JP3709163B2 - 非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造およびミリ波送受信器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミリ波集積回路等に組み込まれて高周波信号の伝送用として用いられ、かつ外部に高周波信号を電波として送受信可能とされた非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造およびミリ波送受信器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、誘電体線路を1対の平行平板導体によって挟持した構造からなる非放射性誘電体線路(NonRadiative Dielectric Waveguideで、以下、NRDガイドという)が、高周波信号の伝送線路の1種として用いられている。そして、このNRDガイドを配線基板などに組入れる場合、回路設計上、NRDガイドを他の高周波用伝送線路,アンテナ等と接続することが必要であり、その場合伝送特性の劣化を小さくして接続することが重要である。
【0003】
そこで、他の高周波伝送線路との接続構造として、NRDガイドとマイクロストリップ線路とを接続するための構造が提案されている。その一般的な構造を図4に示す。同図に示すように、一対の平行平板導体11,12の間に誘電体線路3が配設されたNRDガイドにおいて、平行平板導体11にスロット孔13を形成し、平行平板導体11のスロット孔13を含む表面に、中心導体15が表面に形成された誘電体基板14をスロット孔13と中心導体15の終端部とが所定の位置関係になるように載置することにより、NRDガイドとマイクロストリップ線路とをスロット孔13を介して電磁的に接続するものである。
【0004】
このほか、NRDガイドの誘電体線路と金属導波管とを接続する構成として、誘電体線路の入力端部または出力端部をテーパー状とし、そのテーパー部に近接させて矩形ホーン状とされた金属導波管の一端を配置するものがある。
【0005】
さらに、NRDガイドと金属導波管との接続構造として、平行平板導体の誘電体線路に相当する部分の一部に開孔を設け、その開孔と金属導波管の開放端部とを接続したものが提案されている(特開平12−22407号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、NRDガイドの誘電体線路と金属導波管とを接続する場合、上記の如く誘電体線路の端部をテーパー状としたタイプでは、そのテーパー部の長さは高周波信号の2波長以上の長さを要するため、ミリ波集積回路の小型化という点で不利である。
【0007】
一方、小型化の点では図4の構成がよいが、高周波信号の周波数が30GHz以上のミリ波帯では、マイクロストリップ線路を用いたものでは伝送損失が大きくなるため、図4の接続構造は信号周波数が30GHz以上である回路基板には不向きであった。
【0008】
マイクロストリップ線路に代わり、30GHz以上のミリ波帯に対してもNRDガイドと同様に伝送損失の小さい伝搬路構造として金属導波管が知られており、回路設計においても金属導波管を用いることが重要となる。その一例として、平行平板導体の誘電体線路に相当する部分の一部に開孔を設け、その開孔と誘電体導波管の開放端部とを接続したもの(特開平12−22407号)があるが、この構成では、平行平板導体の誘電体線路相当部と誘電体導波管との接続部で高周波信号の反射や漏れが生じ易く、高周波信号の損失を小さく抑える点で不十分なものであった。
【0009】
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、30GHz以上のミリ波帯でも損失の小さい伝送が可能であり、外部に高周波信号を電波として送受信可能な小型化されたものとすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造は、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体間に前記高周波信号を伝搬させる誘電体線路が設置されて成る非放射性誘電体線路に対して、少なくとも一方の前記平行平板導体に前記誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口が形成されるとともに該開口に金属導波管の開放終端部が接続されている非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造において、前記開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、前記誘電体線路の両側面に沿っているとともに前記誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが前記高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記の構成により、NRDガイドと金属導波管とを、高周波信号(電磁波)の反射および伝送損失を小さくして接続できる。即ち、平行平板導体および誘電体線路の平坦度の悪さにより、平行平板導体と誘電体線路との間に空隙ができた場合、高周波信号の反射および伝送損失が著しく大きくなるが、本発明では、金属箔を設けることにより平行平板導体と誘電体線路との間の空隙を殆どなくして、高周波信号の反射および伝送損失をきわめて小さくすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記金属箔を接着する接着層は厚みが100μm以下であることを特徴する。
【0013】
本発明は、上記の構成により、高周波信号の伝送損失の劣化をより抑えることができる。接着層の厚みが100μmを超えると、インピーダンスの不連続のため高周波信号の反射が起き伝送損失が劣化する。
【0014】
また本発明において、好ましくは、前記誘電体線路は前記金属箔に押圧されて接しており、前記金属箔の前記誘電体線路に接している部位がその残部の表面から80μm以下の深さで凹んでいることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記の構成により、誘電体線路と金属箔との間の隙間がなくなり高周波信号の伝送損失の劣化をさらに抑えることができる。
【0016】
