JP5513876B2 - アルミニウムろう付け用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は水系のアルミニウムろう付け用組成物に関して、ろう付け後の外観に優れるとともに、ろう付け性、経時安定性や密着性などを良好に確保できるものを提供する。
従来、例えば、車両に搭載されるエバポレータ、コンデンサ等によって代表される自動車用アルミニウム熱交換器に用いられるアルミニウム又はアルミニウム合金製の部材をろう付けする際には、ろう付け用のフラックス又はフラックスとろう材に加え、さらに接合部に均一に付着させるためのバインダを混合し、ろう付け部に塗布した後、組み付け加工し、加熱下にてろう付け作業が行われていた。
アルミニウムろう付け用組成物のバインダ樹脂としてメタクリル酸エステル系重合体を使用すると、例えば、アクリル酸エステル系重合体に比べて熱分解性やろう付け性に優れ、密着性、耐剥離性、耐ブロッキング性並びに耐溶剤性なども良好である。
そこで、メタクリル酸エステル系重合体をバインダとして、フラックスと水溶性アルコールとの、或はさらにろう材との混合物を水で希釈した水系のアルミニウムろう付け用組成物の従来技術を挙げると、次の通りである。
(1)特許文献1
アルミニウム材に対する濡れ性、密着性、ろう付け性などを向上する目的で(段落6)、酸価(乾燥時)20〜80と所定のガラス転移温度を有するメタクリル酸エステル系重合体をバインダにして、フラックスと引火点が30℃以上のアルコールと水とを、或はさらにろう材を含有する水系のアルミニウムろう付け用組成物が開示されている(請求項1〜3)。
同文献1のバインダ調製の実施例1(段落32)では、バインダ樹脂の酸価は25、塗料の調製例(段落42)では、ケン化したバインダ10部とフラックス90部を混合し、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコールを10〜20部添加し、水で希釈している(表1)。
(2)特許文献2
メタクリル酸エステル系重合体をバインダにしたアルミニウムろう付け用組成物であり、密着性、ろう付け性などの向上を目的とする(段落10)。
IPA、1−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどの有機溶剤(段落19)に上記重合体を溶解して、フラックス粉末(或は、さらにろう材粉末)を添加してアルミニウム材に塗布することが開示される(請求項3〜4)。
上記重合体としては、メタクリル酸エステルのホモポリマー及び同エステルの共重合体が表1に記載される。
(3)特許文献3
酸価(乾燥時)1〜100のメタクリル酸エステル系重合体を主成分とし、オキシラン基含有樹脂などの特定の副成分を添加して熱硬化又は光硬化型としたろう付け用バインダが開示されている(請求項1〜6)。
実施例1(段落42)では、酸価40の樹脂溶液をジメチルアミノエタノールでケン化後、オキシラン基含有樹脂を配合している。実施例5(段落48)では、酸価15の樹脂溶液にメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを配合している。
試料(ろう付け用組成物)の作成(段落55)では、バインダ10部とフラックス90部を混合し、希釈溶剤を添加して、固形分50%のアルミニウムろう付け用組成物としている。
(4)特許文献4
水分散性のカチオン性ポリマー微粒子とフラックスを水に分散させたアルミニウムろう付け用組成物が開示されている(請求項1)。
上記カチオン性ポリマー微粒子は、カチオン性ポリマー乳化剤の存在下で重合性モノマー((メタ)アクリル酸エステル系モノマー、スチレン類、(メタ)アクリルアミドなど;段落26)を乳化重合して得られる(段落16、25)。製造例1(段落37)では、モノマーにスチレン、(メタ)アクリル酸エステルなどを使用し、不飽和カルボン酸は使用していない。
また、組成物の実施例1を見ると(段落40)、アルコールは含まず、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部材への塗布性は良くないものと思われる。
(5)その他の特許文献5〜7
メタクリル酸エステル系重合体をバインダにしたアルミニウムろう付け用組成物に係わる先行文献として、特許文献5〜7がある。
上記特許文献5の樹脂バインダの合成例(段落30〜35)では酸価は不明であり、ろう付け用組成物の実施例1では、樹脂バインダ9部、フラックス91部、アルコール33部、水4部を配合している。
上記特許文献6の樹脂バインダの酸価は40(段落28)、特許文献7の樹脂バインダの酸価は約25である(段落35)。
特開2000−153393号公報 特開平11−239869号公報 特開2000−000687号公報 特開2007−175746号公報 特開2009−208129号公報 特開2009−142870号公報 特開2008−207237号公報
メタクリル酸エステル系の樹脂バインダでは、通常、酸価が低すぎるとバインダとしての機能(例えば、密着性)が低下したり、ケン化の際に水への溶解性が悪くなるため、例えば、上記引用文献1では、酸価は20〜80の範囲に調整される。
しかしながら、その反面、メタクリル酸エステル系重合体の酸価が増すと、ろう付け時の熱分解性が損なわれて炭化物が残存し易くなり、樹脂の残渣に由来する黒変が認められ、ろう付け後の外観が悪くなるという問題がある。また、黒変が発生するとフィレットの延びも悪くなり、ろう付け性も低下するという弊害もある。
そのうえ、熱交換器をろう付けする場合、最近では、熱交換器のコンパクト化でパーツ間が狭くなり、いわば閉鎖空間での作業となるため、バインダ樹脂がより一層熱分解し難いという実情がある。
