JP3710566B2 - 電子打楽器装置および電子打楽器装置における打撃検出装置 - Google Patents
電子打楽器装置および電子打楽器装置における打撃検出装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子打楽器装置および電子打楽器装置における打撃検出装置に関し、さらに詳細には、演奏者がスティックなどで打撃することにより楽音を発音するアコースティック・ドラムのような打楽器を模擬した電子打楽器装置および電子打楽器装置における打撃検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アコースティック・ドラムを模擬した電子ドラムのような電子打楽器装置においては、打撃を検出するための装置として、一般に打撃パッドと称される打撃面を備えた打撃検出装置が用いられている。
【0003】
こうした打撃検出装置としては、例えば、特開平8−44375号公報に開示された打撃検出装置が知られている。この特開平8−44375号公報に開示された打撃検出装置は、板状のケースを軟質高分子材料により被覆することにより打撃面が形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、板状のケースを軟質高分子材料により被覆することにより打撃面が形成された打撃検出装置においては、その打撃面を打撃した際の反発感が強く、感触のよい打撃感を得ることができないという問題点があるとともに、打撃面を打撃した際の打撃音が大きく、その打撃音が演奏の邪魔になる恐れがあるという問題点があった。
【0005】
一方、アコースティック・ドラムのヘッドに打撃検出用のセンサーを設けたものを、打撃検出装置として用いることが提案されている。
【0006】
しかしながら、このようにアコースティック・ドラムのヘッドを打撃検出装置として代用した場合には、アコースティック・ドラムのヘッドをそのまま使用するため打撃感は優れているが、打撃音が大きくなってしまうため演奏の邪魔になるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記したような従来の技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、打撃感に優れ、かつ打撃音が極めて小さい電子打楽器装置における打撃検出装置を提供しようとするものである。
【0008】
また、本発明は、打撃検出装置のどの位置を打撃したかを検出し、その検出結果に基づいて音色を制御するようにして、アコースティック・ドラムと同様に打撃位置による音色変化を得ることができるようにした電子打楽器装置を提供しようとするものである。
【0009】
また、本発明は、単にスティックにより打撃検出装置を打撃する演奏法だけでなく、ブラシにより打撃検出装置を擦ったり、叩いたりするような演奏法を実現することができるようにした電子打楽器装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による電子打楽器装置における打撃検出装置は、第1の網と第2の網とを互いの織り目方向が斜交するように積層して周縁部で固着した網状素材により打撃面が構成されるヘッドと、上記ヘッドの中心位置に接触し、上記ヘッドへの打撃を電気信号として検出する打撃検出手段とを有するようにしたものである。
【0011】
また、本発明による電子打楽器装置は、打撃面を有するヘッドへの打撃を電気信号として検出する打撃検出手段と、上記打撃検出手段によって検出された電気信号を入力し、楽音形成のための制御情報を生成する楽音制御情報生成手段と、上記楽音制御情報生成手段から制御情報を入力し、楽音信号を形成する楽音信号形成手段とを有する電子打楽器装置において、上記楽音制御情報生成手段は、上記打撃検出手段によって検出された電気信号の立ち上がり部の半波のゼロクロス間の長さに基づいて上記ヘッドの打撃位置を検出する打撃位置検出手段を有し、上記打撃位置検出手段からの検出結果に応じた制御情報を生成するようにしたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面に基づいて、本発明による電子打楽器装置および電子打楽器装置における打撃検出装置の実施の形態を詳細に説明するものとする。
【0015】
