JP2008207237A - アルミニウムろう付け用塗料及び当該ろう付け方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 Mg添加の高強度アルミニウム材に適用して良好なろう付け性を確保する。
【解決手段】 Mg添加のアルミニウム材のろう付け用塗料において、(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、(B)非反応性セシウム系フラックスと、(C)水溶性で揮発性を有するアルコールとを含有する水系アルミニウムろう付け用塗料である。反応性フラックスに属するフルオロ亜鉛酸セシウム等とは異なり、フルオロアルミン酸セシウムのような非反応性フラックスを用いるうえ、バインダにメタクリル酸エステル系重合体を使用するため、良好なろう付け性を確保できる。水系であり、爆発や引火の危険もない。
【選択図】 なし
【解決手段】 Mg添加のアルミニウム材のろう付け用塗料において、(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、(B)非反応性セシウム系フラックスと、(C)水溶性で揮発性を有するアルコールとを含有する水系アルミニウムろう付け用塗料である。反応性フラックスに属するフルオロ亜鉛酸セシウム等とは異なり、フルオロアルミン酸セシウムのような非反応性フラックスを用いるうえ、バインダにメタクリル酸エステル系重合体を使用するため、良好なろう付け性を確保できる。水系であり、爆発や引火の危険もない。
【選択図】 なし
Description
本発明はアルミニウムろう付け用塗料並びに当該塗料を用いたろう付け用方法に関して、マグネシウムの添加で高強度化したアルミニウム又はアルミニウム合金を良好にろう付けできるものを提供する。
従来、例えば、車両に搭載されるエバポレータ、コンデンサ等によって代表される自動車用アルミニウム熱交換器に用いられるアルミニウム又はアルミニウム合金製の部材をろう付けする際には、ろう付け用のフラックス又はフラックスとろう材に加え、さらに接合部に均一に付着させるためのバインダを混合し、ろう付け部に塗布することにより、ろう付け作業が行われていた。
このようなアルミニウムろう付け用塗料の従来技術を挙げると、次の通りである。
先ず、特許文献1には、所定のガラス転移温度及び酸価を有するメタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物をバインダとし、フルオロアルミン酸カリウム系フラックス及びアルコールを含有し、或は、さらにろう材を含有する水系アルミニウムろう付け用塗料、並びに、これらの塗料をアルミニウム材に適用するろう付け方法が開示されている(請求項1〜5)。
このようなアルミニウムろう付け用塗料の従来技術を挙げると、次の通りである。
先ず、特許文献1には、所定のガラス転移温度及び酸価を有するメタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物をバインダとし、フルオロアルミン酸カリウム系フラックス及びアルコールを含有し、或は、さらにろう材を含有する水系アルミニウムろう付け用塗料、並びに、これらの塗料をアルミニウム材に適用するろう付け方法が開示されている(請求項1〜5)。
特許文献2には、アルミニウム材のろう付けにフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩系のフラックスを用いて、耐食性などを向上することが開示されている(請求項1、段落6〜7)。
先行文献3には、マグネシウム(Mg)含有の高強度アルミニウム材のろう付けを安価で良好に達成することを目的として(段落7)、単体化合物表示においてフッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化亜鉛を所定組成で含有するとともに、カリウムとセシウムがフルオロ亜鉛酸塩として存在し、遊離のフッ化カリウム及びフッ化セシウムを含まないろう付け用フラックスが開示されている(請求項1)。
先行文献4には、Mg添加のアルミニウム材のろう付けを良好にするために、単体化合物表示で、フッ化アルミニウム/フッ化セシウムのモル比率が所定範囲にあり、且つ、フルオロアルミン酸セシウム、又はフルオロアルミン酸セシウムとフッ化アルミニウムとの混合物からなるろう付け用フラックスが開示されている(特許請求の範囲、第2頁左上欄〜同頁右上欄)。
先行文献5には、良好なろう付けを目的として、反応性フラックスと、メタクリレートホモポリマー又はメタクリレート共重合体を主成分とする合成樹脂を含むろう付けフラックス組成物が開示されている(請求項1、段落2)。この反応性フラックスには、フルオロケイ酸カリウムやフルオロ亜鉛酸カリウムが挙げられている(請求項2)。
また、先行文献6には、ろう付け用フラックスとポリビニルブチラールバインダ(或は、さらに有機溶剤)を混合し、この混合物を剪断して、有機溶剤に混合したろう付け用フラックス混合物が開示されている(請求項1と9)。上記フラックスには、フルオロアルミン酸カリウム、フルオロアルミン酸セシウム、フルオロアルミン酸亜鉛カリウム、フルオロアルミン酸シリコンとカリウムの混合物が挙げられ(請求項10)、有機溶剤には酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられている(請求項12)。
近年、自動車の軽量化の要請に伴い、自動車熱交換器においても省エネルギー、省資源の観点から構成材料の薄肉化が要請され、開発が進んでいるうえ、熱交換器を構成する部材に対しては高強度のアルミニウム系材料の採用が要望されている。
また、熱交換器サイクル中に用いられる冷媒には、地球温暖化等への対策として炭酸ガス(二酸化炭素)の使用が注目されているが、炭酸ガスを冷媒にすると、フロンを冷媒とする場合に比較して、熱交換器サイクル中の冷媒圧力が高いため、特に熱交換器を構成する部材に高強度のアルミニウム系材料を用いることが強く求められている。
また、熱交換器サイクル中に用いられる冷媒には、地球温暖化等への対策として炭酸ガス(二酸化炭素)の使用が注目されているが、炭酸ガスを冷媒にすると、フロンを冷媒とする場合に比較して、熱交換器サイクル中の冷媒圧力が高いため、特に熱交換器を構成する部材に高強度のアルミニウム系材料を用いることが強く求められている。
このようなアルミニウム合金の高強度化には、マグネシウムの添加が有効であることが知られている。
しかしながら、マグネシウムを添加して高強度化したアルミニウム合金にあっては、上記特許文献1のフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスを適用すると、このフラックスがアルミニウム合金中のマグネシウムと反応して、ろう付け温度より融点が高いフッ化マグネシウム等の化合物が生成し、安定で良好なろう付けができないという不具合が発生する。
また、上記特許文献2に記載のフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩系のフラックス(例えば、フルオロ亜鉛酸カリウム)は反応性フラックスである。これは、ろう付け時の高温によるアルミニウムとの間の反応の結果、その温度で、ろう付け可能なろう付け合金をその場で形成する化学的組成物を含むフラックスである。
従って、このフルオロ亜鉛酸カリウムをベースとするフラックスをMg添加のアルミニウム材に適用すると、置換反応で生成したフルオロアルミン酸カリウムがアルミニウム中のMgと反応して、ろう付け温度より融点の高いフッ化マグネシウムやフッ化マグネシウム・カリウムなどの化合物が生成するため(前記特許文献3の段落5)、やはり前記特許文献1と同様に、安定したろう付けができない。
ちなみに、この特許文献3、或は特許文献5のろう付け用フラックスも亜鉛成分を含むため、特許文献2のフラックスと同様の弊害を免れない。
しかしながら、マグネシウムを添加して高強度化したアルミニウム合金にあっては、上記特許文献1のフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスを適用すると、このフラックスがアルミニウム合金中のマグネシウムと反応して、ろう付け温度より融点が高いフッ化マグネシウム等の化合物が生成し、安定で良好なろう付けができないという不具合が発生する。
