以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態に係るインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部15が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙ユニット101bから排紙部15に至る用紙搬送経路が形成されている。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部15への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのインクジェットヘッド(記録用ヘッド)1に対してインク液(記録液)が供給され、空間Aの画質向上ヘッド(処理液用ヘッド)2に対して処理液が供給される。
空間Aには、インクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)、画質向上ヘッド2(以下、ヘッド2と称する)、用紙Pを搬送方向(図1中左方から右方に向かう方向)に搬送する搬送機構16、用紙Pをガイドするガイド部、後述の吐出面1a近傍に空気を排出する排出機構64(図5参照)、後述の吐出面2a近傍の空気を吸引する吸引機構74(図5参照)、加湿メンテナンスに用いられる加湿機構90(図5参照)、及び、制御装置100等が配置されている。
ヘッド1は、ヘッドホルダ35を介して筐体101aに支持されており、ブラックインクの液滴を吐出する。ヘッド1の下面は、インクの液滴を吐出する複数の吐出口108(図3参照)が開口した記録用吐出面1a(以下、吐出面1aと称す)である。
ヘッド2は、ヘッドホルダ36を介して筐体101aに支持されており、処理液の液滴を吐出する。このヘッド2は、ヘッド1よりも搬送方向上流側に配置されている。また、ヘッド2の下面は、処理液の液滴を吐出する複数の吐出口108が開口した処理液用吐出面2a(以下、吐出面2aと称す)である。
ヘッドホルダ35,36は、吐出面1a,2aと搬送ベルト8との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1,2をそれぞれ保持している。ヘッド1,2及びヘッドホルダ35,36の周辺構成については、後に詳述する。
搬送機構16は、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18と、ニップローラ4と、剥離プレート5とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6、7の間に巻回されたエンドレスのベルトであり、テンションローラ10によってテンションが付加されている。プラテン18は、ヘッド1,2に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。ベルトローラ7は、図1中時計回りに回転する駆動ローラであって、搬送ベルト8を走行させる。ベルトローラ6は、搬送ベルト8が走行すると回転する従動ローラである。搬送ベルト8の搬送面8aには、弱粘着性のシリコン層が形成されている。ニップローラ4は、搬送されてきた用紙Pを搬送面8aに押さえ付ける。押さえ付けられた用紙Pは、シリコン層によって搬送ベルト8に保持される。剥離プレート5は、搬送ベルト8上の用紙Pを、搬送ベルト8から剥離する。
ガイド部は、搬送方向に関して、搬送機構16を挟んで配置された上流側ガイド部及び下流側ガイド部を有している。上流側ガイド部は、ガイド13a,13bと送りローラ対14を有し、給紙ユニット101bと搬送機構16とを繋ぐ。画像形成用の用紙Pが、搬送機構16に向けて搬送される。下流側ガイド部は、ガイド29a,29bと2つの送りローラ対28を有し、搬送機構16と排紙部15とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部15に向けて搬送される。
空間Bには、給紙ユニット101bが配置されている。給紙ユニット101bは、給紙トレイ11及び給紙ローラ12を有する。このうち、給紙トレイ11が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ11は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納する。給紙ローラ12は、給紙トレイ11内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
