JP3734493B2 - 立体印刷装置および立体印刷方法 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、地勢模型や建築模型等の立体物に地図を描いたり、災害状況を描いたり、文字を書いたり等、濃淡印刷あるいはカラー印刷を施すのに好適な立体印刷装置および立体印刷物の製造方法に関するものである。
背景技術
従来、地勢模型等の3次元立体を着色する技術として特開平6−236144号公報に示す着色装置が提案されている。この着色装置は、インクジェットプリンタを応用したものであり、イメージデータ及び標高値を含む地勢図上に設定された複数個の第1マーカポイントと、色彩データを含む色地図上に設定された複数個の第2マーカポイントとを合致させて、イメージデータ及び標高値と色データとを合成して3次元色彩データを取得し、このデータに基づいて噴射ノズルから模型にインクを噴射して着色するものである。
しかしながら、前述した着色装置はインクジェット方式であるため、以下のような問題がある。
(1)地勢模型の印刷面と噴射ノズルとの距離が大きく取らざるを得ないため、所望の面にインクを塗布するのが極めて困難である。つまり、地勢模型の印刷は平面印刷とは異なり、山や谷、崖等の細い隙間や大きな段差が存在している。このような凹凸面に噴射ノズルがぶつかるのを防ぐため、噴射ノズルを安全な距離だけ離さなければならない。しかし、インクを噴射する場合、印刷面から離れると噴射されるインクは拡散してしまい、印刷精度は著しく低下する。これが立体印刷が実用化されない大きな理由でもある。
(2)噴射ノズルが高速で移動すると、インクが印刷面に到達する間に慣性力が生じ、誤差が生じる。
(3)濃淡印刷をする場合、インクジェット方式ではディザパターンにより行うため、メッシュピッチを微細にしなければならず制御が極めて難しい。
(4)噴射ノズルの装置が大きいため、移動速度が増すと、振動や加速度等の機械的諸問題が生じてしまう。
発明の開示
本発明に係る立体印刷装置の特徴は、感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、前記立体物の平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における画素の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離と、の各数値に基づいて求めた照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶手段と、前記各区画の照射ヘッド高度値に基づいて前記発振機移動手段を制御し、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド位置制御手段と、前記照射ヘッドの上下動作に伴って前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積が増減する場合、この照射面積の領域に感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギが付与されるように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御手段とを有している点にある。
ここで、区画とは、高さや色成分の基準となる範囲であり、平面画像を縦や横、斜め等に区分して設定される。区画高度値は、一区画の立体物の高さを示すものであり、地勢図で言えばメッシュデータに相当する。焦点移動距離とは、焦点を印刷面に合わせた位置から照射ヘッドを上下にずらす距離に相当するものであり、各区画(画素に相当)の色階調を印刷ドットの大きさで表現するために設定されている。
また、本発明において、立体物との距離を十分に離しても同等な階調印刷を施すようにするため、前記ヘッド高度値記憶手段に記憶されている照射ヘッド高度値は、区画高度値と、光ビームの焦点距離と、光ビームの焦点移動距離との和によって算出されることが好ましい。
さらに、本発明では、傾斜面や段差面において光ビームの照射面積が歪んで拡大することにより、単位面積当たりの熱エネルギが低下して発色や熱溶解が不十分となり、所望の階調表現ができなくなるのを防ぐため、前記各区画に対応付けて区画高度値を記憶する区画高度値記憶手段と、この区画高度値記憶手段から印刷対象となる区画の区画高度値、及びこの区画に隣接する他の区画の区画高度値を読み出して両者の高度差を求める高度差取得手段と、この高度差取得手段によって求めた高度差が所定値以上である場合、この高度差を加味した光ビームの出力条件を求める高度差補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、前記高度差補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御することが好ましい。
また、予めそのような傾斜面における補正値を加味して円滑に立体印刷を行うため、各区画の階調値に応じた照射面積を印刷するのに必要な光ビームの出力条件に対して、立体物の傾斜面において隣接する区画同士の高度差を原因とする前記照射面積の歪みによる面積拡大により必要となる照射量を補正した後の光ビームの出力条件を各区画に対応付けて記憶している高度差補正出力条件記憶手段と、この高度差補正出力条件記憶手段から印刷対象となる区画の出力条件を取得する高度差補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、前記高度差補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御するようにしても良い。
さらに、本発明では、印刷ドットの大きい印刷が連続することにより隣の区画に熱エネルギが蓄積されて所望の印刷ドットよりも大きなドットが形成され、階調精度が落ちるのを防ぐため、前記各区画に対応付けられた階調値を記憶している階調値記憶手段と、一の区画に印刷した際に後の区画に予熱を蓄積してしまう階調値と、このような階調値に基づく印刷が連続することで所望の印刷面積を超えて印刷される連続数とを対応付けて記憶しているエネルギ蓄積条件記憶手段と、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、当該印刷が前記エネルギ蓄積条件記憶手段に記憶されている補正が必要なエネルギ蓄積条件に該当する印刷となるか否かを判別するエネルギ蓄積条件判別手段と、このエネルギ蓄積条件判別手段によって当該印刷がエネルギ蓄積条件に該当すると判別された場合、その条件に応じて照射エネルギを減少するための光ビームの出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、その蓄積熱補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビーム発振機を制御することが好ましい。
また、予めそのような後の印刷に熱エネルギが蓄積してしまう条件を加味して円滑な立体印刷を行うようにするため、各区画の階調値に応じた照射面積を印刷するのに必要な光ビームの出力条件に対して、後の区画に予熱を蓄積する階調値が連続して並んでいることで所望の印刷面積を超えてしまう区画における照射エネルギを減少する補正を行った後の光ビームの出力条件を各区画の対応付けて記憶している蓄積熱補正出力条件記憶手段と、この蓄積熱補正出力条件記憶手段から印刷対象となる区画の出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、その蓄積熱補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御するようにしても良い。
さらに、カラー印刷をするための本発明に係る立体印刷装置の特徴は、感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、前記立体物のカラー平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における各色成分毎の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離と、の各数値に基づいて求めた色成分毎の照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶手段と、前記各区画における各色成分の照射ヘッド高度値に基づいて前記発振機移動手段を制御し、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるとともに、異なる色成分毎に各区画内における光ビームの照射中心の位置をずらすように制御するヘッド位置制御手段と、前記照射ヘッドの上下動作に伴って前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積が増減する場合、この照射面積の領域に感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギが付与されるように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御手段とを有している点にある。
また、本発明に係る立体印刷方法の特徴は、印刷したい立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、ヘッド高度値記憶手段と、ヘッド位置制御手段と、光ビーム照射量制御手段とを有する立体印刷装置の印刷方法であって、前記ヘッド高度値記憶手段には、前記立体物の平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における画素の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離との各数値に基づいて求められた照射ヘッド高度値が各区画に対応付けて記憶されており、前記ヘッド位置制御手段が、前記ヘッド高度値記憶手段から照射ヘッド高度値を読み出して前記発振機移動手段を制御することで、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド移動ステップと、前記光ビーム照射量制御手段が、前記照射ヘッドの上下動により前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積の変化に応じて、感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与するように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御ステップとを有している点にある。
そして、本発明に係る立体印刷物の特徴は、前述した立体印刷装置により階調印刷およびカラー印刷が施される点にある。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る立体印刷装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態の立体印刷装置による印刷制御装置を示すブロック図である。
図3は、第1実施形態の立体印刷方法を示すフローチャート図である。
図4は、感熱インクを用いた場合の印刷原理を示す模式図である。
図5は、熱溶融インクを用いた場合の印刷原理を示す模式図である。
図6は、階調値(印刷濃淡)と、レーザの照射面積との関係を示す模式図である。
図7は、印刷面の傾斜と、レーザの照射面積との関係を示す模式図である。
図8は、第2実施形態のカラー立体印刷装置における印刷制御装置を示すブロック図である。
図9は、第2実施形態の立体印刷方法を示すフローチャート図である。
