JP3735435B2 - 油性消去性マーキングペン用インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性消去性マーキングペン用インキ組成物に関し、特に、非吸収性乃至非浸透性の筆記面、代表的には、所謂白板上に、長期間にわたる使用において、均一な濃度の筆跡を形成することができる油性消去性マーキングペン用インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の所謂白板用マーキングペンが実用化されている。白板とは、非吸収性乃至非浸透性の白色の筆記面を備えた器具をいい、このようなマーキングペンにて白板上に筆記した筆跡は、柔らかい布帛からなるイレーザー(白板拭き)にて擦過することによって、筆記面から拭い去り、筆跡を消去することができる。
【0003】
マーキングペンは、通常、中空筒体からなるホルダーとこの中空筒体内のインキ貯蔵室とこれに連通する多孔質のペン先(チップ)とを備え、インキ組成物をこのインキ貯蔵室からペン先に供給して、筆記を可能とする筆記用具であり、従来、インキ貯蔵室の構造によって、2種類に大別されている。第1は、インキ貯蔵室が、単に、中空筒体内の中空の容器からなるものであって、このような形式のマーキングペンは、インキフリー式又は直液式と呼ばれている。第2は、インキ貯蔵室が、例えば、繊維束やフェルトのような液体保持性を有する多孔質物質からなり、この場合、インキ組成物はこれに吸蔵されて、貯蔵される。このような形式のマーキングペンは、中芯式又は中綿式と呼ばれている。インキフリー式、中芯式、いずれのマーキングペンにおいても、そのペン先は、通常、繊維束、フェルト、樹脂等からなる多孔性の成形物であって、インキ組成物は、上記インキ貯蔵室からペン先に毛細管現象によって供給されて、筆記を可能とする。
【0004】
このようなマーキングペンに用いる消去性インキ組成物には、用いる溶媒の種類によって、油性のものと水性のものとが知られており、このうち、油性の消去性マーキングペン用インキ組成物は、一般に、有機溶媒に着色剤及び樹脂と共に、消去性付与剤又は剥離剤といわれる添加剤を配合してなるものである。
【0005】
例えば、特公昭52−44244号公報には、二塩基酸エステルや高級炭化水素を消去性付与剤とする油性消去性マーキングペン用インキ組成物が記載されており、特公昭60−55553号公報には、消去性付与剤として、二塩基酸エステルと共に、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル又はポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルを用いるものが記載されている。また、特開昭60−206881号公報には、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体を消去性付与剤とするものも記載されている。
【0006】
更に、特開昭58−42672号公報には、顔料、樹脂、低級脂肪族アルコールを主体とする溶剤及び消去性付与剤とからなる油性消去性マーキングペン用インキ組成物において、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いると共に、消去性付与剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルのリン酸エステル又は硫酸エステルを配合してなるものが記載されている。
【0007】
特開昭60−4574号公報には、顔料、樹脂、有機溶剤及び消去性付与剤とからなる油性消去性マーキングペン用インキ組成物において、消去性付与剤として、トリメチロールアルカン脂肪酸エステルを用いる油性消去性マーキングペン用インキ組成物が記載されている。特開昭62−253678号公報には、消去性付与剤として、トリメチロールアルカン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用してなるものが記載されている。
【0008】
特開昭64−79280号公報には、消去性付与剤として、脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸トリグリセリド)と高級脂肪族炭化水素とポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルとを併用してなる油性消去性マーキングペン用インキ組成物が記載されている。
【0009】
近年、このような油性消去性マーキングペン用インキ組成物において、有機溶媒としては、毒性や臭気の問題がないように、脂肪族低級アルコールやグリコールモノアルキルエーテル等を用いたものが、広く実用化されるに至っている。
【0010】
