JP3733163B2 - 化合物tan−2177、その製造法および用途 - Google Patents
化合物tan−2177、その製造法および用途 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクアレン合成酵素阻害作用を有し、高脂血症の治療剤として有用な新規化合物TAN−2177に関する。
【0002】
【従来の技術】
高脂血症は、高血圧、喫煙とともに虚血性心疾患に対する三大危険因子として知られており、血中コレステロール値の適切なコントロールは、高脂血症に起因する虚血性心疾患、脳血管障害、腎疾患などの予防または治療に極めて重要である。
スクアレン合成酵素を阻害し血中コレステール低下作用を有する天然物由来の化合物として、ザラゴジック酸(米国特許第5096923号)、スクアレスタチン 1〔ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第267巻、No. 17、11705頁〜11708頁〕などが報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの化合物は血中コレステロール低下作用、経口吸収性等の点で十分とは言えない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような事情に鑑み、本発明者らは強力な活性を有するスクアレン合成酵素阻害物質を微生物代謝産物の中に求め研究を重ねた結果、タラロミセス(Talaromyces)属に属する糸状菌の培養液中に強力なスクアレン合成酵素阻害活性を有する化合物が含まれることを見いだし、当該活性化合物の単離に成功し、これらをTAN−2177AおよびBと称することとした。これらの化合物の物理化学的および生物学的性質を詳細に検討して、該化合物が新規化合物であることを確かめ、本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、
(1)式
【化2】
〔式中、Rはメチル基または水素原子を示す〕で表される化合物TAN−2177またはその塩、
(2)タラロミセス属に属し、(1)記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積せしめ、生成物を採取することを特徴とする(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩の製造法、
(3)(1)記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物タラロミセス・フラバス、
(4)(1)記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物タラロミセス・フラバス FL−55755株、
(5)(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなる医薬、
(6)(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなるスクアレン合成酵素阻害剤、および
(7)(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなる抗高脂血症剤に関する。
【0006】
式〔I〕中、-Arg-Gly-Gly-Leu-はアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、Argはアルギニン残基、Glyはグリシン残基、Leuはロイシン残基を示す。
これらのアミノ酸残基は、D体、L体のどちらの場合も本発明に含まれるが、アルギニン残基としては、D−アルギニン残基が、ロイシン残基としては、D−ロイシン残基が好ましい。
式〔I〕中、Rがメチルを示す化合物(TAN−2177Aと称す)では、アミノ酸配列のC末端側のアミノ酸残基は、4−メチル−プロリン残基を示す。
式〔I〕中、Rが水素原子を示す化合物(TAN−2177Bと称す)では、アミノ酸配列のC末端側のアミノ酸残基は、プロリン残基を示す。プロリン残基としてはL−プロリン残基が好ましい。
また、本発明化合物は溶液中において、溶液のpHにより、式中における
【化3】
が
【化4】
に変換された化合物が存在し得るが、それらの変換された化合物またはそれらの混合物も本発明に含まれる。
TAN−2177は、二重結合(>C=C<)を有しているので幾何異性体(シス、トランス型)が存在し得る。また、不斉炭素を含むので光学異性体(D−体、L−体)等の異性体が存在し得るが、それらの各異性体、およびそれらの混合物も本発明に含まれる。
TAN−2177は、コンフォーマーの混合物として存在し得るが、それらのコンフォーマーおよびそれらの混合物も本発明に含まれる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いることができる微生物としては、タラロミセス(Talaromyces)属に属し化合物TAN−2177Aおよび/またはBを生産する微生物であればいずれでも良い。例えば、インド土壌より分離された糸状菌タラロミセス・フラバス FL−55755(Talaromyces flavus FL-55755)株が使用し得る例として挙げられる。
【0007】
FL−55755株は以下のような性質を示す。
【0008】
(b)寒天培地上の性状
1)麦芽エキス寒天培地
生育は良好で24℃、2週間後のコロニーの直径は70mmであった。表面はやや盛り上がった羊毛状の菌糸体よりなり、中央部はやや隆起し黄色の菌糸の塊が認められ、外縁は規則正しく縁取られている。気生菌糸の発達、分生子の形成は良好である。コロニー表面の色調は、中央部は黄色から黄褐色を呈し、周辺部は黄緑色からくすんだ緑色を呈する。裏面は淡黄色から淡黄褐色を呈する。可溶性色素の生成は認められない。
3週間後には、黄色から赤褐色の多数の子嚢果の形成が認められる。
2)バレイショ・ブドウ糖寒天培地
生育は良好で24℃、2週間後のコロニーの直径は80mmであった。表面はやや盛り上がった羊毛状の菌糸体よりなり、中央部に赤褐色の水滴が認められ、外縁は規則正しく縁取られている。気生菌糸の発達、分生子の形成は良好である。コロニー表面の色調は、中央部は淡黄色から淡赤褐色を呈し、周辺部は淡黄灰色から緑黄灰色を呈する。裏面中央部から周辺部にかけて黄褐色から淡黄褐色を呈する。可溶性色素の生成は認められない。3週間後には灰黄色から橙色の子嚢果の形成が認められる。
3)ツァペック寒天培地
生育は中程度で24℃、2週間後のコロニーの直径は37mmであった。表面は平坦で羊毛状の菌糸体よりなり、外縁は規則正しく縁取られている。コロニー表面の色調は、淡黄色から淡黄灰色を呈する。裏面は、象芽色を呈する。可溶性色素の生成は、認められない。
4)オートミール寒天培地
生育は良好で24℃、2週間後のコロニーの直径は75mmであった。表面はやや盛り上がった羊毛状の菌糸体よりなり、中央部に黄色の菌糸の塊と水滴が認められ、外縁は規則正しく縁取られている。気生菌糸の発達、分生子の形成は良好である。コロニー表面の色調は、中央部は淡黄色から黄褐色を呈し、周辺部から外周部にかけて淡黄緑色から緑黄色を呈する。裏面中央部は淡黄色から淡黄褐色を呈し、周辺部は淡黄橙色から橙黄色を呈する。可溶性色素の生成は認められない。3週間後には、淡黄橙色から赤褐色の多数の子嚢果の形成が認められる。
【0009】
(c)生理学的性質
本菌株の生育条件をバレイショ・ブドウ糖寒天培地で調べると、PH3〜PH10のいずれでも生育は良好であり、生育温度範囲は10℃〜35℃であり、至適生育温度は24℃〜28℃である。37℃では生育しない。
【0010】
以上の諸性質を、ディー・マロチ(D.Malloch)著、宇田川俊一訳「かびの分離・培養と同定」(昭和58年、医歯薬出版株式会社)51頁記載の同定検索表と照合すると、本菌株は、タラロミセス(Talaromyces)属に属する事が明らかであり、さらに、宇田川俊一・椿啓介ら著「菌類図鑑(上)」(1978年,講談社サイエンティフィク)を参照すると、本菌株はタラロミセス・フラバス(Talaromyces flavus)の記載の性質とよく一致する。したがって本菌はタラロミセス・フラバス FL−55755(Talaromyces flavus FL-55755)と同定した。
【0011】
本菌株は、平成6年12月12日に財団法人発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO−32670として、また平成7年1月11日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に、受託番号FERM BP−4967としてそれぞれ寄託されている。
【0012】
本発明の化合物TAN−2177、具体的にはTAN−2177Aおよび/またはB、またはそれらの塩は、これらの菌株に限らず、遺伝子操作技術を含め、自体公知の方法(例、X線、ガンマー線、紫外線等の放射線の照射、薬剤処理、薬剤含有培地上での培養など)により、これらの菌株から誘導される本化合物の生産能を有する変異株をはじめ、当該生産能を有する微生物を培地中で培養し、本化合物を培地中に生成蓄積せしめ、それを採取することにより製造できる。
【0013】
本発明の化合物の生産菌の培養に用いる培地は、該菌が利用し得る栄養源を含むものなら液状でも固体状でもよいが、大量に処理するときに液体培地を用いるのが適当である。培地には、該化合物生産菌が同化し得る炭素源、窒素源、無機物質、微量栄養源を適宜配合する。炭素源としては、例えばグルコース、乳糖、ショ糖、麦芽糖、デキストリン、澱粉、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、油脂類(例、綿実油、大豆油、ラード油、チキン油など)、n-パラフィンなどが用いられる。窒素源としては、例えば、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、大豆粉、コーン・スティープ・リカー、ペプトン、生大豆粉、綿実粉、トマトペースト、ピーナッツミール、廃糖蜜、尿素、アンモニア塩類(例、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなど)などが用いられる。さらに、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む塩類、鉄、マンガン、亜鉛、コバルト、ニッケルなどの金属塩類、リン酸、ホウ酸などの塩類、酢酸、プロピオン酸などの有機酸の塩類を適宜用いてもよい。その他、アミノ酸(例、グリシン、ロイシン、アルギニン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、ペプチド(例、ジペプチド、トリペプチドなど)、ビタミン類(例、ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸、ビタミンB12、ビタミンCなど)、核酸類(例、プリン、ピリミジン、その誘導体など)などを含有させてもよい。培地中のpHを調整する目的で、無機または有機の酸またはアルカリ類、緩衝剤などを加え、あるいは消泡の目的で油脂類、界面活性剤などの適量を添加しても差し支えない。液体培養に際しては、培地のpHは中性付近、pH6〜8が好ましい。培養温度は約14〜30℃、培養時間は約1〜14日が好ましい。培養の手段は静置培養、振とう培養あるいは通気撹拌培養法等の自体公知の方法に従えばよい。大量の処理には、通気撹拌培養法が好ましい。通常、5〜10日の培養でTAN−2177Aおよび/またはBの生産量は最高に達する。