図10は、第2実施形態のカラー立体印刷方法における各色成分毎のレーザの照射位置を示す概念図である。
図11は、本発明に係る立体印刷装置の他の実施形態における印刷制御装置を示すブロック図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明に係る立体印刷装置1および立体印刷方法の第1の実施形態について図面を用いて説明する。立体物の印刷は、地勢模型や建築模型、展示模型等、様々な応用が考えられるが、本発明では、最もニーズの高い地勢模型の印刷方法及びその装置を例に説明する。なお、光ビームはレーザを使用するが、理論上、レンズ等を使って焦点を合わせられる他の光線を使用することも可能である。
本第1実施形態の立体印刷装置1Aの特徴を概説すると、立体物の表面からレーザの照射ヘッド4aの焦点距離だけ離れた高さを階調値の基準とし、この基準位置から各階調値に応じて前記照射ヘッド4aの高さを上下動させ、この上下動により増減する立体物表面の照射面積に対して前記感熱インクを発色または前記熱溶融インクを融着するのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与して印刷面積を大小変化させることにより所望の階調値を表現することにある。
また、立体物の傾斜面を印刷する場合、この傾斜面によって照射面積が拡大することにより不足する単位面積当たりの照射エネルギを補うようにレーザの発振出力を制御するようになっている。
さらに、緯度線のように照射ヘッド4aの移動方向に印刷ドットが連続して並ぶ場合、先の照射エネルギが後の印刷面に予熱として蓄積されることにより増加する単位面積当たりの照射エネルギを減少させるように光ビームの発振出力を制御するようになっている。
本第1実施形態の立体印刷装置1Aは、図1に示すように、主として、標高値が表示された等高線を含む地勢図のイメージデータ、および地勢図と同一の地域の色彩を表示する色地図の色成分データを読み取るイメージスキャナ等から構成されるイメージ読取装置2と、地勢図の等高線の標高値と地勢図上および色地図上に任意の分割区画を設定するキーボードやマウス等から構成される入力装置3と、レーザの照射ヘッド4aを備えたレーザ発振機4等から構成される光ビーム発振機4および発振機移動手段5を有する印刷装置本体6と、イメージ読取装置2および入力装置3からの出力信号を処理して印刷装置本体6の光ビーム発振機4および発振機移動手段5の制御信号を発生するパーソナルコンピュータ等から構成される印刷制御装置7と、印刷制御装置7に接続され地勢図および色地図を表示する液晶ディスプレイ等から構成される表示装置8とを備えている。
各構成部についてより詳細に説明すると、入力装置3は、表示装置8に画面表示された地勢図および色地図を視認しながらユーザによって適宜操作され、地勢図の等高線の標高値と地勢図上および色地図上に任意数の行列に分割された区画(メッシュ)を設定する。なお、色地図は、例えば地勢図と同一の地域の航空写真の撮影によるか又は地勢図を直接着色すること等により作成される。
印刷装置本体6は、立体物たる地勢模型9を載置する載置台6aを備え、この載置台6aの載置面上には、レーザの照射ヘッド4aを備えたレーザ発振機4を地勢模型9上でX軸(幅)、Y軸(奥行)およびZ軸(高さ)方向に移動させる発振機移動手段5を備えている。この発振機移動手段5は、レーザ発振機4を着脱自在に支持する移動支持部51を備えており、レーザ発振機4以外にも地勢模型9を形成するための切削機を支持できるようになっている。また、この発振機移動手段5は、各軸方向にボールネジ52x,52y,52zが設けられており、これら各ボールネジに取り付けられたモータ53x,53y,53zの駆動によって各軸方向に移動される。Y軸方向は間隔が広いため2本のボールネジ52y,52yが配置されており、それぞれにモータ53y,53yがカップリングを介して設けられている。これらのモータ53y,53yは、内蔵されたモータドライブによって独立に制御されるが、ボールネジ52y,52yの回転数の制御によって同期が取られている。なお、発振機移動手段5は3軸方向に動作するだけでなく、ロボットのアーム動作のように回転等自在に動作できる機構を使用してもよい。
印刷制御装置7は、図2に示すように、大別して中央演算処理部(CPU)10とハードディスクやメモリ等の記憶部11とから構成されている。印刷制御装置7は、イメージ読取装置2により読み取った地勢図の平面画像たるイメージデータを記憶するイメージデータ記憶部12と、イメージ読取装置2により読み取った色地図の階調値たる色成分データを記憶する色成分データ記憶部13と、イメージデータおよび色成分データを読出して表示装置8の表示信号を発生する表示信号発生部14と、地勢図のイメージデータを入力装置3から入力された任意の縦列数および横行数の区画に分割する区画分割実行部15と、入力装置3により設定された各区画の高さを示す区画高度値を各区画に対応付けて記憶する区画高度値記憶部16と、イメージデータおよび色成分データを合成するデータ合成部17と、各区画に対応付けられた画素の階調値を記憶する階調値記憶部18と、階調値をレーザの照射面積の差で表現するためにレーザの焦点の移動距離に変換する焦点移動距離取得部19と、レーザ発振機4から照射されるレーザの焦点距離を記憶するレーザ焦点距離記憶部20と、各区画におけるレーザの焦点移動距離を記憶する焦点移動距離記憶部21と、区画高度値、レーザの焦点距離、およびレーザの焦点移動距離の各数値から照射ヘッド高度値を算出するヘッド高度値演算部22と、照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶部23と、各区画の照射ヘッド高度値に基づいて発振機移動手段5を制御し、照射ヘッド4aを地勢模型9の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド位置制御部24と、レーザの焦点移動距離に対応するレーザの照射時間または出力強度等の出力条件を取得するレーザ出力条件取得部25と、このレーザ出力条件を記憶するレーザ出力条件記憶部26と、印刷対象となる区画の区画高度値、およびこの区画に隣接する他の区画の区画高度値を読み出して両者の高度差を求める高度差取得部27と、高度差取得部27が取得した高度差が所定値以上であるか否かを判別する高度差判別部28と、高度差が所定値以上である場合、この高度差を加味したレーザの出力条件を取得する高度差補正出力条件取得部29と、レーザの出力条件に補正が必要となる階調値およびその連続数からなるエネルギ蓄積条件を記憶するエネルギ蓄積条件記憶部30と、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、当該印刷が補正が必要なエネルギ蓄積条件に該当する印刷となるか否かを判別するエネルギ蓄積条件判別部31と、エネルギ蓄積条件判別部31によって当該印刷がエネルギ蓄積条件に該当すると判別された場合、その条件に応じたレーザの出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得部32と、レーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザ出力条件に基づいてレーザ発振機4を制御するレーザ照射量制御部33とを備えている。なお、印刷制御装置7には、図示しない入出力制御部が備えられており、この入出力制御部に立体印刷装置1A、イメージ読取装置2、入力装置3、および表示装置8がコード接続されている。また、CPU10、記憶部11、および入出力制御部はバスにより相互データ通信可能に接続されている。
つぎに、本第1実施形態の立体印刷装置1Aによる立体印刷方法について図面を用いて説明する。上述した本第1実施形態の立体印刷装置1Aは、図3に示すフローチャートの動作シーケンスに従って作動される。
ステップS1では、地勢模型9に感熱インクまたは熱溶融インクを塗布し、載置台6aに載置する。ここで、感熱インクとは、図4に示すように、レーザにより加熱した部分のみが発色するものであり、熱溶融インクは、図5に示すように、レーザにより加熱した部分のみが融着するものである。また、これら感熱インクまたは熱溶融インクは、レーザ発振機4から付与される単位面積当たりの照射エネルギが所定値以上のとき、発色または融着するようになっている。なお、これらインクの塗布作業は、手作業で行っても良いが、印刷装置本体6のレーザ照射ヘッド4aを感熱インクや熱溶融インクを噴射するインク噴射ヘッドに交換することで機械的に行うことも可能である。
つぎに、ステップS2では、イメージ読取装置2が地勢図のイメージデータおよび色地図の色成分データを読み取り、イメージデータ記憶部12および色成分データ記憶部13にそれぞれ記憶させる。その後、ステップS3では、表示信号発生部14がイメージデータおよび色成分データを読出して表示装置8の表示信号を発生し、この表示信号により表示装置8が地勢図および色地図を表示する。そして、入力装置3から入力された任意の縦列数、横行数に基づいて、区画分割実行部15が地勢図のイメージデータを多数の区画に分割し、これら各区画に対応付けるように入力装置3から入力された高さを示す区画高度値が区画高度値記憶部16に記憶される。このように、本第1実施形態では、ユーザがイメージデータを分割して各区画に区画高度値を入力しているが、これは標高値がデータ化されていない場合の処理である。従って、標高値が収録されたメッシュデータをCD−ROMやインターネットから取得するようにしても良い。
つぎに、ステップS4では、データ合成部17が、イメージデータおよび色成分データを読み出して合成する。具体的には、ユーザが表示装置8に表示された地勢図および色地図を視認しながら、各図上において対応する2点を入力装置3により指定若しくは重ねて、これら2点を合致させることにより各図を合成する。このとき地勢図の標高値は、地勢模型9の縮尺に変換される。これにより、地勢図と色地図はその縮尺等が一致させられ、色地図は区画数に合わせた画素数を有することになる。そして、各区画に対応する画素の例えば256階調の階調値が階調値記憶部18に記憶される。
つぎに、ステップS5では、焦点移動距離取得部19が、各区画に対応する画素の階調値を読み出し、レーザの照射面積の差で表現するためにレーザの焦点の移動距離に変換し、焦点移動距離記憶部21に記憶させる。ここで、レーザの焦点移動距離の算出法について詳述する。本第1実施形態では、階調の濃淡を印刷ドットの大きさ、つまりレーザによって照射される面積の大きさによって表現する。具体的には、図6に示すように、レーザの焦点が地勢模型9の表面上に一致しているとき、すなわち、レーザ発振機4が区画高度値とレーザの焦点距離とを加えた高さ位置に移動したとき、照射面積は最小となり、諧調値255(白)が表現される。
一方、レーザ発振機4を焦点距離から上方または下方に移動させることでレーザの照射面積が大きくなり、階調値は小さくなる。焦点移動距離は以下の数式1により求められる。
【数式1】
つまり、256階調の場合、レーザ発振機4が一の区画を階調値0(黒)で表現するときを最大焦点移動距離としたとき、この最大焦点移動距離を255で除した値が1階調当たりのレーザの移動距離となる。そして、この1階調当たりの移動距離に(255−階調値)の値を掛け合わせることにより、0〜255の階調値に対応したレーザの焦点移動距離が算出される。なお、階調値255は白に相当するためレーザは照射されない。また、図6に示すように、レーザは焦点を中心に上下距離に対して対象であるため、上方または下方のいずれの方向に焦点をずらしてもよい。但し、照射ヘッド4aが地勢模型9に衝突する可能性を考慮すると、上方に移動するように制御することがより好ましい。