ここで、副走査方向とは搬送機構16で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
空間Cには、タンクユニット101cが筐体101aに対して着脱可能に配置されている。タンクユニット101cは、1つのインクタンク17a及び1つの処理液タンク17bが着脱可能に装着されている。インクタンク17aは、ブラックのインク液が貯留されており、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ(不図示)を介して接続されている。同様に、処理液タンク17bは、処理液が貯留されており、ヘッド2にチューブ(不図示)及びポンプ(不図示)を介して接続されている。
一般的に、顔料インクに対しては顔料色素を凝集させる成分を含有した処理液が使用され、染料インクに対しては染料色素を析出させる成分を含有した処理液が使用される。処理液の成分には、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、適宜に選択可能である。かかる処理液とインクとが混ざると、多価金属塩等がインクの着色剤(染料又は顔料)に作用して、不溶性又は難溶性の金属複合体等として凝集又は析出される。
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ101各部を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から受信した画像データ(記録指令)に基づいて、画像形成動作を司る。具体的には、制御装置100は、記録指令に基づいて、給紙ユニット101b、搬送機構16、各送りローラ対14,28等を制御する。給紙トレイ11から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部により搬送機構16に送られる。搬送面8a上の用紙Pが、ヘッド2のすぐ下方を通過する際に、制御装置100によってヘッド2が制御され、用紙P上に吐出面2aから処理液滴が吐出される。その後、用紙Pがヘッド1のすぐ下方を通過する際に、制御装置100によってヘッド1が制御され、用紙P上の処理液が付着した領域に、吐出面1aからインク滴が吐出される。これにより、用紙P上に所望のモノクロ画像が形成される。このとき、用紙P上では、処理液がインク滴の色素成分を凝集又は析出させるため、インク滲みが防止される。なお、処理液及びインクの吐出動作は、用紙Pの先端を検知する用紙センサ(不図示)からの検知信号に基づいて行われる。そして、画像が形成された用紙Pは、剥離プレート5によって搬送ベルト8から剥離された後、下流側ガイド部によりガイドされて、筐体101a上部の開口22から排紙部15に排出される。
また、制御装置100は、上記画像形成動作中に、ヘッド1の吐出面1aに処理液が付着することを抑制する空気吸引動作、及び空気排出動作を司る。また、制御装置100は、ヘッド1,2のインク吐出特性の回復・維持を行う加湿メンテナンス動作を司る。空気吸引動作、空気排出動作、及び加湿メンテナンス動作については、後に詳述する。
次に、図2〜図4を参照しつつ各ヘッド1,2について詳細に説明する。なお、両ヘッド1,2は、同一の構造であるため、ヘッド1について説明し、ヘッド2の説明を省略する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
ヘッド1は、図2に示すように、流路ユニット9の上面9aに8つのアクチュエータユニット21が固定されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のユニモルフ型のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する。なお、図示はしないが、ヘッド1,2は、流路ユニット9に加え、流路ユニット9に供給されるインク(又は処理液)を貯留するリザーバユニット、アクチュエータユニット21に駆動信号を供給するフレキシブルプリント配線基板(Flexible Printed Circuit:FPC)、FPCに実装されたドライバICを制御する回路基板等が積層した積層体である。