図1は、本発明による電子打楽器装置の実施の形態の一例を示すブロック構成図であり、この電子打楽器装置は、後述するように打撃面を網状素材により構成されたヘッド12への打撃を検出するヘッド・センサー14およびリム16への打撃を検出するリム・ショット・センサー18が設けられた打撃検出装置10と、ヘッド・センサー14とリム・ショット・センサー18とから出力された検出信号を時分割でアナログ/デジタル(A/D)変換して後述するDSP22へ入力するA/D変換器20と、A/D変換器20から入力されたヘッド・センサー14の検出信号からヘッド12への打撃とその強さ、打撃位置ならびにブラシでの演奏を検出するとともにA/D変換器20から入力されたリム・ショット・センサー18の検出信号からリム16への打撃とその強さを検出して後述するCPU24へ供給するDSP22と、DSP22からの出力を後述する音源IC34で必要な演奏情報に変換して音源IC34に供給するとともに、後述する操作子群30の操作を検出し、かつDSP22の制御などを行うCPU24と、CPU24が実行するためのプログラムなどが格納されたリード・オンリ・メモリ(ROM)26と、CPU24によるプログラムの実行に必要なワーキング・エリアとしてのランダム・アクセス・メモリ(RAM)28と、動作モードとして通常演奏モード、ブラシ演奏モードあるいはチューニング・モードを設定するためのモード選択操作子や音色選択あるいはレベル設定などを行うための操作子などを含む操作子群30と、操作子群30の操作子で選択した動作モード、音色選択に必要な音色ならびにチューニング・モードのときのチューニングの状態を表示する表示装置32と、CPU24からの演奏情報に基づいて後述する波形メモリ36を読み出してデジタル楽音信号を形成して後述するデジタル/アナログ(D/A)変換器38へ出力する音源IC34と、楽音信号の形成のためのサンプリング波形データを記憶した波形メモリ36と、音源IC34から供給されるデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換してアンプやスピーカーからなるサウンド・システムへ出力するD/A変換器38とを有している。
【0016】
次に、図2に示す打撃検出装置10の斜視図ならびに図3に示す図2のIII−III線による断面図を参照しながら、打撃検出装置10の構成について説明する。
【0017】
打撃検出装置10は円筒状の胴部50を備えており、この胴部50の外周部には、ネジ溝(図示せず)を形成されたネジ孔(図示せず)を備えた係合部52が所定の間隔を開けて径方向に突出形成されている。そして、この係合部52には、係合部52に形成されたネジ溝とネジ結合するネジ山を形成された係合ピン54がネジ込まれ、係合ピン54を介して、ヘッド12とリム16とが胴部50に取り付けられる。なお、係合ピン54には、リム16を係止するための係止突部54aが形成されている。
【0018】
ここで、ヘッド12は、図4および図5に示すように、網状素材として縦横の繊維が直交する平織りにより織られた第1の網56と第2の網58とを、互いの織り目方向が斜交するように積層して枠60に接着して形成されている。ここで、第1の網56と第2の網58との織り目方向が斜交するとは、図6に示すように、縦横の繊維が互いに90度で直交する第1の網56と第2の網58とを重ね合わせた際に、その重ね合わせた隣り合う第1の網56と第2の網58との繊維が、互いに90度より小さい角度αで交わることを意味するものである。
【0019】
また、リム16は金属材料を一体成形することにより形成され、外周部に係合ピン54が貫入可能な孔部64が穿設された縁部66と、この縁部66の内周側に延設されて立ち上がり形成されたリム打撃部68とより構成されている。そして、リム打撃部68の上部は、ゴムやスポンジなどの弾性材料により形成されたカバー部材70により被覆されている。
【0020】
上記した構成のヘッド12とリム16とを胴部50に取り付けるには、初めに胴部50にヘッド12を被せ、さらにヘッド12の上からリム16を被せ、リム16の孔部64と胴部50の係合部52のネジ孔とが連通するように位置調整する。そして、係合ピン54をリム16の孔部64と胴部50の係合部52のネジ孔に挿通し、係合ピン54のネジ山と胴部50の係合部52のネジ溝とネジ結合することにより、係合ピン54の係止突部54aにより胴部50にヘッド12とリム16とを押し付けるようにして取り付けるものである。
【0021】
即ち、係合ピン54を胴部50の係合部52のネジ孔にネジ込むに従って、係止突部54aによりリム16の縁部66が図3において下方に押され、縁部66を介してヘッド12の枠60も下方に押される。このため、胴部50の上端部50aにより下方への移動を規制された第1の網56と第2の網58とが所定の張力をもって胴部50上に張設されることになる。従って、係合ピン54を胴部50の係合部52のネジ孔へネジ込む量を調整することにより、第1の網56と第2の網58との張力を任意に制御することができる。
【0022】