つぎに、ステップS6では、ヘッド高度値演算部22が、区画高度値、レーザの焦点距離、およびレーザの焦点移動距離を読み出し、これらの数値を加算することによって各区画の照射ヘッド高度値を取得する。なお、区画高度値は、区画高度値記憶部16から読み出された際に縮尺に合わせて変換されるようにしてもよい。また、レーザの焦点距離は、使用するレーザ発振機4の焦点距離が予めレーザ焦点距離記憶部20に記憶されている。そして、算出された照射ヘッド高度値は、各区画に対応付けられてヘッド高度値記憶部23に記憶される。これにより、X軸(幅)およびY軸(奥行)を含む2次元データにZ軸方向の照射ヘッド高度値が合成される。
つぎに、ステップS7では、レーザ出力条件取得部25が、レーザの焦点移動距離に対応するレーザの出力条件を取得し、レーザ出力条件記憶部26に記憶させる。ここで、レーザの出力条件の設定について詳述する。本第1実施形態では、階調を表現するためにレーザの焦点を移動させている。この焦点移動距離が大きいほど、レーザの照射面積も大きくなるので、単位面積当たりの照射エネルギは小さくなる。したがって、レーザの出力条件は、レーザの焦点移動距離が大きくなっても、前記感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを確保するように設定される。本第1実施形態では、レーザの出力条件として、レーザの照射時間を使用し、この照射時間を増減することで単位面積当たりの照射エネルギを一定に制御している。すなわち、レーザの発信パルスのパルス幅を焦点移動距離に比例して設定し、各区画に対応付けてレーザ出力条件記憶部26に記憶されている。これにより、印刷ドットが大きい区画には、レーザの照射時間が長くなり、発色または熱融解に必要な単位面積当たりの照射エネルギを確保できる。なお、照射エネルギの制御方法には、照射時間の他にレーザの出力強度やレーザの照射回数の制御が考えられるが、制御の安定性や容易性の点でパルス幅による照射制御が優れている。以上の工程が、本発明の基本的な濃淡印刷の制御方法である。
つぎに、傾斜面や凹凸面における印刷制御について説明する。発明者らは実験の結果、立体物表面の傾斜度が約5°以上であれば、基本的な照射エネルギでは好適な印刷ができない場合があると認識している。そこでステップS8では、高度差取得部27が、印刷対象となる区画の区画高度値、およびこの区画に隣接する他の区画の区画高度値を読み出して両者の高度差を取得する。具体的には、印刷対象区画に対してX軸方向、Y軸方向、および斜め方向に隣接する他の八区画との高度差のうち、最大のものを当該印刷対象区画の高度差として取得する。これにより、地勢模型9上の各区画における傾斜の程度がわかる。そして、ステップS9において、高度差判別部28は、当該高度差の補正が必要となる所定の値以上であるか否かを判別する。すなわち、図7に示すように、焦点からの距離が同じ位置では、レーザが傾斜面を照射する際の照射面積は、水平面における照射面積より大きくなるので、単位面積当たりの照射エネルギは小さくなる。したがって、レーザの出力条件は、傾斜面でも水平面と同等の階調値を表現するのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを確保するように設定される。通常、単位面積当たりの照射エネルギが一定になるように制御される。なお、本第1実施形態では、一区画に対して隣接する八区画を比較しているが、処理を簡易にするため適当な区画のみを比較しても良い。例えば、直前の区画とのみ比較するようにしてもよい。また、高度差の最大値を求めるのではなく、各区画との高度差を加算した総合値を求めて補正の対象となるか否かを判別してもよい。
つづいて、ステップS9において、高度差判別部28が、当該高度差が所定値より小さいと判別したとき(ステップS9:NO)、つまり傾斜度が小さいと判別したとき、処理はステップS11へ進む。一方、高度差判別部28が、当該高度差が所定値以上であると判別したとき(ステップS9:YES)、つまり、傾斜度が大きいと判別したとき、ステップS10に進み、高度差補正出力条件取得部29が、その高度差を加味したレーザの出力条件を取得する。具体的には、ステップ7においてレーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザの発振パルスを各区画毎に読み出し、当該高度差による単位面積当たりの照射エネルギの減少を補正するようにパルス幅を長くする。高度差により必要な補正パルス幅は、所定の演算式から求めてもよいし、予め高度差と補正パルス幅とを対応付けたテーブルから読み出してもよい。そして、この補正された発振パルスがレーザ出力条件記憶部26に新たに記憶されると、ステップS11へと進む。
つぎに連続印刷をする場合の印刷制御について説明する。例えば、地勢模型9上に経緯度を描いた際、照射ヘッド4aの移動方向である緯度線が、経度線よりも太くなってしまう問題がある。あるいは、階調値の大きい印刷ドットが連続すると、徐々に照射エネルギが蓄積され、同じ階調値であってもより大きな印刷ドットが印刷されるという問題がある。そこでステップS11では、エネルギ蓄積条件判別部31が、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、エネルギ蓄積条件記憶部30に記憶された所定のエネルギ蓄積条件に該当するか否かを判別する。ここでエネルギ蓄積条件とは、一の区画に印刷した際に後の区画に予熱を蓄積してしまう階調値と、その階調値に基づく印刷が連続することで所望の印刷領域を超えて印刷される連続数とを対応付けたものである。すなわち、印刷ドットが大きい階調値の印刷は、隣の区画にまで照射熱が及んで徐々に蓄積され、それらが連続すると所望の照射エネルギを超えた大きな照射エネルギが付与される。したがって、このような蓄積エネルギが悪影響を及ぼす場合の階調値とその連続数をエネルギ蓄積条件記憶部30に記憶している。
つづいて、ステップS11において、エネルギ蓄積条件判別部31が、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、エネルギ蓄積条件記憶部30に記憶されたエネルギ蓄積条件に該当しないと判別したとき(ステップS11:NO)、処理はステップS13へ進む。
一方、エネルギ蓄積条件判別部31が、当該エネルギ蓄積条件がエネルギ蓄積条件記憶部30に記憶されたエネルギ蓄積条件に該当すると判別したとき(ステップS11:YES)、ステップS12に進み、蓄積熱補正出力条件取得部32が、そのエネルギ蓄積条件に応じたレーザの出力条件を取得する。具体的には、ステップS7もしくはステップS10において、レーザ出力条件記憶部26に記憶された当該区画に対応するレーザの発振パルスを読み出し、当該エネルギ蓄積条件による照射エネルギの増加を抑制するようにパルス幅を短くする。この減少させるパルス幅は、演算式から求めるようにしてもよいし、予めエネルギ蓄積条件とパルス幅とを対応付けたテーブルから求めるようにしてもよい。そして、この補正された発振パルスがレーザ出力条件記憶部26に新たに記憶されると、ステップS13へと進む。なお、この補正においてもパルス幅を補正するのではなく、出力強度や照射回数を減少させることで照射エネルギ量を減少するようにしてもよい。
以上の処理により、高度差が大きい場合や照射エネルギが蓄積されて後の印刷に悪影響を及ぼす場合には、ステップS7でレーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザの基本的な出力条件が補正される。
そして、ステップS13では、ヘッド位置制御部24が、ステップS6で得られた各区画の照射ヘッド高度値に基づいて発振機移動手段5を制御し、照射ヘッド4aを地勢模型9における当該区画上の所定の高さに移動させる。そして、ステップS14では、レーザ照射量制御部33が、ステップS7、ステップS10またはステップS12において、レーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザ発振パルスに基づいてレーザ発振機4を制御し、レーザを地勢模型9の表面に照射する。この付与される照射エネにより、塗布されているインクが感熱インクであれば発色し、熱溶融インクであれば融着し、地勢模型9に立体印刷を施せる。なお、熱溶融インクの場合には、融着されなかった部分を除去する工程を行う。
以上のような本第1実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。すなわち、
(1)複雑な立体形状の地勢模型9であっても濃淡印刷ができる。
(2)レーザの焦点距離は長く、かつ、レーザ発振機4のレンズが小さいので、照射ヘッド4aが地勢模型9に衝突することはない。
(3)インクを噴射するのと異なり、光のポインタを照射するため慣性などによる誤差の問題が解決でき、高速印刷が可能となる。
(4)印刷ドットの大きさを自由に調整できるため自由度の高い階調印刷ができる。
(5)照射エネルギ、照射時間、照射位置、出力強度等、レーザ出力条件を幅広く設定できるため、文字や線図等の微細な描画が可能である。
(6)地勢模型9における凹凸面や傾斜面で生じる印刷のかすれ等の不具合を解消できる。
(7)印刷ドットが連続することで生じる線図の太さや階調表現のバラツキの問題を解決できる。
つぎに、本発明に係る立体印刷装置の第2の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1の実施形態で説明した構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
本第2実施形態は、Y色(イエロー)、M色(マゼンタ)およびC色(シアン)をそれぞれ発色する感熱インクまたは熱溶融インクを用いて地勢模型9にカラー印刷するものである。
本第2実施形態の立体印刷装置1Bの特徴は、図8に示すように、Y、MおよびCの各色成分に対応するYMCデータ合成部34と、YMC階調値記憶部35と、YMC焦点移動距離取得部36と、YMC焦点移動距離記憶部37と、YMCヘッド高度値演算部38と、YMCヘッド高度値記憶部39と、YMCレーザ出力条件取得部40と、YMCレーザ出力条件記憶部41とを有している点にある。そして、これら各構成部が、各色成分毎に第1実施形態で説明した機能を果たすとともに、ヘッド位置制御部24が、異なる色成分毎に各区画内におけるレーザの照射中心の位置をずらす制御を行う。
本第2実施形態の立体印刷装置1Bによる立体印刷方法について図面を用いて説明する。本第2実施形態の立体印刷装置1Bは、図9に示すフローチャートの動作シーケンスに従って作動される。
まず、ステップS21では、Y色用の感熱インクまたは熱溶融インクを地勢模型9に塗布し、載置台6aに載置する。一方、イメージ読取装置2によってイメージデータおよび光の三原色であるR色、G色、B色の色成分データを読み取り、イメージデータ記憶部12および色成分データ記憶部13にそれぞれ記憶する(ステップS22)。続いて表示装置8の画面上で任意の区画に分割し、各区画の区画高度値を設定して区画高度値記憶部16に記憶する(ステップS23)。その後、ステップS24において、YMCデータ合成部34が、イメージデータおよびRGB各色の色成分データを読み出し、このRGBの色成分データを、色の三原色であるYMCの色成分データに変換処理した後、合成する。これにより、印刷に適したYMCの各色成分の階調値が各区画に対応付けられてYMC階調値記憶部35に記憶される。なお、このRGBからYMCへの色変換処理は、一般的な変換式により演算してもよいし、そのような変換式により予め作成された色変換テーブルに基づいて行ってもよい。
