JP3734635B2 - 硬化性アルミニウムろう付け用バインダ - Google Patents

硬化性アルミニウムろう付け用バインダ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金をろう付けする際に使用する、フラックス又はフラックスとろう材との混合物をろう付け部に塗布するために使用するバインダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム又はアルミニウム合金などの母材をろう付けする際には、ろう付け用のフラックス又は当該フラックスとろう材との混合物を母材のろう付け部に塗布する必要があり、そのためにはこれらのフラックスなどをバインダに混合して塗布することが行われていた。
【0003】
このためのバインダとしては、従来からの熱可塑性のアクリル系又はメタクリル系の樹脂が使用されていた。そしてこれらのバインダと、フラックス又はフラックスとろう材との混合物とを、アルコールに溶解してろう付け用組成物とし、そのろう付け用組成物を、アルミニウム又はアルミニウム合金の母材におけるろう付け箇所に塗布することが行われてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
母材にろう付けを実施する前には、母材に対して厚み調整のプレス加工や曲げ引張等の種々の加工が行われるのが一般的である。しかしながら従来のろう付け用組成物を母材に塗布すると、これらの加工中にろう付け用組成物が母材から脱落したり、表面に割れを生じたり、母材同士がブロッキングを起こしたりすることが多かった。
【0005】
さらに、母材の加工においては、切削油やプレス加工油等の炭化水素系有機溶剤が使用されるのが一般的であり、これらの有機溶剤にバインダが溶解してしまい、フラックスやろう材が脱落することが多く、ろう付けに悪影響をもたらすという問題点があった。
【0006】
さらに、フラックスやろう材の脱落を防止するために、水溶性アクリル樹脂に硬化剤としてのメラミン樹脂を添加した熱硬化性のバインダの使用が試みられているが、このような熱硬化性のバインダを使用した場合、母材に塗料を塗布している間に塗料が増粘してしまい、通常の塗布工程では用いることが困難であるという問題点があった。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、これらの問題点を生じることがなく、アルミニウム又はアルミニウム合金の良好なろう付けを施すことのできるバインダを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
而して本願第一の発明は、乾燥時の酸価が1〜100のメタクリル酸エステル系重合体を主成分として100重量部に対して、副成分として、乾燥時におけるオキシラン基濃度が0.1〜100mmol/gであるオキシラン基含有樹脂を0.1〜20重量部、乾燥時におけるオキサゾリン基濃度が0.1〜100mmol/gであるポリオキサゾリンを0.1〜20重量部、又は乾燥時におけるNCO%が1〜50であるイソシアネート基含有樹脂を1〜20重量部添加したことを特徴とするものである。
【0011】
本願のさらに他の発明は、熱硬化性又は光硬化性のアルミニウムろう付け用バインダであって、重合可能なビニル基を1分子中に2個以上含有するメタクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して、重合開始剤を0.01〜10重量部加えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明における主成分であるメタクリル酸系重合体としては、その重合体を構成する単量体成分が、次の化1で表される単量体の少なくとも一以上と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの前記単量体と共重合可能なカルボキシル基を含有した単量体の一成分以上を含む、共重合体を使用することが適当である。
【0013】
【化1】
CH2=C(CH3)COOR
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基である)
【0014】
ただし、前記メタクリル酸系重合体主成分の乾燥時の酸価が100を越える重合体では、ろう付け時において炭化物が発生してしまい、ろう付けに悪影響をもたらす恐れがある。また酸価が1以下では、オキシラン基含有樹脂又はポリオキサゾリンによる熱硬化性が乏しくなり、本発明の課題を解決できない。
【0015】
前記のごとく、メタクリル酸系重合体の主成分の乾燥時の酸価は、1〜100であることが必要であるが、熱硬化性とろう付け性の両面から10〜80とするのが好ましい。
【0016】
副成分として、オキシラン基含有樹脂又はオキサゾリン基含有樹脂を添加する場合は、当該樹脂における乾燥時のオキシラン基又はオキサゾリン基の含有濃度が、0.1〜100mmol/gであることが必要である。オキシラン基又はオキサゾリン基の含有濃度が0.1mmol/g未満では、主成分賭してのメタクリル酸系重合体との熱硬化性が乏しくなる。
【0017】
また主成分としてのメタクリル酸系重合体100重量部に対するオキシラン基含有樹脂又はオキサゾリン基含有樹脂の添加量は、20重量部を越えてはならない。20重量部を超えて添加した場合には、ろう付け時に炭化物が発生してしまい、ろう付けに悪影響をもたらす。
【0030】
また本願のさらに他の発明は、重合可能なビニル基を1分子中に2個以上含有するメタクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して、重合開始剤を0.01〜10重量部加えたものである。
【0031】
