JP3728778B2 - エアバッグカバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ装置の折り畳まれたエアバッグを覆う自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、シートバック、ステアリングホイールのパッド等の熱可塑性樹脂製のエアバッグカバーとその製造方法に関し、特に、膨張時のエアバッグを突出させるために、多数の孔を断続的に設けて形成した破断予定部を配置させてなるエアバッグカバーとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、エアバッグ装置の折り畳まれたエアバッグを覆うエアバッグカバーでは、エアバッグの膨張時に、円滑に破断して、エアバッグを大きく突出させることができるように、破断予定部を配設させていた。
【0003】
この破断予定部としては、破断予定部に沿って、多数の孔を設けたものが知られている(実開昭51−1932号公報参照)。
【0004】
しかし、従来の孔を設けて構成する破断予定部では、表面側に、孔を設けた開口が表れるため、エアバッグカバーの意匠性が低下していた。
【0005】
本発明は、破断予定部として断続的に多数の孔を設けても、意匠性を向上させることができるエアバッグカバー及びエアバッグカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアバッグカバーは、エアバッグを覆うとともに、表面側に開口を有する多数の孔を断続的に設けて、前記エアバッグの膨張時に破断する破断予定部を形成している熱可塑性樹脂製のエアバッグカバーであって、
前記破断予定部の表面側を加熱処理して前記孔の周囲の材料を溶融させ、前記孔の表面側の開口の全面を完全に塞ぐことなく、前記孔の表面側の開口を塞ぐように、前記孔の周囲の材料を溶融させつつ拡散させることにより形成された凸部が、表面側の前記多数の孔の内周面に突出していることを特徴とする。
【0007】
前記エアバッグカバーとしては、表面側の装飾シートと、該装飾シートの裏面側に配置されて射出成形により形成される基材と、から構成し、
前記装飾シートを、表面側のスキン層と、該スキン層の裏面側に配置されて、前記基材の成形時に前記スキン層を保護するバリア層と、の少なくとも2層構造から構成することが望ましい。
【0008】
また、前記破断予定部を形成する前記孔としては、加熱処理前の幅を、表面側で0.5〜1.0mmとすることが望ましく、さらに、表面側の材料としては、軟化点を200℃以下とするものが望ましい。
【0009】
本発明に係るエアバッグカバーの製造方法は、熱可塑性樹脂製のエアバッグカバー素材に対して、エアバッグの膨張時に破断する破断予定部を形成して製造するエアバッグカバーの製造方法であって、
前記エアバッグカバー素材に対して、表面側に開口を有する多数の孔を断続的に設ける穿設工程と、
前記多数の孔の表面側を加熱して前記孔の周囲の材料を溶融させ、破断荷重の上昇を抑え可能に、前記孔の表面側の開口の全面を完全に塞ぐことなく、前記孔の表面側の開口を塞ぐように、前記孔の周囲の材料を溶融させつつ拡散させることにより、表面側の前記多数の孔の内周面に突出する凸部を形成して、前記各孔の開口を塞ぐ加熱処理工程と、
を経て製造することを特徴とする。前記穿設工程で穿設する孔の幅は、表面側で0.5〜1.0mmとすることが望ましい。
【0010】
【発明の効果】
本発明に係るエアバッグカバーでは、エアバッグの膨張時に破断する破断予定部が、多数の孔を断続的に設けて形成していても、破断予定部の表面側が、加熱処理されて、多数の孔の開口が、孔の内周面に形成される凸部により塞がれている。
【0011】
そのため、表面側には、破断予定部を構成する孔の開口が表れず、意匠性を向上させることができる。
【0012】
なお、この孔の開口が塞がれる態様は、孔の周囲の材料が若干溶融しつつ拡散されて、孔の内周面に凸部が形成されて孔を塞ぐ態様であって、孔の開口の全面を完全に塞ぐように溶融されるものでないことから、エアバッグ膨張時の破断予定部の破断荷重を上昇させるものではない。
【0013】