本発明のミリ波送受信器は、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体間に、高周波発生素子が一端部に付設され、前記高周波発生素子から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、前記第1の誘電体線路に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記ミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記ミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の接続部に接合され、先端部に送受信アンテナを有する第3の誘電体線路と、前記送受信アンテナで受信され前記第3の誘電体線路を伝搬して前記サーキュレータの第3の接続部より出力した受信波をミキサー側へ伝搬させる第4の誘電体線路と、前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサーと、を設けたミリ波送受信器において、少なくとも一方の前記平行平板導体に前記第3の誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口が形成されているとともに、一方の開放終端部が前記開口に接続され他方に送受信アンテナが設けられた金属導波管が設けられており、前記開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、前記第3の誘電体線路の両側面に沿っているとともに前記第3の誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記第3の誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが前記高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記の構成により、ミリ波信号の伝送損失が小さくなるため、ミリ波レーダー等に適用した場合にその探知距離が増大するものとなる。
【0018】
また本発明のミリ波送受信器は、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体間に、高周波発生素子が一端部に付設され、前記高周波発生素子から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、前記第1の誘電体線路に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記ミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記ミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の接続部に接続され、先端部に送信アンテナを有する第3の誘電体線路と、先端部に受信アンテナ、他端部にミキサーが各々設けられた第4の誘電体線路と、前記サーキュレータの前記第3の接続部に接続され、前記送信アンテナで受信混入した受信波を伝搬させるとともに先端部に設けられた無反射終端部で前記受信波を減衰させる第5の誘電体線路と、前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、少なくとも一方の前記平行平板導体に前記第3の誘電体線路中および前記第4の誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口がそれぞれ形成されているとともに、一方の開放終端部が前記各開口に接続され他方に送信アンテナまたは受信アンテナが設けられた金属導波管がそれぞれ設けられており、前記開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、前記第3の誘電体線路と前記第4の誘電体線路の各終端部の両側面に沿っているとともに前記第3の誘電体線路と前記第4の誘電体線路の各終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記第3の誘電体線路と前記第4の誘電体線路の各終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが前記高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記の構成により、送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、その結果受信信号のノイズが低減し、ミリ波信号の伝送特性に優れ、ミリ波レーダー等に適用した場合にその探知距離がさらに増大したものとなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のNRDガイドについて以下に詳細に説明する。図1,図5,図6,図7は本発明のNRDガイドを示す斜視図であり、これらの図に示すように、本発明のNRDガイドは、一対の平行平板導体1,2間に、断面形状が矩形(a×b)の誘電体線路3が配設されており、その終端部は閉じた終端部3aとなっており、高周波信号に対して短絡状態ではなく開放状態とされた終端部3aとなっている。このような構成のNRDガイドでは、図2に示したようなLSMモードによる電界の定在波が終端部3の端面からの反射波によって生じる。
【0021】
本発明では、この定在波の電界の強い部分、即ち図2におけるE1,E2,E3,E4のいずれかの箇所に対応する平行平板導体1の部位に、E1〜E4の各箇所のいずれかを中心とする開口5を設ける。なお、E1(下記mについてm=0)は誘電体線路3の終端部3a付近であり、E2(m=1),E3(m=2),E4(m=3)は終端部3aから管内波長のm/2(mは0以上の整数)倍の長さに相当する位置に存在する。そして、誘電体線路3と金属導波管4との接続位置については、低損失の点から、E2,E3またはE4の箇所に開口5を設けることが良い。さらに、低損失および小型化の点からE2の個所がより好ましい。
【0022】
図1(b)に示すように、開口5が形成された平行平板導体1の内面に金属箔100bが接着されている。金属箔100bを接着する接着層100aの厚さは100μm以下が好ましく、100μmを超えると、高周波信号の反射が著しく増大して伝送損失が大きくなる。また、金属箔100bの開口5に相当する部位には開口が形成されているが、この開口は開口5と略同じ形状であることが好ましい。金属箔の開口が開口5よりも小さいと、高周波信号の伝搬が妨げられて反射および伝送損失が増大する。金属箔の開口が開口5よりも大きいと、インピーダンスの不連続のため高周波信号の反射が起きて伝送損失が増大する。
【0023】