また、胴部50内には、胴部50の軸中心位置を交差するようにしてヘッド・センサー支持部材72が配設されている。そして、このヘッド・センサー支持部材72の上面の中心部位には、後述するクッション性両面テープ78により第2の網58と接触するようにしてヘッド・センサー14が貼着されている。即ち、ヘッド・センサー14は、ヘッド12の第1の網56と第2の網58とよりなる網状素材の中心下面に接触して配置されることになる。
【0023】
図7(a)(b)(c)に示すように、ヘッド・センサー14は、出力信号線74を備えた円板状の圧電素子76を備えており、この圧電素子76の下面にはクッション性両面テープ78が貼付されている。このクッション性両面テープ78の径は、圧電素子76のノード径と一致するように設定されている。
【0024】
また、圧電素子76の上面にはゴムやスポンジなどの弾性材により形成された円錐台形状のクッション部材80が貼付されている。クッション部材80は、圧電素子76の径よりも大径に形成された底面を備えるとともに、上方に向かうに従って先細りの形状となり、細径の先端部において第2の網58と接触している。
【0025】
さらに、胴部50の内側上部のリム打撃部68の近傍には、クッション性両面テープ78によりリム・ショット・センサー18が貼着されている。このリム・ショット・センサー18は、出力信号線74を備えた円板状の圧電素子76を備えており、この圧電素子76の下面にクッション性両面テープ78が貼付されていて、クッション性両面テープ78の径は、圧電素子76のノード径と一致するように設定されている。
【0026】
即ち、この実施の態様においては、ヘッド・センサー14からクッション部材80を取り外したものを、リム・ショット・センサー18として用いており、部品の効率化を図っている。
【0027】
以上の構成において、スティック100によりヘッド12を打撃した場合(図8参照)には、ヘッド・センサー14がその打撃を検出し、スティック100によりリム16を打撃した場合(図9参照:なお、図9においては、スティック100によりヘッド12とリム16との双方を打撃している。)には、リム・ショット・センサー18がその打撃を検出し、ブラシ102によりヘッド12を擦ったり叩いたりした場合(図10参照)には、ヘッド・センサー14がブラシ102のヘッド12への接触を検出する。
【0028】
ここで、スティック100によりヘッド12を打撃した際には、第1の網56および第2の網58とよりなる網状素材の弾性のために、アコースティック・ドラムのヘッドを打撃した際の打撃感に近似した、極めて良好な打撃感を得ることができる。
【0029】
しかも、網状素材として縦横の繊維が直交する平織りにより織られた第1の網56と第2の網58とを互いの織り目方向が斜交するように積層しているので、網状素材の全面にわたって張力が均一化されるため、打撃位置の違いによる打感のばらつきが少なく、ヘッド・センサー12からの出力波形も処理しやすいものとなる。
【0030】
また、上記したようにヘッド12を打撃する演奏は、ヘッド12の第1の網56および第2の網58の中心下面に接触したヘッド・センサー14からの出力波形で制御するものであるが、ヘッド・センサー14がヘッド12の第1の網56および第2の網58の中心に位置するため、ヘッド12の打撃位置の違いによる出力波形の変化が同心円状となって、アコースティック・ドラムを模擬した音色変化が表現しやすくなる。
【0031】
さらに、ヘッド・センサー14のクッション部材80がヘッド12の第2の網58の中心下面に接触しているため、ヘッド12の振動が早く減衰し、出力信号の減衰も早くなるので、ヘッド12を早く連打した際における検出誤動作が抑止される。
【0032】
なお、ヘッド.センサー14の圧電素子76の上面に貼着されたクッション部材80が、円錐台形状の先端部の細径の小さな面積の部位でヘッド12の第2の網58と接触しているため、ヘッド12の打撃振動が直接に圧電素子76に伝達され難く、このため圧電素子76の破損が抑止される。
【0033】
また、圧電素子76の下面に貼着するクッション性両面テープ78の径をノード径としたため、圧電素子76の感度が上がり、打撃位置の違いによるヘッド12の微妙な振動の変化をより精確に検出することができる。
【0034】
さらにまた、第1の網56および第2の網58とよりなる網状素材の編み目の開口部を空気が流通するため、ヘッド12を打撃した際の打撃音は極めて小さいものとなる。ヘッド12を打撃した際の打撃音は、第1の網56および第2の網58とよりなる網状素材の開口率に依存するものであり、開口率を大きくするほど打撃音は小さくなる。しかしながら、あまり開口率を大きくすると、第1の網56および第2の網58の張力が低下し打撃感が悪化するため、打撃感と開口率を適度にバランスさせることが好ましい。
