JP3726410B2 - 大豆たん白含有飲料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大豆たん白含有飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】
大豆は、良質のたん白質を多く含み、古くから優れたたん白質給源として利用されてきた。大豆たん白質を成分とする飲料として古くより豆乳が知られているが、たん白質含量は3〜4%であって、たん白質の補給の観点では充分とは言えない。そこでたん白質含有量が高い分離大豆たん白に水、糖類、油脂、乳化剤、香料等を混合、均質化した飲料も知られているが、分離大豆たん白を高濃度にすると、粘度が著しく上昇したり、ゲル化する等の難点や飲み辛いといったことから配合量に制限があった。その為に、特開昭60−70042号公報、特開平8−154593号公報では、たん白質分解酵素によって分解した分離大豆たん白を用いる方法が開示されている。しかしながら、高たん白濃度の為には、加水分解率を充分に上げる必要があった。
【0003】
ところで大豆たん白質は、高分子の複雑な高次構造を有する各種 のたん白質から構成されている。例えば超遠心の沈降係数の差で分画する方法では、所謂2S、7S、11S、15S等のたん白質に分けられ、これらのたん白質は物性においても異なる特徴を有している。そして脱脂大豆から水抽出した豆乳を酸沈殿して得られる分離大豆たん白では、主に7Sグロブリン(主としてβ−コングリシニン)と11Sグロブリン(主としてグリシニン)とから構成されており、各成分は固有の機能特性を有している。
【0004】
これら7Sグロブリン(主としてβ−コングリシニン)と11Sグロブリン(主としてグリシニン)を分画する試みは、過去多くの方法が提案されている。例えば、ウォルフ等、タン等の実験室的分画法の研究・報告例や特開昭48−56843号公報、特開昭49−31843号公報、特開昭51−86149号公報、特開昭55−124457号公報、特開昭55−153562号公報、特開昭56−64755号公報、特開昭57−132844号公報、特開昭58−36345号公報、特開昭61−187755号公報等が提案されている。
【0005】
一方、蛋白質分解酵素による酵素分解を利用した大豆たん白質の機能改良も多くの検討がなされている。例えば特公昭48−24262号公報、特公昭55−1028号公報、特開昭62−232341号公報、特公平4−14941号公報等であるが、これらは溶解性や非ゲル化性等の機能の改変に係わるものであって、大豆たん白質の特定成分のみを分取或いは特定成分のみを分解することは出来ていない。更には、大豆たん白質の特定成分或いは大豆たん白質の特定成分のみが分解され、高濃度でも飲みやすい大豆たん白質分解物を飲料の製造において使用されることはなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上の実情に鑑み、本発明は大豆たん白を高濃度に含有しても飲みやすい大豆たん白含有飲料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先に特願平8−74434で大豆たん白質の主要構成成分のβ−コングリシニンが選択的に分解された大豆たん白質分解物及びその製造方法を提供することを課題として、大豆たん白質にたん白質分解酵素を作用させて大豆たん白質中のβ−コングリシニンを選択的に分解させて得られるβ−コングリシニン低含量大豆たん白質分解物、及び大豆たん白質にたん白分解酵素を50〜90℃、好ましくは60〜80℃の下で作用させることによりβ−コングリシニン低含量大豆たん白質分解物を得ることを特徴とするβ−コングリシニン低含量大豆たん白質分解物の製造法を提案した。その具体条件として、低変性の大豆、脱脂大豆の水抽出液に塩酸等を加えpH4.5で酸沈澱カードを得てカセイソーダ等で中和した大豆たん白質の水性懸濁液に対し、60〜80℃の下でたん白質分解酵素(パパイン、ブロメライン、フィシン等)を作用させることによりβ−コングリシニン低含量大豆たん白質分解物を得ることを特徴とする製造方法であった。これによってグリシニン/β−コングリシニンの比率が1.5以上(望めば3.0以上)の大豆たん白質が得られることになり、食品分野への利用拡大の絵が描ける背景がある。