また本発明において、誘電体線路3は金属箔100bに押圧されて接しており、金属箔100bの誘電体線路3に接している部位がその残部の表面から80μm以下の深さで凹んでいることが好ましい。これにより、誘電体線路3と金属箔100bとの間の隙間がなくなり高周波信号の伝送特性が向上する。金属箔100bの誘電体線路3に接している部位が80μmを超えて凹んでいると、平行平板導体1,2の内面の形状が上下で非対称になることによる高周波信号の漏れが大きくなり、伝送損失が増大することになる。
【0024】
上記NRDガイドの誘電体線路3と金属導波管4とは、平行平板導体1の開口5を介して、これらの電界方向が合致するようにして接続される。即ち、図6に示すように、開口5に金属導波管4の一方の開放終端部41が接続される。これに加え、高周波信号(以下、信号ともいう)の漏洩等による接続損失を低減し信号の反射を小さくするために、図1に示すように、開口5の周辺で誘電体線路3の終端部3aの両側面に沿って電磁遮蔽部材B1,B2を配設しており、高周波信号の漏洩を防ぐことができる。また、終端部3aの端面に離隔して電磁遮蔽部材B3を設けており、終端部3aの端面側への高周波信号の漏洩を防ぐことができる。
【0025】
本発明の電磁遮蔽部材B1,B2,B3は、電気的導体材料からなっていればよく、具体的にはCu,Al,Fe,Ni,Cr,Ti,Au,Ag,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金),Fe−Ni合金,Fe−Ni−Co合金等の金属、合金、または上記金属元素の1種以上を主成分として含む合金が好ましい。これらは高い導電性を有し形状の加工性も比較的良好である。また、プラスチック、セラミックス等の絶縁性の基体表面に上記金属をメッキ法等により被着させたもの、あるいはプラスチック、セラミックス等の絶縁性の基体表面に上記金属の微粒子を含む導電性樹脂等をコートしたものでもよい。
【0026】
また、電磁遮蔽部材B1,B2,B3は、板状のもので壁を成すもの、梯子状のものを梯子段が立設するように配置したもの、格子状のもの、網目状のもの、複数のポール状(柱状)のものを立設して配列したもの等種々の形状とし得る。梯子状のものの場合の梯子段と梯子段との間隔、格子状のものの場合の格子間隔、網目状のもの場合の網目間隔、ポール状のものの場合のポール間隔は、電磁遮蔽を行ううえでそれぞれλ/4以下(λは高周波信号の波長)とするのがよい。
【0027】
電磁遮蔽部材B1〜B3の高さは、平行平板導体1,2の間隔bと同じであるのが、電磁遮蔽の点で好ましいが、電磁遮蔽部材B1〜B3の高さは間隔bよりも若干低くてもよい。電磁遮蔽部材B1,B2の長さcは、誘電体線路3の終端部3aの端面から開口5を超える長さとするのがよく、その場合信号の漏洩等を有効に抑えることができる。誘電体線路3の側面と電磁遮蔽部材B1,B2との間隔d1,d2は、それぞれλ/16以上が好ましく、λ/16未満では、電磁遮蔽部材B1,B2に対向する誘電体線路3のインピーダンスが変化し、誘電体線路3中を伝搬してきた信号の反射が大きくなる。また、誘電体線路3の幅とd1,d2との和に等しくなる電磁遮蔽部材B3の長さdは、動作周波数で不要モードが遮断される幅dx以下であり、幅dxを超えると、信号の漏洩等を有効に抑えることが困難になる。例えばdxは、信号の周波数が77GHz,誘電体線路3の比誘電率が4.9(コーディエライトセラミックス)の場合、約3.2mmである。
【0028】
また、誘電体線路3の端面と電磁遮蔽部材B3との間に間隔d3が有る場合、d3は特に限定するものではない。
【0029】
平行平板導体1の開口5の形状および寸法は、図1(a)に示すように、誘電体線路3の管内波長の半分以下の長さLと、誘電体線路3の幅aと同じ程度の幅Wを持つ長方形等の矩形がよく、このような矩形状の開口5は接続損失が小さいうえ加工性も良好である。また、矩形状に限らず、円形、長円形等であってもよい。
【0030】
さらに本発明において、図6に示すように、金属導波管4の他方の開放終端部42を漸次大口径化されたホーンアンテナ6と成すことが好ましい。これにより、金属導波管4の他方の開放終端部42をアンテナとして共用することができ、他のアンテナ部材を設ける場合と比較して、アンテナ部材との接続部による接続損失が小さくなる。また高周波信号を電波として外部に送受信可能とすることで、高効率の伝送特性を有する自動車用のミリ波レーダーシステム等に適用できる。また図7に示すように、金属導波管4の他方の開放終端部42に、平面アンテナ7等のアンテナ部材を設けることが好適である。この場合、図6の場合よりもアンテナ部材の接続損失が若干大きくなるが、開放終端部42にアンテナ部材を設けることで高周波信号を電波として外部に送受信可能となり、高効率の伝送特性を有する自動車用のミリ波レーダーシステム等に適用できる。
【0031】
本発明において、金属導波管4に設けられる開口面アンテナとしてはホーンアンテナ,積層型開口面アンテナ等があり、平面アンテナとしてはパッチアンテナ,スロットアンテナ,プリントダイポールアンテナ等があり、特にミリ波帯域ではミリ波集積回路の小型化の点で平面アンテナが好ましい。このアンテナについては、上記範疇のものであればその他種々のものが使用できる。
【0032】
本発明の金属導波管4はCu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS,真鍮等の導体材料、あるいはセラミックス,樹脂等から成る絶縁材料の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。これらの導体材料は、高い電気伝導度および加工性等の点で好適である。
【0033】
本発明の金属箔100bはCu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS,真鍮等の導体材料、あるいはセラミックス,樹脂等から成る絶縁材料の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。金属箔100bの厚さは1〜600μmがよく、1μm未満では、電流の流れる断面積が小さくなり、電気抵抗が大きくなるため伝送損失が増大する。600μmを超えると、金属箔100bの剛性が高くなり金属箔100bによって誘電体線路3の高さバラツキを吸収するのが困難になり、金属箔100bと誘電体線路3との間に隙間が発生して高周波信号の伝送損失が発生し易くなる。
【0034】
接着層100aは、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等から成り、その厚さは50〜100μmがよい。50μm未満では接着強度が低下し易くなり、100μmを超えると、金属導波管4と開口5との電磁的接続が不連続になってしまい伝送損失が増加し易くなる。