ところで、このようなアルコール系溶媒を含め、一般に、有機溶媒に消去性付与剤を組合わせてなる油性消去性マーキングペン用インキ組成物において、従来、着色剤としてカーボンブラックを用いてなる油性消去性インキ組成物を充填したマーキングペンは、長期間にわたって保管するとき、インキ組成物中のカーボンブラックがインキ貯蔵室やペン先(チップ)中で沈降し、インキ貯蔵室やペン先(チップ)において、インキ組成物中のカーボンブラック濃度が不均一となるので、マーキングペンをペン先(チップ)を上に向けて、正立状態で長期間にわたって保管した後に筆記すれば、筆跡の濃度が薄く、他方、ペン先(チップ)を下に向けて、倒立状態で長期間にわたって保管した後に筆記するときは、筆跡の濃度が濃く、このように、マーキングペンの保管の態様によって、筆跡の濃度が変化し、均一な濃度を筆跡を得ることができない。
【0011】
油性消去性マーキングペン用インキ組成物の製造に用いられるカーボンブラックは、通常、その平均粒子径が0.05μm以下であるが、このように微細なカーボンブラックを着色剤として用いても、カーボンブラックは、インキ組成物中、特に、消去性付与剤の存在する有機溶媒中において、平均粒子径0.15〜0.25μm程度にまで凝集肥大して安定化する。従って、上述したように、マーキングペンを長期間にわたって保管すれば、インキ組成物中のカーボンブラックがインキ貯蔵室やペン先(チップ)中で沈降するものとみられる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者は、溶媒として、脂肪族低級アルコールやグリコールモノアルキルエーテルを用い、着色剤としてカーボンブラックを用いる油性消去性マーキングペン用インキ組成物における上述したような問題を解決するために鋭意研究した結果、従来より用いられている消去性付与剤とある種の界面活性剤を組合わせて用いることによって、カーボンブラックのインキ組成物中での凝集肥大を抑え、その平均粒子径を小さいままに維持し、安定化して、かくして、平均粒子径の小さいインキ組成物を得ることができ、従って、マーキングペンの長期間にわたる保管においても、カーボンブラックが前述したようなインキ貯蔵室やペン先(チップ)中で沈降せず、かくして、マーキングペンの長期間にわたる保管の後も、均一な筆跡を与えることができる油性消去性マーキングペン用インキ組成物を得ることができることを見出して、本発明に至ったものである。
【0013】
従って、本発明は、長期間にわたる保管の後にも、白板上に均一な濃度の筆跡を形成することができる油性消去性マーキングペン用インキ組成物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明による油性消去性マーキングペン用インキ組成物は、
(a) 炭素数2〜4の低級脂肪族アルコール、アルキル基の炭素数が1〜3であるエチレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキル基の炭素数が1〜3であるプロピレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種からなる有機溶媒、
(b) カーボンブラック、
(c) ポリビニルブチラール樹脂、
(d) 前記有機溶媒に可溶性であり、常温で難揮発性乃至実質的に不揮発性の液体である脂肪酸エステル、高級炭化水素、高級アルコール、ポリオキシエチレンエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル硫酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシエチレンエステルから選ばれる少なくとも1種の消去性付与剤、及び
(e) オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、オキシエチレンアルキルジアミン、ポリオキシエチレンアルキルジアミン及びアルキロールアミドから選ばれる少なくとも1種のアミン型又はアミド型界面活性剤
を含むことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、マーキングペンとは、前述したように、中空筒体からなるホルダーとこの中空筒体内のインキ貯蔵室とこれに連通する多孔質のペン先(チップ)とを備え、インキ組成物をこのインキ貯蔵室からペン先に供給して、筆記を可能とする筆記用具であって、中芯式及びインキフリー式の両方を含むものとする。中芯式マーキングペンとは、前述したように、インキ貯蔵室が、例えば、フェルトや繊維束のような液体を保持し得る多孔性材料からなり、インキ組成物はこれに吸蔵されて、貯蔵されるものである。インキフリー式マーキングペンとは、インキ貯蔵室が、単に、中空筒体内の中空の容器からなるものである。中芯式及びインキフリー式のいずれのマーキングペンにおいても、ペン先(チップ)は、フェルト、繊維束又は樹脂等の多孔質の成形物からなり、インキ組成物は、このペン先に毛細管現象によって供給されて、筆記を可能とする。