【0014】
培養物から目的とする化合物TAN−2177Aおよび/またはBを採取する方法を以下に述べる。微生物の生産する代謝物をその微生物培養物から採取するのに通常使用される分離手段が適宜利用される。例えばTAN−2177AおよびBは、培養濾液および菌体中に含まれるので、まず培養物にアセトンまたはメタノールなどを加えて活性物質を抽出し、得られた抽出液を濃縮後、吸着性樹脂、例えばダイヤイオンHP−20またはSP−207(三菱化成社製)、アンバーライトXAD−IまたはII(ローム・アンド・ハース社製,米国)などを用いたクロマトグラフィ−に付す方法が有利に用いられる。カラムから目的とする活性物質を溶出するためには、水と混和し得る有機溶媒(例、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル等)と水溶液〔例えば、水、アルカリ(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等)含有水溶液、酸(例、塩酸、酢酸、ギ酸、リン酸等)含有水溶液、塩類含有水溶液(例、食塩水、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液等)など〕との適宜の割合の混合溶媒が用いられる。また、TAN−2177AおよびBは水と混和しない有機溶媒(例、イソブタノ−ル、メチルイソブチルケトン等)で抽出することもできる。かくして得られる溶出液あるいは抽出液を、減圧下濃縮すると、TAN−2177Aおよび/またはBを含有する粗物質が得られる。
【0015】
粗物質をさらに精製し、純粋なTAN−2177AまたはBを得るには周知の種々のクロマトグラフィー法が有利に用いられる。担体としては活性炭、シリカゲル、微結晶セルロース、吸着性樹脂など化合物の吸着性の差を利用するもの、またはイオン交換樹脂、イオン交換セルロース、イオン交換セファデックスなど化合物の官能基の差を利用するもの、あるいは分子ふるい性樹脂など化合物の分子量の差を利用するもの等が有利に用いられる。これら担体から目的とする化合物を溶出するためには担体の種類、性質によって組み合わせが異なるが、適当な有機溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノ−ル、エタノール、イソブタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類など)、有機酸(例、酢酸、ギ酸等)、水溶液〔例えば、水、アルカリ(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等)含有水溶液、酸(例、塩酸、酢酸、ギ酸、リン酸等)含有水溶液、塩類含有水溶液(例、食塩水、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液等)など〕の単独あるいは適宜の割合の混合溶媒が用いられる。
【0016】
更に詳しくは、担体としてクロマト用活性炭(武田薬品工業社製)、キーゼルゲル60(メルク社製、ドイツ)、微結晶セルロース〔例、アビセル(旭化成社製)、フナセル(フナコシ株式会社製)等〕、吸着性樹脂〔例、ダイヤイオンHP−20またはSP−207(三菱化成社製),アンバーライトXAD−IまたはII(ローム・アンド・ハース社製、米国)等〕、陽イオン交換樹脂〔例、アンバ−ライトIR−120、IRC−50またはCG−50(ローム・アンド・ハース社製、米国)、ダウエックス50W(ダウ・ケミカル社製,米国),ダイヤイオンSK1A(三菱化成社製)等〕、陰イオン交換樹脂〔例、アンバーライトIRA−402またはIRA−68(ローム・アンド・ハース社製,米国)、ダウエックス1(ダウ・ケミカル社製,米国)、ダイヤイオンSA10B,PA−404またはWA−30(三菱化成社製)等〕、イオン交換セファデックス〔例、QAEまたはCM−セファデックス(ファルマシア社製,スウェーデン)等〕、分子ふるい性樹脂〔例、セファデックスLH−20(ファルマシア社製,スウェーデン)等〕などが有利に用いられる。
【0017】
さらに、化合物を精製する場合に、分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法も有利に用いられる。この方法を適用する場合、担体としてはオクタデシルシラン(ODS)系、ポリマー系およびシリカゲル系のものが有利に用いられる。例えばODSの場合、YMCゲル(山村化学研究所製)あるいはTSKゲル(東洋曹達工業社製)などが、ポリマー系の場合、ポリマーにオクタデシル基を導入したODP(旭化成社製)あるいはポリマーにポリアミンを導入したNH2P(旭化成社製)などが用いられ、移動相としてはメタノールあるいはアセトニトリルと水あるいは塩類含有水溶液の混合溶液が有利に用いられる。
【0018】
TAN−2177AおよびBは塩基性物質なので、自体公知の方法により酸付加塩、とりわけ薬理学的に許容される酸付加塩としても得ることができ、例えば、無機酸(例、塩酸、硫酸、リン酸)あるいは有機酸(例、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、蓚酸、メタンスルホン酸、オクタンスルホン酸)などの塩が挙げられる。
【0019】
本発明の化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩は低毒性であり安全に用いることができる。化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩はスクアレン合成酵素阻害作用を有し、コレステロール合成を抑制する効果を示す。化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩はスクアレン合成酵素阻害剤として、ヒトや哺乳動物(例、サル、ウマ、ウシ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ等)の高脂血症の予防または治療剤として用いられる。更に具体的には、高脂血症に起因する虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞など)、脳血管障害(例、一過性脳虚血、脳梗塞、脳血栓など)、腎疾患(例、腎硬化症、腎不全、腎性高血圧など)、腹部大動脈瘤、間けつ性跛行などを伴う末梢動脈硬化症などの予防または治療剤として用いられる。化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩は、酵母、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及び糸状菌、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等の菌に優れた抗菌活性を示すので、例えば人および哺乳動物のこれら微生物による感染症の治療に用いることができる。該化合物は薬理学的に許容される担体と混合することにより、医薬として適切な剤型の非経口剤または経口剤として提供される。非経口剤として、例えば注射剤、点滴剤、外用剤(例、経鼻投与製剤、経皮製剤など)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤など)などが、経口剤として、例えばカプセル剤、錠剤、シロップ剤、散剤および顆粒剤等が挙げられる。
【0020】
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる方法により製造することができる。
例えば、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩は、分散剤(例、ツィーン (Tween) 80 (アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例、メチルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノールなど)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖など)などと共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコールなどに溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0021】
経口投与製剤にするには、自体公知の方法に従い、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を、例えば賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプンなど)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウムなど)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)または滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000 など)などを添加して圧縮成形する。錠剤、顆粒剤、細粒剤に関しては、味のマスキング、腸溶性、持続性の目的で自体公知の方法でコーティングしてもよい。そのコーティング剤としては、例えば一般のフィルム形成コーティング剤〔例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、TC−5(信越化学工業(株))、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール等〕、水性コーティング剤〔例、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルースアセテートサクシメート等〕、メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体、オイラギッド−L,S(ローム社、ドイツ)、メチルアクリレート・メタクリル酸共重合体、色素(例、タルク、酸化チタン、ベンガラ等〕等が用いられる。腸溶性コーティングを行う場合、活性成分を含む中心核と腸溶皮膜との間に、自体公知の方法に従い、上記フィルム形成コーティング剤で一層又は2層以上の中間層を設けることも有効である。
【0022】
外用剤とするには、自体公知の方法に従い、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を固状、半固状または液状の外用投与剤とすることができる。例えば、上記固状のものとしては、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩をそのまま、あるいは賦形剤(例、グリコール、マンニトール、デンプン、微結晶セルロースなど)、増粘剤(例、天然ゴム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体など)などを添加、混合して粉状の組成物とする。上記液状のものとしては、注射剤の場合とほとんど同様で、油性あるいは水性懸濁剤とする。半固状の場合は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟膏状のものがよい。また、これらはいずれも、pH調節剤(例、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、防腐剤(例、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなど)などを加えても良い。
