JP3730533B2 - フッ素樹脂の改質方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂の改質方法に関し、特に、耐熱劣化特性および耐圧縮歪み特性に優れたフッ素樹脂を得るための改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐熱性、耐薬品性、滑性、電気的特性等に優れるフッ素樹脂は、歯車等の機械部品、耐熱構成材あるいは絶縁材など産業用の各種用途において広く利用されている。しかし、フッ素樹脂は、これらの諸特性に優れる反面、破断時伸び、同強度等の機械的特性に劣るところがあるため、これらの特性を改善すべく様々な改質方法の検討が行われている。
【0003】
有力な改質策として放射線を照射する方法が提案されている。その代表的な例としては、たとえば、特開平6−116423号、特開平7−118423号あるいは特開平7−118424号に開示された方法を挙げることができ、いずれも、有効な改質手段として相応の評価を受けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の放射線による改質方法によると、放射線の照射によるフッ素樹脂の劣化が大きいため、劣化した部分の熱老化速度が大きく、このため、高温で使用したときに比較的短い期間のうちに老化現象を起こすことが多く、さらには、圧縮永久歪性の面においても充分な特性が得られないのが普通である。
これらの2つの特性は、フッ素樹脂の適用範囲を狭めるように影響し、たとえば、高温用のパッキング材などとしてフッ素樹脂を適用しようとするとき、大きな障害となって作用することになる。
【0005】
従って、本発明の目的は、耐熱劣化特性および耐圧縮歪み特性に優れたフッ素樹脂を得るための改質方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、フッ素樹脂に電離性放射線を照射することによって前記フッ素樹脂の改質を行うフッ素樹脂の改質方法において、
酸素分圧が0.1〜10torrの濃度範囲に設定した第1の雰囲気内でフッ素樹脂に電離性放射線を照射し、
照射された前記フッ素樹脂を、150℃以上あるいは前記フッ素樹脂の結晶分散温度(α分散温度)以上で、かつ前記フッ素樹脂の分解温度以下の温度を有する第2の雰囲気内において所定の時間保持することを特徴とするフッ素樹脂の改質方法を提供するものである。
【0008】
本発明による改質方法の特徴は、電離性放射線の照射によってフッ素樹脂の分子に主鎖切断による末端ラジカルの生成と、フッ素原子の離脱による主鎖ラジカルの生成とを生起させ、生成したこれらのラジカル同士を反応させることによって長鎖枝分かれの分子構成を成立させる点にある。そして、長鎖枝分かれの分子構成の成立は、フッ素樹脂に対して良好な耐熱劣化性と耐圧縮歪み性を付与するように作用するため、これによって両特性に優れたフッ素樹脂を提供しようとするものである。
【0009】
以上の効果を充分なものとするためには、電離性放射線を照射する際の雰囲気の酸素分圧が重要であり、本発明が規定する0.1〜10torrの酸素分圧は、この効果を得るための必須要件となる。即ち、電離性放射線の照射による主鎖切断に基づく末端ラジカルの生成には、酸素の存在が不可欠であり、0.1torrの酸素分圧が有効量の末端ラジカル生成のための最低水準となる。
【0010】
一方、過大な酸素の存在は、従来の放射線改質のように過剰な主鎖切断を招き、著しい特性の低下を招くことになる。適度な主鎖切断による末端ラジカルの生成のためには、10torrが酸素分圧の上限であり、これら0.1torrの下限値と10torrの上限値とが守られるとき、はじめて主鎖切断による末端ラジカルが所定どおり生成し、同時に、フッ素原子離脱による主鎖ラジカルも生成することとなる。
【0011】
なお、酸素分圧の設定に際しては、たとえば、フッ素樹脂が粉末体のときには、粉末体の間に存在する酸素量も考慮に入れる必要がある。また、電離性放射線の照射のステップとしては、0〜150℃、あるいは0℃からフッ素樹脂の結晶分散温度(α分散温度。テトラフルオロエチレン系重合体の場合で120〜150℃)の加熱雰囲気において行うことが好ましく、一方、電離性放射線の照射量としては、5Gy〜500kGyが好ましい。
