JP3652275B2 - 非放射性誘電体線路用のパルス変調器およびそれを用いたミリ波送受信器 - Google Patents
非放射性誘電体線路用のパルス変調器およびそれを用いたミリ波送受信器 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非放射性誘電体線路型のミリ波集積回路,ミリ波レーダーモジュール等に組み込まれて、ミリ波信号をASK(Amplituted Shift Keying)変調等させるパルス変調器、およびそれを用いた非放射性誘電体線路構造のミリ波送受信器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、マイクロ波やミリ波の高周波信号を伝送させる非放射性誘電体線路(Nonradiative Dielectric Waveguideで、以下、NRDガイドという)の基本構成を図3に示す。同図に示すように、所定の間隔aでもって平行配置された平行平板導体11,12間に、断面が長方形等の矩形状の誘電体線路13を配置した構成であり、この間隔aが高周波信号の波長λに対してa≦λ/2であれば、外部から誘電体線路13へのノイズの侵入をなくしかつ外部への高周波信号の放射をなくして、誘電体線路13中で高周波信号を伝搬させることができる。なお、高周波信号の波長λは使用周波数における空気中(自由空間)での波長である。
【0003】
このようなNRDガイドに組み込まれるパルス変調器の斜視図を図4(a)、上方から見たときの平面図を図4(b)に示す{IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL.46,NO.6,JUNE 1998,pp806-810,“High-Speed ASK Transceiver Based on the NRD-Guide Technology at 60-GHz Band”(Futoshi Kuroki)参照}。
【0004】
同図において、20は高周波信号(電磁波)を伝搬させるテフロン,ポリスチレン等から成る誘電体線路で、この誘電体線路20の一端面には、所定の空隙をあけて、テフロン,ポリスチレン等から成る他の誘電体線路21が配置され、さらに誘電体線路20,21とは誘電率の異なるアルミナセラミックス等から成る誘電体シート24が配置されている。そして、誘電体シート24の後方には、Cu箔等からなるチョーク型バイアス供給線路構造のストリップ線路導体25がプリントされ、ストリップ線路導体25の中途にショットキーバリアダイオード26が実装された配線基板23が配置される。また、配線基板23の後方には、テフロン,ポリスチレン等から成るさらに他の誘電体線路22が配置されている。
【0005】
そして、誘電体線路20を伝搬した電磁波は、その先の配線基板23上のショットキーバリアダイオード26において、ショットキーバリアダイオード26に順方向にバイアス電圧をかけたときは吸収され、無バイアスまたは逆方向にバイアス電圧をかけたときは反射する。
【0006】
ショットキーバリアダイオード26で反射された電磁波は、再び誘電体線路20中を伝搬し出力される。このようにして、ショットキーバリアダイオード26にバイアス電圧をかけることにより、電磁波にASK変調を施すことができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のNRDガイド用のパルス変調器では、所望の周波数で動作させるために、誘電体線路20と誘電体線路21との空隙、誘電体線路21,22の長さ、誘電体シート24の厚みでインピーダンスの整合をとっており、それらの位置ずれや加工精度が低いと動作周波数がずれ、所望の周波数でのASK変調の特性が劣化していた。即ち、それらの加工精度および位置決め精度の維持管理が難しく、また組立ての再現性が低いため、製造の作業性が悪くなり、信頼性の高いものとならず、量産にも向かないという問題点があった。
【0008】
さらに、従来のNRDガイド用のパルス変調器では、図4(b)のように、ショットキーバリアダイオード26が実装された配線基板23を誘電体シート24と誘電体線路22で挟む構成になっており、このため組立作業時にショットキーバリアダイオード26に誘電体線路22が接触し、ショットキーバリアダイオード26を破損するという問題点があった。
【0009】
このような従来のパルス変調器を備えたミリ波送受信器では、ASK変調が不十分なため、ミリ波信号のアイソレーション特性が劣化し、ミリ波レーダ等に適用した際に正確な探知が困難になるという問題点があった。
【0010】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、パルス変調器の組立再現性が向上し、また所望の周波数で動作させるためのインピーダンス整合が容易になるように改善し、パルス変調器の特性を再現性良く安定して得られるとともに、製造が容易化されて量産性に優れたものとすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の非放射性誘電体線路用のパルス変調器は、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、前記高周波信号を伝搬させる誘電体線路と、該誘電体線路の一端側に空隙および他の誘電体線路を介して、配線基板上のチョーク型バイアス供給線路の中途にショットキーバリアダイオードが接続されているとともに該ショットキーバリアダイオードのバイアス電圧印加方向がLSMモードの電磁波の電界方向に合致するように設置されているパルス変調用スイッチとを具備しており、前記空隙の間隔が、前記ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときの前記ショットキーバリアダイオードから前記他の誘電体線路への高周波信号の反射量と前記空隙から前記誘電体線路への高周波信号の反射量とが略同じになるように設定されているとともに、前記ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときと逆方向にバイアス電圧を印加したときとで、前記ショットキーバリアダイオードにて反射される高周波信号の位相が180°異なっていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の構成により、所望の周波数で動作させるためのインピーダンスの整合を空隙の間隔と他の誘電体線路の長さで行っているため、従来のような誘電体シートや配線基板の裏面側の誘電体線路が不要となり、部品点数が削減され、組立再現性が向上する。