【0023】
坐剤とするには、自体公知の方法に従い、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の坐剤とすることができる。上記組成物に用いる油性基剤としては、例えば高級脂肪酸のグリセリド 〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製)など〕、あるいは植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油など)などが挙げられる。また、水性基剤としては、例えばポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、水性ゲル基剤としては、例えば天然ゴム類、セルロース誘導体、ビニル重合体、アクリル酸重合体などが挙げられる。
【0024】
化合物TAN−2177をヒトに用いる場合の投与量は対象疾病の種類、程度、患者の年齢などで変動し得るが、通常、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩の含量として、1日成人(体重50kg)1人当たり約1mgから約500mg、とりわけ好ましくは約2mgから100mgが疾患の予防、治療に用いられる。これらの製剤は、1日1回または2から4回に分けて投与することができる。
化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を、注射剤として非経口的に皮下、静脈内または筋肉内に投与する場合、その投与量は約0.5〜約200mg/日、好ましくは約1〜約50mg/日である。
【0025】
【実施例】
以下に実施例、試験例をあげて本発明を更に詳しく説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、実施例、試験例におけるパーセント(%)は、特に断りの無い限り、重量/容量パーセントを示す。また、溶媒の混合比率は、特に断りの無い限り、容量比を示す。
13C NMRスペクトルは、ブルカーAC−300型スペクトルメーター(ブルカー社製、ドイツ)を用いて測定した、内部標準としてテトラメチルシランを用い、全δ値をppmで示した。また、本明細書中の記号は次のような意味を有する。Q:4級炭素
【0026】
【実施例1】
バクト・ポテト・デキストロース寒天培地(米国ディフコ社製)からなる斜面培地上で生育させたタラロミセス・フラバス(Talaromyces flavus)FL-55755株の胞子懸濁液(10%グリセロール中)を、グルコース2.0%、マルトース3.0%、生大豆粉1.5%、コーン・スチープ・リカー1.0%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、食塩0.3%、pH6.0からなる種培養培地500mlを分注滅菌した2リットル容坂口フラスコに接種して、28℃で2日間振とう培養した。この培養液の1リットルを、グルコース1.0%、マンニトール4.0%、生大豆粉0.5%、トマトペースト0.5%、ピーナッツミール0.5%、ポリペプトン0.5%、グリシン0.1%、酵母エキス0.1%、綿実油0.5%、リン酸水素二カリウム0.05%、硫酸鉄7水和物0.05%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、硫酸マンガン4水和物0.05%、炭酸カルシウム0.5%、アクトコール0.05%、シリコン0.02%、pH7.0からなる主培養培地120リットルを蒸気滅菌した200リットル容醗酵槽に移植した。この主醗酵は28℃、通気120リットル/分、撹拌150rpm、内圧1.0kg/cm2にて162時間培養し、TAN−2177AおよびBを生成蓄積させた。
【0027】
【実施例2】
実施例1で得られた培養液(110リットル)にメタノール(110リットル)を加え、30分間撹拌後、濾過補助剤(ラジオライト 600、昭和化学工業社製)を用いて濾過した。濾液に水(60リットル)を加え、アンバ−ライトXAD−II(10リットル)のカラムクロマトグラフィーに付し、50%(v/v)メタノ−ル水(30リットル)で洗浄後、80%(v/v)メタノ−ル水(50リットル)で溶出した。溶出液を濃縮してメタノ−ルを除去後、水を加えて15リットルとした。水溶液のpHを3.0に調整後、イソブタノ−ル(5リットル)で2回抽出し、水(3リットル)で洗浄した。有機層を濃縮乾固後、残渣をヘキサンで処理して粗粉末I(17.8g)を得た。実施例1と同様にして得られた培養液(225リットル)を上記と同様に処理して粗粉末II(24.2g)を得た。得られた粗粉末IおよびIIを合わせ、シリカゲル(キ−ゼルゲル60、500ml)のカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム−ギ酸混液にメタノールを順次増量添加した溶出液で溶出し、クロロホルム/メタノール/ギ酸(12:8:1)溶出画分から粉末(1.63g)を得た。この粉末を2回に分けてセファデックスLH−20(1リットル)のカラムクロマトグラフィーに付し、メタノールで溶出分画した。活性画分を集めて濃縮乾固し、粉末(926mg)を得た。
【0028】
得られた粉末を4回に分けて分取HPLC〔カラム;アサヒパック(Asahipak)ODP-90, 直径 21.5 mm × 長さ 300 mm(旭化成社製)、移動相;25%(v/v)アセトニトリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.5)、流速;10ml/分〕に付し、分析用HPLCでTAN−2177AまたはBの単一ピークを与える2画分に分けた。TAN−2177Aを含有する画分のpHを7.0に調整後、減圧下アセトニトリルを留去し、アンバーライトIRA−402(Cl型,400ml)を充填したカラムを通過させ、水(400ml)で洗浄した。通過液と水洗液を合わせpH6.5に調整後、アンバ−ライトXAD−II(50ml)のカラムクロマトグラフィーに付した。水(150ml)で洗浄後、80%(v/v)メタノール水(100ml)で溶出し、溶出液を濃縮後、凍結乾燥してTAN−2177A・一塩酸塩(256mg)が白色粉末として得られた。TAN−2177Bを含有する画分も同様の操作を行い、TAN−2177B・一塩酸塩(54mg)が白色粉末として得られた。
【0029】
得られたTAN−2177A・一塩酸塩およびTAN−2177B・一塩酸塩の物理化学的性状を以下に示す。
TAN−2177A・一塩酸塩
(1)外観:白色粉末
(2)比旋光度:-32゜(c 0.50, H2O, 22℃)
(3)分子量:SI−マススペクトル;m/z 877 (M + H)+
高分解能FAB−マススペクトル;m/z
実測値;877.5281
計算値;877.5259
(4)元素分析値:(%)(水分4モルとして計算)
実測値;C, 48.69; H, 7.82; N, 17.36; Cl, 4.05
計算値;C, 48.75; H, 7.87; N, 17.05; Cl, 3.60
(5)分子式:C40H68N12O10・HCl
(6)UVスペクトル:メタノ−ル中
末端吸収
(7)IRスペクトル:KBr 錠剤中,主な吸収を示す(波数,cm-1)。(図1)
3340, 2960, 1660, 1550, 1460, 1390, 1250, 1100, 1030, 610
(8)13C NMR スペクトル:75 Mz, 重メタノール中,δppm (図2)
(TAN−2177A・一塩酸塩は重メタノール中、2種のコンフォーマーの混合物として存在するので、主コンフォーマーのシグナルを示す)
180.1 (Q), 175.0 (Q), 174.1 (Q), 173.9 (Q), 172.5 (Q), 172.2 (Q), 171.8 (Q), 171.0 (Q), 161.2 (Q), 158.7 (Q), 134.6 (Q), 121.8 (CH), 76.2 (CH), 64.5 (CH), 55.5 (CH2), 54.9 (CH), 54.3 (CH), 52.1 (CH), 50.5 (CH), 49.4 (CH2), 44.4 (CH2), 43.9 (CH2), 43.7 (CH2), 42.3 (CH2), 42.1 (CH2), 39.1 (CH2), 38.4 (CH2), 37.4 (CH2), 35.7 (CH), 34.8 (CH), 29.2 (CH2), 26.3 (CH2), 25.6 (CH), 23.9 (CH3), 22.0 (CH3), 21.3 (CH3), 17.3 (CH3), 15.5 (CH3), 15.2 (CH3), 13.6 (CH3)
(9)アミノ酸分析:6N塩酸中、110℃で15時間反応後、分析。
グリシン(2モル)、ロイシン(1モル)、アルギニン(1モル)
(10)呈色反応:陽性;坂口,リンモリブデン酸反応
陰性;ドラ−ゲンドルフ,エールリッヒ反応
(11)高速液体クロマトグラフィー:
カラム;アサヒパック(Asahipak)ODP-50, 直径 6.0 mm × 長さ 150 mm(旭化成社製)
移動相;28%(v/v)アセトニトリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.5)
流 速;1.0ml/分
検出法;214nm
保持時間;9.8分
(12)薄層クロマトグラフィー:
担体;シリカゲル60F254(メルク社製,ドイツ)
展開溶媒;クロロホルム:メタノ−ル:水:ギ酸(6:4:1:0.1)
Rf値;0.49
【0030】
TAN−2177B・一塩酸塩
1)外観:白色粉末
2)比旋光度:-31゜(c 0.51, H2O, 22℃)
3)分子量:SI−マススペクトル;m/z 863 (M + H)+
高分解能FAB−マススペクトル;m/z
実測値;863.5110
計算値;863.5103
4)分子式:C39H66N12O10・HCl
5)UVスペクトル:メタノ−ル中
末端吸収
6)IRスペクトル:KBr 錠剤中,主な吸収を示す(波数,cm-1)。(図3)
3350, 2960, 1660, 1550, 1450, 1390, 1250, 1100, 1030, 610
7)13C NMR スペクトル:75 Mz, 重メタノール中,δppm (図4)
(TAN−2177B・一塩酸塩は重メタノール中、2種のコンフォーマーの混合物として存在するので、主コンフォーマーのシグナルを示す)
