JP3729593B2 - 狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の製造方法に関する。詳しくは、工業的に入手容易なp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンを原料とする、化学増幅型レジスト材のベースポリマー等として有用な狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ(p−ヒドロキシスチレン)は、高解像度のリソグラフィー用として、またはLSI用に使用するレジスト材用のベースポリマーとして注目を集めており、その製造方法も数多く提案されている。(例えば、特開昭57−44609、特開昭63−199705、特開平6−32832、特開平5−1115など)一方、ポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)は、α位のメチル基の効果により、剥離剤でのレジスト除去工程における溶解速度性、及びドライエッチング工程における耐プラズマ性など、高密度化に対応するレジスト剤として要求される性能がポリ(p−ヒドロキシスチレン)に比べ更に向上するためより有用であるが、α位のメチル基の電子的、立体的影響により重合方法が制限され、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)の製造方法をそのまま適用することはできない。実際、本発明者らがポリ(p−ヒドロキシスチレン)の製造方法として開示されている具体的方法のいくつかをポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)に適用してみた。例えば、特開平6−32832に記載されている方法と同様に、p−t−ブトキシカルボニルオキシ−α−メチルスチレンをn−ブチルリチウムを重合開始剤としてテトラヒドロフラン中、−78℃でアニオン重合を試みたが、t−ブトキシカルボニルオキシ基とn−ブチルリチウムとの反応の方が優先的に起こってしまい、目的とする重合体はほとんど得られなかった。また、、特開平5−1115に記載されている方法と同様に、p−テトラヒドロピラニルオキシ−α−メチルスチレンをn−ブチルリチウムを重合開始剤としてテトラヒドロフラン中、−78℃で1時間アニオン重合を試みたが、ほとんど重合反応は進行せず、目的とする重合体は得られなかった。
【0003】
しかしながら、これらの困難性を解決し、ポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を製造する方法がいくつかは提案されている。
特開昭61−179204には、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンのエステル化物を五ハロゲン化アンチモンを触媒としてカチオン重合させ、重合体とした後、加水分解してポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を得る方法が開示されている。しかしながら、このカチオン重合により得られたポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)は、重合停止剤にメタノールや水を用いるため、重合末端はメトキシ基やヒドロキシ基となる。このように、ポリマー末端に官能基が必然的に結合することとなり、このため熱分解性が生じ、よってリソグラフィー工程において加熱を必要とするレジスト材のベースポリマーとしては好ましくない。
【0004】
Makromol. Chem., Macromol. Symp. 53, 139-149(1992)には、p−tert−ブトキシカルボニルオキシ−α−メチルスチレンを三フッ化硼素エーテル付加物を触媒として二酸化硫黄溶媒中にカチオン重合させ、ポリ(p−tert−ブトキシカルボニルオキシ−α−メチルスチレン)とした後、約200℃に加熱してポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法もカチオン重合のため、上記と同じ欠点を有する。更には、この方法で得られるポリマーは分子量分散度が2.4ないし4.6と広く、この点でもレジスト材として好ましくない。
【0005】
特開昭59−199705には、p−ブロム−α−メチルスチレンをエーテル中でマグネシウムと反応させた後、テトラヒドロフラン中で過酸化安息香酸1,1−ジメチルプロピルエステルと作用させて、p−1,1−ジメチルプロポキシ−α−メチルスチレンを得、これをアニオン重合させた後酸分解してポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を得る方法が開示されている。しかしながらこの方法は、グリニャール反応を用いるため等モル以上のマグネシウムが必要であり、また副生する臭化マグネシウムの処理も問題であり、よって実用的な方法とは言えない。
【0006】
特開平6−32819には、メトキシメトキシ−α−メチルスチレンをリビングアニオン重合した後、メトキシメトキシ基を脱離させてポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法において、原料のメトキシメトキシ−α−メチルスチレンを合成するためには、高価なクロロメチルメチルエーテルが必要であり、また、等モル量のアルカリ金属クロリドが副生するためにこの処理も必要であり、よって工業的な製造方法とは言えない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、工業的に入手容易なp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンを原料とする、化学増幅型レジスト材のベースポリマー等として有用な狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を簡便かつ高収率で製造する方法について鋭意検討した結果、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンをビニルエーテル類との反応によりアルコキシアルコキシ化した後、ある種の開始剤によりアニオン重合させ、これをプロトン酸と作用させることにより、任意の分子量で、狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を容易に、しかも高収率で製造することができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、[ 1 ] p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンと化学式(1)