【0035】
本発明の誘電体線路3の材料は、テフロン,ポリスチレン等の樹脂、またはコーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)セラミックス,アルミナ(Al2O3)セラミックス,ガラスセラミックス等のセラミックスが好ましく、これらは高周波帯域において低損失である。
【0036】
本発明でいう高周波帯域は、数10〜数100GHz帯域のマイクロ波帯域およびミリ波帯域に相当し、例えば30GHz以上、特に50GHz以上、さらには70GHz以上の高周波帯域が好適である。
【0037】
本発明の平行平板導体1は、高い電気伝導度および加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS,真鍮等の導体板、またはセラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0038】
本発明のNRDガイドは、高周波発生素子としてガンダイオード等の高周波ダイオードを組み込むことによって、無線LAN,自動車のミリ波レーダー等に使用されるものであり、例えば自動車の周囲の障害物および他の自動車に対しミリ波を照射し、反射波を元のミリ波と合成して中間周波信号を得、この中間周波信号を分析することにより障害物および他の自動車までの距離、それらの移動速度等が測定できる。
【0039】
本発明のミリ波送受信器について以下に説明する。図8〜図11は本発明のミリ波送受信器を示し、図8は送信アンテナと受信アンテナが一体化されたものの平面図、図9は送信アンテナと受信アンテナが独立したものの平面図、図10はミリ波信号発振部の斜視図、図11はミリ波信号発振部用の可変容量ダイオード(バラクタダイオード)を設けた配線基板の斜視図である。
【0040】
図8において、51は本発明の一方の平行平板導体(他方は省略する)、52は第1の誘電体線路53の一端に設けられた電圧制御型のミリ波信号発振部である。ミリ波信号発振部は、ガンダイオード等の高周波ダイオードと可変容量ダイオードを具備し、バイアス電圧印加方向がミリ波信号の電界方向に合致するように、第1の誘電体線路53の高周波ダイオード(高周波発生素子)近傍に可変容量ダイオードが配置されており、その可変容量ダイオードの入出力電極間に印加するバイアス電圧を制御して、高周波ダイオードからのミリ波信号を三角波,正弦波等で周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する。
【0041】
53は、高周波ダイオードから出力された高周波信号が変調されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路、54は、第1,第3,第4の誘電体線路にそれぞれ接続される第1,第2,第3の接続部54a,54b,54cを有するフェライト円板等から成るサーキュレータ、55は、サーキュレータ54の第2の接続部54bに接続され、ミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナ56を有する第3の誘電体線路、56は、第3の誘電体線路55に金属導波管を介して接続される送受信アンテナである。このサーキュレータ54は、平行平板導体51に平行に配設されたフェライト円板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部54a,第2の接続部54bおよび第3の接続部54cを有し、一つの接続部から入力されたミリ波信号をフェライト円板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるものである。
【0042】
また57は、送受信アンテナ56で受信され第3の誘電体線路55を伝搬してサーキュレータ54の第3の接続部54cより出力した受信波をミキサー59側へ伝搬させる第4の誘電体線路、58は、第1の誘電体線路53に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路53に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー59側へ伝搬させる第2の誘電体線路、58aは、第2の誘電体線路58のミキサー59と反対側の一端部に設けられた無反射終端部(ターミネータ)である。また、図中M1は、第2の誘電体線路58の中途と第4の誘電体線路57の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、ミリ波信号の一部と受信波を混合させて中間周波信号を発生させるミキサー部である。
【0043】
本発明では、第1の誘電体線路53と第2の誘電体線路58とを接合する場合、誘電体線路53,58のうちいずれか一方の接合部を円弧状となし、その円弧状部の曲率半径rを高周波信号の波長λ以上とするのがよい。これにより、高周波信号を低損失に、かつ出力電力を均等に分岐させることができる。また、第2の誘電体線路58と第4の誘電体線路57とを接合する場合、上記と同様に誘電体線路58,57のうちいずれか一方の接合部を円弧状となし、その円弧状部の曲率半径rを高周波信号の波長λ以上とするのがよい。
【0044】
そして、上記の各種部品はミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に設けられており、第3の誘電体線路55の開放状態とされた終端部から生じる定在波の電界が最大になる箇所に対応して、少なくとも一方の平行平板導体に開口が形成され、その開口から金属導波管を介して送受信アンテナ56が設けられている。この金属導波管、送受信アンテナの構成、金属導波管と第3の誘電体線路55との接続構造、および各誘電体線路の詳細な構成、材料、電磁遮蔽部材等については、上述した本発明のものと同様である。
【0045】
図8のものにおいて、第1の誘電体線路53の中途に、図11に示した構成の変調器としてのスイッチを設け、ミリ波信号をパルス変調等することもできる。例えば、図11のように、配線基板38の一主面にチョーク型バイアス供給線路40を形成し、その中途に実装されたPINダイオードやショットキーバリアダイオードを設けたスイッチである。この配線基板38を、第1の誘電体線路53の第2の誘電体線路58との信号分岐部とサーキュレータ54との間に、PINダイオードやショットキーバリアダイオードなどの振幅変調用ダイオードの入出力電極に印加されるバイアス電圧印加方向が高周波信号の電界方向に合致するようにして、図10に示すように第1の誘電体線路53に介在させるものである。
【0046】