また、上記特許文献2に記載のフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩系のフラックス(例えば、フルオロ亜鉛酸カリウム)は反応性フラックスである。これは、ろう付け時の高温によるアルミニウムとの間の反応の結果、その温度で、ろう付け可能なろう付け合金をその場で形成する化学的組成物を含むフラックスである。
従って、このフルオロ亜鉛酸カリウムをベースとするフラックスをMg添加のアルミニウム材に適用すると、置換反応で生成したフルオロアルミン酸カリウムがアルミニウム中のMgと反応して、ろう付け温度より融点の高いフッ化マグネシウムやフッ化マグネシウム・カリウムなどの化合物が生成するため(前記特許文献3の段落5)、やはり前記特許文献1と同様に、安定したろう付けができない。
ちなみに、この特許文献3、或は特許文献5のろう付け用フラックスも亜鉛成分を含むため、特許文献2のフラックスと同様の弊害を免れない。
一方、Mg添加の高強度アルミニウム材料をろう付けする際には、前述の通り、ろう付け部にフラックス、又はフラックスとろう材との混合物を均一に塗布するため、これらをバインダに混合することが行われている。
しかし、有機溶剤に溶解するタイプの上記特許文献5の有機樹脂バインダや、水溶性の有機溶剤を使用した上記特許文献6のバインダでは、母材への付着性は良好で、著しいハジキ現象もなく、均一にろう付け用塗料を塗布できるが、その一方、有機溶剤を使用するために、使用時に引火や爆発の危険性があり、これらの危険性を回避しようとすると、高価な防爆装置が必要になるうえ、衛生上、作業環境上にも大きな問題がある。
これに対して、本出願人が開示した前記特許文献1の水系バインダは、Mg添加の高強度アルミニウム材ではなく、通常のアルミニウム材のろう付け用であるが、この引火や爆発の危険性を回避するもので、特定のメタクリル酸エステル系重合体を使用することで、水系であるにも拘わらず、母材への濡れ性が良好であり、ろう付け時に炭化物の残渣発生を防止して、良好にろう付けできるものである(段落28〜30)。
しかし、有機溶剤に溶解するタイプの上記特許文献5の有機樹脂バインダや、水溶性の有機溶剤を使用した上記特許文献6のバインダでは、母材への付着性は良好で、著しいハジキ現象もなく、均一にろう付け用塗料を塗布できるが、その一方、有機溶剤を使用するために、使用時に引火や爆発の危険性があり、これらの危険性を回避しようとすると、高価な防爆装置が必要になるうえ、衛生上、作業環境上にも大きな問題がある。
これに対して、本出願人が開示した前記特許文献1の水系バインダは、Mg添加の高強度アルミニウム材ではなく、通常のアルミニウム材のろう付け用であるが、この引火や爆発の危険性を回避するもので、特定のメタクリル酸エステル系重合体を使用することで、水系であるにも拘わらず、母材への濡れ性が良好であり、ろう付け時に炭化物の残渣発生を防止して、良好にろう付けできるものである(段落28〜30)。
以上の通り、Mg添加で高強度化したアルミニウム(又はアルミニウム合金)のろう付けに際して、フルオロアルミン酸カリウムなどの従来タイプのフラックスや、反応性フラックスであるフルオロ亜鉛酸カリウム系フラックス(亜鉛置換フラックス)を適用すると、ろう付け不良を起こす恐れがある。
本発明は、このようなMg添加の高強度アルミニウムに適用しても良好なろう付け性を確保できるとともに、優れた経時安定性を具備し、引火や爆発等の危険性のないろう付け用塗料を開発することを技術的課題とする。
本発明は、このようなMg添加の高強度アルミニウムに適用しても良好なろう付け性を確保できるとともに、優れた経時安定性を具備し、引火や爆発等の危険性のないろう付け用塗料を開発することを技術的課題とする。
本発明者らは、上記特許文献1の水系バインダを基本組成として、これにフルオロアルミン酸セシウムやフルオロ亜鉛酸セシウムなどのセシウム系フラックスを組み合わせたアルミニウム用塗料のろう付け性を鋭意研究した結果、セシウム系フラックスの中でも、亜鉛置換フラックス(つまり反応性フラックス)に属するフルオロ亜鉛酸セシウムではろう付け不良が起きること、その一方、フルオロアルミン酸セシウムのような非反応性フラックスではこのような弊害はなく、良好なろう付け性を確保できることを突き止め、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、マグネシウムを添加したアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け用塗料において、
(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)水溶性で揮発性を有するアルコールとを
含有することを特徴とする水系アルミニウムろう付け用塗料である。
(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)水溶性で揮発性を有するアルコールとを
含有することを特徴とする水系アルミニウムろう付け用塗料である。
本発明2は、上記本発明1において、固形分換算で、成分(A)の含有量が1〜50重量部、成分(B)が20〜75重量部、成分(C)が1〜50重量部であり、水の希釈で固形分濃度を20〜80重量%にしたことを特徴とする請求項1に記載の水系アルミニウムろう付け用塗料である。
本発明3は、マグネシウムを添加したアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け用塗料において、
(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)水溶性で揮発性を有するアルコールと、
(D)ろう材とを
含有することを特徴とする水系アルミニウムろう付け用塗料である。
(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)水溶性で揮発性を有するアルコールと、
(D)ろう材とを
含有することを特徴とする水系アルミニウムろう付け用塗料である。
本発明4は、上記本発明3において、固形分換算で、成分(A)の含有量が1〜50重量部、成分(B)が10〜50重量部、成分(C)が1〜50重量部、成分(D)が15〜25重量部であり、水の希釈で固形分濃度を20〜80重量%にしたことを特徴とする請求項3に記載の水系アルミニウムろう付け用塗料である。
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれか1項に記載の非反応性セシウム系フラックスがフルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体、フルオロアルミン酸セシウムであることを特徴とする水系アルミニウムろう付け用塗料である。
本発明6は、マグネシウムを添加したアルミニウム又はアルミニウム合金の部材に本発明1〜5のいずれかの水系塗料を塗布してフラックス、又はフラックスとろう材を供給し、
上記部材を所定構造に組み立て、ろう付け温度に加熱することを特徴とするアルミニウムろう付け方法である。
上記部材を所定構造に組み立て、ろう付け温度に加熱することを特徴とするアルミニウムろう付け方法である。
本発明7は、上記本発明6において、水系塗料をロール転写法により部材に塗布することを特徴とするアルミニウムろう付け方法である。
非反応性のセシウム系フラックスをMg添加の高強度アルミニウム材(アルミニウムやアルミニウム合金の部材)に適用するため、フルオロアルミン酸カリウムなどの従来タイプのフラックス、フルオロ亜鉛酸カリウムなどの亜鉛置換フラックス、或はフルオロ亜鉛酸セシウムなどの反応性セシウム系フラックスを使用した場合のような、ろう付け不良を起こす恐れはなく、同アルミニウム材を良好にろう付けできる。
また、本発明は、上記非反応性セシウム系フラックスに、メタクリル酸エステル系重合体を有効成分とする水系バインダを組み合わせたものなので、引火や爆発などの危険性がないうえ、母材に対する濡れ性や密着性に優れ、ろう付け時に炭化物の残渣が発生することもなく、この面からもMg添加の高強度アルミニウム材に均一に塗布でき、安定したろう付けを円滑に達成できる。