【0009】
【化8】
(式中、R1は、水素または炭素数1ないし3のアルキル基、R2は、水素、炭素数1ないし6のアルキル基または炭素数1ないし6アルコキシ基、R3は、炭素数1ないし20の無置換またはアルコキシ置換のアルキル基、炭素数5ないし10のシクロアルキル基、または炭素数6ないし20の無置換またはアルコキシ置換のアリール基を示し、また、R2とR3とは互いに結合して環構造を形成してもよい。)で示されるビニルエーテル類とを酸の存在下に反応させて化学式(2)
【0010】
【化9】
(式中、R1は、水素または炭素数1ないし3のアルキル基、R2は、水素、炭素数1ないし6のアルキル基または炭素数1ないし6アルコキシ基、R3は、炭素数1ないし20の無置換またはアルコキシ置換のアルキル基、炭素数5ないし10のシクロアルキル基、または炭素数6ないし20の無置換またはアルコキシ置換のアリール基を示し、また、R2とR3とは互いに結合して環構造を形成してもよい。)で示される1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンを得、
[ 2 ] これを化学式(3)
【0011】
【化10】
(式中、R4、R5は、それぞれ独立に、炭素数1ないし10のアルキル基、または炭素数7ないし11のアラルキル基、R6は、水素または炭素数1ないし10のアルキル基、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムよりなる群から選ばれるアルカリ金属を示す。)、化学式(4)
【0012】
【化11】
(式中、R7は、水素または炭素数1ないし10のアルキル基、R8は、炭素数1ないし3のアルキル基、または炭素数6ないし11のアリール基、R9は、水素、または炭素数1ないし10のアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルコキシ基、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムよりなる群から選ばれるアルカリ金属、lは1ないし200の整数を示す。)、または、化学式(5)
【0013】
【化12】
(式中、R10は、炭素数1ないし3のアルキル基、R11は、水素、または炭素数1ないし10のアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルコキシ基、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムよりなる群から選ばれるアルカリ金属、mおよびnは1ないし100の整数を示す。)で示される有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてアニオン重合させて、化学式(6)
【0014】
【化13】
(式中、R1は、水素または炭素数1ないし3のアルキル基、R2は、水素、炭素数1ないし6のアルキル基または炭素数1ないし6アルコキシ基、R3は、炭素数1ないし20の無置換またはアルコキシ置換のアルキル基、炭素数5ないし10のシクロアルキル基、または炭素数6ないし20の無置換またはアルコキシ置換のアリール基を示し、また、R2とR3とは互いに結合して環構造を形成してもよい。)で示される繰り返し単位を有する狭分散性のポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}を得、
[ 3 ] これを有機溶媒の存在下にプロトン酸と接触させて、脱アルコキシアルコキシ化反応を行うことを特徴とする、化学式(7)
【0015】
【化14】
で示される繰り返し単位を有する狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の製造方法を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、まず、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンと化学式(1)で示されるビニルエーテル類とを酸の存在下に反応させて化学式(2)で示される1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンを得る。p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンは、2,2−ビス(4’−オキシフェニル)プロパンの熱分解により容易に得られる(特公昭56−52886など)。好ましいビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル類またはジヒドロフラン類であり、アルキルビニルエーテル類とは、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、iso−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、iso−オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、tert−ペンチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、セシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、ビニル−2−(2−エトキシエトキシ)エチルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、またはtert−アミルビニルエーテルなどであり、アルコキシ置換または無置換のアルキルビニルエーテル類である。これらのうち、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、iso−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、またはtert−アミルビニルエーテルがより好ましく、更に好ましくは、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、iso−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、またはtert−ブチルビニルエーテルである。
【0018】