つぎに、ステップS25において、YMC焦点移動距離取得部36が、YMC階調値記憶部35から各区画におけるYMC各色の階調値を読み出して、これらの階調を印刷面積の差で表現するためにレーザの焦点移動距離に変換し、それぞれYMC焦点移動距離記憶部37に記憶させる。そして、ステップS26において、YMCヘッド高度値演算部38が、区画高度値、レーザの焦点距離、および各色成分毎のレーザの焦点移動距離を各記憶部から読み出し、それらの値を加算することによって、各区画におけるY,M,C各色の照射ヘッド高度値を取得し、YMCヘッド高度値記憶部39にそれぞれ記憶させる。その後、ステップS27において、YMCレーザ出力条件取得部40が、焦点移動距離に対応するレーザの出力条件を取得し、各区画の各色成分毎に対応付けてYMCレーザ出力条件記憶部41にそれぞれ記憶させる。
そして、ステップS28からステップS32では、第1実施形態と同様の処理が各色成分に対してなされ、高度差およびエネルギ蓄積条件に応じた各色成分毎のレーザの出力条件が適宜補正される。そして、ステップS33では、ヘッド位置制御部24が、YMC照射ヘッド高度値記憶部23から印刷対象となる区画のY色成分の照射ヘッド高度値を読み出し、これに基づいて発振機移動手段5を制御する。このとき、図10に示すように、ヘッド位置制御部24は、Y色、M色およびC色の各色毎に一区画内においてレーザの照射中心を重ねないようにずらす移動制御を行う。このため、ここでは照射ヘッド4aがY色用の照射中心に移動するようにX軸およびY軸のボールネジ5bに沿って当該区画上に移動し、Z軸のボールネジ5bに沿ってその高さを変動させる。
その後、ステップS34では、レーザ照射量制御部33が、ステップS27、ステップS30またはステップS32の各処理で取得されてYMCレーザ出力条件記憶部41に記憶されたY色成分のレーザ発振パルスを読み出し、これに基づいてレーザ発振機4を制御してレーザを地勢模型9上に照射する。このとき、図10に示すように、各色の照射中心をずらすために、各区画の端部を基準とするレーザ発振パルスの発振開始のタイミングをY色、M色およびC色でそれぞれずらせばよい。このようなレーザの照射が各区画において進められ、感熱インクが地勢模型9上で発色または熱溶融インクが地勢模型9上に融着されてY色成分の印刷が完了する(ステップS35)。
つづいて、Y色用の感熱インクまたは熱溶融インクのうち、融着されなかった部分を洗浄等により除去し、M色用の感熱インクまたは熱溶融インクを塗布する(ステップS36)。感熱インクまたは熱溶融インクが乾いた後に、前述したY色用の印刷処理と同様の処理が繰り返される(ステップS37)。但し、前述のように各区画内では、M色の照射中心は、Y色の照射中心と重ならず、所定の間隔だけ隔てて照射される。さらに、M色の印刷が完了した後、同様に、発色または融着されなかったM色用の感熱インクまたは熱溶融インクを除去して、別途、C色の感熱インクまたは熱溶融インクを塗布し(ステップS38)、C色用の印刷処理を前述した処理に従って進めて立体物のカラー印刷を完成させる(ステップS39)。
以上のような本第2実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加え、地勢模型9のフルカラー印刷を施すことができる。
なお、本発明に係る立体印刷装置1は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
例えば、上述した各実施形態では、傾斜面の印刷を行う際に高度差を考慮した補正を行う場合、高度差取得部27が高度差を取得し、この高度差を高度差判別部28に判別させ、高度差補正出力条件取得部29が、その都度この高度差を加味したレーザの出力条件を取得するようになっている。また、照射エネルギの蓄積が後の印刷に悪影響を及ぼすことを考慮した補正を行う場合、エネルギ蓄積条件判別部31がエネルギ蓄積条件記憶部30に記憶された所定のエネルギ蓄積条件に該当するか否かを判別し、蓄積熱補正出力条件取得部32が、その都度このエネルギ蓄積条件を加味したレーザの出力条件を取得するようになっている。これらの処理は印刷制御装置7にかかる負荷が大きいため、装置を複数台に分けて処理させるようにしてもよい。
あるいは図11に示すように、予め高度差を考慮したレーザの出力条件を算出し、この条件を各区画に対応付けて高度差補正出力条件記憶部42に記憶させてもよい。同様に、予めエネルギ蓄積条件を考慮したレーザ出力条件を算出し、この条件を各区画に対応付けて蓄積熱補正出力条件記憶部43に記憶させておいてもよい。そして、高度差補正出力条件取得部29が直ちに高度差補正出力条件記憶部42から印刷対象となる区画の出力条件を取得し、あるいは蓄積熱補正出力条件取得部32が蓄積熱補正出力条件記憶部43から所望の区画の出力条件を取得し、レーザ照射量制御部33によるレーザ発振機4の制御を行うようにしてもよい。
また、各実施形態では、光ビーム発振機4に代えてエンドミル等の切削工具を備えた切削機を移動支持部5aに装着し、切削工程から印刷工程までを一連に行うことも可能である。切削工程を行う場合、上述した区画高度値データを作成もしくは入手すれば、同じ区画高度値データに基づいて切削加工と立体印刷との両方の制御が可能である。
さらに、上述した各実施形態では、光ビームとしてレーザを使用しているがこれに限られるものではなく、LED(Light Emitting Diode)等のように照射エネルギを制御できるものであれば良い。
また、上述した第2実施形態では、各色成分を各区画の中心位置から均等にずらしているが、これに限定されるものではなく、異なる色成分毎に各区画内におけるレーザの照射中心の位置がずれていれば良い。
さらに、上述した第2実施形態では、YMCの三色によりフルカラー印刷を施しているが、これに限らず、さらにK色(ブラック)の感熱インクまたは熱溶融インクを用いることにより、より高精度なフルカラー印刷を施すことができる。この場合、上述したRGBの色成分データからYMCKの色成分データに変換する。
また、印刷制御装置7内の記憶部11に、各区画に対応付けて所定の情報を記憶する追加ポイント記憶部を備えるとともに、この追加ポイント記憶部に記憶された情報に基づいて、別途、立体物に印刷を施すようにしても良い。この構成によれば、ハザードマップを作成する場合等に災害地域や災害状況を入力したものを各区画に対応付けて反映することができる。
本発明は、地勢模型や建築模型等の立体物に地図を描いたり、災害状況を描いたり、文字を書いたり等、濃淡印刷あるいはカラー印刷を施すのに好適な立体印刷装置および立体印刷物の製造方法に関するものである。
背景技術
従来、地勢模型等の3次元立体を着色する技術として特開平6−236144号公報に示す着色装置が提案されている。この着色装置は、インクジェットプリンタを応用したものであり、イメージデータ及び標高値を含む地勢図上に設定された複数個の第1マーカポイントと、色彩データを含む色地図上に設定された複数個の第2マーカポイントとを合致させて、イメージデータ及び標高値と色データとを合成して3次元色彩データを取得し、このデータに基づいて噴射ノズルから模型にインクを噴射して着色するものである。
しかしながら、前述した着色装置はインクジェット方式であるため、以下のような問題がある。
(1)地勢模型の印刷面と噴射ノズルとの距離が大きく取らざるを得ないため、所望の面にインクを塗布するのが極めて困難である。つまり、地勢模型の印刷は平面印刷とは異なり、山や谷、崖等の細い隙間や大きな段差が存在している。このような凹凸面に噴射ノズルがぶつかるのを防ぐため、噴射ノズルを安全な距離だけ離さなければならない。しかし、インクを噴射する場合、印刷面から離れると噴射されるインクは拡散してしまい、印刷精度は著しく低下する。これが立体印刷が実用化されない大きな理由でもある。
(2)噴射ノズルが高速で移動すると、インクが印刷面に到達する間に慣性力が生じ、誤差が生じる。
(3)濃淡印刷をする場合、インクジェット方式ではディザパターンにより行うため、メッシュピッチを微細にしなければならず制御が極めて難しい。
(4)噴射ノズルの装置が大きいため、移動速度が増すと、振動や加速度等の機械的諸問題が生じてしまう。
発明の開示
本発明に係る立体印刷装置の特徴は、感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、前記立体物の平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における画素の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離と、の各数値に基づいて求めた照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶手段と、前記各区画の照射ヘッド高度値に基づいて前記発振機移動手段を制御し、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド位置制御手段と、前記照射ヘッドの上下動作に伴って前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積が増減する場合、この照射面積の領域に感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギが付与されるように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御手段とを有している点にある。
ここで、区画とは、高さや色成分の基準となる範囲であり、平面画像を縦や横、斜め等に区分して設定される。区画高度値は、一区画の立体物の高さを示すものであり、地勢図で言えばメッシュデータに相当する。焦点移動距離とは、焦点を印刷面に合わせた位置から照射ヘッドを上下にずらす距離に相当するものであり、各区画(画素に相当)の色階調を印刷ドットの大きさで表現するために設定されている。
また、本発明において、立体物との距離を十分に離しても同等な階調印刷を施すようにするため、前記ヘッド高度値記憶手段に記憶されている照射ヘッド高度値は、区画高度値と、光ビームの焦点距離と、光ビームの焦点移動距離との和によって算出されることが好ましい。
さらに、本発明では、傾斜面や段差面において光ビームの照射面積が歪んで拡大することにより、単位面積当たりの熱エネルギが低下して発色や熱溶解が不十分となり、所望の階調表現ができなくなるのを防ぐため、前記各区画に対応付けて区画高度値を記憶する区画高度値記憶手段と、この区画高度値記憶手段から印刷対象となる区画の区画高度値、及びこの区画に隣接する他の区画の区画高度値を読み出して両者の高度差を求める高度差取得手段と、この高度差取得手段によって求めた高度差が所定値以上である場合、この高度差を加味した光ビームの出力条件を求める高度差補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、前記高度差補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御することが好ましい。
また、予めそのような傾斜面における補正値を加味して円滑に立体印刷を行うため、各区画の階調値に応じた照射面積を印刷するのに必要な光ビームの出力条件に対して、立体物の傾斜面において隣接する区画同士の高度差を原因とする前記照射面積の歪みによる面積拡大により必要となる照射量を補正した後の光ビームの出力条件を各区画に対応付けて記憶している高度差補正出力条件記憶手段と、この高度差補正出力条件記憶手段から印刷対象となる区画の出力条件を取得する高度差補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、前記高度差補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御するようにしても良い。