そして、エアバッグカバーとして、表面側の装飾シートと、装飾シートの裏面側に配置されて射出成形により形成される基材と、から構成し、装飾シートを、表面側のスキン層と、スキン層の裏面側に配置されて、基材の成形時にスキン層を保護するバリア層と、の少なくとも2層構造から構成する場合には、表面側に、装飾シートのスキン層が表れるため、一層、意匠性を向上させることができる。勿論、スキン層は、裏面側のバリア層により、基材の成形時の影響を受けず、所定の意匠性を確保することができる。
【0014】
また、破断予定部を形成する孔としては、加熱処理前の幅を、表面側で0.5〜1.0mmとすることが望ましい。幅が0.5mm未満であると、孔の開口が塞がれている・いないに拘らず、エアバッグの膨張時に破断する破断予定部の破断荷重を下げ難くなることから望ましくなく、幅が1.0mmを超えれば、加熱処理しても、孔の開口を塞ぎ難くなるからである。
【0015】
さらに、表面側の材料として、軟化点を200℃以下のものとすれば、加熱処理として、汎用の装置を利用して、120℃程度の熱風を吹き付けたり、雰囲気温度を120℃程度にした加熱炉に入れたりして、短時間に孔を塞ぐことができ、加熱処理を簡便に行なうことができる。
【0016】
本発明に係るエアバッグカバーの製造方法では、熱可塑性樹脂製のエアバッグカバー素材に穿設工程で穿設された多数の孔の開口が、加熱処理工程において、破断荷重の上昇を抑える状態で、塞がれるため、エアバッグカバーの意匠性を向上させることができる。
【0017】
そして、穿設工程で穿設する孔の幅は、上述したように、表面側で0.5〜1.0mmとすることが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
実施形態のエアバッグカバー10は、図1〜4に示すように、自動車のインストルメントパネル(以下、インパネと略す)8の一部として形成され、インパネ8は、インパネ本体9とエアバッグカバー10とで構成されている。
【0020】
インパネ本体9は、フィラー入りのポリプロピレン等の硬質合成樹脂から形成される基材9aと、後述する装飾シート12が延設されて基材9aを覆うように配置される装飾シート9bと、から構成されている。
【0021】
エアバッグカバー10は、エアバッグ装置1の折り畳まれたエアバッグ2の上方を覆う位置に配置され、基材11と、基材11の表面側に配置される装飾シート12と、から構成されている。
【0022】
なお、エアバッグ装置1について説明すると、エアバッグ装置1は、折り畳まれて収納される袋状のエアバッグ2と、エアバッグ2に膨張用のガスを供給するシリンダタイプのインフレーター3と、インフレーター3からのガスを拡散させてエアバッグ2内に流入させる筒状のディフューザー4と、エアバッグ2・インフレーター3・ディフューザー4の周囲を覆う箱形状のケース5と、を備えて構成されている。
【0023】
また、4aは、インフレーター3からのガスをエアバッグ2内へ拡散させて流入させるガス流通孔であり、4bは、ディフューザー4から複数突設されるボルトであり、これらのボルト4bは、ナット6止めすることにより、ケース5、エアバッグ2、ディフューザー4を一体化するとともに、車両のフレームから突設されるブラケット7にエアバッグ装置1を取付固定するものである。
【0024】
さらに、ケース5は、側壁部位が、インナーパネル5aとアウターパネル5bとの二重構造として構成され、アウターパネル5bには、切り起こされてインナーパネル5a側に延びる所定数の爪5cが形成されている。これらの爪5cは、後述するブラケット11aを係止するものである。
【0025】
エアバッグカバー10は、上方から見て「H」字形状に破断予定部16を配置させて、エアバッグ2の膨張時に、2つの扉部22・23を開かせるように構成されている。なお、破断予定部16の「H」字の上下端の間の位置が、扉部22・23が開く際の回転中心部位としてのヒンジ部24となる。
【0026】
そして、基材11は、ヒンジ部24の破断せずに曲がる性質を確保し、かつ、基材9aとの接合力を確保するため、基材9aと相溶性を有した熱可塑性エラストマーから形成されている。なお、実施形態の場合には、基材9aが、フィラー入りのポリプロピレンから形成されており、ポリプロピレンと相溶性を有する熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー若しくはスチレン系熱可塑性エラストマーが例示でき、実施形態の場合には、基材11がオレフィン系熱可塑性エラストマーから形成されている。
【0027】