また、本発明は、上記非反応性セシウム系フラックスに、メタクリル酸エステル系重合体を有効成分とする水系バインダを組み合わせたものなので、引火や爆発などの危険性がないうえ、母材に対する濡れ性や密着性に優れ、ろう付け時に炭化物の残渣が発生することもなく、この面からもMg添加の高強度アルミニウム材に均一に塗布でき、安定したろう付けを円滑に達成できる。
本発明は、第一に、Mg添加のアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け用塗料であって、(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、(B)非反応性セシウム系フラックスと、(C)水溶性で揮発性を有するアルコールとを含有し、或はさらに、(D)ろう材を含有する水系アルミニウムろう付け用塗料であり、第二に、これらの水系塗料を用いたアルミニウムろう付け方法である。
本発明の水系ろう付け用塗料はMgを添加して高強度化したアルミニウム材を対象とし、当該アルミニウム材はアルミニウム製及びアルミニウム合金製の部材を包含する概念である。
本発明の水系ろう付け用塗料はMgを添加して高強度化したアルミニウム材を対象とし、当該アルミニウム材はアルミニウム製及びアルミニウム合金製の部材を包含する概念である。
本発明1の水系アルミニウムろう付け用塗料は、
(A)バインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)特定のアルコールとを含有する。
上記バインダ(A)はメタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物である。
上記メタクリル酸系重合体は、モノマー成分として基本的に、下記の一般式(1)で表されるメタクリル酸アルキルエステルの少なくとも1成分以上と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマーの1成分以上を含む共重合体である。
CH2=C(CH3)COOR …(1)
(式(1)中、Rは炭素数1から12のアルキル基である。)
(A)バインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)特定のアルコールとを含有する。
上記バインダ(A)はメタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物である。
上記メタクリル酸系重合体は、モノマー成分として基本的に、下記の一般式(1)で表されるメタクリル酸アルキルエステルの少なくとも1成分以上と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマーの1成分以上を含む共重合体である。
CH2=C(CH3)COOR …(1)
(式(1)中、Rは炭素数1から12のアルキル基である。)
また、上記メタクリル酸エステル系重合体は、上記モノマー成分に、さらに下記の一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4)で表される水酸基含有モノマーのうちの少なくとも1成分以上を含む共重合体であっても良い。
CH2=C(CH3)COO(CH2)nOH …(2)
(式(2)中、nは2以上4以下の整数である。)
CH2=C(CH3)COO(C2H4O)nH …(3)
(式(3)中、nは2以上12以下の整数である。)
CH2=C(CH3)COO(C3H6O)nH …(4)
(式(4)中、nは2以上12以下の整数である。)
これらの水酸基含有モノマーを使用すると、Mg添加のアルミニウム材へのフラックスやろう材の付着性をさらに向上させることができる。
上記メタクリル酸エステル系重合体は、乾燥時の酸価が20〜80、ガラス転移温度が−30℃〜60℃であることが好ましい。
上記重合体の構成モノマーであるカルボキシル基含有モノマーの含有量が多くなり過ぎると、ろう付け時に炭化物が発生し易くなるため、乾燥時の酸価は80を越えない方が良い。また、同酸価が20未満になると、重合体をケン化した場合に水に対する溶解性が低下する。一方、ガラス転移温度が−30℃を下回ると、重合体の粘着性が増し、塗料を塗布したアルミニウム材を積層した場合に、ブロッキングを起こす恐れがあり、ガラス転移温度が60℃を越えると、塗布の付着性が低下する恐れがある。
CH2=C(CH3)COO(CH2)nOH …(2)
(式(2)中、nは2以上4以下の整数である。)
CH2=C(CH3)COO(C2H4O)nH …(3)
(式(3)中、nは2以上12以下の整数である。)
CH2=C(CH3)COO(C3H6O)nH …(4)
(式(4)中、nは2以上12以下の整数である。)
これらの水酸基含有モノマーを使用すると、Mg添加のアルミニウム材へのフラックスやろう材の付着性をさらに向上させることができる。
上記メタクリル酸エステル系重合体は、乾燥時の酸価が20〜80、ガラス転移温度が−30℃〜60℃であることが好ましい。
上記重合体の構成モノマーであるカルボキシル基含有モノマーの含有量が多くなり過ぎると、ろう付け時に炭化物が発生し易くなるため、乾燥時の酸価は80を越えない方が良い。また、同酸価が20未満になると、重合体をケン化した場合に水に対する溶解性が低下する。一方、ガラス転移温度が−30℃を下回ると、重合体の粘着性が増し、塗料を塗布したアルミニウム材を積層した場合に、ブロッキングを起こす恐れがあり、ガラス転移温度が60℃を越えると、塗布の付着性が低下する恐れがある。
上記メタクリル酸エステル系重合体は、団塊重合、溶液重合、懸濁重合などの公知の重合法により、ラジカル重合させることにより得られる。
特に、アルコールを溶剤とする溶液重合法により、種々の重合体を得ることが好ましい。
また、本発明のバインダ(A)は、前記メタクリル酸エステル系重合体を水溶液中でカチオン性を示す化合物によって鹸化して水溶性にしたものである。
上記カチオン性を示す化合物としては、アンモニア、ジエチルアミン又はトリエチルアミンなどが挙げられるが、揮発性のアミノアルコール類が好ましい。
メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物としたバインダ(A)の固形分濃度は1〜40重量%程度が好ましい。
特に、アルコールを溶剤とする溶液重合法により、種々の重合体を得ることが好ましい。
また、本発明のバインダ(A)は、前記メタクリル酸エステル系重合体を水溶液中でカチオン性を示す化合物によって鹸化して水溶性にしたものである。
上記カチオン性を示す化合物としては、アンモニア、ジエチルアミン又はトリエチルアミンなどが挙げられるが、揮発性のアミノアルコール類が好ましい。
メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物としたバインダ(A)の固形分濃度は1〜40重量%程度が好ましい。
本発明1のアルミニウムろう付け用塗料に含まれる非反応性セシウム系フラックス(B)としては、フルオロアルミニウム酸カリウム−セシウム錯体、或は、純粋なフルオロアルミン酸セシウムなどが挙げられ、コスト面からフルオロアルミニウム酸カリウム−セシウム錯体が好ましい。
上記フルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体は、例えば、フルオロアルミン酸セシウムとフルオロアルミン酸カリウムの混合物、或は、フルオロアルミン酸カリウムのカリウム塩の少なくとも一部がセシウム塩で置換されている化合物(フルオロアルミン酸カリウム・セシウム)などを意味する。このフルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体の市販品には、Csx・Ky・Al・Fz(x=0.02、y=1〜2、z=4〜5)で表記することができるSolvay社製のセシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)が好ましい。
