以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車両用自動開閉装置を備えた車両の一部を示す側面図であり、図2は図1に示す車両用自動開閉装置の詳細を示す正面図である。また、図3は図2におけるA−A線に沿う断面図である。
図1に示すように、車両11(後側の一部のみを示す。)の後端部には開閉部材としてのバックドア12が設けられている。このバックドア12はルーフ13の後端部に取り付けられたヒンジ14を介して車両11に装着されており、ヒンジ14の開閉中心軸を中心として図中実線で示す全閉位置と図中2点鎖線で示す全開位置との間の約90度の範囲で上下方向に開閉自在となっている。
なお、車両11とバックドア12との間にバックドア12の開閉動作を補助するガスステーを装着してもよい。
この車両11には車両用自動開閉装置15(以下、開閉装置15とする。)が設けられており、バックドア12はこの車両用自動開閉装置15により自動的に開閉されるようになっている。この車両用自動開閉装置15は車両11のリヤピラーの内部に配置されるアクチュエータユニット16と、アクチュエータユニット16の出力をバックドア12に伝達する連結ロッド17とを備えている。
図2に示すように、連結ロッド17は鋼材で形成されたロッド部17aと、それぞれロッド部17aの両端に設けられた3次元的に作動可能な継手部17b,17c(ピロボール)とを備えており、一方の継手部17cは連結ブラケット18を介してバックドア12に回動自在に連結されている。そして、連結ロッド17の他方の継手部17bを車両11に対して略上下方向に往復運動させることにより、連結ロッド17の往復運動に連動させてバックドア12を開閉させることができるようになっている。
一方、アクチュエータユニット16はベース21を有しており、このベース21において車両11に固定されている。ベース21には駆動源としての電動モータ22と減速機23とを備えた駆動ユニット24が取り付けられており、電動モータ22は図示しない制御装置に接続されてこの制御装置により作動制御されるようになっている。この制御装置としてはCPUやメモリ等を備えたマイクロコンピュータが用いられており、車室内等に設けられた図示しないバックドア開閉スイッチからの指令信号にしたがって電動モータ22に制御電流を出力するようになっている。そして、電動モータ22は制御装置から供給される制御電流により正逆方向に作動するようになっている。
図3に示すように、減速機23は電動モータ22に固定されるギヤケース25の内部に減速機構26が収容された構造となっており、図示する場合には減速機構26としてウォーム27とウォームホイル28から成るウォームギヤ機構が用いられている。ウォーム27は電動モータ22の回転軸22aの外周に形成され、ウォームホイル28はウォーム27と噛み合うとともにギヤケース25に回転自在に支持された出力軸31に固定されており、電動モータ22が作動すると、その回転軸22aの回転はウォーム27とウォームホイル28とにより所定の回転数にまで減速されて出力軸31に伝達されるようになっている。また、出力軸31の先端部はギヤケース25から突出しており、その先端部には出力ギヤ32が固定されている。つまり、電動モータ22が作動すると、その回転は出力ギヤ32の回転として出力される。
また、ギヤケース25の内部には摩擦式の電磁クラッチ33が設けられており、この電磁クラッチ33により減速機構26と出力軸31との間の動力伝達を断続することができるようになっている。これにより、バックドア12が手動で開閉操作される際には電磁クラッチ33を動力遮断状態に切り替えて、バックドア12を手動で開閉操作する際の操作力を低減させることができる。
図3に示すように、ベース21には3つの軸支持部34,35,36が設けられており、駆動ユニット24の出力軸31は軸支持部34に装着された軸受け37により回転自在に支持されている。また、一対の軸支持部35,36に装着された軸受け38,39にはピニオン軸41が回転自在に支持されており、このピニオン軸41と出力軸31との間隔は一対の軸支持部34,36により設定されるようになっている。また、ベース21にはギヤ収容部42が設けられており、このギヤ収容部42の内部にはピニオン軸41に固定される減速ギヤ43が収容されている。減速ギヤ43は駆動ユニット24の出力ギヤ32に噛み合わされており、出力ギヤ32を介して電動モータ22の回転が伝達されるようになっている。これにより、ピニオン軸41は電動モータ22により回転駆動されるようになっている。