そこで、バインダ樹脂の酸価を低く調整してろう付け後の外観を確保することも考えられるが、上述の通り、ケン化の際の水に対する溶解性が低下し、これを補うために、有機溶剤を使用する場合には、使用時に引火や爆発の危険性があり、労働衛生上、作業環境上に問題が出て来る。
本発明は、水系アルミニウムろう付け用組成物において、ケン化時の水への溶解性を損なうことなく、ろう付け後の外観を良好に確保することを技術的課題とする。
本発明者らは、バインダ樹脂の水への溶解性を円滑に確保しながら、ろう付け後の外観を向上することを鋭意研究した結果、ろう付け後の外観がバインダ樹脂の酸価に影響されるため、酸価を所定の低い範囲に調整してろう付け時の炭化物の発生を抑制するとともに、水溶性アルコールを増量し、他成分の含有量をも相互に調整することで、バインダ樹脂の水への溶解性の不足を補填して水系ろう付け用組成物を円滑に製造できることを見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物と、
(B)非反応性フラックスと、
(C)水溶性アルコールと、
(D)水とを含有する水系アルミニウムろう付け用組成物において、
上記(A)の重合体の酸価が1〜19であり、
且つ、上記成分(A)の含有量(固形分換算)が3〜15重量%、同じく成分(B)が25〜50重量%、成分(C)が45〜50重量%、成分(D)が5〜15重量%であることを特徴とする水系アルミニウムろう付け用組成物である。
本発明2は、(a)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物と、
(b)非反応性フラックスと、
(c)ろう材と、
(d)水溶性(で揮発性を有する)アルコールと、
(e)水とを含有する水系アルミニウムろう付け用組成物において、
上記(a)の重合体の酸価が1〜19であり、
且つ、上記成分(a)の含有量(固形分換算)が3〜10重量%、同じく成分(b)が25〜40重量%、成分(c)が7〜13重量%、成分(d)が35〜55重量%、成分(e)が5〜15重量%であることを特徴とする水系アルミニウムろう付け用組成物である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、成分(A)又は成分(a)の重合体が、メタクリル酸のC1〜C12アルキルエステルと不飽和カルボン酸、或はさらに水酸基含有メタクリル酸エステルとの共重合体であることを特徴とする水系アルミニウムろう付け用組成物である。
本発明4は、アルミニウム部材に上記本発明1〜3のいずれかの水系アルミニウムろう付け用組成物を塗布してフラックス、又はフラックスとろう材を供給し、相手方のアルミニウム部材との間でろう付けを行うことを特徴とするアルミニウムろう付け方法である。
先ず、冒述の特許文献1ではバインダ樹脂の酸価は20〜80であるが、本発明では、バインダ樹脂の酸価を19以下の低めに設定しながら、水溶性ケン化物(バインダ)を初め、水溶性アルコール、フラックス、水、或はさらにろう材の含有比率を相互に調整することで、ろう付け後に黒変の発生を防止して外観を良好に確保できる。
また、水溶性アルコールを増量することによりケン化後の水への溶解性を補って、組成物の製造を円滑化するとともに、組成物の各成分の含有量を相互に調整することで、ろう付け性、密着性塗布性、或は組成物自体の保存安定性を良好に確保できる。
本発明は、第一に、メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物と、非反応性フラックスと、水溶性アルコールと、水とを含有し、或はさらにろう材を含有し、上記重合体の酸価を1〜19に低く設定するとともに、上記重合体以下の各成分の含有量を適正範囲に相互に調整した水系アルミニウムろう付け用組成物であり、第二に、これらの水系組成物を用いたろう付け方法である。
本発明のアルミニウムはアルミニウムの純粋物、アルミニウム合金の両方を包含する概念である。
本発明のバインダ成分は、フラックスをアルミニウム部材に付着するためのものであり、熱分解性が良好でろう付け不良を防止する見地から、メタクリル酸エステル系重合体が選択され、水溶性ケン化物の形態で使用される。
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(本発明1では成分(A)、本発明2では成分(a)である)の酸価(乾燥時)は1〜19であることが必須であり、好ましくは5〜18である。酸価が19の上限を越えると、ろう付け後に外観不良を起こす懸念があり、酸価が1の下限より低いと、水への溶解性が低下してしまう。
このメタクリル酸エステル系重合体においては、その構成モノマーには特に制限はないが、本発明3に示すように、メタクリル酸のC1〜C12アルキルエステルと不飽和カルボン酸、或はさらに水酸基含有メタクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
上記メタクリル酸のC1〜C12アルキルエステルとしては、下記の一般式(1)で表されるモノマー成分を少なくとも一種使用できる。炭素数が12を越える長鎖アルキルエステルになると、メタクリル酸エステル系共重合体の水溶性が低下し、ひいてはろう付け性に悪影響を及ぼす。
CH2=C(CH3)COOR …(1)
(式(1)中、Rは炭素数1から12のアルキル基である。)
当該メタクリル酸のC1〜C12アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリルn−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ウラリルなどが挙げられる。
