JP4160796B2 - 高耐熱衝撃性スライディングノズルプレートれんが - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属の流量制御に用いられるスライディングノズル装置に使用されるプレートれんがに関する。
【0002】
【従来の技術】
スライディングノズル(以下SNとも言う)装置は、摺動式あるいはロータリーノズル式とよばれ溶融金属の流量制御装置として使用され、とくに、使用条件が苛酷な鉄鋼業においては、溶銑、溶鋼の流量制御に広く採用されている。
【0003】
SN装置では、通常円形開孔部を有する2枚もしくは、3枚のSNプレートれんがの摺動により溶融金属の流量制御を行うが、SNプレートれんが間からの洩鋼を防止するためにSNプレートれんがをかなりの圧力で圧着させて用いる。しかも、SNプレートれんがは高温の溶融金属流による急激な熱衝撃と摩耗による物理的作用に加え、溶融金属、溶融スラグによる化学的浸食作用を受ける。そのため、SNプレートれんがとしては、圧着力に負けない機械的強度とともに、優れた耐熱衝撃性、耐食性、耐摩耗性などの特性を具備することが要求される。
【0004】
これらの要求特性を満たすSNプレートれんがとして、アルミナ原料をベースに、カーボン、ジルコニア、スピネル、金属粉などからなる配合物に有機バインダーを添加して混練し、非酸化雰囲気下で焼成してピッチで含浸したアルミナカーボン系焼成材質が一般的に使用されている。
【0005】
このアルミナカーボン系焼成プレートれんがとしては、例えば、特開平6−206759号公報や特開平6−287051号公報に、焼結アルミナ、電融アルミナ、仮焼アルミナ、金属粉及びカーボン粉末を使用したものが開示されている。これらは、含有する金属粉末とカーボンが焼成時の反応により金属炭窒化物を生成し、これによって高強度の結合形態を示す。しかしながら、金属炭窒化物の結合形態は、高強度が容易に得られる反面、酸化雰囲気下では、その性能を十分に発揮し得ず、さらに、酸化物と比較して、溶鋼や鉄酸化物などを含有するスラグに溶解し易く、耐用を悪くする場合もある。
【0006】
また、特開平6−157173号公報には、れんがにコロイドシリカ液とコロイドアルミナ液の混合液を含浸させ、実使用時の加熱又は焼成によってムライトを生成させてれんがを緻密化し、これによって耐食性を向上させるムライト反応を利用した改善策が開示されている。しかしながら、コロイドシリカ液中の5〜50μmのシリカ溶質とコロイドアルミナ液中の5×100〜200μm程度の棒状アルミナ溶質は、焼成体中の骨材と微粉からなるマトリックスとの間に生じた100〜200μm以上の気孔には同時に浸入できるが、マトリックス中の100μm未満の気孔には同時に浸入し難く、組織全体に均一な状態で含浸されない。そのためシリカとアルミナ溶質とのムライト反応によるマトリックス部のボンディング効果は得られにくい。また、このコロイドシリカ液とコロイドアルミナ液の混合液の含浸は、ピッチの含浸に比べて、ムライト生成時の体積膨張とムライト自身のピッチより高い熱膨張率に起因するれんが組織の耐熱衝撃性が劣るため耐用性が悪い場合がある。
【0007】
さらに、溶融シリカの低熱膨張性を利用して、れんがの低熱膨張化と低弾性率化による耐熱衝撃性を向上させたものとして、例えば、特公平3−45028号公報に、アルミナ、溶融シリカ、カーボン、金属珪素粉末、金属アルミニウム粉末及び炭化硼素を含有するSNノズルプレートれんが用耐火組成物が開示されている。この場合、溶融シリカの配合に起因する低熱膨張化と低弾性率化によりれんがの耐熱衝撃性を向上させることができるが、配合した溶融シリカは仮焼アルミナとのムライト生成反応が生じがたいため、溶融シリカの消失による組識の劣化により耐食性の低下は避けられず、これがれんがの耐用を悪くする場合がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決課題は、炭素含有耐火物からなるSNプレートれんがの脱炭を伴う使用条件下において、従来の金属炭窒化物に代わる結合形態を求め、これによって、高強度と高耐食性を高次元でバランスさせ、且つ、高い耐熱衝撃性を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るSNノズルプレートれんがは、炭素原料を含む耐火材料中に、平均粒径4μm以下の仮焼アルミナを3〜15質量%と、平均粒径20μm以下でBET比表面積が10m2/g以上のシリカフラワーを0.5〜10質量%含有するもので、熱負荷による生成物としてムライトボンドを組織中に形成させる組成としたことを特徴とする。