ジヒドロフラン類とは、2,3−ジヒドロフランまたは2,5−ジヒドロフランであり、反応を阻害しない限り、フラン環上にアルキルまたはアルコキシ置換基を有していても構わない。好ましくは2,3−ジヒドロフランである。これらのビニルエーテル類の使用量は、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン1モルに対して通常10モル以下であり、好ましくは0.1ないし5モルの範囲であり、より好ましくは0.5ないし3モルの範囲である。
【0019】
原料として用いるp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンやビニルエーテル類には、安定剤として水酸化カリウム等のアルカリ性化合物や重合禁止剤等が含まれている場合があるが、これらは蒸留等の精製操作を行わずにそのまま使用しても特に問題はない。しかしながら、例えば水酸化カリウムが混入していると触媒として使用する酸の量が増えることから、事前に精製操作を行ってこれらの安定剤を除去しておくか、または安定剤を含まない原料を用いる方がより好ましい。
【0020】
酸としては、例えば、塩化水素ガス等のハロゲン化水素、硫酸、リン酸、塩酸、または臭化水素酸等の鉱酸、ヘテロポリ酸もしくはナフィオン等の固体酸、または、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、シュウ酸、クロルスルホン酸・ピリジン塩、硫酸・ピリジン塩もしくはp−トルエンスルホン酸・ピリジン塩等の有機酸が挙げられ、これらのうち、塩化水素ガス、塩酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸・ピリジン塩、または硫酸・ピリジン塩が好ましい。これらの酸は、単独でも、または2種以上を同時または順次に使用することもできる。これらの酸の使用量は、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン1モルに対して通常2モル以下であり、好ましくは、0.00001ないし0.2モルの範囲であり、更に好ましくは0.0001ないし0.05モルの範囲である。
【0021】
本発明の方法における反応において、溶媒を用いずに反応を行いうる場合もあるが、通常は溶媒の存在下で実施する。用いる場合の溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、具体的には、例えば、水;n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族の炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の脂肪族または芳香族ハロゲン化合物;ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;および酢酸エチルやプロピオン酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0022】
本発明の方法における反応の実施方式は、特に限定されるものではなく、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、ビニルエーテル類、酸、および使用する場合の溶媒等が効果的に混合され接触される方法であれば如何なる方法でもよく、回分式、半回分式または連続流通式の何れでも構わない。
【0023】
反応の際の温度および時間は、原料のビニルエーテル類や酸、及び使用する場合の溶媒等の種類や量により異なり一様ではない。しかしながら、通常反応温度は零下10℃ないし100℃の範囲であり、好ましくは、0℃ないし60℃の範囲である。反応時間は、通常20時間以内であり、好ましくは0.01ないし10時間の範囲である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。
本発明の方法における反応は、不活性ガス雰囲気下でも、空気などの分子状酸素の存在下でも行うことができる。
本発明の方法における反応によって、化学式(2)で示される1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンが得られる。
【0024】
次いで、この得られた1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンを、化学式(3)、化学式(4)、または化学式(5)で示される有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてアニオン重合させる。
【0025】
1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンは、上記反応によって得られた反応液より抽出、蒸留、および/または結晶化等の常用の方法によって処理することにより単離した後使用することもできるし、または、反応液より抽出、中和、濾別、またはイオン交換樹脂処理等通常の操作で酸を除去した後、単離することなくそのままアニオン重合に使用することもできる。また、1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンは、安定化剤として水酸化カリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ成分を添加して保存しておくことが好ましいが、このアルカリ成分は除去せずそのままアニオン重合に用いることもできる。
【0026】
好ましい有機アルカリ金属化合物としては、sec−ブチルリチウム、α−メチルスチレンダイマージカリウム、α−メチルスチレンテトラマージナトリウム、クミルカリウムまたはクミルセシウムが挙げられる。また、クメンとアルカリ金属との組み合わせ等、重合条件下でこれらの有機アルカリ金属化合物を発生させることのできる成分の組み合わせであっても、または別途これらの有機アルカリ金属化合物を調製した後単離せずにそのまま用いてもよい。これらの有機アルカリ金属化合物の使用量は、それらの種類および目的とするポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の分子量により一様ではないが、通常1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン1モルに対して0.5モル以下であり、好ましくは0.00001ないし0.1モルの範囲であり、更に好ましくは0.0001ないし0.05モルの範囲である。
【0027】