【0012】
これらの温度と照射量は、末端ラジカルおよび主鎖ラジカルの生成を適度なものとするうえにおいて有効に資するとともに、500kGyを上限とする照射量の設定は、照射による過剰な温度上昇を招かないため、フッ素樹脂の温度制御を容易にする効果をもたらす。この温度上昇の抑制は、従来の改質方法が温度制御の困難さを一つの問題点としていることを考慮するとき、有利な特質となって作用することになる。なお、より好ましい電離性放射線の照射量としては、フッ素樹脂の劣化をさらに抑制する意味合いから、5Gy〜1kGyの範囲内に設定することができる。電離性放射線としては、X線、γ線あるいは電子線が好ましく、なかでも、出力が0.3〜5MeVの高エネルギー電子線は、線量率が高いために特に好適といえる。
【0013】
本発明の改質方法において、電離性放射線照射後に行われる第2の雰囲気内でのフッ素樹脂の保持は、長鎖枝分かれの分子構成を成立させるための重要な条件であり、これを充分なものとするためには、第2の雰囲気の温度条件が肝要となる。その温度としては、150℃あるいはフッ素樹脂の結晶分散温度(α分散温度)が下限であり、フッ素樹脂の分解温度が上限となる。電離性放射線を照射されることによって末端ラジカルと主鎖ラジカルを生成させたフッ素樹脂は、この温度雰囲気に保持される結果、両ラジカル間に効率的な反応を生じさせ、これによって所定の長鎖枝分かれの分子構成を生起させることになる。
【0014】
本発明によって改質されたフッ素樹脂が長鎖枝分かれの分子構成を有することは、後述の実施例におけるように、たとえば、温度365℃において所定の成型体に成型できることからも明白である。もし、これが、従来の改質と同じく架橋による分子の三次元化に基づく改質であれば、成型は不可能となる。また、長鎖枝分かれの分子構成は、改質されたフッ素樹脂の破断時伸び特性の変化によっても確認することができ、本発明によれば、初期値より50%以上もの伸びの増大を示すことが確認されている。架橋に基づく改質であれば、初期値より大きな伸びを示すことはない。
【0015】
さらに、本発明による改質が、長鎖枝分かれの分子構成に基づくものであることを実証する証しとして、本発明に適用可能なフッ素樹脂の種類を挙げることができる。即ち、分子構成がパーフルオロモノマのみの重合体あるいは共重合体は、通常、電離性放射線に対して分解性あるいは崩壊性を有するポリマとして分類されているが、本発明の改質による場合には、この種のフッ素樹脂であっても分解あるいは崩壊現象を生じさせることなく改質を行うことができる。
【0016】
この点は、本発明を評価するときの重要な事実といえ、従って、後述する実施例においては、このことを実証する意味合いから、特に、パーフルオロモノマのみによる重合体および共重合体を選択した例を示す。なお、この種のポリマとしては、テトラフルオロエチレン系重合体(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)あるいはこれらの混合体等を挙げることができる。また、これらに少量の第3成分を結合させた重合体あるいは共重合体もこの種のポリマの中には含まれ、たとえば、PTFEを例にとると、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレンあるいはクロロトリフルオロエチレン等を分子中に少量含むPTFEを挙げることができる。
【0017】
上記した重合体および共重合体の混合体としては、PTFEとPFA、PFAとFEP、PTFEとFEP、PTFEとPFAとFEP、あるいはこれらに、上記の第3成分を含むポリマを組み合わせたものなど、様々な混合形式が可能である。なお、分解型あるいは崩壊型に属さない共重合形式のフッ素樹脂として、非フッ素系モノマをパーフルオロモノマに共重合体させた、たとえば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等があるが、この形式のポリマは、非フッ素系モノマの部分において架橋が行われることでの非分解ないしは非崩壊型であり、従って、上記のパーフルオロ型のフッ素樹脂とは意味が異なる。勿論、本発明をこの種のフッ素樹脂の改質に適用できることはいうまでもない。
