JP3739280B2 - 樹脂微粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂微粒子の製造方法に関し、さらに詳しくは(メタ)アクリル酸エステル系単量体またはスチレン系単量体の懸濁重合において、粗大粒子や凝集粒子の発生を低減する樹脂微粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、球状樹脂微粒子、殊に平均粒子径1〜50μmの球状樹脂微粒子が、滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤などの分野で広く使用されている。
これらの球状樹脂微粒子を製造する方法としては、種々の重合方法が用いられており、一般的には乳化重合、分散重合、シード重合、懸濁重合等が採用されている。
しかしながら、これらの方法のうち、乳化重合による場合には、乳化剤などの無視できない不純物を目的物から除去しなければならず、この不純物の除去が困難であるという問題がある。また、分散重合およびシード重合では、操作が煩雑でしかも長時間を要するため、コスト的に不利であり、大量生産に不向きであるという問題がある。
【0003】
一方、懸濁重合によれば、粒子径が1〜50μm程度の球状樹脂微粒子を大量に、かつ比較的安価に製造することが可能であるが、一般に、攪拌による剪断により、液滴が様々な径を有し、さらに分裂と合一を繰り返すため、得られる粒子の粒度分布が広くなり、粒子径と粒度分布の制御が難しいという問題がある。
特に、平均粒子径から大きく離れた粒子(以下、粗大粒子という)や凝集粒子の存在は、球状樹脂微粒子が使用される前記のような分野において問題となるため、そのような粒子を分級等の方法で取り除くことが行われているが、この操作は煩雑で長時間を要するため、費用がかさむという問題がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、剪断力を付与する特定の分散機でモノマーを分散液に分散処理する方法や、その他の分散方法により、予め所望の大きさの液滴を含む分散液を得(均質化処理)、次いでこの分散液を重合槽に導入して通常の攪拌下に重合を行うことにより、得られる樹脂粒子の粒子径や粒度分布を制御する方法が提案されている(特開平3−131603号)。
また、攪拌が強すぎると液滴が衝突して合一することにより、粗大粒子が増加するという問題や、穏やかな攪拌では重合反応熱の除去が不十分となるような問題に対応して、上記と同様に均質化処理を施した後、特定の攪拌装置を用いることで相対的に強い攪拌下におき、界面活性剤を使用した塩化ビニルを微細懸濁重合または乳化重合することにより、スケールおよび凝集物の生成が少ない、ペースト用塩化ビニル樹脂粉状体を製造する方法が提案されている(特開平6−287203号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような方法では、球状樹脂粒子が用いられる前記のような分野で一般的に用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体またはスチレン系単量体の懸濁重合において、粗大粒子や凝集粒子をほとんど有さずに実用上支障のない樹脂粒子を得ることはできず、場合によっては分散不良となり、重合を途中で断念しなければならないこともある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系単量体またはスチレン系単量体の懸濁重合において、粗大粒子や凝集粒子の少ない樹脂微粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために、攪拌翼の形状・構成、攪拌速度および懸濁液の物性と、粗大粒子や凝集粒子が生成される関連について研究を進めた結果、特定範囲の粘性を有する懸濁液を、特定範囲の攪拌速度において、効率よく均一に混合し得る特定の形状・構成を有する攪拌翼で攪拌することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、無機系懸濁安定剤を含む水性媒体中に(メタ)アクリル酸エステル系単量体またはスチレン系単量体を分散してなり、0.1〜2.0Pa・sの粘度を有する懸濁液を、重合開始剤の存在下で、略円筒状の攪拌槽と、該攪拌槽の中心部に垂設された回転軸に垂直に保持された複数の攪拌翼を前記回転軸の高さ方向に上下2段以上に装着されてなり、最下段の攪拌翼の外端部が回転方向に対して後退しているパドル型攪拌翼とを有する攪拌装置により、攪拌しながら加熱して重合することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法が提供される
