JP4132170B2 - 打面装置および電子打楽器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、練習用打楽器あるいは電子打楽器に利用できる打面装置(パッド)とこの打面装置を用いた電子打楽器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子ドラムのパッドとして例えば実開昭60−159500号公報に記載されたものがある。このパッドは、板状の本体の中央部分に、振動感知素子(打撃センサ)を裏面に取り付けた振動板を埋設し、その振動板の表面を薄い緩衝板で覆うようにし、この緩衝板部分をビーターで打撃することで、打撃センサから打撃の検出信号を取り出す構造となっている。そして、この緩衝板の材質を例えばゴム、スポンジ、ゲル状物質などに変えたり、板の厚さを変えるなどして、打撃感がアコースティック打楽器に近づくよう調整している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のパッドでは、アコースティックな打楽器例えばバスドラムに近い打撃感を得ることはなかなか難しかった。これは、アコースティック打楽器のヘッドの張力によるテンション感が、緩衝板の弾性力によるものとは異なっているため、このテンション感を模擬できないためである。具体的には、緩衝板を打撃した際の反発感が強く、感触のよい打撃感とならなかった。また、パッドを打撃した際のパッド部分自体で発生する打撃音が大きく、電子打楽器ではその打撃音が、音源で発生する打楽器音による演奏の邪魔になるおそれがあった。
【0004】
また、アコースティック・バスドラムなどには、二つのビーターで打撃を行って演奏するツインペダル形のものがあるが、電子打楽器で振動板方式を用いてこのツインペダル用キックパッドを実現しようとした場合には次の問題がある。すなわち、上述の振動板方式だと、有効打面(ここで有効打面とは、弱打の打撃も検出できる打面の範囲をいう)が狭く、この有効打面から外れた位置での弱打を検出することが難しくなる。振動板を用いたツインペダル用キックパッドでは、二つのビーターの打撃にそれぞれに対して打撃センサから同じ大きさの信号出力を得る必要がある。このため、二つのビーターの打撃位置に合った大きなサイズの打撃センサを設ける、あるいは二つのビーターの各打撃位置に合わせて都合2つのセンサを設けるなどの対策が必要となる。あるいは、ある程度の弱打は検出できないものとして無視することを余技なくされている。
【0005】
さらに、アコースティック・バスドラムにはオープン奏法とクローズ奏法がある。オープン奏法はビーターで打撃した後、打面からビーターを直ちに離して打撃の振動を長く持続させる奏法、クローズ奏法はビーターを打撃後も打面に押しつけて打撃の振動を短く終わらせる奏法である。この奏法を上述の振動板式のパッドを用いて電子打楽器においても実現しようとしても、振動板式のパッドは、打撃による振動板の振動が直ぐに減衰するので、奏者がオープン奏法とクローズ奏法を行っても、その違いを検出することができなかった。
【0006】
これらアコースティック打楽器に近いテンション感を得る、ツインペダル奏法を実現する、あるいはミュート奏法(オープン/クローズ奏法)を実現するなどのために、パッドの構造をアコースティック打楽器と同じ構造にすることも考えられるが、かかる構造では生の打撃音が大きくなり、電子打楽器音での演奏の邪魔になるし、また、例えばバスドラムなどの打撃感を模擬するためには、ヘッドの径を大きくしなければならないため、ドラムパッドの全体寸法が大きくなってしまい、またコストアップにもつながるという問題がある。
【0007】
また、上述の電子打楽器とは別に、近年、打楽器の練習をする場合、打楽器は一般に大きな音を発生するため、これが近隣に対する騒音となるという問題がある。よって、打楽器の打面装置として、練習用に、アコースティック打楽器に近いテンション感を持ち、かつ打撃音が小さいものが必要とされている。
【0008】
本発明の上述の諸問題に鑑みてなされたものであり、練習用打楽器あるいは電子打楽器の打面装置として、小さな打撃音でアコースティック打楽器に近いテンション感を実現する、小型の構成でツインペダル奏法を実現する、あるいはミュート奏法(オープン/クローズ奏法)を実現することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】
【0010】