【0018】
本発明において、電離性放射線を照射する第1の雰囲気を、所定の酸素分圧を有した不活性ガスの雰囲気とすることは好ましい形態となる。不活性ガスの例としては、窒素ガス、アルゴンガスあるいはヘリウムガス等が挙げられる。具体的には、たとえば、乾燥空気中の雰囲気に置かれているフッ素樹脂を必要な減圧度に真空引きした後、雰囲気内に不活性ガスを注入するか、あるいは、単に、不活性ガスによるパージによって酸素分圧を所定の水準に設定すればよい。但し、これらの雰囲気の形成に際しては、水分の侵入をできるだけ避けるべきである。
【0019】
本発明による改質方法の実施態様として、微量酸素の存在下に電離性放射線を照射されることによって示差熱曲線上での分子量が1桁以上異なる2つの分子量分布を有するようにされたフッ素樹脂を、電離性放射線の照射対象とする形態が考えられる。このようにするときには、圧縮歪みを小さくできる効果を得ることができ、本発明の改質効果をより高めることが可能となる。
【0020】
電離性放射線を照射されたフッ素樹脂を第2の雰囲気内に保持する時間としては、0.5〜24時間が好適である。なお、この雰囲気の上限温度であるフッ素樹脂の分解温度を例示すると、PTFEは390℃、PFAは370℃、そしてFEPは350℃である。
本発明による改質方法の好ましい形態として、フッ素樹脂中に炭酸カルシウムのようなフッ素あるいはフッ酸等のフッ素系成分と結合する性質の無機化合物を混入しておく形態がある。この形態とするときには、電離性放射線の照射によるフッ素樹脂からの有害ガスの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0021】
また、電離性放射線を照射したフッ素樹脂を第2の雰囲気内で所定の時間保持した後、水素あるいはフッ素ガス等の活性ガスの雰囲気内においてこのフッ素樹脂を加熱する工程を追加する形態も有用であり、このようにするときには、二重結合等の残存活性基を失効させることができ、改質されたフッ素樹脂の安定性および品質を高めるうにおいて有意義となる。なお、このための加熱工程としては、別個の後工程として設けてもよく、あるいは電離性放射線照射後の第2の雰囲気内での保持工程において、この加熱を同時または時間をずらせて実施するようにしてもよい。
【0022】
放射線照射対象のフッ素樹脂に無機材料等を混入することによって機械的強度、耐摩耗性等の改善を図ることは可能であり、さらに、導電性付与剤、着色剤等を混入することも可能である。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、ロックウール等の繊維状物、またはガラスビーズ、シラスバルーン、グラファイト、マイカ、クレー、アルミナ、炭酸カルシウム、ボロンナイトライド、フッ化黒鉛等の粉末、あるいは酸化チタンウイスカ、炭酸カルシウムウイスカ、硫酸カルシウムウイスカ等の単繊維、さらには、銅、モリブデン、ブロンズ等の金属粉などの混入が考えられる。
【0023】
また、フッ素樹脂に他のフッ素系ポリマあるいはゴムを含む非フッ素系ポリマをブレンドすることは可能であり、さらには、本発明のフッ素樹脂構成体の具現化の形態として、他のゴムあるいはブラスティックとの複合構造とすることも可能である。これらのブレンドあるいは複合構造の具体的な組み合わせとしては、たとえば、PTFEとポリエーテルエーテルケトンあるいはPFAとポリフェニレンサルファイドの組み合わせ等が考えられ、ブレンド方法としては、周知のポリマブレンドあるいはポリマアロイ技術を適用することができる。
【0024】
酸化防止剤や熱安定化剤等を照射対象のフッ素樹脂に加えることは差し支えなく、これらの混入およびポリマブレンド等に際しては、周知の混合および混練設備が使用される。本発明によって改質されたフッ素樹脂の適用例としては、たとえば、従来の改質では適用困難であった耐圧パッキング、歯車などのエンジニアリング部品、高温耐熱容器あるいはグラフト用耐薬品性基材等を挙げることができる。