このアクチュエータユニット16には歯車伝動機構44が設けられており、電動モータ22により回転駆動されるピニオン軸41の回転運動はこの歯車伝動機構44により連結ロッド17の往復運動に変換されるようになっている。
図4は図2に示す歯車伝動機構の詳細を示す斜視図であり、図5は図4に示すスライドブロックの詳細を示す斜視図である。
図4に示すように、この歯車伝動機構44はラック45とピニオン46とを備えた所謂ラックアンドピニオン式となっている。
ピニオン46はピニオン軸41に固定されており、ピニオン軸41とともに電動モータ22により回転駆動されるようになっている。一方、ラック45は鋼板により略長方形状に形成されており、その一方の側部には軸方向に並ぶラック歯45aが設けられている。そして、ラック45のラック歯45aとピニオン46とは互いに噛み合わされており、ピニオン46が電動モータ22により正逆回転されると、その回転がラック45に伝達されてラック45が往復動するようになっている。
また、ラック45の車両上方側の一端側にはスライド部としてのスライドブロック47が設けられており、一方、ベース21には案内部材としてのガイドレール48が固定されている。ラック45はスライドブロック47において案内部材としてのガイドレール48に係合し、スライドブロック47においてガイドレール48に直線往復動自在に支持されて、その移動方向を規制されている。つまり、スライドブロック47とガイドレール48とはスライド機構49を構成しており、ラック45はこのスライド機構49によりベース21に対して直線往復動自在に支持されるようになっている。
図5に示すように、スライドブロック47は摺動溝47aを備えた断面略C字形のブロック状に形成されており、その軸方向の長さ寸法はラック45の全長に対して十分に短く形成されている。そして、スライドブロック47はラック45の軸方向の一端側が一対のボルト51により固定されている。また、図2に示すように、スライドブロック47は連結ブラケット52を介して連結ロッド17の他方の継手部17bと連結されており、これによりスライドブロック47つまりラック45はバックドア12と連結されてバックドア12とともに往復動するようになっている。
一方、ガイドレール48は軸方向を車両11の略上下方向に向けて図示しないボルトによりベースに固定されている。そして、スライドブロック47は摺動溝47aにおいてガイドレール48の外側に装着されてガイドレール48に沿って移動自在に案内されるようになっている。つまり、このスライド機構49はラック45のスライドブロック47がガイドレール48の外側に装着される所謂アウターラック式となっている。
このような構造により、電動モータ22により回転駆動されるピニオン46の回転がラック45の直線往復運動に変換され、その直線往復運動が連結ロッド17を介してバックドア12に伝達されてバックドア12の自動開閉動作が行われる。この場合、ラック45は、図2中実線で示す閉側ストローク端と図2中に2点鎖線で示す開側ストローク端の間で、車両11に対して略上下方向に直線往復動自在となっている。
図6は図5に示すスライドブロックの分解斜視図であり、図7(a),(b)は、それぞれ図6に示す摺動部材の組付け方法を示す断面図である。
スライドブロック47の摺動溝47aには一対の摺動部材53a,53bが装着されており、これらの摺動部材53a,53bによりスライドブロック47とガイドレール48との間の摺動摩擦が低減されるようになっている。なお、これらの摺動部材摺動部材53a,53bは形状が左右対称である以外は同一の構成や機能を有するものであるので、以下では摺動部材53aについてのみ説明する。
摺動部材53aは銅板の表面に薄い樹脂板が貼り付けられた板材をプレス加工により所定の形状に打ち抜き、これを所定の形状に成形して形成されており、それぞれ摺動溝47aに配置される半円筒状に形成された基部54と、基部54と一体に設けられた略長方形状の係合部55とを有している。基部54の内側つまりガイドレール48と接触する側の面は樹脂板が貼り付けられた低摩擦面となっており、基部54はこの低摩擦面においてガイドレール48に摺接するようになっている。一方、スライドブロック47には摺動溝47aの略中央部に開口する矩形の係合孔56が形成されており、この係合孔56の軸方向に垂直な両側面56aの間隔は摺動部材53aに設けられた係合部55の軸方向の幅寸法と略同一とされている。