分子中に重合可能なビニル基を導入する一般的な方法として、予めカルボキシル基を分子中に存在するように共重合させた後、空気気流下、パラトルエンスルホン酸などのエステル化触媒存在下で、前記化2、化3及び化4などのビニル基及び水酸基を有する単量体と脱水反応させる方法がある。またこの方法に限らず、公知の種々の方法により得ることができる。
【0032】
分子中に重合可能なビニル基を含有したバインダには、熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加する。
【0033】
熱重合開始剤としては、t−ヘキシルパーオキサイド又はt−ブチルパーオキサイドなどの、10時間半減期温度が100℃以上のものを使用するのが好ましい。10時間半減期温度が100℃以下の熱重合開始剤を添加した場合には、塗料のポットライフが短くなり、保管中に増粘してしまう。長期間の塗料安定性を確保するためには、10時間半減期温度が150℃以上の熱重合開始剤を添加することが好ましい。
【0034】
また光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン又は、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などを挙げることができる。
【0035】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体は、団塊重合、溶液重合又は懸濁重合などの公知の重合法により、ラジカル重合させることによって得られる。好ましくは、溶剤としてアルコールを用いた溶液重合法により、種々の重合体を得ることができる。
【0036】
また本発明のカルボキシル基を含有したバインダにおいては、アミノアルコール類で鹸化され、水溶性としたものを使用することもできる。また前記アミノアルコール類に限らず、アンモニア、ジエチルアミン又はトリエチルアミンなどの、水溶液中でカチオン性の性質を示す化合物で鹸化したものを使用することもできる。
【0037】
【作用】
本発明のバインダは、メタクリル酸エステル系重合体と、ケイ素系などのろう材とふっ化アルミン酸カリウム系などの混合物とを、イソプロピルアルコールなどの溶剤と混合する。そしてこの混合物をアルミニウムのろう付け母材に塗布して乾燥固化させる。また光重合開始剤を添加したバインダにあっては、紫外線を照射し乾固させる。然る後、窒素雰囲気下に約600℃程度に加熱してろう付けを行うのである。
【0038】
本発明のバインダは、熱硬化型又は光硬化型であって、前記バインダとケイ素系などのろう材とふっ化アルミン酸カリウム系などの混合物とを、イソプロピルアルコールなどの溶剤と混合し、50℃以下の条件下では塗料の増粘が生じることがなく、長期間使用が可能である。
【0039】
そして本発明のバインダを窒素雰囲気下におけるろう付け炉でろう付けのために加熱すると、当該ろう付け炉内の温度である600℃よりかなり低い温度において、重合体が瞬時に解重合して揮発性の単量体となって揮散し、ろう材が熔融してろう付けが行われる時には既にバインダが消失しており、ろう付けの箇所にバインダやその炭化物が残存することがない。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミニウムろう付けにおいて、母材加工時に剥離や割れが生じることがなく、また切削油やプレス加工油等の炭化水素系有機溶剤に接触してもろう材の脱落がなく、さらに母材同士のブロッキングが起こらないため、ろう付けに悪影響を及ぼすことがない。
【0041】
【実施例】
以下実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中「部」及び「%」は、特記しない限りすべて重量基準である。
【0042】
(実施例1)
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、600部のイソプロピルアルコールを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸メチル100部、メタクリル酸イソブチル275部、メタクリル酸25部及び過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、乾燥時の酸価が約40の樹脂溶液を得た。
【0043】
攪拌装置、蒸気凝集除去装置及び窒素導入管を備えた反応装置に、750部の上記樹脂溶液、700部のイオン交換水及び18部のジメチルアミノエタノールを仕込んだ後、窒素気流下で系内が還流するまで昇温した。蒸気凝集除去装置を用いて、系内のイソプロピルアルコール450部を除去した後、乾燥時におけるオキシラン基濃度が10mmol/gであるオキシラン基含有樹脂を15部添加し、固形分が30%のアルミニウムろう付け用バインダを得た。
【0044】
(実施例2)
実施例1と同様にして樹脂溶液を得、乾燥時におけるオキサゾリン基濃度が10mmol/gであるオキサゾリン基含有樹脂を15部添加し、固形分が30%の アルミニウムろう付け用バインダを得た。
【0048】
(実施例3)
実施例1と同様の反応装置に600部のノルマルブタノールを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸メチル100部、メタクリル酸イソブチル290部、メタクリル酸10部及び過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、乾燥時の酸価が約15の樹脂溶液を得た。
【0049】
攪拌装置、冷却管、水分除去装置及び空気導入管を備えた反応装置に、100部の上記樹脂溶液、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.5部、パラトルエンスルホン酸0.1部を加え、空気を吹き込みながら、約8時間還流下で放置して脱水反応を完結させた後、ハイドロキノン0.1部及び熱重合開始剤としてのt−ブチルパーオキサイドを1部添加し、固形分が40%のアルミニウムろう付け用バインダを得た。