【0025】
なお、本発明によって得られるフッ素樹脂の改質の度合を例示すると、以下のようになる。
Figure 0003730533
【0026】
Figure 0003730533
【0027】
Figure 0003730533
【0028】
以上の特性は、電離性放射線照射時の線量、温度、酸素分圧、あるいはこれらの次工程における第2の雰囲気の温度、同保持時間等の条件の調整によって設定が自在であり、従って、改質フッ素樹脂の用途に応じてこれらの特性が決められれることになる。なお、改質されたフッ素樹脂構成体の形式としては、シート状、フィルム状、ブロック状、コーティング体、粉体あるいはシンターされたものなどを挙げることができる。なお、ここに示された圧縮歪みと熱分解速度の定義は、後述の実施例において示される。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるフッ素樹脂の改質方法の実施の形態を説明する。
【実施例1】
電子線照射用容器にPTFEのモールディングパウダ(旭化成社製G−163、平均粒径40μm)を収容して内部を1torrに減圧し、これに、高純度窒素ガスを加えて容器内を常圧とした後、約80℃の温度で80kGyの電子線を照射した。照射後のパウダ温度は135℃であり、顕著な昇温を示さないことが確認された。
【0030】
次に、これを、間を置かずに360〜380℃に昇温させ、その状態で 1時間保持することによって所定の改質PTFEとした後、アトマイザ粉砕機にかけて粉砕し、得られた粉末を使用して加熱温度365℃、圧力35MPaおよび成型時間1.5時間の条件下で成型を行い、これにより10×10mm2 の断面積と30mmの高さを有する正四角柱の試料(以下、全実施例および比較例を通じて試料の形状と寸法は同じ)を作成した。
【0031】
【実施例2】
実施例1において、電子線の照射量を10kGyにするとともに、他を同一条件に設定することによりこの実施例の試料を得た。なお、電子線照射後のPTFEパウダの温度は87℃であった。
【0032】
【実施例3】
電子線照射用容器に実施例1で使用したPTFEモールディングパウダを収容して内部を1torrに減圧し、窒素ガスと酸素ガスを加えて常圧とすることにより容器内の酸素分圧を10torrに設定した。次に、この容器に、約80℃の温度において80kGyの電子線を照射して、これによる昇温後の温度が135℃であることを確認した後、直ちに360〜380℃に昇温させ、その状態で1時間保持することによって所定の改質PTFEを得た。次いで、アトマイザで粉砕して粉末とし、最後に、これを使用して実施例1と同一条件下で加圧成型を行うことにより所定の試料を得た。
【0033】
【実施例4】
電子線照射用容器にPFA(ダイキン社製ネオフロンAP−210)を収容して内部を1torrに減圧し、窒素ガスを加えて常圧とした後、約80℃の温度で80kGyの電子線を照射した。照射後のPFAの温度が130℃であることを確認した後、これを、直ちに320〜340℃に昇温させ、その状態で1時間保持することによって所定の改質PFAを得た。次に、得られた改質PFAをアトマイザにかけて粉砕した後、これを使用して加熱温度355℃、圧力35MPaおよび成型時間1.5時間の条件下で加圧成型を行い、所定の試料を得た。
【0034】
【実施例5】
電子線照射用容器にFEP(ダイキン社製ネオフロンFEP、NP−20)を収容して内部を1torrに減圧し、窒素ガスを加えて常圧とした後、約80℃の温度で80kGyの電子線を照射した。これによる昇温後の温度は150℃であり、許容範囲内であった。次いで、これを、直ちに295〜315℃に昇温させ、その状態のまま1時間保持することによって所定の改質FEPとした後、アトマイザにかけて粉砕し、最後に、これを使用して加熱温度325℃、圧力35MPaおよび成型時間1.5時間の条件下で加圧成型を行い、所定の試料を得た。
【0035】
【実施例6】