このセシウム系フラックスには、コスト面から他のフラックス、例えば、従来のフルオロアルミン酸カリウム(市販品としては、Solvay社製のNocolok Flux)を併用添加しても良い。蓋し、フラックス中にカリウム成分が含有されても、フッ化マグネシウムなどの高融点化合物の生成は本発明のフラックス中のセシウム塩で制御されるものと推定されるからである。また、フルオロケイ酸カリウム、フルオロケイ酸セシウムなどを併用しても差し支えない。
しかしながら、本発明のセシウム系フラックスは非反応性であることが必要であり、フルオロ亜鉛酸セシウムなどの反応性セシウム系フラックスを使用することはできない。また、フルオロ亜鉛酸カリウムを本発明のフラックスと併用することもできない。本発明の水系塗料に亜鉛置換フラックス(フルオロ亜鉛酸カリウムやフルオロ亜鉛酸セシウムなど)を使用すると、亜鉛イオンの発生によりゲル化してしまう恐れがあるからである。
上記フルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体は、例えば、フルオロアルミン酸セシウムとフルオロアルミン酸カリウムの混合物、或は、フルオロアルミン酸カリウムのカリウム塩の少なくとも一部がセシウム塩で置換されている化合物(フルオロアルミン酸カリウム・セシウム)などを意味する。このフルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体の市販品には、Csx・Ky・Al・Fz(x=0.02、y=1〜2、z=4〜5)で表記することができるSolvay社製のセシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)が好ましい。
このセシウム系フラックスには、コスト面から他のフラックス、例えば、従来のフルオロアルミン酸カリウム(市販品としては、Solvay社製のNocolok Flux)を併用添加しても良い。蓋し、フラックス中にカリウム成分が含有されても、フッ化マグネシウムなどの高融点化合物の生成は本発明のフラックス中のセシウム塩で制御されるものと推定されるからである。また、フルオロケイ酸カリウム、フルオロケイ酸セシウムなどを併用しても差し支えない。
しかしながら、本発明のセシウム系フラックスは非反応性であることが必要であり、フルオロ亜鉛酸セシウムなどの反応性セシウム系フラックスを使用することはできない。また、フルオロ亜鉛酸カリウムを本発明のフラックスと併用することもできない。本発明の水系塗料に亜鉛置換フラックス(フルオロ亜鉛酸カリウムやフルオロ亜鉛酸セシウムなど)を使用すると、亜鉛イオンの発生によりゲル化してしまう恐れがあるからである。
本発明1のアルミニウムろう付け用塗料においては、塗料中に水溶性かつ揮発性のアルコール(C)を添加することにより、塗料の表面張力を低下させて、Mg添加の高強度アルミニウム材への塗料の濡れ性を向上させ、アルミニウム材による水のハジキ現象を抑制して、均一に塗布することができる。
しかしながら、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の引火点が30℃未満の水溶性アルコールを塗料中に含有すると、引火や爆発等の危険性が考えられるので、本発明のアルコール(C)にあっては、引火点が30℃以上のものが好ましく、より引火点が高く、かつ少量の添加で塗料の表面張力をより低下させるアルコールの使用が一層好適である。
しかしながら、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の引火点が30℃未満の水溶性アルコールを塗料中に含有すると、引火や爆発等の危険性が考えられるので、本発明のアルコール(C)にあっては、引火点が30℃以上のものが好ましく、より引火点が高く、かつ少量の添加で塗料の表面張力をより低下させるアルコールの使用が一層好適である。
このようなアルコールの具体例としては、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、1,3ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
本発明1の水系アルミニウムろう付け用塗料において、成分(A)〜(C)の含有量及び水での希釈濃度は、本発明2に示す通り、固形分換算値で、上記バインダ(A)は1〜50重量部、非反応性セシウム系フラックス(B)は20〜75重量部、水溶性で揮発性のアルコール(C)は1〜50重量部が好ましく、また、水の希釈で固形分濃度を20〜80重量%にすることが好ましい。さらに、成分(A)のより好ましい含有量は5〜20重量部、同じく成分(B)は25〜70重量部、成分(C)は30〜50重量部であり、より好ましい希釈濃度(固形分濃度)は30〜60重量%である。
フラックス(B)が多すぎると、塗料の付着量には制約があることから、相対的にバインダ(A)の量が減って塗料の付着性が低下し、フラックス(B)が少なすぎるとろう付け性が低下する。
フラックス(B)が多すぎると、塗料の付着量には制約があることから、相対的にバインダ(A)の量が減って塗料の付着性が低下し、フラックス(B)が少なすぎるとろう付け性が低下する。
一方、本発明3の水系アルミニウムろう付け用塗料は、
(A)バインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)特定のアルコールと、
(D)ろう材とを含有したもので、基本的に、本発明1の必須成分にろう材(D)を追加したものである。
従って、本発明3の成分(A)と(B)と(C)は本発明1で使用したものと同様である。
ろう材(D)は金属ケイ素粉末、ケイ素−アルミニウム合金などである。
また、上記非反応性セシウム系フラックス(B)にあっては、本発明1と同様に、フルオロアルミン酸カリウム、フルオロケイ酸カリウムなどの他のフラックスを併用添加することができる。この場合、例えば、フルオロアルミン酸カリウムと金属ケイ素粉末との混合物であるSolvay社製のフラックス(Nocolok Sil Flux)を併用すると、別途、ろう材(D)を混合する必要はない。
(A)バインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)特定のアルコールと、
(D)ろう材とを含有したもので、基本的に、本発明1の必須成分にろう材(D)を追加したものである。
従って、本発明3の成分(A)と(B)と(C)は本発明1で使用したものと同様である。
ろう材(D)は金属ケイ素粉末、ケイ素−アルミニウム合金などである。
また、上記非反応性セシウム系フラックス(B)にあっては、本発明1と同様に、フルオロアルミン酸カリウム、フルオロケイ酸カリウムなどの他のフラックスを併用添加することができる。この場合、例えば、フルオロアルミン酸カリウムと金属ケイ素粉末との混合物であるSolvay社製のフラックス(Nocolok Sil Flux)を併用すると、別途、ろう材(D)を混合する必要はない。
上記本発明3の水系アルミニウムろう付け用塗料にあっては、成分(A)〜(D)の含有量及び水での希釈濃度は、本発明4に示す通り、固形分換算値で、上記バインダ(A)は1〜50重量部、非反応性セシウム系フラックス(B)は10〜50重量部、水溶性で揮発性のアルコール(C)は1〜50重量部、ろう材(D)は5〜25重量部が好ましく、また、水の希釈で固形分濃度を20〜80重量%にすることが好ましい。さらに、成分(A)のより好ましい含有量は5〜20重量部、同じく成分(B)は25〜45重量部、成分(C)は30〜50重量部、ろう材(D)は10〜25重量部であり、より好ましい希釈濃度(固形分濃度)は30〜60重量%である。
この場合、フラックス(B)及びろう材(D)の重量割合はB:D=2:1程度が好ましい。
この場合、フラックス(B)及びろう材(D)の重量割合はB:D=2:1程度が好ましい。
本発明6は、Mg添加の高強度アルミニウム材に上記本発明1〜5の水系塗料を適用したろう付け方法であり、当該水系塗料を塗布してフラックス、又はフラックスとろう材を供給し、上記アルミニウム材を所定構造に組み立て、ろう付け温度に加熱することを基本原理とする。
水系塗料の塗布方法については特に制限はなく、スプレー法、浸漬法、ロール転写法などを初め、任意の方法で行うことができる。