【0016】
本発明による油性消去性マーキングペン用インキ組成物においては、有機溶媒として、特に、得られるインキ組成物に毒性や臭気がないと共に、筆跡が速やかに乾燥する点から、炭素数2〜4の低級脂肪族アルコール、アルキル基の炭素数が1〜3であるエチレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキル基の炭素数が1〜3であるプロピレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0017】
炭素数2〜4の低級脂肪族アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール又はイソブチルアルコール等を挙げることができる。他方、アルキル基の炭素数が1〜3であるエチレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等を挙げることができ、アルキル基の炭素数が1〜3であるプロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
これらのなかでは、特に、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はこれらの2種以上の混合物が好ましく用いられる。特に、上記アルコールは、白板の表面素材として用いられることが多い種々の樹脂を損傷しないので好ましい。
【0019】
これらの有機溶剤は、インキ組成物に基づいて、通常、70〜90重量%、好ましくは75〜85重量%の範囲で用いられる。インキ組成物に基づいて、有機溶剤が上記範囲外にあるときは、インキ組成物としての適度の粘度が得られないからである。
【0020】
本発明においては、必要に応じて、有機溶剤として上記以外に、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族カルボン酸アルキルエステル類、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ヘキサン等の揮発性の飽和脂肪族炭化水素類等をインキ組成物に基づいて5重量%以下の範囲で用いることができる。
【0021】
本発明において、着色剤として用いるカーボンブラックは、粉末状態にて、平均粒子径が0.05μm以下のものであり、好ましくは、C.I.ピグメントブラック7又はC.I.ピグメントブラック6が用いられるが、特に、C.I.ピグメントブラック7が好ましく用いられる。C.I.ピグメントブラック7は、種々の市販品として入手することができ、具体例としては、例えば、プリンテックス90(ドイツ国デグッサ社製)、モナーク800、880、4630(米国キャボット社製)、ミツビシ#40、MA100(三菱化学(株)製)等を挙げることができる。
【0022】
本発明によれば、上述したようなカーボンブラックを着色剤として用いると共に、従来より知られている消去性付与剤とある種の界面活性剤とを組合わせて用いることによって、インキ組成物中、カーボンブラックの凝集肥大を抑制し、その平均粒子径を0.15μm以下、好ましくは、0.13μm以下、最も好ましくは0.10μm以下に小さく維持したまま、安定化することができるので、マーキングペンの長期間にわたる保管によっても、カーボンブラックがインキ貯蔵室やペン先(チップ)にて沈降することがない。ここに、本発明において、カーボンブラックの平均粒子径とは、体積基準による累積粒子径分布における中央値(メジアン、D50)をいうものとする。
【0023】
また、C.I.ピグメントブラック7をベースとするポリビニルブチラール樹脂による加工顔料は、有機溶媒中での分散性にすぐれるので、好ましく用いられる。このような加工顔料は、本発明において、カーボンブラックと後述する樹脂成分であるポリビニルブチラール樹脂との混合物であるとみることができる。このような加工顔料として、例えば、フジASブラック、フジASLブラックE(富士色素(株)製)、マイクロピグモAMBK(オリエント化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0024】
本発明において、着色剤は、筆跡の所要濃度等に応じて、適当な量が配合されるが、インキ組成物において、顔料の配合量が多すぎるときは、インキ組成物の粘度が高すぎて、ペン先でインキ組成物が目詰まりを起こしたり、また、書き味が悪くなり、他方、少なすぎるときは、十分な濃度の筆跡を形成することができない。従って、本発明においては、着色剤は、インキ組成物に基づいて、通常、2〜10重量%、好ましくは、3〜6重量%の範囲で用いられる。
【0025】
