JP3732791B2 - インクジェットヘッド及びインクジェット式印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクジェットヘッド、そしてインクジェットヘッドを使用しインクジェットヘッド中の気泡を取り除く為の気泡抜き装置を伴うインクジェット式印刷装置に関係している。
【0002】
【従来の技術】
インク溜まり室と、インク溜まり室に連通した一端と外部空間に開口した他端とを含む少なくとも1つのオリフィスと、オリフィスに設けられオリフィス中のインクを上記他端の開口から噴出させる為のインク噴出駆動要素と、を備えているインクジェットヘッドは、従来から良く知られている。
【0003】
インクジェットヘッドを使用したインクジェット式印刷装置は、カラー印刷のための構成が簡易であり、動作時に生じる騒音が小さく、そして印刷速度が速い等の利点を有している。
【0004】
特公平2−51734号公報及び特開昭64−90754号公報の夫々は、インクジェットヘッドを開示している。特公平2−51734号公報のインクジェットヘッドはインク噴出駆動要素として圧電素子を使用しており、特開昭64−90754号公報のインクジェットヘッドはインク噴出駆動要素として発熱抵抗体を使用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
インクジェットヘッドは、インク噴出駆動要素によりそれが設けられているオリフィス中のインクに圧力のような運動エネルギーを与え、その結果としてオリフィス中のインクを上記他端の開口から噴出させる。しかしながら、オリフィス中やインク溜まり室中においてオリフィスの上記一端の近傍のインクに気泡が含まれていると、インク噴出駆動要素によりインクに加えられた圧力は上記気泡により吸収され、その結果としてオリフィス中のインクが上記他端の開口から噴出しなくなる。また、オリフィスに連通しているインク溜まり室中のインクに気泡が含まれている場合でも、上記圧力の適切な発生やインク溜まり室からオリフィスへのインクの供給に不具合が生じることがある。
【0006】
オリフィス中やインク溜まり室中のインク中への気泡の混入は、外部からインク溜まり室中へとインクを供給する時に生じ易い。また、インクジェットヘッドの使用中にオリフィスの上記他端の開口を介して外部空間の空気がオリフィス中やインク溜まり室中のインク中へと混入することもある。
【0007】
従来のインクジェットヘッドにおいては、オリフィス中やインク溜まり室中のインク中に混入した気泡を外部空間に排除する為に、所望の印字動作終了後に、インク溜まり室中のインクに外部から圧力を負荷してオリフィス中のインクを上記他端の開口を介して外部空間中へと押し出したり、あるいは、オリフィス中のインクに上記他端の開口を介して負圧を負荷してオリフィス中のインクを上記他端の開口を介して外部空間中へと吸い出したりしている。
【0008】
このような従来の混入気泡排除操作では、オリフィス中の少量のインクから混入気泡を排除することは比較的容易である。しかしながら、インク溜まり室中の多量のインク中の混入気泡を排除することは、インク溜まり室中の多量のインクを排出することを必要とするばかりでなく、それでも多量のインク中の混入気泡を排除することは困難である。
【0009】
特公平6−11542号公報には、水平方向にインクを噴出するインクジェットヘッドにおけるインク溜まり室中の多量のインク中に含まれている気泡を外部空間中に容易に効率よく排出する為の構成が開示されている。ここにおいては、インクジェットヘッド中にインク噴出用オリフィスが水平に配置されていて、インク噴出用オリフィスの一端がインク溜まり室に連通されていて他端は外部空間に開口している。インクジェットヘッド中にはさらに、インク噴出用オリフィスとは独立してインク噴出用オリフィスの上方に気泡排出路が水平に設けられていて、気泡排出路の一端はインク溜まり室に連通されていて他端は上方に向けられて外部空間に開口している。
【0010】
しかしながら、特公平6−11542号公報のインクジェットヘッドの混入気泡排除構造は、インクジェットヘッドがインク噴出用オリフィスを略水平にして使用することを前提として構成されているので、インクジェットヘッドがインク噴出用オリフィスの他端部の開口を下向きにして使用される場合には、うまく機能しない。
【0011】
インク噴出用オリフィスの他端部の開口を下向きにした状態でインクジェットヘッドを使用するインクジェット式印刷装置は、インク噴出用オリフィスの他端部の開口からのインクの噴出に重力を利用することが出来るので、インク噴出駆動要素の構造を簡易にすることが出来るという利点を有している。このインクジェット式印刷装置はまた、所望の画像を形成する記録媒体に所望の画像を形成する間に上記記録媒体を水平な状態に保ったままにして置くことが容易に出来るので、上記記録媒体の表面に歪みを生じさせることなく所望の画像を上記記録媒体の表面に精密に印刷することが出来るという利点を有している。
【0012】