また、所望の周波数で動作させるためのインピーダンス整合が容易になり、パルス変調器の良好な特性を再現性良く安定して得られる。従って、信頼性の高いパルス変調器を生産性良く製造できる。
【0013】
本発明において、前記空隙の間隔が、前記ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときの前記ショットキーバリアダイオードから前記他の誘電体線路への高周波信号の反射量と前記空隙から前記誘電体線路への高周波信号の反射量とが略同じになるように設定されている。
【0014】
本発明は、上記の構成により、パルス変調器のON時とOFF時の高周波信号の反射量の差が最も大きくなり、パルス変調器のアイソレーション特性がより良好になるという作用効果がある。
【0015】
本発明のミリ波送受信器は、送信用のミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、該第1の誘電体線路に付設され、前記高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を前記第1の誘電体線路中へ伝搬させるミリ波信号発振部と、前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは前記第1の誘電体線路に一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記送信用のミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記送信用のミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記送信用のミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続される第1のサーキュレータと、前記サーキュレータと同構成であって、前記第1のサーキュレータの前記第3の接続部に第1の接続部が接続される第2のサーキュレータと、該第2のサーキュレータの第2の接続部に接続され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナを有する第3の誘電体線路と、前記送受信アンテナで受信され前記第3の誘電体線路を伝搬して前記第2のサーキュレータの前記第3の接続部より出力した受信波をミキサー側へ伝搬させる第4の誘電体線路と、前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途を近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と前記受信波とを混合させて中間周波信号を発生するミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、前記第1のサーキュレータの第2の接続部に、請求項1記載のパルス変調器が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明のミリ波送受信器は、上記の構成により、ミリ波信号のASK変調等のパルス変調によるアイソレーション特性が改善され、その結果ミリ波レーダー等に適用した場合にその探知距離を増大し得るものとなる。
【0017】
また、本発明のミリ波送受信器は、送信用のミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、該第1の誘電体線路に付設され、前記高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を前記第1の誘電体線路中へ伝搬させるミリ波信号発振部と、前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは前記第1の誘電体線路に一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記送信用のミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記送信用のミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記送信用のミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の接続部に接続され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナを有する第3の誘電体線路と、先端部に受信アンテナ、他端部にミキサーが各々設けられた第4の誘電体線路と、前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生するミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、前記サーキュレータの前記第3の接続部に、請求項1記載のパルス変調器が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明のミリ波送受信器は、このような構成により、ミリ波信号のASK変調等のパルス変調によるアイソレーション特性が改善され、また送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、従ってミリ波レーダーモジュールに適用した場合受信信号のノイズが低減してミリ波信号の伝送特性に優れ、さらに探知距離が増大するものとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のNRDガイド用のパルス変調器、およびそれを用いたミリ波送受信器としてのミリ波レーダーモジュールについて以下に説明する。