【0010】
ムライトボンドとは、活性アルミナと活性シリカとが受熱により反応して生成したムライト(3A12O3・2SiO2)が長繊維状態に発達して強度を発現した結合形態をいう。このムライトボンドによって、SNプレート用れんがに低い高温弾性率と低い熱膨張率の特性が付与され、従来の非酸化物ボンドよりも優れた耐熱衝撃性が得られる。
【0011】
周知のように、アルミナとシリカの粉末が反応してムライトを生成する。ところが、SNプレートのような炭素含有耐火物では、このムライトの生成反応が阻害され易く、十分なボンドとして機能するムライトが生成発達せず、強度が発現し難い。この炭素含有耐火物において、ムライトボンドを発達させ得るには、より活性的なシリカ源およびアルミナ源が必要となる。
【0012】
本発明における、ムライトボンド生成のための出発原料として、単なるアルミナとシリカの微粉末でなく、活性アルミナおよび活性シリカとして仮焼アルミナとシリカフラワーが好適である。そのムライトボンドの発達を阻害しないための炭素原料は炭素成分として含有量で0.5〜10質量%程度が好ましい。
【0013】
仮焼アルミナとシリカフラワーの添加により、熱処理を受けた際に、反応生成物であるムライトが組織中に均一に分散、発達し長繊維状熊となって、ボンディング効果を発揮し、炭素含有耐火物においても、確固としたムライトボンドが形成される。
【0014】
本発明に用いられる仮焼アルミナは、平均粒径4μm以下、好ましくはサブミクロ程度である。これは反応性の点だけでなく、この材料自身の分散性も良くなり、反応生成した強固な結合組織を均一に生成させる上からも好ましい。
【0015】
一方、シリカフラワーは、粒子径20μm以下であって、BET比表面積が、10m2/g以上の超微粉の活性シリカである。このシリカフラワーは、それ自体を目的に工業生産される非常に高純度なシリカ、いわゆるホワイトカーボンや無水又は含水無定形珪酸、蒸発シリカ、また、副産物的な比較的純度の低い揮発性シリカがある。 揮発性シリカは、ジルコンからジルコニアをアーク溶解して製造する際、もしくは、シリコンあるいはフェロシリコン製造時などに副産物的に発生する。これらを総称して、シリカフラワーと呼ぶ。とりわけ後者の揮発シリカは、安価で工業的に有効である。また、このシリカフラワーは、一次粒子が数μm以下であり、これが団粒化した二次粒子でもほぼ20μm以下であり、BET比表面積は数十m2/g〜数百m2/gにも及ぶもので、非常に活性が高く、アルミナとの反応が容易であり強固な結合組織を形成する。
しかしながら、シリカフラワーの含有量が、10質量%を越えると、成形時にラミネーションが生じやすくなって、作業性が劣化すると同時に、耐食性が低下する。0.5質量%未満であるとムライトボンドの発達が不十分となり、強度が低下し、耐熱衝撃性が劣る。
【0016】
従来のSNプレートでは、カーボン(炭素)と高い反応性を有するシリコンなどの金属を配合し、焼成過程で炭・窒化珪素や炭・窒化アルミニウムを生成させることで高強度を得ていたのに対し、本発明に関わるSNプレートれんがは、ムライトボンドを主体とすることを最大の特徴とするが、補助的に従来と同様のカーボンボンドや金属カーバイトや金属窒化物の混合ポンドを利用することは可能である。
【0017】
また、金属の併用に当たっては、金属シリコン粉末を併用することが有効であるが、炭化珪素や、窒化珪素などの非酸化物ボンドが発達する以前に、ムライトボンドの生成、発達を一定以上に保ち、その発達を阻害させないために使用量は3質量%以下に制限される。
【0018】
使用される耐火性骨材としては、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア、マグネシア、酸化クロム、ドロマイト、カルシア、スピネル、炭化珪素、窒化珪素、炭化硼素など、各種の天然原料あるいは人工原料の1種もしくは、2種以上が選択され、周知の常法により適当な大きさに粒度配合される。
【0019】
カーボンとしては、天然黒鉛、人造黒鉛などの結晶質炭素、石油コークス、石炭コークス、メソフエースピッチ、カーボンブラックなどの非晶質炭素が挙げられ、これらの1種もしくは、2種以上が選ばれるが、粉末として用いるのが好ましい。
【0020】
本発明においては、ムライトはその生成過程は約+7体積%の体積膨張があっても、焼成時には、れんが全体の組成を収縮傾向にすることで、得られたれんがの組織は緻密化され、従来の非酸化物ボンドと同様に、使用時に雰囲気の影響を受けることなく、従来と同等以上の耐食性も期待できる。