【0035】
さらに、カバー部材70によりリム16が被覆されているため、リム16を打撃した際の打撃音も軽減されることになる。
【0036】
ここで、リム16を打撃した際の振動は胴50に多く伝達されるため、胴50に取り付けたリム・ショット・センサー18の出力波形によりリム16の打撃による演奏を制御することができる。
【0037】
次に、この電子打楽器装置のヘッド12をスティック100により打撃したりブラシ102で擦ったりした場合や、リム16をスティック100により打撃した場合における電気的な処理内容について説明する。
【0038】
まず、操作子群30のモード選択操作子を操作して、通常演奏モードを選択した場合の処理について説明する。この通常演奏モードとは、ヘッド12への打撃ならびにリム16への打撃を検出して、打楽器音を発音するモードである。
【0039】
図11は、通常演奏モードにおけるDSP22の構成を示す機能ブロック図であるが、ヘッド・センサー14とリム・ショット・センサー18とにより検出した検出信号は、A/D変換器20によりA/D変換されてDSP22へ入力される。
【0040】
DSP22では、ヘッド打撃力検出手段によってヘッド・センサー14の検出信号からヘッド12への打撃力を検出して、CPU24にヘッド打撃力情報を出力し、ヘッド打点位置検出手段によってヘッド・センサー14の検出信号からヘッド12の打点位置を検出して、CPU24にヘッド打点位置情報を出力し、リム打撃力検出手段によってリム・ショット・センサー18の検出信号からリム16への打撃力を検出して、CPU24にリム打撃力情報を出力する。
【0041】
なお、ヘッド打撃力検出手段ならびにリム打撃力検出手段は、入力信号のピーク値を検出するなどして打撃力を検出する処理を行うものであるが、従来より公知の電子打楽器装置の打撃力を検出する処理を用いることができるものであるので、その詳細な説明は省略する。
【0042】
また、ヘッド打点位置検出手段における処理内容については、後に詳細に説明する。
【0043】
図12は、通常演奏モードにおけるCPU24および音源IC34の構成を示す機能ブロック図であるが、CPU24へはヘッド打撃力情報、ヘッド打点位置情報、リム打撃力情報が入力されるとともに、操作子群30の音色選択のための操作子の操作による音色選択情報が入力され、CPU24は入力された情報を音源IC34を制御する情報に変換する。即ち、CPU24のヘッド音制御手段ならびにリム・ショット音制御手段は、波形メモリ36に記憶されている波形データを読み出すために必要な読み出しスタート・アドレス、読み出しエンド・アドレス、読み出し速度、ワン・ショット読み出しあるいはループ読み出しなどの読み出しモードなどを音源IC34の読み出し制御手段に供給し、フィルタ係数を音源ICのフィルタ手段に供給し、音量情報を音源IC34の乗算手段に供給する。
【0044】
次に、DSP22におけるヘッド打点位置検出手段の処理に関して説明するが、この処理は以下のような特性に基づくものである。
【0045】
即ち、網状素材により構成されたヘッド12を打撃した際におけるヘッド・センサー14の検出信号を観察すると、ある周波数帯では第1半波の時間が打点位置によって変化する特性がある。つまり、図13(a)(b)に示すように、ヘッド12の中心(打点位置A)を打撃したときの第1半波の時間TAとし、ヘッド12の外周(打点位置C)を打撃したときの第1半波をTCとし、ヘッド12の中心と外周との中間(打点位置B)を打撃したときの第1半波をTBとすると、
TA>TB>TC
となる。
【0046】
このように、網状素材により構成されたヘッド12を打撃した場合には、打点位置が中心から外周に移動するに従って、徐々に第1半波の時間が短くなっていく。
【0047】
図14は、DSP22のヘッド打点位置検出手段の構成を示す機能ブロック図であるが、ヘッド・センサー14により検出した検出信号が、A/D変換器20によりA/D変換されてDCカット・フィルタへ入力される。DCカット・フィルタとは、直流成分を取り除くハイ・パス・フィルタであり、DCカット・フィルタへ入力された検出信号は、その直流成分が取り除かれ、不要な高域成分を取り除くロー・パス・フィルタ(LPフィルタ)へ入力される。
【0048】
そして、LPフィルタで不要な高域成分を取り除かれた検出信号は、第1半波検出回路へ入力される。第1半波検出回路は、入力された検出信号の波形の立ち上がりと最初のゼロクロスを検出することによって、第1半波を検出する。カウンターは、第1半波検出回路が第1半波を検出している間のみカウントを行い、演算回路がカウンターのカウント値により打点位置を算出する。