この摺動部材53aは、基部54がスライドブロック47の摺動溝47aに配置されるとともに係合部55を基部54に対して折り曲げて係合孔56に係合させることによりスライドブロック47に装着されるようになっている。つまり、摺動部材53aをスライドブロック47に装着する際には、まず、図7(a)に示すように、摺動溝47a内に基部54が配置される。このとき、基部54は自然状態では摺動溝47aの湾曲に対して若干開き気味に湾曲する形状に形成されており、摺動溝47aに配置されたときには摺動溝47aに合わせて閉じる方向に弾性変形して摺動溝47aに仮保持されるようになっている。つまり、係合部55を折り曲げる前においても、摺動部材53aは基部54が弾性変形することにより生じる弾性力により摺動溝47aに仮保持された状態となり、その組付け作業性が向上される。
基部54が摺動溝47aに仮保持された状態における係合部55はスライドブロック47に形成された係合孔56を塞ぐように配置されている。そして、この状態から係合部55をプレス機等によりガイドレール48の軸方向に沿って係合孔56に向けて折り曲げることにより、図7(b)に示すように、係合部55はその軸方向の両端面55aにおいて係合孔56に係合する。これにより、基部54はスライドブロック47に対する軸方向の移動が規制され、摺動部材53aはスライドブロック47に係止されることになる。なお、スライドブロック47をガイドレール48に装着したときには、摺動部材53aはスライドブロック47とガイドレール48との間に挟み込まれるので、スライドブロック47に対する係止方向はその軸方向のみとなっている。
この場合、ガイドレール48との摩擦により基部54に加わる軸方向の荷重は係合部55においてスライドブロック47に支持されることになるが、係合部55はその両端面55aにおいて係合孔56の側面56aに係合するので、基部54に軸方向の大きな荷重が加えられた場合であっても、その荷重を容易に支持することができる。つまり、基部54に加えられる荷重は係合部55に対して曲げ力ではなく剪断力として働くことになり、また、その剪断力は基部54と係合部55との境界部に沿う方向に加わるので、板材で形成された係合部55であっても容易に剪断されることはなく、軸方向の荷重に対する耐性は高くなる。したがって、摺動部材53aがガイドレール48に対して大きな抵抗を生じることにより基部54に大きな抜け方向の荷重が加えられた場合であっても、基部54のスライドブロック47からのずれや、離脱を防止することができる。
このように、この開閉装置15では、スライドブロック47に装着される摺動部材53a,53bにスライドブロック47に係合する係合部55を設けたので、摺動部材53a,53bのスライドブロック47に対する軸方向のずれや、軸方向への抜けを防止することができる。
また、この開閉装置15では、摺動部材53a,53bに設けられる係合部55をガイドレール48の軸方向に沿って折り曲げてスライドブロック47に設けられた係合孔56に係合させるようにしたので、係合部55の軸方向荷重に対する耐性や強度を向上させることができる。
また、摺動部材53a,53bは板材をプレス加工により所定の形状に打ち抜いて形成されるので、係合部55の軸方向の幅寸法精度は高くなり、係合部55を両端面55aにおいて隙間無く係合孔56の両側面56aに係合させることができる。これにより、基部54のスライドブロック47に対する軸方向のガタつきをなくすことができ、基部54のガタつきによる異音や基部54の異常摩耗等を低減することができる。
図4に示すように、この開閉装置15にはラック45の噛み合い方向の移動を規制する保持部材61が設けられており、ラック45とピニオン46との間隔はこの保持部材61により所定の範囲内に保持されるようになっている。