また、本発明に係る打面装置は、一つの形態として、ペダルが踏み込まれることによりビーターが揺動するペダル装置を備え、打撃面が網状素材により構成されるヘッドと、該ヘッドに接触する緩衝材と、該緩衝材を該ビーターにより打撃されるヘッドの打撃位置に固定支持する支持手段と、該ヘッドの打撃位置とは異なる位置に接触して該ヘッドの振動を検出するセンサと、該センサを該ヘッドに接触した状態に固定支持するセンサ支持手段とを備える。この打面装置によれば、打撃をしてもヘッドが網状であるため、大きな打撃音がしないので、電子打楽器の本来の演奏を邪魔することがない。また、網状素材により適度なテンション感を実現するとともに、緩衝材により打撃に対する過度な反発や振動を抑制できるので、よりアコースティック打楽器に近い打撃感を模擬することができる。また、ビーターは常にヘッドの同じ位置を打撃するので、打撃位置を特定し、その打撃位置とは異なるヘッドの位置にセンサが接触するように構成することができる。
【0011】
また、本発明に係る電子打楽器は、一つの形態として、上記の形態の打面装置を用い、該センサからの検出信号に基づき、打撃による該ヘッドの振動開始を検出すると楽音の発音を開始させ、振動終了を検出すると楽音の消音を開始させるよう制御する制御手段を備える。本発明の打面装置を用いてオープン奏法したときには、ヘッドが網状素材であるから振動の持続時間が長くなるためヘッドの振動開始から終了までの時間が長い検出信号が得られ、一方、クローズ奏法したときにはヘッドが押さえつけられるため振動開始から終了までの時間が短い検出信号が得られるので、電子打楽器側でこの二つの奏法の検出信号を区別することができ、よって電子打楽器においても、オープン奏法とクローズ奏法を実現できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図2は本発明の一実施例としての打面装置の正面図、図3はこの打面装置の正面図において打面装置の要所部分の断面構造を示すための断面線を記入した図、図1は図3のA−A断面線に沿う打面装置の側断面図、図4は図3のB−B断面線に沿う打撃センサ部分の断面図、図5は図3のC−C断面線に沿う緩衝材部分の断面図である。
【0014】
図1〜図3において、まず、この打面装置の概要的な構成を説明すると、円筒状の胴体としてのシェル1の背面(奏者に向く側の面)側の開口部には、打面としてのヘッド3がリム9を用いて取り付けてあり、打面装置のヘッド3側にはヘッド3をビーター61で打撃するためのフットペダル装置6が取り付けられる。このフットペダル装置6は二つのビーターをそれぞれ独立に動かすことができるツインペダル形のものである。
【0015】
シェル1は4本の脚からなる脚構造体8により床面から持ち上げられた位置に支持される。シェル1の内側には、断面コの字形をした板状のフレーム2が垂直方向にシェル内壁にその頂部から底部にかけ渡して固定される。このフレーム2に打撃センサ4と緩衝材5が取り付けられ、これら打撃センサ4と緩衝材5の先端側はヘッド3に接触している。
【0016】
打撃センサ4は、図4に示されるように、フレーム2の打撃センサ4取付け位置においてフレーム2の縁部から内側に突き出た係止部21a、21bに取り付けられる。打撃センサ4は取付け板40にクッション性両面接着テープなどで固定されており、この取付け板40はネジ22a、22bにより係止部21a、21bにネジ止めされる。すなわち、係止部21aには、外周にネジ山を設けた高さ調整ネジ22aと貫通するための貫通孔が設けられ、取付け板40の対応する位置にも貫通孔が設けられ、この貫通孔にはゴムなどで形成された弾性部材によりナットを被覆した防振ナット23が嵌め込んであり、このナットに高さ調整ネジ22aが螺合される。一方、係止部21bには、外周にネジ山を設けたネジ22bとネジ結合するネジ孔が設けられ、取付け板40の対応する位置にも貫通孔が設けられ、この貫通孔にはネジ22bが貫通する孔を持つワッシャをゴムなどで形成された弾性部材で被覆した防振ダンパー24が嵌め込まれ、さらに防振ダンパー24と係止部21bの間にはスペーサ26が介装される。この取付け構造により、打撃センサ4はその先端側がヘッド3に適度に接触するように調整してフレーム2に固定される。
【0017】
