以下、本発明に関するレーザーマーカー装置1を、レーザーマーカー装置1を含むレーザー加工システム100として具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
<レーザー加工システムの概略構成>
本実施形態に係るレーザー加工システム100の概略構成について図1を用いて説明する。本実施形態に係るレーザー加工システム100は、レーザーマーカー装置1、PC(Personal Computer)7などを備え、レーザーマーカー装置1は、レーザーマーカー装置本体部2およびレーザーコントローラ5、電源ユニット6等により構成されている。レーザーマーカー装置1は、PC7から送信される情報に基づいて、レーザー光LをワークWの加工面WAに対して2次元走査して文字、記号、図形等をマーキングするレーザー加工を行う。以下の説明において、レーザー加工を印字と記載する場合がある。
PC7は、例えばノートPCなどで実現され、液晶ディスプレイ77、キーボードやマウスなどで構成される入力操作部76を備え、ユーザーからの加工命令を受け付ける。レーザーコントローラ5はコンピュータで実現され、レーザーマーカー装置本体部2およびPC7と双方向通信可能に接続されている。レーザーコントローラ5はPC7から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザーマーカー装置本体部2を制御する。
まず、レーザーマーカー装置本体部2の構成について説明する。尚、レーザーマーカー装置本体部2の説明において、図1の左方向、右方向、上方向、下方向が、それぞれレーザーマーカー装置本体部2の前方向、後方向、上方向、下方向である。また、レーザーマーカー装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザーマーカー装置本体部2の左右方向である。
レーザーマーカー装置本体部2は、本体ベース11と、レーザー光Lを出射するレーザー発振ユニット12と、光シャッター部13と、不図示の光ダンパーと、不図示のハーフミラーと、ガイド光部15と、不図示の反射ミラーと、光センサ17と、ガルバノスキャナ(走査部)18と、収束レンズ19等から構成され、略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
レーザー発振ユニット12は、レーザー発振器21と、ビームエキスパンダ22と、取付台23とから構成されている。レーザー発振器21は、CO2レーザー、YAGレーザー等で構成され、ワークWの加工面WAに加工を行うためのレーザー光Lを出力する。ビームエキスパンダ22は、レーザー光Lのビーム径を調整する(例えば、ビーム径を拡大する。)ものであり、レーザー発振器21と同軸に設けられている。取付台23は本体ベース11の前後方向中央位置よりも後側の上面に複数の取付ネジ25で固定されている。また、レーザー光Lの光軸が調整可能に、レーザー発振器21が取付台23に取り付けられている。
光シャッター部13は、シャッターモータ26と、平板状のシャッター27とから構成されている。シャッターモータ26は、ステッピングモータ等で構成されている。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられて同軸に回転する。シャッター27は、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザー光Lの光路を遮る位置に回転された際には、レーザー光Lを光シャッター部13に対して右方向に設けられた不図示の光ダンパーへ反射する。一方、シャッター27がビームエキスパンダ22から出射されたレーザー光Lの光路上に位置しないように回転された場合には、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザー光Lは、光シャッター部13の前側に配置された不図示のハーフミラーに入射する。
不図示の光ダンパーは、シャッター27で反射されたレーザー光Lを吸収する。不図示のハーフミラーは、レーザー光Lの光路に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置される。不図示のハーフミラーは、後側から入射されたレーザー光Lのほぼ全部を透過する。また、不図示のハーフミラーは、後側から入射されたレーザー光Lの一部、例えば、レーザー光Lの1%を、反射ミラーへ45度の反射角で反射する。反射ミラーは、不図示のハーフミラーのレーザー光Lが入射される後側面の略中央位置に対して左方向に配置される。
