JP3264610B2 - 発泡用スチレン系樹脂粒子の製造方法、発泡性スチレン系樹脂粒子およびその製造方法 - Google Patents

発泡用スチレン系樹脂粒子の製造方法、発泡性スチレン系樹脂粒子およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発泡用スチレン系樹脂
粒子及び発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関す
る。更に詳しくは、本発明は、粒度分布の狭い発泡用ス
チレン系樹脂粒子及び発泡性スチレン系樹脂粒子の製造
方法に関する。本発明の製造方法による発泡用スチレン
系樹脂粒子及び発泡性スチレン系樹脂粒子は、インスタ
ント食品などのカップ用、鋳造におけるフルモールド法
用、各種梱包用、魚箱用、軽量盛土工法などのブロック
用、各種OA機器、オーディオ機器、電化製品等の緩衝
包装材用の原料として好適に使用される。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】発泡用
のスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、水性媒体中
で、スチレン系単量体に懸濁安定剤を添加して重合させ
る懸濁重合法が知らされている。この懸濁重合法におい
て使用される懸濁安定剤は、熱安定性、機械的強度及び
透明性等の観点から、難水溶性無機塩が使用されてい
る。この難水溶性無機塩は単量体との親和性に乏しいの
で、通常、少量の界面活性剤が懸濁安定助剤として使用
される。
【0003】しかしながら、難水溶性無機塩と界面活性
剤を使用した懸濁重合法は、特定の粒度の範囲に粒子を
揃えることが困難であり、粒度分布幅の広い樹脂粒子し
か得られなかった。これに対して、粒径の揃った粒子を
製造するために難水溶性リン酸塩の存在下で、界面活性
剤を使用することなく、スチレン系単量体を重合させる
方法(以下ソープフリー重合法とする)が知られている
(特公昭46-15112号公報、米国特許第2652392号明細
書)。ソープフリー重合の為に必須の添加剤として、特
公昭46-15112号公報では水溶性亜硫酸塩が、米国特許第
2652392号明細書では水溶性過硫酸塩が添加されてい
る。
【0004】発泡性スチレン系樹脂粒子は一般に粒径が
0.25〜2.0mmの粒子が使用されている。粒径が0.25〜0.5
mm粒子は、カップ等の温湯容器、鋳造におけるフルモー
ルド法用等に、粒径が0.5〜1.2mm粒子は各種梱包用、魚
箱用等の型物成形体として、0.7〜2.0mm、軽量盛土工
法、家屋等の断熱材、緩衝包装材としてのブロック用に
主に使用されている。
【0005】このため、発泡性スチレン系樹脂粒子の製
造方法は、上記のそれぞれの用途を満足できるものであ
り、且つ、生産性の面より、必要な粒度を効率よく製造
し不要な粒度の発生を少なくする粒度分布の狭い重合方
法が必要となる。
【0006】また、特公昭46-15112号公報、米国特許第
2652392号明細書によるソープフリー重合法では、十分
に満足の出来る粒径の揃った粒子の製造は困難であっ
た。そこで、このような課題を鑑み本発明の発明者ら
は、鋭意検討の結果、ソープフリー重合法において、重
合槽の撹拌速度が粒度分布に大きく影響し、特定の撹拌
速度で粒径の揃った粒子が得られることを見い出し本発
明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】かくして本発明は、難水
溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩及び/または水溶性過
硫酸塩の存在下にてスチレン系単量体を懸濁重合するに
おいて、重合槽の撹拌速度を撹拌翼の先端速度で2.3
〜5.5m/sec、好ましくは2.6〜4.5m/secにすることを
特徴とする発泡用スチレン系樹脂粒子の製造方法であ
る。
【0008】撹拌翼の先端速度が2.33m/sec未満では
粒径の揃った粒子の製造が出来ず好ましくない。5.5
m/sec以上では効果が変わらず必要動力が大きくなるだ
けで不経済となる。更に、本発明は、上記の発泡用スチ
レン系樹脂粒子の重合中又は重合後に発泡剤を含浸させ
る発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法ある。
【0009】本発明に使用される撹拌翼は、通常、懸濁
重合に使用されるもので、例えば、フラットパドル翼、
ピッチドパドル翼、アンカー翼等の形状で、単段又は多
段で使用でき特に限定されるものではない。本発明のス
チレン系単量体は、スチレン単量体又はスチレンを主成
分とする単量体混合物、すなわちスチレン単独又はスチ
レンを主成分とし、これと少量の他の単量体との単量体
混合物である。その他の単量体としてはたとえば、α−
メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチ
レン、クロロスチレン等のスチレン系単量体、メチルメ
タクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタ
クリレート等のメタクリレート単量体、エチルアクリレ
ート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレー
ト単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の
シアン化ビニル系単量体、ジビニルベンゼン、ポリエチ
レングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体等
があげられる。
【0010】本発明において難水溶性リン酸塩は分散剤
として使用される。難水溶性リン酸塩としては、リン酸
三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシ
ウム等があり、粉末又は水性スラリーの状態で使用され
る。その使用量はスチレン系単量体に対して、固形分換
算で0.03重量%以上添加される。0.03重量%より少ない
と分散状態が維持できず、1重量%以上でも反応は可能
であるがさらなる効果がないと共に経済的ではない。
【0011】また、本発明において水溶性亜硫酸塩は、
亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水
素アンモニウム等があげられる。さらに水に溶解及び重
合反応系内で反応して亜硫酸塩となる物質も使用でき
る。これらの前駆物質としては水溶性のピロ亜硫酸塩、
ピロ硫酸塩、亜二チオン酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ
ル酸塩、硫酸塩等があげられる。
【0012】これらの中で特に亜硫酸水素ナトリウム、
ピロ亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ホル
ムアルデヒドナトリウムスルホキシラートが好ましく、
スチレン単量体に対して単独では1.5〜100ppm、好まし
くは2〜50ppmの範囲で用いられる。1.5ppmより少ない
と、添加の効果が現れないもしくは、発泡成形体の品質
が悪くなるため好ましくなく、100ppmより多いと品質上
の問題はないが量を増やす効果がない。
【0013】更に、本発明において水溶性過硫酸塩は、
過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウ
ム等が挙げられる。この内特に過硫酸カリウムが好まし
く、スチレン系単量体に対して単独では1.5〜50ppm、好
ましくは2〜10ppmの範囲で用いられる。1.5ppmより少な
いと添加の効果が現れないもしくは、粒度分布が広くな
り発泡成形体の品質が劣るため好ましくなく、50ppmよ
り多いと発泡成形体の品質が劣るため好ましくない。
【0014】また水溶性亜硫酸塩と水溶性過硫酸塩を併
用する場合は両者の添加量の和が1.5ppm以上必要であ
る。1.5ppmより少ないと重合反応途中で分散不良となり
反応が完結でできないので好ましくない。さらに併用す
る水溶性過硫酸塩は0.1〜10ppmの範囲で用いられる。
【0015】本発明で使用されるラジカル重合開始剤と
してはベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキ
シアセテート、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキ
サノエート、t−ブチルパーオキオシベンゾエート、
2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン等の有機過
酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物な
ど一般的なラジカル重合に使用される重合開始剤が用い
られる。
【0016】また本発明に於いては、一般的な添加剤が
使用できる。例えばエチレンビスステアリルアマイド、
ポリエチレンワックス等の造核剤、ヘキサブロモシクロ
ドデカン等の難燃剤が使用できる。
【0017】更に、本発明は、上記のスチレン系樹脂粒
子の重合中又は重合後に、スチレン系樹脂粒子に発泡剤
を添加することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子を製
造する方法である。本発明において使用される発泡剤と
しては種々の公知のものが挙げられるがプロパン、ブタ
ン、ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキ
サン、等の炭素数3〜6の飽和炭化水素、メチルクロラ
イド、ジクロルジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水
素等が挙げられ、単独もしくは2種以上を組み合わせて
使用してもよい。
【0018】発泡剤を添加、含浸させる量はスチレン系
樹脂粒子に対して3〜15重量%が好ましい。添加、含浸
時期は重合途中又は重合後のいずれでもよいが、重合転
化率85%以上の時点が好ましい。上記のように製造され
た発泡性スチレン系樹脂粒子は、所望時に、加熱して予
備発泡粒子とし、更に所定の形状を有する金型を用いて
発泡成形体とすることができる。
【0019】次に、本発明の実施例および比較例につい
て説明する。なお、ここで、ピーク3ふるいとは、JI
S標準ふるい目開き2.36mm(7.5メッシュ)、目開き2.00
mm(8.6メッシュ)、目開き1.70mm(10メッシュ)、目
開き1.40mm(12メッシュ)、目開き1.18mm(14メッシ
ュ)、目開き1.00mm(16メッシュ)、目開き0.85mm(18
メッシュ)、目開き0.71mm(22メッシュ)、目開き0.60
mm(26メッシュ)、目開き0.50mm(30メッシュ)、目開
き0.425mm(36メッシュ)、目開き0.355mm(42メッシ
ュ)、目開き0.300mm(50メッシュ)、目開き0.250mm
(60メッシュ)、目開き0.212mm(70メッシュ)、目開
き0.180mm(83メッシュ)、で分級し、累積重量分布曲
線を基にして累積重量が50%となる粒径(メディアン
径)をD50とし、D50の粒径が属する範囲から分布
割合の多い3個のふるいの範囲の粒度分布の割合を示し
たものをいう。
【0020】実施例1〜14及び比較例1〜7 100リットルのオートクレーブに120gのリン酸三カルシ
ウム(太平化学(株)製)と、表1〜2に示す量の亜硫酸
水素ナトリウム及び過硫酸カリウムを加え、更に140g
の過酸化ベンゾイル(純度75%)、30gのt−ブチルパ
ーオキシベンゾエート、40kgのイオン交換水及び40kgの
スチレン単量体を混合して仕込み、撹拌下で溶解及び分
散させ懸濁液を形成した。
【0021】次に、表1〜2の撹拌条件下でスチレン単
量体を90℃、6時間、さらに 115℃で2時間重合反応さ
せた。反応終了後、冷却し、オートクレーブから内容物
を取り出し、遠心分離工程に付したのち、乾燥させたス
チレン樹脂粒子を得た。得られたスチレン樹脂粒子の中
心粒径(D50)及び粒度分布(ピーク3ふるい)を表
1に亜硫酸水素ナトリウム使用時の懸濁重合結果、表2
に過硫酸カリウム使用時の懸濁重合結果と両者の使用時
の懸濁重合結果を示した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明の発泡用スチレン系樹脂粒子の製
造方法は、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩及び/
または水溶性過硫酸塩存在下に、界面活性剤を添加しな
い水性媒体中でスチレン系単量体を懸濁重合するにおい
て、重合槽の撹拌速度を撹拌翼の先端速度で2.3〜5.5m/
secでスチレン系単量体を重合させることを特徴とし
て、粒度分布の狭いスチレン系樹脂粒子が製造できるこ
とにより、生産性、在庫管理等の経済性に優れた効果が
得られる。
【0025】また、本発明は、この粒度分布の狭いスチ
レン系樹脂粒子に発泡剤を含浸することにより発泡性粒
子を容易に製造でき、そして粒度分負が狭いからそれぞ
れカップ用、フルモールド用、ブロック用と用途別に好
適に使用できる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 9/16 - 9/20 C08F 2/18 C08F 2/44 C08F 12/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩及び
    または水溶性過硫酸塩の存在下にてスチレン系単量体
    を懸濁重合するにおいて、重合槽の撹拌速度を撹拌翼の
    先端速度で2.3〜5.5m/secにすることを特徴とす
    る発泡用スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のスチレン系樹脂粒子の製
    造方法において、重合途中又は重合後に発泡剤を含浸さ
    せることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造
    方法
  3. 【請求項3】請求項2に記載の製造方法で得られたこと
    を特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子
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