図9には打撃センサ4の構成が示される。打撃センサ4は、出力信号線43を備えた円板状の圧電素子41を振動の検出素子としており、この圧電素子41の下面にクッション性両面接着テープ44が貼られ、圧電素子41はこのクッション性両面接着テープ44により取付け板40に接着される。このクッション性両面接着テープ44の径は圧電素子41のノード径と一致するようにしてある。また、圧電素子41の上面にはゴムやスポンジなどの弾性体により形成された円錐台形状のクッション部材42が接着されており、このクッション部材42は圧電素子41の径よりも大径に形成された底面を持つとともに、先端に向かうに従って先細りとなる形をしており、この先端がヘッド3に接触するよう取り付けられる。これにより、打撃センサ4は、ヘッド3が打撃された時に、打撃によるヘッド振動膜の振動をクッション部材42を介して圧電素子41で検出でき、その検出信号でドラム音源を鳴らすことができる。
【0018】
緩衝材5は、図5に示すように、フレーム2の中央付近(したがってヘッド3の中心付近)において、このフレーム2の断面コの字形の溝の底部に強力な接着材にて固定されている。緩衝材5は二つのビーター61に対応してそれらの打撃点が含まれる広さの長方形の面を持ち、その基端部側がフレーム2に接着され、先端部側がヘッド3に接触される。この緩衝材5は、3層の積層構造となっており、基端部側が高弾性材料からなる高弾性層53、先端側が耐磨耗性材料からなる耐磨耗層51、その中間が低弾性材料からなる低弾性層52からなる。
【0019】
低弾性層52は、打撃時の衝撃を吸収できるように低弾性材料からなるもので、ビーター61による打撃の跳ね返りと振動膜の過度な振動を抑え、打撃の感触を良くするものであり、ポリウレタン・スポンジなどからなる。高弾性層53は低弾性層52が長期にわたる打撃によって圧縮変形しても緩衝材5の先端部がヘッド3に接触した状態を保つために介装された層である。耐磨耗層51は、低弾性層52がヘッド3を介してビーター61で直接に打撃されると短期間に磨耗してしまうので、これを防ぐための層であり、耐磨耗性があり、且つある程度空気を通すことでビーター61で打撃されても音が出にくい材質のものが適しており、例えば不織布などが利用される。
【0020】
ヘッド3は、図7に示すように、網状素材として縦横の繊維が直交する平織りにより織られた網31と網32とを、互いの織り目方向が45°に斜交するように積層して円環状の枠33に接着して形成される。網31と網32の織り目が45°に斜交するとは、図8に示すように、縦横の繊維が互いに直交している網31と網32を重ね合わせた際に、その重ね合わせた網31と網32の繊維が角度45°で交差することをいう。
【0021】
このように、網31と網32の互いの織り目を斜交して積層してあると、網状素材の全面にわたって張力が均一化され、打撃位置による打撃感のばらつきが少なくなる。また、網状素材の弾性のために、アコースティック・ドラムのヘッドを打撃した際の打撃感に近い感触を得ることができる。また、網状素材からなるので、空気が容易に通り抜けるものであり、よってヘッド3を打撃した際にもその振動で大きな音が生じることを抑えることができる。
なお、電子打楽器を使用せずにこのドラムパッドだけで練習するなどの用途のために打撃時にある程度の音を出したい場合には、このヘッド3の例えば縁側にテープ状の部材を貼って網目を被うなどの手法が可能である。
【0022】
なお、ヘッド3は上記の網の2枚重ねのものに限られるものではなく、1枚でもよいし、3枚以上重ねてもよい。網の織り方も平織に限られず、例えば1枚の網でヘッド3を作る場合には、打撃した際に、織り繊維の縦横方向ばかりでなく斜め方向においても張力がバランスするよう3軸織りの網を用いるとよい。
【0023】
このヘッド3の網は、打撃に対して強度があり且つアコースティック打楽器と同等な打撃感(テンション感)があり、また打撃に対して打撃音ができるだけ生じないように、その材質、網の太さ、網目のピッチが選ばれる。材質は特に限定されないが、ポリエステルなどの合成樹脂が利用可能である。
【0024】
リム9は金属材料を円環形状に一体整形することにより形成され、外周部の60°間隔の6箇所(なお8箇所、10箇所等でもよい)に、調整ネジ70を通す孔が開けられた突起部91が設けらている。
【0025】
このヘッド3とリム9は、初めにシェル1にヘッド3を被せ、次いでそのヘッド3の上にリム9を嵌め込み、取付け調整部7の調整ネジ70で固定することで、シェル1に取り付けられる。
【0026】