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、無機系懸濁安定剤を含む水性媒体中に(メタ)アクリル酸エステル系単量体またはスチレン系単量体を分散してなり、0.1〜2.0Pa・sの粘度を有する懸濁液を、重合開始剤の存在下で、縦型略円筒状の攪拌槽と、該攪拌槽の中心部に垂設された回転軸に垂直に保持された複数の攪拌翼を前記回転軸の高さ方向に上下2段以上に装着されてなり、最下段の攪拌翼の外端部が回転方向に対して後退するパドル型攪拌翼とを有する攪拌装置により攪拌しながら加熱して重合することを特徴とする。
【0009】
本発明の方法により使用される(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ヒドロフルフリル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種類以上を組合わせて用いることができる。
また、本発明の方法に使用されるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種類以上を組合わせて用いることができる。
【0010】
上記の(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体には、本発明の効果を損わない範囲で、得られる樹脂微粒子の改質等の目的に応じて共重合可能な他の単量体を併せて用いることができる。
そのような他の単量体としては、例えば、アクリル酸等の付加重合性不飽和カルボン酸系単量体、メチルビニルエーテル等のアルキルビニル系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体、アクリロニトリル等のニトリル系単量体等が挙げられる。また架橋の目的でジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能ビニル単量体を併せて用いることもできる。
【0011】
本発明の方法で使用される重合開始剤としては、通常、懸濁重合で用いられる油溶性の有機過酸化物あるいはアゾ化合物等を用いることができ、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(シクロへキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。これらの中でも、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が特に好ましい。
【0012】
重合開始剤の使用割合は、重合開始剤の種類および用いられる単量体の重合性や重合温度等の条件により適宜選択されるが、一般的には単量体100重量部に対して0.01〜2.0重量部程度である。
本発明の方法における懸濁重合では、懸濁させた粒子の安定化を図るために、単量体100重量部に対して、水100〜1000重量部程度が用いられ、さらに無機系懸濁安定剤が添加される。
【0013】
無機系懸濁安定剤としては、特に限定されないが、例えばリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等のリン酸塩、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物が挙げられる。これらの安定剤はそれぞれ単独で、または2種類以上を組合わせて用いることもできる。中でも第三リン酸カルシウムや複分解生成法によるピロリン酸マグネシウム、コロイダルシリカは、本発明の樹脂微粒子が安定して得られるという点で好ましい。
また、無機系懸濁安定剤の使用割合は、所望する粒子径、重合条件等により、適宜調節されるが、一般的には単量体100重量部に対して0.5〜15重量部程度である。
なお、本発明の方法では、無機系懸濁安定剤とともに界面活性剤を用いることもできる。
【0014】
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばオレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組合わせて用いることができる。
【0015】