本発明の方法におけるアニオン重合は、有機溶媒中で行うことが好ましい。この場合に用いられる有機溶媒は、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族の炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;およびジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、本発明の反応においてこれらの溶媒を用いた場合、アニオン重合においても同じ溶媒を用いるのが、溶媒の回収等の操作の省略化のためにも好ましい。本発明の方法におけるアニオン重合の実施方式は、特に限定されるものではなく、1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン、有機アルカリ金属化合物、および使用する場合の溶媒等が効果的に混合され接触される方法であれば如何なる方法でもよく、回分式、半回分式または連続流通式の何れでも構わない。
【0028】
アニオン重合の際の温度および時間は、1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン、有機アルカリ金属化合物、および使用する場合の溶媒等の種類や量により異なり一様ではない。しかしながら、通常重合温度は零下100℃ないし150℃の範囲であり、好ましくは、零下80℃ないし80℃の範囲である。重合時間は、通常100時間以内であり、好ましくは0.01ないし20時間の範囲である。重合は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。
本発明の方法におけるアニオン重合は、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下で行う。
【0029】
また、本発明の方法におけるアニオン重合では、重合速度や重合収率等を高めるため等に、クラウンエーテル類やポリグリコール類など、これまでにアニオン重合において用いられている添加剤等を更に用いることもできる。
【0030】
目的の重合度に達した時点で、重合停止剤を添加して停止させることにより、1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンのビニル基を通して選択的に重合した、化学式(6)で示される繰り返し単位を有する狭分散性のポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}が得られる。重合停止剤としては、通常のアニオン重合停止剤を用いることができ、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;臭化メチル、沃化メチル等のハロゲン化アルキル類;および酢酸、プロピオン酸等の有機カルボン酸類等が挙げられる。また、重合後、二酸化炭素、または例えば酸化エチレンや酸化プロピレン等の環状エーテル化合物等で処理した後、更に上記重合停止剤で処理することにより、重合体鎖末端ヘカルボキシル基や水酸基等の官能基を導入することができる。また、必要に応じて、公知の末端変性剤、末端分岐剤、カップリング剤等を用いることもできる。
【0031】
次いで、この得られたポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}を、有機溶媒の存在下にプロトン酸と接触させて、脱アルコキシアルコキシ化反応を行う。
【0032】
ポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}は、上記アニオン重合によって得られた重合液より、例えばメタノール等の適当な溶剤を用いて沈殿し、洗浄、乾燥する方法や、脱溶媒し、スチームストリッピング乾燥または加熱乾燥等の乾燥操作を用いる方法等、通常の方法によって単離精製した後使用することもできるし、または、何ら単離操作をすることなくそのまま脱アルコキシアルコキシ化反応に使用することもできる。
【0033】
プロトン酸としては、例えば、塩化水素等のハロゲン化水素、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、もしくはリン酸等の鉱酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、蓚酸、酢酸、またはマロン酸等のカルボン酸類、または、p−トルエンスルホン酸もしくはトリフルオロメチル硫酸等の有機スルホン酸類等のプロトン酸が挙げられ、これらのうち、塩化水素、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、またはトリフルオロメチル硫酸が好ましい。プロトン酸の使用量は、通常、ポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}の化学式(6)で示される繰り返し単位のモル数に対して0.00001倍モル以上の量用いられるが、例えば酢酸等のカルボン酸類は有機溶媒としても使用することができる。好ましくは、0.00001ないし0.5倍モルの範囲であり、より好ましくは、0.0001ないし0.2倍モルの範囲である。
【0034】
有機溶媒としては、用いるポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}または生成するポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の少なくとも何れかが溶解する溶媒であれば何れでも使用することができるが、通常、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族の炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の脂肪族または芳香族ハロゲン化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、アセトフェノン等のケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;および酢酸エチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル等のエステル類等が挙げられる。または、プロトン酸として用いた酢酸等のカルボン酸類も挙げられる。これらの有機溶媒は単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。これらの溶媒の使用量は、用いる溶媒の種類により一様ではないが、通常、ポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}またはポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の濃度として0.05重量%ないし50重量%の範囲であり、好ましくは、0.1重量%ないし30重量%の範囲である。