また、基材11には、外周縁の裏面側に、四角筒形状のブラケット11aが突設され、ブラケット11aには、エアバッグ装置1のケース5の爪5cを挿入係止させる取付孔11bが形成されている。このブラケット11aは、破断予定部16や扉部22・23を、折り畳まれたエアバッグ2の上方位置に、精度良く配置させるように、エアバッグカバー10の部位をエアバッグ装置1のケース5と連結させるために形成されている。
【0028】
装飾シート12は、シボ模様等を有した表面側のスキン層13と、裏面側に配置されて基材11の射出成形時におけるスキン層13の保護用のバリア層14と、スキン層13とバリア層14との間に介在される発泡層15と、を備えて構成されている。なお、バリア層14は、基材11の成形時の発泡層15の保護の役目も果すこととなる。
【0029】
また、スキン層13は、後述する破断予定部16を構成する孔19の開口を、加熱処理時に、破断荷重を上昇させずに塞ぐことができるように、軟化点を200℃以下の軟質塩化ビニルやオレフィン系熱可塑性エラストマー等の軟質熱可塑性樹脂から形成されている。ちなみに、スキン層13として、軟化点を200℃以下のものとする理由は、加熱処理として、120℃程度の熱風を吹き付けたり、雰囲気温度を120℃程度にした加熱炉に入れたりして、短時間に孔を塞ぐことができ、加熱処理を簡便に行なうことができるからである。
【0030】
実施形態の場合、スキン層13は、軟化点を180℃とした軟質塩化ビニルから形成され、バリア層14は、基材11と同じオレフィン系熱可塑性エラストマーから形成され、発泡層15は、発泡ポリプロピレンから形成されている。また、スキン層13の肉厚は、0.6mm、バリア層14の肉厚は、1.0mm、発泡層15の肉厚は、3.0mmとしている。
【0031】
そして、破断予定部16の部位には、基材11に凹部17が形成され、バリア層14に切除部18が形成され、スキン層13には、破断予定部16に沿って配設される多数のピンホール状の孔19が形成され、スキン層13の表面側の孔19の開口は、図2に示すように、加熱処理で孔19の内周面に形成された凸部20によって、塞がれている。なお、切除部18は、基材11の凹部17が発泡層15の部位まで延設された凹部21の一部として形成されている。
【0032】
この凹部17・21は、破断予定部16の「H」字に沿って、連続的に形成しても良いし、断続的に形成しても良い。
【0033】
また、孔19としては、加熱処理前の内径を0.5〜1.0mm(実施形態では、0.75mm)とすることが望ましい。孔19の内径が0.5mm未満であると、孔19の開口が塞がれている・いないに拘らず、エアバッグ2の膨張時に破断する破断予定部16の破断荷重を下げ難くなることから望ましくなく、孔19の内径が1.0mmを超えれば、加熱処理しても、孔19の開口を塞ぎ難くなるからである。
【0034】
そして、孔19では、破断予定部16の「H」字に沿って形成される間隔を、2mmピッチ以下(実施形態では、1mmピッチ)とすることが望ましい。間隔が、2mmピッチを超えては、エアバッグカバー10の破断荷重が大きくなり、展開性能が低下する不都合が生ずるからである。
【0035】
なお、スキン層13に設ける孔19としては、ピンホール状のものでなく、スリットとする場合にも、その幅は、0.5〜1.0mmとすることが望ましい。幅が0.5mm未満であると、孔の開口が塞がれている・いないに拘らず、エアバッグ2の膨張時に破断する破断予定部16の破断荷重を下げ難くなることから望ましくなく、孔の幅が1.0mmを超えれば、加熱処理しても、孔の開口を塞ぎ難くなるからである。また、そのスリット状の孔のピッチにおいても、ピンホール状の孔と同様な理由により、2mm以下とすることが望ましい。
【0036】
このエアバッグカバー10及びインパネ8の製造について述べると、まず、装飾シート9bの部位も含めたシート状の装飾シート12を真空成形して、インパネ8に埋設させる所定形状に賦形させ、エアバッグカバー素材Mを製造する。ついで、図5のAに示すように、穿設工程において、エアバッグカバー素材Mに多数のピンPを差し通し、ピンホール状の孔19を形成したり、あるいは、肉厚の薄いカッタPを使用して、スリット状の孔を形成する。
【0037】
ついで、インパネ本体9の基材9aを射出成形する成形型に、所定形状に賦形させたエアバッグカバー素材M(装飾シート12)と装飾シート9をセットして、基材9aを形成する。