本発明のインキ組成物においては、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂が配合される。この樹脂は、前記有機溶媒によく溶解すると共に、造膜性を有し、インキ組成物においては、カーボンブラックを有機溶媒中に安定に分散させると共に、インキ組成物に適度の粘性と筆記面への筆跡の適度の付着性を与え、更に、筆記後は、溶媒が乾燥すれば、筆記面で造膜して、筆跡の被膜を形成し、筆跡の消去性を助ける作用を有する。
【0026】
上記ポリビニルブチラール樹脂としては、市販品を好適に用いることができる。市販品の具体例として、例えば、エスレックBL−1、BL−2、BL−3、BX−L等(積水化学工業(株)製)、電化ブチラール2000L、3000−1、3000−3、3000−4、4000−1等(電気化学工業(株)製)、モビタールB20H、B30T、B30H、B30HH、B40H等(ヘキスト社製)、等を挙げることができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0027】
ポリビニルブチラール樹脂は、上述したように、インキ組成物において、カーボンブラックを安定に分散させることができる効果を有するほか、その造膜性によって、筆跡の消去性を助ける作用を有するが、しかし、これを過多に配合するときは、インキ組成物の粘度を高くしすぎて、書き味が悪くなり、また、インキ組成物の消去性をも阻害する。他方、配合量が余りに少ないときは、カーボンブラックを安定に分散させることができず、筆跡の濃度にむらを生じ、また、インキ組成物の消去性も不十分となる。従って、本発明においては、ポリビニルブチラール樹脂は、インキ組成物に基づいて、通常、2〜10重量%、好ましくは3〜6重量%の範囲で用いられる。
【0028】
本発明によれば、必要に応じて、ポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂を配合してもよい。このような樹脂は、特に、限定されるものではないが、例えば、ケトン樹脂、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、そのエステル化物、スチレン−マレイン酸共重合物の部分エステル化物、エチルセルロース等をインキ組成物に基づいて、1重量%以下の範囲で用いることができる。
【0029】
本発明による消去性マーキングペンインキ組成物においては、消去性付与剤又は剥離剤として、前記有機溶媒に可溶性であり、常温で難揮発性乃至実質的に不揮発性の液体である脂肪酸エステル、高級炭化水素、高級アルコール、ポリオキシエチレンエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル硫酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシエチレンエステルから選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0030】
即ち、本発明において用いる第1の消去性付与剤は、前記有機溶媒に可溶性であって、常温で難揮発性の油状の脂肪族カルボン酸エステル、高級炭化水素又は高級アルコールである。
【0031】
このような第1の消去性付与剤のうち、脂肪酸エステルは、一塩基酸エステル、二塩基酸ジエステル、二価アルコールのモノ若しくはジエステル、又は三価アルコールのモノ、ジ若しくはトリエステル等を含む。本発明において、特に好ましい脂肪族カルボン酸エステルは、一塩基酸エステル、特に、炭素数8〜20の飽和脂肪酸と炭素数3〜20の飽和脂肪族アルコールとのエステルであり、具体例として、例えば、オクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸ステアリル、オクタン酸イソステアリル、ネオデカン酸イソオクチルドデシル、ラウリン酸イソステアリル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸イソセチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソオクチル等を挙げることができる。
【0032】
しかし、上記以外の好ましい脂肪族カルボン酸エステルの具体例として、例えば、脂肪族二塩基酸ジアルキルエステルであるドデカン二酸ジオクチル、アジピン酸ジプロピル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチル等、二価アルコールエステルであるプロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールのデカン酸ジエステル、三価アルコールトリエステルである天然又は合成の脂肪酸トリグリセリドやトリメチロールプロパントリイソステアレート等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0033】