179.9 (Q), 175.0 (Q), 174.1 (Q), 173.9 (Q), 173.3 (Q), 172.5 (Q), 172.1 (Q), 171.0 (Q), 161.1 (Q), 158.6 (Q), 134.5 (Q), 121.7 (CH), 76.1 (CH), 63.7 (CH), 54.8 (CH), 54.3 (CH), 52.0 (CH), 50.5 (CH), 49.1 (CH2), 48.5 (CH2), 44.5 (CH2), 43.8 (CH2), 43.6 (CH2), 42.5 (CH2), 42.0 (CH2), 38.4 (CH2), 37.0 (CH2), 35.7 (CH), 31.0 (CH2), 29.0 (CH2), 26.2 (CH2), 25.7 (CH2), 25.6 (CH), 23.9 (CH3), 22.0 (CH3), 21.3 (CH3), 15.5 (CH3), 15.2 (CH3), 13.6 (CH3)
8)アミノ酸分析:6N塩酸中、110℃で15時間反応後、分析。
グリシン(2モル)、ロイシン(1モル)、アルギニン(1モル)、
プロリン(1モル)
9)呈色反応:陽性;坂口,リンモリブデン酸反応
陰性;ドラ−ゲンドルフ,エールリッヒ反応
10)高速液体クロマトグラフィー:
カラム;アサヒパック(Asahipak)ODP-50, 直径 6.0 mm × 長さ 150 mm(旭化成社製)
移動相;28%(v/v)アセトニトリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.5)流 速;1.0ml/分
検出法;214nm
保持時間;6.9分
11)薄層クロマトグラフィー:
担体;シリカゲル60F254(メルク社製,ドイツ)
展開溶媒;クロロホルム:メタノ−ル:水:ギ酸(6:4:1:0.1)
Rf値;0.46
【0031】
上述した物理化学的データおよびNMRスペクトルの詳細な検討によりTAN−2177A・一塩酸塩およびB・一塩酸塩は下記の構造を有するものと決定した。
【化5】
【0032】
【試験例1】
スクアレン合成酵素阻害試験
〔方法〕
1. ヒト細胞由来酵素の調製
10%(v/v)牛胎児血清(ギブコ社製、米国)を含むダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社製、米国)で培養して得られたヒト肝癌細胞 HepG2(約 1×109 cells)を氷冷緩衝液〔100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、30mM ニコチンアミド、2.5mM MgCl2〕10mlに懸濁後、超音波処理(30秒間、2回)によって細胞を破砕した。得られたソニケートを4℃、10,000×gで20分間遠心分離し、得られた上清を更に4℃、105,000×gで90分間遠心分離した。得られた沈渣を氷冷10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁後、再度4℃、105,000×gで90分間遠心分離した。このようにして得られた沈渣(ミクロソーム画分)を氷冷100 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁(蛋白濃度 4mg/ml)し酵素液とした。
【0033】
2.スクアレン合成酵素阻害活性の測定
5μM [1-3H] ファルネシルピロリン酸(25μCi/μmole、ニューイングランド・ニュークリアー社製、米国) 、1mM NADPH、5mM MgCl2、6mM グルタチオン、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、及びTAN−2177A・一塩酸塩を含む溶液に、ヒト細胞由来酵素液(蛋白量0.8μg)を添加し全量50μlとした後に、37℃にて45分間反応させた。反応液にクロロホルム・メタノール混液(1:2)150μlを添加し反応を停止させた後、クロロホルム50μlおよび3N水酸化ナトリウム溶液50μlを添加し反応生成物をクロロホルム層(下層)に抽出した。スクアレン合成酵素阻害活性は、クロロホルム層に取り込まれた放射活性を被検化合物の代わりに水を加えた対照と比較することで算出した。
被検化合物のスクアレン合成酵素50%阻害濃度を〔表1〕に示す。
〔結果〕
【表1】
スクアレン合成酵素阻害活性
【0034】
【試験例2】
ラット肝細胞におけるコレステロール生合成阻害試験
〔方法〕
セグレン(Seglen P.O.)の方法(メソッド・イン・セル・バイオロジー、13巻、29頁、1976年)に従ってコラゲナーゼ還流法により6週令雄性SDラットから肝細胞を分離し、24穴マルチプレートに播種(105細胞/穴)した後、5%(v/v)牛胎児血清および1nM インスリン、1nM デキサメサゾン、100unit/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンを含むウイリアムスE培地(大日本製薬)で一夜培養した。このようにして得られた初代肝細胞に、TAN−2177A・一塩酸塩を含む10%(v/v)リポ蛋白欠乏ヒト血清(シグマ社製、米国)添加ダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社製、米国) 250μlを添加し、1時間インキュベートした後、25mM[14C]酢酸(2.8μCi/μmole)10μlを添加し、更に4時間インキュベートした。ダルベッコ・リン酸緩衝食塩水で2度洗浄後、15%水酸化カリウム 100μlを加え37℃にて細胞を溶解した。15%水酸化カリウム/80%(v/v)エタノール 400μlを加え75℃にて1時間ケン化した後、蒸留水 300μl及びヘキサン 800μlを加え不ケン化脂質を抽出した。ヘキサン層 400μlを減圧乾固後、0.1%コレステロール溶液(アセトン:エタノール=1:1中)200μlに溶解し、0.5%ジギトニン溶液(50%(v/v)エタノール中)400μlを加え、一夜室温にて放置した。得られた沈澱をガラスフィルター(アドバンテック東洋、GC-50)上に集め50%(v/v)アセトンで洗浄した。コレステロール生合成阻害活性は、ジギトニン沈澱に取り込まれた放射活性を被検化合物の代わりに水を加えた対照と比較することで算出した。
被検化合物のコレステロール生合成50%阻害濃度を〔表2〕に示す。
〔結果〕
【表2】
ラット肝細胞におけるコレステロール生合成阻害活性
【0035】
【試験例3】
マウス毒性試験
TAN−2177A・一塩酸塩をマウス2匹に200mg/kg腹腔内投与しても死亡例を認めなかった。
【0036】
以上の試験例に示すように、本発明の化合物またはその塩は、毒性が低く、非常に低濃度でヒト細胞由来のスクアレン合成酵素の活性を阻害し、またラット肝細胞におけるコレステロール生合成を強力に阻害した。
【0037】
【製剤例1】
化合物TAN−2177A・一塩酸塩を用いて、下記に示す処方の全成分を混和し、ゼラチンカプセルに充填し、カプセル1個当たり、30mgの化合物TAN−2177A・一塩酸塩を含有するカプセル剤を製造した。
化合物TAN−2177A・一塩酸塩 30mg
乳糖 100mg
コーンスターチ 40mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
合 計 180mg
【0038】
【製剤例2】
化合物TAN−2177A・一塩酸塩、乳糖、コーンスターチ(下記に示す量の半分)及びヒドロキシプロピルセルロースを混合し、これに水を加えて練合・造粒した。次いで真空乾燥後、これとステアリン酸マグネシウム及びコーンスターチ(下記に示す量の半分)の混合物とを混合した。得られた混合物を圧縮成型し、下記に示す処方の錠剤を製造した。
化合物TAN−2177A・一塩酸塩 60 mg
乳糖 68.4mg
コーンスターチ 65 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
合 計 200.0mg
【0039】
【製剤例3】
化合物TAN−2177A・一塩酸塩を30%(w/v)ポリエチレングリコール400を含む生理食塩水に溶解して、化合物TAN−2177A・一塩酸塩の0.05%(w/v)溶液を調製し、滅菌瀘過して、バイアルに30mlずつ分注した。バイアル1個当たり、15mgの化合物TAN−2177A・一塩酸塩を含有する静注剤を製造した。
【0040】
【製剤例4】
化合物TAN−2177B・一塩酸塩を用いて、下記に示す処方の全成分を混和し、ゼラチンカプセルに充填し、カプセル1個当たり、30mgの化合物TAN−2177B・一塩酸塩を含有するカプセル剤を製造した。
化合物TAN−2177B・一塩酸塩 30mg
乳糖 110mg
コーンスターチ 30mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
合 計 180mg
【0041】
【製剤例5】
化合物TAN−2177B・一塩酸塩、乳糖、コーンスターチ(下記に示す量の半分)及びヒドロキシプロピルセルロースを混合し、これに水を加えて練合・造粒した。次いで真空乾燥後、これとステアリン酸マグネシウム及びコーンスターチ(下記に示す量の半分)の混合物とを混合した。得られた混合物を圧縮成型し、下記に示す処方の錠剤を製造した。
化合物TAN−2177B・一塩酸塩 60 mg
乳糖 68.4mg
コーンスターチ 65 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
合 計 200.0mg
【0042】
【製剤例6】
化合物TAN−2177B・一塩酸塩を30%(w/v)ポリエチレングリコール400を含む生理食塩水に溶解して、化合物TAN−2177B・一塩酸塩の0.05%(w/v)溶液を調製し、滅菌瀘過して、バイアルに30mlずつ分注した。バイアル1個当たり、15mgの化合物TAN−2177B・一塩酸塩を含有する静注剤を製造した。
【0043】
【発明の効果】
化合物TAN−2177AおよびBまたはそれらの塩は低毒性で、優れたスクアレン合成酵素阻害活性を有しており、高脂血症の予防および治療剤として有用である。また、該化合物は、酵母、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及び糸状菌、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等の菌に優れた抗菌活性を示す。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物TAN−2177Aの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤中)
【図2】化合物TAN−2177Aの13C核磁気共鳴(NMR)スペクトル(重メタノール中、内部標準としてテトラメチルシランを添加)
【図3】化合物TAN−2177Bの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤中)
【図4】化合物TAN−2177Bの13C核磁気共鳴(NMR)スペクトル(重メタノール中、内部標準としてテトラメチルシランを添加)
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクアレン合成酵素阻害作用を有し、高脂血症の治療剤として有用な新規化合物TAN−2177に関する。
【0002】
【従来の技術】