上記不飽和カルボン酸は水溶性を保持する見地から使用され、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、或はこれらの塩などを単用又は併用できる。
また、上記メタクリル酸エステル系重合体は、アルミニウム部材への密着性を増す見地から、上記モノマー成分以外に、さらに水酸基含有メタクリル酸エステルを構成モノマーに含むことができる。水酸基含有メタクリル酸エステルとしては、下記の一般式(2)〜(4)で表される水酸基含有モノマーが挙げられ、これらを少なくとも1成分以上使用することができる。
CH2=C(CH3)COO(CH2)nOH …(2)
(式(2)中、nは2以上4以下の整数である。)
CH2=C(CH3)COO(C24O)nH …(3)
(式(3)中、nは2以上12以下の整数である。)
CH2=C(CH3)COO(C36O)nH …(4)
(式(4)中、nは2以上12以下の整数である。)
水酸基含有メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリコールエステル(上記一般式(3)のn=2〜12)などが挙げられる。
また、メタクリル酸のC1〜C12アルキルエステルのホモポリマーは脆くてアルミニウム部材への密着性が低く、また、バインダ成分の酸価の下限は1なので、上記共重合体を選択することが好ましい。
上記メタクリル酸エステル系共重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合などの公知の重合法により、ラジカル重合させることにより得られる。
特に、アルコールを溶剤とする溶液重合法により、種々の重合体を得ることが好ましい。
また、上記メタクリル酸エステル系重合体は水溶液中でカチオン性を示す化合物によってケン化して水溶性にする。
上記カチオン性を示す化合物としては、アンモニア、ジエチルアミン又はトリエチルアミンなどが挙げられるが、ジメチルアミノエタノールなどの揮発性のアミノアルコール類が適する。
メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物としたバインダ成分の固形分濃度は5〜80重量%程度が好ましく、より好ましくは10〜55重量%である。
本発明の非反応性フラックス(本発明1では成分(B)、本発明2では成分(b))はフッ化物系フラックスを主成分とし、この範囲内で制限なく任意のものが使用できる。
非反応性フラックスの具体例としては、フルオロアルミン酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、又はフルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体やフルオロアルミン酸セシウムなどが挙げられ、フルオロアルミン酸カリウムが好ましい。従って、フルオロ亜鉛酸カリウムやフルオロ亜鉛酸セシウムなどの反応性の亜鉛置換フラックスは本発明のフラックスから排除される。
非反応性フラックスの市販品には、Solvay社製のNocolok Flux(フルオロアルミン酸カリウム)、Nocolok Cs Flux(セシウム系フラックス)などがある。
本発明の水系アルミニウムろう付け用組成物においては、組成物中に水溶性かつ揮発性を有するアルコール(本発明1では成分(C)、本発明2では成分(d))を添加することにより、塗料の表面張力を低下させて、アルミニウム部材への塗料の濡れ性を向上させ、水のハジキ現象を抑制して均一に塗布することができる。この場合、引火や爆発等の危険を抑制する見地に立てば、引火点が30℃以上のアルコールの使用が好ましく、引火点が高いアルコールには、少量の添加で塗膜の表面張力をより低下させる利点もある。
上記引火点が30℃以上のアルコールの具体例としては、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、1,3ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
但し、本発明では、メタノール、エタノール、IPAなどの引火点が30℃未満の水溶性アルコールを排除するものではない。
また、本発明の水系アルミニウムろう付け用組成物にあっては、フラックス、バインダ、水溶性アルコール、水の必須成分に加えて、ろう材を含有することができる。
上記ろう材(本発明2では成分(c))としては、金属ケイ素粉末、ケイ素−アルミニウム合金、或はこれらに少量のマグネシウム、銅、ゲルマニウム等を含む合金などが挙げられる。ろう材の市販品には例えばSilgrain(Elkem社製)があり、フラックスとろう材の混合物の市販品には、Solvay社製のNocolok Sil Flux(フルオロアルミン酸カリウムと金属ケイ素粉末の混合物)がある。
前述した通り、本発明1の水系アルミニウムろう付け用組成物は、(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物と、(B)非反応性フラックスと、(C)水溶性アルコールと、(D)水とを含有する。
本発明1では、組成物中の成分(A)の含有量(固形分換算)は3〜15重量%であることが必要であり、好ましくは5〜10重合%である。当該重合体の水溶性ケン化物はろう付け後の外観に重要な要素となるため、含有量が上限(15重量%)を越えるとろう付け後の外観が悪化し、また、水溶性ケン化物の含有量が下限(3重量%)より低いと密着性が悪化し、塗布性(ハンドリング性)が低下する。