この発明は上記事情の下でなされ、この発明の目的は、インク噴出用オリフィスの他端の開口を下向きにした状態で使用されるインクジェットヘッドであって、インク噴出用オリフィス中のインク中の気泡を容易に排除することが出来るばかりでなく、インク溜まり室中の気泡も容易に排除することが出来るインクジェットヘッドを提供することである。
【0013】
さらに、このようなインクジェットを使用しインクジェットヘッド中の気泡を取り除く為の気泡抜き装置を伴うインクジェット式印刷装置を提供することも本願の発明の目的である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為に、この発明に従ったインクジェットヘッドは、インク噴出用オリフィスの他端の開口を下向きにした状態で使用されるインクジェットヘッドであって:外部からインクが供給されるインク溜まり室と;上記インク溜まり室の下方に設けられ、夫々が、上記インク溜まり室の下部に開口した一端と上記一端の下方で外部空間に開口した他端とを含み、上記一端から上記他端まで下方に向けて延出しており、所定の方向に配置されている複数のオリフィスと;上記複数のオリフィスに対応して設けられ、上記複数のオリフィス中のインクを上記他端の開口から噴出させる為の複数のインク噴出駆動要素と;そして、上記複数のオリフィスの配列方向における両側に設けられて上記複数のオリフィスの夫々と同じ方向にインク溜まり室の上部から延出している1対の気泡抜き路と;を備え、1対の気泡抜き路の一方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における一方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでおり、1対の気泡抜き路の他方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における他方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでいる。
【0016】
上記目的を達成する為に、この発明に従ったインクジェット式印刷装置は:記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置と;記録媒体搬送装置により搬送されている記録媒体の上方で支持されて上記記録媒体に対面し、搬送されている記録媒体に所望の画像を形成するインクジェットヘッドと;そして、インクジェットヘッド中の気泡を取り除く為の気泡抜き装置と;を備えている。また、上記インクジェットヘッドが:インク噴出用オリフィスの他端の開口を下向きにした状態で使用されるインクジェットヘッドであって、外部からインクが供給されるインク溜まり室と;上記インク溜まり室の下方に設けられ、夫々が上記インク溜まり室の下部に開口した一端と上記一端の下方で外部空間に開口した他端とを含み、上記一端から上記他端まで下方に向けて延出しており、所定の方向に配置されている複数のオリフィスと;上記複数のオリフィスに対応して設けられ、上記複数のオリフィス中のインクを上記他端の開口から噴出させる為の複数のインク噴出駆動要素と;そして、上記複数のオリフィスの配列方向における両側に設けられて上記複数のオリフィスの夫々と同じ方向にインク溜まり室の上部から延出している1対の気泡抜き路と;を備えている。そして、1対の気泡抜き路の一方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における一方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでいて、1対の気泡抜き路の他方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における他方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでいる。さらに、上記気泡抜き装置は、上記複数のオリフィスの上記他端の開口からの上記インク噴出駆動要素によるインクの噴出が行なわれていない間に、上記1対の気泡抜き路の上記他端の開口を介して上記1対の気泡抜き路及び上記インク溜まり室の上部からインクとともに気泡を吸引する。
【0017】
以下、この発明の種々の実施の形態に従ったインクジェットヘッド及びこれらのインクジェットヘッドと組み合わされて使用される気泡抜き装置を伴うインクジェット式印刷装置の構成を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施の形態に従ったインクジェットヘッド10及びこのインクジェットヘッド10と組み合わされて使用される気泡抜き装置12を伴うインクジェット式印刷装置14の構成を概略的に示している。
【0019】