流路ユニット9は、図4に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。上面9aには、図2に示すように、リザーバユニットに連通する計18個のインク供給口105bが開口している。内部には、図2〜図4に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を介して吐出面1aの吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。下面(吐出面1a)には多数の吐出口108が、マトリクス状に配置されており、主走査方向に関して主走査方向解像度である600dpiの間隔で配列されている。
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図2〜図4に示すように、リザーバユニットからインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)に流入する。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に分配され、アパーチャ112及び圧力室110を介して吐出口108に至る。
次に、図2、図5、及び図6を参照し、ヘッドホルダ35,36の周辺構造について説明する。
ヘッドホルダ35には、図5に示すように、空気を排出する排出ダクト60、及び閉空間を作る環状の記録用キャップ40が取り付けられている。排出ダクト60は、排出機構64の一要素を構成し、空気排出流路の一端部である。排出ダクト60は、ヘッド1の側面を全周に亘って配置されている。記録用キャップ40は、加湿機構90の一要素を構成し、吐出面1aに対向する吐出空間を画定する。記録用キャップ40は、排気ダクト60の外周を囲み、平面視で吐出面1a及び排気ダクト60を内包している。
排出ダクト60は、図2に示すように、平面視で長方形の枠体であって、内側空間に吐出面1aを収容する。排気ダクト60は、図6に示すように、吐出面1a側から底部61x、中間部61z及び上部61yで構成される。底部61xは、中間部61z及び上部61yよりも平面視で外側(吐出面1aから離隔する方向)に延出されたつば部を有している。また、底部61xの下端(排出ダクト60の下端)は、吐出面1aよりも搬送面8aから離れており、平面視で吐出面1aの全周を取り囲む排出口60aとなっている。底部61x及び中間部61zには、複数の中空空間61wが形成されている。中空空間61wは、円柱形状であり、底部61xの下端から中間部61zの上端を鉛直方向に貫く。上部61yの上面には、ヘッド1の輪郭に沿って一定間隔で複数の円筒状ジョイント部62が設けられている。平面視で、ジョイント部62は、中空空間61wと重なる。内側の円柱空間62wが、上部61yをも貫き、中空空間61wと連通している。ジョイント部62は、上部61yの上面から延出されており、外形は略円筒状を有している。ジョイント部62は、その上端面の外周に切欠を有し、先細り形状となっている。これにより、ジョイント部62への後述のチューブ66の一端の接続が容易となる。円柱空間62w、中空空間61w及び排出口60aが、空気排出経路の一端部を構成する。
記録用キャップ40は、平面視で排出ダクト60の外周を囲む環状部材であり、弾性体41及び可動体42を含む。弾性体41はゴム等の弾性材料からなり、可動体42は金属製の剛性材料からなる。
弾性体41は、図6に示すように、固定部41c、接続部41d、基部41x及び突出部41aから構成される。固定部41cは、断面視T字形状であり、上端部分がヘッドホルダ35に接着剤等で固定されている。さらに、固定部41cは、ヘッドホルダ35と排出ダクト60のつば部(底部61x)とに挟持されている。接続部41dは、固定部41c及び基部41xの下端同士を接続し、下方に湾曲しながら外側(平面視で、吐出面1aから離れる方向)に延びている。接続部41dの湾曲は、基部41xの固定部41cに対する相対移動を可能にする。基部41xは、上面に凹部41bが形成されており、可導体42の下端と嵌合している。下面には、下方に突出した突出部41aが形成されている。突出部41aは、断面視逆三角形状である。
可動体42は、弾性体41と同様、平面視で吐出面1aの外周を囲む環状に形成されている。可動体42は、弾性体41を介してヘッドホルダ35に支持されつつ、ヘッドホルダ35に対して鉛直方向に移動可能である。具体的には、可動体42は、複数のギア43と接続されており、制御装置100による制御の下、昇降モータ44(図8参照)の駆動に伴いギア43を介して、昇降する。このとき、基部41x及び突出部41aが可動体42と共に昇降する。これにより、突出部41aのキャップ先端40aと吐出面1aとの鉛直方向の相対位置が変化する。
