JP3722373B2 - 沈降炭酸カルシウムとその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明はさらに、請求項4の前文に記載の上記沈降性炭酸カルシウムの製造方法に関するものである。
紙用の充填材およびコーティング剤としては微粉砕されたPCCが適している。その製造は種々の文献に記載されている。例えば、下記文献には、苛性化反応を用いて主として球形の粒径が0.2〜0.4マイクロメーターである微細なPCC粒子を製造する方法が記載されている。
製紙分野では結晶凝集によってPCCの保持を改善することができる。下記文献には石灰消化用の水に少量の砂糖を添加することによって微細な顔料を得る方法が記載されている。
製紙分野でのPCCの一つの問題点は、抄紙機循環水のような酸性条件下(炭酸より強い酸が常に存在する)ではPCCが反応性に富み、分解し易いことにある。この問題を解決するために、PCC粒子を例えばリン酸および/またはその誘導体と所定温度で反応させることが知られている。これに関する発明は例えば下記文献に記載されている。
既に述べたように、特許文献1(国際特許WO 96/23728号)に記載された方法によって粒度がほぼ同じ微細なPCC粒子を得ることができるが、本発明者は、驚くべきことに、これらの粒子を互いに結合させて多核凝集塊(polynuclear aggromerates)またはブドウの房(botryoidal bunches)構造を規則的に形成することができ、それによって反応懸濁液からの分離が極めて容易になるということを発見した。
本発明の炭酸カルシウムの特徴は請求項1の特徴部分に記載されている。
本発明の製造方法の特徴は請求項4の特徴部分に記載されている。
さらに、本発明の房構造は内部反射面が多く、それによって顔料や充填剤の乳白度が向上する。ここで、ポリスチレンの小さな気泡ビーズは粒子内部に微小反射面を有するので、紙用塗料として従来から提案されてきたことが思い出される。(か焼)カオリンおよび構造顔料はこれと同じ現象を利用している。構造顔料はその表面に別の粒度の同じ材料または異種材料が取り付けられた顔料である。このようにして光の拡散反射を高めることによって反射面に光線が衝突する機会を多くすることができる。
先ず、沈降炭酸カルシウムの製造法を参照して本発明の理論を説明する。
本発明の目的は70%程度までの高い固体含有率および高い粘度値(約200cP)の状態で各粒子が互いに分離した状態にある例えば炭酸カルシウムを含む固体混合物(分散液)を得ることにある。この目的のためにはさらに、粒子間の引力および反発力を制御し、粒子間の毛細管力も無くす。
炭酸カルシウムの場合、PCCのゼータ電位はpHの関数であり、−25〜−1mVの範囲で変動する。ゼータ電位の最低値(約−1〜−5mV)はpH8.2〜8.4にあり、従って、粒子間の距離を増加する力も最低値になる。
[図1]から分かるように、pHが8〜10.5のときにPCCの粒度は0.5〜0.75μm(500〜750nm)になる。pH値がこの範囲を超えると、PCCの粒度はpH11で約1.75μm(1,750nm)まで急激に増加した後、約100〜200nmまで減少し、それより高いpH値では粒度は約50nmまでさらに減少する。
本発明で得られる新規生成物の典型的な粒径は約50nmで、これはナノ凝結体とよぶことができる。この凝結体はpHを調節することによってさらに結合でき、例えばpHを6.5〜9.5の値に調節することによって100〜1,000nmのさらに大きな凝集塊を形成することができる。
炭酸化/苛性化反応(carbonisation/causticizing reactions)は高エネルギー強度を与える衝撃ミキサーで実施するのが好ましい。衝撃ミキサーは特許文献1(国際特許WO96/23728号)に記載されている。
すなわち、例えば気相中で水酸化カルシウムを含む液体ミストを1,000 kW/m3以上のエネルギー強度を持つ乱流の二酸化炭素ガスと混合することによって炭酸化を実施する。この反応ではガス、液体および固体粒子が強力な乱流および高エネルギー強度下で互いに同時に反応する。ガス流は液体および粒子を吸収して乱流三相混合物を形成する。この方法では三相が同時に存在するので「三相」法ともよばれる。