インクジェット式印刷装置14は、記録媒体16に所望の画像を形成するよう構成されていて、記録媒体16を所定の方向(図1に矢印Xで示す)に所定の速度で間欠的に搬送する記録媒体搬送装置18を備えている。この実施の形態では、記録媒体16は所定の寸法及び形状を有したシート状の紙であり、そして記録媒体搬送装置18は複数の記録媒体搬送ローラ対を含む。複数の記録媒体搬送ローラ対の夫々は、図示されていない回転駆動駆動源から回転力を伝達されるとともに回転速度を制御されており、このような記録媒体搬送装置18は当該技術分野において広く知られている。ここにおいて、記録媒体搬送装置18は記録媒体16を水平状態に搬送する。
【0020】
記録媒体搬送装置18は、さらに、所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間にこの所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間の記録媒体16の水平な移動軌跡に対し平行に広がった記録媒体支持案内面20aを有したプラテン20を含んでいる。プラテン20の記録媒体支持案内面20aは、所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間の記録媒体16の水平な移動軌跡に隣接しており、この結果として、所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間を搬送されている記録媒体16はプラテン20の記録媒体支持案内面20aにより水平状態に支持されていて下方に撓まない。
【0021】
インクジェットヘッド10は、上記所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間の記録媒体16の部分の上方で記録媒体16の上記部分に対し記録媒体16の所定の搬送方向(図1に矢印Xで示す)に対し水平に直交する2方向(図1に矢印Y,Y’で示す)に所定の速度で往復移動可能にインクジェッドヘッド駆動装置22により支持されている。
【0022】
インクジェットヘッド10はインク供給装置24に接続されていて、インク供給装置24から所望の色のインクが供給されている。インクジェットヘッド10はプラテン20上の記録媒体16の部分に向かい開口した複数のオリフィスをその下面に有しており、複数のオリフィスのこれらの開口は記録媒体16の所定の搬送方向(図1に矢印Xで示す)に沿い相互に所定の間隔で配置されている。
【0023】
上記所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間で所定の時間だけ記録媒体16の搬送が止められている間に、インクジェットヘッド10はインクジェッドヘッド駆動装置22により上記水平に直交する2方向(図1に矢印Y,Y’で示す)またはいずれかの一方向に所定の速度で移動される。そしてこの移動の間に、インクジェッドヘッド駆動装置22はまた、停止している記録媒体16の上記部分上の上記水平に直交する2方向における複数の所定の位置で上記複数のオリフィス開口中の所定の1つまたは複数からインクを記録媒体16の上記部分に向かい噴出させるようインクジェットヘッド10を制御する。この結果として、停止している記録媒体16の上記部分上でインクジェットヘッド10が通過した領域に所望のインク画像が形成される。
【0024】
次に、記録媒体搬送装置18は、記録媒体16を上記所定の速度で所定の時間搬送した後に搬送を一時停止させ、ここでまた停止されている記録媒体16の上記部分の上面上にインクジェッドヘッド駆動装置22によりインクジェットヘッド10が上記2方向またはいずれか一方向に移動されインクを噴射させられることにより、前述したように停止している記録媒体16の上記部分上でインクジェットヘッド10が通過した領域に所望のインク画像が形成される。
【0025】
記録媒体搬送装置18により記録媒体16が間欠的に一回分搬送される距離は、所定の記録媒体搬送方向(図1に矢印Xで示す)におけるインクジェットヘッド10の上記複数のオリフィス開口中の最大離間距離に等しく設定されている。
【0026】
従って、記録媒体搬送装置18により記録媒体16が上記所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間のプラテン20の記録媒体支持案内面20a上を上述した如く所定の搬送速度で間欠的に搬送されている間に、インクジェッドヘッド駆動装置22によりインクジェットヘッド10が上記水平に直交する2方向(図1に矢印Y,Y’で示す)またはいずれかの一方向に所定の速度で繰り返し間欠的に移動されるとともに上記複数のオリフィス開口中の所定の1つまたは複数からインクを記録媒体16の上記部分に向かい噴出させることにより、記録媒体16の上記部分の上面における所望の領域に所望の画像を形成することが出来る。
【0027】
上記水平に直交する2方向(図1に矢印Y,Y’で示す)におけるインクジェットヘッド10の移動範囲は、この方向における上記所定の2組の記録媒体搬送ローラ対の間のプラテン20の記録媒体支持案内面20aやその上の記録媒体16の上記部分の寸法(通常、幅寸法という)よりも大きく設定されている。上記移動範囲において、プラテン20の記録媒体支持案内面20aやその上の記録媒体16の上記部分の幅方向に位置する両側縁のいずれか一方の外側の所定の位置において、この所定の位置に配置されたインクジェットヘッド10の下面に対面するよう気泡抜き装置12が配置されている。気泡抜き装置12は、インクジェットヘッド10中の気泡を取り除く為に使用される。