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、β−コングリシニン低含量大豆たん白質分解物を用いることで大豆たん白を高濃度に含有しても飲みやすい大豆たん白含有飲料が製造出来ることを見出し本発明を完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、大豆たん白中のグリシニン/β−コングリシニンの比率が1.5以上、好ましくは2.5以上より好ましくは3.0以上で、トリクロル酢酸可溶たん白質の全たん白質に対する割合(重量%)が5〜20%である大豆たん白質分解物を1〜20重量%、好ましくは1.5〜15%含有含有する大豆たん白含有飲料を提供するものである。ここで言う大豆たん白含有飲料とは、大豆たん白を利用し得る全ての飲料を指すが、とりわけ、スープやココアドリンク等の栄養ドリンク類、スポーツドリンク等の栄養補強飲料類、粉末タイプ飲料類等であり、β−コングリシニン低含量大豆たん白分解物を1〜20重量%含むものである。この様にして得られる飲料は栄養バランスが良く、苦みが少なく、粘度が低く、極めて飲みやすいものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に適用される大豆たん白質分解物は、グリシニン/βーコングリシニンの比率が1.5以上好ましくは2.5以上より好ましくは3.0以上、トリクロル酢酸可溶たん白質の全たん白質に対する割合(以下 T.C.A. 可溶 N.%と言う)が、5〜20%好ましくは6〜15%である。 T.C.A. 可溶 N.%は、0.22Mトリクロル酢酸可溶たん白質をケルダール窒素を測定する等の方法により、また、大豆たん白質中のグリシニン/β−コングリシニンの比率は、大豆たん白質をSDS−電気泳動法により各成分を分離し、クマシーブルー染色したバンドの濃淡をデンシトメーター等の分析機器で定量することが出来る。
【0011】
酵素分解に用いる大豆たん白は全脂豆乳、脱脂豆乳、濃縮大豆たん白、分離大豆たん白等であり、たん白変性を伴わない加工処理を行った大豆たん白加工品が好ましく、品種、産地等には限定されない。一般的には、n−ヘキサンを抽出溶剤として低温抽出処理を行った脱脂大豆、特にNSI(窒素可溶係数)が60以上、好ましくは80以上の低変性脱脂大豆が良く、このような低変性脱脂大豆から水抽出された脱脂豆乳や濃縮大豆たん白、分離大豆たん白にたん白質分解酵素を添加し、60〜80℃に於いて反応し、製造することができる。
【0012】
たん白質分解酵素は、60〜80℃に於いてたん白質分解活性を有する酵素剤であることが好ましく植物や動物臓器或いは微生物起源の市販酵素剤等その起源は特に限定されないが、パパイン、ブロメライン、フィシン等が好適に使用される。
【0013】
例えば低変性脱脂大豆を水抽出し、オカラと豆乳に分離し、豆乳中のたん白質を等電点沈殿させ、水不溶性画分(カ−ド)と水溶性画分(ホエー)に分離して酸沈殿カードを得て、該カードの水性懸濁液にたん白質分解酵素を該水性懸濁液の固形分に対して、0.001〜0.5%、好ましくは0.01〜0.2%の範囲で添加し、一般にpH=4〜9、好ましくは、pH=5〜8の範囲で、通常5分〜2時間、好ましくは、10〜30分程度酵素反応を実施すればよく、固定化酵素を充填したカラムに通液することで連続処理も可能である。そして、必要があれば、分解物に油脂及び/又は乳化剤を殺菌工程の前または殺菌工程の後、あるいは乾燥工程の後に添加することも任意である。
【0014】
本発明において、上記の大豆たん白質分解物を1〜20重量%、好ましくは1.5〜15重量%の配合が望ましい。従来、大豆たん白を飲料で高濃度に使用する場合粘度が大きく上昇するので、その大豆たん白の粘度を下げるために大豆たん白質の分解率を高めることによる、苦みやアミノ酸味の発生が避けられなかったが、本発明の大豆たん白質分解物では高濃度に含有しても厭味の無い、スッキリした飲みやすい大豆たん白含有飲料が出来る。また、実際の飲料の製造では、本発明の大豆たん白質分解物とともに、他のたん白素材を含むことができる他、油脂、糖類、水、香料、調味料等の公知の原料を用いることができる。これらを必要な配合で混合し、均質化、殺菌等公知の方法で製造することができ、そのまま液状で飲用に供せられるが、必要があれば公知の方法、例えばスプレードライヤーや凍結乾燥等によって乾燥し、粉末状や顆粒状等として、飲用時に適宜水戻しすることもできる。このようにして得られる飲料は、粘度が低く、極めて飲みやすいものである。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明の実施様態を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例にその技術範囲が限定されるものではない。
【0016】
実施例1
(大豆たん白質分解物の調製)
n−ヘキサンを抽出溶剤として用いて得られた低変性脱脂大豆(窒素可溶指数;NSI>80)10kgに10倍量の水を加え、室温、pH=7において1時間抽出後、遠心分離し、脱脂豆乳95kgを得た。この脱脂豆乳95kgに塩酸を加え、pH=4.5とし、遠心分離してホエー画分を除き酸沈殿カード10kgを得た。該酸沈殿カード10kgに加水し、カセイソーダで中和後、該水性懸濁液の温度を70℃に調整し、対乾物量当たり0.1%のパパイン(ナガセ生化学工業社製)を加え、30分酵素反応を行った。酵素反応物を140℃,15秒加熱殺菌した溶液を噴霧乾燥し、大豆たん白質分解物3.5kgを得た(グリシニン/β−コングリシニン比=7.9, T.C.A. 可溶 N.%=7)。