【0038】
その後、エアバッグカバー10の基材11の射出成形型にセットして、図5のBに示すように、基材11を形成する。
【0039】
ついで、離型後、図5のCに示すように、超音波ウエルダの加工ホーンHを利用して、凹部17・21を形成し、さらに、基材11のブラケット11aに取付孔11bを形成する。
【0040】
そして、図5のDに示すように、加熱処理工程において、エアバッグカバー素材M(装飾シート12)に対して、2〜3mmの上空から、120℃程度の熱風を5cm/secの速さで移動させつつ吹き付けたり、雰囲気温度を120℃程度にした加熱炉に1分程度入れたりして、孔19の表面側の開口を塞ぐ加熱処理を行なえば、インパネ8を製造することができる。
【0041】
なお、この加熱処理は、孔19の周囲の材料が若干溶融しつつ拡散されて、凸部20で孔19を塞ぐ態様であるが、エアバッグ2の膨張時における破断予定部16の破断荷重を上昇させないように、孔19の周囲の材料を十分に溶融させて孔19の開口の全面を完全に塞がないように、加熱方法に応じて、加熱温度や加熱時間を留意する必要がある。
【0042】
例えば、加熱炉に入れる場合には、孔19の内周面に形成される凸部20が、孔19の内周面で均一になり易いことから、突出高さtを孔19の内径dの30〜50%とした凸部20で孔19を塞ぐようにすれば良い。凸部20の突出高さtを孔19の内径dの30〜50%とする理由は、30%未満であれば、エアバッグカバー10の意匠性を向上させることができる程、孔19の開口を塞げないからであり、50%を超えれば、凸部20が孔19の内周面全周に形成される場合に、孔19の内周面の材料が完全に溶融して溶着し、破断荷重を上昇させる虞れが生ずるからである。
【0043】
また、熱風を一方向から吹き付けて加熱処理工程を行なう場合には、凸部20を孔19の内周面全周に均一に形成することが困難となり、このような場合には、部分的な凸部20が孔19の内径dの50%を超える場合でも、破断荷重を上昇させない場合がある。また、孔19の開口を、外観上、完全に塞いだように見えても、孔19の内周面の溶融した部位相互が溶着しておらず、破断荷重を上昇させない場合がある。
【0044】
そのため、加熱処理工程の加熱温度や加熱時間は、予め、試験を行なって、破断荷重を上昇させないように、加熱方法に応じて、適宜、設定すれば良い。
【0045】
なお、基材9a、基材11、及び、装飾シート9・12のバリア層14は、相互に同種若しくは相溶性を有しているため、別途、接着剤を使用しなくとも、強固に接合されることとなる。
【0046】
また、凹部17・21を形成する場合には、超音波ウエルダを利用する他、加熱したカッタを利用したり、高周波を利用したカッタで、凹部17・21を形成しても良い。
【0047】
そして、インパネ8を製造したならば、車両に装着した後、エアバッグ装置1と連結させる際には、各ボルト4bを利用して一体化したエアバッグ装置1のケース5におけるインナーパネル5aとアウターパネル5bとの間にブラケット11aを挿入して、各爪5cを取付孔11bに挿入係止させ、インパネ8にエアバッグ装置1を連結させるとともに、ブラケット7を各ボルト4bにナット6止めし、ブラケット7の他端を図示しないフレームに固定させれば、インパネ8と連結させてエアバッグ装置1を車両に装着することができる。なお、インパネ8を、車両に装着する際、所定の計器等を配設させることとなる。
【0048】
その後、所定時、インフレーター3からのガスが吐出されれば、そのガスがディフューザー4のガス流通孔4aを経てエアバッグ2内に流入され、エアバッグ2は、破断予定部16を破断させて、ヒンジ部24を回転中心として扉部22・23を開かせ、大きくインパネ8から突出することとなる。
【0049】
そして、実施形態のインパネ8では、エアバッグカバー10の表面側に、破断予定部16を構成する孔19の開口が表れず、意匠性を向上させることができる。
【0050】