突出部41aは、可動体42の昇降により、キャップ先端40aが搬送ベルト8の搬送面8aに当接する当接位置(図6参照)と、キャップ先端40aが搬送面8aから離隔した離隔位置(図5参照)とを選択的に取る。図6に示すように、突出部41aが当接位置にあるとき、記録用吐出空間S1が外部空間S3から隔離された封止状態となっている。また、図5に示すように、突出部41aが離隔位置にあるとき、記録用吐出空間S1が外部空間S3に開放された非封止状態となっている。
本実施形態においては、搬送ベルト8が記録用当接部材を構成している。また、搬送ベルト8、記録用キャップ40及び制御装置100が記録用キャップ手段を構成している。
次にヘッドホルダ36の周辺構造について説明する。なお、ヘッドホルダ36の周辺構造は、ヘッドホルダ35の周辺構造と略同一構造であるため、適宜説明を省略する。ヘッドホルダ36には、ヘッドホルダ35における排出ダクト60の代わりに吸引ダクト70が取り付けられ、記録用キャップ40の代わりに処理液用キャップ50が取り付けられている。吸引ダクト70は、吸引機構74の一要素を構成し、空気吸引流路の一端部である。吸引ダクト70は吐出面2a近傍の空気を吸引し、排出ダクト60は吐出面1a近傍に空気を排出する点で機能上の差異があるが、両者間に構成上の差異はない。処理液用キャップ50については、記録用キャップ40と機能上及び構成上で違いはない。
例えば、キャップ先端50aが、搬送面8aに当接した当接位置にあって封止状態を作り、搬送面8aから離隔した離隔位置にあって非封止状態を作る。封止状態では、処理液用吐出空間S2が外部空間S3から離隔され、非封止状態では、処理液用吐出空間S2が外部空間S3に開放される。また、円柱空間62w、中空空間61w及び吸引口70aが、空気吸引流路の一端部を構成し、処理液用キャップ50及び制御装置100が、搬送ベルト8(処理液用当接部材)を加えて処理液用キャップ手段を構成している。各ジョイント部72には、後述のチューブ76が接続されている。
次に、排出機構64について、図5を参照しつつ説明する。排出機構64は、図5に示すように、排出ダクト60、排出ポンプ65、チューブ66,67,68、及び三方弁69を含む。チューブ66は、主部66a、及び、複数の分岐部66bを含む。このうち、複数の分岐部66bは、主部66aから分岐して各ジョイント部62まで延在している。
チューブ66の一端(各分岐部66bの先端)は、排出ダクト60のジョイント部62に嵌合し、他端(主部66aの分岐部66bと反対側の端部)は排出ポンプ65に接続されている。チューブ67は、排出ポンプ65と三方弁69とを接続している。また、チューブ68は、三方弁69を介して、排出ポンプ65と装置外部(大気)とを連通可能に接続している。このように、チューブ66、67,68は、記録用吐出空間S1と装置外部とを連通させる空気排出流路を形成している。
また、三方弁69は、チューブ67の連通先を切り替える。具体的には、空気排出動作時にはチューブ68とチューブ67とを連通させ、加湿メンテナンス動作時にはチューブ96とチューブ67とを連通させる。
この構成において、空気排出動作時には、排出ポンプ65が駆動されて、装置外部の空気が図5中の白抜き矢印に沿って流れる。即ち、装置外部の空気が、チューブ68、67、66内を通り、排出口60aを介して吐出面1aの近傍に排出される。このとき、中空空間61wが、鉛直方向に形成されているため、空気の排出によって、インクの吐出方向に向かう気流が排出口60aに生じることになる。なお、このときの排出ポンプ65の空気の移送量は、吐出空間S1,S2を横切る気流を積極的に生じさせるものではない。
以上より、空気排出動作を実行することによって、ヘッド2から吐出される処理液のミストが、吐出面1aに付着することを抑制することができる。また、この空気排出動作において、吐出空間S1,S2を横切る気流が殆ど生じていないため、インク及び処理液の着弾位置が変化する可能性を低減することができ、その結果、画品質の低下を抑制することができる。
次に、吸引機構74について、図5を参照しつつ説明する。吸引機構74は、図5に示すように、吸引ダクト70、正逆方向に移送可能な吸引ポンプ75、チューブ76,77,78、及び三方弁79を含む。チューブ76は、主部76a、及び、複数の分岐部76bを含む。このうち、複数の分岐部76bは、主部76aから分岐して各ジョイント部72まで延在している。