【0050】
(実施例4)
実施例3と同様にして樹脂溶液を得、熱重合開始剤としてのt−ブチルパーオキサイドに代えて光重合開始剤としてのベンジルジメチルケタールを使用した他は実施例3と同様に操作して、固形分が40%のアルミニウムろう付け用バインダを得た。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同様にして樹脂溶液を得て、当該樹脂溶液をそのままアルミニウムろう付け用バインダとした。
【0054】
(比較例2)
実施例1において、オキシラン基含有樹脂に代えて市販のブチル化メラミン樹脂を15部添加した他は、実施例1と同様に操作して、固形分が30%のアルミニウムろう付け用バインダを得た。
【0055】
[試料の作成]
実施例及び比較例で得られたバインダ10部(固形分換算)と、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックス90部又はふっ化アルミン酸カリウム系フラックスとケイ素系ろう材との混合物90部とを混合し、これに希釈溶剤を添加し、固形分が50%になるように溶解してアルミろう付け用塗料を得た。
【0056】
銅0.4%及びマンガン0.15%を含むアルミニウム合金チューブ材に、上記塗料をロールコーターを用いて、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックスの場合は塗布量が5±1g/m2となるように、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックスとケイ素系ろう材との混合物の場合は塗布量が10±1g/m2となるように塗布し、180℃のギアオーブンで約1分間乾燥させた。
【0057】
ただし、実施例6で得られたバインダを使用した場合には、アルミニウム合金チューブ材にフラックス又はフラックスとろう材との混合物を塗布した後、それに8W/cmの集光型紫外線ランプを10cmの高さから40m/分の速度で4パス 照射した。
【0058】
[評価試験]
前記方法で得られたアルミニウム材料について、以下の試験方法により評価試験を行った。
【0059】
(塗料安定性):前記塗料を密閉容器に入れて、50℃で14日間放置し、初期状態からの変化の様子を観察した。
○;塗料の外観に変化がなく、粘度の上昇が初期の150%以下
△;塗料の外観に変化がないが、粘度の上昇が初期の150%以上
×;塗料の外観に変化があるか、または塗料が固化する
【0060】
(耐ブロッキング性):塗料を塗布したアルミニウム材料の塗布面同士を、100Kg/cm2の圧力で1分間貼り合わせた後、直ちに剥離したときの相互の塗布面の表面状態を観察した。
○;初期の状態と同じ
×;初期の状態と異なる
【0061】
(初期塗膜硬度):塗料を塗布したアルミニウム材料の表面を、JIS−K5400に則った方法により鉛筆硬度を測定した。
【0062】
(耐溶剤性):塗料を塗布したアルミニウム材料をヘキサンに120時間浸積した後、そのままの状態でJIS−K5400に則った方法により鉛筆硬度を測定した。
【0063】
(ろう付性):ふっ化アルミン酸カリウム系フラックスの塗料を塗布したアルミニウム材料に、マンガン1.2%、及び亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金にケイ素−アルミニウム合金をクラッドしたブレージングシートよりなるフィンを組み合わせて、窒素ガス雰囲気下において600℃まで加熱し、ろう付け試験を行い、接合部のフィレットの状態を観察した。
【0064】
一方、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックスとケイ素系ろう材の混合物の塗料を塗布したアルミニウム材料については、マンガン1.2%、及び亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金よりなるフィンを組み合わせて、窒素ガス雰囲気下において600℃まで加熱し、ろう付け試験を行い、接合部のフィレットの状態を観察した。
○;フィレット良好
△;フィレット小さい
×;フィレット形成されず
【0065】
[試験結果]
評価試験結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
Figure 0003734635

Claims (3)

  1. 乾燥時における酸価が1〜100のメタクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して、乾燥時におけるオキシラン基濃度が0.1〜100mmol/gであるオキシラン基含有樹脂を、0.1〜20重量部加えたことを特徴とする、熱硬化性アルミニウムろう付け用バインダ
  2. 乾燥時における酸価が1〜100のメタクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して、乾燥時におけるオキサゾリン基濃度が0.1〜100mmol/gであるポリオキサゾリンを、0.1〜20重量部加えたことを特徴とする、熱硬化性アルミニウムろう付け用バインダ
  3. 重合可能なビニル基を1分子中に2個以上含有するメタクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して、重合開始剤を0.01〜10重量部加えたことを特徴とする、熱硬化性又は光硬化性のアルミニウムろう付け用バインダ
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