図6は取付け調整部7の断面図を示す。この取付け調整部7はシェル1の外周部に60°間隔で6箇所設けられており、突起部71をネジ72でシェル1に固定する構造となっている。調整ネジ70は先端にネジ山が形成され、他端に係止用のフランジが形成されている。突起部71にはこの調整ネジ70と螺合するネジ孔が設けられる。図6に示すように、ヘッド3をシェル1とリム9の間に挟み、突起部91の孔に調整ネジ70を通し、その調整ネジ70の先端を突起部71のネジ孔にねじ込むことで、ヘッド3とリム9を固定するこができ、調整ネジ70のねじ込み量を調整することで、ヘッド3の張力を調整することができる。これにより、打撃に対するテンション感を調整することができ、また緩衝材5に対する接触具合も任意に設定できる。
【0027】
脚構造体8は打面装置の正面側に左右2本の前脚81、背面側に左右2本の後脚82からなる4本脚で打面装置の打面を垂直に立てた状態に支えている。左右の前脚81と後脚82は支持棹83の部分を支点として開閉動作が可能に連結されており、開いた状態のときに打面装置を使用状態に立て、打面装置をかたずけるときには閉じた状態とする。支持棹83はシェル1の左右の内壁の位置に設けられた取付け部11に、取付け部材84を用いてネジ止めされ、これにより脚構造体8とシェル1とが固定される。左右の後脚82は、床面近くで、床面から一定の隙間分だけ浮いた状態にある連結棹86により連結される。
【0028】
フットペダル装置6は、二つのビーター61を独立に操作できるツインペダル形のものである。ビーター61はシャフト62の先端に取り付けられ、このシャフト62はビーターの揺動支点となる揺動部66に揺動可能に取り付けられる。揺動部66は垂直の支持棹64の先端に取り付けられる。支持棹64は左右のビーター用に2本あり、この2本の支持棹64は下端側において水平方向に延びる連結部で互いに連結され、この連結部に取付け部材69が取り付けられる。この支持棹64はこの取付け部材69を用いて、前述の連結棹86に着脱可能に取り付けられる。この場合、支持棹64の下端部分は床面から浮いた状態となる。
【0029】
支持棹64にはベダル支持部材65が支点68で回動可能に取り付けられており、このペダル支持部材65の前端(奏者側の端部)には、奏者の踏込み操作によりペダル60がその基端側において支点67を中心にして揺動可能なように取り付けられる。このペダル支持部材65は、その前端部分が床面に接地しているが、それ以外の部分は床から浮いた状態となっている。
【0030】
ペダル60の先端には金属チェーン63が取り付けられており、この金属チェーン63は揺動部66に連結され、ペダル踏込み時にこの揺動部66によりシャフト62をヘッド3方向に揺動できるようになっている。これにより、ペダル60を踏み込んでいない状態(図中に破線で示す)では、ビーター61が打撃装置のヘッド3から離れた状態となり、踏み込んだ状態(図中に実線で示す)では、ビーター61が揺動してヘッド3を打撃するようになる。
【0031】
ここで、フットプダル装置のペダル60の先端およびビーター61の揺動支点66は、後脚82の床接地点よりも、前脚81側に位置するようになっている。
【0032】
このように、この打面装置は、口径の小さな電子バスドラムに、網状素材により構成されるヘッド3を振動膜として設け、さらに振動膜に接するように緩衝材5(例えば特定の硬さのスポンジ)を配置し、振動膜の振動を検出するセンサによって打撃を検出するようにし、この振動膜のテンションや緩衝材と振動膜の接触具合は任意に設定できるようにしている。
【0033】
これにより、ヘッド3の適度なテンションによって、アコースティック・ドラムのヘッドを打撃したかのような打撃感を得ながらも、網状ヘッドであるため打撃音がほとんど発生しない上に、緩衝材5によって過度な振動や跳ね返り感を抑えることができ、打撃感をより向上させることができる。
【0034】
次に、この打面装置を用いて、オープン奏法とクローズ奏法も行えるようにした電子打楽器の実施形態について説明する。
図10にはこの電子打楽器の概略的な構成が示される。打面装置たるドラムパッドDPの打撃センサ4からの出力信号は、演奏情報発生部PGに入力される。演奏情報発生部PGはトリガ信号検出部PG1とノートオン/オフ検出部PG2を含み構成される。演奏情報発生部PGからの検出信号(ノートオン/オフ信号)は音源部SGに入力される。音源部SGは図15に示すように、エンベロープ制御部SG1、楽音波形再生器SG2、乗算器SG3などを含み構成され、演奏情報発生部PGからのノートオン/オフ信号はエンベロープ制御部SG1、楽音波形再生器SG2に並列に入力され、乗算器SG3からの出力が音源出力となる。