上記非反応性フラックス(B)の含有量(固形分換算)は25〜50重量%であることが必要であり、好ましくは30〜45重量%である。フラックスの含有量が上限(50重量%)を越えると組成物の塗布性が悪化すると共にコストアップを引き起こし、下限(25重量%)より低いとフラックスの機能が充分に発揮されず、ろう付け性が悪化する。
上記水溶性アルコール(C)の含有量は45〜50重量%であることが必要である。含有量が上限を越えると引火性や臭気等により労働衛生面の見地から作業環境が悪化し、下限より低いと組成物の塗布性(濡れ性)が悪化する。特に、前述したように、本発明では、重合体(A)の酸価を低めに設定しているため、重合体のケン化後の水への溶解性を補う見地から、水溶性アルコールの含有量は多めに設定する必要がある。
また、水は添加することで労働衛生上の作業環境を保持し、組成物の引火性を回避する役目をする。水(D)の含有量は5〜15重量%であることが必要であり、好ましくは8〜12重量%である。水の含有量が上限(15重量%)を越えるとバインダ樹脂の乾燥時の酸価が低いために、組成物の保存安定性を損なう。また、含有量が下限(5重量%)より低いと、上述の通り、引火性や臭気等が増し、労働衛生面の作業性が悪化する。
当該ろう付け組成物は水の希釈による全体の固形分濃度並びに粘度を適正範囲に調整される。水の希釈による組成物全体の固形分濃度は25〜80重量%が適しており、好ましくは35〜55重量%である。
一方、本発明2のろう付け組成物は、基本的に本発明1のろう付け組成物にろう材をさらに加えたものであり、従って、(a)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物と、(b)非反応性フラックスと、(c)ろう材と、(d)水溶性アルコールと、(e)水とを含有する。
この場合、上記(a)の重合体の酸価を1〜19(好ましくは5〜18)の低めに設定する点は本発明1と同じである。
また、上記成分(a)の含有量(固形分換算)は3〜10重量%(好ましくは4〜8重量%)、同じく成分(b)が25〜40重量%(30〜35重量%)、成分(c)が7〜13重量%、成分(d)が35〜55重量%(40〜50重量%)、成分(e)が5〜15重量%(8〜12重量%)であることが必要である。
ろう材(c)の含有量が上限を越えてもろう付けの品質は余り変わらずコストの無駄であり、下限より低いと当然ながらろう付け性が悪化する。
水で希釈した場合の全体の固形分濃度は20〜80重量%が適しており、30〜60重量%が好ましい。
本発明の水系ろう付け用組成物を用いたろう付けにあっては、アルミニウム部材にろう付け用組成物を塗布して、フラックス(又はフラックスとろう材)を供給し、上記アルミニウム部材を所定構造に組み立てた後、ろう付け温度に加熱することで、塗布したアルミニウム部材と相手方の部材との間でろう付けすることを基本原理とする(本発明4参照)。
アルミニウム部材の組み立てに際しては、ろう材を含まない本発明1のろう付け用組成物を一方のアルミニウム部材に塗布し、相手方のアルミニウム部材(ろう材をクラッドしたブレージングシート)との間で組み付けを行ってろう付けすることになる。また、本発明2のように、ろう付け用組成物がろう材を含む場合には、相手材はろう材なしのアルミニウム部材(ベア材)となる。
本発明のろう付け用組成物の塗布方法に特に制限はなく、ロールコート法、浸漬法、スプレー法などを初め、任意の方法を適用することができる。
但し、上記浸漬法は、フラックスの沈殿に起因して、一定組成比のろう付け用組成物を高速で塗布することが困難になる恐れがあり、スプレー法は塗着効率があまり良くなく、スプレーガンが目詰まりするなどの問題もあるため、ロールコーターで水系ろう付け用組成物をアルミニウム部材に塗布するロールコート方式が好ましい。
上記ロールコート方式にあっては、予め部材を任意の構造に組み立てる前段階で(つまり部材が板状或は平面状態の時に)、本発明の水系ろう付け用組成物をアルミニウム部材の表面に対して必要な量で必要とされる部位に均一且つ効率よく供給することでろう付けできるため、このプレコート方式の採用によって生産性が高まるという利点がある。
本発明の水系ろう付け用組成物の塗布に当たっては、ろう付け性と塗布安定性のバランスから、当該組成物の付着量(乾燥重量)は3〜100g/m2が適しており、好ましくは5〜20g/m2である。
上記ろう付け方法においては、アルミニウム部材を所定構造に組み立てた後、窒素雰囲気下でろう付け温度まで加熱してろう付けを行うが、本発明では、バインダ樹脂にメタクリル酸エステル系重合体を使用し、且つ、重合体の酸価を低く抑えるため、通常のろう付け温度(600℃程度)より低い温度で、当該重合体が短時間で解重合して揮発性の単量体となるため、ろう付け時にはバインダが消失し、ろう付け箇所にバインダやその炭化物が残存することを防止し、安定したろう付けを行いながら、ろう付け後の外観にも優れる。
以下、メタクリル酸エステル系共重合体(バインダ樹脂)の合成例、合成例で得られた共重合体を用いた本発明の水系アルミニウムろう付け用組成物の実施例、実施例で得られた水系ろう付け用組成物のろう付け後の外観、ろう付け性、密着性、保存安定性などの各種評価試験例を順次説明する。実施例の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《メタクリル酸エステル系共重合体の合成例》
下記の合成例1〜3のうち、合成例1は酸価が約3のメタクリル酸系共重合体の例、合成例2は同じく酸価が約15の例、合成例3は酸価が約19の例である。
また、比較合成例1は酸価が本発明の適正範囲の上限(19)を越える共重合体の例(いわば、冒述の特許文献1に記載の共重合体の準拠例)である。
(1)合成例1