特に、無機系懸濁安定剤として難水溶性リン酸塩を用いる場合には、アニオン性界面活性剤であるアルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが好適に使用される。
界面活性剤の使用割合は、目的とする樹脂微粒子の粒子径等により適宜調節されるが、一般的には水に対して0.001〜0.1重量%程度である。
本発明の方法で使用される、水性媒体中に単量体の微細な液滴を分散させた懸濁液は、例えば、無機系懸濁安定剤および界面活性剤を含む水性媒体中に、重合開始剤を溶解した単量体を加え、ホモミキサー等の高速剪断型分散機または超音波分散機等で処理することにより得られる。
【0016】
また、粒子径の揃った樹脂微粒子を得るには、液滴相互の衝突や器壁への衝突を利用した高圧型分散機等で処理するのが好ましい。
本発明の方法における懸濁液の粘度は、0.1〜2.0Pa・sであり、0.2〜1.5Pa・sがより好ましい。懸濁液の粘度が0.1Pa・s未満であると、重合過程において合一が起こり易く、粗大粒子や凝集粒子が増加するので好ましくない。また、懸濁液の粘度が2.0Pa・sを超えると、攪拌による均一な混合が困難となって、凝集粒子等が増加するので好ましくない。
【0017】
懸濁液の粘度を上記の範囲に調節する方法としては、例えば、単量体に対する無機系懸濁安定剤の使用割合や、単量体に対する水の使用割合を変えることによって行うことができる。具体的には、無機系懸濁安定剤の使用割合を増やすか、水の使用割合を減らすと懸濁液の粘度を増加させることができる。無機系懸濁安定剤の使用割合は、単量体100重量部に対して1〜100重量部程度であり、水の使用割合は、単量体100重量部に対して100〜1000重量部程度である。
【0018】
本発明の方法における懸濁重合は、略円筒状の攪拌槽と、特定の形状を有するパドル型攪拌翼とを有する攪拌装置により、攪拌しながら加熱下に行われる。
略円筒状の攪拌槽は、縦型、横型のいずれでもよいが、後述する特定形状のパドル型攪拌翼を容易に備えることができるという点において、縦型のものが好ましい。
パドル型攪拌翼は、略円筒状の攪拌槽の中心部に垂設された回転軸に垂直に保持された複数の攪拌翼を回転軸の高さ方向に上下2段以上に装着してなる。
攪拌翼が一段のみであると、低速攪拌下においては、懸濁液が攪拌翼の回転と共回りしてしまい、均一に混合されず、凝集粒子等が増加するので好ましくない。
【0019】
パドル型攪拌翼は、最下段の攪拌翼の翼径が、他の段の翼径よりも大きいのが好ましい。最下段の攪拌翼の翼径が他の段の翼径よりも小さいと、攪拌槽壁面近傍の懸濁液の流れが下部へ向かい、攪拌槽上部の懸濁液の混合が不十分となって凝集粒子等が増加しやすいので好ましくない。
【0020】
最下段の攪拌翼の翼径は、特に限定されないが、より均一な混合を得るためには、攪拌槽内径の0.6〜0.95倍程度であるのが好ましい。この翼径が攪拌槽内径の0.6倍未満であると、翼先端と攪拌槽内壁との距離が大きく、その間に存在する懸濁液が均一に混合されないため、凝集粒子等が増加するので好ましくない。また、最下段の攪拌翼の翼径が攪拌槽内径の0.95倍を超えると、翼先端と攪拌槽内壁との距離が小さすぎて、その間に存在する懸濁液が大きな力を受けて、合一が生じ易くなるため、粗大粒子や凝集粒子が増加するので好ましくない。
【0021】
最下段の攪拌翼は、その攪拌翼と攪拌槽底部内面との間に、攪拌槽内径の約0.05倍以上の間隔を有するのが好ましい。
最下段の攪拌翼の形状は、特に限定されず、例えば長方形、正方形等の四角形、半円形または扇型のいずれであってもよく、また、攪拌槽内径の輪郭に沿って象られた形状であってもよい。
攪拌翼の回転軸の高さ方向の翼幅(図1に示されるh1およびh2)は、攪拌槽内径の0.2〜2.0倍程度である。
上下で隣接する各攪拌翼の間隔は、最下段の攪拌翼の翼幅の0.02〜0.15倍程度である。
【0022】
攪拌翼の回転軸の高さ方向の翼幅が攪拌槽内径の0.3倍以上であり、各攪拌翼の上下の間隔が最下段の攪拌翼の翼幅の0.15倍以下であると、懸濁液がより均一に混合されるので好ましい。
また、上下に隣接する各攪拌翼は、30〜80度の交差角度(下段の攪拌翼に対する上段の攪拌翼の回転方向への進み角度:図2に示されるθ1)を有するのが好ましい。
最下段の攪拌翼は、外端部において回転方向に対して後退している。このような形状を有することにより、懸濁液を均一に混合することができる。
【0023】