【0017】
比較例1
実施例1と同様に調製した酸沈殿カードに加水し、カセイソーダで中和後、該水懸濁液の温度を50℃に調整し、対乾物量当たり0.1%のプロチン(商品名,大和化成社製)を加え、30分酵素反応を行った。酵素反応物を140℃,15秒加熱殺菌した溶液を噴霧乾燥し、大豆たん白質分解物を調製した(グリシニン/β−コングリシニン比=1.3, T.C.A. 可溶 N.%=7)。
【0018】
実施例2及び比較例2
実施例1で調製した大豆たん白分解物及び比較例1で調製した大豆たん白分解物を用いて表1に示す組成でスープを調製した。
【0019】
【表1】
調製したスープの官能評価を熟練したパネラー5名で評価したところ、すべてのパネラーが、比較例2よりも実施例2のスープの方が粘度が低く飲み易いという評価をした。
【0020】
実施例3及び比較例3
実施例1で調製した大豆たん白分解物及び比較例1で調製した大豆たん白分解物を用いて表2に示す組成でココアドリンクを調製した。
【0021】
【表2】
調製したドリンクの官能評価を熟練したパネラー5名で評価した。結果、すべてのパネラーが実施例3のドリンクのほうが粘度が低く飲み易いという評価をした。
【0022】
実施例4及び比較例4
実施例1で調製した大豆たん白分解物及び比較例1で調製した大豆たん白分解物を用いて表3に示す組成でココアドリンクを調製した。
【0023】
【表3】
調製したドリンクの官能評価を熟練したパネラー5名で評価した。結果、全てのパネラーが実施例4のドリンクのほうが飲み易いという評価をした。
【0024】
実施例5及び比較例5
実施例1の調製工程でパパインの添加量を0.05%とした以外は実施例1と同様に調製した大豆たん白質分解物(グリシニン/β−コングリシニン=3.1, T.C.A. 可溶 N.%=5)を用いて、表2に示す組成でココアドリンクを調製しタ。同様に比較例1の調製工程でプロチンの添加量を0.05%とした以外は比較例1と同様に調製した大豆たん白質分解物(グリシニン/β−コングリシニン=1.3, T.C.A. 可溶 N.%=5)を用いて、表2に示す組成でココアドリンクを調製した。調製したドリンクの官能評価を熟練したパネラー5名で評価したところ、全てのパネラーが実施例5のドリンクのほうが粘度が低く飲み易いという評価をした。
【0025】
実施例6及び比較例6
実施例1の調製工程でパパインの添加量を0.2%とした以外は実施例1と同様に調製した大豆たん白質分解物(グリシニン/β−コングリシニン=5.3, T.C.A. 可溶 N.%=14)を用いて、表4に示す組成でココアドリンクを調製した。同様に比較例1の調製工程でプロチンの添加量を0.2%とした以外は比較例1と同様に調製した大豆たん白質分解物(グリシニン/β−コングリシニン=1.4, T.C.A. 可溶 N.%=22)を用いて、表4に示す組成でココアドリンクを調製した。
【0026】
【表4】
調製したドリンクの官能評価を熟練したパネラー5名で評価した。結果、実施例6の方が比較的粘度が低く、また比較例6で感じられる後味(苦みやアミノ酸味)が無く、総合的に実施例6のドリンクのほうが好ましいという評価をした。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、大豆たん白を高濃度に含有しても厭味の無い、スッキリした飲みやすい大豆たん白含有飲料の製造が可能になったものである。
Claims (2)
- 大豆たん白中のグリシニン/β−コングリシニンの比率が1.5以上で、トリクロル酢酸可溶たん白質の全たん白質に対する割合(重量%)が5〜20%である大豆たん白質分解物を含有する大豆たん白含有飲料。
- 大豆たん白質分解物が1〜20重量%含有する請求項1記載の大豆たん白含有飲料。
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JPH10262619A JPH10262619A (ja) | 1998-10-06 |
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JP07758497A Expired - Lifetime JP3726410B2 (ja) | 1997-03-28 | 1997-03-28 | 大豆たん白含有飲料 |
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-
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- 1997-03-28 JP JP07758497A patent/JP3726410B2/ja not_active Expired - Lifetime
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