JP3717563B2 - 車両用パワーシートのリクライニング構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートクッションに対するシートバックの傾斜角を駆動モータの駆動力により適宜変更できるようにした車両用パワーシートのリクライニング構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用パワーシートの従来のリクライニング構造は、略平板状のシートクッションブラケットに揺動自在に取り付けられたシートバックフレームにセクタギヤを固定するとともに、このセクタギヤを駆動モータの駆動力により回動するウォームと噛合せしめ、駆動モータを適宜作動してセクタギヤを傾斜させることによりシートバックの傾斜角を変更している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セクタギヤは通常シートクッションブラケットに片持ち状に支持されており、ヒンジピンに捩り力が加わることから、ヒンジ部に十分な強度を付与する必要があった。また、噛合部のバックラッシに起因するシートバックの振動あるいは車両衝突等によりシートに大荷重が加わった場合等も考慮した設計が要求されていた。
【0004】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、セクタギヤのヒンジ部の強度を増大するとともに、シートバックの振動を防止し、かつ、車両衝突時に加えられる大荷重をも考慮した車両用パワーシートのリクライニング構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延在し車体に摺動自在に取り付けられた一対のアッパーチャネルと、該アッパーチャネルに揺動自在に取り付けられたシートバックフレームとを有し、シートバックフレームの傾斜角を駆動モータの駆動力により変更できるようにした車両用パワーシートのリクライニング構造において、上記アッパーチャネルを上方が開口した略U字状断面を有する部材で構成し、上記シートバックフレームに固定されたセクタギヤの下部と、該セクタギヤと噛合するラックと、該ラックを貫通した状態で噛合するスライドスクリュを上記アッパーチャネルの内部に収容し、上記駆動モータを作動させることによりスライドスクリュを介して上記ラックを前後方向に移動させて上記シートバックフレームの傾斜角を変更するとともに、上記シートバックフレームに加わる荷重を上記アッパーチャネルの対向する一対の側壁で支承するようにしたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、上記セクタギヤを、弾性体を有する円筒状カラー部材を介して揺動自在に支承することにより上記シートバックフレームに加わる荷重のエネルギ吸収を行う一方、上記弾性体の一部が収縮した状態で上記円筒状カラーを上記アッパーチャネルの上記側壁に取り付け、上記セクタギヤを上記ラックに対して付勢することにより上記シートバックフレームの振動を防止したことを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項3に記載の発明は、上記セクタギヤの歯部を除く部分及び上記シートバックフレームの下端を金属製袋状部材で囲繞した状態で固定することにより、上記セクタギヤ及び上記シートバックフレームを補強したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、上記ラックの底面と上記アッパーチャネルの底壁上面とをわずかに離間せしめ、車両衝突等による上記シートバックフレームに加わる大荷重を上記ラック底面の上記アッパーチャネル底壁上面との当接により受けるようにしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明にかかるリクライニング構造を有する車両用パワーシートのシートフレームを示しており、シートクッションフレーム2と、このシートクッションフレーム2に揺動自在に取り付けられたシートバックフレーム4とから成る。
【0010】
シートクッションフレーム2は、図2に示されるようにアッパーチャネル6を有しており、このアッパーチャネル6は車体に固定されたロワチャネル8に摺動自在に取り付けられ、アッパーチャネル6、ロワチャネル8等によりシートスライダが構成されている。
【0011】