【0035】
本発明の方法における脱アルコキシアルコキシ化反応の実施方式は、特に限定されるものではなく、ポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}、プロトン酸および有機溶媒等が効果的に混合され接触される方法であれば如何なる方法でもよく、回分式、半回分式または連続流通式の何れでも構わない。
【0036】
脱アルコキシアルコキシ化反応の際の温度および時間は、ポリ{1−アルコキシアルコキシ−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}の濃度や分子量、プロトン酸の種類や量および有機溶媒等の種類等により異なり一様ではない。しかしながら、通常脱アルコキシアルコキシ化反応の温度は0℃ないし200℃の範囲であり、好ましくは、20℃ないし150℃の範囲である。脱アルコキシアルコキシ化反応の反応時間は、通常20時間以内であり、好ましくは0.01ないし10時間の範囲である。また、場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。
また、この脱アルコキシアルコキシ化反応は、不活性ガス雰囲気下でも、空気などの分子状酸素の存在下でも行うことができる。
【0037】
以上の操作により、化学式(7)で示される繰り返し単位を有する狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)が得られる。本発明の方法により得られる狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)は、通常、重量平均分子量が1000ないし80000、好ましくは2000ないし50000、より好ましくは3000ないし30000であり、そして、重量平均分子量と数平均分子量との比が1.5以下、好ましくは1.0ないし1.4の範囲である。
【0038】
この得られたポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)は、例えば脱アルコキシアルコキシ化反応において炭化水素等の溶解度の低い有機溶媒を用いた場合、脱アルコキシアルコキシ化反応中に固体として析出してくるため、濾過やデカンテーション等の通常の分離操作により単離することができるし、または、アルコール等の溶解度の高い有機溶媒を用いた場合、均一に溶解しているため、抽出、ストリッピングおよびイオン交換などの通常の精製操作を行った後、または何ら精製操作を行わずに、適当な貧溶媒を用いて沈殿させて分離する方法や、脱溶媒法などの乾燥操作を用いる方法等の通常の方法によって単離することができる。
【0039】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらは限定的ではなく単に説明のためと解されるべきである。
実施例1
1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの合成撹拌機、温度計、内容積30ミリリットルの滴下ロートおよび冷却管を装着した、内容積200ミリリットルの4ッロフラスコに、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン10.0グラム(74.6ミリモル)、酸としてp−トルエンスルホン酸・ピリジン塩10ミリグラム(0.04ミリモル)および溶媒として塩化メチレン80.0ミリリットルを仕込んだ。この液を撹拌しながらウォーターバスにより内温を25℃にしたところで、滴下ロートよりエチルビニルエーテル5.41グラム(75.0ミリモル)を塩化メチレン20ミリリットルに溶解させた溶液を滴下し始めた。10分かけて滴下した後、そのまま空気雰囲気下で1時間反応させた。滴下開始時は薄黄色であったが、反応終了時は無色透明となった。また、滴下中若干発熱が認められた。反応終了後、この反応液を300ミリリットルの分液ロートに移し替え、0.2N水酸化ナトリウム水溶液100ミリリットルで1回抽出洗浄し、更にイオン交換水100ミリリットルにて2回洗浄して酸分を除去した。また、抽出に用いたアルカリ水と水とは混合し、反応溶媒である塩化メチレンにて逆抽出を行い、最初の有機層部分と混合した。このように得られた有機溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、高速液体クロマトグラフィーにて成分分析を行ったところ、目的物である1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンが14.7グラム(71.1ミリモル)、および原料のp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンが0.09グラム(0.67ミリモル)含まれており、よってp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンの転化率は99.1%、仕込んだp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンに対する1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの収率は95.4%であった。
【0040】
この得られたアルカリ処理済みの液より塩化メチレンを留去させた後、生成した1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンを水素化カルシウム存在下0.5mmHg、60℃にて蒸留し、精製した。収量は13.2グラムであった。なお、生成した1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンは、1H−NMR、13C−NMR、IRおよび元素分析により同定した。
【0041】
ポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}の合成