【0049】
こうして算出された打点位置が、ヘッド打点位置情報としてCPU24へ入力される。
【0050】
次に、操作子群30のモード選択操作子を操作して、ブラシ演奏モードを選択した場合の処理について説明する。このブラシ演奏モードとは、ヘッド12をブラシ102で擦ったり、叩いたりしたことを検出して、打楽器音を発音するモードである。
【0051】
図15は、ブラシ演奏モードにおけるDSP22の構成を示す機能ブロック図であるが、ヘッド・センサー14により検出した検出信号は、A/D変換器20によりA/D変換されてDSP22へ入力される。
【0052】
DSP22では、ブラッシング検出手段によってヘッド・センサー14の検出信号からヘッド12をブラシ102で擦ったときの演奏を検出して、CPU24にゲイン情報として出力し、ブラシ打撃検出手段によってヘッド・センサー14の検出信号からヘッド12をブラシ102で打撃したときの打撃力を検出して、CPU24に打撃情報として出力する。
【0053】
図16は、ブラシ演奏モードにおけるCPU24および音源IC34の構成を示す機能ブロック図であるが、CPU24へはゲイン情報、打撃情報が入力されるとともに、操作子群30の音色選択のための操作子の操作による音色選択情報が入力され、CPU24は入力された情報を音源IC34を制御する情報に変換する。
【0054】
ここで、ブラシ演奏モードに設定することによって、CPU24のブラシ音制御手段は、音源IC34の読み出し制御手段をループ読み出しに設定して、波形メモリ36からブラシ音を示す所定の波形をループ読み出しで読み出し続ける。また、CPU24のブラシ音制御手段は、フィルタ係数を音源IC34のフィルタ手段に適宜供給し、DSP22からゲイン情報が入力されると、そのゲイン情報に従って音源IC34の乗算手段に音量情報を供給し、ブラシ音を発生する。
【0055】
一方、CPU24のブラシ打撃音制御手段は、DSP22から打撃情報が入力されると、その打撃情報により示される打撃の強さに対応して、読み出す波形、フィルタ係数ならびに音量を制御する。
【0056】
ここで、このブラシ演奏モードによるブラシ音の発生の処理について、図17および図18を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0057】
図17には、DSP22、CPU24および音源IC34のより詳細な機能ブロック図が示されているが、ヘッド・センサー14により検出した検出信号が、A/D変換器20によりA/D変換されてDCカット・フィルタへ入力される。DCカット・フィルタとは、直流成分を取り除くハイ・パス・フィルタであり、DCカット・フィルタへ入力された検出信号は、その直流成分が取り除かれる。
DCカット・フィルタにより直流成分が取り除かれた検出信号は、エンベロープ検出回路と最大値検出回路とに入力される。
【0058】
エンベロープ検出回路は、入力された検出信号の波形のエンベロープを検出し、高域成分をカットするロー・パス・フィルタ(LPF)に入力する。LPFによってエンベロープの高域成分をカットして、エンベロープを平滑化することにより、出音が滑らかになる。
【0059】
次に、微弱レベルでの不要な発音を抑止するために、スレッショルド設定回路により閾値を定めて閾値以下の信号はカットし、さらに、リミッター回路によってエンベロープにリミッター処理を施す。
【0060】
そして、リミッター回路の出力によって、アンプのゲインの制御を行う。このアンプは、ブラシでアコースティック・ドラムのヘッドを擦ったブラシ音をサンプリングしてループ読み出しする第1PCM音源のブラシ音のレベルを調節するものである。
【0061】
一方、DCカット・フィルタにより直流成分が取り除かれた検出信号を入力された最大値検出回路は、入力された検出信号の最大値を検出して、PCM発音制御回路へ入力する。そして、PCM発音制御回路は、入力された信号レベル(最大値)に応じて、ブラシでアコースティック・ドラムのヘッドを叩いたときのブラシ音をサンプリングしてワン・ショット読み出しする第2PCM音源の発音を制御する。
【0062】
即ち、PCM発音制御回路は、入力された信号レベル(最大値)が所定のレベルより小さい場合には第2PCM音源を発音させないが、入力された信号レベル(最大値)が所定のレベル以上の場合には第2PCM音源を発音させる。
【0063】
そして、ブラシ演奏モードにおいては、ブラシ102とヘッド12とが当接した際のヘッド・センサー14の検出信号(図18に示す例においては「ベロシティ」である。)に応じて、第1PCM音源のブラシ音(ブラシによりアコースティック・ドラムを擦った場合の弱打音)と第2PCM音源のブラシ音(ブラシによりアコースティック・ドラムを叩いた場合の強打音)とが、加算器により合成されて出力される。