ガイド光部15は、可視ガイド光として、例えば、赤色レーザー光を出射するガイド光出射部28と、ガイド光出射部28から出射された可視ガイド光(不図示)を平行光に収束するレンズ群(図示せず)とから構成されている。可視ガイド光は、レーザー発振器21から出射されるレーザー光Lと異なる波長である。ガイド光部15は、ハーフミラーのレーザー光Lが出射される略中央位置に対して右方向に配置されている。この結果、可視ガイド光Mは、ハーフミラーのレーザー光Lが出射される略中央位置において、ハーフミラーの前側面にあたる反射面に対して45度の入射角で入射され、45度の反射角でレーザー光Lの光路上に反射される。即ち、ガイド光出射部28は、可視ガイド光をレーザー光Lの光路上に出射する。
反射ミラーは、レーザー光Lの光路に対して平行な前後方向に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置され、ハーフミラーの後側面において反射されたレーザー光Lの一部が、反射面の略中央位置に対して45度の入射角で入射される。そして、反射ミラーは、反射面に対して45度の入射角で入射されたレーザー光Lを、45度の反射角で前側方向へ反射する。
光センサ17は、レーザー光Lの発光強度を検出するフォトディテクタ等で構成され、反射ミラーのレーザー光Lが反射される略中央位置に対して、前側方向に配置されている。この結果、反射ミラーで反射されたレーザー光Lが光センサ17に入射される。光センサ17は、入射されたレーザー光Lの発光強度に応じた信号をレーザーコントローラ5へ出力する。
ガルバノスキャナ(走査部)18は、本体ベース11の前側端部に形成された貫通孔の上側に取り付けられ、レーザー発振器21から出射されたレーザー光Lと、ハーフミラーで反射された可視ガイド光とを下方へ2次元走査する。ガルバノスキャナ18は、ガルバノX軸モータ31と、ガルバノY軸モータ32と、本体部33により構成されており、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32は、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入されて本体部33に取り付けられている。従って、当該ガルバノスキャナ18においては、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラーを回転させることによって、レーザー光Lと可視ガイド光とを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X軸方向)と左右方向(Y軸方向)である。
収束レンズ19は、下方に配置されたワークWの表面に対して、ガルバノスキャナ18によって2次元走査されたレーザー光Lと可視ガイド光とを同軸に集光する。そして、当該収束レンズ19は、レーザー光Lや可視ガイド光等を収束した焦点を、平面状の焦点面とすると共に、レーザー光Lや可視ガイド光の走査速度が一定になるように補正する。従って、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転を制御することによって、レーザー光Lと可視ガイド光が、ワークW表面上において、所望の加工パターンで前後方向(X軸方向)と左右方向(Y軸方向)に2次元走査される。
画像取得部20は、画像処理装置内の内蔵メモリに記憶された画像データを取得することの出来るインターフェースである。具体的には、PC7などのインターフェースを操作して元画像の濃度情報を含む画像情報の読み込みが行われ、この画像情報をデジタル的に画像処理して情報内容を認識し、濃度情報を含む画像情報を取得する。
(電源ユニットの概略構成)
次に、レーザーマーカー装置1における電源ユニット6の概略構成について、図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源ユニット6は、励起用のレーザー光出射部40と、レーザードライバ51と、電源部52と、冷却ユニット53とを、ケーシング55内に有している。電源部52は、励起用のレーザー光出射部40を駆動する駆動電流を、レーザードライバ51を介して励起用のレーザー光出射部40に供給する。レーザードライバ51は、レーザーコントローラ5から入力される駆動情報に基づいて、励起用のレーザー光出射部40を直流駆動する。
励起用のレーザー光出射部40は、光ファイバFによってレーザー発振器21に光学的に接続されている。励起用のレーザー光出射部40は、レーザードライバ51から入力されるパルス状の駆動電流に対して、レーザー光を発生する閾値電流を超えた電流値に比例した出力の波長のレーザー光である励起光を、光ファイバF内に出射する。従って、レーザー発振器21には、励起用のレーザー光出射部40からの励起光が光ファイバFを介して入射される。励起用のレーザー光出射部40には、例えば、GaAsを用いたバー型半導体レーザーを用いることができる。