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、169部のIPAを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸メチル31部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル31部、メタクリル酸イソブチル87部、メタクリル酸0.7部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、乾燥時の酸価が約3のバインダBを得た。
次に、撹拌装置、蒸気凝集除去装置および窒素導入管を備えた反応装置に、113重量部の上記溶液、90部の3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(引火点が30℃以上のアルコール)、33部のイオン交換水および0.3部のジメチルアミノエタノールを仕込んだ後、窒素気流下で系内が還流するまで昇温した。蒸気凝集除去装置を用いて、系内のIPA60部を除去し、固形分が30%のアルミニウムろう付け用バインダ(メタクリル酸エステル系共重合体の水溶性ケン化物)を得た。
(2)合成例2
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、169部のIPAを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸メチル31部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル31部、メタクリル酸イソブチル84部、メタクリル酸3.5部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、乾燥時の酸価が約15のバインダCを得た。
次に、撹拌装置、蒸気凝集除去装置および窒素導入管を備えた反応装置に、113部の上記溶液、90部の3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、33部のイオン交換水および1.2部のジメチルアミノエタノールを仕込んだ後、窒素気流下で系内が還流するまで昇温した。蒸気凝集除去装置を用いて、系内のIPA60部を除去し、固形分が30%のアルミニウムろう付け用バインダ(メタクリル酸エステル系共重合体の水溶性ケン化物)を得た。
(3)合成例3
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、169部のIPAを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸メチル32部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル31部、メタクリル酸イソブチル83部、メタクリル酸4.4部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、乾燥時の酸価が約19のバインダD得た。
次に、撹拌装置、蒸気凝集除去装置および窒素導入管を備えた反応装置に、113部の上記溶液、89部の3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、33部のイオン交換水および1.5部のジメチルアミノエタノールを仕込んだ後、窒素気流下で系内が還流するまで昇温した。蒸気凝集除去装置を用いて、系内のIPA60部を除去し、固形分が30%のアルミニウムろう付け用バインダ(メタクリル酸エステル系共重合体の水溶性ケン化物)を得た。
(4)比較合成例1
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、169部のIPAを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸メチル31部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル30部、メタクリル酸イソブチル83部、メタクリル酸5.6部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、乾燥時の酸価が約25のバインダEを得た。
次に、撹拌装置、蒸気凝集除去装置および窒素導入管を備えた反応装置に、113部の上記溶液、90部の3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、33部のイオン交換水および1.9部のジメチルアミノエタノールを仕込んだ後、窒素気流下で系内が還流するまで昇温した。蒸気凝集除去装置を用いて、系内のIPA60部を除去し、固形分が30%のアルミニウムろう付け用バインダ(メタクリル酸エステル系の水溶性ケン化物)を得た。
そこで、上記合成例1〜3及び比較合成例1で得られた各バインダ(メタクリル酸エステル系共重合体の水溶性ケン化物)を用いて、本発明の水系アルミニウムろう付け用組成物を製造した。
《水系アルミニウムろう付け用組成物の実施例》
下記の実施例及び比較例のうち、実施例1A〜9A、比較例1A〜13Aが属するA群はろう材を含まず、フラックスとバインダを含有するろう付け用組成物の例であり、実施例1B〜9B、比較例1B〜13Bが属するB群は、フラックスとバインダに加えて、ろう材を含むろう付け用組成物の例である。
上記実施例1A〜9Aのうち、実施例1A〜3Aはバインダとフラックスと水溶性アルコールと水の含有量を固定してバインダ樹脂の酸価を変化させた例であり、実施例4A〜6A及び実施例7A〜9Aも夫々同様である。特に、実施例3A、6A、9Aはバインダの酸価を本発明の適正範囲の上限(19)に設定した例である。