【0064】
なお、リミッター回路によりアンプのゲインを制御し、第1PCM音源によるブラシ音(ブラシによりアコースティック・ドラムを擦った場合の弱打音)の音量レベルを制御しているので、ブラシ102によりヘッド12を強く叩いた場合において、第1PCM音源によるブラシ音(ブラシによりアコースティック・ドラムを擦った場合の弱打音)第2PCM音源のブラシ音(ブラシによりアコースティック・ドラムを叩いた場合の強打音)との干渉が抑止される。
【0065】
次に、操作子群30のモード選択操作子を操作して、チューニング・モードを選択した場合の処理について説明する。このチューニング・モードには、さらにチューニングとキャリブレーションとの2つのモードがある。ここで、チューニング・モードにおけるチューニングとは、ヘッド12の網状素材の張力を調整することである。これにより、ヘッド12の打撃感を調整することができる。
【0066】
なお、操作子群30には、通常演奏モード、ブラシ演奏モードおよびチューニング・モードの各モードを選択するためのモード選択操作子とは別に、モード選択操作子がチューニング・モードを選択しているときに、チューニングとキャリブレーションとの2つのモードを選択するための操作子を備えている。
【0067】
まず、チューニング・モードのチューニングについて説明すると、このチューニングにおいては、ヘッド打点位置検出手段の検出結果が、ヘッド12の中心に対して同心円状になるように調整することが可能なようになされている。このため、ヘッド打点位置情報を表示装置32に表示するようになされている。
【0068】
演奏者は、表示装置32に表示されたヘッド打点位置情報を参照しながらヘッド12を叩いて、表示装置32に表示されたヘッド打点位置情報が同心円上で等しくなるように、係合ピン54のネジ込み量を調整してチューニングを行う。
【0069】
次に、チューニング・モードのキャリブレーションについて説明すると、上記したチューニングのようにヘッド12の網状素材の張力を調整することができるようにすると、ヘッド打点位置検出手段において検出する打点位置を正確に検出することができない。
【0070】
そこで、操作子によりチューニング・モードのキャリブレーションのモードに設定し、ヘッド12の外周、その少し中心、中心の部分を順次打撃し、それにより補正用の特性データを作成する。
【0071】
このようにして補正用の特性データを作成しておくことによって、通常演奏モードあるいはブラシ演奏モードのときに得られた打撃情報を補正用の特性データに従って補正することにより、正確な打点位置情報を得ることができる。
【0072】
なお、上記した実施の形態は、以下に示すように変形してもよい。
【0073】
(1)図19に示すように、胴50の一方の開口面にヘッド12を取り付け、他方の開口面にアコースティック・ドラムのヘッド(図19では見えていない)を取り付けるようにしてもよい。この場合には、ヘッド12を打撃すると、裏面のアコースティック・ドラムのヘッドが共振して適度の音量で鳴るため、胴50にヘッド12のみを取り付けた場合と比較すると、よりアコースティック・ドラムに近似した感覚で演奏を行うことができる。
【0074】
(2)図20に示すように、ヘッド12の第1の網56および第2の網58の外周部に、環状のフィルム112を貼着するようにしてもよい。この場合には、上記した実施の形態に比べてヘッド12の第1の網56および第2の網58の開口率が小さくなるので、上記した実施の形態のよりも打撃音が大きくなる。このため、よりアコースティック・ドラムに近似した感覚で演奏を行うことができる。また、ヘッド12の第1の網56および第2の網58に貼着するフィルム112の面積を変化させることによって、打撃音量を制御することができる。また、フィルム112を貼着する代わりに、接着剤により編み目を充填するようにして、第1の網56と第2の網58とを貼り合わせてもよい。
【0075】
(3)網状素材は平織りの網を2枚重ねることなしに、1枚でもよいし、3枚以上重ねてもよい。また、網の織り方は平織りに限られるものではない。なお、1枚の網により網状素材を構成する場合には、網状素材を張って打撃した際に、織り繊維の縦横方向ばかりでなく斜め方向においても張力がバランスする3軸織りの網を用いることが好ましい。
【0076】
(4)ヘッド・センサー14のクッション部材80の形状は、円錐台状の形状に限られることなしに、ピラミッド型のような角錐台状の形状でもよい。
【0077】