この粒子は他の顔料、例えばカオリン、白亜、タルカムまたは二酸化チタン等を被覆するのに使用することもできる。この被覆は、被覆すべき例えば水性スラリー状の顔料を酸化カルシウムおよび二酸化炭素と一緒に本発明の装置に装入し、必要であれば炭酸または他の酸(例えばリン酸)を用いてpHを適切な値に調節することによって実施できる([図3]参照)。
Ca(OH)2混合物とNa2CO3溶液とを例えば後で説明する衝撃ミキサー(特許文献1の国際特許WO 96/23728号を参照)を用いて均質に混合する。これによって主として拡散領域内でCa(OH)2粒子の周りにCa2+イオン霧が形成される。
溶液中ではNa2CO3はNa+およびCo3 2-イオンとして存在する。Ca2+はCo3 2-と結合してCaCO3分子を形成し、この分子は8H2O分子と結合し、ゲル状になる。さらにCaCO3分子同士が結合して種結晶を形成し、水が排出され、混合物が可塑化し始める。この時点での温度が42℃以下であれば、種結晶は方解石状であり、温度が42℃を超えていれば種結晶はあられ石状である。
あられ石結晶の比重は2.71で、方解石結晶のそれは2.93である。CaCO3ナノ結晶塊は組織化されていない構造の種結晶を含み、その比重は組織化された構造結晶の比重より小さいはずである。すなわち、この比重は、42℃を超える温度では2.71より小さく、42℃を下回る温度では2.93より大きい。
pH値の調節はPCCの製造時に直接実施でき、例えばPCCスラリーを反応器から取り出す時に実施できるが、濾過時に実施するのが有利である。
乱流振幅に関するKolmogorovの理論によれば、乱流環境における有効乱流直径等の長さは次の式で表される:
上記式から、Lは乱流直径とみなされる距離で、乱流によって発生する剪断力は直径より小さい物体または部品を破壊または変形することはできないことは明らかである。Lは局部混合効果E(kW/m3)の1/4乗に反比例する。
図4は上記の凝集塊の電子顕微鏡写真である。
本発明の有利な実施態様では、互いに結合した粒子を箱型フィルタ中で適切な酸を含む洗浄水(例えば二酸化炭素を洗浄水に溶解させる)で洗浄することによってフィルタケークのpH値を好ましくは8.4±0.5まで減少させ、Z電位を−1〜−2mVに低下させて、粒子同士がファンデルワールス力によって結合するようにする。二酸化炭素はフィルタケークのpH値を下げると同時に、濾過側の圧力を低下させる。
凝集塊をリン酸で表面処理することによって凝集塊上にリン酸カルシウム層を形成できることがわかっている。ミキサー乱流の作用によってリン酸カルシウム分子は表面の所にいる。
実施例1
平均粒度が0.1ミクロンの沈降PCCをCO2ガスで飽和した洗浄水を用いて箱型(box)フィルタで二酸化炭素で処理して、初期pH値10.5を8.2へ調節した。このpHで安定化された固形分が50%のスラリーを強力ミキサー(砕解機型)にかける。このミキサーの周速は49m/秒程度、互いに反対方向に回転するリング同士の周速差は96m/秒程度にした。互いに反対方向に回転するミキサーリング間の距離は、0.005mであった。装置内での滞留時間はリング間でわずか<0.1秒にすぎなかった。温度は室温すなわち約20℃であった。
濾過速度および洗浄水の浸透速度の透過速度で計算した濾過性は上記の処理なしでフィルタケークを通した時に比べて二倍から三倍になった。
平均直径が0.8〜1.2ミクロンのMHPCC粒子が得られた個々の構成粒子の直径は約0.1ミクロンであった。
希釈したリン酸で処理することによってpHを8.2に調節してMHPCCを形成し、得られたMHPCCをpHが4.8の製紙機械の循環水と接触させた。反応時間は2時間とし、混合物は温度35℃で軽く撹拌した。
生成物を乾燥し、その重量を初期重量と比較した。重量が約6〜7%減少していることがわかった。生成物の粒度および形状を電子顕微鏡で観測したが、変化はなかった。
Claims (1)
- 炭酸化法によって二酸化炭素ガスを用いて石灰からの沈降で沈降炭酸カルシウム粒子を製造する方法であって、
気相中で水酸化カルシウムを含む液体ミストを1,000 kW/m 3 以上のエネルギー強度を持つ乱流の二酸化炭素ガスと混合することによって炭酸化を実施することを特徴とする、球形の炭酸カルシウム粒子が多数互いに結合した多核の球形をした凝集塊の形をした沈降炭酸カルシウム粒子の製造方法。
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