また、第1の誘電体線路53にもう一つのサーキュレータを介在させ、その第1,第3の接続部に第1の誘電体線路53を接続し、第2の接続部に他の誘電体線路を接続し、その誘電体線路の先端部の端面に、図11のようなショットキーバリアダイオードを設けたスイッチを設置してもよい。
【0047】
本発明のミリ波送受信器の実施の形態の他の例として送信アンテナと受信アンテナを独立させた図9のタイプがある。同図において、61は一方の平行平板導体(他方は省略する)、62は第1の誘電体線路63の一端に設けられた電圧制御型のミリ波信号発振部である。このミリ波信号発振部は、ガンダイオード等の高周波ダイオードと可変容量ダイオードを具備しており、バイアス電圧印加方向がミリ波信号の電界方向に合致するように、第1の誘電体線路63の高周波ダイオード近傍に可変容量ダイオードが配置されており、その可変容量ダイオードの入出力電極間に印加するバイアス電圧を制御して、高周波ダイオードからのミリ波信号を三角波,正弦波等で周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する。
【0048】
63は、高周波ダイオードから出力された高周波信号が変調されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路、64は、第1,第3,第5の誘電体線路63,65,67にそれぞれ接続される第1,第2,第3の接続部64a,64b,64cを有するフェライト円板等から成るサーキュレータ、65は、サーキュレータ64の第2の接続部64bに接続され、ミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナ66を有する第3の誘電体線路、66は、第3の誘電体線路65に金属導波管を介して接続される送信アンテナ、67は、サーキュレータ64の第3の接続部64cに接続され、送信用のミリ波信号を減衰させる無反射終端部67aが先端に設けられた第5の誘電体線路である。
【0049】
また68は、第1の誘電体線路63に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路63に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー71側へ伝搬させる第2の誘電体線路、68aは、第2の誘電体線路68のミキサー71と反対側の一端部に設けられた無反射終端部、69は、受信アンテナ70で受信された受信波をミキサー71側へ伝搬させる第4の誘電体線路である。また、図中M2は、第2の誘電体線路68の中途と第4の誘電体線路69の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させることにより、ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー部である。
【0050】
本発明では、第1の誘電体線路63と第2の誘電体線路68とを接合する場合、誘電体線路63,68のうちいずれか一方の接合部を円弧状となし、その円弧状部の曲率半径rを高周波信号の波長λ以上とするのがよい。これにより、高周波信号を低損失で、かつ出力電力を均等に分岐させることができる。また、第2の誘電体線路68と第4の誘電体線路69とを接合する場合、上記と同様に誘電体線路68,69のうちいずれか一方の接合部を円弧状となし、その円弧状部の曲率半径rを高周波信号の波長λ以上とするのがよい。
【0051】
そして、これらの各種部品は、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に設けられており、第3の誘電体線路65と第4の誘電体線路69のそれぞれについて、それぞれの開放状態の終端部からの反射波によって生じるLSM01モードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して少なくとも一方の平行平板導体に開口が形成され、その開口に、一端に送信アンテナ66または受信アンテナ70が設けられた金属導波管の他端の開放終端部が接続されている。この金属導波管,送受信アンテナの構成、金属導波管と第3の誘電体線路65,第4の誘電体線路69との接続構造、および各誘電体線路の詳細な構成、材料、電磁遮蔽部材等については、上述した本発明のものと同様である。
【0052】
図9において、サーキュレータ64をなくし、第1の誘電体線路63の先端部に送信アンテナ66を接続した構成とすることもできる。この場合、小型化されたものとなるが、受信波の一部がミリ波信号発振部62に混入しノイズ等の原因となり易いため、図9のタイプが好ましい。
【0053】
また図9において、第1の誘電体線路63の中途に、図11に示した構成のスイッチを設け、それを振幅変調信号で制御することでミリ波信号を振幅変調することもできる。例えば、図11のように、配線基板38の一主面にチョーク型バイアス供給線路40を形成し、その中途に実装されたビームリードタイプのPINダイオードやショットキーバリアダイオードを設けたスイッチである。この配線基板38を、第1の誘電体線路63の第2の誘電体線路68との信号分岐部と、サーキュレータ64との間に、PINダイオードやショットキーバリアダイオードなどの振幅変調用ダイオードの入出力電極に印加されるバイアス電圧印加方向が高周波信号の電界方向に合致するようにして、図10に示すように第1の誘電体線路53に介在させるものである。
【0054】
また、第1の誘電体線路63にもう一つのサーキュレータを介在させ、その第1,第3の接続部に第1の誘電体線路63を接続し、第2の接続部に他の誘電体線路を接続し、その誘電体線路の先端部の端面に、図11のようなショットキーバリアダイオードを設けたスイッチを設置してもよい。
【0055】
図9のタイプにおいて、第2の誘電体線路68が、第3の誘電体線路65に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第3の誘電体線路65に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー71側へ伝搬させるように配置されていてもよい。
【0056】
図8,図9のミリ波送受信器で、平行平板導体間の間隔は、ミリ波信号の空気中での波長であって、使用周波数での波長の2分の1以下となる。また、送受信アンテナ56,送信アンテナ66,受信アンテナ70を接続するための開口が形成された平行平板導体51,61の内面には金属箔が接着されている。
【0057】