比較例1A〜13Aのうち、比較例1A〜4Aはバインダの含有量が本発明の適正範囲の下限(3%)より少ない例、比較例8A〜11Aはバインダの含有量が同範囲の上限(15%)より多い例、比較例12Aは水溶性アルコールの含有量が本発明の適正範囲の下限(35%)より少ない例、比較例13Aは水の含有量が本発明の適正範囲の上限(15%)より多い例、比較例4A〜7Aと11Aはバインダ樹脂の酸価が本発明の適正範囲を超える例(特に、比較例5A〜7Aは組成物の組成全体は本発明に適合するが、酸価のみが本発明に適合しない例)である。
一方、ろう材を含む実施例1B〜9Bと比較例1B〜13Bについても、A群の実施例及び比較例に対して、対応するナンバーの趣旨は同じである。例えば、実施例1B〜3Bは、実施例1A〜3Aと同様に、バインダとフラックスと水溶性アルコールと水の含有量を固定してバインダの酸価を変化させた例であり、比較例5B〜7Bは、比較例5A〜7Aと同様に、組成物の組成全体は本発明に適合するが、酸価のみが本発明に適合しない例である。
尚、図1〜図2の上半分の欄は水系アルミニウムろう付け用組成物の組成をまとめた。但し、図1はA群の各組成、図2はB群の各組成である。
(1)実施例1A
上記合成例1で得られた乾燥時の酸価が約3で、固形分が30%のバインダ34部(固形分換算で10部)と、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックス35部に、水3部及び水溶性アルコールとしての3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール28部を加えて希釈し、固形分濃度が45%の水系アルミニウムろう付け用組成物を得た。
尚、上記水溶性アルコールについては、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールに代えて、前述の沸点が30℃以上の各種アルコールを使用しても、問題なく使用できた(他の実施例や比較例も同様であった)。
(2)実施例2A
上記合成例2で得られた乾燥時の酸価が約15で、固形分が30%のバインダ34部(固形分換算で10部)と、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックス35部に、水3部及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール28部を加えて希釈し、固形分濃度が45%の水系アルミニウムろう付け用組成物を得た。
(3)実施例3A
上記合成例3で得られた乾燥時の酸価が約19で、固形分が30%のバインダ34部(固形分換算で10部)と、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックス35部に、水3部及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール28部を加えて希釈し、固形分濃度が45%の水系アルミニウムろう付け用組成物を得た。
(4)実施例4A〜9A
上記合成例1〜3で得られた乾燥時の酸価が約3、15、19で、固形分が30%の各バインダを用いて、上記実施例1Aを基本として、図1に示す組成で水系アルミニウムろう付け用組成物を製造した。
(5)比較例1A
上記合成例1で得られた乾燥時の酸価が約3で、固形分が30%のバインダ3部(固形分換算で1部)と、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックス35部に、水9部及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール52部を加えて希釈し、固形分濃度が36%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(6)比較例2A〜13A
上記合成例1〜3及び比較合成例1で得られた乾燥時の酸価が約3、15、19及び25で、固形分が30%の各バインダを用いて、上記比較例1Aを基本として、図1に示す組成で水系アルミニウムろう付け用組成物を製造した。
(7)実施例1B
上記合成例1で得られた乾燥時の酸価が約3で、固形分が30%のバインダ17部(固形分換算で5部)と、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックス32部と、ろう材としての金属珪素粉末8部とを混合し、水7部及び水溶性アルコール3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール36部を加えて希釈し、固形分濃度が45%のアルミニウムろう付け用組成物を得た。
(8)実施例2B〜9B
上記合成例2〜3で得られた乾燥時の酸価が約15及び19で、固形分が30%の各バインダを用いて、上記実施例1Bを基本として、図2に示す組成で水系アルミニウムろう付け用組成物を製造した。
(9)比較例1B
上記合成例1で得られた乾燥時の酸価が約3で、固形分が30%のバインダ3部(固形分換算で1部)と、ふっ化アルミン酸カリウム系フラックス36部と、ろう材としての金属珪素粉末8部とを混合し、水9部及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール43部を加えて希釈し、固形分濃度が45%の水系アルミニウムろう付け用組成物を得た。
(10)比較例2B〜13B
上記合成例1〜3及び比較合成例1で得られた乾燥時の酸価が約3、15、19及び25で、固形分が30%の各バインダを用いて、上記比較例1Bを基本として、図2に示す組成で水系アルミニウムろう付け用組成物を製造した。
《水系アルミニウムろう付け用組成物の性能評価試験例》