チューブ76の一端(各分岐部76bの先端)は、吸引ダクト70のジョイント部72にそれぞれ嵌合し、他端(主部76aの分岐部76bと反対側の端部)は三方弁79に接続されている。チューブ77は、三方弁79と吸引ポンプ75を接続している。また、チューブ78は、三方弁79を介して、吸引ポンプ75と装置外部(大気)とを連通可能に接続している。三方弁79は、チューブ77の連通先を切り替える。具体的には、空気吸引動作時にはチューブ76とチューブ77とを連通させ、加湿メンテナンス動作時にはチューブ96とチューブ77とを連通させる。このように、チューブ66、67,68は、処理液用吐出空間S2と装置外部とを連通させる空気吸引流路を形成している。
この構成において、空気吸引動作時には、吸引ポンプ75が正回転で駆動されて、空気が図5中の黒塗り矢印に沿って流れる。即ち、吐出面2aの近傍の空気が、吸引口70aを介して吸引され、チューブ76、77内を通り、チューブ78から装置外部に排出される。このとき、中空空間61wが鉛直方向に形成されているため、空気の吸引によって、処理液の吐出方向と逆の方向に向かう気流が吸引口70aに生じることになる。なお、このときの吸引ポンプ75の空気の移送量は、吐出空間S1,S2を横切る気流を積極的に生じさせるものではない。
以上より、空気吸引動作を実行することによって、搬送方向下流側に向かう処理液のミストは、吸引口70aを介して吸引されるので、処理液のミストが吐出面1aに到達することを抑制することができる。また、この空気吸引動作において、吐出空間S1,S2を横切る気流が殆ど生じていないため、インク及び処理液の着弾位置が変化する可能性を低減することができ、その結果、画品質の低下を抑制することができる。
次に、加湿機構90について、図5を参照しつつ説明する。加湿機構90は、排出機構64及び吸引機構74に加え、図5に示すように、水タンク92、水温センサ93、ヒータ94、チューブ96,97を含む。
水タンク92は、下部空間に水を貯溜し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。また、水タンク92には水の温度を計測する水温センサ93が設置され、水タンク92(下部空間)の近傍には、タンク54内の水を温めるヒータ94が設置されている。加湿に際して、制御装置100による制御の下、水温センサ93による温度検出結果に基づいてヒータ94が駆動され、上部空間の湿度が調整される。なお、水タンク92に貯留された水が少なくなった時は、補給タンク(不図示)から水が補給される。
チューブ96は、主部96a、及び、主部96aから分岐して三方弁69,79まで延在した2つの分岐部96b,96cを含む。主部96aは水タンク92の上部空間と連通している。分岐部96bの先端は三方弁79に接続されており、分岐部96cの先端は三方弁69に接続されている。チューブ97は、水タンク92の下部空間に連通している。なお、チューブ97には、水タンク92内の水が装置外部へ(白抜き点線矢印の反対方向へ)流れるのを防ぐ逆止弁が設けられている。
また、本実施の形態では、図2に示すように、排出ダクト60の短辺部分に、中空空間61wとは別に、それぞれ2つの中空空間が形成されており、平面視で重なるジョイント部63に連通している。吸引ダクト70も、これと同様に、別の中空空間とジョイント部73を有している。各ジョイント部63(73)には、チューブ97から分岐した分岐部97xが接続されている。これにより、水タンク92からポンプ65、75を介して各吐出空間を横切り、再び水タンク92に戻る、加湿空気の循環流路が形成されている。
この構成において、加湿メンテナンス動作が実行されると、制御装置100による制御の下、昇降モータ44が駆動されて各キャップ40、50が当接位置とされ、記録用吐出空間S1及び処理液用吐出空間S2が外部空間S3から隔離される。このとき、三方弁69により分岐部96cとチューブ67とが連通されており、且つ、三方弁79により分岐部96bとチューブ77とが連通される。さらに、制御装置100による制御の下、吸引ポンプ75、及び排出ポンプ65が駆動される。なお、吸引ポンプ75は、逆回転にて駆動される。これにより、水タンク92内の加湿空気が図5中の白抜き点線矢印に沿って流れる。即ち、水タンク92の上部空間の加湿空気は、水タンク92から吸引口70a及び排出口60aに向かって流れ、吐出空間S1,S2内を充満しつつ横切る。また、このとき、水タンク92内には負圧が生じ、吐出空間S1,S2の空気がチューブ97から回収されて水タンク92に向かって流れる。このように循環方式で加湿メンテナンス動作を行うことにより、ヘッド1,2の吐出口108近傍のインクや処理液の増粘を抑制することができる。各吐出口108の吐出特性が、維持される。また、吐出空間S1,S2内への加湿空気の供給は、吸引ポンプ75及び排出ポンプ65により行われており、加湿メンテナンス動作の為にポンプを新たに設ける必要がないので、装置の構成が簡略化されて小型化できる。