図1(a)は本発明のパルス変調器の斜視図、図1(b)は本発明のパルス変調器を上方から見た平面図である。なお、同図において平行平板導体は省略している。
【0020】
同図において、1は、テフロン,ポリスチレン,コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)セラミックス、ガラスセラミックス等から成る誘電体線路、2は、誘電体線路1と同じ材料からなる他の誘電体線路、3は、誘電体線路1と誘電体線路2との間に設けられた空隙である。
【0021】
また、誘電体線路1の一端側に空隙3および他の誘電体線路2を介して、配線基板5上のチョーク型バイアス供給線路6の中途にショットキーバリアダイオード4が接続されているとともにショットキーバリアダイオード4のバイアス電圧印加方向がLSMモードの電磁波の電界方向Eに合致するように設置されているパルス変調用スイッチSpがある。
【0022】
また、図2は、パルス変調用スイッチSpの配線基板5の平面図であり、チョーク型バイアス供給線路6はλ/4の幅の広い線路部と幅の狭い線路部とが交互に形成されたチョークパターンが施されている。
【0023】
そして、本発明では、誘電体線路2の長さd1と空隙3の間隔d2により、インピーダンス整合がとれ、ASK変調の動作を所望の周波数で行うことが可能となる。
【0024】
本発明のパルス変調器では、誘電体線路1を伝搬してきた電磁波は、まず空隙3により電磁波の一部分が反射する。なお、この時の反射量は空隙3の間隔d2により決定される。そして、残りの電磁波は、誘電体線路2を伝搬し、その先の配線基板5上のチョーク型バイアス供給線路6に実装されたショットキーバリアダイオード4にて、ショットキーバリアダイオード4に順方向にバイアス電圧をかけたときと逆方向に電圧をかけたときとで、位相が180°異なって反射される。反射された電磁波は、再び誘電体線路2を伝搬し、先に空隙3で一部反射した電磁波と合流する。この時、所望の周波数で、ショットキーバリアダイオード4に順方向にバイアスをかけたときに打ち消し合い、逆方向にバイアスをかけたときに強め合うように誘電体線路2の長さを設定し、かつショットキーバリアダイオード4に順方向にバイアスをかけたときの反射量と空隙3での反射量が同じになるように空隙3の大きさを設定するのがよい。
【0025】
例えば、周波数76.5GHzの場合、誘電体線路2の長さd1は、−15dB程度のアイソレーション特性を得るには3.4〜3.8mm程度とするのがよい。また、周波数76.5GHzの場合、空隙3の間隔d2は、ショットキーバリアダイオード4から他の誘電体線路2への高周波信号の反射量(−11dB程度)と空隙3から誘電体線路1への高周波信号の反射量(−10dB程度)とが略同じになるように設定するには、0.3〜0.5mm程度がよい。この範囲内であれば、周波数76.5GHzにおいてアイソレーション−15dB以上の良好な特性のパルス変調が得られる。
【0026】
このように、所望の周波数でショットキーバリアダイオード4に順方向にバイアスをかけたときは、空隙3とショットキーバリアダイオード4の反射波が打ち消し合い、電磁波は反射されない。一方、ショットキーバリアダイオード4に逆方向にバイアスをかけたときは、空隙3とショットキーバリアダイオード4の反射波が強め合い、電磁波はほぼ全反射され、良好なASK変調が可能となる。
【0027】
本発明でいう高周波帯域は、数10〜数100GHz帯域のマイクロ波帯域およびミリ波帯域に相当し、例えば30GHz以上、特に50GHz以上、更には70GHz以上の高周波帯域が好適である。
【0028】
本発明のNRDガイド用の平行平板導体は、高い電気伝導度および加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金)等の導体板、あるいはセラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0029】
また、本発明のパルス変調器が組み込まれるNRDガイドは、高周波発生素子としてガンダイオード等の高周波ダイオードを組み込むことによって、無線LAN,自動車のミリ波レーダ等に使用されるものであり、例えば自動車の周囲の障害物および他の自動車に対しミリ波を照射し、反射波を元のミリ波と合成して中間周波信号を得、この中間周波信号を分析することにより障害物および他の自動車までの距離、それらの移動速度等が測定できる。
【0030】
かくして、本発明のNRDガイド用のパルス変調器は、誘電体線路と配線基板との間に空隙および他の誘電体線路を設けたことにより、容易にインピーダンス整合がとれ所望の周波数で良好なASK変調を行うことが可能となる。
【0031】
次に、本発明のミリ波送受信器としてのミリ波レーダーモジュールについて以下に説明する。図6〜図8は本発明のミリ波レーダーモジュールについて示すものであり、図6は送信アンテナと受信アンテナが一体化されたものの平面図、図7は送信アンテナと受信アンテナが独立したものの平面図、図8はミリ波信号発振部の斜視図である。