【0028】
上記所定の位置は、メインテナンス位置またはレスト位置と呼ばれる。
【0029】
上記移動範囲は、メインテナンス位置またはレスト位置のさらに外側にホーム位置を有している。インクジェットヘッド10が所定時間以上使用されない時、インクジェットヘッド10はホーム位置に配置される。
【0030】
次に、図2を参照しながらインクジェットヘッド10の構成について詳細に説明する。図2は、図1のII−II切断線に沿ったこの発明の一実施の形態に従ったインクジェットヘッド10の概略的な縦断面図である。なお、図2には、インクジェットヘッド10の内部構造を明瞭に示すために、インクが示されていない。
【0031】
インクジェットヘッド10は、インク溜まり室10aを有した本体10bを備えている。本体10bにはインク溜まり室10aの上部において外部空間に開口したインク導入口10cが形成されている。インク導入口10cはインク供給装置24(図1参照)に連通されていて、インク供給装置24からのインクはインク導入口10cを介してインク溜まり室10a中に供給される。
【0032】
インクジェットヘッド10はさらに、本体10bにおいてインク溜まり室10aの下方に所定の配列で設けられた複数のオリフィス26を備えている。複数のオリフィス26は図1の記録媒体搬送方向Xに沿い所定の間隔で配置されており、夫々が相互に同じ寸法形状を有している。夫々のオリフィス26は、インク溜まり室10aに連通した一端と上記一端から下方に向かい直線状に延出し本体10bの下面10dで外部空間に開口した他端とを有している。
【0033】
複数のオリフィス26の夫々には、上記他端の開口から所定の距離の位置にインク噴出駆動要素28が設けられている。インク噴出駆動要素28は、それが対応するオリフィス26中にインクが満たされている間に対応するオリフィス26中のインクに所定の運動エネルギーを与えることにより上記他端の開口からインクを所定の圧力で噴出させる。
【0034】
複数のオリフィス26中の複数のインク噴出駆動要素28の動作は、インクジェットヘッド駆動装置22(図1参照)により制御される。
【0035】
この実施の形態において、インク噴出駆動要素28は発熱抵抗体である。発熱抵抗体のインク噴出駆動要素28は、それが対応しているオリフィス26中にインクが満たされている間にインクジェットヘッド駆動装置22(図1参照)により瞬間的に発熱される。発熱されたインク噴出駆動要素28に対応しているインク中には気泡が生じ、この気泡が生じさせた所定の圧力により、それが対応しているオリフィス26中でインク噴出駆動要素28(気泡発生位置)からオリフィス26の上記他端の開口までの範囲中の所定量のインクに所定の運動エネルギーが負荷され、上記所定量のインクを上記他端の開口から下方に向かい噴出させる。
【0036】
インクジェットヘッド10の本体10bにはまた、複数のオリフィス26に対し複数のオリフィス26の配列方向における両側に1対の気泡抜き路30が設けられている。1対の気泡抜き路30の夫々は、複数のオリフィス26の夫々と同じ方向に延出しており、インク溜まり室10aの上部と連通した一端と複数のオリフィス26の他端の開口に対し上記他端の開口の配列方向におけるいずれかの側に隣接して配置された他端とを含んでいる。
【0037】
このように構成されているインクジェットヘッド10の複数のオリフィス26やインク溜まり室10aにインクが満たされておらず、これらをインクで満たす必要がある時には、インクジェットヘッド10が前述したホーム位置に配置されている間に、図3中に示されている如く、インク供給装置24からインク導入口10cを介してインク32をインクジェットヘッド10のインク溜まり室10aに供給する。複数のオリフィス26に向かったインク32は表面張力のおかげで複数のオリフィス26の上記他端の開口から外部空間には漏れず、複数のオリフィス26を満たす。
【0038】
インク供給装置24からインク導入口10cを介してインクジェットヘッド10のインク溜まり室10aに供給されるインク32の量が増えつづけると、インク溜まり室10a中の空気はインク溜まり室10aの上部から1対の気泡抜き路30を介して外部空間中に排出される。従って、図4中に示されている如く、インク導入口10cを越えてもなおインク溜まり室10aの上部に向かいインク32が増えつづけることが出来る。
【0039】
インク溜まり室10aの上端に到達したインク32が1対の気泡抜き路30にも流出し、1対の気泡抜き路30を満たすと、インク供給装置24からインク導入口10cを介してのインク溜まり室10a中へのインク32の供給が停止する。この時、1対の気泡抜き路30の上記他端の開口からは表面張力のおかげでインク32は流出しない。
【0040】