さらに、本発明では、印刷ドットの大きい印刷が連続することにより隣の区画に熱エネルギが蓄積されて所望の印刷ドットよりも大きなドットが形成され、階調精度が落ちるのを防ぐため、前記各区画に対応付けられた階調値を記憶している階調値記憶手段と、一の区画に印刷した際に後の区画に予熱を蓄積してしまう階調値と、このような階調値に基づく印刷が連続することで所望の印刷面積を超えて印刷される連続数とを対応付けて記憶しているエネルギ蓄積条件記憶手段と、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、当該印刷が前記エネルギ蓄積条件記憶手段に記憶されている補正が必要なエネルギ蓄積条件に該当する印刷となるか否かを判別するエネルギ蓄積条件判別手段と、このエネルギ蓄積条件判別手段によって当該印刷がエネルギ蓄積条件に該当すると判別された場合、その条件に応じて照射エネルギを減少するための光ビームの出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、その蓄積熱補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビーム発振機を制御することが好ましい。
また、予めそのような後の印刷に熱エネルギが蓄積してしまう条件を加味して円滑な立体印刷を行うようにするため、各区画の階調値に応じた照射面積を印刷するのに必要な光ビームの出力条件に対して、後の区画に予熱を蓄積する階調値が連続して並んでいることで所望の印刷面積を超えてしまう区画における照射エネルギを減少する補正を行った後の光ビームの出力条件を各区画の対応付けて記憶している蓄積熱補正出力条件記憶手段と、この蓄積熱補正出力条件記憶手段から印刷対象となる区画の出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、その蓄積熱補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御するようにしても良い。
さらに、カラー印刷をするための本発明に係る立体印刷装置の特徴は、感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、前記立体物のカラー平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における各色成分毎の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離と、の各数値に基づいて求めた色成分毎の照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶手段と、前記各区画における各色成分の照射ヘッド高度値に基づいて前記発振機移動手段を制御し、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるとともに、異なる色成分毎に各区画内における光ビームの照射中心の位置をずらすように制御するヘッド位置制御手段と、前記照射ヘッドの上下動作に伴って前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積が増減する場合、この照射面積の領域に感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギが付与されるように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御手段とを有している点にある。
また、本発明に係る立体印刷方法の特徴は、印刷したい立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、ヘッド高度値記憶手段と、ヘッド位置制御手段と、光ビーム照射量制御手段とを有する立体印刷装置の印刷方法であって、前記ヘッド高度値記憶手段には、前記立体物の平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における画素の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離との各数値に基づいて求められた照射ヘッド高度値が各区画に対応付けて記憶されており、前記ヘッド位置制御手段が、前記ヘッド高度値記憶手段から照射ヘッド高度値を読み出して前記発振機移動手段を制御することで、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド移動ステップと、前記光ビーム照射量制御手段が、前記照射ヘッドの上下動により前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積の変化に応じて、感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与するように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御ステップとを有している点にある。
そして、本発明に係る立体印刷物の特徴は、前述した立体印刷装置により階調印刷およびカラー印刷が施される点にある。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る立体印刷装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態の立体印刷装置による印刷制御装置を示すブロック図である。
図3は、第1実施形態の立体印刷方法を示すフローチャート図である。
図4は、感熱インクを用いた場合の印刷原理を示す模式図である。
図5は、熱溶融インクを用いた場合の印刷原理を示す模式図である。
図6は、階調値(印刷濃淡)と、レーザの照射面積との関係を示す模式図である。
図7は、印刷面の傾斜と、レーザの照射面積との関係を示す模式図である。
図8は、第2実施形態のカラー立体印刷装置における印刷制御装置を示すブロック図である。
図9は、第2実施形態の立体印刷方法を示すフローチャート図である。
図10は、第2実施形態のカラー立体印刷方法における各色成分毎のレーザの照射位置を示す概念図である。
図11は、本発明に係る立体印刷装置の他の実施形態における印刷制御装置を示すブロック図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明に係る立体印刷装置1および立体印刷方法の第1の実施形態について図面を用いて説明する。立体物の印刷は、地勢模型や建築模型、展示模型等、様々な応用が考えられるが、本発明では、最もニーズの高い地勢模型の印刷方法及びその装置を例に説明する。なお、光ビームはレーザを使用するが、理論上、レンズ等を使って焦点を合わせられる他の光線を使用することも可能である。
本第1実施形態の立体印刷装置1Aの特徴を概説すると、立体物の表面からレーザの照射ヘッド4aの焦点距離だけ離れた高さを階調値の基準とし、この基準位置から各階調値に応じて前記照射ヘッド4aの高さを上下動させ、この上下動により増減する立体物表面の照射面積に対して前記感熱インクを発色または前記熱溶融インクを融着するのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与して印刷面積を大小変化させることにより所望の階調値を表現することにある。
また、立体物の傾斜面を印刷する場合、この傾斜面によって照射面積が拡大することにより不足する単位面積当たりの照射エネルギを補うようにレーザの発振出力を制御するようになっている。
さらに、緯度線のように照射ヘッド4aの移動方向に印刷ドットが連続して並ぶ場合、先の照射エネルギが後の印刷面に予熱として蓄積されることにより増加する単位面積当たりの照射エネルギを減少させるように光ビームの発振出力を制御するようになっている。
本第1実施形態の立体印刷装置1Aは、図1に示すように、主として、標高値が表示された等高線を含む地勢図のイメージデータ、および地勢図と同一の地域の色彩を表示する色地図の色成分データを読み取るイメージスキャナ等から構成されるイメージ読取装置2と、地勢図の等高線の標高値と地勢図上および色地図上に任意の分割区画を設定するキーボードやマウス等から構成される入力装置3と、レーザの照射ヘッド4aを備えたレーザ発振機4等から構成される光ビーム発振機4および発振機移動手段5を有する印刷装置本体6と、イメージ読取装置2および入力装置3からの出力信号を処理して印刷装置本体6の光ビーム発振機4および発振機移動手段5の制御信号を発生するパーソナルコンピュータ等から構成される印刷制御装置7と、印刷制御装置7に接続され地勢図および色地図を表示する液晶ディスプレイ等から構成される表示装置8とを備えている。
各構成部についてより詳細に説明すると、入力装置3は、表示装置8に画面表示された地勢図および色地図を視認しながらユーザによって適宜操作され、地勢図の等高線の標高値と地勢図上および色地図上に任意数の行列に分割された区画(メッシュ)を設定する。なお、色地図は、例えば地勢図と同一の地域の航空写真の撮影によるか又は地勢図を直接着色すること等により作成される。
印刷装置本体6は、立体物たる地勢模型9を載置する載置台6aを備え、この載置台6aの載置面上には、レーザの照射ヘッド4aを備えたレーザ発振機4を地勢模型9上でX軸(幅)、Y軸(奥行)およびZ軸(高さ)方向に移動させる発振機移動手段5を備えている。この発振機移動手段5は、レーザ発振機4を着脱自在に支持する移動支持部51を備えており、レーザ発振機4以外にも地勢模型9を形成するための切削機を支持できるようになっている。また、この発振機移動手段5は、各軸方向にボールネジ52x,52y,52zが設けられており、これら各ボールネジに取り付けられたモータ53x,53y,53zの駆動によって各軸方向に移動される。Y軸方向は間隔が広いため2本のボールネジ52y,52yが配置されており、それぞれにモータ53y,53yがカップリングを介して設けられている。これらのモータ53y,53yは、内蔵されたモータドライブによって独立に制御されるが、ボールネジ52y,52yの回転数の制御によって同期が取られている。なお、発振機移動手段5は3軸方向に動作するだけでなく、ロボットのアーム動作のように回転等自在に動作できる機構を使用してもよい。