冷却ユニット53は、電源部52及び励起用のレーザー光出射部40を、所定の温度範囲内に調整する為のユニットであり、例えば、電子冷却方式により冷却することで、励起用のレーザー光出射部40の温度制御を行っており、励起用のレーザー光出射部40の発振波長を微調整する。尚、冷却ユニット53は、水冷式の冷却ユニットや、空冷式の冷却ユニット等を用いるようにしてもよい。
(レーザーマーカー装置1の制御系)
次に、レーザー加工システム100を構成するレーザーマーカー装置1の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図2に示すように、レーザーマーカー装置1は、レーザーマーカー装置1の全体を制御するレーザーコントローラ(制御部)5と、レーザードライバ51と、ガルバノコントローラ56と、ガルバノドライバ57と、可視ガイド光ドライバ58等を有して構成されている。レーザーコントローラ5には、レーザードライバ51と、ガルバノコントローラ56と、光センサ17と、可視ガイド光ドライバ58、画像取得部20等が電気的に接続されている。
レーザーコントローラ5は、レーザーマーカー装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ64等を備えている。又、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ64は、バス線(不図示)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果や描画パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、PC7から送信された描画データに基づいて描画パターンのXY座標データを算出してRAM62に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。ROM63には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
そして、CPU61は、ROM63に記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU61は、PC7から入力された描画データに基づいて算出した描画パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ56に出力する。又、CPU61は、PC7から入力された描画データに基づいて設定した励起用のレーザー光出射部40の励起レーザー光出力、励起レーザー光の出力期間等の励起用のレーザー光出射部40の駆動情報をレーザードライバ51に出力する。又、CPU61は、描画パターンのXY座標データ、ガルバノスキャナ18の動作を指示する制御信号等をガルバノコントローラ56に出力する。
レーザードライバ51は、レーザーコントローラ5から入力されたレーザー発振器21のレーザー出力、レーザー光Lのレーザーパルス幅等のレーザー駆動情報と、レーザー発振器21のレーザー出力制御信号等に基づいて、レーザー発振器21を駆動する。また、可視ガイド光ドライバ58は、レーザーコントローラ5から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、ガイド光出射部28を点灯又は、消灯する。
ガルバノコントローラ56は、レーザーコントローラ5から入力された描画パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ57へ出力する。
ガルバノドライバ57は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザー光Lを2次元走査する。
可視ガイド光ドライバ58は、レーザーコントローラ5から出力される制御信号に基づいて、ガイド光出射部28を含むガイド光部15の制御を行い、例えば、制御信号に基づいて、ガイド光出射部28から出射される可視ガイド光の光量を制御する。
図1、図3に示すように、レーザーコントローラ5には、PC7が双方向通信可能に接続されており、PC7から送信された加工内容を示す描画データ、レーザーマーカー装置本体部2の制御パラメータ、ユーザーからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。
(PCの制御系)