保持部材61はガイドレール48の一端側に形成された貫通孔48aに挿通されてピニオン軸41に対向する保持軸62と、保持軸62の外側に装着されるローラ63とを有しており、ローラ63は保持軸62に対して回転自在となっている。一方、ラック45には軸方向に延びる溝部64が形成されており、前述のローラ63はこの溝部64に配置されている。また、この溝部64のラック歯45aの背面側となる面は保持面65となっており、前述のローラ63はこの保持面65に接触可能となっている。したがって、ラック歯45aとピニオン46との間の噛み合い反力や外部からの振動等によりラック45にピニオン軸41から離れる方向の荷重が加えられた場合であっても、その荷重はローラ63つまり保持軸62により支持されてラック45のピニオン軸41から離れる方向への移動は規制される。つまり、ラック45は保持面65に接触するローラ63と保持軸62とから成る保持部材61によりピニオン46との間隔が保持されており、これによりラック45のラック歯45aとピニオン46との噛み合いは適正な状態に保持される。
前述のように、ガイドレール48に直線往復動自在に支持されるスライドブロック47はラック45の全長に対して十分に短い長さ寸法に形成されているので、ラック45のスライドブロック47が設けられたのとは反対側の端部にピニオン軸41から離れる方向の荷重が加えられた際には、その荷重をスライドブロック47により支持することは困難である。しかし、この開閉装置15ではラック45は保持部材61によりピニオン46から離れる方向の移動つまりピニオン46との間隔が保持されるので、スライドブロック47の軸方向寸法をラック45の全長に対して十分に短く形成した場合であっても、ラック45とピニオン46との噛み合いを保証することができる。したがって、この開閉装置15では、スライドブロック47の軸方向の長さ寸法を短くして、この開閉装置15を小型、軽量化することができる。
また、スライドブロック47の軸方向の長さが短くなることにより、それに合わせてガイドレール48の軸方向長さを短くすることができる。つまり、スライドブロック47の作動範囲はその軸方向の長さの短縮に合わせて短くなるので、これを支持するガイドレール48の軸方向の長さも短縮することができる。これにより、この開閉装置15をさらに小型、軽量化することができる。
このように、この開閉装置15では、ラック45はスライドブロック47においてガイドレール48に直線往復動自在に支持されるとともに保持部材61によりピニオン46との間隔が保持されるので、スライドブロック47やガイドレール48の長さ寸法を短くして、この開閉装置15を小型、軽量化することができる。また、ラック45とピニオン46との間隔は保持部材61により噛み合いに適した間隔に保持されるので、ラック45のラック歯45aとピニオン46との噛み合いを安定させて作動音や振動を低減することができる。
また、スライドブロック47やラック45、ガイドレール48、保持部材61等の小変更により、この開閉装置15を様々な仕様に容易に設定することができるので、この開閉装置15の汎用性を向上させることができる。
図3に示すように、この開閉装置15には開閉動作の停止時におけるラック45の振動を低減するために振動吸収機構71が設けられている。
図8は、図3に示す振動吸収機構の詳細を示す分解斜視図であり、図9は図8に示す振動吸収機構によるラックの付勢方向を示す説明図である。図8に示すように、この振動吸収機構71は、支持片72と噛み合い方向押圧部材としてのロワーラックガイド73と噛み合い方向弾性部材としてのクッションゴム74とを有している。
支持片72は保持軸62に固定される固定部72aと、固定部72aからピニオン軸41とは反対側に向けて突出する支持柱部72bとを有しており、支持柱部72bには円環状に形成されたクッションゴム74が装着されている。また、支持片72はガイドレール48と接しており、保持軸62に対する軸方向の移動が規制された状態となっている。
一方、ロワーラックガイド73は支持片72を覆うようにラック45とピニオン46との噛み合い方向に移動自在となって保持軸62に装着されるとともにガイドレール48に摺動自在に支持されて保持軸62に対する軸方向の移動が規制されている。また、ロワーラックガイド73にはクッションゴム74と接する壁部73aが設けられており、クッションゴム74は支持片72つまり保持軸62と壁部73aとの間に弾性変形した状態で配置されるようになっている。これにより、ロワーラックガイド73はクッションゴム74の弾性力によりピニオン46から離れる方向に付勢されるようになっている。