【0032】
図6において、51は本発明の一方の平行平板導体(他方は省略する)、52は第1の誘電体線路53の一端に設けられたミリ波信号発振部であり、送信用のミリ波信号を出力する。
【0033】
53は、高周波発生素子としてのガンダイオード等の高周波ダイオードから出力された高周波信号が変調されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路、54aは第1の誘電体線路53に続く第1のモードサプレッサ、55aは、第1,第2,第3のモードサプレッサ54a〜54cとフェライト円板とから成る第1のサーキュレータである。56は、第1のサーキュレータ55aの第2のモードサプレッサ54bの一端側に、所定の空隙を開けて設けられた誘電体線路、57は、誘電体線路56に接続されたショットキーバリアダイオード(図示せず)が実装された配線基板(パルス変調用スイッチ)であり、本発明のパルス変調器を構成している。モードサプレッサ54cの他端には、第3,第4,第5のモードサプレッサ54c〜54eとフェライト円板とから成る第2のサーキュレータ55bがあり、第4のモードサプレッサ54d(第3の誘電体線路)の他端には、先端がテーパー状等とされた送受信アンテナ58が設けられている。
【0034】
なお、送受信アンテナ58は、平行平板導体51に形成された貫通孔を通して高周波信号を入力または出力させ、平行平板導体51の外面に貫通孔に接続された金属導波管を介して設置されたホーンアンテナ等であってもよい。
【0035】
本発明の第1のサーキュレータ55aは、平行平板導体51に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部55a1,第2の接続部55a2および第3の接続部55a3を有し、一つの接続部から入力されたミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させる構成のものである。なお、第2のサーキュレータ55bの場合、各接続部は、第1の接続部55b1,第2の接続部55b2および第3の接続部55b3である。
【0036】
また59は、送受信アンテナ58で受信され第4のモードサプレッサ54dを伝搬して第2のサーキュレータ55bの第5のモードサプレッサ54eより出力した受信波をミキサー61側へ伝搬させる第4の誘電体線路、60は、第1の誘電体線路53に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路53に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー61側へ伝搬させる第2の誘電体線路、60aは、第2の誘電体線路60のミキサー61と反対側の一端部に設けられた無反射終端部(ターミネータ)である。また、図中M1は、第2の誘電体線路60の中途と第4の誘電体線路59の中途を近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、ミリ波信号の一部と受信波を混合させて中間周波信号を発生させるミキサー部である。
【0037】
そして、これらの各種部品は、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に設けられている。
【0038】
また、本発明のミリ波レーダーモジュールの実施の形態の他の例として、送信アンテナと受信アンテナを独立させた図7のタイプがある。同図において、71は本発明の一方の平行平板導体(他方は省略する)、72は第1の誘電体線路73の一端に設けられたミリ波信号発振部であり、送信用のミリ波信号を出力する。
【0039】
73は、高周波ダイオードから出力された高周波信号が周波数変調されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路、74aは、第1の誘電体線路73に続く第1のモードサプレッサ、75は、第1,第2,第3のモードサプレッサ74a〜74cと、フェライト円板とから成るサーキュレータである。76は、サーキュレータ75の3のモードサプレッサ74cの一端側に、所定の空隙を開けて設けられた誘電体線路であり、77は誘電体線路76に接続されたショットキーバリアダイオード(図示せず)が実装された配線基板があり、本発明のパルス変調器を構成している。78はサーキュレータ75の第2のモードサプレッサ74bに接続され、先端がテーパー状等とされた送信アンテナである。
【0040】
なお、サーキュレータ75は図6のものと同様の構成であり、各接続部は、第1の接続部75a,第2の接続部75bおよび第3の接続部75cである。
【0041】
また79は、第1の誘電体線路73に一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは第1の誘電体線路73に一端が接合されて、ミリ波信号の一部をミキサー80側へ伝搬させる第2の誘電体線路、79aは、第2の誘電体線路79のミキサー80と反対側の一端部に設けられた無反射終端部である。82は、受信アンテナ81で受信された受信波をミキサー80側へ伝搬させる第4の誘電体線路である。また、図中M2は、第2の誘電体線路79の中途と第4の誘電体線路82の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、ミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生させるミキサー部である。
【0042】
なお、送信アンテナ78および受信アンテナ81は、平行平板導体71に形成された貫通孔を通して高周波信号を入力または出力させ、平行平板導体71の外面に貫通孔に接続された金属導波管を介して設置されたホーンアンテナ等であってもよい。
