱硬化性フェノール樹脂溶液である。本発明品(実施例8)は比較例3に比べて耐酸化性、耐食性及び耐スポーリング性いずれも顕著に優れていることがわかる。
【0042】
【実施例9】
フェノール1モルとホルムアルデヒド1.9モルに、酢酸亜鉛0.90重量%(フェノールに対する百分率)を加えて加熱して250分間還流反応させた後減圧下に130℃以下の温度で脱水してベンジリックエーテル型熱硬化性フェノール樹脂BEP(粘度20000cps/50℃)を得た。このBEPを55部、エチレングリコール35部、ジアセトンアルコール10部を100℃で加熱溶解し、グラファイト粒子e5部を加えて分散させ、粘度4500cps/30℃の変性樹脂溶液からなるバインダーGを得た。表3に示す耐火骨材に上記バインダーGを添加、混練して流し込み用不定形耐火物を得た。この不定形耐火物の特性を表3に合わせて示した。
【0043】
比較例4の不定形耐火物に用いたバインダーJは、バインダーGのグラファイト粒子eを添加しないタイプのものである。比較例4の特性も表3に合わせて示した。本発明品9が比較例4に比べて、耐酸化性、耐食性、耐スポーリング性いずれも優れていることが明白である。
【0044】
実施例中に記載した各特性の評価は以下の方法に従った。
見掛気孔率:50×50×50mmに切断した試料を電気炉内のコークス中に埋めて、一酸化炭素雰囲気下、1400℃で5時間加熱処理した。処理後の試料を室温まで放冷した後、JIS R2205に準拠して見掛気孔率を測定した。
【0045】
動弾性率:110×40×40mmの試料を電気炉内のコークス中に埋めて、一酸化炭素雰囲気下、1400℃で5時間加熱処理した。処理後の試料を室温まで放冷した後、ウルトラソニスコープを用いて超音波伝播時間を測定し、下記式に基づいて動弾性率Eを求めた。
E=(L/t)2・ρ
ここで、Lは超音波伝播距離(試料の長さ)(mm)、tは超音波伝播時間(μsec)、ρは試料のかさ比重である。
【0046】
曲げ強度:110×25×20mmの試料を電気炉内のコークス中に埋めて、一酸化炭素雰囲気下、1400℃で5時間加熱処理した。処理後の試料を室温まで放冷した後、JIS R2213に準拠して曲げ強度を測定した。
【0047】
耐スポーリング性:110×40×40mmの試料を1600℃の溶鋼中に90秒浸漬後、水冷15秒、空冷60秒の熱衝撃サイクルを15回まで繰り返した。試料に剥落が生じるまでの熱衝撃サイクル回数で評価し、剥落無しが優、10〜15回が良、5〜9回が可、4回以下のものを不可とした。
【0048】
耐酸化性指数:40×40×40mmの試料を電気炉(大気中)で1400℃で10時間保持した後、切断し、切断面において下側を除く3面での脱炭層の厚さを測定し、その平均値を求め、比較例2(表1)、比較例3(表2)、比較例4(表3)の結果を100とした指数で表示した。
【0049】
耐食性指数:110×60×40mmの試料を用意し、回転浸食試験装置により塩基度(CaO/SiO2)=1のスラグで1600℃で1時間の工程を5回繰り返す試験を行い、試験後の切断面における溶損寸法を測定し、比較例2(表1)、比較例3(表2)、比較例4(表3)の結果を100とした指数で表示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【発明の効果】
本発明による耐火物用バインダーを使用して炭素含有耐火物を製造することにより、耐酸化性、耐食性、耐スポーリング性に極めて優れる耐火物が得られる。特に、炭素量の少ない耐火物においても、従来の炭素含有耐火物と比較して遜色のない特性が得られる。また、炭素含有不定形耐火物に使用した場合でも、同様に良好な結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】グラファイト粒子cのX線回折図である。
Claims (8)
- カーボンブラックを加熱、黒鉛化して得られるグラファイト粒子を有機樹脂中に分散させてなることを特徴とする耐火物用バインダー。
- カーボンブラックと、金属、ホウ素、ケイ素から選ばれる1種または2種以上の元素の単体または該元素を含有する化合物とを加熱して得られるグラファイト粒子を有機樹脂中に分散させてなることを特徴とする耐火物用バインダー。
- 加熱が誘導炉加熱であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐火物用バインダー。
- 有機樹脂中に分散させるグラファイト粒子の量が、有機樹脂100重量部に対し0.5〜25重量部であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の耐火物用バインダー。
- グラファイト粒子に加え、さらにカーボンブラックを有機樹脂中に分散させてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の耐火物用バインダー。
- 有機樹脂中に分散させたカーボンブラックがDBP吸油量80ml/100g以上のカーボンブラックであることを特徴とする請求項5に記載の耐火物バインダー。
- 有機樹脂がフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の耐火物用バインダー。
- 耐火骨材に請求項1ないし7のいずれか1項記載の耐火物用バインダーを添加してなることを特徴とする耐火物。
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---|---|---|---|
JP2002228119A JP4371637B2 (ja) | 2002-08-06 | 2002-08-06 | 耐火物用バインダー及びそれを使用した耐火物 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002228119A JP4371637B2 (ja) | 2002-08-06 | 2002-08-06 | 耐火物用バインダー及びそれを使用した耐火物 |
Publications (2)
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