200ミリリットルのシュレンクフラスコに、アルゴン雰囲気下、撹拌子を装入し、次いで溶媒としてテトラヒドロフラン100ミリリットル、重合開始剤としてsec−ブチルリチウムの1.08Nシクロヘキサン溶液0.52ミリリットル(0.56ミリモル)を仕込んだ。この液を撹拌しながらドライアイス/メタノールバスにより−78℃にした後、蒸留・精製した1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン10.0グラム(48.5ミリモル)を添加した。この溶液はすぐに濃赤色を呈した。このまま6時間重合させた後、メタノール5.0ミリリットルを加え、重合を停止させた。この重合溶液をメタノール2.0リットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて濾過・分離し、更に減圧乾燥させて9.62グラムの白色重合体を得た。仕込んだ1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンに対する重量収率は、96.2%であった。得られた白色重合体は、1H−NMR分析、IR分析、および元素分析の結果より、目的とするポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}であった。また、ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は18000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.02であった。
【0042】
ポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の合成
撹拌子を装入した内容積100ミリリットルの三角フラスコに、合成したポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}5.00グラム、および溶媒としてメタノール30ミリリットルを仕込んだ。この状態では重合体はほとんど溶解せず、液は不均一であったが、ここに35%塩酸水溶液0.1ミリリットルを加え、室温にて3時間撹拌し酸分解を行った。塩酸水溶液を加えると徐々に不溶物はなくなっていき、3時間後には無色透明な均一液となった。
この酸分解処理液を水500ミリリットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて、濾過・分離し、更に減圧乾燥させて2.9グラムの白色重合体を得た。得られた白色重合体は、1H−NMR分析、IR分析、および元素分析の結果より、目的とするポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)であった。また、ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は14000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.02であった。
【0043】
比較例1
実施例1において、酸として用いたp−トルエンスルホン酸・ピリジン塩を用いなかった以外は、すべて実施例1と同様に反応し、同様にアリカリ抽出・乾燥を行い、アルカリ処理済みの液を得た。実施例1と同様に分析を行ったところ、目的とする1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの生成は認められなかった。
【0044】
実施例2−8
1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの合成実施例1において、酸の種類と量、溶媒の種類、反応温度および反応時間を表1に示すように変えた以外は、すべて実施例1と同様に反応させ、同様にアリカリ抽出・乾燥を行い、アルカリ処理済みの液を得た。実施例1と同様に分析を行い、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンの転化率、およびp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンに対する1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの収率を求めた。結果を実施例1の結果とともに表1に示す。
【0045】
実施例9
ポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}の合成
実施例1において用いた重合器に、溶媒としてベンゼン100ミリリットル、重合開始剤として別途調製したクミルカリウムの0.2Nテトラヒドロフラン溶液1.7ミリリットル(0.34ミリモル)を仕込んだ。この液を撹拌しながらウォーターバスにより35℃にした後、実施例1と同様に合成し、蒸留・精製した1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン10.0グラム(48.5ミリモル)を添加した。このまま5時間重合させた後、メタノール5.0ミリリットルを加え、重合を停止させた。この重合溶液をメタノール2.0リットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて濾過・分離し、更に減圧乾燥させて6.96グラムのポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}を得た。仕込んだ1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンに対する重量収率は、69.6%であった。また、ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は21000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.02であった。
【0046】
実施例10
ポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}の合成
実施例1において用いた重合器に、溶媒としてベンゼン100ミリリットル、重合開始剤として別途調製したα−メチルスチレンダイマージカリウムの0.3Nテトラヒドロフラン溶液1.7ミリリットル(0.5ミリモル)、および添加剤として1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(18−クラウン−6)0.26グラム(1.0ミリモル)を仕込んだ。この液を撹拌しながらドライアイス/四塩化炭素バスにより−20℃にした後、実施例1と同様に合成し、蒸留・精製した1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン10.0グラム(48.5ミリモル)を添加した。このまま2時間重合させた後、メタノール5.0ミリリットルを加え、重合を停止させた。この重合溶液をメタノール2.0リットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて濾過・分離し、更に減圧乾燥させて8.69グラムのポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}を得た。仕込んだ1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンに対する重量収率は、86.9%であった。また、ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は19000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.04であった。