スプレー法は塗着効率があまり良くなく、スプレーガンも目詰まりが生じるなどの問題がある。浸漬法においては、ろう材粉末やフラックスの沈殿に起因して、一定組成比の塗料を高速で塗布することが困難になる恐れがある。従って、本発明7に示す通り、ロール転写によるろう付け方法が実用上最も量産効果が優れ、効率的である(後述のアルミニウム材の組み付け例参照)。
本発明6のろう付け方法にあっては、本発明1〜5の水系塗料を使用することで、予め部材を任意の構造に組み立てる前段階で(つまり部材が板状或は平面状態の時に)、高強度アルミニウム材の表面に対して、必要な量を必要とされる部位に均一且つ効率よく供給することができ、このプレコート方式の採用で生産性が高まるという利点がある。
水系塗料の塗布方法については特に制限はなく、スプレー法、浸漬法、ロール転写法などを初め、任意の方法で行うことができる。
スプレー法は塗着効率があまり良くなく、スプレーガンも目詰まりが生じるなどの問題がある。浸漬法においては、ろう材粉末やフラックスの沈殿に起因して、一定組成比の塗料を高速で塗布することが困難になる恐れがある。従って、本発明7に示す通り、ロール転写によるろう付け方法が実用上最も量産効果が優れ、効率的である(後述のアルミニウム材の組み付け例参照)。
本発明6のろう付け方法にあっては、本発明1〜5の水系塗料を使用することで、予め部材を任意の構造に組み立てる前段階で(つまり部材が板状或は平面状態の時に)、高強度アルミニウム材の表面に対して、必要な量を必要とされる部位に均一且つ効率よく供給することができ、このプレコート方式の採用で生産性が高まるという利点がある。
そして、本発明6のろう付け方法においては、アルミニウム材を所定構造に組み立てた後、窒素雰囲気下でろう付け温度まで加熱してろう付けを行うのである。
本発明の水系塗料1〜5では、塗料中に非反応性セシウム系フラックスを含有することで、Mg添加の高強度アルミニウム材に対しても良好なろう付けを実現できるとともに、バインダにメタクリル酸エステル系重合体を使用するため、ろう付け温度(600℃程度)よりかなり低い温度で、当該重合体が短時間で解重合して揮発性の単量体となるため、ろう付け時にはバインダが消失し、ろう付けの箇所にバインダやその炭化物が残存することがなく、安定したろう付けを行うことができる。
本発明の水系塗料1〜5では、塗料中に非反応性セシウム系フラックスを含有することで、Mg添加の高強度アルミニウム材に対しても良好なろう付けを実現できるとともに、バインダにメタクリル酸エステル系重合体を使用するため、ろう付け温度(600℃程度)よりかなり低い温度で、当該重合体が短時間で解重合して揮発性の単量体となるため、ろう付け時にはバインダが消失し、ろう付けの箇所にバインダやその炭化物が残存することがなく、安定したろう付けを行うことができる。
以下、バインダの製造例、当該バインダを含有する本発明の水系アルミニウムろう付け用塗料の実施例、当該水系塗料をMg添加の高強度アルミニウム材に適用してろう付けした場合のろう付け性、或は水系塗料の経時安定性や引火性の各種評価試験例を述べる。下記の製造例、実施例などの「部」、「%」は、特記しない限り重量基準である。
尚、本発明は下記の製造例、実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
尚、本発明は下記の製造例、実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《バインダの製造例》
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、600部のイソプロピルアルコールを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル385部、メタクリル酸15部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させて、乾燥時の酸価が約25のメタクリル酸エステル系共重合体を得た。
次いで、攪拌装置、蒸気凝集除去装置および窒素導入管を備えた反応装置に、100部の上記共重合体の溶液、227部のイオン交換水および3部のジメチルアミノエタノールを仕込んだ後、窒素気流下で系内が還流するまで昇温した。
そして、蒸気凝集除去装置を用いて、系内のイソプロピルアルコール60部を除去し、固形分が15%のアルミニウムろう付け用バインダを得た。
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、600部のイソプロピルアルコールを仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が80℃となるまで昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル385部、メタクリル酸15部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を約3時間かけて系内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させて、乾燥時の酸価が約25のメタクリル酸エステル系共重合体を得た。
次いで、攪拌装置、蒸気凝集除去装置および窒素導入管を備えた反応装置に、100部の上記共重合体の溶液、227部のイオン交換水および3部のジメチルアミノエタノールを仕込んだ後、窒素気流下で系内が還流するまで昇温した。
そして、蒸気凝集除去装置を用いて、系内のイソプロピルアルコール60部を除去し、固形分が15%のアルミニウムろう付け用バインダを得た。
《アルミニウムろう付け用塗料の実施例》
下記の実施例1〜6のうち、実施例1と3と5はバインダ(A)や非反応性セシウム系フラックス(B)などの組成を変化させたろう材を含まない例であり、実施例2と4と6はバインダ(A)、非反応性セシウム系フラックス(B)及びろう材(D)の組成を変化させた例である。また、実施例1〜6では、水の希釈による塗料の固形分濃度を20〜80%で変化させた。
一方、下記の比較例1〜6のうち、比較例1〜2は従来のフラックス(フルオロアルミン酸カリウム)を使用した例、比較例3〜4は本発明の水系バインダに代えてトルエン溶解バインダを使用した例、比較例5〜6は反応性セシウム系フラックス(フルオロ亜鉛酸セシウム)を使用した例である。また、奇数群の比較例はろう材なしの例、偶数群の比較例はろう材を含む例である。
尚、実施例1〜6及び比較例1〜6の各アルミニウムろう付け用塗料の組成は図1の左寄り欄にまとめた。
下記の実施例1〜6のうち、実施例1と3と5はバインダ(A)や非反応性セシウム系フラックス(B)などの組成を変化させたろう材を含まない例であり、実施例2と4と6はバインダ(A)、非反応性セシウム系フラックス(B)及びろう材(D)の組成を変化させた例である。また、実施例1〜6では、水の希釈による塗料の固形分濃度を20〜80%で変化させた。
一方、下記の比較例1〜6のうち、比較例1〜2は従来のフラックス(フルオロアルミン酸カリウム)を使用した例、比較例3〜4は本発明の水系バインダに代えてトルエン溶解バインダを使用した例、比較例5〜6は反応性セシウム系フラックス(フルオロ亜鉛酸セシウム)を使用した例である。また、奇数群の比較例はろう材なしの例、偶数群の比較例はろう材を含む例である。
尚、実施例1〜6及び比較例1〜6の各アルミニウムろう付け用塗料の組成は図1の左寄り欄にまとめた。
(1)実施例1
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)45部、アルコール(3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール;以下の実施例及び比較例も同じ)40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)45部、アルコール(3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール;以下の実施例及び比較例も同じ)40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(2)実施例2