印刷制御装置7は、図2に示すように、大別して中央演算処理部(CPU)10とハードディスクやメモリ等の記憶部11とから構成されている。印刷制御装置7は、イメージ読取装置2により読み取った地勢図の平面画像たるイメージデータを記憶するイメージデータ記憶部12と、イメージ読取装置2により読み取った色地図の階調値たる色成分データを記憶する色成分データ記憶部13と、イメージデータおよび色成分データを読出して表示装置8の表示信号を発生する表示信号発生部14と、地勢図のイメージデータを入力装置3から入力された任意の縦列数および横行数の区画に分割する区画分割実行部15と、入力装置3により設定された各区画の高さを示す区画高度値を各区画に対応付けて記憶する区画高度値記憶部16と、イメージデータおよび色成分データを合成するデータ合成部17と、各区画に対応付けられた画素の階調値を記憶する階調値記憶部18と、階調値をレーザの照射面積の差で表現するためにレーザの焦点の移動距離に変換する焦点移動距離取得部19と、レーザ発振機4から照射されるレーザの焦点距離を記憶するレーザ焦点距離記憶部20と、各区画におけるレーザの焦点移動距離を記憶する焦点移動距離記憶部21と、区画高度値、レーザの焦点距離、およびレーザの焦点移動距離の各数値から照射ヘッド高度値を算出するヘッド高度値演算部22と、照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶部23と、各区画の照射ヘッド高度値に基づいて発振機移動手段5を制御し、照射ヘッド4aを地勢模型9の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド位置制御部24と、レーザの焦点移動距離に対応するレーザの照射時間または出力強度等の出力条件を取得するレーザ出力条件取得部25と、このレーザ出力条件を記憶するレーザ出力条件記憶部26と、印刷対象となる区画の区画高度値、およびこの区画に隣接する他の区画の区画高度値を読み出して両者の高度差を求める高度差取得部27と、高度差取得部27が取得した高度差が所定値以上であるか否かを判別する高度差判別部28と、高度差が所定値以上である場合、この高度差を加味したレーザの出力条件を取得する高度差補正出力条件取得部29と、レーザの出力条件に補正が必要となる階調値およびその連続数からなるエネルギ蓄積条件を記憶するエネルギ蓄積条件記憶部30と、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、当該印刷が補正が必要なエネルギ蓄積条件に該当する印刷となるか否かを判別するエネルギ蓄積条件判別部31と、エネルギ蓄積条件判別部31によって当該印刷がエネルギ蓄積条件に該当すると判別された場合、その条件に応じたレーザの出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得部32と、レーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザ出力条件に基づいてレーザ発振機4を制御するレーザ照射量制御部33とを備えている。なお、印刷制御装置7には、図示しない入出力制御部が備えられており、この入出力制御部に立体印刷装置1A、イメージ読取装置2、入力装置3、および表示装置8がコード接続されている。また、CPU10、記憶部11、および入出力制御部はバスにより相互データ通信可能に接続されている。
つぎに、本第1実施形態の立体印刷装置1Aによる立体印刷方法について図面を用いて説明する。上述した本第1実施形態の立体印刷装置1Aは、図3に示すフローチャートの動作シーケンスに従って作動される。
ステップS1では、地勢模型9に感熱インクまたは熱溶融インクを塗布し、載置台6aに載置する。ここで、感熱インクとは、図4に示すように、レーザにより加熱した部分のみが発色するものであり、熱溶融インクは、図5に示すように、レーザにより加熱した部分のみが融着するものである。また、これら感熱インクまたは熱溶融インクは、レーザ発振機4から付与される単位面積当たりの照射エネルギが所定値以上のとき、発色または融着するようになっている。なお、これらインクの塗布作業は、手作業で行っても良いが、印刷装置本体6のレーザ照射ヘッド4aを感熱インクや熱溶融インクを噴射するインク噴射ヘッドに交換することで機械的に行うことも可能である。
つぎに、ステップS2では、イメージ読取装置2が地勢図のイメージデータおよび色地図の色成分データを読み取り、イメージデータ記憶部12および色成分データ記憶部13にそれぞれ記憶させる。その後、ステップS3では、表示信号発生部14がイメージデータおよび色成分データを読出して表示装置8の表示信号を発生し、この表示信号により表示装置8が地勢図および色地図を表示する。そして、入力装置3から入力された任意の縦列数、横行数に基づいて、区画分割実行部15が地勢図のイメージデータを多数の区画に分割し、これら各区画に対応付けるように入力装置3から入力された高さを示す区画高度値が区画高度値記憶部16に記憶される。このように、本第1実施形態では、ユーザがイメージデータを分割して各区画に区画高度値を入力しているが、これは標高値がデータ化されていない場合の処理である。従って、標高値が収録されたメッシュデータをCD−ROMやインターネットから取得するようにしても良い。
つぎに、ステップS4では、データ合成部17が、イメージデータおよび色成分データを読み出して合成する。具体的には、ユーザが表示装置8に表示された地勢図および色地図を視認しながら、各図上において対応する2点を入力装置3により指定若しくは重ねて、これら2点を合致させることにより各図を合成する。このとき地勢図の標高値は、地勢模型9の縮尺に変換される。これにより、地勢図と色地図はその縮尺等が一致させられ、色地図は区画数に合わせた画素数を有することになる。そして、各区画に対応する画素の例えば256階調の階調値が階調値記憶部18に記憶される。
つぎに、ステップS5では、焦点移動距離取得部19が、各区画に対応する画素の階調値を読み出し、レーザの照射面積の差で表現するためにレーザの焦点の移動距離に変換し、焦点移動距離記憶部21に記憶させる。ここで、レーザの焦点移動距離の算出法について詳述する。本第1実施形態では、階調の濃淡を印刷ドットの大きさ、つまりレーザによって照射される面積の大きさによって表現する。具体的には、図6に示すように、レーザの焦点が地勢模型9の表面上に一致しているとき、すなわち、レーザ発振機4が区画高度値とレーザの焦点距離とを加えた高さ位置に移動したとき、照射面積は最小となり、諧調値255(白)が表現される。
一方、レーザ発振機4を焦点距離から上方または下方に移動させることでレーザの照射面積が大きくなり、階調値は小さくなる。焦点移動距離は以下の数式1により求められる。
【数式1】
つまり、256階調の場合、レーザ発振機4が一の区画を階調値0(黒)で表現するときを最大焦点移動距離としたとき、この最大焦点移動距離を255で除した値が1階調当たりのレーザの移動距離となる。そして、この1階調当たりの移動距離に(255−階調値)の値を掛け合わせることにより、0〜255の階調値に対応したレーザの焦点移動距離が算出される。なお、階調値255は白に相当するためレーザは照射されない。また、図6に示すように、レーザは焦点を中心に上下距離に対して対象であるため、上方または下方のいずれの方向に焦点をずらしてもよい。但し、照射ヘッド4aが地勢模型9に衝突する可能性を考慮すると、上方に移動するように制御することがより好ましい。
つぎに、ステップS6では、ヘッド高度値演算部22が、区画高度値、レーザの焦点距離、およびレーザの焦点移動距離を読み出し、これらの数値を加算することによって各区画の照射ヘッド高度値を取得する。なお、区画高度値は、区画高度値記憶部16から読み出された際に縮尺に合わせて変換されるようにしてもよい。また、レーザの焦点距離は、使用するレーザ発振機4の焦点距離が予めレーザ焦点距離記憶部20に記憶されている。そして、算出された照射ヘッド高度値は、各区画に対応付けられてヘッド高度値記憶部23に記憶される。これにより、X軸(幅)およびY軸(奥行)を含む2次元データにZ軸方向の照射ヘッド高度値が合成される。
つぎに、ステップS7では、レーザ出力条件取得部25が、レーザの焦点移動距離に対応するレーザの出力条件を取得し、レーザ出力条件記憶部26に記憶させる。ここで、レーザの出力条件の設定について詳述する。本第1実施形態では、階調を表現するためにレーザの焦点を移動させている。この焦点移動距離が大きいほど、レーザの照射面積も大きくなるので、単位面積当たりの照射エネルギは小さくなる。したがって、レーザの出力条件は、レーザの焦点移動距離が大きくなっても、前記感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを確保するように設定される。本第1実施形態では、レーザの出力条件として、レーザの照射時間を使用し、この照射時間を増減することで単位面積当たりの照射エネルギを一定に制御している。すなわち、レーザの発信パルスのパルス幅を焦点移動距離に比例して設定し、各区画に対応付けてレーザ出力条件記憶部26に記憶されている。これにより、印刷ドットが大きい区画には、レーザの照射時間が長くなり、発色または熱融解に必要な単位面積当たりの照射エネルギを確保できる。なお、照射エネルギの制御方法には、照射時間の他にレーザの出力強度やレーザの照射回数の制御が考えられるが、制御の安定性や容易性の点でパルス幅による照射制御が優れている。以上の工程が、本発明の基本的な濃淡印刷の制御方法である。
つぎに、傾斜面や凹凸面における印刷制御について説明する。発明者らは実験の結果、立体物表面の傾斜度が約5°以上であれば、基本的な照射エネルギでは好適な印刷ができない場合があると認識している。そこでステップS8では、高度差取得部27が、印刷対象となる区画の区画高度値、およびこの区画に隣接する他の区画の区画高度値を読み出して両者の高度差を取得する。具体的には、印刷対象区画に対してX軸方向、Y軸方向、および斜め方向に隣接する他の八区画との高度差のうち、最大のものを当該印刷対象区画の高度差として取得する。これにより、地勢模型9上の各区画における傾斜の程度がわかる。そして、ステップS9において、高度差判別部28は、当該高度差の補正が必要となる所定の値以上であるか否かを判別する。すなわち、図7に示すように、焦点からの距離が同じ位置では、レーザが傾斜面を照射する際の照射面積は、水平面における照射面積より大きくなるので、単位面積当たりの照射エネルギは小さくなる。したがって、レーザの出力条件は、傾斜面でも水平面と同等の階調値を表現するのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを確保するように設定される。通常、単位面積当たりの照射エネルギが一定になるように制御される。なお、本第1実施形態では、一区画に対して隣接する八区画を比較しているが、処理を簡易にするため適当な区画のみを比較しても良い。例えば、直前の区画とのみ比較するようにしてもよい。また、高度差の最大値を求めるのではなく、各区画との高度差を加算した総合値を求めて補正の対象となるか否かを判別してもよい。
つづいて、ステップS9において、高度差判別部28が、当該高度差が所定値より小さいと判別したとき(ステップS9:NO)、つまり傾斜度が小さいと判別したとき、処理はステップS11へ進む。一方、高度差判別部28が、当該高度差が所定値以上であると判別したとき(ステップS9:YES)、つまり、傾斜度が大きいと判別したとき、ステップS10に進み、高度差補正出力条件取得部29が、その高度差を加味したレーザの出力条件を取得する。具体的には、ステップ7においてレーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザの発振パルスを各区画毎に読み出し、当該高度差による単位面積当たりの照射エネルギの減少を補正するようにパルス幅を長くする。高度差により必要な補正パルス幅は、所定の演算式から求めてもよいし、予め高度差と補正パルス幅とを対応付けたテーブルから読み出してもよい。そして、この補正された発振パルスがレーザ出力条件記憶部26に新たに記憶されると、ステップS11へと進む。
つぎに連続印刷をする場合の印刷制御について説明する。例えば、地勢模型9上に経緯度を描いた際、照射ヘッド4aの移動方向である緯度線が、経度線よりも太くなってしまう問題がある。あるいは、階調値の大きい印刷ドットが連続すると、徐々に照射エネルギが蓄積され、同じ階調値であってもより大きな印刷ドットが印刷されるという問題がある。そこでステップS11では、エネルギ蓄積条件判別部31が、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、エネルギ蓄積条件記憶部30に記憶された所定のエネルギ蓄積条件に該当するか否かを判別する。ここでエネルギ蓄積条件とは、一の区画に印刷した際に後の区画に予熱を蓄積してしまう階調値と、その階調値に基づく印刷が連続することで所望の印刷領域を超えて印刷される連続数とを対応付けたものである。すなわち、印刷ドットが大きい階調値の印刷は、隣の区画にまで照射熱が及んで徐々に蓄積され、それらが連続すると所望の照射エネルギを超えた大きな照射エネルギが付与される。したがって、このような蓄積エネルギが悪影響を及ぼす場合の階調値とその連続数をエネルギ蓄積条件記憶部30に記憶している。