次に、図7を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図7に示すように、制御装置100は、搬送制御部151と、画像データ記憶部152と、ヘッド制御部153と、吸引制御部154と、排出制御部155と、メンテナンス制御部156とを有している。
搬送制御部151は、用紙Pが給紙ユニット101bから排紙部15まで搬送されるように、給紙ユニット101b、各送りローラ対14,28及び搬送機構16を制御する。画像データ記憶部152は、外部装置から供給された画像形成にかかる画像データを記憶する。
ヘッド制御部153は、画像データ記憶部152に記憶された画像データに基づいて、ヘッド2のアクチュエータユニット21を駆動することによって、処理液滴を所望のタイミングで吐出口108から吐出させると共に、各ヘッド1のアクチュエータユニット21を駆動して、所望の体積のインク滴を所望のタイミングで吐出口108から吐出させる。
吸引制御部154は、吸引ポンプ75を駆動することによって、吸引口70aを介して吐出面2a近傍の空気を吸引する空気吸引動作を行う。なお、加湿メンテナンス動作時には、吸引ポンプ75を空気吸引動作時とは逆に回転させる。
排出制御部155は、排出ポンプ65を駆動することによって、排出口60aを介して吐出面1a近傍に空気を排出する空気排出動作を行う。
メンテナンス制御部156は、加湿メンテナンス動作時において、昇降モータ44を駆動してキャップ先端40a,50aを搬送面8aに当接させることで、吐出空間S1,S2を封止状態にする。さらに、メンテナンス制御部156は、ヒータ94を制御して加湿空気を生成する。加湿空気の生成は、水温センサ93の検出結果に基づいて行われる。そして、生成した加湿空気が封止状態の吐出空間S1,S2に供給されるように、吸引制御部154及び排出制御部155を介して吸引ポンプ75及び排出ポンプ65を制御する。
続いて、プリンタ101の動作について、図8を参照しつつ以下に説明する。まず、図8に示すように、プリンタ101が外部装置から記録指令を受信する(A1)。記録指令を受信すると、吸引制御部154が空気吸引動作を開始し、排出制御部155は空気排出動作を開始する(A2)。具体的には、吸引制御部154は、吐出面2a近傍の空気が吸引口70aを介して吸引されるように、吸引ポンプ75の制御を開始する。これにより、処理液の吐出方向と逆の方向に向かう気流が吸引口70aに生じる。また、排出制御部155は、吐出面1a近傍に排出口60aを介して空気が排出されるように、排出ポンプ65の制御を開始する。これにより、インクの吐出方向に向かう気流が排出口60aに生じる。
次に、制御装置100は、吸引ポンプ75及び排出ポンプ65の駆動が開始されてから、第1所定時間経過したか否かを判断する(A3)。ここで、第1所定時間とは、排出機構64により排出口60aに生じた気流、及び吸引機構74により吸引口70aに生じた気流が安定するのに要する時間である。
第1所定時間経過していないと判断した場合(A3:NO)には、ステップA3の処理を繰り返す。一方で、第1所定時間経過したと判断した場合(A3:YES)には、制御装置100は画像形成動作を行う。具体的には、搬送制御部151が、用紙Pが給紙ユニット101bから排紙部15まで搬送されるように、給紙ユニット101b、各送りローラ対14,28及び搬送機構16を制御するとともに、ヘッド制御部153が、画像データ記憶部152に記憶された画像データに基づいて、ヘッド2のアクチュエータユニット21を駆動することによって、処理液滴を所望のタイミングで吐出口108から吐出させると共に、ヘッド1のアクチュエータユニット21を駆動して、所望の体積のインク滴を所望のタイミングで吐出口108から吐出させる。なお、インク及び処理液の吐出タイミングは、上述のように用紙センサからの検出信号に基づいて決められる。