そこで、上記実施例1A〜9A、1B〜9B及び比較例1A〜13A、1B〜13Bで得られた各水系ろう付け用組成物について、下記の各種評価試験に供した。
先ず、上記水系ろう付け用組成物を用いてろう付けする前に、組成物自体の保存安定性を調べた。
(1)保存安定性
200ccのガラス瓶にろう付け用組成物を200g入れて、23℃にて2ヶ月間保存し、初期状態からの変化を目視観察して、次の基準で優劣を評価した。
○:組成物が均一で、濁りや分離が見られなかった。
△:組成物が不均一で、若干の濁りが見られた。
×:組成物が不均一で、明らかに濁りや分離が見られた。
次いで、各水系ろう付け用組成物をアルミニウム部材に塗布することにより、ろう付け評価用の試験片を作成した。
即ち、各ろう付け用組成物が塗布されたアルミニウム部材を水平材(JIS-A3003合金、60mm×25mm×0.3mm)とするとともに、マンガン1.2%及び亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金にケイ素−アルミニウム合金(ろう材)をクラッドしたブレージングシートよりなる垂直材(55mm×25mm×1.0mm)またはマンガン1.2%及び亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金を前記水平材に逆T字型に組み付けて、ステンレスワイヤーで固定し、ろう付け評価用の試験片を作成した。
その後、上記試験片をろう付け炉(箱型電気炉、ノリタケTCF社製、A(V)-DC-M)を用いて、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて605℃で加熱してろう付け試験を行った。
そして、ろう付け試験の結果に基づいて、次の各種試験での性能の優劣を評価した。
(2)外観
ろう付け試験後の外観を次の基準で目視にて評価した。
○:アクリル樹脂の残渣に由来する黒変が全く見られなかった。
△:アクリル樹脂の残渣に由来する黒変が試験片の一部に見られた。
×:アクリル樹脂の残渣に由来する黒変が試験片全体に明らかに見られた。
(3)ろう付け性
ろう付け試験後のフィレット長さを計測し、目視観察により次の基準で評価した。
○:外観上に問題なく、片側20mm以上のフィレットが形成されていた。
△:外観上の問題に拘わらず、片側10mm以上で20mm未満のフィレットしか形成され ていなかった。
×:外観上変色が見られ、フィレットが10mm未満であり、又は形成されなかった。
(4)密着性
ろう付け用組成物をロールコータ(望月機工製作所社製)を用いて、塗布量が10±1g/m2となるようにアルミニウム部材(JIS-A3003合金)に塗布し、ギアオーブン(TABAI ESPEC社製、PH-301)で180℃、90秒の条件で乾燥させた後、JIS(K5600-5-4)に準拠して鉛筆硬度試験を実施した。
尚、鉛筆硬度はH→F→HB→Bの順に軟らかくなり、Bに付記した番号は大きいほうが軟らかい。
○:密着性が5B以上であった。
△:密着性が6Bであった。
×:密着性が6B未満であった。
(5)塗布性
ろう付け用組成物をロールコータ(望月機工製作所社製)にて、塗布量が10±1g/m2となるように均一に塗布することが可能か否かを実施した。
○:60分以上塗布作業を続けても、塗布量のばらつきが見られなかった。
△:30分以上60分以内で塗布量が±3g/m2以上ばらついた。
×:30分以内で塗布量が±3g/m2以上ばらついた。
(6)安全性
ろう付け用組成物の安全性を確認するために、臭気の観点を判断基準として実際に臭いを嗅いで確認した。
○:溶剤臭は弱く、不快感は認められなかった。
△:溶剤臭は強いが、不快感はなかった。
×: 溶剤臭が強く、不快感が認められた。
(7)総合評価
ろう付け用組成物(塗料)としての実用上の優劣を、上記各種試験結果を総合することにより評価した。
○:すべての評価項目が○であった。
△:各種試験の評価項目に1つ以上の△があった。
×:各種試験の評価項目に1つ以上の×があった。
《水系アルミニウムろう付け用組成物の試験結果》
図1の下半分の欄は実施例1A〜9A及び比較例1A〜13Aの試験結果、図2の下半分の欄は実施例1B〜9B及び比較例1B〜13Bの試験結果である。
以下では、A群のろう材を含まないろう付け用組成物(塗料)を中心に試験結果を説明し(図1参照)、ろう材を含む塗料(図2参照)については補足的に説明する。
(1)先ず、バインダ成分を構成する共重合体の酸価が本発明の適正範囲の上限(=19)より大きいが、塗料の組成は本発明1に適合する比較例5A〜7Aを見ると、ろう付け後の外観は△〜×であり、ろう付け性も同様に△〜×であった。
これに対して、共重合体の酸価が3〜19の低めに設定された実施例1A〜9Aでは、ろう付け後の外観はいずれも○であり、ろう付け性の評価も同様であった。また、低い酸価にも拘わらず、実施例1〜9の塗布性はいずれも○の評価であった。
これにより、比較例5A〜7Aとの対比において実施例1A〜9Aを見ると、バインダ樹脂の酸価の大小はろう付け後の外観に影響し、酸価を低めに抑えることで黒変のない優れた外観を獲得でき、また、水溶性アルコールの含有量を多めに調整することで、塗布性(濡れ性)も良好になることが分かった。
しかも、実施例の中で共重合体の酸価が最も低い1A、4A、7A(共に酸価3)は塗布性に問題はなかった。しかしながら、酸価が過剰に低いと、共重合体のケン化後の水への溶解性が低下するため、実際に酸価ゼロの共重合体では、塗布性などに劣り、塗料としての実用性に問題があった。
一方、図2に見るように、B群のろう材を含む塗料も、上記A群と同様の結果であった(実施例1B〜9B及び比較例4B〜7B参照)。