【0043】
そして、これらの各種部品は、ミリ波信号の空気中での波長であって使用周波数での波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に設けられる。
【0044】
図6,図7のミリ波レーダーモジュール用のミリ波信号発振部52,72を図8に示す。図8で、92はガンダイオード93を設置(マウント)するための金属ブロック等の金属部材、93はミリ波を発振する高周波ダイオードの1種であるガンダイオード、94は、金属部材92の一側面に設置され、ガンダイオード93にバイアス電圧を供給するとともに高周波信号の漏れを防ぐローパスフィルタとして機能するチョーク型バイアス供給線路94aを形成した配線基板である。95は、チョーク型バイアス供給線路94aとガンダイオード93の上部導体とを接続する金属箔リボン等の帯状導体、96は、誘電体の基体に共振用の金属ストリップ線路96aを設けた金属ストリップ共振器、97は、金属ストリップ共振器96により共振した高周波信号をミリ波信号発振部外へ導く誘電体線路である。この誘電体線路97が図6,図7の第1の誘電体線路53,73に相当する。
【0045】
また、図6,図7のミリ波レーダーモジュールはパルス方式であり、その動作原理は以下のようなものである。ミリ波信号発振部より出力されたミリ波信号は、本発明のパルス変調器において、変調信号入力用のMODIN端子に、パルス形状の電圧を入力することにより、パルス変調がかけられる。そして、送受信アンテナ58,送信アンテナ78より出力信号(送信波)を放射した場合、送受信アンテナ58,送信アンテナ78の前方にターゲットが存在すると、電波の伝搬速度の往復分の時間差をともなって、反射波(受信波)が戻り、ミキサー61,80の出力側のIFOUT端子にて出力される。
【0046】
このIFOUT端子の出力の送信パルスの遅延時間tより、R=ct/2(c:光速)という関係式から距離Rを求めることができる。
【0047】
本発明のミリ波信号発振部において、チョーク型バイアス供給線路94aおよび帯状導体95の材料は、Cu,Al,Au,Ag,W,Ti,Ni,Cr,Pd,Pt等から成り、特にCu,Agが、電気伝導度が良好であり、損失が小さく、発振出力が大きくなるといった点で好ましい。
【0048】
また、帯状導体95は金属部材92の表面から所定間隔をあけて金属部材92と電磁結合しており、チョーク型バイアス供給線路94aとガンダイオード93間に架け渡されている。即ち、帯状導体95の一端はチョーク型バイアス供給線路94aの一端に半田付け等により接続され、帯状導体95の他端はガンダイオード93の上部導体に半田付け等により接続されており、帯状導体95の接続部を除く中途部分は宙に浮いた状態となっている。
【0049】
そして、金属部材92は、ガンダイオード93の電気的な接地(アース)を兼ねているため金属導体であれば良く、その材料は金属(合金を含む)導体であれば特に限定するものではなく、真鍮(黄銅:Cu−Zn合金),Al,Cu,SUS(ステンレススチール),Ag,Au,Pt等から成る。また金属部材92は、全体が金属から成る金属ブロック、セラミックスやプラスチック等の絶縁基体の表面全体または部分的に金属メッキしたもの、絶縁基体の表面全体または部分的に導電性樹脂材料等をコートしたものであっても良い。
【0050】
かくして、本発明のミリ波送受信器としてのミリ波レーダーモジュールは、図6のものにおいては、ミリ波信号のパルス変調によるアイソレーション特性が改善され、従ってミリ波レーダーモジュールに適用した場合受信信号のノイズが低減してミリ波信号の伝送特性に優れ、探知距離が増大するものとなる。また、図7のものにおいては、ミリ波信号のパルス変調によるアイソレーション特性が改善され、また送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、その結果受信信号のノイズが低減してミリ波信号の伝送特性に優れ、さらに探知距離が増大するものとなる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を行うことは何等差し支えない。
【0052】
【実施例】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0053】
(実施例)
図1のNRDガイド用のパルス変調器を以下のようにして構成した。平行平板導体として厚さ6mmの2枚のAl板を1.8mmの間隔で配置し、それらの間に、断面形状が1.8mm(高さ)×0.8mm(幅)の矩形状であり、比誘電率4.8のコーディライトセラミックスから成る誘電体線路1を配置した。さらに、その一端側に0.4mmの空隙3を開けて、断面形状が1.8mm(高さ)×0.8mm(幅)の矩形状で長さが3.6mmであり、比誘電率4.8のコーディライトセラミックスから成る誘電体線路2を配置した。
【0054】
そして、誘電体線路2の空隙3と反対側の端面に、厚さ0.2mmのガラスエポキシ樹脂からなる配線基板5を配置した。この配線基板5の裏面(誘電体線路2と反対側の面)にはチョーク型バイアス供給線路6がプリントされており、チョーク型バイアス供給線路6の幅の広い線路と幅の狭い線路について、幅の広い線路部の長さはλ/4=0.7mm(誘電体基板上では短波長化する)、幅の狭い線路部の長さはλ/4=0.7mmであり、幅の広い線路部の幅は1.5mm、幅の狭い線路部の幅は0.2mmであった。そして、チョーク型バイアス供給線路6の途中にはビームリードタイプのショットキーバリアダイオード4をはんだ付けで実装した。
【0055】