電子線照射用容器にPTFEモールディングパウダ99.9モルおよびPFAモールディングパウダ0.1モルより構成される混合パウダ(三井・デュポンフロロケミカル社製テフロン70J、平均粒径50μm)を収容して内部を1torrに減圧し、容器内に窒素ガスを加えて常圧とした後、約80℃の温度で80kGyの電子線を照射した。次に、これを、直ちに360〜380℃に昇温させ、そのままの状態で1時間保持することによって所定の改質されたフッ素樹脂を得た後、アトマイザにかけて粉砕し、引き続き、実施例1と同一条件下に加圧成型を行うことにより所定の試料を得た。
【0036】
【実施例7】
電子線照射用容器に実施例1で使用したPTFEモールディングパウダを収容して内部を1torrに減圧し、容器内に窒素ガスを加えて常圧とした後、約80℃の温度で80kGyの電子線を照射した。次いで、これを、直ちに360〜380℃に昇温させ、そのままの状態で1時間保持することによって所定の改質PTFEを得た。次に、これをアトマイザにかけて粉砕し、得られた粉末を電子線未照射の上記の原料PTFEパウダに50wt%混合することによって混合粉末を調合し、この粉末を使用して実施例1と同一条件により所定の試料を作成した。
【0037】
【実施例8】
電子線照射用容器に5phrの炭酸カルシウムを含むPTFEモールディングパウダ(旭化成社製G−163、平均粒径40μm)を収容して内部を1torrに減圧し、容器内に高純度窒素ガスを加えて常圧とした後、約80℃の温度で80kGyの電子線を照射した。照射による昇温後のパウダの温度は135℃であった。次に、これを、直ちに360〜380℃に昇温させ、そのままの状態で1時間保持することによって改質されたPTFEとし、引き続き、アトマイザにかけることによって粉砕した後、得られたPTFEを使用して実施例1と同一条件により所定の試料を作成した。
【0038】
【比較例1】
実施例1で使用した電子線未照射のPTFEモールディングパウダを使用して実施例1と同一条件による加圧成型を行い、所定の試料を得た。
【0039】
【比較例2】
実施例4で使用した電子線未照射のPFAを使用して実施例4と同一条件による加圧成型を行い、所定の試料を得た。
【0040】
【比較例3】
実施例5で使用した電子線未照射のFEPを使用して実施例5と同一条件による加圧成型を行い、所定の試料を得た。
【0041】
【比較例4】
電子線照射用容器に実施例1で使用したPTFEモールディングパウダを収容し、大気中および室温下に電子線を100kGy照射した後、これをアトマイザにかけて粉砕した。次いで、得られた粉末を電子線未照射の上記のPTFEパウダに50wt%を占めるように混合した後、これを使用して実施例1と同一条件による加圧成型を行い、所定の試料を得た。
【0042】
【比較例5】
電子線照射用容器に実施例1で使用したPTFEモールディングパウダを収容して内部を1×10-3torr以下に減圧し、容器内に窒素ガスを加えて常圧とした後、340℃の温度で100kGyの電子線を照射し、次いで、これをアトマイザで粉砕することにより改質PTFEの粉末を得た。
【0043】
【比較例6】
比較例5において、実施例4で使用したのと同じPFAを使用し、他を同一条件とすることによって改質されたPFAの粉末を得た。
【0044】
【比較例7】
比較例5において、実施例5で使用したのと同じFEPを使用し、他を同一条件とすることによって改質されたFEPの粉末を得た。
【0045】
表1および表2は、以上の実施例および比較例によって得られた試料の圧縮歪みと改質フッ素樹脂の熱分解速度の試験結果をまとめたものである。
試験内容および試験方法は以下による。
・圧縮歪み(JIS K7208に準拠)
25℃において試料に150kg/cm2 の荷重をかけて圧縮し、この状態で24時間放置したときの荷重解除後の圧縮歪みを次式(厚さ単位:mm)によって求めた。
【数1】
Figure 0003730533
・熱分解速度(JIS K7120に準拠)
改質フッ素樹脂の粉末を乾燥空気流量50ml/分および昇温速度50℃/分以上の条件で急速に370℃まで昇温させて保持したときの、重量減少速度(wt%/h)を熱分解速度として求めた。
【0046】
【表1】
Figure 0003730533