【0047】
実施例11
ポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の合成
実施例1と同様に重合し、合成したポリ{1−(1−エトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}を用い、実施例1において用いた35%塩酸水溶液の代わりに、0.1N硫酸水溶液1.0ミリリットルを用い、温度を60℃に変えた以外はすべて実施例1と同様に酸分解処理を行い、また、同様に単離・乾燥操作を行い、2.9グラムのポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を得た。重量平均分子量(Mw)は14000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.02であった。
【0048】
実施例12
1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの合成
実施例1において、エチルビニルエーテルの代わりにtert−ブチルビニルエーテルを7.46グラム(74.5ミリモル)用いた以外は、すべて実施例1と同様に反応し、同様にアリカリ抽出・乾燥を行い、アルカリ処理済みの液を得た。高速液体クロマトグラフィーにより成分分析を行ったところ、目的物である1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンが15.95グラム(68.0ミリモル)、および原料のp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンが0.35グラム(2.61ミリモル)含まれており、よってp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンの転化率は96.5%、仕込んだp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンに対する1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの収率は91.3%であった。
このアルカリ処理済みの液より塩化メチレンを留去した後、水素化ナトリウムの存在下、減圧蒸留し、11.8グラムの1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンを得た。
【0049】
ポリ{1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}の合成
実施例1と同様の重合装置に、溶媒としてベンゼン80ミリリットル、重合開始剤として別途調製したα−メチルスチレンテトラマージナトリウムの0.2Nテトラヒドロフラン溶液4.5ミリリットル(0.9ミリモル)を仕込んだ。この液を撹拌しながらウォーターバスにより35℃にした後、1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン10.0グラム(42.7ミリモル)を添加した。このまま8時間重合させた後、メタノール5.0ミリリットルを加えて重合を停止させた。この重合溶液をメタノール2.0リットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて濾過・分離し、更に減圧乾燥させて7.81グラムの白色重合体を得た。仕込んだ1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンに対する収率は、77.6%であった。得られた白色重合体は、1H−NMR分析、IR分析、および元素分析の結果より、目的とするポリ{1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}であった。また、ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は22000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.05であった。
【0050】
ポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の合成
撹拌子を装入した内容積100ミリリットルの三角フラスコに、合成したポリ{1−(1−tert−ブトキシエトキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}5.00グラム、および溶媒としてアセトン30ミリリットルを仕込んだ。ここに35%塩酸水溶液0.1ミリリットルを加え、室温にて3時間撹拌し酸分解を行った。
この酸分解処理液を水500ミリリットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて、濾過・分離し、更に減圧乾燥させて2.6グラムのポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を得た。ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は17000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.05であった。
【0051】
実施例13
1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの合成