(2)バインダ成分の含有量が本発明の適正範囲の上限(15重量%)を越える比較例8A〜11Aでは、やはり、ろう付け後の外観は△〜×であり、ろう付け性も同様に△〜×であった。
これに対して、バインダ成分の含有量が適正範囲にある実施例1A〜9Aでは、ろう付け後の外観、ろう付け性の評価はいずれも○であった。
これにより、比較例8A〜11Aとの対比において実施例1A〜9Aを見ると、バインダ成分の含有量はろう付け後の外観に影響し、含有量を所定以下に抑制することで黒変のない優れた外観を獲得できること、また、比較例8A〜11Aの中でも、バインダ樹脂の酸価が本発明の適正範囲の上限(=19)か、これを越える比較例10A〜11Aでは、外観とろう付け性の評価は共に×になることが分かった。逆に、バインダ成分の含有量が本発明の適正範囲より少ない比較例1A〜4Aでは、密着性が低下し、塗布性も良くなかった。
一方、図2に見るように、B群のろう材を含む塗料も、上記A群と同様の結果であった(実施例1B〜9B及び比較例8B〜11B参照)。
(3)前述した通り、実施例1A〜9Aではバインダ樹脂の酸価を低く設定したが、その分を補填するように水溶性アルコールの含有量を多めに調整したので、かなり低い酸価に設計した実施例1、4、7(酸価=3)であるにも拘わらず、塗布性(濡れ性)は良好であった。
従って、塗料の組成とバインダ樹脂の酸価は本発明に適合するが、水溶性アルコールの含有量が下限(35重量%)より少ない比較例12では、塗布性(濡れ性)を損なうことから、酸価を低めに抑えたバインダ樹脂を使用する場合、塗料の塗布性を良好に担保するためには、水溶性アルコールを増量してバインダ樹脂の水への溶解性を補う必要があることが確認できた。
尚、比較例として提示はしなかったが、水溶性アルコールの含有量が上限を越えると、臭気が増して労働衛生上の環境が悪化し、引火の危険も懸念された。
一方、図2に見るように、B群のろう材を含む塗料も、上記A群と同様の結果であった(実施例1B〜9B及び比較例12B参照)。
(4)塗料の組成とバインダ樹脂の酸価は本発明に適合するが、水の含有量が本発明の適正範囲の上限(15重量%)より多い比較例13Aでは、塗料の保存安定性が悪化したが、水の含有量が本発明に適合した実施例1A〜9Aでは、いずれも保存安定性は良好であった。
尚、比較例として提示はしなかったが、水の含有量が下限を下回ると、臭気が増して労働衛生上の環境が悪化し、引火の危険も懸念された。
一方、図2に見るように、B群のろう材を含む塗料も、上記A群と同様の結果であった(実施例1B〜9B及び比較例13B参照)。
このB群の塗料については、比較例として提示はしなかったが、ろう材の含有量が少なすぎるとろう付け性が悪化した。また、ろう材を過剰に多く使用してもろう付け性などの評価に変化はなかった。
(5)上記(1)〜(4)に見るように、ろう付け後の外観を主眼として、ろう付け性、保存安定性、密着性、塗布性、臭気の全体評価において、実施例1A〜9Aは水系ろう付け塗料として総合的に優れていた。
従って、ろう付け塗料として、特に外観を初め、他のろう付けの際の各種性能を良好に確保するためには、バインダ樹脂の酸価を低めに抑えながら、塗料の組成を相互に適正範囲に調整すること(特に、水溶性アルコールの増量)の重要性が明らかになった。
B群の塗料についても同様であった。
実施例1A〜9A並びに比較例1A〜13Aの水系アルミニウムろう付け用組成物の組成、並びに外観やろう付け性や密着性などの各種評価試験結果をまとめた図表である。 実施例1B〜9B並びに比較例1B〜13Bについての図1の相当図である。

Claims (4)

  1. (A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物と、
    (B)非反応性フラックスと、
    (C)水溶性アルコールと、
    (D)水とを含有する水系アルミニウムろう付け用組成物において、
    上記(A)の重合体の酸価が1〜19であり、
    且つ、上記成分(A)の含有量(固形分換算)が3〜15重量%、同じく成分(B)が25〜50重量%、成分(C)が45〜50重量%、成分(D)が5〜15重量%であることを特徴とする水系アルミニウムろう付け用組成物。
  2. (a)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物と、
    (b)非反応性フラックスと、
    (c)ろう材と、
    (d)水溶性アルコールと、
    (e)水とを含有する水系アルミニウムろう付け用組成物において、
    上記(a)の重合体の酸価が1〜19であり、
    且つ、上記成分(a)の含有量(固形分換算)が3〜10重量%、同じく成分(b)が25〜40重量%、成分(c)が7〜13重量%、成分(d)が35〜55重量%、成分(e)が5〜15重量%であることを特徴とする水系アルミニウムろう付け用組成物。
  3. 成分(A)又は成分(a)の重合体が、メタクリル酸のC1〜C12アルキルエステルと不飽和カルボン酸、或はさらに水酸基含有メタクリル酸エステルとの共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水系アルミニウムろう付け用組成物。
  4. アルミニウム部材に請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系アルミニウムろう付け用組成物を塗布してフラックス、又はフラックスとろう材を供給し、相手方のアルミニウム部材との間でろう付けを行うことを特徴とするアルミニウムろう付け方法。
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