(5)音源の構成は上記した波形読み出し方式のものに限られることなしに、種々の方式の音源を用いることができる。また、PCMサンプリング音を発音するPCM音源でなく、発振器などによる共振器や外部から入力されるオーディオ信号を用いるようにしてもよい。
【0078】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、打撃感に優れ、かつ打撃音が極めて小さい電子打楽器装置における打撃検出装置を実現することができるという優れた効果を奏する。
【0079】
また、本発明は、打撃検出装置のどの位置を打撃したかを検出し、その検出結果に基づいて音色を制御するようにしたので、アコースティック・ドラムと同様に打撃位置による音色変化を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0080】
また、本発明は、単にスティックにより打撃検出装置を打撃する演奏法だけでなく、ブラシにより打撃検出装置を擦ったり、叩いたりするような演奏法を実現することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子打楽器装置の実施の形態の一例を示すブロック構成図である。
【図2】打撃検出装置の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線による断面図である。
【図4】ヘッドの斜視図である。
【図5】ヘッドの分解斜視図である。
【図6】第1の網と第2の網との織り目方向が斜交する場合を示す説明図である。
【図7】ヘッド・センサーの説明図であり、(a)は(b)のA矢視図、(b)は正面図、(c)は(b)のC矢視図である。
【図8】スティックによりヘッドを打撃した場合の図3に対応する断面図である。
【図9】スティックによりリムを打撃した場合の図3に対応する断面図である。
【図10】ブラシによりヘッドを擦ったり、叩いたりした場合の図3に対応する断面図である。
【図11】通常演奏モードにおけるDSPの構成を示す機能ブロック図である。
【図12】通常演奏モードにおけるCPUおよび音源ICの構成を示す機能ブロック図である。
【図13】網状素材により構成されたヘッドの特性の説明図であり、(a)はヘッドにおける打点位置を示し、(b)は出力波形を示す。
【図14】通常演奏モードにおけるDSPのヘッド打点位置検出手段の構成を示す機能ブロック図である。
【図15】ブラシ演奏モードにおけるDSPの構成を示す機能ブロック図である。
【図16】ブラシ演奏モードにおけるCPUおよび音源ICの構成を示す機能ブロック図である。
【図17】ブラシ演奏モードにおけるDSP、CPUおよび音源ICのより詳細な機能ブロック図である。
【図18】ブラシ演奏モードにおけるベロシティ(ヘッド・センサーの出力)と音量レベルとの関係を示すグラフである。
【図19】打撃検出装置の変形例を示す図2に対応する斜視図である。
【図20】打撃検出装置の変形例を示す図2に対応する斜視図である。
【符号の説明】
10 打撃検出装置
12 ヘッド
14 ヘッド・センサー
16 リム
18 リム・ショット・センサー
20 A/D変換器
22 DSP
26 ROM
28 RAM
30 操作子群
32 表示装置
34 音源IC
36 波形メモリ
38 D/A変換器
50 胴部
52 係合部
54 係合ピン
56 第1の網
58 第2の網
60 枠
64 孔部
66 縁部
68 リム打撃部
70 カバー部材
72 ヘッド・センサー支持部材
74 出力信号線
76 圧電素子
78 クッション性両面テープ
80 クッション部材
100 スティック
102 ブラシ
Claims (2)
- 第1の網と第2の網とを互いの織り目方向が斜交するように積層して周縁部で固着した網状素材により打撃面が構成されるヘッドと、
前記ヘッドの中心位置に接触し、前記ヘッドへの打撃を電気信号として検出する打撃検出手段と
を有することを特徴とする電子打楽器装置における打撃検出装置。 - 打撃面を有するヘッドへの打撃を電気信号として検出する打撃検出手段と、
前記打撃検出手段によって検出された電気信号を入力し、楽音形成のための制御情報を生成する楽音制御情報生成手段と、
前記楽音制御情報生成手段から制御情報を入力し、楽音信号を形成する楽音信号形成手段と
を有する電子打楽器装置において、
前記楽音制御情報生成手段は、前記打撃検出手段によって検出された電気信号の立ち上がり部の半波のゼロクロス間の長さに基づいて前記ヘッドの打撃位置を検出する打撃位置検出手段を有し、前記打撃位置検出手段からの検出結果に応じた制御情報を生成する
ことを特徴とする電子打楽器装置。
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