また、空隙3の間隔は、ショットキーバリアダイオード4から誘電体線路2への高周波信号(76.5GHz)の反射量(−11dB)と空隙3から誘電体線路1への高周波信号(76.5GHz)の反射量(−11dB)とが略同じになるように、0.4mmに設定した。
【0056】
上記構成のパルス変調器について、ネットワークアナライザを用いて75〜80GHzの高周波帯域で、ショットキーバリアダイオード4に順方向にバイアス電圧をかけた場合(高周波信号は反射されず出力されない:off)と逆方向にバイアスをかけた場合(高周波信号は反射されて出力される:on)の高周波信号の反射特性を測定した結果を図5に示す。
【0057】
本実施例は76.5GHz±0.3GHzを目的の周波数帯域としており、図5よりこの周波数帯域でのon時の透過特性は−1〜−2dB程度と非常に損失が小さく、また、on時とoff時のアイソレーション特性はこの周波数帯域の全域にわたって−15dB以上であり、最も高い部分では−45dB程度と非常に良好な特性であった。さらに、この最もアイソレーション特性が高い部分の周波数は、所望の76.5GHzであり、この周波数において整合が最もとれており、効率良くASK変調が行われていることがわかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明のパルス変調器は、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、高周波信号を伝搬させる誘電体線路と、誘電体線路の一端側に空隙および他の誘電体線路を介して、配線基板上のチョーク型バイアス供給線路の中途にショットキーバリアダイオードが接続されているとともにショットキーバリアダイオードのバイアス電圧印加方向がLSMモードの電磁波の電界方向に合致するように設置されているパルス変調用スイッチとを具備しており、空隙の間隔が、ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときのショットキーバリアダイオードから他の誘電体線路への高周波信号の反射量と空隙から誘電体線路への高周波信号の反射量とが略同じになるように設定されているとともに、ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときと逆方向にバイアス電圧を印加したときとで、ショットキーバリアダイオードにて反射される高周波信号の位相が180°異なっていることにより、所望の周波数で動作させるためのインピーダンスの整合を、空隙と他の誘電体線路の長さで行っているため、従来のような誘電体シートや配線基板の裏面の誘電体線路が不要となり、部品点数が削減され、組立再現性が向上する。また、所望の周波数で動作させるためのインピーダンスの整合が容易になり、パルス変調器の良好な特性が再現性良く安定して得られる。従って、信頼性の高いパルス変調器を生産性良く製造できる。
【0059】
本発明において、空隙の間隔が、ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときのショットキーバリアダイオードから他の誘電体線路への高周波信号の反射量と空隙から誘電体線路への高周波信号の反射量とが略同じになるように設定されているとともに、ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときと逆方向にバイアス電圧を印加したときとで、ショットキーバリアダイオードにて反射される高周波信号の位相が180°異なっていることにより、パルス変調器のON時とOFF時の高周波信号の反射量の差が最も大きくなり、パルス変調器のアイソレーション特性がより良好になるという作用効果がある。
【0060】
また、本発明の送受信アンテナを有するミリ波送受信器は、本発明のパルス変調器を用いることにより、ミリ波信号のパルス変調によるアイソレーション特性が改善され、従ってミリ波レーダー等に適用した場合受信信号のノイズが低減してミリ波信号の伝送特性に優れ、探知距離が増大するものとなる。また、本発明の送信アンテナと受信アンテナが独立したミリ波送受信器は、本発明のパルス変調器を用いることにより、ミリ波信号のパルス変調によるアイソレーション特性が改善され、また送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、その結果さらに受信信号のノイズが低減してミリ波信号の伝送特性に優れ、探知距離がさらに増大するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のNRDガイド用のパルス変調器について実施の形態の例を示す斜視図、(b)は(a)のパルス変調器を上方から見たときの平面図である。
【図2】本発明のパルス変調器に用いられるショットキーバリアダイオードを設けた配線基板の平面図である。
【図3】本発明のNRDガイドの基本構成を示し、内部を一部透視したものの斜視図である。
【図4】(a)は従来のNRDガイド用のパルス変調器の斜視図、(b)は(a)のパルス変調器を上方から見たときの平面図である。
【図5】本発明のパルス変調器について高周波信号の反射特性を測定した結果のグラフである。
【図6】本発明のミリ波送受信器としてのミリ波レーダーモジュールについて実施の形態の例を示す平面図である。
【図7】本発明のミリ波送受信器としてのミリ波レーダーモジュールについて実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明のミリ波レーダーモジュール用のミリ波信号発振部の斜視図である。
【符号の説明】
1:誘電体線路
2:他の誘電体線路
3:空隙
4:ショットキーバリアダイオード
5:配線基板
6:チョーク型バイアス供給線路
Claims (3)