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにアルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%のアルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにアルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%のアルミニウムろう付け用塗料を得た。
(3)実施例3
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)75部、アルコール15部、水5部を加えて希釈し、固形分濃度が80%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)75部、アルコール15部、水5部を加えて希釈し、固形分濃度が80%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(4)実施例4
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)50部及びろう材(金属ケイ素粉末)25部の混合物とに、さらにアルコール15部、水5部を加えて希釈し、固形分濃度が80%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)50部及びろう材(金属ケイ素粉末)25部の混合物とに、さらにアルコール15部、水5部を加えて希釈し、固形分濃度が80%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(5)実施例5
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)20部、アルコール50部、水30部を加えて希釈し、固形分濃度が20%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)20部、アルコール50部、水30部を加えて希釈し、固形分濃度が20%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(6)実施例6
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)10部及びろう材(金属ケイ素粉末)5部の混合物とに、さらにアルコール50部、水30部を加えて希釈し、固形分濃度が20%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)10部及びろう材(金属ケイ素粉末)5部の混合物とに、さらにアルコール50部、水30部を加えて希釈し、固形分濃度が20%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(7)比較例1
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、フルオロアルミン酸カリウムからなる従来のフラックス(Nocolok Flux)45部、アルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、フルオロアルミン酸カリウムからなる従来のフラックス(Nocolok Flux)45部、アルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(8)比較例2
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、フルオロアルミン酸カリウムからなる従来のフラックス(Nocolok Flux)30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにアルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
尚、非反応性セシウム系フラックス及びろう材の混合物には、前述した通り、Solvay社製のNocolok Sil Fluxを使用しても良い。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、フルオロアルミン酸カリウムからなる従来のフラックス(Nocolok Flux)30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにアルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
尚、非反応性セシウム系フラックス及びろう材の混合物には、前述した通り、Solvay社製のNocolok Sil Fluxを使用しても良い。
(9)比較例3
前記製造例のバインダの代わりに、メタクリレートホモポリマー又はメタクリレート共重合体を主成分とする合成樹脂(Acryloid (Paraloid) B-48N、Rohm&Hass社製)の45%トルエン溶液を5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)45部、トルエン50部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例のバインダの代わりに、メタクリレートホモポリマー又はメタクリレート共重合体を主成分とする合成樹脂(Acryloid (Paraloid) B-48N、Rohm&Hass社製)の45%トルエン溶液を5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)45部、トルエン50部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(10)比較例4
前記製造例のバインダの代わりに、メタクリレートホモポリマー又はメタクリレート共重合体を主成分とする合成樹脂(Acryloid (Paraloid) B-48N、Rohm&Hass社製)の45%トルエン溶液を5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにトルエン50部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例のバインダの代わりに、メタクリレートホモポリマー又はメタクリレート共重合体を主成分とする合成樹脂(Acryloid (Paraloid) B-48N、Rohm&Hass社製)の45%トルエン溶液を5部(固形分換算)と、非反応性セシウム系フラックス(Nocolok Cs Flux)30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにトルエン50部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(11)比較例5
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、冒述の特許文献2の実施例を参考にして得られたフルオロ亜鉛酸セシウム45部、アルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、冒述の特許文献2の実施例を参考にして得られたフルオロ亜鉛酸セシウム45部、アルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
(12)比較例6
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、冒述の特許文献2の実施例を参考にして得られたフルオロ亜鉛酸セシウム30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにアルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
前記製造例で得られたバインダ5部(固形分換算)と、冒述の特許文献2の実施例を参考にして得られたフルオロ亜鉛酸セシウム30部及びろう材(金属ケイ素粉末)15部の混合物とに、さらにアルコール40部、水10部を加えて希釈し、固形分濃度が50%の水系アルミニウムろう付け用塗料を得た。