続いて、レーザー加工システム100を構成するPC7の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図2に示すように、PC7は、PC7の全体を制御する制御部70と、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77と、CPU71の命令に基づいて、CD−ROM79に記憶されているデータの読み出し、および、CD−ROM79へのデータの書き込みなどを行う、CDドライブ装置78等から構成されている。
制御部70は、PC7の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71と、RAM72と、ROM73と、時間を計測するタイマ74と、HDD75等を備えている。又、CPU71と、RAM72と、ROM73と、タイマ74は、バス線(図示せず)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。又、CPU71とHDD75は、入出力インターフェース(図示せず)を介して接続され、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM72は、CPU71により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM73は、各種の制御プログラムやデータテーブルを記憶させておくものである。
そして、HDD75は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶する記憶装置であり、例えば、曲面を有するワークWの一例である円柱状のワークWをレーザー光Lで加工する為の曲面描画処理プログラム等や、当該曲面描画処理プログラムにおける各サブルーチン等を記憶している。
そして、CDドライブ装置78は、アプリケーションプログラム、各種データテーブル等のデータ群を、CD−ROM79から読み込む、又は、CD−ROM79に対して書き込む。即ち、PC7は、CDドライブ装置78を介して、曲面描画処理プログラムや、各種サブルーチンをCD−ROM79から読み込み、HDD75に格納する。
尚、各種描画処理プログラムや、当該各種描画処理プログラムにおける各サブルーチンは、ROM73に記憶されていても良いし、CD−ROM79等の記憶媒体から読み込まれても良い。又、インターネット等のネットワーク(図示せず)を介して、ダウンロードされてもよい。
そして、PC7には、入出力インターフェース(図示せず)を介して、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77等が電気的に接続されている。従って、PC7は、入力操作部76や、液晶ディスプレイ77を用いて、レーザー光Lによる描画を行う際の各種設定を行う際に利用される。
<加工処理>
レーザーマーカー装置1の電源がONされ、PC7にて加工処理のためのアプリケーションが起動されると、PC7は受付画面を液晶ディスプレイ77に表示する。ユーザーは受付画面にて、加工したい文字、記号、図形などの情報およびワークWの材質などの印字情報を入力する。PC7は入力された印字情報に基づくレーザー加工処理を加工ジョブとして処理する。PC7は、加工したい文字、記号、図形などの情報については、例えば、レイアウト画面にて、受け付ける。
CPU71は、各オブジェクトの文字および図形などのデータ、位置、大きさを印字情報として取得する。ここで、オブジェクトとは、一連の文字、記号、図形などである。
次にCPU71は印字データを作成する。ここで、印字データとは、印字するための情報であるXY座標データおよびガルバノ走査速度情報である。例えば、オブジェクトが文字もしくは記号である場合には、ROM73に記憶されている文字パラメータ情報から、印字情報に含まれるフォントの種別に対応する情報を抽出し、印字情報に含まれる、大きさおよび位置に基づき、XY座標データを作成し、RAM72に記憶する。XY座標データとは、オブジェクトの全ての線を線分に分解して、線分に対して始点座標、終点座標を指定したデータである。また、印字情報に基づいて、レーザー発振器21のレーザー出力、レーザー光Lのレーザーパルス幅、ガルバノスキャナ18によるレーザー光Lを走査する速度を表すガルバノ走査速度情報を作成する。
また、CPU71は印字情報に基づいて、ユーザーがワークWの位置合わせをするための、ガイド表示ためのガイドパターンを作成する。ここで、ガイドパターンとはXY座標のデータである。また、ここでのガイドパターンとは、初期の位置合わせのためのものである。次に、ガイドパターンをレーザーコントローラ5へ出力する。CPU61は、ガイドパターンが入力されると、ガイドパターンに基づいて、ガルバノコントローラ56および可視ガイド光ドライバ58を制御する。これにより、レーザーマーカー装置1によりガイドパターンに基づいたガイド表示がされる。そして、その後印字加工が行われる。