本発明において、上記脂肪族カルボン酸エステルのうち、特に好ましい具体例としては、一塩基酸エステル、特に、高級脂肪酸エステルであるステアリン酸ブチル、イソオクタン酸セチル、ステアリン酸イソオクチル等、脂肪族二塩基酸ジアルキルエステルであるドデカン二酸ジオクチル、アジピン酸ジプロピル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチル等、二価アルコールエステルであるプロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールのデカン酸ジエステル、三価アルコールトリエステルである天然又は合成の脂肪酸トリグリセリドやトリメチロールプロパントリイソステアレート等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0034】
消去性付与剤としての高級炭化水素は、通常、流動パラフィンと呼ばれているものや、或いはスクワラン等が好適に用いられるが、例えば、酸化ポリエチレンワックスのように、一部酸化されていてもよい。また、常温で液状の高級アルコールとしては、特に、限定されるものではないが、例えば、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ラウリルアルコール等が好ましく用いられる。
【0035】
第2の消去性付与剤は、ポリオキシエチレンエーテルリン酸エステル又はポリオキシエチレンエーテル硫酸エステル(塩を含む。)である。より具体的には、第2の消去性付与剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル(いずれも、塩を含む。)等を挙げることができる。これらは界面活性剤であって、種々の市販品として入手することができる。
【0036】
第3の消去性付与剤は、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンエーテル又はポリオキシエチレンエステルである。より具体的には、第3の消去性付与剤として、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等を挙げることができる。これらも界面活性剤であって、種々の市販品として入手することができる。
【0037】
本発明によれば、これらの第1、第2及び第3の消去性付与剤のうちの少なくとも1種が、インキ組成物において、1〜20重量%、好ましくは、2〜15重量%の範囲で配合される。消去性付与剤の配合量が1重量%よりも少ないときは、得られるインキ組成物の消去性が十分ではなく、他方、20重量%よりも多いときは、インキ組成物において、カーボンブラックの粒度を大きくして、長期間にわたる保管時にカーボンブラックが沈降し、所期の目的を達成することができない。加えて、得られるインキ組成物の粘度が過度に高くなり、インキ組成物の流出性が悪く、書き味が悪くなり、また、消去性付与剤が樹脂との相溶性が低いところから、インキ組成物が保存性にも劣るようになる。
【0038】
特に、本発明によれば、消去性付与剤として、第1の消去性付与剤、なかでも、脂肪酸エステルと、第2の消去性付与剤との組合わせを用いるか、又は脂肪酸エステルのみを消去性付与剤として用いることが好ましい。
【0039】
本発明によれば、上記消去性付与剤と共に、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン(上記2者を併せて(ポリ)オキシエチレンアルキルアミンということがある。)、オキシエチレンアルキルジアミン、ポリオキシエチレンアルキルジアミン(上記2者を併せて(ポリ)オキシエチレンアルキルジアミンということがある。)及びアルキロールアミドから選ばれる少なくとも1種のアミン型又はアミド型界面活性剤を用いることによってはじめて、得られるインキ組成物の消去性に何ら有害な影響を及ぼすことなく、インキ組成物中のカーボンブラックの凝集を抑え、その平均粒子径を小さく維持したまま、安定化することができるので、インキ組成物中、カーボンブラックがインキ貯蔵室やペン先(チップ)で沈降することがなく、かくして、マーキングペンの長期間にわたる保管によっても、均一な濃度の筆跡を与えることができる。
【0040】
これらアミン型又はアミド型界面活性剤は、インキ組成物に基づいて、0.1〜5重量%、好ましくは、0.3〜3重量%の範囲で配合される。配合量が0.1重量%よりも少ないときは、長期間にわたる保管に際して、カーボンブラックの平均粒子径を小さく維持することができず、他方、3重量%を越えて過多に配合するときは、例えば、琺瑯製の白板に筆記するとき、筆跡に弾きが生じる。
【0041】
