JP6924215B2 - シール材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シール材及びその製造方法に関する。
シリコーンゴムは、耐酸素プラズマ性は高いものの、耐フッ素プラズマ性がやや低いゴム成分として知られている。フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(以下、「FKM」という。)は、耐フッ素プラズマ性は高いものの、耐酸素プラズマ性がやや低いゴム成分として知られている。テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系フッ素ゴム(以下、「FFKM」という。)は、耐酸素プラズマ性及び耐フッ素プラズマ性のいずれも高いものの、シリコーンゴムやFKMと比較すると高価なゴム成分として知られている。そこで、これらのゴム成分を混合して用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、シリコーンゴムとFFKMとを混合して用いること、及びFKMとFFKMとを混合して用いることが開示されている。特許文献2には、FKMとFFKMとを混合して用いることが開示されている。特許文献3には、シリコーンゴムとFKMとを混合して用いることが開示されている。
また、耐プラズマ性を高める技術として、特許文献4及び5には、FKMに反応性フッ素系化合物を添加することが開示されている。さらに、特許文献6には、FKMに過剰な架橋助剤を添加し、FKMを加熱して架橋助剤により架橋させるのに加えて、放射線を照射して余剰の架橋助剤により更に架橋させ、それによって架橋密度を高めることによりゴム物性自体を向上させることが開示されている。
特許第4778782号公報 特許第4628814号公報 特開2001−348462号公報 特許第4675907号公報 特許第5189728号公報 特許第4381087号公報
本発明の課題は、耐プラズマ性の優れるシール材を提供することである。
本発明は、水素含有フッ素ゴムと、所定の温度に加熱されたときに前記水素含有フッ素ゴムを架橋させる熱架橋剤と、放射線が照射されたときに前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断されて生じる炭素のラジカルに結合する水素サイト保護剤と、前記水素含有フッ素ゴムが前記熱架橋剤により架橋するときに、前記水素含有フッ素ゴムの分子間に介在するように前記水素含有フッ素ゴムと結合する架橋助剤と含有し、前記架橋助剤の含有量の前記熱架橋剤の含有量に対する比が2.0以上3.0以下である未架橋ゴム組成物を用いて製造されるシール材であって、前記水素サイト保護剤が、分子内に前記炭素のラジカルに結合するアルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物を含み、前記水素含有フッ素ゴムが前記熱架橋剤により架橋するとともに、前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断された後の炭素に前記水素サイト保護剤が結合したゴム組成物で形成されている。
本発明は、水素含有フッ素ゴムと、所定の温度に加熱されたときに前記水素含有フッ素ゴムを架橋させる熱架橋剤と、放射線が照射されたときに前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断されて生じる炭素のラジカルに結合する水素サイト保護剤と、前記水素含有フッ素ゴムが前記熱架橋剤により架橋するときに、前記水素含有フッ素ゴムの分子間に介在するように前記水素含有フッ素ゴムと結合する架橋助剤と含有し、前記架橋助剤の含有量の前記熱架橋剤の含有量に対する比が2.0以上3.0以下である未架橋ゴム組成物を、所定の温度に加熱して前記水素含有フッ素ゴムを前記熱架橋剤により架橋させた後、放射線を照射して前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合を切断して生じる炭素のラジカルに前記水素サイト保護剤を結合させるシール材の製造方法であって、前記水素サイト保護剤は、分子内に前記炭素のラジカルに結合するアルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物を含む
本発明によれば、耐プラズマ性の低い部位である水素含有フッ素ゴムの水素サイトが、放射線が照射されたときに炭素−水素間の結合が切断されて炭素のラジカルを生じ、その炭素のラジカルに水素サイト保護剤が結合することにより保護されるので、優れた耐プラズマ性を得ることができる。
以下、実施形態について詳細に説明する。
実施形態に係る未架橋ゴム組成物は、ゴム製品、特に、例えば半導体のエッチング装置やプラズマCVD装置のようなプラズマを使用する装置に使用される耐プラズマ性の優れるOリング等のシール材の製造に好適に用いられるものであって、ゴム成分の水素含有フッ素ゴムと熱架橋剤と水素サイト保護剤とを含有する。
本出願における「水素含有フッ素ゴム」とは、高分子の主鎖に水素が結合した炭素が含まれたフッ素ゴムである。水素含有フッ素ゴムは、単量体として、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF)、プロピレン(Pr)、エチレン(E)等を含むことが好ましい。
水素含有フッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF)の重合体(PVDF)、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)とプロピレン(Pr)との共重合体(FEP)、ビニリデンフルオライド(VDF)とプロピレン(Pr)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体、エチレン(E)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体(ETFE)、エチレン(E)とテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)との共重合体、ビニリデンフルオライド(VDF)とテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)との共重合体、ビニリデンフルオライド(VDF)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)との共重合体等が挙げられる。水素含有フッ素ゴムは、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