図8,図9のミリ波送受信器用のミリ波信号発振部52,62を図10,図11に示す。これらの図において、32は、ガンダイオード33を設置するための金属ブロック等の金属部材、33は、ミリ波を発振する高周波ダイオードの1種であるガンダイオード、34は、金属部材32の一側面に設置され、ガンダイオード33にバイアス電圧を供給するとともに高周波信号の漏れを防ぐローパスフィルタとして機能するチョーク型バイアス供給線路34aを形成した配線基板、35は、チョーク型バイアス供給線路34aとガンダイオード33の上部導体とを接続する金属箔リボン等の帯状導体、36は、誘電体基体に共振用の金属ストリップ線路36aを設けた金属ストリップ共振器、37は、金属ストリップ共振器36により共振した高周波信号をミリ波信号発振部外へ導く誘電体線路である。
【0058】
さらに、誘電体線路37の中途には、周波数変調用ダイオードであって可変容量ダイオードの1種であるバラクタダイオード30を装荷した配線基板38を設置している。このバラクタダイオード30の入出力電極は、誘電体線路37での高周波信号の伝搬方向に垂直かつ平行平板導体の主面に平行な方向(電界方向)に並んでいる。また、バラクタダイオード30の入出力電極に印可されるバイアス電圧の印加方向は、誘電体線路37中を伝搬するLSM01モードの高周波信号の電界方向と合致しており、これにより高周波信号とバラクタダイオード30とを電磁結合させ、バイアス電圧を制御することによりバラクタダイオード30の静電容量を変化させることで、高周波信号の周波数を制御できる。また、39は、バラクタダイオード30と誘電体線路37とのインピーダンス整合をとるための高比誘電率の誘電体板である。
【0059】
また図11に示すように、配線基板38の一主面にはチョーク型バイアス供給線路40が形成され、チョーク型バイアス供給線路40の中途にビームリードタイプのバラクタダイオード30が配置される。チョーク型バイアス供給線路40のバラクタダイオード30との接続部には、接続用の電極31が形成されている。
【0060】
そして、ガンダイオード33から発振された高周波信号は、金属ストリップ共振器36を通して誘電体線路37に導出される。次に、高周波信号の一部はバラクタダイオード30部で反射されてガンダイオード33側へ戻る。この反射信号がバラクタダイオード30の静電容量の変化に伴って変化し、発振周波数が変化する。
【0061】
図8,図9のミリ波送受信器はFMCW(Frequency Modulation Continuous Waves)方式であり、その動作原理は以下のようなものである。ミリ波信号発振部の変調信号入力用のMODIN端子に電圧振幅の時間変化が三角波等となる入力信号を入力し、その出力信号を周波数変調し、ミリ波信号発振部の出力周波数偏移を三角波等になるように偏移させる。そして、送受信アンテナ56,送信アンテナ66より出力信号(送信波)を放射した場合、送受信アンテナ56,送信アンテナ66の前方にターゲットが存在すると、電波の伝搬速度の往復分の時間差をともなって、反射波(受信波)が戻ってくる。この時、ミキサー59,71の出力側のIFOUT端子には、送信波と受信波の周波数差が出力される。このIFOUT端子の出力周波数等の周波数成分を解析することで、Fif=4R・fm・Δf/c{Fif:IF(Intermediate Frequency)出力周波数,R:距離,fm:変調周波数,Δf:周波数偏移幅,c:光速}という関係式から距離を求めることができる。
【0062】
本発明のミリ波信号発振部において、チョーク型バイアス供給線路34aおよび帯状導体35の材料は、Cu,Al,Au,Ag,W,Ti,Ni,Cr,Pd,Pt等から成り、特にCu,Agが、電気伝導度が良好であり、損失が小さく、発振出力が大きくなるといった点で好ましい。また、帯状導体35は金属部材32の表面から所定間隔をあけて金属部材32と電磁結合しており、チョーク型バイアス供給線路34aとガンダイオード33間に架け渡されている。即ち、帯状導体35の一端はチョーク型バイアス供給線路34aの一端に半田付け等により接続され、帯状導体35の他端はガンダイオード33の上部導体に半田付け等により接続されており、帯状導体35の中央部は宙に浮いた状態となっている。
【0063】
そして、金属部材32は、ガンダイオード33の電気的な接地を兼ねているため金属導体(合金を含む)であれば良く、例えば真鍮,Al,Cu,SUS,Ag,Au,Pt等から成る。また金属部材32は、全体が金属から成る金属ブロック、セラミックスやプラスチック等の絶縁基体の表面全体または部分的に金属メッキしたもの、絶縁基体の表面全体または部分的に導電性樹脂材料等をコートしたものであっても良い。
【0064】
かくして、本発明の図8のミリ波送受信器は、ミリ波信号の伝送特性に優れ、ミリ波レーダーの探知距離を増大し得るものとなる。また図9のものは、送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、その結果受信信号のノイズが低減し、ミリ波レーダーの探知距離がさらに増大したものとなる。
【0066】
図1,図6に示すNRDガイドと金属導波管との接続構造を以下のように構成した。まず、図1のNRDガイドを以下のように構成した。一対の平行平板導体1,2として、縦50mm、横50mm、厚さ6mmの2枚のAl板を1.8mmの間隔で平行に配置し、断面形状が幅aが0.8mm、高さbが1.8mmで長さが60mm、比誘電率4.8のコーディエライトセラミックスから成る誘電体線路3を平行平板導体1,2板間に設置することで、NRDガイドの本体部分を作製した。そして、誘電体線路3の終端部3a側の上面に、図1に示す接続構造を設けた。即ち、誘電体線路3の終端部3aの端面から2.52mmの位置に中心を持つ、幅Wが1.55mm、長さLが3.10mmの矩形の開口5を平行平板導体1に開けた。
【0067】
開口5が形成された平行平板導体1の内面に、厚さ80μmのAlから成る金属箔100bを、厚さ50μmで比誘電率3程度のアクリル樹脂から成る接着層100aを介して接着した。
【0068】
また、図1に示すように、Alから成る板状の電磁遮蔽部材B1,B2を、終端部3a側の誘電体線路3の両側面に沿うように立設した。このとき、電磁遮蔽部材B1,B2の高さbは1.8mm、電磁遮蔽部材B1,B2の長さcは5.8mm、電磁遮蔽部材B1,B2と誘電体線路3の側面との間隔d1,d2はそれぞれ1.55mmであった。
【0069】
そして、開口5に対して、開口5と略同じ断面形状を有する金属導波管4を接続した。この接続構造について、LSMモードからの伝送損失s21、即ち誘電体線路3から金属導波管4へ伝搬する際の伝送損失(接続損失)を、有限要素法によりシミュレーションして算出した。この計算結果を図3のグラフ(実線)に示す。図3より、厚さ130μmの金属箔100bおよび接着層100aを設けた場合、誘電体線路3側の伝送特性は76〜77GHzで約−0.35dB、76.5GHzで−0.30dBの良好な特性が得られた。