つづいて、ステップS11において、エネルギ蓄積条件判別部31が、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、エネルギ蓄積条件記憶部30に記憶されたエネルギ蓄積条件に該当しないと判別したとき(ステップS11:NO)、処理はステップS13へ進む。
一方、エネルギ蓄積条件判別部31が、当該エネルギ蓄積条件がエネルギ蓄積条件記憶部30に記憶されたエネルギ蓄積条件に該当すると判別したとき(ステップS11:YES)、ステップS12に進み、蓄積熱補正出力条件取得部32が、そのエネルギ蓄積条件に応じたレーザの出力条件を取得する。具体的には、ステップS7もしくはステップS10において、レーザ出力条件記憶部26に記憶された当該区画に対応するレーザの発振パルスを読み出し、当該エネルギ蓄積条件による照射エネルギの増加を抑制するようにパルス幅を短くする。この減少させるパルス幅は、演算式から求めるようにしてもよいし、予めエネルギ蓄積条件とパルス幅とを対応付けたテーブルから求めるようにしてもよい。そして、この補正された発振パルスがレーザ出力条件記憶部26に新たに記憶されると、ステップS13へと進む。なお、この補正においてもパルス幅を補正するのではなく、出力強度や照射回数を減少させることで照射エネルギ量を減少するようにしてもよい。
以上の処理により、高度差が大きい場合や照射エネルギが蓄積されて後の印刷に悪影響を及ぼす場合には、ステップS7でレーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザの基本的な出力条件が補正される。
そして、ステップS13では、ヘッド位置制御部24が、ステップS6で得られた各区画の照射ヘッド高度値に基づいて発振機移動手段5を制御し、照射ヘッド4aを地勢模型9における当該区画上の所定の高さに移動させる。そして、ステップS14では、レーザ照射量制御部33が、ステップS7、ステップS10またはステップS12において、レーザ出力条件記憶部26に記憶されたレーザ発振パルスに基づいてレーザ発振機4を制御し、レーザを地勢模型9の表面に照射する。この付与される照射エネにより、塗布されているインクが感熱インクであれば発色し、熱溶融インクであれば融着し、地勢模型9に立体印刷を施せる。なお、熱溶融インクの場合には、融着されなかった部分を除去する工程を行う。
以上のような本第1実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。すなわち、
(1)複雑な立体形状の地勢模型9であっても濃淡印刷ができる。
(2)レーザの焦点距離は長く、かつ、レーザ発振機4のレンズが小さいので、照射ヘッド4aが地勢模型9に衝突することはない。
(3)インクを噴射するのと異なり、光のポインタを照射するため慣性などによる誤差の問題が解決でき、高速印刷が可能となる。
(4)印刷ドットの大きさを自由に調整できるため自由度の高い階調印刷ができる。
(5)照射エネルギ、照射時間、照射位置、出力強度等、レーザ出力条件を幅広く設定できるため、文字や線図等の微細な描画が可能である。
(6)地勢模型9における凹凸面や傾斜面で生じる印刷のかすれ等の不具合を解消できる。
(7)印刷ドットが連続することで生じる線図の太さや階調表現のバラツキの問題を解決できる。
つぎに、本発明に係る立体印刷装置の第2の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1の実施形態で説明した構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
本第2実施形態は、Y色(イエロー)、M色(マゼンタ)およびC色(シアン)をそれぞれ発色する感熱インクまたは熱溶融インクを用いて地勢模型9にカラー印刷するものである。
本第2実施形態の立体印刷装置1Bの特徴は、図8に示すように、Y、MおよびCの各色成分に対応するYMCデータ合成部34と、YMC階調値記憶部35と、YMC焦点移動距離取得部36と、YMC焦点移動距離記憶部37と、YMCヘッド高度値演算部38と、YMCヘッド高度値記憶部39と、YMCレーザ出力条件取得部40と、YMCレーザ出力条件記憶部41とを有している点にある。そして、これら各構成部が、各色成分毎に第1実施形態で説明した機能を果たすとともに、ヘッド位置制御部24が、異なる色成分毎に各区画内におけるレーザの照射中心の位置をずらす制御を行う。
本第2実施形態の立体印刷装置1Bによる立体印刷方法について図面を用いて説明する。本第2実施形態の立体印刷装置1Bは、図9に示すフローチャートの動作シーケンスに従って作動される。
まず、ステップS21では、Y色用の感熱インクまたは熱溶融インクを地勢模型9に塗布し、載置台6aに載置する。一方、イメージ読取装置2によってイメージデータおよび光の三原色であるR色、G色、B色の色成分データを読み取り、イメージデータ記憶部12および色成分データ記憶部13にそれぞれ記憶する(ステップS22)。続いて表示装置8の画面上で任意の区画に分割し、各区画の区画高度値を設定して区画高度値記憶部16に記憶する(ステップS23)。その後、ステップS24において、YMCデータ合成部34が、イメージデータおよびRGB各色の色成分データを読み出し、このRGBの色成分データを、色の三原色であるYMCの色成分データに変換処理した後、合成する。これにより、印刷に適したYMCの各色成分の階調値が各区画に対応付けられてYMC階調値記憶部35に記憶される。なお、このRGBからYMCへの色変換処理は、一般的な変換式により演算してもよいし、そのような変換式により予め作成された色変換テーブルに基づいて行ってもよい。
つぎに、ステップS25において、YMC焦点移動距離取得部36が、YMC階調値記憶部35から各区画におけるYMC各色の階調値を読み出して、これらの階調を印刷面積の差で表現するためにレーザの焦点移動距離に変換し、それぞれYMC焦点移動距離記憶部37に記憶させる。そして、ステップS26において、YMCヘッド高度値演算部38が、区画高度値、レーザの焦点距離、および各色成分毎のレーザの焦点移動距離を各記憶部から読み出し、それらの値を加算することによって、各区画におけるY,M,C各色の照射ヘッド高度値を取得し、YMCヘッド高度値記憶部39にそれぞれ記憶させる。その後、ステップS27において、YMCレーザ出力条件取得部40が、焦点移動距離に対応するレーザの出力条件を取得し、各区画の各色成分毎に対応付けてYMCレーザ出力条件記憶部41にそれぞれ記憶させる。
そして、ステップS28からステップS32では、第1実施形態と同様の処理が各色成分に対してなされ、高度差およびエネルギ蓄積条件に応じた各色成分毎のレーザの出力条件が適宜補正される。そして、ステップS33では、ヘッド位置制御部24が、YMC照射ヘッド高度値記憶部23から印刷対象となる区画のY色成分の照射ヘッド高度値を読み出し、これに基づいて発振機移動手段5を制御する。このとき、図10に示すように、ヘッド位置制御部24は、Y色、M色およびC色の各色毎に一区画内においてレーザの照射中心を重ねないようにずらす移動制御を行う。このため、ここでは照射ヘッド4aがY色用の照射中心に移動するようにX軸およびY軸のボールネジ5bに沿って当該区画上に移動し、Z軸のボールネジ5bに沿ってその高さを変動させる。
その後、ステップS34では、レーザ照射量制御部33が、ステップS27、ステップS30またはステップS32の各処理で取得されてYMCレーザ出力条件記憶部41に記憶されたY色成分のレーザ発振パルスを読み出し、これに基づいてレーザ発振機4を制御してレーザを地勢模型9上に照射する。このとき、図10に示すように、各色の照射中心をずらすために、各区画の端部を基準とするレーザ発振パルスの発振開始のタイミングをY色、M色およびC色でそれぞれずらせばよい。このようなレーザの照射が各区画において進められ、感熱インクが地勢模型9上で発色または熱溶融インクが地勢模型9上に融着されてY色成分の印刷が完了する(ステップS35)。
つづいて、Y色用の感熱インクまたは熱溶融インクのうち、融着されなかった部分を洗浄等により除去し、M色用の感熱インクまたは熱溶融インクを塗布する(ステップS36)。感熱インクまたは熱溶融インクが乾いた後に、前述したY色用の印刷処理と同様の処理が繰り返される(ステップS37)。但し、前述のように各区画内では、M色の照射中心は、Y色の照射中心と重ならず、所定の間隔だけ隔てて照射される。さらに、M色の印刷が完了した後、同様に、発色または融着されなかったM色用の感熱インクまたは熱溶融インクを除去して、別途、C色の感熱インクまたは熱溶融インクを塗布し(ステップS38)、C色用の印刷処理を前述した処理に従って進めて立体物のカラー印刷を完成させる(ステップS39)。
以上のような本第2実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加え、地勢模型9のフルカラー印刷を施すことができる。
なお、本発明に係る立体印刷装置1は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
例えば、上述した各実施形態では、傾斜面の印刷を行う際に高度差を考慮した補正を行う場合、高度差取得部27が高度差を取得し、この高度差を高度差判別部28に判別させ、高度差補正出力条件取得部29が、その都度この高度差を加味したレーザの出力条件を取得するようになっている。また、照射エネルギの蓄積が後の印刷に悪影響を及ぼすことを考慮した補正を行う場合、エネルギ蓄積条件判別部31がエネルギ蓄積条件記憶部30に記憶された所定のエネルギ蓄積条件に該当するか否かを判別し、蓄積熱補正出力条件取得部32が、その都度このエネルギ蓄積条件を加味したレーザの出力条件を取得するようになっている。これらの処理は印刷制御装置7にかかる負荷が大きいため、装置を複数台に分けて処理させるようにしてもよい。
あるいは図11に示すように、予め高度差を考慮したレーザの出力条件を算出し、この条件を各区画に対応付けて高度差補正出力条件記憶部42に記憶させてもよい。同様に、予めエネルギ蓄積条件を考慮したレーザ出力条件を算出し、この条件を各区画に対応付けて蓄積熱補正出力条件記憶部43に記憶させておいてもよい。そして、高度差補正出力条件取得部29が直ちに高度差補正出力条件記憶部42から印刷対象となる区画の出力条件を取得し、あるいは蓄積熱補正出力条件取得部32が蓄積熱補正出力条件記憶部43から所望の区画の出力条件を取得し、レーザ照射量制御部33によるレーザ発振機4の制御を行うようにしてもよい。
また、各実施形態では、光ビーム発振機4に代えてエンドミル等の切削工具を備えた切削機を移動支持部5aに装着し、切削工程から印刷工程までを一連に行うことも可能である。切削工程を行う場合、上述した区画高度値データを作成もしくは入手すれば、同じ区画高度値データに基づいて切削加工と立体印刷との両方の制御が可能である。
さらに、上述した各実施形態では、光ビームとしてレーザを使用しているがこれに限られるものではなく、LED(Light Emitting Diode)等のように照射エネルギを制御できるものであれば良い。
また、上述した第2実施形態では、各色成分を各区画の中心位置から均等にずらしているが、これに限定されるものではなく、異なる色成分毎に各区画内におけるレーザの照射中心の位置がずれていれば良い。
さらに、上述した第2実施形態では、YMCの三色によりフルカラー印刷を施しているが、これに限らず、さらにK色(ブラック)の感熱インクまたは熱溶融インクを用いることにより、より高精度なフルカラー印刷を施すことができる。この場合、上述したRGBの色成分データからYMCKの色成分データに変換する。
