JP3744246B2 - ポリ(p−t−ブトキシスチレン)の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ(p−t−ブトキシスチレン)の製造法に関し、詳しくは、重合溶媒として、(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類という特定のエーテル系化合物と炭化水素系溶媒との混合溶媒を用いることを特徴とするポリ(p−t−ブトキシスチレン)の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】
ポリ(p−t−ブトキシスチレン)は、超LSIの製造に必要なレジスト材をはじめ種々の機能性樹脂として良く知られており、その製造法としては、重合開始剤として有機金属化合物を用い、各種の溶媒中でp−t−ブトキシスチレンを重合させる方法等が知られている。
例えば、重合開始剤として、アルキルリチウム、ナトリウムナフタレン等の有機金属化合物を用い、溶媒として、芳香族炭化水素、環状エーテル、脂肪族炭化水素等の溶媒を単独で用いる方法(特公昭63−36602号公報、特開平6−123970号公報)が提案されている。
しかしながらこの方法では、分子量分布の比較的狭いポリマーが得られるものの−70〜−78℃という超低温の重合設備を必要とするという工業上の難点があった。
【0003】
一方この難点を改善するものとして、溶媒として、炭化水素系溶剤とテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルエーテル、N−メチルピロリジン等の極性溶媒との混合溶媒を用い、重合開始剤としてsec−ブチルリチウムを用いる方法(特開平6−298869号公報)などが提案されている。
しかしながら、これの方法は、目的物の生成速度等の点で十分満足し得るものではなく、この点の改善が望まれていた。
【0004】
このような状況に鑑み、本発明者等は、目的物の生成速度等を向上せしめるべく、反応溶媒について、鋭意検討を重ねた結果、(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類という特定のエーテル系化合物と炭化水素系溶媒との混合溶媒を用いることにより、目的物の生成速度等が著しく向上し、目的物が効率的に得られることを見出すとともにさらに検討を加えて本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、重合開始剤として有機金属化合物を用いて、p−t−ブトキシスチレンを重合せしめることによるポリ(p−t−ブトキシスチレン)の製造法において、溶媒として、炭化水素系溶媒と(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類との混合溶媒を用いることを特徴とする工業的に優れたポリ(p−t−ブトキシスチレン)の製造法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、重合溶媒として、炭化水素系溶媒と(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類との混合溶媒を用いることを特徴とするものであるが、(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類としては、例えば下式
R1(OR2)nOR3
(式中、R1、R3は低級アルキル基を、R2は低級アルキレン基を、nは1〜5の数値を表す。)
で示される化合物等が挙げられる。
【0007】
ここで、低級アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル等が挙げられる。低級アルキレン基としては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン等が挙げられる。
前記の式で示される代表化合物としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のアルキレングリコールのジエーテエル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のポリアルキレングリコールのジエーテエル類などが挙げられる。
【0008】
また炭化水素系溶媒の代表例としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素が挙げられる。
好ましい混合溶媒としては、例えば、ヘキサン/エチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサン/エチレングリコールジエチルエーテル、ヘキサン/エチレングリコールジブチルエーテル、トルエン/エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0009】
本発明においては、(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類は、炭化水素系溶媒に対し0.05〜10重量%程度使用することが好ましい。より好ましくは0.2〜5重量%程度である。10重量%を越えた場合には、カップリング反応等の副反応が惹起される傾向があり、0.05重量%未満の場合は、反応速度の遅延による収率の低下や連鎖移動等の副反応が生じる傾向があり、いずれの場合にも、分子量分布、分散等が悪化する傾向にある。
混合溶媒は、p−t−ブトキシスチレンに対して、通常5〜20重量倍程度使用される。
【0010】
また本発明において使用される重合開始剤としての有機金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、i−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、2−メチルブチルリチウム、リチウムナフタレン等の有機リチウム化合物、ナトリウムナフタレン、ナトリウムアントラセン、α−メチルスチレンテトラマーナトリウム、ナトリウムビフェニル等有機ナトリウム化合物などの有機アルカリ金属が挙げられる。なかでもn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましく使用される。
有機金属化合物の使用量は、目的とするポリ(p−t−ブトキシスチレン)の分子量により変動するが、モノマーであるp−t−ブトキシスチレン1g当たり10−5〜10−3モル程度であることが好ましい。
【0011】
重合反応は、通常、高真空下あるいはアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で実施される。反応温度は、通常−50〜0℃、好ましくは−40〜0℃、より好ましくは−40〜−20℃の範囲である。また反応時間は、10分〜20時間程度である。
【0012】
重合反応は、水、メタノール等の重合反応停止剤を少量加えることにより、停止させることができる。
次いで、反応マスを水洗、有機溶媒留去することにより、目的とするポリ(p−t−ブトキシスチレン)を単離することができる。得られたポリ(p−t−ブトキシスチレン)は、例えば溶媒留去した後、メタノール等に注入することにより、精製することもできる。
分子量分布は、GPC分析により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を求めることにより算出し得る。また、該GPC分析時の溶出曲線におけるピーク形状により、単分散の有無を確認し得る。
【0013】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例1
窒素雰囲気下、水分を除去したヘキサン300ml、sec−ブチルリチウム4.5mmolを500mlのフラスコに加え、−20℃まで冷却し、そこにp−t−ブトキシスチレンモノマー60gとエチレングリコールジメチルエーテル3mlの混合溶液を15分で滴下し、さらに−20℃で20分重合を行った。次いで少量のメタノールを加え反応を停止させた。次いで水洗、溶媒留去したところ、60gの白色固体生成物が得られた。このものは、GPC測定により、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは5776で、分子量分布Mw/Mnは1.10と十分小さく、また溶出曲線より単分散であることが確認された。また、このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーは検出下限界以下であった。