【0070】
開口5が形成された平行平板導体1の内面と誘電体線路3との間に130μmの空隙を設けた場合のシミュレーションを行った。結果を図3(破線)に示す。その結果、誘電体線路3側の反射特性は76〜77GHzで約−0.48dB、76.5GHzで−0.47dBの特性であった。
【0071】
図3の結果から明らかなように、開口5が形成された平行平板導体1の内面と誘電体線路3との間に130μmの空隙を設けた場合、伝送損失が劣化した。これに対し、本実施例のものの場合良好な伝送特性を示し、低損失な接続が可能なことが判った。
【0072】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何等差し支えない。
【0073】
【発明の効果】
本発明は、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体間に高周波信号を伝搬させる誘電体線路が設置されて成るNRDガイドに対して、少なくとも一方の平行平板導体に誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口が形成されるとともにその開口に金属導波管の開放終端部が接続されているNRDガイドと金属導波管との接続構造において、開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、誘電体線路の両側面に沿っているとともに誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材が設けられていることにより、NRDガイドと金属導波管とを、高周波信号の反射および伝送損失を小さくして接続できる。即ち、平行平板導体および誘電体線路の平坦度の悪さにより、平行平板導体と誘電体線路との間に空隙ができた場合、高周波信号の反射および伝送損失が著しく大きくなるが、本発明では、金属箔を設けることにより平行平板導体と誘電体線路との間の空隙を殆どなくして、高周波信号の反射および伝送損失をきわめて小さくすることができる。
【0074】
本発明は、好ましくは金属箔を接着する接着層は厚みが100μm以下であることにより、高周波信号の伝送損失の劣化をより抑えることができる。
【0075】
また本発明は、好ましくは誘電体線路は金属箔に押圧されて接しており、金属箔の誘電体線路に接している部位がその残部の表面から80μm以下の深さで凹んでいることにより、高周波信号の伝送損失の劣化をさらに抑えることができる。
【0076】
本発明の送受信アンテナを具備したNRDガイド型のミリ波送受信器は、少なくとも一方の平行平板導体に第3の誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口が形成されているとともに、一方の開放終端部が開口に接続され他方に送受信アンテナが設けられた金属導波管が設けられており、開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、第3の誘電体線路の両側面に沿っているとともに第3の誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記第3の誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材が設けられていることにより、ミリ波信号の伝送特性に優れ、ミリ波レーダー等に適用した場合にその探知距離が増大するものとなる。
【0077】
また、本発明の送信アンテナと受信アンテナが独立したNRDガイド型のミリ波送受信器は、少なくとも一方の平行平板導体に第3の誘電体線路中および第4の誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口がそれぞれ形成されているとともに、一方の開放終端部が各開口に接続され他方に送信アンテナまたは受信アンテナが設けられた金属導波管がそれぞれ設けられており、開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、第3の誘電体線路と第4の誘電体線路の各終端部の両側面に沿っているとともに第3の誘電体線路と第4の誘電体線路の各終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記第3の誘電体線路と前記第4の誘電体線路の各終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材がそれぞれ設けられていることにより、送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、その結果受信信号のノイズが低減してミリ波信号の伝送特性に優れ、ミリ波レーダー等に適用した場合のその探知距離がさらに増大したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のNRDガイドと金属導波管との接続構造について実施の形態の例を示す部分透過斜視図、(b)は(a)において誘電体線路と金属導波管との接続部の断面斜視図である。
【図2】NRDガイド内の誘電体線路の電界分布を説明するための平面図である。
【図3】図1の接続構造の高周波信号の伝送特性を示すグラフである。
【図4】従来例を示し、NRDガイドの誘電体線路にマイクロストリップ線路を接続したものの斜視図である。
【図5】本発明の接続構造について実施の形態の他の例を示し、平行平板導体の主面に平行な方向で誘電体線路に金属導波管を接続したものの斜視図である。
【図6】本発明の接続構造について実施の形態の他の例を示し、平行平板導体の主面に垂直な方向において他方の開放終端部にホーンアンテナを設けた金属導波管を誘電体線路に接続したものの斜視図である。
【図7】本発明の接続構造について実施の形態の他の例を示し、平行平板導体の主面に垂直な方向において他方の開放終端部に平面アンテナを設けた金属導波管を誘電体線路に接続したものの斜視図である。
【図8】本発明のNRDガイド型のミリ波送受信器について実施の形態の例を示す平面図である。
【図9】本発明のNRDガイド型のミリ波送受信器について実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図10】本発明のミリ波送受信器用のミリ波信号発振部の斜視図である。
【図11】図10のミリ波信号発振部用の可変容量ダイオードを設けた配線基板の斜視図である。
【符号の説明】
1,2:平行平板導体
3:誘電体線路
3a:誘電体線路の終端部
4:金属導波管
5:開口
100a:接着層
100b:金属箔
Claims (5)