レーザーマーカー装置1の印字方法としては、主にドット印字又はスイープ印字という二種類の印字方法によって行われている。例えば、グラデーション表現されているような画像を印字するような場合は、ドット印字のほうが自然に印字できる場合がある。しかし、ドット印字の場合は、走査部の制動や発進等に比較的時間が掛かり、また、レーザーの立ち上げ、立ち下げにも比較的時間が掛かるため、全体としての印字時間が長くなってしまうという問題がある。
一方、スイープ印字の場合、ドット印字の場合のように、走査部の制動や発進等に時間が掛かることが少ないため、印字時間が短くなる。しかし、スイープ印字の場合、濃度の再現が困難な場合がある。具体的には、ドット印字の場合は、ドットの数を半分にすれば印字濃度が半分となるため、濃度の再現が比較的容易であるが、スイープ印字の場合、スイープの速度を半分にしても必ずしも印字濃度が半分になるというわけではないため、自然な見た目の濃度再現が困難な場合がある。また、レーザーマーカー装置1の使用状況等によっては、例えば、スイープ印字した箇所と近接してスイープ印字した箇所の間に筋が出る場合がある。
このように、ドット印字、スイープ印字においては、それぞれ一長一短があるため、ユーザーにドット印字で印字するか、又は、スイープ印字で印字するかについて選択してもらうことがユーザーフレンドリーである。
本発明は、ドット印字した場合、スイープ印字した場合の印字時間や出来上がりの状態を表示することによって、ユーザーに好みの印字方法を選択させるものである。ユーザーが印字方法の選択を行う場合について、各図に基づいて説明する。
図3はユーザーが濃度の閾値を設定(又は自動設定)して印字する場合のフローチャートである。まず、画像取得部20で元画像の濃度情報を含む画像情報を取得する(S1)。すなわち、ワークWに印字予定の画像に関する濃度情報を含む画像情報を画像取得部20で取得する。そして、この濃度情報を含む画像情報をRAM62に記憶させる。
次に、色変換処理部(不図示)で元画像の色をグレースケールに変換する(S2)。具体的には、例えば、RGB32ビットフォーマットで表現していた元画像を、RGB8ビットグレースケールに変換する。なお、この色変換処理部の処理は、制御部(レーザーコントローラ5)により実行される。
そして、ユーザーがあらかじめ濃度の閾値を設定する。(S3)。閾値をどこにするかはユーザーの任意で設定することができ、例えば、液晶ディスプレイ77上に表示されるスライダー(不図示)を動かすことによって閾値を決めて設定することができる。例えば、濃度が10%等とする濃度が薄い部分と、濃度が100%等とする濃度が濃い部分との間の濃度50%を閾値とする等して閾値を設定する。また、自動で濃度の閾値を設定することもできる。
グレースケールに変換後の画像を濃度を閾値として印字領域を特定する(S4)。すなわち、制御部(レーザーコントローラ5)は、ワークWの加工面WAへの印字時に、レーザー光出射部40からレーザー光Lが出射される被出射部分である印字領域を特定する特定処理を行う。具体的には、下記のとおりである。
すなわち、画像取得部20で取得したグレースケールに変換後の画像の濃度情報から、ユーザーがあらかじめ設定した濃度で閾値を用いて印字領域を特定する。この特定された印字領域は、1つの領域であっても、複数であるところの2以上の領域であってもよい。複数の場合、領域ごとに印字方法を変えることで印字時間を短くするとともに、印字品質も向上させることができる。
次に、制御部(レーザーコントローラ5)は、印字時間を算出する印字時間算出処理を実行する(S5)。具体的には、画像の濃淡をドット密度(ごく短いスイープの密度)で表す印字方法であるドット印字及び、画像の濃淡をスイープ速度で表すと共に、ドット印字の場合のスイープの長さよりも長いスイープで印字するスイープ印字の各印字方法について、記憶部に記憶された濃度情報に対するスイープ密度及びスイープ速度を含む相関情報に基づいて、画像取得部20で取得した画像情報の印字の印字時間を算出する印字時間算出処理を実行する。
すなわち、特定処理によって特定された印字領域に対し、ドット印字の印字時間、及び、スイープ印字の印字時間を算出する。ここで、ドット印字とは、スイープの長さが短い印字をいい、また、スイープ印字とは、スイープの長さが長い印字をいう。すなわち、ドット印字はスイープ印字よりもスイープの長さが短い印字である。また、スイープとは、例えば、1ストロークの印字をするときに走査部を走査させる移動動作である。なお、印字領域の形状によっては、スイープ印字と指定された領域であっても、部分的に他の部分よりも短いスイープやドット印字のスイープ長さと同等の印字部分が含まれていてもよい。同様に、印字領域の形状によっては、ドット印字と指定された領域であっても、印字領域の枠など部分的に他の部分よりも長いスイープが含まれていてもよい。また、印字領域において、例えば、部分的に印字領域の枠や所定の印字箇所など、あらかじめ印字方法が固定される箇所が含まれていてもよい。また、数種類の長さのスイープをグループ化して、短いスイープのグループをドット印字、長いスイープのグループをスイープ印字としてもよい。