【0047】
【表2】
Figure 0003730533
【0048】
表1によれば、実施例が、最小2%および最大9%で平均4%の圧縮歪みにとどまっているのに比べ、改質をしない比較例1〜3の場合には、当然の結果ではあるが、12〜32%と、パッキング等に適用したときに実用に耐えない特性しか示していない。本発明による改質効果が充分であること、そして、改質結果がパッキング等として問題なく適用できる水準にあることは、以上の圧縮歪み特性の試験結果から明白である。
【0049】
また、比較例4によると、このものは、未改質のPTFEを含むために試料成型は可能であるが、電子線の照射で劣化を起こしているために荷重の負荷に対して弱く、このため、脆く測定不可の結果を示している。従来の改質方法に相当するこの比較例4と実施例を対比したとき、本発明の効果は歴然としている。
【0050】
次に、耐熱劣化特性を示す表2によると、実施例の場合が10-2以下の熱分解速度を示しているのに比べ、比較例の熱分解速度は、これよりも1桁多い10-1の水準を示し、両者の差は明白である。低い酸素分圧下に電子線を照射し、照射後に所定の温度の雰囲気に保持する本発明の効果が現れているもので、フッ素樹脂の用途を拡大しようとするとき、この耐熱劣化特性の向上は大きな利益を生むこととなる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるフッ素樹脂の改質方法によれば、酸素分圧を0.1〜10torrの濃度範囲に設定した第1の雰囲気内でフッ素樹脂に電離性放射線を照射した後、これを、150℃以上あるいは当該フッ素樹脂の結晶分散温度(α分散温度)以上で、かつ当該フッ素樹脂の分解温度以下の温度を有する第2の雰囲気内において所定の時間保持するため、優れた耐圧縮歪み特性と耐熱劣化特性を有するフッ素樹脂を得ることができる。

Claims (7)

  1. フッ素樹脂に電離性放射線を照射することによって前記フッ素樹脂の改質を行うフッ素樹脂の改質方法において、
    酸素分圧を0.1〜10torrの濃度範囲に設定した第1の雰囲気内でフッ素樹脂に電離性放射線を照射し、照射された前記フッ素樹脂を、150℃以上あるいは前記フッ素樹脂の結晶分散温度(α分散温度)以上で、かつ前記フッ素樹脂の分解温度以下の温度を有する第2の雰囲気内において所定の時間保持することを特徴とするフッ素樹脂の改質方法。
  2. 前記電離性放射線の照射のステップは、0〜150℃、あるいは0℃から前記結晶分散温度まで加熱された前記フッ素樹脂を対象として照射量が5Gy〜500kGyとなるように行われることを特徴とする請求項1項記載のフッ素樹脂の改質方法。
  3. 前記電離性放射線の照射のステップは、前記フッ素樹脂として、パーフルオロモノマのみの重合体あるいは共重合体を使用することによって行われることを特徴とする請求項1項記載のフッ素樹脂の改質方法。
  4. 前記電離性放射線の照射のステップは、前記重合体あるいは共重合体として、テトラフルオロエチレン系重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体あるいはこれらの混合体を選択することによって行われることを特徴とする請求項3項記載のフッ素樹脂の改質方法。
  5. 前記電離性放射線の照射のステップは、前記酸素分圧が前記濃度範囲であって、かつ窒素ガス、アルゴンガスあるいはヘリウムガス等の不活性ガスを含む前記第1の雰囲気内において行われることを特徴とする請求項1項記載のフッ素樹脂の改質方法。
  6. 前記電離性放射線の照射のステップは、前記照射によって生成するフッ素あるいはフッ酸等のフッ素系成分と結合することのできる炭酸カルシウム等の無機化合物を含んだ前記フッ素樹脂に対して行われることを特徴とする請求項1項記載のフッ素樹脂の改質方法。
  7. 前記フッ素樹脂を前記第2の雰囲気において所定の時間保持するステップは、0.5〜24時間行われることを特徴とする請求項1項記載のフッ素樹脂の改質方法。
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