インク32の供給が停止した時、図5中に示されている如く、インク溜まり室10aの上部には1対の気泡抜き路30を介して外部空間にうまく排出されなかった気泡34が残る。また、複数のオリフィス26中にも気泡が残っている可能性がある。
【0041】
次に、インクジェットヘッド10は、これらの気泡34を外部空間に排出する為に、図1を参照しながら前述されたメインテナンス位置又はレスト位置に配置される。メインテナンス位置又はレスト位置において、図5中に示されている如く、インクジェットヘッド10の下面10dに気泡抜き装置12が密着される。
【0042】
気泡抜き装置12は、上記下面の1対の気泡抜き路30の上記他端開口に対面する1対の気泡抽出開口12a及び上記下面で1対の気泡抜き路30に挟まれた領域にある複数のオリフィス26の上記他端の開口に対面する1つのオリフィス用気泡抽出開口(図示されていない)を有している。
【0043】
気泡抜き装置12は、1対の気泡抽出開口12a及びこれらの間の上記1つのオリフィス用気泡抽出開口(図示されていない)を介して、インクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30中及びインク溜まり室10aの上部からインク32を吸引するとともに、複数のオリフィス26中からもインク32を吸引し、これらに存在していた気泡34を上述した如く吸引したインク32とともに図示されていない廃棄インク受け中に排出することが出来る。
【0044】
上記吸引は所定時間行なわれ、上記所定時間内には発明者の経験によればインクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30中、インク溜まり室10a中、そして複数のオリフィス26中から気泡抜き装置12により気泡34が完全に抽出される。
【0045】
なお、気泡抜き装置12によりインクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30中、インク溜まり室10a中、そして複数のオリフィス26中から排出されたインク32は、インク供給装置24からのインク導入口10cを介した新たなインク32の供給により補償される。この補償の間にインク供給装置24からインク溜まり室10a中に供給されるインク32は空気を伴わないので、インク溜まり室10に気泡34が生じない。
【0046】
1対の気泡抜き路30、インク溜まり室10a、そして複数のオリフィス26が気泡を含まないインク32により満たされているインクジェットヘッド10が図6中に示されている。
【0047】
この実施の形態において気泡抜き装置12は、インクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30に対応した1対の気泡抽出開口12aにおける気泡抽出作業と、インクジェットヘッド10の複数のオリフィス26に対応した上記1つのオリフィス用気泡抽出開口(図示されていない)における気泡抽出作業と、を相互に独立して制御することが出来る。従って、気泡抜き装置12は1対の気泡抽出開口12aによってインクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30及びインク溜まり室10aの上部から気泡34を最も効率良く抽出するのに最適な吸引圧力や吸引時間で1対の気泡抜き路30及びインク溜まり室10aの上部から気泡34を含むインク32を吸引することが出来、また同時に上記1つのオリフィス用気泡抽出開口(図示されていない)によってインクジェットヘッド10の複数のオリフィス26から気泡を最も効率良く抽出するのに最適な吸引圧力や吸引時間で複数のオリフィス26から気泡を含むインク32を吸引することが出来る。
【0048】
この結果、この実施の形態の気泡抜き装置12は、最も効率良く(即ち、最も短時間で、且つ最も廃棄インクの量を少なく)インクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30及びインク溜まり室10aの上部、さらには複数のオリフィス26から気泡を抽出することが出来る。
【0049】
さらに、この実施の形態の気泡抜き装置12は、インクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30に対応した1対の気泡抽出開口12aにおける気泡抽出作業と、インクジェットヘッド10の複数のオリフィス26に対応した上記1つのオリフィス用気泡抽出開口(図示されていない)における気泡抽出作業と、を相互に独立して制御することが出来るので、前者の気泡抽出作業と後者の気泡抽出作業の夫々を必要に応じて相互に独立して行なうことが可能になっている。
【0050】
なお、インクジェットヘッド10が記録媒体16に対し所望の画像を記録するために使用された後にも、インクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30及びインク溜まり室10aの上部、さらには複数のオリフィス26にインク32が満たされている間に、このインク32中に複数のオリフィス26の上記他端の開口を介して気泡が侵入したり、気泡が生じることがある。