ここで、例えば、RAM62等の記憶部に記憶された濃度情報に対するスイープ密度及びスイープ速度を含む相関情報について説明する。図7は、ドット印字の場合は濃度に対するスイープ密度、スイープ印字の場合は濃度に対するスイープ速度の相関関係についての一例を図示している。
濃度の表現方法として、濃淡レベルが3段階で表されており、濃度の濃いものを濃度[高]、濃度の淡いものを濃度[低]、濃度[高]と濃度[低]の中間の濃度を濃度[中]とする。
濃度に対するスイープ密度に関しては、密度レベルが3段階で表されており、密度が高いものを高密度(100%)、密度が低いものを低密度(10%)、高密度(100%)と低密度(10%)の中間の密度を標準密度(50%)とする。
濃度に対するスイープ速度に関しては、速度レベルが3段階で表されており、速度が小さいものを低速度(10%)、速度が大きいものを高速度(100%)、低速度(10%)と高速度(100%)の中間を標準速度(50%)とする。
この図から明らかなように、ドット印字の場合、ドット密度が高ければ(高密度 100%)加工対象物に対して濃度が高い(図7の濃度[高])印字が可能となり、密度が低ければ(低密度 10%)加工対象物に対して濃度が低い(図7の濃度[低])印字が可能となる。これらの中間の密度(標準密度 50%)であれば、加工対象物に対して濃度が中程度(図7の濃度[中])印字が可能となる。
スイープ印字の場合、スイープ速度が大きければ(高速度 100%)加工対象物に対して濃度が低い(図7の濃度[低])印字が可能となり、スイープ速度が小さければ(低速度 10%)加工対象物に対して濃度が高い(図7の濃度[高])印字が可能となる。これらの中間の速度(標準速度 50%)であれば、加工対象物に対して濃度中程度(図7の濃度[中])印字が可能となる。すなわち、スイープ速度が小さくなると、これによりワークWにレーザー光Lが長く当たることとなってワークWへの印字の濃度が濃くなる。また、スイープ速度が大きくなると、これによりワークWにレーザー光Lが短く当たることとなってワークWへの印字の濃度が薄くなる。
制御部(レーザーコントローラ5)は、この相関情報等に基づいて、具体的な印字時間を算出する印字時間算出処理を実行する。
そして、制御部(レーザーコントローラ5)による印字時間算出処理の実行によって印字時間が算出されたら、同じく制御部によって、印字時間算出処理で算出した印字時間に基づいて印字時間情報を表示部に表示させる表示処理を実行する。ここでいう表示部とは、PCの液晶ディスプレイ77である。その結果、PCの液晶ディスプレイ77に印字時間情報が表示される(S6)。例えば、「ドット印字の場合は○○分、スイープ印字の場合○○分」等のように表示される。
この印字時間情報を基にドット印字とするか、又はスイープ印字とするかについてユーザーが選択し、制御部(レーザーコントローラ5)は、このユーザーからの選択を受け付ける(S7)。例えば、ドット印字よりもスイープ印字の方が印字時間が短いと表示され、ユーザーが早く印字加工したいと考える場合は、印字時間の短いスイープ印字を選択する。スイープ印字よりもドット印字の方が印字時間が短いと表示され、ユーザーが早く印字加工したいと考える場合は、印字時間の短いドット印字を選択する。
但し、必ずしも印字時間が短いほうが良いというわけではなく、印字時間が長くても自然に印字したほうがよいと考えるユーザーもあるので、ドット印字か、又はスイープ印字かについては、ユーザーの好みによって選択することができる。例えば、印字の出来上がり状況を液晶ディスプレイ77に表示することによって、ドットで印字した場合、スイープで印字した場合をイメージさせることができ、ユーザーにドット印字か、又はスイープ印字かについて選択させることができる。
その他、例えば、元画像の比較的高濃度の部分は、主にスイープ印字で表現し、元画像の比較的低濃度の部分は、主にドット印字で表現するが、画像の枠の部分等については、ドット印字によると走査部やレーザーの立ち上がりや立ち下りの時間が掛かるうえに、連続した線として表現することが困難であるため、スイープ印字の方が印字時間が短くなる場合がある。