また、図9に示すように、ロワーラックガイド73は突起部73bにおいてラック45の保持面65と対向する側の押圧面75に接合しており、ロワーラックガイド73に加えられるクッションゴム74の弾性力はこの突起部73bを介してラック45に伝達されるようになっている。これにより、ラック45はクッションゴム74の弾性力により常にその保持面65がローラ63に接する方向に付勢されている。したがって、ラック45に形成される保持面65のピニオン軸41に対する間隔がその公差等を考慮して狭く設定された場合であっても、ラック45は常にローラ63に接することになる。これにより、作動停止時にラック45に振動が加えられた場合であっても、ラック45がピニオン46とローラ63との間で振動して生じる騒音は低減される。
このように、この開閉装置15では、ラック45はクッションゴム74の弾性力により常にその保持面65がローラ63に接する方向に付勢されているので、ラック45がピニオン46とローラ63との間で振動して生じる騒音を低減することができる。
また、ラック45はクッションゴム74の弾性力により常にその保持面65がローラ63に接する方向に付勢されるので、ラック45とピニオン46との間隔は常に一定に保たれることになる。したがって、ラック45のラック歯45aとピニオン46との噛み合いが安定し、ラック歯45aとピニオン46の噛み合い部分が生じる作動音や振動を低減することができる。
さらに、ラック45に設けられる溝部64の幅寸法をローラ63に対して十分に広く設定することができるので、加工誤差等により溝部64の幅が狭くなり過ぎてローラ63の作動不良が生じる等の問題を発生させることがない。したがって、溝部64の加工を容易になり、また、この開閉装置15の品質を向上させることができる。
さらに、この開閉装置15では、振動吸収機構71をラック45の幅寸法の範囲内で構成することができる、この開閉装置15を小型化することができる。特に、この開閉装置15を車両11のルーフ内に搭載する場合には、天地方向の寸法が縮小されることにより車室の天井高を高くすることができる。
図1、図3から解るように、ベース21には保持軸62を覆うように支持カバー76が固定されており、保持軸62とピニオン軸41の一端は、この支持カバー76に形成された支持孔76a,76bに係合している。つまり、保持軸62とピニオン軸41との間隔は支持カバー76により所定の間隔に保持されるようになっている。
また、ラック45と支持カバー76との間には、振動吸収機構71を構成する軸方向押圧部材としてのアッパーラックガイド81と軸方向弾性部材としてのウェーブワッシャ82が配置されている。アッパーラックガイド81は保持軸62に軸方向に移動自在に装着されており、その一方の端面はラック45の軸方向端面に接触するようになっている。一方、ウェーブワッシャ82はアッパーラックガイド81と支持カバー76との間に弾性変形した状態で装着されており、アッパーラックガイド81はウェーブワッシャ82の弾性力によりラック45に向けて常に付勢されるようになっている。このとき、ラック45はベース21側を向く端面においてロワーラックガイド73に接触してベース21側への移動は規制された状態となっているので、ウェーブワッシャ82の弾性変形によりラック45がベース21に向けて不要に移動することはない。このような構成により、ラック45に生じる保持軸62の軸方向に向く振動はウェーブワッシャ82により吸収されて低減されることになる。
このように、この開閉装置15では、ラック45はウェーブワッシャ82の弾性力により軸方向に常に付勢されているので、作動停止時にラック45に振動が加えられた場合であっても、ラック45の振動を低減することができる。
図10は図2に示すベースの詳細を示す分解斜視図であり、図11はベースにおける各位置決め部の位置関係を示す説明図である。
このアクチュエータユニット16に用いられるベース21は、内部に減速ギヤ43を収容するために、ピニオン軸41の軸方向に2分割可能に形成されている。つまり、このベース21は互いに組み付けられる第1のベース体83と第2のベース体84から成っており、減速ギヤ43は第1と第2のベース体83,84の間に形成されるギヤ収容部42に収容され、ガイドレール48は第1のベース体83に固定されるようになっている。なお、これらのベース体83,84の組付けには、それぞれ各ベース体83,84に設けられた複数の組付け孔に挿通される図示しないボルトやナット等の締結部材が用いられる。