高脂血症は、高血圧、喫煙とともに虚血性心疾患に対する三大危険因子として知られており、血中コレステロール値の適切なコントロールは、高脂血症に起因する虚血性心疾患、脳血管障害、腎疾患などの予防または治療に極めて重要である。
スクアレン合成酵素を阻害し血中コレステール低下作用を有する天然物由来の化合物として、ザラゴジック酸(米国特許第5096923号)、スクアレスタチン 1〔ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第267巻、No. 17、11705頁〜11708頁〕などが報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの化合物は血中コレステロール低下作用、経口吸収性等の点で十分とは言えない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような事情に鑑み、本発明者らは強力な活性を有するスクアレン合成酵素阻害物質を微生物代謝産物の中に求め研究を重ねた結果、タラロミセス(Talaromyces)属に属する糸状菌の培養液中に強力なスクアレン合成酵素阻害活性を有する化合物が含まれることを見いだし、当該活性化合物の単離に成功し、これらをTAN−2177AおよびBと称することとした。これらの化合物の物理化学的および生物学的性質を詳細に検討して、該化合物が新規化合物であることを確かめ、本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、
(1)式
【化2】
〔式中、Rはメチル基または水素原子を示す〕で表される化合物TAN−2177またはその塩、
(2)タラロミセス属に属し、(1)記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積せしめ、生成物を採取することを特徴とする(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩の製造法、
(3)(1)記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物タラロミセス・フラバス、
(4)(1)記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物タラロミセス・フラバス FL−55755株、
(5)(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなる医薬、
(6)(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなるスクアレン合成酵素阻害剤、および
(7)(1)記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなる抗高脂血症剤に関する。
【0006】
式〔I〕中、-Arg-Gly-Gly-Leu-はアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、Argはアルギニン残基、Glyはグリシン残基、Leuはロイシン残基を示す。
これらのアミノ酸残基は、D体、L体のどちらの場合も本発明に含まれるが、アルギニン残基としては、D−アルギニン残基が、ロイシン残基としては、D−ロイシン残基が好ましい。
式〔I〕中、Rがメチルを示す化合物(TAN−2177Aと称す)では、アミノ酸配列のC末端側のアミノ酸残基は、4−メチル−プロリン残基を示す。
式〔I〕中、Rが水素原子を示す化合物(TAN−2177Bと称す)では、アミノ酸配列のC末端側のアミノ酸残基は、プロリン残基を示す。プロリン残基としてはL−プロリン残基が好ましい。
また、本発明化合物は溶液中において、溶液のpHにより、式中における
【化3】
が
【化4】
に変換された化合物が存在し得るが、それらの変換された化合物またはそれらの混合物も本発明に含まれる。
TAN−2177は、二重結合(>C=C<)を有しているので幾何異性体(シス、トランス型)が存在し得る。また、不斉炭素を含むので光学異性体(D−体、L−体)等の異性体が存在し得るが、それらの各異性体、およびそれらの混合物も本発明に含まれる。
TAN−2177は、コンフォーマーの混合物として存在し得るが、それらのコンフォーマーおよびそれらの混合物も本発明に含まれる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いることができる微生物としては、タラロミセス(Talaromyces)属に属し化合物TAN−2177Aおよび/またはBを生産する微生物であればいずれでも良い。例えば、インド土壌より分離された糸状菌タラロミセス・フラバス FL−55755(Talaromyces flavus FL-55755)株が使用し得る例として挙げられる。
【0007】
FL−55755株は以下のような性質を示す。
【0008】
(b)寒天培地上の性状
1)麦芽エキス寒天培地
生育は良好で24℃、2週間後のコロニーの直径は70mmであった。表面はやや盛り上がった羊毛状の菌糸体よりなり、中央部はやや隆起し黄色の菌糸の塊が認められ、外縁は規則正しく縁取られている。気生菌糸の発達、分生子の形成は良好である。コロニー表面の色調は、中央部は黄色から黄褐色を呈し、周辺部は黄緑色からくすんだ緑色を呈する。裏面は淡黄色から淡黄褐色を呈する。可溶性色素の生成は認められない。
3週間後には、黄色から赤褐色の多数の子嚢果の形成が認められる。
2)バレイショ・ブドウ糖寒天培地
生育は良好で24℃、2週間後のコロニーの直径は80mmであった。表面はやや盛り上がった羊毛状の菌糸体よりなり、中央部に赤褐色の水滴が認められ、外縁は規則正しく縁取られている。気生菌糸の発達、分生子の形成は良好である。コロニー表面の色調は、中央部は淡黄色から淡赤褐色を呈し、周辺部は淡黄灰色から緑黄灰色を呈する。裏面中央部から周辺部にかけて黄褐色から淡黄褐色を呈する。可溶性色素の生成は認められない。3週間後には灰黄色から橙色の子嚢果の形成が認められる。
3)ツァペック寒天培地
生育は中程度で24℃、2週間後のコロニーの直径は37mmであった。表面は平坦で羊毛状の菌糸体よりなり、外縁は規則正しく縁取られている。コロニー表面の色調は、淡黄色から淡黄灰色を呈する。裏面は、象芽色を呈する。可溶性色素の生成は、認められない。
4)オートミール寒天培地
生育は良好で24℃、2週間後のコロニーの直径は75mmであった。表面はやや盛り上がった羊毛状の菌糸体よりなり、中央部に黄色の菌糸の塊と水滴が認められ、外縁は規則正しく縁取られている。気生菌糸の発達、分生子の形成は良好である。コロニー表面の色調は、中央部は淡黄色から黄褐色を呈し、周辺部から外周部にかけて淡黄緑色から緑黄色を呈する。裏面中央部は淡黄色から淡黄褐色を呈し、周辺部は淡黄橙色から橙黄色を呈する。可溶性色素の生成は認められない。3週間後には、淡黄橙色から赤褐色の多数の子嚢果の形成が認められる。
【0009】
(c)生理学的性質
本菌株の生育条件をバレイショ・ブドウ糖寒天培地で調べると、PH3〜PH10のいずれでも生育は良好であり、生育温度範囲は10℃〜35℃であり、至適生育温度は24℃〜28℃である。37℃では生育しない。
【0010】
以上の諸性質を、ディー・マロチ(D.Malloch)著、宇田川俊一訳「かびの分離・培養と同定」(昭和58年、医歯薬出版株式会社)51頁記載の同定検索表と照合すると、本菌株は、タラロミセス(Talaromyces)属に属する事が明らかであり、さらに、宇田川俊一・椿啓介ら著「菌類図鑑(上)」(1978年,講談社サイエンティフィク)を参照すると、本菌株はタラロミセス・フラバス(Talaromyces flavus)の記載の性質とよく一致する。したがって本菌はタラロミセス・フラバス FL−55755(Talaromyces flavus FL-55755)と同定した。
【0011】
本菌株は、平成6年12月12日に財団法人発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO−32670として、また平成7年1月11日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に、受託番号FERM BP−4967としてそれぞれ寄託されている。
【0012】
本発明の化合物TAN−2177、具体的にはTAN−2177Aおよび/またはB、またはそれらの塩は、これらの菌株に限らず、遺伝子操作技術を含め、自体公知の方法(例、X線、ガンマー線、紫外線等の放射線の照射、薬剤処理、薬剤含有培地上での培養など)により、これらの菌株から誘導される本化合物の生産能を有する変異株をはじめ、当該生産能を有する微生物を培地中で培養し、本化合物を培地中に生成蓄積せしめ、それを採取することにより製造できる。
【0013】
本発明の化合物の生産菌の培養に用いる培地は、該菌が利用し得る栄養源を含むものなら液状でも固体状でもよいが、大量に処理するときに液体培地を用いるのが適当である。培地には、該化合物生産菌が同化し得る炭素源、窒素源、無機物質、微量栄養源を適宜配合する。炭素源としては、例えばグルコース、乳糖、ショ糖、麦芽糖、デキストリン、澱粉、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、油脂類(例、綿実油、大豆油、ラード油、チキン油など)、n-パラフィンなどが用いられる。窒素源としては、例えば、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、大豆粉、コーン・スティープ・リカー、ペプトン、生大豆粉、綿実粉、トマトペースト、ピーナッツミール、廃糖蜜、尿素、アンモニア塩類(例、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなど)などが用いられる。さらに、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む塩類、鉄、マンガン、亜鉛、コバルト、ニッケルなどの金属塩類、リン酸、ホウ酸などの塩類、酢酸、プロピオン酸などの有機酸の塩類を適宜用いてもよい。その他、アミノ酸(例、グリシン、ロイシン、アルギニン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、ペプチド(例、ジペプチド、トリペプチドなど)、ビタミン類(例、ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸、ビタミンB12、ビタミンCなど)、核酸類(例、プリン、ピリミジン、その誘導体など)などを含有させてもよい。培地中のpHを調整する目的で、無機または有機の酸またはアルカリ類、緩衝剤などを加え、あるいは消泡の目的で油脂類、界面活性剤などの適量を添加しても差し支えない。液体培養に際しては、培地のpHは中性付近、pH6〜8が好ましい。培養温度は約14〜30℃、培養時間は約1〜14日が好ましい。培養の手段は静置培養、振とう培養あるいは通気撹拌培養法等の自体公知の方法に従えばよい。大量の処理には、通気撹拌培養法が好ましい。通常、5〜10日の培養でTAN−2177Aおよび/またはBの生産量は最高に達する。
【0014】