なお、この画像形成動作中において、ヘッド2から吐出された処理液のミストは、吸引口70aを介して吸引ポンプ75により吸引されるので、処理液のミストが吐出面1aに到達することを抑制することができる。また、排出ポンプ65により、排出口60aからインクが吐出される方向に向かう気流が生じているため、処理液のミストが吐出面1aに付着することを確実に抑制することができる。さらに、このとき、吐出空間S1,S2を横切る気流が殆ど生じていないため、インクや処理液の着弾位置が変化する可能性を低減することができ、その結果、得られる画像の画像品質が低下することを抑制することができる。またさらに、ヘッド2から処理液が吐出されるときには、吸引機構74の吸引により吸引口70aに生じる気流、及び排出機構64の排出により生じる気流は安定しているため、吸引機構74により処理液のミストを効率良く吸引することができるとともに、吸引機構74及び排出機構64により処理液のミストが吐出面1aに到達することをさらに抑制することができる。
ステップA5では、制御装置100は、画像形成動作によるヘッド2からの処理液の吐出が終了した後、第2所定時間経過したか否かを判断する。ここで、第2所定時間とは、プリンタ101内を漂う処理液のミストの量が、処理液のミストがヘッド1のインクの吐出不良の原因となる可能性が殆どない規定値以下となるのに要する時間である。第2所定時間経過していないと判断した場合(A5:NO)には、ステップA5の処理を繰り返す。一方、第2所定時間経過したと判断した場合(A5:YES)には、吸引制御部154が吸引ポンプ75を停止させて空気吸引動作を終了させるとともに、排出制御部155が排出ポンプ65を停止させて空気排出動作を終了させる(A6)。このように、ヘッド2からの処理液の吐出が終了した後、第2所定時間経過するまでは、吸引機構74による空気吸引動作、及び排出機構64による空気排出動作は行われているため、処理液のミストが吐出面1aに到達することを抑制することができる。
次に、メンテナンス制御部156は、昇降モータ44を駆動し、記録用キャップ40のキャップ先端40aを搬送面8aに当接させるとともに、処理液用キャップ50のキャップ先端50aを搬送面8aに当接させる(A7)。これにより、吐出空間S1,S2が外部空間S3から隔離された封止状態となる。その後、メンテナンス制御部156は、チューブ96とチューブ67とが連通するように三方弁69を制御するとともに、チューブ96とチューブ77が連通するように三方弁79を制御する(A8)。
ステップA8の後、メンテナンス制御部156は、水タンク92内の加湿空気が、吸引口70a及び排出口60aを介して、封止状態にされた吐出空間S1,S2内に供給されるように、吸引ポンプ75及び排出ポンプ65の駆動を制御する。これにより、ヘッド1,2の吐出口108近傍のインクや処理液が乾燥してしまい、吐出口108の目詰まりが生じることを抑制することができる。この後、新たに記録指令を受信すると、メンテナンス制御部156は、昇降モータ44を駆動し、記録用キャップ40のキャップ先端40aを搬送面8aから離隔させるとともに、処理液用キャップ50のキャップ先端50aを搬送面8aから離隔させる。これにより、吐出空間S1,S2が外部空間S3に開放された非封止状態となる。そして、上述したように、空気排出動作、空気吸引動作、及び画像形成動作が制御装置100の制御によって行われる。一方、記録指令が受信されなければ、吐出空間S1,S2の封止状態が維持される。以上、プリンタ101の動作について説明した。
以上述べたように、本実施形態によると、ヘッド2から吐出されて、搬送方向下流側に向かう処理液のミストは、吸引口70aを介して吸引機構74により吸引されるので、処理液のミストが吐出面1aに到達することを抑制することができる。また、排出機構64が、吸引口70aよりも搬送方向下流側であり、且つ吐出面1aよりも搬送方向上流側に配置された排出口60aに、インクの吐出される方向に向かう気流が生じさせているため、処理液のミストが吐出面1aに付着することを確実に抑制することができる。さらに、吐出空間S1,S2を横切る気流が殆ど生じていないため、インクや処理液の着弾位置が位置ずれする可能性を低減することができ、その結果、得られる画像の画像品質が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態によると、吸引口70aは、ヘッド2の側面にヘッド2の外周を囲むように設けられた吸引ダクト70の下端であるので、処理液のミストを効率良く吸引することができる。また、排出口60aは、ヘッド1の側面にヘッド1の外周を囲むように設けられた排出ダクト60の下端であるので、排出機構64が排出口に生じさせる気流により処理液のミストが吐出面1aに付着することを確実に抑制することができる。
また、本実施形態によると、吸引口70aが吐出面2aを全周に亘って取り囲んでいるので、吸引機構74によりヘッド2から吐出された処理液のミストを多く吸引することができ、その結果、処理液のミストが吐出面1aに到達することをさらに抑制することができる。また、排出口60aが吐出面1aを全周に亘って取り囲んでいるので、処理液のミストが吐出面1aに付着することをより確実に抑制することができる。