【0021】
本発明のSNプレートれんがは、従来の製造方法と同様に、耐火骨材、カーボン、仮焼アルミナ及びシリカフラワー等からなる配合物を、混練、成形、乾燥後、非酸化雰囲気で焼成して製造される。
【0022】
【発明の実施の形熊】
本発明の実施の形態を実施例によって説明する。
【0023】
一般的なSNプレート用れんがの製造方法に準拠して、れんがの試作を行った。即ち、各種耐火原料を、表1に示すような質量%で各々を秤量し、通常用いられるバインダーを加え、混練した。この混練配合物を成形、乾燥処理した後、非酸化雰囲気中1100〜1400℃の温度で焼成した。その後、更に、常法通りピッチ含浸し、揮発分を飛ばすためにコーキング処理した物を供試れんがとして各種の物性を測定した。
【0024】
SNプレート用れんがとして、とりわけ重要な因子となる強度、耐酸化摩耗性、耐熱衝撃性、耐食性の測定結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
耐酸化摩耗性の評価はBS式摩耗試験に準拠して行った。即ち、80×50×25mmのサンプルを酸化雰囲気にて1100℃で2時間焼成し、室温にてアルミナの砥粒を吹き付け、摩耗による体積減量を測定し、耐摩耗性を評価した。表中のBS式摩耗指数が、比較例1の摩耗による体積減量を100とする場合の相対値であり、数値が小さい程、耐摩耗性に優れていることを示す。
【0026】
耐熱衝撃性は、本発明のSNプレート用れんがにおいて最も優れた点であるが、その評価方法としては、高周波炉、溶銑浸漬スポーリングテスト法を用いた。40×40×180mmのサンプルを、1600℃の溶銑に3分間浸漬、加熱後、流水中に急冷する操作を繰り返し、サンプルが剥落に到るまでの回数を調査した。当然ながら、その回数が多いほど剥落せず、耐熱衝撃性に優れると言える。
【0027】
耐食性は、一般的な高周波内張り法を採用し、試験温度が1600℃、試験時間が2時間、鉄浴は普通炭素鋼のSS41、スラグは酸化鉄粉である。表中の溶損指数が、比較例1の溶損量を100とする場合の相対値であり、数値が小さい程、耐食性に優れていることを示す。
【0028】
表1の実施例1、2、3は仮焼アルミナとシリカフラワーの配合の例を示し、実施例4、5は金属珪素粉末を仮焼アルミナとシリカフラワーと併用した例を示す。実施例1、2、3によって、添加量の増量と共にムライトボンドの発達が進み、強度が増加し、耐熱衝撃性も良好になっていることが判る。 実施例4、5は、金属Si粉末の併用によってボンドが複合化されその相乗効果により強度の向上が認められたが、実施例1、2、3に比べ、耐熱衝撃性において、若干劣るものであった。
【0029】
比較例1は、通常の金属珪素粉末を配合した材料であり、強度比較の基準とした。比較例2と3は、仮焼アルミナ又はシリカフラワーが単独に配合された例であり、強度が低い。比較例4は、シリカフラワーが過剰に添加された例を示し、比較例1に比べ、成形時にラミネーションを発生し易くなり、製造歩留の悪化を招いた。また、耐食性の劣化が著しいものであった。比較例5は、シリカフラワーの替わりに溶融シリカを配合した例であり、比較例2、3と同じく強度が低いものであった。比較例6は、金属珪素粉末を多量に添加した材料であり、非酸化物ボンドの発達が顕著となり、ムライトボンドの発達が阻害される為、その特徴となる耐熱衝撃性や耐食性が不十分となる。また、比較例1に比べ、耐熱衝撃性と耐食性とも劣ったものであった。
【0030】
【発明の効果】
本発明のスライディングノズル用プレートれんがにより、炭素成分を有していながら、熱負荷によるムライトボンドの生成による強固な結合組織を得ることができ、脱炭を伴う使用条件においても高強度と高耐食性をバランスさせ、且つ、耐熱衝撃性に優れ、耐用性が向上する。
Claims (3)
- 炭素原料を含む耐火材料中に、平均粒径4μm以下の仮焼アルミナを3〜15質量%と、平均粒径20μm以下でBET比表面積が10m2/g以上のシリカフラワーを0.5〜10重量%含有し、熱負荷による生成物として組織中にムライトボンドを形成する高耐熱衝撃性スライディングノズルプレートれんが。
- 熱負荷が、焼成もしくは使用中の熱負荷である請求項1記載の高耐熱衝撃性スライディングノズルプレートれんが。
- 金属シリコン粉末を3質量%以下含有する請求項1または2に記載の高耐熱衝撃性スライディングノズルプレートれんが。
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