ちなみに、実施形態の装飾シート12のテストピースを取り、孔19を塞がない場合の比較例との引張比較試験を行なった結果を表1に示す。なお、テストピースは、実施形態の軟質塩化ビニル(PVC)製のスキン層(厚さを0.6mm)と発泡ポリプロピレンの発泡層(厚さを3mm)との2層として、内径0.75mmの孔を1mmピッチで設けたもの、それらの孔の開口を加熱処理(スキン層に対して2〜3mmの上空から120℃程度の熱風を5cm/secの速さで移動させつつ吹き付けた)して塞いだもの、孔を設けないもの、さらに、それらのスキン層の材質をオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)製(軟化点180℃)としたもの、の6つをJIS2号ダンベルの形状にカットして準備し、オートグラフ引張試験機にて、200mm/min の速度で引っ張って行なった。
【0051】
【表1】
【0052】
なお、テストピース2の表面状態の顕微鏡写真(倍率10倍)を図6に示し、テストピース3の表面状態(倍率10倍)を図7に示す。
【0053】
この表から解るように、孔の開口を加熱処理して凸部で塞いでも、孔を設けただけの場合と、略同じ態様(荷重・伸び)で破断することが解り、この表1と図6・7とから解るように、本発明のエアバッグカバーが、意匠性を向上させても、破断荷重の上昇を防止できることが解る。
【0054】
また、実施形態のエアバッグカバー10では、表面側の装飾シート12と、装飾シート12の裏面側に配置されて射出成形により形成される基材11と、から構成され、装飾シート12が、表面側のスキン層13と、スキン層13の裏面側に配置されて、基材11の成形時にスキン層13を保護するバリア層14と、の少なくとも2層構造から構成されており、表面側に、装飾シート12のスキン層13が表れるため、一層、意匠性を向上させることができる。勿論、スキン層13は、裏面側のバリア層14により、基材11の成形時の影響を受けず、所定の意匠性を確保することができる。
【0055】
なお、実施形態のエアバッグカバー10では、装飾シート12が、スキン層13、バリア層14、及び、発泡層15を有した三層構造のものを示したが、触感が硬くなるものの、発泡層15を有しない二層構造の装飾シートを使用するようにしても良い。
【0056】
さらにまた、実施形態のエアバッグカバー10では、折り畳まれたエアバッグ2の上方に適確に破断予定部16や扉部22・23を配置させるために、エアバッグ装置1のケース5と連結させるブラケット11aを基材11に設けた場合を示したが、精度良く、エアバッグ2の上方にエアバッグカバー10が配置されれば、図8に示すエアバッグカバー30のように、ケース5に連結させるブラケットを設けなくとも良い。
【0057】
さらに、実施形態のエアバッグカバー10では、バリア層14に設ける切除部18を、基材11を射出成形して装飾シート12と一体的にした後に、基材11の凹部17を形成する際、加工治具Hを利用して、同時に加工する場合を示したが、装飾シート12と基材11とを一体的にする基材11の射出成形前に、予め、装飾シート12のバリア層14に切除部18を形成しておいても良く、その場合には、装飾シート12を所定形状に賦形した後に、孔19と切除部18と設け、その後に、基材11を成形し、基材11に凹部17を形成することから、図9に示すエアバッグカバー40のように、破断予定部16が、基材11に設けられた凹部17と、装飾シート12におけるバリア層14の切除部18を含めて発泡層15まで凹む凹部21と、スキン層13の孔19と、から構成されることとなる。ちなみに、バリア層14に切除部18を設けた後に、基材11を成形する場合には、発泡層15やスキン層13が、基材11の成形時の熱や射出圧で、損傷するのではと考えられるが、切除部18が、その幅を狭くしているため(0.5mm以下)、装飾シート12の外表面まで影響を与える程、発泡層15やスキン層13が損傷することはない。
【0058】
なお、孔19の開口を塞ぐ加熱処理工程は、基材11を成形した後に行なう。そして、孔19を設ける穿設工程は、切除部18を設けた前後・基材11の成形後等の加熱処理工程前であれば、どの段階で行なっても良い。この穿設工程の段階は、実施形態のエアバッグカバー10を製造する場合でも同様であり、加熱処理工程前であれば、どの段階で行なっても良い。
【0059】
また、基材11に設ける凹部17は、基材11を射出成形で形成した後に、カッタ等で形成する他、基材11の射出成形時に、型面によって、基材11の成形と同時に形成しても良い。
【0060】