【0051】
このような場合の為に、インクジェットヘッド10の上記使用後には、インクジェットヘッド10を上記メインテナンス位置又はレスト位置に配置して、前述した如く気泡抜き装置12によってインクジェットヘッド10中の気泡を効率良く抽出し、インクジェットヘッド10を次の画像形成作業の為の準備完了状態にすることが出来る。
【0052】
また、気泡抜き装置12を、インクジェットヘッド10の1対の気泡抜き路30に対応した1対の気泡抽出開口12aを有する第1の部分と、複数のオリフィス26に対応した上記1つのオリフィス用気泡抽出開口(図示されていない)を有した第2の部分と、に分割することが出来る。この場合には、第1の部分と第2の部分とをインクジェットヘッド10の上記移動範囲内で記録媒体16やプラテン20における幅方向両側縁の外方に相互に独立して配置することも出来るし、上記幅方向両側縁のいずれか一方の外方に相互に独立して配置することも出来る。
【0053】
また、上述した実施の形態では、インクジェットヘッド10に1対の気泡抜き路30が設けられているが、複数のオリフィス26の夫々が所望のインク噴出機能を果たすことが出来るのであれば、インクジェットヘッド10には1つのみの気泡抜き路30が設けられていることが出来るし、1対を含まぬ複数の気泡抜き路30が設けられていることが出来る。
【0054】
さらに、複数のオリフィス26の夫々が所望のインク噴出機能を果たすことが出来るのであれば、インク溜まり室10aの上部に接続されている気泡抜き路30の上記一端部に対しインク溜まり室10aの上部の気泡34を集まりやすくする為の構成を、インク溜まり室10aの上部に設けることも出来る。
【0055】
次に、図7を参照しながら、この発明のもう1つの実施の形態に従ったインクジェットヘッド10’の構成を概略的に説明する。このインクジェットヘッド10’は、図2乃至図6を参照しながら前述したこの発明の一実施の形態に従ったインクジェットヘッド10に代わり、図1中に示されている気泡抜き装置12とともに、図1中に示されているインクジェット式印刷装置14において使用可能である。
【0056】
なお、このインクジェットヘッド10’の基本的な構成は前述したインクジェットヘッド10の基本的な構成と同じである。従って、このインクジェットヘッド10’において、前述したインクジェットヘッド10の構成要素に対応する構成要素には、前述したインクジェットヘッド10において対応する構成要素に付されていた参照記号に「’」を付した参照符合を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
このインクジェットヘッド10’が前述したインクジェットヘッド10と異なっているのは、以下の事項である。
【0058】
即ち、複数のインク噴出駆動要素28’の夫々が圧電素子により構成されており、本体10b中においてインク溜まり室10aの上部から本体10bの下面に開口した複数のオリフィス26’の他端の開口の近傍まで下方に向かい1本の気泡抜き路30’が延出していることである。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したことから明らかなように、この発明に従ったインクジェットヘッドによれば、インク噴出用オリフィスの他端部の開口を下向きにした状態で使用されるインクジェットヘッドにおいて、インク噴出用オリフィス中のインク中の気泡を容易に排除することが出来るばかりでなく、インク溜まり室中の気泡も容易に排除することが出来る。
【0060】
さらに、このようなインクジェットヘッド中の気泡を取り除く為の気泡抜き装置を伴うインクジェットヘッド,そして、このようなインクジェットヘッドを使用したインクジェット式印刷装置においても、この発明に従ったインクジェットヘッドに特有の上述した如き効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態に従ったインクジェットヘッド及びこのインクジェットヘッドと組み合わされて使用される気泡抜き装置を伴ったインクジェット式印刷装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のII−II切断線に沿ったこの発明の一実施の形態に従ったインクジェットヘッドの概略的な縦断面図であり、ここにおいてはインクジェットヘッドの内部構造であるインク溜まり室,複数のオリフィス,そして気泡抜き路を明瞭に示すためにインクが示されていない。
【図3】図2のインクジェットヘッドのインク溜まり室にインク導入口を介して外部からインクが供給されている間にインクが複数のオリフィスを満たした状態を示す概略的な縦断面図である。
【図4】図2のインクジェットヘッドのインク溜まり室にインク導入口を介して外部からインクが供給されている間に、気泡抜き路からインク溜まり室中の空気が外部空間に押し出されることにより、インク導入口を越えた上方までインク溜まり室中にインクがさらに導入された状態を示す概略的な縦断面図である。