最下段の攪拌翼の後退している部分の長さは、最下段の攪拌翼の翼先端から回転軸までの長さの1〜40%が好ましく、2〜30%がより好ましい。後退している部分の長さが1%未満では、翼先端の後面において液体の吸い込みが起こり、攪拌流が乱れるため、液滴同士の衝突頻度が大きくなって合一が生じやすくなり、凝集粒子等が増加するので好ましくない。
最下段の攪拌翼の後退している部分は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。後退している部分が平面である場合、最下段の攪拌翼と後退している部分との角度(以下、後退角度という:図2に示されるθ2)は、100〜170度が好ましく、120〜160度がさらに好ましい。後退角度が100度未満では、攪拌槽内壁付近の懸濁液が均一に混合されず、凝集粒子等が増加しやすいので好ましくない。また、後退角度が170度を超えると、翼先端の後面において液体の吸い込みが起こり、攪拌流が乱れるため、衝突頻度が大きくなって合一が生じやすくなり、凝集粒子等が増加しやすいので好ましくない。
【0024】
また、後退している部分が曲面である場合、その曲率半径は翼径に対して0.2〜5.0程度であり、0.4〜3.0が好ましい。
懸濁重合の際の攪拌速度は、最下段の攪拌翼の先端周速度が、0.1〜2.0m/sであるのが好ましく、0.2〜1.6m/sであるのがさらに好ましい。この周速度が0.1m/s未満では、懸濁液の混合が不十分となって凝集粒子等が増加しやすくなるので好ましくない。また、周速度が2.0m/sを超えると、粒子の衝突頻度が大きくなって合一が生じ易くなり、粗大粒子や凝集粒子が増加しやすくなるので好ましくない。
懸濁重合の反応温度は、通常、30〜100℃が好ましく、40〜80℃がさらに好ましい。反応時間は、通常、0.1〜10時間程度である。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものでない。
(評価方法)
<懸濁液の粘度測定>
B型粘度計(株式会社トキメック製、商品名:B8H型)を用いて、次の手順で測定する。
懸濁液150gを200ccのビーカーに入れ、ローター(No.4)を懸濁液中の所定の位置にセットして、50rpmで回転させた後、B型粘度計の針が安定したときの目盛りを読み取り、目盛りの値を算出表に照らし合わせることにより、懸濁液の粘度を測定する。
<樹脂微粒子の粒子径の測定>
コールターカウンター(コールター社製)およびアパーチャー(孔径50μm)を用いて測定する。
【0026】
実施例1
卓上型ホモミキサー(特殊機化社製)およびプロペラ翼付き攪拌装置を備えた2リットル容器に水1200gを入れ、攪拌下にラウリル硫酸ナトリウム1gを投入して溶解し、次いで第三リン酸カルシウム20gを投入して分散させることにより水性媒体を作成した。
これとは別に、1リットル容器にメタクリル酸メチル392gを入れ、エチレングリコールジメタクリレート8gおよびアゾビスイソブチロニトリル2gを加えて混合・溶解した。
この単量体組成物を上記の2リットル容器中で攪拌されている水性媒体中に投入して混合し、さらにホモミキサーを用いて高速剪断下で微分散処理を行い、液滴の径が約7μmである懸濁液を得た。この懸濁液の粘度は0.6Pa・sであった。
【0027】
懸濁液を、翼径が85mm、翼幅が90mm、後退している部分の長さが15mm、後退角度が135度である下段の攪拌翼と、翼径が75mm、翼幅が90mmである上段の攪拌翼とを備え、上段と下段の攪拌翼の間隔が8mm、上段と下段の攪拌翼の交差角が45度であるパドル型攪拌機を有するジャケット付きの2リットルステンレス製オートクレーブ(直径105mm、最深部の深さ260mm)に入れて、攪拌数135rpm(最下段の攪拌翼の先端周速度0.60m/s)で攪拌しながら、70℃まで昇温し、5時間保持して重合を行った。得られた分散液を濾過し、洗浄し、脱水し、乾燥して樹脂微粒子を得た。
得られた樹脂微粒子は、重量平均粒子径が7.0μmであり、20μmを超えるような粗大粒子や凝集粒子は見られなかった。
【0028】
実施例2
第三リン酸カルシウムの使用量を36gに代え、微分散処理をマイクロフルイダイザー(みずほ工業社製)を圧力600kg/cm2で用いて液滴相互の衝突や器壁への衝突力を利用した高圧型分散機にて行うことに代えた以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。このときの懸濁液の粘度は、1.2Pa・sであった。得られた樹脂微粒子は、重量平均粒子径が3.9μmであり、20μmを超えるような粗大粒子や凝集粒子は見られなかった。
【0029】
実施例3