アッパーチャネル6は、車両前後方向に延びるとともに、上方が開口した略U字状断面を有し、一対の対向する側壁6a,6bと、底壁6cと、底壁6cより垂下せしめられロワチャネル8と摺動自在に係合する係合部6dとを備えている。このアッパーチャネル6は、例えばアルミニウム等の金属を押し出し成形することにより製作される。
【0012】
図2及び図3に示されるように、アッパーチャネル6の内部には、シートバックフレーム4に固定されたセクタギヤ10が収容されるとともに、防振カラー12を介してボルト14により揺動自在に取り付けられている。防振カラー12は、大径円筒状部材12aと、小径円筒状部材12bと、大径円筒状部材12aと小径円筒状部材12bとの間に挟持されたラバー等の円筒状弾性体12cから成り、大径円筒状部材12aより小径円筒状部材12bの長さを長く設定することにより小径円筒状部材12bの端面をアッパーチャネル6の対向する側壁6a,6bの内面に当接させている。また、大径円筒状部材12aの一端部にはフランジが形成されており、このフランジとアッパーチャネル6の側壁6bに突設せしめられた円筒状サポート部材16との間にセクタギヤ10を介装せしめることによりその車両幅方向の移動を規制している。
【0013】
セクタギヤ10の歯部を除く部分及びシートバックフレームの下端は、例えばアルミニウム等の袋状ヒンジブラケット18で囲繞されており、複数のピン20で保持、固定することにより、その強度を増大している。
【0014】
さらに、アッパーチャネル6の内部下方には、ラック22と、ラック22を貫通するスライドスクリュ24が螺合した状態で収容されており、スライドスクリュ24は、前後に所定距離離間しアッパーチャネル6の底部に保持された一対の軸受26,28により回動自在に支承されている。スライドスクリュ24の後端はトランスミッション(図示せず)に連結され、トランスミッションがさらに駆動モータ(図示せず)に連結されており、駆動モータの駆動力がトランスミッションを介してスライドスクリュ24に伝達される。
【0015】
なお、防振カラー12は弾性体12cの下部が収縮するように取り付けられており、この弾性体下部の収縮でセクタギヤ10をラック22に向かって付勢することにより、互いに噛合するセクタギヤ10とラック22間のバックラッシを除去し、シートバックの振動を防止するとともに、弾性体12cを有する防振カラー12を設けたことで軽荷重のエネルギ吸収を行っている。
【0016】
また、車両衝突等によりラック22に下向きの大荷重が加わらない限り、ラック22の下面は、図4に示されるように、アッパーチャネル6の底壁6c上面と距離Lだけ離間しており、ラック22の前後移動は円滑に行われる。
【0017】
一方、車体に固定されたロワチャネル8は、内部に空所を有する略矩形断面を有し、その上部壁にはアッパーチャネル6の係合部6dが嵌入するスリット8aが形成されるとともに、内部空所上方の両隅には一対の樹脂製摺動部材30,30が取り付けられている。また、内部空所の底部には、アッパーチャネル6の係合部6dの底面と当接する複数のローラ32が回動自在に設けられている。
【0018】
上記リクライニング構造の作用を以下説明する。
セクタギヤ10とラック22は常時噛合しており、スイッチ(図示せず)を操作して駆動モータを作動させないかぎり、シートバックの傾斜角は保持される。シートバックの傾斜角を変更したい場合には、スイッチを操作して駆動モータを作動させると、トランスミッションを介して駆動モータの駆動力がスライドスクリュ24に伝達され、スライドスクリュ24と噛合するラック22が車両前後方向に摺動する。その結果、ラック22と噛合するセクタギヤ10が揺動することになるので、セクタギヤ10が固定されたシートバックフレーム4も揺動し、シートバックの傾斜角が変更される。
【0019】
任意の位置でスイッチ操作を解除すると駆動モータが停止し、シートバックはその位置で保持される。
【0020】
車両衝突等によりシートバックに大荷重が加えられると、セクタギヤ10を介してラック22に下向きの力が加えられ、スライドスクリュ24が下方向に撓むが、ラック22底面はアッパーチャネル6の底壁6cと距離Lしか離間していないので、ラック22底面がアッパーチャネル6の底壁6c上面と当接し、車両衝突による大荷重は強度の高いアッパーチャネル6で受けることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明のうちで請求項1に記載の発明によれば、アッパーチャネルを上方が開口した略U字状断面を有する部材で構成し、シートバックフレームに固定されたセクタギヤの下部と、該セクタギヤと噛合するラックと、該ラックを貫通した状態で噛合するスライドスクリュをアッパーチャネルの内部に収容し、駆動モータを作動させることによりスライドスクリュを介してラックを前後方向に移動させてシートバックフレームの傾斜角を変更するとともに、シートバックフレームに加わる荷重をアッパーチャネルの対向する一対の側壁で支承するようにしたので、支承部が強度の増大した両持ちヒンジとなり、従来のように捩り力が加わることもない。