実施例1において用いた反応装置に、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン10.0グラム(74.6ミリモル)、酸として塩化水素の1Nジエチルエーテル溶液5.0ミリリットル(5.0ミリモル)および溶媒としてジエチルエーテル100.0ミリリットルを仕込んだ。この液を撹拌しながら内温を0℃に氷冷したところで、滴下ロートより2,3−ジヒドロフラン15.77グラム(225.0ミリモル)を滴下し始めた。20分かけて滴下した後、そのまま空気雰囲気下で8時間反応させた。反応終了後、この反応液を300ミリリットルの分液ロートに移し替え、0.2N水酸化ナトリウム水溶液100ミリリットルで3回抽出洗浄し、更にイオン交換水100ミリリットルにて2回洗浄して酸分を除去した。また、抽出に用いたアルカリ水と水とは混合し、反応溶媒であるジエチルエーテルにて逆抽出を行い、最初の有機層部分と混合した。このように得られた有機溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、高速液体クロマトグラフィーにて成分分析を行ったところ、目的物である1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンが9.39グラム(46.0ミリモル)、および原料のp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンが2.97グラム(22.1ミリモル)含まれており、よってp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンの転化率は70.3%、仕込んだp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンに対する1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンの収率は61.7%であった。
【0052】
この得られたアルカリ処理済みの有機溶液よりジエチルエーテルを留去させた後、生成した1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンを水素化カルシウム存在下2.0mmHg、80℃にて蒸留し、精製した。収量は7.6グラムであった。なお、生成した1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンは、1H−NMR、13C−NMR、IRおよび元素分析により同定した。
【0053】
ポリ{1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}の合成
100ミリリットルのシュレンクフラスコに、アルゴン雰囲気下、撹拌子を装入し、次いで溶媒としてテトラヒドロフラン50ミリリットル、重合開始剤としてsec−ブチルリチウムの1.08Nシクロヘキサン溶液0.3ミリリットル(0.3ミリモル)を仕込んだ。この液を撹拌しながらドライアイス/メタノールバスにより−78℃にした後、蒸留・精製した1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン5.0グラム(24.5ミリモル)を添加した。このまま5時間重合させた後、メタノール5.0ミリリットルを加え、重合を停止させた。この重合溶液をメタノール1.0リットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて濾過・分離し、更に減圧乾燥させて4.61グラムの白色重合体を得た。仕込んだ1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼンに対する重量収率は、92.2%であった。得られた白色重合体は、1H−NMR分析、IR分析、および元素分析の結果より、目的とするポリ{1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}であった。また、ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は16000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.06であった。
【0054】
ポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)の合成
撹拌子を装入した内容積100ミリリットルの三角フラスコに、合成したポリ{1−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−4−(1−メチルエテニル)ベンゼン}5.00グラム、および溶媒としてメタノール30ミリリットルを仕込んだ。ここに35%塩酸水溶液0.1ミリリットルを加え、室温にて3時間撹拌し酸分解を行った。
この酸分解処理液を水500ミリリットル中に注ぎ、重合体を沈殿させて、濾過・分離し、更に減圧乾燥させて2.8グラムのポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を得た。ポリスチレンを標準とするGPC分析の結果、重量平均分子量(Mw)は13000であり、そして分子量分散度(Mw/Mn)は1.06であった。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、工業的に入手容易なp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンをビニルエーテル類との反応によりアルコキシアルコキシ化した後、ある種の開始剤によりアニオン重合させ、これをプロトン酸と作用させることにより、化学増幅型フォトレジスト材等に有用な狭分散性のポリ(p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)を簡便に、任意の分子量で、しかも高収率で製造することができる。
Claims (4)
- [1] p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンと化学式(1)
[ 2 ] これを化学式(3)
[ 3 ] これを有機溶媒の存在下にプロトン酸と接触させて、脱アルコキシアルコキシ化反応を行うことを特徴とする、化学式(7)
- ビニルエーテル類がアルキルビニルエーテル類または2,3−ジヒドロフランである請求項1に記載の方法。
- アルキルビニルエーテル類がメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、iso−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、またはtert−アミルビニルエーテルである請求項2に記載の方法。
- 有機アルカリ金属化合物が、sec−ブチルリチウム、α−メチルスチレンダイマージカリウム、α−メチルスチレンテトラマージナトリウム、クミルカリウムまたはクミルセシウムである請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
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