2リットルのオートクレーブの重合時の攪拌数を300rpm(下段の攪拌翼の先端周速度1.335m/s)に代えた以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。
得られた樹脂微粒子は、重量平均粒子径が7.1μmであり、20μmを超えるような粗大粒子や凝集粒子は見られなかった。
【0030】
実施例4
翼径が90mm、翼幅が60mm、後退している部分の長さが15mm、後退角度が135度である下段の攪拌翼と、翼径が80mm、翼幅が60mmである中段の攪拌翼と、翼径が70mm、翼幅が60mmである上段攪拌翼とを備え、下段と中段、および中段と上段の攪拌翼の間隔がそれぞれ6mmであり、下段と中段、および中段と上段の攪拌翼の交差角がそれぞれ45度であるパドル型攪拌翼を有する攪拌装置を使用する以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。
得られた樹脂微粒子は、重量平均粒子径が7.6μmであり、20μmを超えるような粗大粒子や凝集粒子は見られなかった。
【0031】
比較例1
パドル型攪拌翼を1段のいかり型翼(水平翼径65mm、翼幅20mm)に代えた以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。得られた樹脂微粒子の結果を表1に示す。
比較例2
パドル型攪拌翼を1段(翼径85mm、翼幅200mm)に代えた以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。得られた樹脂微粒子の結果を表1に示す。
【0032】
比較例3
難水溶性の第三リン酸カルシウムの代わりにPVA(日本合成化学社製、商品名:ゴーセノールGH−23)24gを用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。得られた樹脂微粒子の結果を表1に示す。
比較例4
難水溶性の第三リン酸カルシウムを用いず、ラウリル硫酸ナトリウムの量を9.6gに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。得られた樹脂微粒子の結果を表1に示す。
比較例5
下段の攪拌翼を後退している部分を有さないものに代えた以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。得られた樹脂微粒子の結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003739280
【0034】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、所望の粒子径、粒度分布に調製された単量体液滴を懸濁重合して樹脂微粒子を製造するにあたり、その重合条件に一部限定を加えるという簡易な手段で、合一による樹脂粒子の粗大化や凝集化を著しく低減することができる。
したがって、本発明の方法によって得られる樹脂微粒子には、粗大粒子や凝集粒子がほとんど含まれないので、重合後のそれらの除去が不要である。これにより、煩雑な後処理工程にかかる手間や時間を減じ、コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いられる攪拌装置を正面から見た断面図である。
【図2】本発明の方法に用いられる攪拌装置を上から見た図である。
【符号の説明】
D 攪拌槽内径
d1 下段の攪拌翼の翼径
d2 上段の攪拌翼の翼径
h1 下段の攪拌翼の翼幅
h2 上段の攪拌翼の翼幅
θ1 上段と下段の攪拌翼の交差角度
θ2 下段の攪拌翼と後退している部分との角度

Claims (1)

  1. 無機系懸濁安定剤を含む水性媒体中に(メタ)アクリル酸エステル系単量体またはスチレン系単量体を分散してなり、0.1〜2.0Pa・sの粘度を有する懸濁液を、
    重合開始剤の存在下で、略円筒状の撹拌槽と、
    該撹拌槽の中心部に垂設された回転軸に垂直に保持された複数の撹拌翼を前記回転軸の高さ方向に上下2段以上に装着されてなり、最下段の撹拌翼の外端部が回転方向に対して後退しているパドル型撹拌翼とを有する撹拌装置により、最下段の撹拌翼の先端周速度が0.1〜2.0m/sになるように撹拌しながら加熱して重合することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
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