【0022】
また、請求項2に記載の発明によれば、セクタギヤを、弾性体を有する円筒状カラー部材(防振カラー)を介して揺動自在に支承するようにしたので、シートバックフレームに加わる荷重のエネルギを弾性体で吸収できる。また、弾性体の一部(下部)が収縮した状態で円筒状カラーをアッパーチャネルの側壁に取り付け、セクタギヤをラックに対して付勢するようにしたので、ラックのバックラッシが防止され、ひいては、シートバックフレームの振動が防止される。
【0023】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、セクタギヤの歯部を除く部分及びシートバックフレームの下端を金属製袋状部材で囲繞した状態で固定したので、セクタギヤ及びシートバックフレームの強度が増大している。
【0024】
また、請求項4に記載の発明によれば、ラックの底面とアッパーチャネルの底壁上面とをわずかに離間せしめたので、シートバックの傾斜角変更時、ラックは円滑に前後移動する一方、車両衝突等によりシートバックフレームに大荷重が加わった場合には、スライドスクリュが下方に橈み、ラック底面がアッパーチャネル底壁上面と当接するので、いかなる大荷重にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるリクライニング構造を有するシートフレームの斜視図である。
【図2】 図1における線II−IIに沿った断面図である。
【図3】 本発明にかかるリクライニング構造の部分分解斜視図である。
【図4】 図3に示されるリクライニング構造の正面図である。
【符号の説明】
2 シートクッションフレーム
4 シートバックフレーム
6 アッパーチャネル
8 ロワチャネル
10 セクタギヤ
12 防振カラー
12c 弾性体
18 ヒンジブラケット
22 ラック
24 スライドスクリュ
26,28 軸受
Claims (4)
- 車両前後方向に延在し車体に摺動自在に取り付けられた一対のアッパーチャネルと、該アッパーチャネルに揺動自在に取り付けられたシートバックフレームとを有し、シートバックフレームの傾斜角を駆動モータの駆動力により変更できるようにした車両用パワーシートのリクライニング構造において、
上記アッパーチャネルを上方が開口した略U字状断面を有する部材で構成し、上記シートバックフレームに固定されたセクタギヤの下部と、該セクタギヤと噛合するラックと、該ラックを貫通した状態で噛合するスライドスクリュを上記アッパーチャネルの内部に収容し、上記駆動モータを作動させることによりスライドスクリュを介して上記ラックを前後方向に移動させて上記シートバックフレームの傾斜角を変更するとともに、上記シートバックフレームに加わる荷重を上記アッパーチャネルの対向する一対の側壁で支承するようにしたことを特徴とする車両用パワーシートのリクライニング構造。 - 上記セクタギヤを、弾性体を有する円筒状カラー部材を介して揺動自在に支承することにより上記シートバックフレームに加わる荷重のエネルギ吸収を行う一方、上記弾性体の一部が収縮した状態で上記円筒状カラーを上記アッパーチャネルの上記側壁に取り付け、上記セクタギヤを上記ラックに対して付勢することにより上記シートバックフレームの振動を防止した請求項1に記載の車両用パワーシートのリクライニング構造。
- 上記セクタギヤの歯部を除く部分及び上記シートバックフレームの下端を金属製袋状部材で囲繞した状態で固定することにより、上記セクタギヤ及び上記シートバックフレームを補強した請求項1に記載の車両用パワーシートのリクライニング構造。
- 上記ラックの底面と上記アッパーチャネルの底壁上面とをわずかに離間せしめ、車両衝突等による上記シートバックフレームに加わる大荷重を上記ラック底面の上記アッパーチャネル底壁上面との当接により受けるようにした請求項1に記載の車両用パワーシートのリクライニング構造。
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