培養物から目的とする化合物TAN−2177Aおよび/またはBを採取する方法を以下に述べる。微生物の生産する代謝物をその微生物培養物から採取するのに通常使用される分離手段が適宜利用される。例えばTAN−2177AおよびBは、培養濾液および菌体中に含まれるので、まず培養物にアセトンまたはメタノールなどを加えて活性物質を抽出し、得られた抽出液を濃縮後、吸着性樹脂、例えばダイヤイオンHP−20またはSP−207(三菱化成社製)、アンバーライトXAD−IまたはII(ローム・アンド・ハース社製,米国)などを用いたクロマトグラフィ−に付す方法が有利に用いられる。カラムから目的とする活性物質を溶出するためには、水と混和し得る有機溶媒(例、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル等)と水溶液〔例えば、水、アルカリ(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等)含有水溶液、酸(例、塩酸、酢酸、ギ酸、リン酸等)含有水溶液、塩類含有水溶液(例、食塩水、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液等)など〕との適宜の割合の混合溶媒が用いられる。また、TAN−2177AおよびBは水と混和しない有機溶媒(例、イソブタノ−ル、メチルイソブチルケトン等)で抽出することもできる。かくして得られる溶出液あるいは抽出液を、減圧下濃縮すると、TAN−2177Aおよび/またはBを含有する粗物質が得られる。
【0015】
粗物質をさらに精製し、純粋なTAN−2177AまたはBを得るには周知の種々のクロマトグラフィー法が有利に用いられる。担体としては活性炭、シリカゲル、微結晶セルロース、吸着性樹脂など化合物の吸着性の差を利用するもの、またはイオン交換樹脂、イオン交換セルロース、イオン交換セファデックスなど化合物の官能基の差を利用するもの、あるいは分子ふるい性樹脂など化合物の分子量の差を利用するもの等が有利に用いられる。これら担体から目的とする化合物を溶出するためには担体の種類、性質によって組み合わせが異なるが、適当な有機溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノ−ル、エタノール、イソブタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類など)、有機酸(例、酢酸、ギ酸等)、水溶液〔例えば、水、アルカリ(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等)含有水溶液、酸(例、塩酸、酢酸、ギ酸、リン酸等)含有水溶液、塩類含有水溶液(例、食塩水、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液等)など〕の単独あるいは適宜の割合の混合溶媒が用いられる。
【0016】
更に詳しくは、担体としてクロマト用活性炭(武田薬品工業社製)、キーゼルゲル60(メルク社製、ドイツ)、微結晶セルロース〔例、アビセル(旭化成社製)、フナセル(フナコシ株式会社製)等〕、吸着性樹脂〔例、ダイヤイオンHP−20またはSP−207(三菱化成社製),アンバーライトXAD−IまたはII(ローム・アンド・ハース社製、米国)等〕、陽イオン交換樹脂〔例、アンバ−ライトIR−120、IRC−50またはCG−50(ローム・アンド・ハース社製、米国)、ダウエックス50W(ダウ・ケミカル社製,米国),ダイヤイオンSK1A(三菱化成社製)等〕、陰イオン交換樹脂〔例、アンバーライトIRA−402またはIRA−68(ローム・アンド・ハース社製,米国)、ダウエックス1(ダウ・ケミカル社製,米国)、ダイヤイオンSA10B,PA−404またはWA−30(三菱化成社製)等〕、イオン交換セファデックス〔例、QAEまたはCM−セファデックス(ファルマシア社製,スウェーデン)等〕、分子ふるい性樹脂〔例、セファデックスLH−20(ファルマシア社製,スウェーデン)等〕などが有利に用いられる。
【0017】
さらに、化合物を精製する場合に、分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法も有利に用いられる。この方法を適用する場合、担体としてはオクタデシルシラン(ODS)系、ポリマー系およびシリカゲル系のものが有利に用いられる。例えばODSの場合、YMCゲル(山村化学研究所製)あるいはTSKゲル(東洋曹達工業社製)などが、ポリマー系の場合、ポリマーにオクタデシル基を導入したODP(旭化成社製)あるいはポリマーにポリアミンを導入したNH2P(旭化成社製)などが用いられ、移動相としてはメタノールあるいはアセトニトリルと水あるいは塩類含有水溶液の混合溶液が有利に用いられる。
【0018】
TAN−2177AおよびBは塩基性物質なので、自体公知の方法により酸付加塩、とりわけ薬理学的に許容される酸付加塩としても得ることができ、例えば、無機酸(例、塩酸、硫酸、リン酸)あるいは有機酸(例、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、蓚酸、メタンスルホン酸、オクタンスルホン酸)などの塩が挙げられる。
【0019】
本発明の化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩は低毒性であり安全に用いることができる。化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩はスクアレン合成酵素阻害作用を有し、コレステロール合成を抑制する効果を示す。化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩はスクアレン合成酵素阻害剤として、ヒトや哺乳動物(例、サル、ウマ、ウシ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ等)の高脂血症の予防または治療剤として用いられる。更に具体的には、高脂血症に起因する虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞など)、脳血管障害(例、一過性脳虚血、脳梗塞、脳血栓など)、腎疾患(例、腎硬化症、腎不全、腎性高血圧など)、腹部大動脈瘤、間けつ性跛行などを伴う末梢動脈硬化症などの予防または治療剤として用いられる。化合物TAN−2177AおよびB、またはそれらの塩は、酵母、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及び糸状菌、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等の菌に優れた抗菌活性を示すので、例えば人および哺乳動物のこれら微生物による感染症の治療に用いることができる。該化合物は薬理学的に許容される担体と混合することにより、医薬として適切な剤型の非経口剤または経口剤として提供される。非経口剤として、例えば注射剤、点滴剤、外用剤(例、経鼻投与製剤、経皮製剤など)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤など)などが、経口剤として、例えばカプセル剤、錠剤、シロップ剤、散剤および顆粒剤等が挙げられる。
【0020】
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる方法により製造することができる。
例えば、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩は、分散剤(例、ツィーン (Tween) 80 (アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例、メチルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノールなど)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖など)などと共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコールなどに溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0021】
経口投与製剤にするには、自体公知の方法に従い、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を、例えば賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプンなど)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウムなど)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)または滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000 など)などを添加して圧縮成形する。錠剤、顆粒剤、細粒剤に関しては、味のマスキング、腸溶性、持続性の目的で自体公知の方法でコーティングしてもよい。そのコーティング剤としては、例えば一般のフィルム形成コーティング剤〔例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、TC−5(信越化学工業(株))、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール等〕、水性コーティング剤〔例、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルースアセテートサクシメート等〕、メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体、オイラギッド−L,S(ローム社、ドイツ)、メチルアクリレート・メタクリル酸共重合体、色素(例、タルク、酸化チタン、ベンガラ等〕等が用いられる。腸溶性コーティングを行う場合、活性成分を含む中心核と腸溶皮膜との間に、自体公知の方法に従い、上記フィルム形成コーティング剤で一層又は2層以上の中間層を設けることも有効である。
【0022】
外用剤とするには、自体公知の方法に従い、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を固状、半固状または液状の外用投与剤とすることができる。例えば、上記固状のものとしては、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩をそのまま、あるいは賦形剤(例、グリコール、マンニトール、デンプン、微結晶セルロースなど)、増粘剤(例、天然ゴム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体など)などを添加、混合して粉状の組成物とする。上記液状のものとしては、注射剤の場合とほとんど同様で、油性あるいは水性懸濁剤とする。半固状の場合は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟膏状のものがよい。また、これらはいずれも、pH調節剤(例、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、防腐剤(例、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなど)などを加えても良い。