これらアミン型又はアミド型界面活性剤も、種々のものを市販品として入手することができる。(ポリ)オキシエチレンアルキルアミンの市販品の具体例としては、例えば、日本油脂(株)製のナイミーンL−201、L−202、L−207、F−215、S−202、S−204、S−210、T2−202、T2−206、DT−203、DT−208等、松本油脂製薬(株)製のゾンデスAL−2、AL−3、AS−2等、ミヨシ油脂(株)製のペレテックス4418、4421、4425、4830等、ライオン(株)製のエソミンSAJ−103、SA2Y−103、C/12、C/15、C/25、T/12、T/15、T/25、S/15、S/25、O/17、O/20、レオガール11A等、花王(株)製のアミート105、308等、第一工業製薬(株)製のアミラジンC−1802等を挙げることができる。
【0042】
(ポリ)オキシエチレンアルキルジアミンの市販品としては、例えば、ライオン(株)製のエソデュオミンT/11、T/13等を挙げることができる。
また、アルキロールアミドの市販品としては、例えば、日本油脂(株)製のスターホームF、FK、DL、DF−1、DO、DOS、T等、松本油脂製薬(株)製のマーポンMM、L、LK、H/C等、ミヨシ油脂(株)製のアミコールCDE−1、CDE−G、CDE−70、CDE−30、CDE−1000G、LDE−1、CM、SME等、ライオン(株)製のホームリードCD、2CD等、第一工業製薬(株)製のダイヤナール300等を挙げることができる。
【0043】
本発明によるインキ組成物は、インキ組成物のペン先での乾燥を防止するために、必要に応じて、ある種のアミンやアミド化合物等、常温で固体の化合物の適宜量を乾燥防止剤として配合してもよく、また、顔料の分散性を高めるために、油性消去性インキ組成物において、従来より用いられている適宜の界面活性剤を適当量、配合してもよい。
【0044】
本発明によるこのような油性消去性マーキングペン用インキ組成物は、従来、知られている通常の方法によって製造することができる。例えば、溶剤にポリビニルブチラール樹脂を溶解させた後、これにカーボンブラック(又は樹脂加工したカーボンブラック)を加え、適宜の混練粉砕機にて攪拌、粉砕して、カーボンブラックを溶剤中に一様に分散させたミルベースを調製する。次いで、このミルベースに消去性付与剤と界面活性剤と溶剤とを加え、必要に応じて加熱下に撹拌して、溶剤中に溶解させることによって、マーキングペン用インキ組成物を得る。しかし、本発明によるインキ組成物は、その製造方法において、何ら限定されるものではない。
【0045】
【発明の効果】
本発明による油性消去性マーキングペン用インキ組成物は、以上のように、従来より知られている消去性付与剤とアミン型又はアミド型界面活性剤を組合わせて用いることによって、インキ組成物の消去性に有害な影響を与えることなく、カーボンブラックの凝集肥大を抑制し、その平均粒子径を小さく維持したまま、安定化することができ、かくして、カーボンブラックの平均粒子径の小さいインキ組成物を得ることができる。従って、本発明によれば、マーキングペンの長期間にわたる保管においても、カーボンブラックがインキ貯蔵室やペン先(チップ)中で沈降することがなく、かくして、マーキングペンの長期間にわたる保管の後も、均一な筆跡を与えることができる。
【0046】
従って、本発明による油性消去性マーキングペン用インキ組成物は、長期間にわたる保管によっても、カーボンブラックが沈降しないので、中芯式及びインキフリー式のいずれにおいても有用であるが、特に、インキ貯蔵室がフェルトや繊維束のような液体を保持し得る多孔性材料からなり、インキ組成物がこれに吸蔵されて、貯蔵される中芯式マーキングペン用インキ組成物として有用である。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、着色剤ほか、各成分の配合量は重量部数を示す。
【0048】
次の成分組成からなるミルベースを調製した。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
表1に上記実施例及び比較例によるインキ組成物の製造後、初期のインキ組成物中のカーボンブラックの平均粒子径(初期平均粒子径)を示す。また、上記実施例及び比較例によるインキ組成物を用いて、種々の材質の表面を有する白板上に筆記し、下記のようにして、その筆跡の初期濃度と正立1か月後の濃度を調べた。更に、琺瑯白板上の筆跡について、ピンホールや弾き等の欠陥の有無を観察した。結果を表1に示す。
【0058】
筆跡濃度の測定
小西六(株)製Sakura DENSITOMETERを用いてD値を測定した。
カーボンブラックの初期平均粒子径の測定
堀場製作所製遠心式粒度分布計CAPA−500を用いて測定し、体積基準による累積粒子径分布における中央値(メジアン、D50)を求めた。
【0059】
消去性