また、本実施形態によると、ヘッド2から処理液が吐出されるときには、吸引機構74の吸引により生じる気流、及び排出機構64の排出により生じる気流は安定しているため、吸引機構により処理液のミストを効率良く吸引することができるとともに、吸引機構74及び排出機構64により処理液のミストが吐出面1aに到達することをさらに抑制することができる。また、ヘッド2から処理液が吐出された後においても、第2所定時間経過するまでは吸引機構74による吸引及び排出機構64による排出が行われているため、処理液のミストが吐出面1aに到達することをさらに抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、搬送機構16が、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している構成であるが、搬送ベルトを有せず、複数の拍車ローラ等により用紙Pを搬送する構成であってもよい。この場合、ヘッド1,2に対向配置されたプラテンが、記録用当接部材、及び処理液用当接部材を構成することになる。また、このとき、1つのプラテンが記録用当接部材及び処理液用当接部材を兼ねていてもよいし、各当接部材毎に対応するプラテンが設けられていてもよい。
また、上述の実施形態においては、吸引口70aは、ヘッド2の側面に設けられた吸引ダクト70の下端であるが、吐出面2aよりも搬送方向下流側であり、且つ吐出面1aよりも搬送方向上流側に配置されるのであれば、他の位置に配置されていてもよい。また、上述の実施形態においては、排出口60aは、ヘッド1の側面に設けられた排出ダクト60の下端であるが、吸引口70aよりも搬送方向下流側であり、且つ吐出面1aよりも搬送方向上流側に配置されるのであれば、他の位置に配置されていてもよい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。また、液滴を吐出するため圧電方式のアクチュエータを用いているが、他の方式(例えば、抵抗加熱方式・静電方式等)であってもよい。
また、上述した実施形態においては、加湿メンテナンス動作において、加湿空気が循環するように構成されていたが、吐出空間S1、S2を横切った後、大気に放出される構成であってもよい。この場合。ジョイント部63(73)には、一端が大気に連通したチューブが接続される。また、水タンク92に接続するチューブ97の一端も、大気に連通している。
また、上述した実施形態においては、水タンク92内の水をヒータ94により加湿することで加湿空気を生成する構成であるが、他の機構で加湿空気を生成してもよい。また、上述の実施例において、加湿メンテナンスを開始するときに、水タンク92内の空気の湿度が所定値以上であることが好ましい。つまり、プリンタ101の電源が投入されると共に、水を所定温度まで加熱する制御が行われており、加湿メンテナンスの開始と共に所定湿度の空気が循環される。
さらに、突出部41aは、上述の実施形態のように移動可能であることに限定されない。例えば、突出部が移動不能にヘッドホルダに固定され、キャップ先端の吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、ヘッドホルダ又は搬送ベルトの搬送面を昇降させることにより、キャップ先端を搬送面に当接させると共に、ヘッド1(2)を昇降させる。例えば、突出部41aが当接位置にあるときには、吐出面1a(2a)と搬送面との間隔を広げるように、吐出面1a(2a)を突出部41aよりも搬送面から離す。逆に、突出部41aが離隔位置にあるときには、吐出面1a(2a)を突出部41aよりも搬送面から近づける。
また、上述した空気吸引動作、及び空気排出動作が、フラッシング動作(吐出口からインクや処理液が所定時間以上吐出されていない場合に、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッドの全アクチュエータを駆動することにより一部又は全吐出口からインクや処理液を強制的に吐出させる動作)を開始する第1所定時間前から行い、フラッシング動作終了後、第2所定時間経過するまで行われるようにされていてもよい。
記録媒体としては、特に用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。また、ヘッド1は、複数設けられていてもよい。