【0023】
坐剤とするには、自体公知の方法に従い、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の坐剤とすることができる。上記組成物に用いる油性基剤としては、例えば高級脂肪酸のグリセリド 〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製)など〕、あるいは植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油など)などが挙げられる。また、水性基剤としては、例えばポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、水性ゲル基剤としては、例えば天然ゴム類、セルロース誘導体、ビニル重合体、アクリル酸重合体などが挙げられる。
【0024】
化合物TAN−2177をヒトに用いる場合の投与量は対象疾病の種類、程度、患者の年齢などで変動し得るが、通常、化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩の含量として、1日成人(体重50kg)1人当たり約1mgから約500mg、とりわけ好ましくは約2mgから100mgが疾患の予防、治療に用いられる。これらの製剤は、1日1回または2から4回に分けて投与することができる。
化合物TAN−2177AまたはB、またはその塩を、注射剤として非経口的に皮下、静脈内または筋肉内に投与する場合、その投与量は約0.5〜約200mg/日、好ましくは約1〜約50mg/日である。
【0025】
【実施例】
以下に実施例、試験例をあげて本発明を更に詳しく説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、実施例、試験例におけるパーセント(%)は、特に断りの無い限り、重量/容量パーセントを示す。また、溶媒の混合比率は、特に断りの無い限り、容量比を示す。
13C NMRスペクトルは、ブルカーAC−300型スペクトルメーター(ブルカー社製、ドイツ)を用いて測定した、内部標準としてテトラメチルシランを用い、全δ値をppmで示した。また、本明細書中の記号は次のような意味を有する。Q:4級炭素
【0026】
【実施例1】
バクト・ポテト・デキストロース寒天培地(米国ディフコ社製)からなる斜面培地上で生育させたタラロミセス・フラバス(Talaromyces flavus)FL-55755株の胞子懸濁液(10%グリセロール中)を、グルコース2.0%、マルトース3.0%、生大豆粉1.5%、コーン・スチープ・リカー1.0%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、食塩0.3%、pH6.0からなる種培養培地500mlを分注滅菌した2リットル容坂口フラスコに接種して、28℃で2日間振とう培養した。この培養液の1リットルを、グルコース1.0%、マンニトール4.0%、生大豆粉0.5%、トマトペースト0.5%、ピーナッツミール0.5%、ポリペプトン0.5%、グリシン0.1%、酵母エキス0.1%、綿実油0.5%、リン酸水素二カリウム0.05%、硫酸鉄7水和物0.05%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、硫酸マンガン4水和物0.05%、炭酸カルシウム0.5%、アクトコール0.05%、シリコン0.02%、pH7.0からなる主培養培地120リットルを蒸気滅菌した200リットル容醗酵槽に移植した。この主醗酵は28℃、通気120リットル/分、撹拌150rpm、内圧1.0kg/cm2にて162時間培養し、TAN−2177AおよびBを生成蓄積させた。
【0027】
【実施例2】
実施例1で得られた培養液(110リットル)にメタノール(110リットル)を加え、30分間撹拌後、濾過補助剤(ラジオライト 600、昭和化学工業社製)を用いて濾過した。濾液に水(60リットル)を加え、アンバ−ライトXAD−II(10リットル)のカラムクロマトグラフィーに付し、50%(v/v)メタノ−ル水(30リットル)で洗浄後、80%(v/v)メタノ−ル水(50リットル)で溶出した。溶出液を濃縮してメタノ−ルを除去後、水を加えて15リットルとした。水溶液のpHを3.0に調整後、イソブタノ−ル(5リットル)で2回抽出し、水(3リットル)で洗浄した。有機層を濃縮乾固後、残渣をヘキサンで処理して粗粉末I(17.8g)を得た。実施例1と同様にして得られた培養液(225リットル)を上記と同様に処理して粗粉末II(24.2g)を得た。得られた粗粉末IおよびIIを合わせ、シリカゲル(キ−ゼルゲル60、500ml)のカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム−ギ酸混液にメタノールを順次増量添加した溶出液で溶出し、クロロホルム/メタノール/ギ酸(12:8:1)溶出画分から粉末(1.63g)を得た。この粉末を2回に分けてセファデックスLH−20(1リットル)のカラムクロマトグラフィーに付し、メタノールで溶出分画した。活性画分を集めて濃縮乾固し、粉末(926mg)を得た。
【0028】
得られた粉末を4回に分けて分取HPLC〔カラム;アサヒパック(Asahipak)ODP-90, 直径 21.5 mm × 長さ 300 mm(旭化成社製)、移動相;25%(v/v)アセトニトリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.5)、流速;10ml/分〕に付し、分析用HPLCでTAN−2177AまたはBの単一ピークを与える2画分に分けた。TAN−2177Aを含有する画分のpHを7.0に調整後、減圧下アセトニトリルを留去し、アンバーライトIRA−402(Cl型,400ml)を充填したカラムを通過させ、水(400ml)で洗浄した。通過液と水洗液を合わせpH6.5に調整後、アンバ−ライトXAD−II(50ml)のカラムクロマトグラフィーに付した。水(150ml)で洗浄後、80%(v/v)メタノール水(100ml)で溶出し、溶出液を濃縮後、凍結乾燥してTAN−2177A・一塩酸塩(256mg)が白色粉末として得られた。TAN−2177Bを含有する画分も同様の操作を行い、TAN−2177B・一塩酸塩(54mg)が白色粉末として得られた。
【0029】
得られたTAN−2177A・一塩酸塩およびTAN−2177B・一塩酸塩の物理化学的性状を以下に示す。
TAN−2177A・一塩酸塩
(1)外観:白色粉末
(2)比旋光度:-32゜(c 0.50, H2O, 22℃)
(3)分子量:SI−マススペクトル;m/z 877 (M + H)+
高分解能FAB−マススペクトル;m/z
実測値;877.5281
計算値;877.5259
(4)元素分析値:(%)(水分4モルとして計算)
実測値;C, 48.69; H, 7.82; N, 17.36; Cl, 4.05
計算値;C, 48.75; H, 7.87; N, 17.05; Cl, 3.60
(5)分子式:C40H68N12O10・HCl
(6)UVスペクトル:メタノ−ル中
末端吸収
(7)IRスペクトル:KBr 錠剤中,主な吸収を示す(波数,cm-1)。(図1)
3340, 2960, 1660, 1550, 1460, 1390, 1250, 1100, 1030, 610
(8)13C NMR スペクトル:75 Mz, 重メタノール中,δppm (図2)
(TAN−2177A・一塩酸塩は重メタノール中、2種のコンフォーマーの混合物として存在するので、主コンフォーマーのシグナルを示す)
180.1 (Q), 175.0 (Q), 174.1 (Q), 173.9 (Q), 172.5 (Q), 172.2 (Q), 171.8 (Q), 171.0 (Q), 161.2 (Q), 158.7 (Q), 134.6 (Q), 121.8 (CH), 76.2 (CH), 64.5 (CH), 55.5 (CH2), 54.9 (CH), 54.3 (CH), 52.1 (CH), 50.5 (CH), 49.4 (CH2), 44.4 (CH2), 43.9 (CH2), 43.7 (CH2), 42.3 (CH2), 42.1 (CH2), 39.1 (CH2), 38.4 (CH2), 37.4 (CH2), 35.7 (CH), 34.8 (CH), 29.2 (CH2), 26.3 (CH2), 25.6 (CH), 23.9 (CH3), 22.0 (CH3), 21.3 (CH3), 17.3 (CH3), 15.5 (CH3), 15.2 (CH3), 13.6 (CH3)
(9)アミノ酸分析:6N塩酸中、110℃で15時間反応後、分析。
グリシン(2モル)、ロイシン(1モル)、アルギニン(1モル)
(10)呈色反応:陽性;坂口,リンモリブデン酸反応
陰性;ドラ−ゲンドルフ,エールリッヒ反応
(11)高速液体クロマトグラフィー:
カラム;アサヒパック(Asahipak)ODP-50, 直径 6.0 mm × 長さ 150 mm(旭化成社製)
移動相;28%(v/v)アセトニトリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.5)
流 速;1.0ml/分
検出法;214nm
保持時間;9.8分
(12)薄層クロマトグラフィー:
担体;シリカゲル60F254(メルク社製,ドイツ)
展開溶媒;クロロホルム:メタノ−ル:水:ギ酸(6:4:1:0.1)
Rf値;0.49
【0030】
TAN−2177B・一塩酸塩
1)外観:白色粉末
2)比旋光度:-31゜(c 0.51, H2O, 22℃)
3)分子量:SI−マススペクトル;m/z 863 (M + H)+
高分解能FAB−マススペクトル;m/z
実測値;863.5110
計算値;863.5103
4)分子式:C39H66N12O10・HCl
5)UVスペクトル:メタノ−ル中
末端吸収
6)IRスペクトル:KBr 錠剤中,主な吸収を示す(波数,cm-1)。(図3)
3350, 2960, 1660, 1550, 1450, 1390, 1250, 1100, 1030, 610
7)13C NMR スペクトル:75 Mz, 重メタノール中,δppm (図4)
(TAN−2177B・一塩酸塩は重メタノール中、2種のコンフォーマーの混合物として存在するので、主コンフォーマーのシグナルを示す)
179.9 (Q), 175.0 (Q), 174.1 (Q), 173.9 (Q), 173.3 (Q), 172.5 (Q), 172.1 (Q), 171.0 (Q), 161.1 (Q), 158.6 (Q), 134.5 (Q), 121.7 (CH), 76.1 (CH), 63.7 (CH), 54.8 (CH), 54.3 (CH), 52.0 (CH), 50.5 (CH), 49.1 (CH2), 48.5 (CH2), 44.5 (CH2), 43.8 (CH2), 43.6 (CH2), 42.5 (CH2), 42.0 (CH2), 38.4 (CH2), 37.0 (CH2), 35.7 (CH), 31.0 (CH2), 29.0 (CH2), 26.2 (CH2), 25.7 (CH2), 25.6 (CH), 23.9 (CH3), 22.0 (CH3), 21.3 (CH3), 15.5 (CH3), 15.2 (CH3), 13.6 (CH3)