熱架橋剤は、所定の温度に加熱されたときに水素含有フッ素ゴムを架橋させる化合物である。熱架橋剤としては、例えば、パーオキサイド、ポリオール、ポリアミン、トリアジン等が挙げられる。熱架橋剤は、プラズマ雰囲気下でのパーティクルの発生の原因となる受酸剤を用いる必要がないという観点から、これらのうちのパーオキサイドを用いることが好ましい。パーオキサイドとしては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト等が挙げられる。熱架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを用いることがより好ましい。熱架橋剤の含有量(A)は、十分に架橋を進め、シール材として良好な物性を得るという観点から、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上2.5質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上2.0質量部以下である。
水素サイト保護剤は、放射線が照射されたときに水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断されて生じる炭素のラジカルに結合する化合物である。ここで、本出願における「水素サイト」とは、水素含有フッ素ゴムを構成する高分子の主鎖における水素が結合した炭素の部位をいう。具体的には、例えばVDF成分におけるC−H結合部位である。水素サイト保護剤は、分子内に水素含有フッ素ゴムの炭素のラジカルに結合するアルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物、及び/又は、分子内に水素含有フッ素ゴムの炭素のラジカルに結合するアルケニル基を有するシロキサン骨格の化合物を含むことが好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。アルケニル基は、これらのうちのビニル基が好ましい。
分子内にアルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル構造の化合物、パーフルオロアルキレン構造の化合物等が挙げられる。
分子内にアルケニル基を有するシロキサン骨格の化合物としては、例えば、メチルビニルシロキサンの重合体、ジメチルシロキサンの重合体、ジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとの共重合体、ジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとの共重合体等が挙げられる。その他、付加重合の液状シリコーンゴムである分子中にアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
これらのパーフルオロ骨格の化合物やシロキサン骨格の化合物は、分子内にアルケニル基を2個以上有することが好ましい。2個以上のアルケニル基は、同一であってもよく、また、異なっていてもよい。水素サイト保護剤が分子内にアルケニル基を2個以上有せば、水素サイトの保護に加え、水素含有フッ素ゴム間を架橋する架橋助剤としても機能することができる。
水素サイト保護剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、分子内にアルケニル基を有するパーフルオロポリエーテル構造の化合物を用いることがより好ましく、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロポリエーテル構造の化合物を用いることが更に好ましい。
水素サイト保護剤は、一液型の液状材料であることが好ましい。その場合、水素サイト保護剤の23℃における粘度は、パーフルオロ骨格の化合物の場合、好ましくは30Pa・s以上100Pa・s以下、より好ましくは40Pa・s以上70Pa・s以下であり、シロキサン骨格の化合物の場合、好ましくは100Pa・s以上150Pa・s以下、より好ましくは120Pa・s以上140Pa・s以下である。
水素サイト保護剤の含有量(B)は、耐プラズマ性を高める観点から、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。水素サイト保護剤の含有量(B)は、耐プラズマ性を高める観点から、熱架橋剤の含有量(A)よりも多いことが好ましい。水素サイト保護剤の含有量(B)の熱架橋剤の含有量(A)に対する比(B/A)は、耐プラズマ性を高める観点から、好ましくは2.5以上30以下、より好ましくは5.0以上10以下である。
実施形態に係る未架橋ゴム組成物は、架橋助剤を更に含有していてもよい。架橋助剤は、水素含有フッ素ゴムが熱架橋剤により架橋するときに、水素含有フッ素ゴムの分子間に介在するように水素含有フッ素ゴムと結合する化合物である。
架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。架橋助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、トリアリルイソシアヌレートを用いることがより好ましい。