また、印刷制御装置7内の記憶部11に、各区画に対応付けて所定の情報を記憶する追加ポイント記憶部を備えるとともに、この追加ポイント記憶部に記憶された情報に基づいて、別途、立体物に印刷を施すようにしても良い。この構成によれば、ハザードマップを作成する場合等に災害地域や災害状況を入力したものを各区画に対応付けて反映することができる。
Claims (13)
- 感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、前記立体物の平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における画素の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離と、の各数値に基づいて求めた照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶手段と、前記各区画の照射ヘッド高度値に基づいて前記発振機移動手段を制御し、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド位置制御手段と、前記照射ヘッドの上下動作に伴って前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積が増減する場合、この照射面積の領域に感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギが付与されるように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御手段とを有することを特徴とする立体印刷装置。
- 請求項1において、前記ヘッド高度値記憶手段に記憶されている照射ヘッド高度値は、区画高度値と、光ビームの焦点距離と、光ビームの焦点移動距離との和によって算出されることを特徴とする立体印刷装置。
- 請求項1において、前記各区画に対応付けて区画高度値を記憶する区画高度値記憶手段と、この区画高度値記憶手段から印刷対象となる区画の区画高度値、及びこの区画に隣接する他の区画の区画高度値を読み出して両者の高度差を求める高度差取得手段と、この高度差取得手段によって求めた高度差が所定値以上である場合、この高度差を加味した光ビームの出力条件を求める高度差補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、前記高度差補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御することを特徴とする立体印刷装置。
- 請求項1において、各区画の階調値に応じた照射面積を印刷するのに必要な光ビームの出力条件に対して、立体物の傾斜面において隣接する区画同士の高度差を原因とする前記照射面積の歪みによる面積拡大により必要となる照射量を補正した後の光ビームの出力条件を各区画に対応付けて記憶している高度差補正出力条件記憶手段と、この高度差補正出力条件記憶手段から印刷対象となる区画の出力条件を取得する高度差補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、前記高度差補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御することを特徴とする立体印刷装置。
- 請求項1において、前記各区画に対応付けられた階調値を記憶している階調値記憶手段と、一の区画に印刷した際に後の区画に予熱を蓄積してしまう階調値と、このような階調値に基づく印刷が連続することで所望の印刷面積を超えて印刷される連続数とを対応付けて記憶しているエネルギ蓄積条件記憶手段と、印刷対象である区画の階調値およびそれ以前の既印刷区画の階調値に基づいて、当該印刷が前記エネルギ蓄積条件記憶手段に記憶されている補正が必要なエネルギ蓄積条件に該当する印刷となるか否かを判別するエネルギ蓄積条件判別手段と、このエネルギ蓄積条件判別手段によって当該印刷がエネルギ蓄積条件に該当すると判別された場合、その条件に応じて照射エネルギを減少するための光ビームの出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、その蓄積熱補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビーム発振機を制御することを特徴とする立体印刷装置。
- 請求項1において、各区画の階調値に応じた照射面積を印刷するのに必要な光ビームの出力条件に対して、後の区画に予熱を蓄積する階調値が連続して並んでいることで所望の印刷面積を超えてしまう区画における照射エネルギを減少する補正を行った後の光ビームの出力条件を各区画に対応付けて記憶している蓄積熱補正出力条件記憶手段と、この蓄積熱補正出力条件記憶手段から印刷対象となる区画の出力条件を取得する蓄積熱補正出力条件取得手段とを有しており、前記光ビーム照射量制御手段は、その蓄積熱補正出力条件取得手段によって取得された出力条件に基づいて光ビームが照射されるように前記光ビーム発振機を制御することを特徴とする立体印刷装置。
- 感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、前記立体物のカラー平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における各色成分毎の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離と、の各数値に基づいて求めた色成分毎の照射ヘッド高度値を各区画に対応付けて記憶するヘッド高度値記憶手段と、前記各区画における各色成分の照射ヘッド高度値に基づいて前記発振機移動手段を制御し、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるとともに、異なる色成分毎に各区画内における光ビームの照射中心の位置をずらすように制御するヘッド位置制御手段と、前記照射ヘッドの上下動作に伴って前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積が増減する場合、この照射面積の領域に感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギが付与されるように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御手段とを有することを特徴とするカラー印刷可能な立体印刷装置。
- 感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を載置台上で支持しつつ3次元的に移動させる発振機移動手段と、光ビーム発振機および発振機移動手段を制御する制御手段とを有しており、前記立体物の表面から光ビームの照射ヘッドの焦点距離だけ離れた高さを階調値の基準とし、この基準位置から各階調値に応じて前記照射ヘッドの高さを上下に移動させ、この上下移動により増減する立体物表面の照射面積に対して前記感熱インクを発色または前記熱溶融インクを融着するのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与して印刷面積を大小変化させることにより所望の階調値を表現することを特徴とする立体印刷装置。
- 請求項8において、立体物の傾斜面を印刷する場合、制御手段が、この傾斜面によって照射面積が拡大することにより不足する単位面積当たりの照射エネルギを補うように光ビームの発振出力を制御することを特徴とする立体印刷装置。
- 請求項8において、照射ヘッドの移動方向に印刷ドットが連続して並ぶ場合、制御手段が、先の照射エネルギが後の印刷面に予熱として蓄積されることにより増加する単位面積当たりの照射エネルギを減少させるように光ビームの発振出力を制御することを特徴とする立体印刷装置。
- 印刷したい立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、ヘッド高度値記憶手段と、ヘッド位置制御手段と、光ビーム照射量制御手段とを有する立体印刷装置の印刷方法であって、前記ヘッド高度値記憶手段には、前記立体物の平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における画素の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離との各数値に基づいて求められた照射ヘッド高度値が各区画に対応付けて記憶されており、前記ヘッド位置制御手段が、前記ヘッド高度値記憶手段から照射ヘッド高度値を読み出して前記発振機移動手段を制御することで、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるヘッド移動ステップと、前記光ビーム照射量制御手段が、前記照射ヘッドの上下動により前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積の変化に応じて、感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与するように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御ステップとを有することを特徴とする立体印刷方法。
- 感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を支持して前記立体物上を移動させる発振機移動手段と、ヘッド高度値記憶手段と、ヘッド位置 制御手段と、光ビーム照射量制御手段とを有する立体印刷装置の印刷方法であって、
前記ヘッド高度値記憶手段には、前記立体物のカラー平面画像を任意に分割して設定された各区画の高さを示す区画高度値と、前記光ビーム発振機から照射される光ビームの焦点距離と、前記各区画における各色成分毎の階調値を面積差で表現するために変換された光ビームの焦点移動距離と、の各数値に基づいて求められた色成分毎の照射ヘッド高度値が各区画に対応付けて記憶されており、
前記ヘッド位置制御手段が、前記ヘッド高度値記憶手段から前記各区画における各色成分の照射ヘッド高度値を読み出して前記発振機移動手段を制御することで、前記照射ヘッドを立体物の当該区画上に移動させてその高さを変動させるとともに、異なる色成分毎に各区画内における光ビームの照射中心の位置をずらすように制御するヘッド移動ステップと、
前記光ビーム照射量制御手段が、前記照射ヘッドの上下動により前記立体物の表面に当たる光ビームの照射面積の変化に応じて、感熱インクを発色または熱溶融インクを融着させるのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与するように前記光ビーム発振機を制御する光ビーム照射量制御ステップと
を有することを特徴とするカラー印刷可能な立体印刷方法。 - 感熱インクまたは熱溶融インクが塗布された立体物を載置する載置台と、光ビームを照射する照射ヘッドを備えた光ビーム発振機と、この光ビーム発振機を載置台上で支持しつつ3次元的に移動させる発振機移動手段と、光ビーム発振機および発振機移動手段を制御する制御手段とを有する立体印刷装置の印刷方法であって、
前記立体物の表面から光ビームの照射ヘッドの焦点距離だけ離れた高さを階調値の基準とし、この基準位置から各階調値に応じて前記照射ヘッドの高さを上下に移動させ、この上下移動により増減する立体物表面の照射面積に対して前記感熱インクを発色または前記熱溶融インクを融着するのに必要な単位面積当たりの照射エネルギを付与して印刷面積を大小変化させることにより所望の階調値を表現することを特徴とする立体印刷方法。
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