そして、制御部(レーザーコントローラ5)によって、ドット印字とするか、スイープ印字とするかについてユーザーからの選択を受け付ける受付処理を実行する。
印字時間算出処理で算出した印字時間には、走査部(ガルバノスキャナ18)の印字開始位置までの移動時間、レーザー光Lの出力が目標値で安定するまでの準備時間、レーザー光Lの出力がオフとなるまでの終了処理時間を含む。以下、説明する。
走査部を駆動する場合、駆動を開始してからミラーの振幅が安定するまでに、ある程度の立ち上がり時間が必要になる。図8(A)で図示したように、走査部を駆動する際には、目標値を一旦超過するオーバーシュートと、目標値を一旦不足するアンダーシュートを繰り返し、その後、徐々に目標値に収束することとなる。したがって、走査部を目標値で落ち着かせるためには、ある一定の時間待つ必要がある。すなわち、走査部を用いたレーザーマーカー装置1に電源を投入して利用可能になるまではある程度の待ち時間が必要となる。
また、レーザーマーカー装置1のレーザー光Lの出力をオンとした場合、目標値に達するまでは印字時間には、印字可能になるまでの立ち上り時間を含め、印字終了後の立ち下り時間も含める。これは、図8(B)で図示したように、レーザー出力をオンとした場合、目標値で安定させてレーザー光Lを出射するためには、レーザーが立ち上がるまである程度時間が必要である。また、レーザー光Lの出力をオフとした場合、レーザーが完全に立ち下げてから移動させないと、意図しない加工が施される場合がある。
すなわち、印字時間算出処理で算出した印字時間は、ドット印字、スイープ印字の印字開始位置までの移動時間、走査部とレーザー光出射部40の準備時間、及び、走査部とレーザー光出射部40の終了処理時間を含むものである。
そして、制御部(レーザーコントローラ5)によって、受付処理で受け付けた印字方法で走査部を走査して印字領域を印字する印字処理を開始する。具体的には、下記のとおりである。
例えば液晶ディスプレイ77に表示される「印字開始」ボタンを選択することにより、印字開始指示を行う。CPU61は印字開始指示を受付けると、レーザーコントローラ5にガイド表示を終了し、印字を開始するよう指示する。また、XY座標データおよびガルバノ走査速度情報を出力する。ここで、CPU61はXY座標データを、例えば1オブジェクトを1単位として、順次送信する。CPU61は開始指示が入力されると、ガルバノコントローラ56に加工開始するよう指示する。ガルバノコントローラ56は、ガルバノドライバ57へ駆動を開始するように指示する。ガルバノドライバ57は、ガルバノX軸モータ31およびガルバノY軸モータ32の駆動を開始し、これにより、印字が開始される。
図4は、ユーザーが分散の閾値を設定(又は自動設定)して印字する場合のフローチャートである。画像取得部20による濃度情報を含む画像情報の取得(S11)、色変換処理部(不図示)による元画像の色をグレースケールへ変換(S12)に関しては、図3のS1、S2と同様である。
次に、ユーザーがあらかじめ分散の閾値を設定する(S13)。分散の閾値をどこにするかはユーザーの任意で設定することができ、入力操作部76や液晶ディスプレイ77を用いて設定する。また、自動で濃度の閾値を設定することもできる。
ここで、上記x, yは注目画素の座標、Ni,Njは考慮する近傍画素数、i, jは近傍画素の座標、Cxyは注目画素の濃度、Cijは近傍画素の濃度である。近傍は、注目画素の近隣8画素(上下左右、斜め上左右、斜め下左右)とする。
分散度と印字時間の関係については、分散度が極小の場合、ドット密度の分散が低いので、ドット印字と比較してスイープ印字の方が印字時間が短くなる。分散度が極大の場合、ドット密度の分散が高いので、スイープ印字と比較してドット印字の方が印字時間が短くなる。
変換後の画像の濃度の分散を算出し、この分散を閾値と比較する。そして、変換後画像を濃度を分散を閾値として印字領域を特定する(S14)。この特定された印字領域は、1つの領域であっても、複数であるところの2以上の領域であってもよい。
印字時間の算出(S15)、印字時間の表示(S16)、ユーザーの印字選択(S17)に関しては、図3で説明したユーザーが濃度の閾値を設定する場合のS5、S6、S7と同様である。また、その後の印字処理の開始に関しても図3と同様である。
図5は、領域を自動分割して印字する場合のフローチャートである。画像取得部20による濃度情報を含む画像情報の取得(S21)、色変換処理部(不図示)による元画像の色をグレースケールに変換(S22)に関しては、図3のS1、S2、図4のS11、S12と同様である。
次に、変換後画像の輪郭によって領域を自動分割する(S23)。これは、複数領域の部分画像に分割する領域分割処理であり、領域分割処理部(不図示)で、輪郭を検出し、この輪郭によって領域を自動分割する。例えば、図6にあるような波打った四角の領域や星の領域を別の領域と認識し、これらを自動で分割する。