《アルミニウム材への水系塗料の塗布と当該部材の組み付け例》
そこで、上記アルミニウムろう付け用塗料をMg添加のアルミニウム材にロール転写法で塗布し、ろう付け用構造材を作成した。
即ち、上記実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた各ろう付け用塗料をロールコーター(望月機工製作所社製)を用いて、マグネシウムを含むアルミニウム合金材(7000系)に、塗布量が15±1g/m2となるように塗布し、ギアオーブン(TABAI ESPEC社製、PH-301)で180℃、1分間の条件で乾燥させた。
次いで、図2に示す通り、各塗料が塗布されたアルミニウム部材を逆T字型に組み合わせて、ろう付け用構造材を作成したが、アルミニウム材の組み付けに際しては、塗料中のろう材の含有の有・無により、組み付け作業を下記の2方式に振り分けた。
そこで、上記アルミニウムろう付け用塗料をMg添加のアルミニウム材にロール転写法で塗布し、ろう付け用構造材を作成した。
即ち、上記実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた各ろう付け用塗料をロールコーター(望月機工製作所社製)を用いて、マグネシウムを含むアルミニウム合金材(7000系)に、塗布量が15±1g/m2となるように塗布し、ギアオーブン(TABAI ESPEC社製、PH-301)で180℃、1分間の条件で乾燥させた。
次いで、図2に示す通り、各塗料が塗布されたアルミニウム部材を逆T字型に組み合わせて、ろう付け用構造材を作成したが、アルミニウム材の組み付けに際しては、塗料中のろう材の含有の有・無により、組み付け作業を下記の2方式に振り分けた。
(1)ろう材を含まない塗料の組み付け方法1
実施例1、3、5と比較例1、3、5においては、図2に示す通り、各塗料が塗布されたアルミニウム部材を水平材(60mm×25mm×0.3mm)とするとともに、マンガン1.2%及び亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金に、ケイ素−アルミニウム合金(ろう材)をクラッドしたブレージングシートよりなる垂直材(55mm×25mm×1.0mm)を前記水平材に組み付けて、ろう付け用構造材を作成した。
実施例1、3、5と比較例1、3、5においては、図2に示す通り、各塗料が塗布されたアルミニウム部材を水平材(60mm×25mm×0.3mm)とするとともに、マンガン1.2%及び亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金に、ケイ素−アルミニウム合金(ろう材)をクラッドしたブレージングシートよりなる垂直材(55mm×25mm×1.0mm)を前記水平材に組み付けて、ろう付け用構造材を作成した。
(2)ろう材を含む塗料の組み付け方法2
実施例2、4、6と比較例2、4、6においては、図2に示す通り、各塗料が塗布された部材を水平材として、ろう材をクラッドしないアルミニウム合金(1000系)自体からなる垂直材を当該水平材に組み付けて、ろう付け用構造材を作成した。
但し、水平材と垂直材の形状は上記組み付け方法1と同様とした。
実施例2、4、6と比較例2、4、6においては、図2に示す通り、各塗料が塗布された部材を水平材として、ろう材をクラッドしないアルミニウム合金(1000系)自体からなる垂直材を当該水平材に組み付けて、ろう付け用構造材を作成した。
但し、水平材と垂直材の形状は上記組み付け方法1と同様とした。
《水系アルミニウムろう付け用塗料の性能評価試験例》
そこで、前記ろう付け用構造材をろう付け炉(箱型電気炉、ノリタケTCF社製、A(V)-DC-M)に収容し、窒素ガス雰囲気下において600℃に加熱してろう付けを行った。
そして、下記の通り、バインダの炭化状況や接合部のフィレットの形状を主眼として、接合部のろう付け性の優劣を評価した。
また、下記の通り、前記実施例及び比較例で製造した各塗料について、加温下(50℃)で保存した場合の各塗料の経時安定性の優劣を評価するとともに、引火点測定装置により引火に対する安全性を評価した。
そこで、前記ろう付け用構造材をろう付け炉(箱型電気炉、ノリタケTCF社製、A(V)-DC-M)に収容し、窒素ガス雰囲気下において600℃に加熱してろう付けを行った。
そして、下記の通り、バインダの炭化状況や接合部のフィレットの形状を主眼として、接合部のろう付け性の優劣を評価した。
また、下記の通り、前記実施例及び比較例で製造した各塗料について、加温下(50℃)で保存した場合の各塗料の経時安定性の優劣を評価するとともに、引火点測定装置により引火に対する安全性を評価した。
(1)経時安定性
前記実施例1〜6及び比較例1〜6の各塗料を密閉容器に入れて、50℃で14日間放置し、初期状態からの変化の様子を目視観察し、次の基準で優劣を評価した。
○:塗料の外観に変化がなく、粘度変化が初期の150%以下であった。
△:塗料の外観に変化はないが、粘度変化が初期の150%以上であった。
×:塗料の外観に変化があるか、又は塗料が固化した。
前記実施例1〜6及び比較例1〜6の各塗料を密閉容器に入れて、50℃で14日間放置し、初期状態からの変化の様子を目視観察し、次の基準で優劣を評価した。
○:塗料の外観に変化がなく、粘度変化が初期の150%以下であった。
△:塗料の外観に変化はないが、粘度変化が初期の150%以上であった。
×:塗料の外観に変化があるか、又は塗料が固化した。
(2)ろう付け性
ろう付け後のバインダの炭化状況と接合部のフィレットの状態を目視観察し、次の基準で優劣を評価した。
○:バインダの炭化物は観察されず、接合部のフィレットも良好であった。
△:バインダの炭化残査が観察されたが、接合部のフィレットは良好であった。
×:バインダの炭化残査が観察され、接合部のフィレットも小さかった。
ろう付け後のバインダの炭化状況と接合部のフィレットの状態を目視観察し、次の基準で優劣を評価した。
○:バインダの炭化物は観察されず、接合部のフィレットも良好であった。
△:バインダの炭化残査が観察されたが、接合部のフィレットは良好であった。
×:バインダの炭化残査が観察され、接合部のフィレットも小さかった。
(3)塗料引火性
密閉タグ式引火点測定装置((株)離合社製、210ER)によって、配合後における塗料の引火点の測定を実施し、次の基準で引火に対する安全性を評価した。
○:水分が蒸発するまでの引火性は認められなかった。
×:40℃未満で引火性が認められた。
密閉タグ式引火点測定装置((株)離合社製、210ER)によって、配合後における塗料の引火点の測定を実施し、次の基準で引火に対する安全性を評価した。
○:水分が蒸発するまでの引火性は認められなかった。
×:40℃未満で引火性が認められた。
図1の右寄り欄はその試験結果である。
フルオロアルミン酸カリウムからなる従来のフラックスを使用した比較例1〜2では、経時安定性及びろう付け性ともに評価は良くなく、Mg添加で高強度化したアルミニウム材に対して従来のフラックスはろう付け性を損なうことが確認できた。
これに対して、セシウム系フラックス(フルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体)を使用した実施例1〜6では、経時安定性及びろう付け性ともに良好であり、Mg添加の高強度アルミニウム材に対してセシウム系フラックスは好適であり、また、高温下でも保存安定性は良く、従来の上記フラックスに対してセシウム系フラックスを使用することの重要性が確認できた。
フルオロアルミン酸カリウムからなる従来のフラックスを使用した比較例1〜2では、経時安定性及びろう付け性ともに評価は良くなく、Mg添加で高強度化したアルミニウム材に対して従来のフラックスはろう付け性を損なうことが確認できた。
これに対して、セシウム系フラックス(フルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体)を使用した実施例1〜6では、経時安定性及びろう付け性ともに良好であり、Mg添加の高強度アルミニウム材に対してセシウム系フラックスは好適であり、また、高温下でも保存安定性は良く、従来の上記フラックスに対してセシウム系フラックスを使用することの重要性が確認できた。