【図5】図2のインクジェットヘッドのインク溜まり室にインク導入口を介して外部から供給されたインクにより、インク溜まり室,複数のオリフィス,そして気泡抜き路が満たされているが、インク溜まり室の上部に気泡が残っている状態を示す概略的な縦断面図である。
【図6】図5のインクジェットヘッドにおいてインク溜まり室の上部に残っていた気泡が気泡抜き路を介して気泡抜き装置により外部に排除された状態を示す概略的な縦断面図である。
【図7】この発明のもう1つの実施の形態に従ったインクジェットヘッドの概略的な斜視図であり、ここにおいてはインク溜まり室,複数のオリフィス,そして気泡抜き路にインクが満たされていない。
【符号の説明】
10,10’ インクジェットヘッド
10a,10’a インク溜まり室
12 気泡抜き装置
14 インクジェット式印刷装置
16 記録媒体
18 記録媒体搬送装置
26,26’ オリフィス
28,28’ インク噴出駆動装置
30,30’ 気泡抜き路
32 インク
Claims (3)
- インク噴出用オリフィスの他端の開口を下向きにした状態で使用されるインクジェットヘッドであって、
外部からインクが供給されるインク溜まり室と;
上記インク溜まり室の下方に設けられ、夫々が、上記インク溜まり室の下部に開口した一端と上記一端の下方で外部空間に開口した他端とを含み、上記一端から上記他端まで下方に向けて延出しており、所定の方向に配置されている複数のオリフィスと;
上記複数のオリフィスに対応して設けられ、上記複数のオリフィス中のインクを上記他端の開口から噴出させる為の複数のインク噴出駆動要素と;そして、
上記複数のオリフィスの配列方向における両側に設けられて上記複数のオリフィスの夫々と同じ方向にインク溜まり室の上部から延出している1対の気泡抜き路と;
を備え、
1対の気泡抜き路の一方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における一方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでおり、
1対の気泡抜き路の他方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における他方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでいる、
インクジェットヘッド。 - 記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置と;
記録媒体搬送装置により搬送されている記録媒体の上方で支持されて上記記録媒体に対面し、搬送されている記録媒体に所望の画像を形成するインクジェットヘッドと;そして、
インクジェットヘッド中の気泡を取り除く為の気泡抜き装置と;
を備えていて、
上記インクジェットヘッドが、
インク噴出用オリフィスの他端の開口を下向きにした状態で使用されるインクジェットヘッドであって、
外部からインクが供給されるインク溜まり室と、
上記インク溜まり室の下方に設けられ、夫々が上記インク溜まり室の下部に開口した一端と上記一端の下方で外部空間に開口した他端とを含み、上記一端から上記他端まで下方に向けて延出しており、所定の方向に配置されている複数のオリフィスと、
上記複数のオリフィスに対応して設けられ、上記複数のオリフィス中のインクを上記他端の開口から噴出させる為の複数のインク噴出駆動要素と、そして、
上記複数のオリフィスの配列方向における両側に設けられて上記複数のオリフィスの夫々と同じ方向にインク溜まり室の上部から延出している1対の気泡抜き路と;
を備え、
1対の気泡抜き路の一方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における一方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでいて、
1対の気泡抜き路の他方が、上記インク溜まり室の上部に開口した一端と上記複数のオリフィスの上記他端の開口に対し上記配列方向における他方の側に隣接して開口され下方に向けられた他端とを含んでおり、
そして、上記気泡抜き装置が、上記複数のオリフィスの上記他端の開口からの上記インク噴出駆動要素によるインクの噴出が行なわれていない間に、上記1対の気泡抜き路の上記他端の開口を介して上記1対の気泡抜き路及び上記インク溜まり室の上部からインクとともに気泡を吸引する、
インクジェット式印刷装置。 - 上記複数のオリフィスの上記他端の開口からの上記インク噴出駆動要素によるインクの噴出が行なわれていない間に、上記気泡抜き装置における気泡抽出作業とは相互に独立して制御可能であり、上記複数のオリフィスの上記他端の開口を介して上記複数のオリフィス中のインクとともに気泡を吸引するオリフィス気泡抜き装置をさらに備えている、請求項2に記載のインクジェット式印刷装置。
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