架橋助剤の含有量(C)は、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、シール材として良好な物性を得る観点から好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは2質量部以上5質量部以下である。架橋助剤の含有量(C)は、耐プラズマ性を高める観点から、熱架橋剤の含有量(A)よりも多いことが好ましい。架橋助剤の含有量(C)の熱架橋剤の含有量(A)に対する比(C/A)は、架橋助剤を過不足なく反応させ、シール材として良好な物性を得るという観点から、好ましくは1.0以上4.0よりも小さく、より好ましくは2.0以上3.0以下である。
実施形態に係る未架橋ゴム組成物は、水素含有フッ素ゴムの含有量よりも少なければ、水素含有フッ素ゴム以外のゴム成分であるシリコーンゴムやテトラフルオロエチレンとパープルオロビニルエーテルとの共重合体のように高分子の主鎖に水素が結合した炭素が含まれないフッ素ゴムを含有していてもよい。実施形態に係る未架橋ゴム組成物は、製造するゴム製品によっては、カーボンブラックやシリカなどの補強材、可塑剤、加工助剤、加硫促進剤、老化防止剤等を含有していてもよい。但し、プラズマ雰囲気下でのパーティクルの発生が問題となるようなゴム製品の製造に用いられる場合には、カーボンブラック、シリカ、金属酸化物等の粉状の無機充填剤の含有量は、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは0質量部である。粉状の有機充填剤は、PVDFやETFEのような水素含有フッ素樹脂粉等の場合、後述の放射線の照射時に水素含有フッ素ゴムとの間の架橋による物性向上を期待することができる。
実施形態に係る未架橋ゴム組成物は、オープンロールなどの開放式のゴム混練機、或いは、ニーダーなどの密閉式のゴム混練機を用いて製造することができる。
次に、実施形態に係る未架橋ゴム組成物を用いたゴム製品の製造方法について説明する。
ゴム製品の製造方法では、まず、実施形態に係る未架橋ゴム組成物の所定量を、予熱した金型のキャビティに充填し、次いで型締めした後、その状態で、所定の成形温度及び所定の成形圧力で所定の成形時間だけ保持する。このとき、実施形態に係る未架橋ゴム組成物がキャビティの形状に成形されるとともに、水素含有フッ素ゴムが熱架橋剤により架橋して可塑性を喪失する。この成形は、プレス成形であってもよく、また、射出成形であってもよい。成形温度は、例えば150℃以上180℃以下である。成形圧力は、例えば0.1MPa以上25MPa以下である。成形時間は、例えば3分以上20分以下である。
そして、金型を型開きし、内部から成形品を取り出して冷却した後、成形品に対して放射線を照射する。このとき、放射線が照射されて水素含有フッ素ゴムの水素サイトの炭素−水素間の結合が切断されて炭素のラジカルを生じ、その炭素のラジカルに水素サイト保護剤が結合する。放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、イオン等が挙げられる。放射線は、これらのうちの電子線又はγ線を用いることが好ましい。放射線の照射線量は、耐プラズマ性を高める観点から、好ましくは10kGy以上100kGy以下、より好ましくは30kGy以上80kGy以下である。
以上により、実施形態に係る未架橋ゴム組成物から、水素含有フッ素ゴムが熱架橋剤により架橋するとともに、水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断された後の炭素に水素サイト保護剤が結合したゴム組成物で形成されたゴム製品が得られる。
以上の構成の実施形態に係る未架橋ゴム組成物によれば、耐プラズマ性の低い部位である水素含有フッ素ゴムの水素サイトが、放射線が照射されたときに炭素−水素間の結合が切断されて炭素のラジカルを生じ、その炭素のラジカルに水素サイト保護剤が結合することにより保護されるので、これを用いることにより耐プラズマ性の優れるゴム製品を製造することができる。また、水素サイト保護剤は、水素含有フッ素ゴムと反応するので、ブリードアウトが問題となることはない。
(ゴム組成物)
以下の実施例1〜2及び比較例1〜3のゴム組成物を調製した。それぞれの構成については表1にも示す。
<実施例1>
ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体からなる水素含有フッ素ゴム(ダイエルG912 ダイキン工業社製)に、この水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、熱架橋剤のパーオキサイドである2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B 日本油脂社製)1.5質量部、水素サイト保護剤の一液型の液状材料である分子内にビニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物(SIFEL3590−N 信越化学工業社製、粘度(23℃):50Pa・s)10質量部、及び架橋助剤のトリアリルイソシアヌレート(タイク 日本化成社製)4質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物を調製した。続いて、この未架橋ゴム組成物を、成形温度165℃、成形圧力5MPa、及び成形時間15分としてプレス成形した後、加熱温度200℃及び加熱時間4時間で熱処理してシート状のゴム組成物を得た。そして、このシート状のゴム組成物に対して、照射線量30kGyのγ線を照射した。このγ線を照射したシート状のゴム組成物を実施例1とした。
<実施例2>
水素サイト保護剤として、一液型の液状材料である分子内にビニル基を有するシロキサン骨格の化合物(KE−1830 信越化学工業社製、粘度(23℃):130Pa・s)を配合したことを除いて実施例1と同様にして作製したシート状のゴム組成物を実施例2とした。
<比較例1>
水素サイト保護剤を配合していないことを除いて実施例1と同様にして作製したシート状のゴム組成物を比較例1とした。
<比較例2>
水素サイト保護剤を配合せず、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、シリコーンゴム(KE−941−U 信越化学工業社製)を20質量部配合したことを除いて実施例1と同様にして作製したシート状のゴム組成物を比較例2とした。
<比較例3>