【0035】
上述のトリガ信号検出部PG1は、図13に詳細を示すように、半波整流回路PG11、平滑回路PG12、A/D変換器PG13を含み構成される。このトリガ信号検出部PG1では、図14にその波形図を示すように、打撃センサ4からの検出信号Aが入力されると、その検出信号Aを半波整流回路PG1で半波整流して半波整流信号Bとし、この半波整流信号Bを平滑回路PG12で平滑してそのエンベロープに相応した平滑信号Cとし、この平滑信号CをA/D変換器PG13でA/D変換処理してディジタル信号Dに変換する。
【0036】
次に、この電子打楽器の動作を図11、図12を参照しつつ説明する。ここで、図11はドラムパッドDPをオープン奏法した場合の各部信号の波形図、図12はクローズ奏法した場合の各部信号の波形図である。
【0037】
まず、ドラムパッドDPをオープン奏法すると、図11(1)に示すように、打撃センサ4から打撃検出信号▲1▼が入力される。オープン奏法では、打撃後にヘッド3からビーター61を直ちに離すので、ヘッド3の振動膜の振動が長時間持続し、よって、図示のように波形振幅が緩やかに減衰していくものとなる。この打撃検出信号▲1▼をトリガ信号検出部PG1に入力すると、図11(2)に示すように、その打撃検出信号▲1▼のエンベロープに相応するトリガ検出信号▲2▼が得られる。
【0038】
ノートオン/オフ検出部PG2では、このトリガ検出信号▲3▼に基づき、このトリガ検出信号▲2▼が所定の振幅レベルL1になってから一定時間を経過したところでノートオン信号を出力する。打撃検出信号▲1▼のエンベロープがピーク値(すなわちアタックのピーク値)となるのは、通常、ある振幅レベルを超えてから、センサの特性で決まる一定時間を経過した時点であるから、上述のノートオン信号は打撃検出信号▲1▼のピーク値付近で発生されることになる(この実施例ではピークの直前になっている)。なお、このノートオン信号の発生タイミングはヘッド3の振動開始に相応したタイミングとして扱われる。
【0039】
その後、このトリガ検出信号▲2▼が所定レベルL2を下回ったところでノートオフ信号を出力する。なお、このノートオフ信号の発生タイミングはヘッド3の振動終了に相応したタイミングとして扱われる。
【0040】
よって、打撃が強ければ、ノートオンからノートオフまでの継続時間は長くなり、打撃が弱ければ継続時間は短くなる。なお、ノートオン信号の発生された時点での打撃検出信号▲1▼の振幅値は後述する音源SGで発生する打楽器音の振幅制御に供される。
【0041】
音源部SGのエンベロープ制御部SG1は、このノートオン信号とノートオフ信号に応じて、図11(3)に示すように、ノートオンで直ちに振幅1に立ち上がり、ノートオフの時点からある時間をかけて0まで減衰するエンベロープ制御信号▲3▼を生成して出力する。
【0042】
音源部SGでは、演奏情報発生器PGからのノートオン信号に応じて上述のエンベロープ制御部SG1がエンベロープ制御信号▲3▼を生成する他に、図15に示すように、このノートオン信号に応じて楽音波形再生器SG2が起動されて打楽器の楽音波形を再生してこれを乗算器SG3に入力する。この結果、乗算器SG3では、打楽器楽音波形にエンベロープ制御信号▲3▼を乗算するので、よって打楽器楽音波形はノートオフ後にはエンベロープ制御信号▲3▼の急速減衰により同じく急速に減衰することになる。オープン奏法では、このエンベロープ制御信号▲3▼がノートオフとなるまでには長時間がかかるので、電子打楽器において、オープン奏法による打楽器の楽音を実現することができる。
【0043】
次に、ドラムパッドDPをクローズ奏法すると、図12(1)に示すように、打撃センサ4から打撃検出信号▲1▼が入力される。クローズ奏法では、打撃後もピーター61をヘッド3に押しつけるように操作するので、ヘッド3の振動膜の振動が抑えられて、図示のように波形振幅が短時間で減衰していくものとなる。この打撃検出信号▲1▼をトリガ信号検出部PG1に入力して、図12(2)に示すように、その打撃検出信号▲1▼のエンベロープに相応するトリガ検出信号▲2▼を得る。。
【0044】