8)アミノ酸分析:6N塩酸中、110℃で15時間反応後、分析。
グリシン(2モル)、ロイシン(1モル)、アルギニン(1モル)、
プロリン(1モル)
9)呈色反応:陽性;坂口,リンモリブデン酸反応
陰性;ドラ−ゲンドルフ,エールリッヒ反応
10)高速液体クロマトグラフィー:
カラム;アサヒパック(Asahipak)ODP-50, 直径 6.0 mm × 長さ 150 mm(旭化成社製)
移動相;28%(v/v)アセトニトリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.5)流 速;1.0ml/分
検出法;214nm
保持時間;6.9分
11)薄層クロマトグラフィー:
担体;シリカゲル60F254(メルク社製,ドイツ)
展開溶媒;クロロホルム:メタノ−ル:水:ギ酸(6:4:1:0.1)
Rf値;0.46
【0031】
上述した物理化学的データおよびNMRスペクトルの詳細な検討によりTAN−2177A・一塩酸塩およびB・一塩酸塩は下記の構造を有するものと決定した。
【化5】
【0032】
【試験例1】
スクアレン合成酵素阻害試験
〔方法〕
1. ヒト細胞由来酵素の調製
10%(v/v)牛胎児血清(ギブコ社製、米国)を含むダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社製、米国)で培養して得られたヒト肝癌細胞 HepG2(約 1×109 cells)を氷冷緩衝液〔100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、30mM ニコチンアミド、2.5mM MgCl2〕10mlに懸濁後、超音波処理(30秒間、2回)によって細胞を破砕した。得られたソニケートを4℃、10,000×gで20分間遠心分離し、得られた上清を更に4℃、105,000×gで90分間遠心分離した。得られた沈渣を氷冷10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁後、再度4℃、105,000×gで90分間遠心分離した。このようにして得られた沈渣(ミクロソーム画分)を氷冷100 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁(蛋白濃度 4mg/ml)し酵素液とした。
【0033】
2.スクアレン合成酵素阻害活性の測定
5μM [1-3H] ファルネシルピロリン酸(25μCi/μmole、ニューイングランド・ニュークリアー社製、米国) 、1mM NADPH、5mM MgCl2、6mM グルタチオン、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、及びTAN−2177A・一塩酸塩を含む溶液に、ヒト細胞由来酵素液(蛋白量0.8μg)を添加し全量50μlとした後に、37℃にて45分間反応させた。反応液にクロロホルム・メタノール混液(1:2)150μlを添加し反応を停止させた後、クロロホルム50μlおよび3N水酸化ナトリウム溶液50μlを添加し反応生成物をクロロホルム層(下層)に抽出した。スクアレン合成酵素阻害活性は、クロロホルム層に取り込まれた放射活性を被検化合物の代わりに水を加えた対照と比較することで算出した。
被検化合物のスクアレン合成酵素50%阻害濃度を〔表1〕に示す。
〔結果〕
【表1】
スクアレン合成酵素阻害活性
【0034】
【試験例2】
ラット肝細胞におけるコレステロール生合成阻害試験
〔方法〕
セグレン(Seglen P.O.)の方法(メソッド・イン・セル・バイオロジー、13巻、29頁、1976年)に従ってコラゲナーゼ還流法により6週令雄性SDラットから肝細胞を分離し、24穴マルチプレートに播種(105細胞/穴)した後、5%(v/v)牛胎児血清および1nM インスリン、1nM デキサメサゾン、100unit/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンを含むウイリアムスE培地(大日本製薬)で一夜培養した。このようにして得られた初代肝細胞に、TAN−2177A・一塩酸塩を含む10%(v/v)リポ蛋白欠乏ヒト血清(シグマ社製、米国)添加ダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社製、米国) 250μlを添加し、1時間インキュベートした後、25mM[14C]酢酸(2.8μCi/μmole)10μlを添加し、更に4時間インキュベートした。ダルベッコ・リン酸緩衝食塩水で2度洗浄後、15%水酸化カリウム 100μlを加え37℃にて細胞を溶解した。15%水酸化カリウム/80%(v/v)エタノール 400μlを加え75℃にて1時間ケン化した後、蒸留水 300μl及びヘキサン 800μlを加え不ケン化脂質を抽出した。ヘキサン層 400μlを減圧乾固後、0.1%コレステロール溶液(アセトン:エタノール=1:1中)200μlに溶解し、0.5%ジギトニン溶液(50%(v/v)エタノール中)400μlを加え、一夜室温にて放置した。得られた沈澱をガラスフィルター(アドバンテック東洋、GC-50)上に集め50%(v/v)アセトンで洗浄した。コレステロール生合成阻害活性は、ジギトニン沈澱に取り込まれた放射活性を被検化合物の代わりに水を加えた対照と比較することで算出した。
被検化合物のコレステロール生合成50%阻害濃度を〔表2〕に示す。
〔結果〕
【表2】
ラット肝細胞におけるコレステロール生合成阻害活性
【0035】
【試験例3】
マウス毒性試験
TAN−2177A・一塩酸塩をマウス2匹に200mg/kg腹腔内投与しても死亡例を認めなかった。
【0036】
以上の試験例に示すように、本発明の化合物またはその塩は、毒性が低く、非常に低濃度でヒト細胞由来のスクアレン合成酵素の活性を阻害し、またラット肝細胞におけるコレステロール生合成を強力に阻害した。
【0037】
【製剤例1】
化合物TAN−2177A・一塩酸塩を用いて、下記に示す処方の全成分を混和し、ゼラチンカプセルに充填し、カプセル1個当たり、30mgの化合物TAN−2177A・一塩酸塩を含有するカプセル剤を製造した。
化合物TAN−2177A・一塩酸塩 30mg
乳糖 100mg
コーンスターチ 40mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
合 計 180mg
【0038】
【製剤例2】
化合物TAN−2177A・一塩酸塩、乳糖、コーンスターチ(下記に示す量の半分)及びヒドロキシプロピルセルロースを混合し、これに水を加えて練合・造粒した。次いで真空乾燥後、これとステアリン酸マグネシウム及びコーンスターチ(下記に示す量の半分)の混合物とを混合した。得られた混合物を圧縮成型し、下記に示す処方の錠剤を製造した。
化合物TAN−2177A・一塩酸塩 60 mg
乳糖 68.4mg
コーンスターチ 65 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
合 計 200.0mg
【0039】
【製剤例3】
化合物TAN−2177A・一塩酸塩を30%(w/v)ポリエチレングリコール400を含む生理食塩水に溶解して、化合物TAN−2177A・一塩酸塩の0.05%(w/v)溶液を調製し、滅菌瀘過して、バイアルに30mlずつ分注した。バイアル1個当たり、15mgの化合物TAN−2177A・一塩酸塩を含有する静注剤を製造した。
【0040】
【製剤例4】
化合物TAN−2177B・一塩酸塩を用いて、下記に示す処方の全成分を混和し、ゼラチンカプセルに充填し、カプセル1個当たり、30mgの化合物TAN−2177B・一塩酸塩を含有するカプセル剤を製造した。
化合物TAN−2177B・一塩酸塩 30mg
乳糖 110mg
コーンスターチ 30mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
合 計 180mg
【0041】
【製剤例5】
化合物TAN−2177B・一塩酸塩、乳糖、コーンスターチ(下記に示す量の半分)及びヒドロキシプロピルセルロースを混合し、これに水を加えて練合・造粒した。次いで真空乾燥後、これとステアリン酸マグネシウム及びコーンスターチ(下記に示す量の半分)の混合物とを混合した。得られた混合物を圧縮成型し、下記に示す処方の錠剤を製造した。
化合物TAN−2177B・一塩酸塩 60 mg
乳糖 68.4mg
コーンスターチ 65 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
合 計 200.0mg
【0042】
【製剤例6】
化合物TAN−2177B・一塩酸塩を30%(w/v)ポリエチレングリコール400を含む生理食塩水に溶解して、化合物TAN−2177B・一塩酸塩の0.05%(w/v)溶液を調製し、滅菌瀘過して、バイアルに30mlずつ分注した。バイアル1個当たり、15mgの化合物TAN−2177B・一塩酸塩を含有する静注剤を製造した。
【0043】
【発明の効果】
化合物TAN−2177AおよびBまたはそれらの塩は低毒性で、優れたスクアレン合成酵素阻害活性を有しており、高脂血症の予防および治療剤として有用である。また、該化合物は、酵母、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及び糸状菌、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等の菌に優れた抗菌活性を示す。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物TAN−2177Aの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤中)
【図2】化合物TAN−2177Aの13C核磁気共鳴(NMR)スペクトル(重メタノール中、内部標準としてテトラメチルシランを添加)
【図3】化合物TAN−2177Bの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤中)
【図4】化合物TAN−2177Bの13C核磁気共鳴(NMR)スペクトル(重メタノール中、内部標準としてテトラメチルシランを添加)
Claims (7)
- タラロミセス属に属し、請求項1記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積せしめ、生成物を採取することを特徴とする請求項1記載TAN−2177の化合物またはその塩の製造法。
- 請求項1記載TAN−2177の化合物を生産する能力を有する微生物タラロミセス・フラバス。
- 請求項1記載の化合物TAN−2177を生産する能力を有する微生物タラロミセス・フラバス FL−55755株。
- 請求項1記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなる医薬。
- 請求項1記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなるスクアレン合成酵素阻害剤。
- 請求項1記載の化合物TAN−2177またはその塩を含有してなる抗高脂血症剤。
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