第1のベース体83には前述の軸支持部35が設けられており、この軸支持部35の軸心を通る直線上であって軸支持部35つまりピニオン軸41を挟んだ両側において一対の位置決めボス85,86が設けられている。これらの位置決めボス85,86は、それぞれ第2のベース体84に向けて突出する円柱状に形成されている。
一方、第2のベース体84には前述の軸支持部34,36が設けられており、つまり、ピニオン軸41と出力軸31との間隔は第2のベース体84に設けられた軸支持部34,36により設定されるようになっている。これは、第1と第2のベース体83,84は鋼板をプレス加工することにより形成されており、その際に各軸支持部34〜36が形成されるので、第2のベース体84に設けられた軸支持部34,36においてピニオン軸41、出力軸31を支持することにより、ピニオン軸41と出力軸31の間隔を精度よく設定することができる。したがって、ピニオン軸41に固定される減速ギヤ43と出力軸31に固定される出力ギヤ32の噛み合い位置の精度を向上させて、作動音や振動等を低減することができる。
また、第2のベース体84には、一方の軸支持部36の軸心を通る直線上であって軸支持部36を挟んだ両側において一対の位置決め孔87,88が設けられている。これらの位置決め孔87,88は、それぞれ第1のベース体83に設けられた位置決めボス85,86に対応する位置に形成されている。また、一方の位置決め孔87は位置決めボス85の外径と同等の内径を有する円形に形成され、他方の位置決め孔88は軸支持部36を通る直線に対して直角方向の幅寸法が位置決めボス86の外径と同等に形成されるとともに直線方向の寸法が位置決めボス86の外径より大きい長孔に形成されている。
第1と第2のベース体83,84を組み付ける際には、これらの位置決めボス85,86をそれぞれ位置決め孔87,88に係合させることにより、その組付けの位置決めが行われるようになっている。つまり、これらの位置決めボス85と位置決め孔87および位置決めボス86と位置決め孔88は、それぞれベース体位置決め部91,92を構成しており、第1と第2のベース体83,84を互いに組み付ける際の位置決めはベース体位置決め部91,92により行われる。これにより、第1と第2のベース体83,84の組付け精度が向上し、それぞれのベース体83,84に設けられる軸支持部35,36の軸心を一致させることができる。したがって、第1と第2のベース体83,84に軸受け38,39を介して回転自在に支持されるピニオン軸41は正規の位置に対して傾斜することがない。また、位置決め孔88は長孔に形成されているので、各位置決めボス85,86の位置が寸法公差程度にずれた場合であっても、第1と第2のベース体83,84の組付けは可能となる。
このように、この開閉装置15では、互いに組み付けられる第1と第2のベース体83,84にベース体位置決め部91,92を設けたので、第1と第2のベース体83,84の組付け精度を向上させることができる。
また、ガイドレール48に設けられた貫通孔48aに挿通される保持軸62はガイドレール48から突出して第1のベース体83に設けられたレール位置決め孔93に係合している。つまり、保持軸62は第1のベース体83に対するガイドレール48の位置決めを行う所謂ノックピンとしての機能を有しており、つまり保持軸62はレール位置決め孔93とによりレール位置決め部94を構成している。また、ガイドレール48には貫通孔48aに対して軸方向に所定の距離離れて貫通孔48bが設けられており、この貫通孔48bには第1のベース体83に設けられたレール位置決めボス95が係合されるようになっている。このように、ガイドレール48は保持軸62がレール位置決め孔93に係合するとともに、レール位置決めボス95が貫通孔48bに係合することにより、第1のベース体83に対して位置決めされるようになっている。