- 高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体間に前記高周波信号を伝搬させる誘電体線路が設置されて成る非放射性誘電体線路に対して、少なくとも一方の前記平行平板導体に前記誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口が形成されるとともに該開口に金属導波管の開放終端部が接続されている非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造において、前記開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、前記誘電体線路の両側面に沿っているとともに前記誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが前記高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材が設けられていることを特徴とする非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造。
- 前記金属箔を接着する接着層は厚みが100μm以下であることを特徴する請求項1記載の非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造。
- 前記誘電体線路は前記金属箔に押圧されて接しており、前記金属箔の前記誘電体線路に接している部位がその残部の表面から80μm以下の深さで凹んでいることを特徴とする請求項1または請求項2記載の非放射性誘電体線路と金属導波管との接続構造。
- ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体間に、
高周波発生素子が一端部に付設され、前記高周波発生素子から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、
バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、
前記第1の誘電体線路に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記ミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、
前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記ミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、
該サーキュレータの前記第2の接続部に接合され、先端部に送受信アンテナを有する第3の誘電体線路と、
前記送受信アンテナで受信され前記第3の誘電体線路を伝搬して前記サーキュレータの第3の接続部より出力した受信波をミキサー側へ伝搬させる第4の誘電体線路と、
前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサーと、を設けたミリ波送受信器において、
少なくとも一方の前記平行平板導体に前記第3の誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口が形成されているとともに、一方の開放終端部が前記開口に接続され他方に送受信アンテナが設けられた金属導波管が設けられており、前記開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、前記第3の誘電体線路の両側面に沿っているとともに前記第3の誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記第3の誘電体線路の終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが前記高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材が設けられていることを特徴とするミリ波送受信器。 - ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置された平行平板導体間に、
高周波発生素子が一端部に付設され、前記高周波発生素子から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、
バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、
前記第1の誘電体線路に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記ミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、
前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記ミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、
該サーキュレータの前記第2の接続部に接続され、先端部に送信アンテナを有する第3の誘電体線路と、
先端部に受信アンテナ、他端部にミキサーが各々設けられた第4の誘電体線路と、
前記サーキュレータの前記第3の接続部に接続され、前記送信アンテナで受信混入した受信波を伝搬させるとともに先端部に設けられた無反射終端部で前記受信波を減衰させる第5の誘電体線路と、
前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、
少なくとも一方の前記平行平板導体に前記第3の誘電体線路中および前記第4の誘電体線路中を伝搬するLSMモードの定在波の電界が最大になる箇所に対応して開口がそれぞれ形成されているとともに、一方の開放終端部が前記各開口に接続され他方に送信アンテナまたは受信アンテナが設けられた金属導波管がそれぞれ設けられており、前記開口が形成された平行平板導体の内面に金属箔が接着されており、前記第3の誘電体線路と前記第4の誘電体線路の各終端部の両側面に沿っているとともに前記第3の誘電体線路と前記第4の誘電体線路の各終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材であって、前記第3の誘電体線路と前記第4の誘電体線路の各終端部の端面に離隔して設けられた電磁遮蔽部材の長さが前記高周波信号の周波数で不要モードが遮断される長さ以下の電磁遮蔽部材がそれぞれ設けられていることを特徴とするミリ波送受信器。
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