【0014】
実施例2
窒素雰囲気下、水分を除去したヘキサン300ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー30gを500mlのフラスコに加え、さらにエチレングリコールジメチルエーテル3ml、n−ブチルリチウム6.84mmolを加え、−20℃で20分重合を行い、メタノールを加えて反応を停止させた。次いで、水洗、溶媒留去することにより30gの白色固体生成物を得た。このものは、GPC測定により、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは5566で、分子量分布Mw/Mnは1.15と十分小さく、また溶出曲線より単分散であることが確認された。また、このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーは検出下限界以下であった。
【0015】
実施例3
窒素雰囲気下、水分を除去したヘキサン150ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー30gを500mlのフラスコに加え、さらにエチレングリコールジエチルエーテル1.5ml、sec−ブチルリチウム2.3mmolを加え、−20℃で15分重合を行い、メタノールを加えて反応を停止させた。次いで、水洗、溶媒留去することにより29gの白色固体生成物を得た。このものは、GPC測定により、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは18564で、分子量分布Mw/Mnは1.19と十分小さく、また溶出曲線より単分散であることが確認された。また、このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーは2.3%であった。
【0016】
実施例4
窒素雰囲気下、水分を除去したヘキサン300ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー30gを500mlのフラスコに加え、さらにエチレングリコールジブチルエーテル3ml、sec−ブチルリチウム7.5mmolを加え、−20℃で15分重合を行い、メタノールを加えて反応を停止させた。次いで、水洗、溶媒留去することにより30gの白色固体生成物を得た。このものは、GPC測定により、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは4632で、分子量分布Mw/Mnは1.13と十分小さく、また溶出曲線より単分散であることが確認された。また、このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーは検出下限界以下であった。
【0017】
比較例1
窒素雰囲気下、水分を除去したトルエン110ml、1,4−ジオキサン1.1ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー11.2gを500mlのフラスコに加え、さらにsec−ブチルリチウム1.6mmolを加え、−10℃で1時間重合を行い、メタノールを加え反応を停止させた。次いで水洗、溶媒留去したところ、8gの液状生成物が得られた。このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーが36%も含まれていた。
【0018】
比較例2
窒素雰囲気下、水分を除去したトルエン650ml、1,4−ジオキサン6.5ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー65gを1000mlのフラスコに加え、さらにsec−ブチルリチウム9.2mmolを加え、−10℃で7時間重合を行い、メタノールを加え反応を停止させた。次いで水洗、溶媒留去したところ、66gの生成物が得られた。このものは、GC分析より未反応のモノマーは2.9%と反応の進行は見られるものの、GPC測定により、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは9935で、分子量分布Mw/Mnは1.27と大きく、また溶出曲線より単分散でなく双峰性のピークであることが確認された。
【0019】
比較例3
窒素雰囲気下、水分を除去したトルエン350ml、1,4−ジオキサン3.5ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー35gを1000mlのフラスコに加え、さらにn−ブチルリチウム6.8mmolを加え、−10℃で1.5時間重合を行い、メタノールを加え反応を停止させた。次いで水洗、溶媒留去したところ、35gの液状生成物が得られた。このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーが21%も含まれていた。
【0020】
比較例4
窒素雰囲気下、水分を除去したトルエン170ml、sec−ブチルリチウム3mmolを500mlのフラスコに加え、−50℃まで冷却し、そこにp−t−ブトキシスチレンモノマー17gとテトラヒドロフラン1.7mlの混合溶液を10分で滴下し、さらに−50℃で2時間重合を行った。次いで、メタノールを加え反応を停止させた後、水洗、溶媒留去したところ、17gの液状生成物が得られた。このもの、GC分析を行った結果、未反応のモノマーが22%も含まれていた。
【0021】
比較例5
窒素雰囲気下、水分を除去したシクロヘキサン200ml、テトラヒドロフラン2ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー20gを500mlのフラスコに加え、さらにn−ブチルリチウム4.6mmolを加え、10℃で1時間重合を行い、メタノールで反応を停止させた。次いで水洗、溶媒留去したところ、19gの固体生成物が得られた。このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーが11%も含まれていた。また生成物は、そのGPC溶出曲線から、単分散ではないことが確認された。
【0022】
比較例6
窒素雰囲気下、水分を除去したトルエン200ml、ジエチルエーテル2ml、およびp−t−ブトキシスチレンモノマー20gを500mlのフラスコに加え、さらにn−ブチルリチウム4.6mmolを加え、−20℃で1時間重合を行い、メタノールで反応を停止させた。次いで水洗、溶媒留去したところ、14gの液状生成物が得られた。このもののGC分析を行った結果、未反応のモノマーが87%も含まれていた。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、重合溶媒として、(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類という特定のエーテル系化合物と炭化水素系溶媒との混合溶媒を用いることにより、目的とするポリ(p−t−ブトキシスチレン)を、比較的穏和な条件で効率良くなおかつ容易に製造し得る。
Claims (3)
- 重合開始剤として有機金属化合物を用いて、p−t−ブトキシスチレンを重合せしめることによるポリ(p−t−ブトキシスチレン)の製造法において、溶媒として、炭化水素系溶媒と(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類との混合溶媒を用いることを特徴とするポリ(p−t−ブトキシスチレン)の製造法。
- (ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類が下式
R1(OR2)nOR3
(式中、R1、R3は低級アルキル基を、R2は低級アルキレン基を、nは1〜5の数値を表す。)
で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の製造法。 - 混合溶媒が、(ポリ)アルキレングリコールのジエーテル類を炭化水素系溶媒に対し、0.05〜10重量%使用したものであることを特徴とする請求項1または2記載の製造法。
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