そして、ユーザーが印字を希望する領域を特定する(S24)。複数の領域がある場合は、全ての領域について特定する。図6では、ユーザーが領域を特定するS24について図示している。ここでは、ユーザーが領域を選択して特定する前の状態と選択して特定した後の状態を図示している。例えば、内蔵している編集アプリケーションでドット領域、スイープ領域についての選択画面をプレビュー表示する。
ユーザーが画像の一部の領域又は全部の領域をカーソルで選択し、そして、ドット領域とするか、又は、スイープ領域とするかについて選択ボタンを押し、実行する。
これによって、画像の選択した領域に、選択した印字方法による濃淡表現がプレビュー表示されることになる。図6の例では、波打った四角の領域をドット選択したためドットに、星の領域をスイープ選択したためスイープに印字されるとの印字状況がプレビュー表示されている。
S25において、ユーザーによる領域特定が終了したら(YES)、印字時間計算部において各領域(ドット領域、スイープ領域)に対し、ドット印字の印字時間、スイープ印字の印字時間を算出する(S26)。ユーザーによる領域特定が終了しない場合(NO)は、ユーザーが領域を特定するまで繰り返す。なお、印字時間の算出に関しても、図3のS5、図4のS15と同様である。
そして、ドット印字の印字時間、スイープ印字の印字時間が表示され(S27)、この表示を基にユーザーが印字方法を選択(S28)することによって印字処理が開始される。これらの点についても、図3のS6、S7、図4のS16、S17と同様である。
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
画像取得部20の他の一例として、図示しない画像読取部、USBポート等がある。画像読取部は、CIS(Contact Image Sensor)を有する読取デバイスであり、図示しない原稿シート上の画像を読み取って、その読取画像に応じた画素列の読取データを出力する。読取画像は取得画像の一例であり、読取データは、RGB(赤・緑・青)色空間のデータであるものとする。なお、画像読取部は、CISに限らず、例えばCCD(Charge Coupled Drive Image Sensor)を有する構成でもよい。また、画像読取部が出力した読取データは、図示しないAD変換部によりAD変換され、RAM62に記憶される。
また、USBポートは、USBメモリを接続可能であり、USBメモリに記憶された画像データを取得するためのものである。
さらに、画像取得部20は、外部機器から無線通信または有線通信により画像データを取得する通信部、もしくは、元画像の読み取り領域に光を照射する光源を備え、この光源から照射する光によって元画像を読み取り、取得することの出来る同軸落射型光源とCCD(個体撮像素子)が組み込まれた撮像装置などでもよい。
図3で説明したユーザーが濃度の閾値を設定(又は自動設定)して印字する場合、図4で説明したユーザーが分散の閾値を設定(又は自動設定)して印字する場合、図5で説明した領域を自動分割して印字する場合の各ステップ(S)は、一例であるため、本発明の効果を奏するものであれば種々の改良、変更が可能である。
例えば、図3のユーザーが濃度の閾値を設定するS3に関しては、元画像の濃度情報を含む画像情報を取得するS1の前に行うことも考えられる。また、図4のユーザーが分散の閾値を設定するS13に関しては、元画像の濃度情報を含む画像情報を取得するS11の前に行うことも考えられる。
図5で説明したような画像の輪郭によって領域を自動分割する方法の他、領域を輪郭によらず所定の数に自動又は手動で分割する方法も考えられる。
制御部は、ユーザーの希望により、おすすめの印字方法を提示する処理を実行することも可能である。例えば、最短時間で印字する場合はスイープ印字、印字品質を優先する場合はドット印字等のような表示を液晶ディスプレイ77に表示する表示処理を実行することも考えられる。
印字時間の表示に関しては、例えば、ユーザーが印字領域を選択したらその領域について印字時間を表示する、又は、最初から複数の領域ごとに印字時間を表示する等の様々な方法が挙げられる。
PC7のアプリケーションソフトで生成した、画像データを含む印字データの情報(濃度情報を含む画像情報等)の全部または一部を、PC7のCPU71、または、レーザーマーカー装置1のCPU61等において処理算出するような場合は、PC7、または、レーザーマーカー装置1で処理算出した印字データの情報を画像取得部20で受け付けてもよいし、画像データの情報を全部受け付けて画像取得部20で画像処理してもよい。