また、トルエン溶解バインダを使用した比較例3〜4では、当然ながら引火性の評価が悪いうえ、ろう付け性も悪かった。
メタクリル酸エステル系重合体からなる水系バインダを使用した実施例1〜6では、引火性の評価は良いとともに、ハジキ現象もなく塗料の付着性は良好であり、ろう付け性にも優れていた。
メタクリル酸エステル系重合体からなる水系バインダを使用した実施例1〜6では、引火性の評価は良いとともに、ハジキ現象もなく塗料の付着性は良好であり、ろう付け性にも優れていた。
さらに、フルオロ亜鉛酸セシウムからなる反応性フラックスを使用した比較例5〜6では、経時安定性及びろう付け性ともに悪かった。この反応性フラックスを使用すると、亜鉛イオンが発生して塗料がゲル化するとともに、50℃の加温下ではゲル化がより促進されるため、経時安定性が悪くなったものと推定される。また、このゲル化で生成したバインダ−亜鉛錯体がバインダの熱分解を阻害することで、ろう付けに悪影響を及ぼしたものと推定される。
これに対して、非反応性のセシウム系フラックス(フルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体)を使用した実施例1〜6では、経時安定性及びろう付け性ともに良好であった。これにより、経時安定性やろう付け性を向上する点で、同じセシウム系フラックスでも、反応性フラックスに対して非反応性のセシウム系フラックスを使用することの優位性が確認できた。
これに対して、非反応性のセシウム系フラックス(フルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体)を使用した実施例1〜6では、経時安定性及びろう付け性ともに良好であった。これにより、経時安定性やろう付け性を向上する点で、同じセシウム系フラックスでも、反応性フラックスに対して非反応性のセシウム系フラックスを使用することの優位性が確認できた。
次いで、実施例1〜6の性能評価を検討する。
ろう材を含まない実施例1、3、5と、ろう材を含む実施例2、4、6では、ともに経時安定性やろう付け性の差異は認められず、本発明のろう付け用塗料はろう材の含有の有・無に拘わらず、ろう付けに際して優れた性能評価を獲得できた。
ろう材を含まない実施例1、3、5を見ると、フラックス(B)の含有量が45重量部の実施例1は経時安定性及びろう付け性に優れていたが、このフラックス(B)の含有量を75重量部に増量した実施例3や20重量部に減量した実施例5も同様に、経時安定性やろう付け性の評価は良好であり、フラックスを初めとする塗料組成を適正範囲で変化させても、ろう付けに際して優れた性能評価を得られることが確認できた。
また、ろう材を含む実施例2、4、6においても、フラックス(B)の含有量が30重量部の実施例2は経時安定性及びろう付け性に優れていたが、同含有量を50重量部に増量した実施例4や10重量部に減量した実施例6でも同様の結果が得られるため、このような経時安定性やろう付け性の評価は、適正範囲内での組成変化によって影響されないことが確認できた。
ろう材を含まない実施例1、3、5と、ろう材を含む実施例2、4、6では、ともに経時安定性やろう付け性の差異は認められず、本発明のろう付け用塗料はろう材の含有の有・無に拘わらず、ろう付けに際して優れた性能評価を獲得できた。
ろう材を含まない実施例1、3、5を見ると、フラックス(B)の含有量が45重量部の実施例1は経時安定性及びろう付け性に優れていたが、このフラックス(B)の含有量を75重量部に増量した実施例3や20重量部に減量した実施例5も同様に、経時安定性やろう付け性の評価は良好であり、フラックスを初めとする塗料組成を適正範囲で変化させても、ろう付けに際して優れた性能評価を得られることが確認できた。
また、ろう材を含む実施例2、4、6においても、フラックス(B)の含有量が30重量部の実施例2は経時安定性及びろう付け性に優れていたが、同含有量を50重量部に増量した実施例4や10重量部に減量した実施例6でも同様の結果が得られるため、このような経時安定性やろう付け性の評価は、適正範囲内での組成変化によって影響されないことが確認できた。
Claims (7)
- マグネシウムを添加したアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け用塗料において、
(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)水溶性で揮発性を有するアルコールとを
含有することを特徴とする水系アルミニウムろう付け用塗料。 - 固形分換算で、成分(A)の含有量が1〜50重量部、成分(B)が20〜75重量部、成分(C)が1〜50重量部であり、水の希釈で固形分濃度を20〜80重量%にしたことを特徴とする請求項1に記載の水系アルミニウムろう付け用塗料。
- マグネシウムを添加したアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け用塗料において、
(A)メタクリル酸エステル系重合体の水溶性ケン化物からなるバインダと、
(B)非反応性セシウム系フラックスと、
(C)水溶性で揮発性を有するアルコールと、
(D)ろう材とを
含有することを特徴とする水系アルミニウムろう付け用塗料。 - 固形分換算で、成分(A)の含有量が1〜50重量部、成分(B)が10〜50重量部、成分(C)が1〜50重量部、成分(D)が15〜25重量部であり、水の希釈で固形分濃度を20〜80重量%にしたことを特徴とする請求項3に記載の水系アルミニウムろう付け用塗料。
- 非反応性セシウム系フラックスがフルオロアルミン酸カリウム−セシウム錯体、フルオロアルミン酸セシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系アルミニウムろう付け用塗料。
- マグネシウムを添加したアルミニウム又はアルミニウム合金の部材に請求項1〜5のいずれか1項に記載の水系塗料を塗布してフラックス、又はフラックスとろう材を供給し、 上記部材を所定構造に組み立て、ろう付け温度に加熱することを特徴とするアルミニウムろう付け方法。
- 水系塗料をロール転写法により部材に塗布することを特徴とする請求項6に記載のアルミニウムろう付け方法。
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JP2007048509A JP2008207237A (ja) | 2007-02-28 | 2007-02-28 | アルミニウムろう付け用塗料及び当該ろう付け方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP2072178A1 (en) * | 2007-12-21 | 2009-06-24 | Harima Chemicals, INC. | Paste composition for aluminum brazing |
JP2011131247A (ja) * | 2009-12-24 | 2011-07-07 | Harima Chemicals Inc | アルミニウムろう付け用組成物 |
JP2014184480A (ja) * | 2013-03-25 | 2014-10-02 | Tamura Seisakusho Co Ltd | アクリル樹脂含有はんだ付け用フラックス組成物及びソルダーペースト組成物 |
JP2018526219A (ja) * | 2015-08-04 | 2018-09-13 | ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) | フラックス組成物を製造する方法 |
WO2019234209A1 (en) * | 2018-06-08 | 2019-12-12 | Solvay Sa | Concentrate comprising brazing flux |
-
2007
- 2007-02-28 JP JP2007048509A patent/JP2008207237A/ja active Pending
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