図11に示すように、この開閉装置15では、第1のベース体83に設けられるレール位置決め孔93とガイドレール48の貫通孔48aに挿通される保持軸62の軸心つまりレール位置決め部94の軸心は、第1と第2のベース体83,84の組付け位置を位置決めするベース体位置決め部91,92と軸支持部35,36に収容される軸受け38,39に支持されるピニオン軸41の軸心とを通る直線L上に配置されている。つまり、ピニオン軸41の軸心とベース体位置決め部91,92とレール位置決め部94はピニオン軸41の軸方向から見て一直線上に配置されている。また、ガイドレール48の軸方向はこの直線Lに対して直角に設定されており、ラック45とピニオン46との噛み合い方向が直線Lと一致するようになっている。
これにより、ピニオン軸41の軸心と各位置決め部91,92,94との位置関係は、ピニオン軸41の軸心を基準とした同一方向への寸法設定により決まることになるので、各位置決め部91,92,94の位置を設定する際に生じる寸法公差等を最小限として、各位置決め部91,92,94の位置を正確に設定することができる。また、ガイドレール48の軸方向は直線Lに対して直角に設定されているので、レール位置決めボス95の位置を寸法公差が最小限となるように正確に設定することができる。したがって、各ベース体83,84の組付け精度や第1のベース体83に対するガイドレール48の組付け精度を向上させることができる。
このように、この開閉装置15では、ピニオン軸41の軸心とベース体位置決め部91,92とレール位置決め部94とを一直線上に配置し、また、ガイドレール48の軸方向をピニオン軸41の軸心とベース体位置決め部91,92とレール位置決め部94とを通る直線Lに対して直角に設定したので、各部材の組付け精度を向上させることができる。また、各部材の組付け精度が向上することにより、ピニオン軸41の垂直度やラック45とピニオン46との間隔等の寸法精度を向上させて、この開閉装置15の作動を円滑にすることができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においては、開閉部材は車両11の後端部に上下方向に開閉自在に装着されたバックドア12とされているが、これに限らず、横開きのドアなど他の開閉部材としてもよい。
また、前記実施の形態においては、アクチュエータユニット16は車両11のピラーの内部に固定されているが、これに限らず、車両11のルーフ13の内部に配置するようにしてもよい。この場合、ラック45は車両11に対して略前後方向に往復動自在に設けられる。
さらに、前記実施の形態においては、摺動部材としては、係合部55がスライドブロック47に設けられる係合孔56に係合するものに限らず、たとえば、図12に示すように、基部54に対して軸方向に突出する爪形状に形成され、スライドブロック47の軸方向端面に向けて折り曲げられる爪形状の係合部55を有するものとしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、摺動部材として一対の摺動部材53a,53bが用いられているが、これに限らず、たとえば図13に示すように、一対の係合部55を有するとともに、これらの係合部55を基準として対称形状に形成された一体型の摺動部材96を用いるようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、ピニオン軸41と対向する1つの保持部材61が設けられているが、これに限らず、たとえば図14に示すように、保持面65に沿って所定の間隔を空けて並ぶ複数の保持部材61を設けるようにしてもよい。図示する場合にはピニオン軸41に対して対称となる位置に一対の保持部材61が設けられており、この場合、保持部材61によるラック45の支持強度が増して、ラック45のこじれ等を抑制することができる。なお、図示する場合では、ラック45には図示しないピン部材が設けられており、このピン部材がガイドレール48に設けられた溝97に係合することにより、ラック45はガイドレール48に案内されるようになっている。
なお、図12,13,14においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号が付してある。
さらに、ガイドレールの軸方向は直線Lに対して概ね直角とされていればよく、また、各位置決め部91,92,94とピニオン軸41の軸心も、概ね一直線上にあればよい。