水素サイト保護剤を配合せず、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテルとの共重合体(FFKM:AFLASPremiumPM1100 旭硝子社製)を20質量部配合したことを除いて実施例1と同様にして作製したシート状のゴム組成物を比較例3とした。
Figure 0006924215
(試験方法)
<耐プラズマ性>
実施例1〜2及び比較例1〜3のそれぞれについて、マイクロ波プラズマ発生機を用いて、伸張率10%として、Oプラズマ照射試験及びCFプラズマ照射試験を行い、質量減量、クラックの有無、及びパーティクルの発生の有無を調べた。試験では、反応ガスとしてO及びCFを用い、Oプラズマ照射試験では、それらの流量比を50:1とし、CFプラズマ照射試験では、それらの流量比を1:50とした。また、反応圧力を100Pa及びプラズマ照射時間を60分とした。
<引張特性>
実施例1〜2及び比較例1〜3のそれぞれについて、JIS K6251に基づいて引張試験を行い、100%モジュラス(M100:100%伸び時における引張応力)、引張強さ(TB)、及び切断時伸び(EB)を測定した。
<圧縮永久ひずみ>
実施例1〜2及び比較例1〜3のそれぞれについて、JIS K6262:2013に基づき、試験時間72時間及び試験温度200℃として圧縮永久ひずみの測定を行った。
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
表1によれば、水素サイト保護剤を用いた実施例1及び2は、Oプラズマ及びCFプラズマのいずれに対しても、優れた耐プラズマ性を有することが分かる。一方、水素サイト保護剤を用いていない比較例1〜3は、Oプラズマに対して、パーティクルの発生は無いものの、質量減量が大きく(特に比較例1)、クラックが発生していることが分かる。また、CFプラズマに対しては、比較例1及び3は優れた耐プラズマ性を有するものの、比較例2は、パーティクルの発生は無いとしても、質量減量が大きく、クラックが発生していることが分かる。なお、引張特性及び圧縮永久ひずみについては、実施例1〜2と比較例1〜3との間での優劣は認められなかった。
本発明は、シール材及びその製造方法の技術分野について有用である。

Claims (8)

  1. 水素含有フッ素ゴムと、所定の温度に加熱されたときに前記水素含有フッ素ゴムを架橋させる熱架橋剤と、放射線が照射されたときに前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断されて生じる炭素のラジカルに結合する水素サイト保護剤と、前記水素含有フッ素ゴムが前記熱架橋剤により架橋するときに、前記水素含有フッ素ゴムの分子間に介在するように前記水素含有フッ素ゴムと結合する架橋助剤と含有し、前記架橋助剤の含有量の前記熱架橋剤の含有量に対する比が2.0以上3.0以下である未架橋ゴム組成物を用いて製造されるシール材であって、
    前記水素サイト保護剤が、分子内に前記炭素のラジカルに結合するアルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物を含み、
    前記水素含有フッ素ゴムが前記熱架橋剤により架橋するとともに、前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断された後の炭素に前記水素サイト保護剤が結合したゴム組成物で形成されているシール材。
  2. 請求項に記載されたシール材において、
    前記水素サイト保護剤が、分子内にアルケニル基を2個以上有するシール材。
  3. 請求項1又は2に記載されたシール材において、
    前記水素サイト保護剤の含有量が、前記水素含有フッ素ゴム100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であるシール材。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載されたシール材において、
    無機充填剤の含有量が、前記水素含有フッ素ゴム100質量部に対して5質量部以下であるシール材。
  5. 請求項1乃至のいずれかに記載されたシール材において、
    プラズマを使用する装置に使用されるシール材。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載されたシール材において、
    前記水素サイト保護剤の前記パーフルオロ骨格の化合物が、パーフルオロポリエーテル構造の化合物であるシール材。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載されたシール材において、
    前記水素サイト保護剤の前記パーフルオロ骨格の化合物が、23℃における粘度が30Pa・s以上100Pa・s以下の一液型の液状材料であるシール材。
  8. 水素含有フッ素ゴムと、所定の温度に加熱されたときに前記水素含有フッ素ゴムを架橋させる熱架橋剤と、放射線が照射されたときに前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合が切断されて生じる炭素のラジカルに結合する水素サイト保護剤と、前記水素含有フッ素ゴムが前記熱架橋剤により架橋するときに、前記水素含有フッ素ゴムの分子間に介在するように前記水素含有フッ素ゴムと結合する架橋助剤と含有し、前記架橋助剤の含有量の前記熱架橋剤の含有量に対する比が2.0以上3.0以下である未架橋ゴム組成物を、所定の温度に加熱して前記水素含有フッ素ゴムを前記熱架橋剤により架橋させた後、放射線を照射して前記水素含有フッ素ゴムの炭素−水素間の結合を切断して生じる炭素のラジカルに前記水素サイト保護剤を結合させるシール材の製造方法であって、
    前記水素サイト保護剤は、分子内に前記炭素のラジカルに結合するアルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物を含むシール材の製造方法
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