さらにまた、各実施形態のエアバッグカバー10・30・40では、孔19を、発泡層15に設けた凹部21の部位まで貫通させた場合を示したが、図10に示すエアバッグカバー50のように、発泡層15の途中まで延設される孔19としても良い。ちなみに、発泡層15自体は、破断し易いため、孔19や凹部21の有無によって、装飾シート12の破断に影響を与えることはない。そして、孔19を設ける穿設工程や孔19の開口を塞ぐ加熱処理工程は、凹部21を設けた後に、行なっても良い。
【0061】
さらに、各実施形態では、エアバッグカバー10・30・40・50として、インパネ8に利用されるものを示したが、インパネ以外のエアバッグ装置のエアバッグを覆うように配置されるドアトリム・シートバック・ステアリングホイールのパッド等に本発明を利用することができる。これらの場合、軟化点を200℃以下の軟質塩化ビニルやオレフィン系熱可塑性エラストマー等の軟質熱可塑性樹脂から射出成形にてエアバッグカバー素材を形成し、その後、穿設工程、加熱処理工程を経て単層のエアバッグカバーを形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の要部を示す拡大断面図である。
【図2】同実施形態の要部のさらに拡大した断面図である。
【図3】同実施形態の斜視図である。
【図4】同実施形態の使用態様を示す断面図である。
【図5】同実施形態の破断予定部の加工工程を示す図である。
【図6】 引張比較試験のテストピースの拡大平面図であり、孔を設けたままの状態を示す顕微鏡写真である。
【図7】 引張比較試験のテストピースの拡大平面図であり、実施形態のように、加熱処理して孔の開口を塞いだ状態を示す顕微鏡写真である。
【図8】他の実施形態の使用態様を示す断面図である。
【図9】他の実施形態の拡大断面図である。
【図10】他の実施形態の拡大断面図である。
【符号の説明】
1…エアバッグ装置、
2…エアバッグ、
10・30・40・50…エアバッグカバー、
11…基材、
12…装飾シート、
13…スキン層、
14…バリア層、
16…破断予定部、
19…孔、
20…凸部、
M…エアバッグカバー素材。
Claims (6)
- エアバッグを覆うとともに、表面側に開口を有する多数の孔を断続的に設けて、前記エアバッグの膨張時に破断する破断予定部を形成している熱可塑性樹脂製のエアバッグカバーであって、
前記破断予定部の表面側を加熱処理して前記孔の周囲の材料を溶融させ、前記孔の表面側の開口の全面を完全に塞ぐことなく、前記孔の表面側の開口を塞ぐように、前記孔の周囲の材料を溶融させつつ拡散させることにより形成された凸部が、表面側の前記多数の孔の内周面に突出していることを特徴とするエアバッグカバー。 - 前記エアバッグカバーが、表面側の装飾シートと、該装飾シートの裏面側に配置されて射出成形により形成される基材と、から構成され、
前記装飾シートが、表面側のスキン層と、該スキン層の裏面側に配置されて、前記基材の成形時に前記スキン層を保護するバリア層と、の少なくとも2層構造から構成されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグカバー。 - 前記破断予定部を形成する前記孔が、加熱処理前の幅を、表面側で0.5〜1.0mmとしていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載のエアバッグカバー。
- 表面側の材料が、軟化点を200℃以下とするものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のエアバッグカバー。
- 熱可塑性樹脂製のエアバッグカバー素材に対して、エアバッグの膨張時に破断する破断予定部を形成して製造するエアバッグカバーの製造方法であって、
前記エアバッグカバー素材に対して、表面側に開口を有する多数の孔を断続的に設ける穿設工程と、
前記多数の孔の表面側を加熱して前記孔の周囲の材料を溶融させ、破断荷重の上昇を抑え可能に、前記孔の表面側の開口の全面を完全に塞ぐことなく、前記孔の表面側の開口を塞ぐように、前記孔の周囲の材料を溶融させつつ拡散させることにより、表面側の前記多数の孔の内周面に突出する凸部を形成して、前記各孔の開口を塞ぐ加熱処理工程と、
を経て製造することを特徴とするエアバッグカバーの製造方法。 - 前記穿設工程で穿設する孔の幅を、表面側で0.5〜1.0mmとしていることを特徴とする請求項5記載のエアバッグカバーの製造方法。
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