- 高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、前記高周波信号を伝搬させる誘電体線路と、該誘電体線路の一端側に空隙および他の誘電体線路を介して、配線基板上のチョーク型バイアス供給線路の中途にショットキーバリアダイオードが接続されているとともに該ショットキーバリアダイオードのバイアス電圧印加方向がLSMモードの電磁波の電界方向に合致するように設置されているパルス変調用スイッチとを具備しており、前記空隙の間隔が、前記ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときの前記ショットキーバリアダイオードから前記他の誘電体線路への高周波信号の反射量と前記空隙から前記誘電体線路への高周波信号の反射量とが略同じになるように設定されているとともに、前記ショットキーバリアダイオードに順方向にバイアス電圧を印加したときと逆方向にバイアス電圧を印加したときとで、前記ショットキーバリアダイオードにて反射される高周波信号の位相が 180 °異なっていることを特徴とする非放射性誘電体線路用のパルス変調器。
- 送信用のミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、
高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、
該第1の誘電体線路に付設され、前記高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を前記第1の誘電体線路中へ伝搬させるミリ波信号発振部と、
前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは前記第1の誘電体線路に一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、
前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記送信用のミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記送信用のミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記送信用のミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続される第1のサーキュレータと、
前記サーキュレータと同構成であって、前記第1のサーキュレータの前記第3の接続部に第1の接続部が接続される第2のサーキュレータと、
該第2のサーキュレータの第2の接続部に接続され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナを有する第3の誘電体線路と、
前記送受信アンテナで受信され前記第3の誘電体線路を伝搬して前記第2のサーキュレータの前記第3の接続部より出力した受信波をミキサー側へ伝搬させる第4の誘電体線路と、
前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途を近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と前記受信波とを混合させて中間周波信号を発生するミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、
前記第1のサーキュレータの第2の接続部に、請求項1記載のパルス変調器が設けられていることを特徴とするミリ波送受信器。 - 送信用のミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、
高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、
該第1の誘電体線路に付設され、前記高周波発生素子から出力された前記送信用のミリ波信号を前記第1の誘電体線路中へ伝搬させるミリ波信号発振部と、
前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは前記第1の誘電体線路に一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、
前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置されかつそれぞれ前記送信用のミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの前記接続部から入力された前記送信用のミリ波信号をフェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力させるサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記送信用のミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、
該サーキュレータの前記第2の接続部に接続され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナを有する第3の誘電体線路と、
先端部に受信アンテナ、他端部にミキサーが各々設けられた第4の誘電体線路と、
前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と受信波とを混合させて中間周波信号を発生するミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、
前記サーキュレータの前記第3の接続部に、請求項1記載のパルス変調器が設けられていることを特徴とするミリ波送受信器。
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