ノートオン/オフ検出部PG2では、このトリガ検出信号▲3▼に基づき、前述と同様にしてノートオン信号とノートオフ信号を生成する。当然ながら、クローズ奏法ではこのノートオンとノートオフの間隔はオープン奏法のときよりも短くなる。音源部SGのエンベロープ制御部SG1は、このノートオン信号とノートオフ信号に応じて、図12(3)に示すようなエンベロープ制御信号▲3▼を生成して出力する。音源部SGでは、前述同様、楽音波形再生器SG2の楽音波形出力とエンベロープ制御信号▲3▼とを乗じて打楽器の楽音信号を生成するが、ノートオンとノートオフの間隔は短いので、打楽器の楽音信号は短い時間で減衰するものとなり、電子打楽器において、クローズ奏法による打楽器の楽音を実現することができる。
【0045】
このように、本発明の打面装置は、オープン奏法とクローズ奏法に応じて持続時間が異なる打撃検出信号を発生することができるから、この打面装置を用いた本発明の電子打楽器では、この打撃検出信号に応じてオープン奏法とクローズ奏法の打楽器音を発生することができる。
【0046】
また、ツインペダル奏法についても同様であり、本発明のような網ヘッド方式だと弱打まで検出できる有効打面が広くなり、よってツインペダル奏法のような二つのビーターを並べたときにも、一つのセンサで何れ側のビーターの打撃に対しても同じトリガー信号出力を得ることができる。なおここでいう有効打面とは、弱打を検出し、水平方向に並んだ二つのビーターでほぼ同じ大きさのセンサ出力値を得ることができる打面のエリアのことである。網ヘッドでは振動の伝搬性も優れているため、弱打も検出可能である。このとき、センサは打面中央からずらしておくことにより、それぞれのセンサで検出される打撃の振幅が異なる二つの打撃を個別に検出することができ、何れ側のビーターの打撃であるかに応じて、それぞれに異なる楽音を発生させることもできる。
【0047】
なお、このツインペダル奏法用に、一つのセンサに代えて、図16に示すように、二つのビーター61にそれぞれ対応させて都合二つのセンサ4を設けるようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の打面装置によれば、練習用打楽器あるいは電子打楽器の打面装置として、小さな打撃音でアコースティック打楽器に近いテンション感を実現することができる。
また、この打面装置を用いることで、電子打楽器において、小型の構成でツインペダル奏法を実現することができ、あるいはミュート奏法(オープン/クローズ奏法)を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図3のA−A断面線に沿う打面装置の側断面図である。
【図2】本発明の一実施例としての打面装置の正面図である。
【図3】実施例の打面装置の正面図において打面装置の要所部分の断面構造を示すための断面線を記入した図である。
【図4】図3のB−B断面線に沿う打撃センサ部分の断面図である。
【図5】図3のC−C断面線に沿う緩衝材部分の断面図である。
【図6】実施例における取付け調整部の断面図である。
【図7】実施例におけるヘッドの構成を説明する図である。
【図8】実施例におけるヘッドの網目の交差状態を説明する図である。
【図9】実施例における打撃センサの構成を説明する図である。
【図10】本発明の一実施例としての電子打楽器の概略構成を示す図である。
【図11】実施例の電子打楽器によるオープン奏法の動作を説明する図である。
【図12】実施例の電子打楽器によるクローズ奏法の動作を説明する図である。
【図13】実施例の電子打楽器におけるトリガー信号検出部の構成例を示す図である。
【図14】実施例の電子打楽器におけるトリガー信号検出部の動作を説明するための波形図である。
【図15】実施例の電子打楽器における音源部の構成・動作を説明する図である。
【図16】本発明の打面装置についてのツインペダル奏法用の他の変形例を示す図である。
Claims (2)
- ペダルが踏み込まれることによりビーターが揺動するペダル装置を備え、
打撃面が網状素材により構成されるヘッドと、
該ヘッドに接触する緩衝材と、
該緩衝材を該ビーターにより打撃されるヘッドの打撃位置に固定支持する支持手段と、
該ヘッドの打撃位置とは異なる位置に接触して該ヘッドの振動を検出するセンサと、
該センサを該ヘッドに接触した状態に固定支持するセンサ支持手段とを備えた打面装置。 - 請求項1に記載の打面装置を用い、
該センサからの検出信号に基づき、打撃による該ヘッドの振動開始を検出すると楽音の 発音を開始させ、振動終了を検出すると楽音の消音を開始させるよう制御する制御手段を備えた電子打楽器。
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