筆跡の初期消去性は、20℃の恒温室にて白板に筆記し、その白板を恒温室に1時間放置した後、筆跡の消去性を調べた。筆跡の経時消去性は、20℃の恒温室にて白板に筆記し、その白板を恒温室に1か月間放置した後、その消去性を調べた。
【0060】
筆跡の消去性は、25cm2 のイレーザーに所定の重りを載せ、このイレーザーにて上記白板上の筆跡を所定回数擦ったときの筆跡の消去された程度から評価した。◎は重り100g、2往復で消去できた、○は重り200g、5往復で消去できた、△は重り400g、5往復で消去できた、×は重り400g、5往復で消去できなかった、をそれぞれ示す。
【0061】
【表1】
【0062】
本発明の実施例1〜5のインキ組成物によれば、インキ組成物中でのカーボンブラックの凝集肥大が抑えられて、ほぼ表1に示す小さい初期平均粒子径のまま、安定化されるので、インキ貯蔵室やペン先(チップ)中で沈降することがなく、従って、このようなインキ組成物を充填したマーキングペンを1か月間にわたって正立状態で保管した後に白板上に筆記しても、所期濃度と殆ど同じ濃度を有する。しかし、比較例1〜3のインキ組成物は、1か月間にわたって正立状態で保管した後に白板上に筆記すれば、濃度の薄い筆跡を与える。実施例5のインキ組成物は、アミン型界面活性剤の配合量が3重量%であるので、筆跡がやや不安定となって、ピンホールが生じる場合がある。比較例4のインキ組成物は、アミン型界面活性剤が過多に配合されているので、筆跡に弾きが生じる。
【0063】
以上の実施例及び比較例によるインキ組成物において用いた材料は次のとおりである。
加工顔料(カーボンブラック)
フジASLブラックE(富士色素(株)製)は、6.0重量%のC.I.ピグメントブラック7、6.0重量%のポリビニルブチラール樹脂及び88.0重量%のエタノールからなる。
【0064】
フジASブラック(富士色素(株)製)は、50.0重量%のC.I.ピグメントブラック7と50.0重量%のポリビニルブチラール樹脂からなる。
【0065】
ポリビニルブチラール樹脂
エスレックBL−1(積水化学工業(株)製)
【0066】
トリメチロールアルカン脂肪酸トリエステル
ユニスターH−334R(トリメチロールプロパンラウリン酸ステアリン酸混合トリエステル、日本油脂(株)製)
ファインエステルT−120(トリメチロールプロパントリエステル、ミヨシ油脂(株)製)
【0067】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩
プライサーフA212C(第一工業製薬(株)製)
プライサーフA207H(第一工業製薬(株)製)
【0068】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
ハイテノール08E(第一工業製薬(株)製)
【0069】
アミン型又はアミド型界面活性剤
ナイミーンS210(ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、日本油脂(株)製)
エソデュオミンT/11(オキシエチレンアルキルジアミン、ライオン(株)製)
【0070】
その他(乾燥防止剤)
ソフター1000(アルキルアミドアルコール、日本油脂(株)製)
Claims (1)
- (a) 炭素数2〜4の低級脂肪族アルコール、アルキル基の炭素数が1〜3であるエチレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキル基の炭素数が1〜3であるプロピレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種からなる有機溶媒、
(b) C.I.ピグメントブラック7とC.I.ピグメントブラック6とから選ばれる少なくとも1種のカーボンブラック、
(c) ポリビニルブチラール樹脂、
(d) 前記有機溶媒に可溶性であり、常温で難揮発性乃至実質的に不揮発性の液体である脂肪酸エステル、高級炭化水素、高級アルコール、ポリオキシエチレンエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル硫酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシエチレンエステルから選ばれる少なくとも1種の消去性付与剤、及び
(e) オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、オキシエチレンアルキルジアミン及びポリオキシエチレンアルキルジアミンから選ばれる少なくとも1種のアミン型界面活性剤0.1〜3重量%
を含み、上記カーボンブラックの平均粒子径が0.15μm以下に維持されていることを特徴とする油性消去性マーキングペン用インキ組成物。
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